説明

密着子固定治具

【課題】この発明は、鉄塔等の鋼構造物の塗装面に、安全確実に密着子を固定する固定治具の提供を目的とする。
【解決手段】塗装面に吸着する磁石3と、磁石3を保持するとともに、腕金5を支持するねじ部材2と、塗装面を検査する略糸巻き状の密着子1を把持する腕金5とからなる固定治具Aであって、ねじ部材2は、ねじ部材2の一端部に、磁石3を固定させて保持し、また腕金5を支持し、腕金5の一端部の長手方向には、スライド孔を有し、当該スライド孔にねじ部材2を貫通させ、かつ、この腕金5の上からねじ部材2に締付自在な蝶ナット7を螺着させ、また腕金5の一端部は、前記スライド孔を通じて、ねじ部材2に、ねじ部材2の円周方向に回動自在、かつ、ねじ部材2の半径方向に摺動自在に支持されており、腕金5の他端部には、密着子1の細径部を側面から把持する切り欠きが設けられている構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、鋼構造物の塗装面に、簡単確実に密着子を固定する固定治具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、鉄塔等の鋼構造物に対するLLC(=ライフサイクルコスト)を考慮した、設備改修が盛んに行われている。このような状況の中、鋼構造物の劣化診断が改修計画に大きく寄与している。この劣化診断の一項目に塗料の付着力試験がある。
【0003】
この試験は、塗装面の対象となる部位に、ドーリという付着力を試験するための密着子を接着し、一定時間経過後、接着された当該密着子を引っ張って、塗装面から剥がすことで対象物の塗装面の塗料の付着力を測定する。いわゆるアドヒージョンテストと呼ばれるものである。このテストの概要については特許文献1の段落[0042]〜[0043]に、「<付着力(表面接合力)>」のテストとして記載されている。
【特許文献1】特開2004−332459
【0004】
このアドヒージョンテストにおいて、例えば、図8に示すように、密着子1を鋼構造物の塗装面に固定する際に使用する治具として、ドーリクランプCがある。このドーリクランプCは、塗装面が金属であるときに使用可能な治具であり、ドーリクランプCに設けられている磁石15により、対象物の塗装面に吸着し、また当該ドーリクランプCに設けられている腕金16にて、密着子1を塗装面に固定させる治具である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、鋼構造物の塗装面の付着力を測定するために、密着子1を塗装面に接着剤で接着する場合、高所での作業になる。ところで、ドーリクランプCは、塗装面との固定に、例えばフェライト製の永久磁石を使用しているため、磁石15の吸着力が弱く、そのため、密着子1及びドーリクランプCの落下に備えて、落下物対策を施さなければならない。
【0006】
また、ドーリクランプCは図8に示すように、磁石15が底面部に設けられた本体17から、腕金16が水平方向に突出するように設けられており、腕金16に支持されたねじ部材18の先端を密着子1の上面に当接させて、密着子1を塗装面に固定させる構成となっている。そのため、ドーリクランプCを塗装面に固定させたままの状態で、密着子1にテーピングを施し、ドーリクランプCなしで塗装面に密着子1を固定させようとしても、ドーリクランプCのねじ部材18や腕金16が邪魔になり、密着子1にテーピングを施すことができず、ドーリクランプCを塗装面から外すことができない。
【0007】
従って、ドーリクランプCを用いて密着子1を塗装面に固定させ、その後、ドーリクランプCを外し、密着子1にテーピングを施して塗装面に固定させるという一連の作業を1人の作業員で行うことができない。そのため作業は、通常2人1組で行うが、2人がかりで作業を行っても、作業中に密着子1の位置がずれて動いてしまうことがあり、その場合には塗装面と密着子1とを接着させる接着剤が塗装表面に広がってしまう。
【0008】
また上記したように、密着子1やドーリクランプCが誤って落下したり、密着子1の位置がずれないように注意しながら、2人1組の作業員が慎重に作業を行う必要があるため、一連の作業に時間がかかり、特に測定箇所が多く、多数の密着子1を塗装面に固定させなければならない場合には、非常に時間がかかる。
【0009】
この発明は、上記従来技術を考慮したものであって、鉄塔等の鋼構造物の塗装面に、安全確実に密着子を固定する固定治具の提供を目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
前記目的を達成するため、請求項1の発明では、鋼構造物の塗装面の塗料の付着力をテストする密着子の固定治具において、
塗装面に吸着する磁石と、当該磁石を保持するとともに、腕金を支持するねじ部材と、塗装面を検査する略糸巻き状の密着子を把持する腕金とからなる固定治具であって、
前記ねじ部材は、当該ねじ部材の一端部に、前記磁石を固定させて保持し、また前記腕金を支持し、
当該腕金の一端部の長手方向には、スライド孔を有し、当該スライド孔に前記ねじ部材を貫通させ、かつ、この腕金の上から当該ねじ部材に締付自在なナットを螺着させ、また当該腕金の一端部は、前記スライド孔を通じて、当該ねじ部材に、当該ねじ部材の円周方向に回動自在、かつ、当該ねじ部材の半径方向に摺動自在に支持されており、当該腕金の他端部には、前記密着子の細径部を側面から把持する切り欠きが設けられている、固定治具とした。
【0011】
請求項2の発明では、鋼構造物の塗装面の塗料の付着力をテストする密着子の固定治具において、
塗装面に吸着する磁石と、当該磁石を保持するとともに、腕金を支持するねじ部材と、塗装面を検査する略糸巻き状の密着子を把持する腕金とからなる固定治具であって、
前記ねじ部材は、当該ねじ部材の一端部に、前記磁石を固定させて保持し、また前記腕金を支持し、
当該腕金の一端部には、貫通孔を有し、当該貫通孔に前記ねじ部材を貫通させ、かつ、この腕金の上から当該ねじ部材に締付自在なナットを螺着させ、また当該腕金の一端部は、前記貫通孔を通じて、当該ねじ部材に、当該ねじ部材の円周方向に回動自在に支持されており、当該腕金の他端部には、前記密着子の細径部を側面から把持する切り欠きが、当該ねじ部材の略円周方向に沿って設けられている、固定治具とした。
【0012】
請求項3の発明では、ねじ部材に支持されている前記腕金の一端部と、ねじ部材に保持されている前記磁石との間に、一枚又は複数枚の座金がねじ部材に被冠され、挟持されている、請求項1又は2に記載の固定治具とした。
【0013】
請求項4の発明では、前記ねじ部材に一端を係止し、他端を、前記腕金の切り欠きに挟持された密着子に係止した輪ゴムを設けた、請求項1〜3のいずれかに記載の固定治具とした。
【0014】
請求項5の発明では、前記磁石がネオジキャップ式の磁石である、請求項1〜4のいずれかに記載の固定治具とした。
【発明の効果】
【0015】
請求項1の発明によれば、腕金によって密着子の細径部を側面から把持する構成としたため、当該固定治具によって密着子が塗装面に固定されている状態のままで、密着子にテーピングを施すことができ、テーピング後は当該固定治具を密着子の側面から外すことができる。そのため、密着子を誤って地面に落下させることなく、塗装面への密着子の固定を、安全確実に行うことができる。また従来、2人1組の作業員で、密着子やドーリクランプが落下等しないように注意しながら慎重に行っていた一連の作業を、1人の作業員で行うことができるようになり、作業時間を短縮でき、かつ労力を軽減できる。
【0016】
請求項2の発明によれば、密着子の細径部を側面から把持する腕金の切り欠きを、ねじ部材の略円周方向に沿って設ける構成としたため、腕金を回動させるだけで、密着子の細径部を側面から把持したり、密着子から外したりすることができ、便宜である。
【0017】
請求項3の発明によれば、ねじ部材に支持されている腕金の一端部と、ねじ部材に保持されている磁石との間に、一枚又は複数枚の座金を挟持可能な構成としたため、挟持させる座金の枚数を変更することで、腕金の一端部を支持する位置を変更することができる。そのため、密着子の高さに合わせて、最適な位置で密着子を把持することが可能となる。また、磁石と腕金との間に座金を挟持させることで、磁石の磁力による影響を弱め、腕金の回動操作をスムーズに行うことが可能となる。
【0018】
請求項4の発明によれば、ねじ部材に一端を係止し、他端を腕金の切り欠きに挟持された密着子に係止する輪ゴムを有する構成とすることにより、密着子が切り欠き内で動かないようにする。そのため、磁力によって塗装面に吸着している固定治具によって固定されている密着子を、誤って地面に落下させることなく、塗装面への密着子の固定を、より安全確実に行うことができる。
【0019】
請求項5の発明によれば、塗装面に吸着する磁石として、非常に強い磁力を有するネオジキャップ式の磁石を用いる構成としたため、塗装面が湾曲しており吸着しづらい鋼管等であっても、密着子の固定を維持することができ、密着子を誤って地面に落下させることなく、安全確実に作業を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
この発明は、鋼構造物の塗装面の塗料の付着力をテストする密着子の固定治具において、塗装面に吸着する磁石と、当該磁石を保持するとともに、腕金を支持するねじ部材と、塗装面を検査する略糸巻き状の密着子を把持する腕金とからなる固定治具であって、前記ねじ部材は、当該ねじ部材の一端部に、前記磁石を固定させて保持し、また前記腕金を支持し、当該腕金の一端部の長手方向には、スライド孔を有し、当該スライド孔に前記ねじ部材を貫通させ、かつ、この腕金の上から当該ねじ部材に締付自在なナットを螺着させ、また当該腕金の一端部は、前記スライド孔を通じて、当該ねじ部材に、当該ねじ部材の円周方向に回動自在、かつ、当該ねじ部材の半径方向に摺動自在に支持されており、当該腕金の他端部には、前記密着子の細径部を側面から把持する切り欠きが設けられている構成とすることにより、密着子を誤って地面に落下させることなく、塗装面への密着子の固定を、安全確実に行うことができる。
【実施例1】
【0021】
図1はこの発明に係る固定治具Aを示す正面図であり、図2はこの発明に係る固定治具Aを示す上面図である。図1及び図2は固定治具Aと密着子1が鋼構造物の塗装面に固定されている状態を示している。密着子1は、ドーリであり、密着子1の、鋼構造物の塗装面と接する面に、接着剤を塗布し、密着子1を塗装面に接着し、一定時間経過後に、密着子1を塗装面から剥がして、塗装面の塗料の付着力を測定する。固定治具Aは、前記密着子1を塗装面に固定させるもので、ねじ部材2、磁石3、座金4、腕金5、留め具6及び蝶ナット7とから成る。
【0022】
ねじ部材2は、例えば、防錆を考慮してステンレス製であって、固定治具Aにおいて支柱としての役割を果たし、このねじ部材2に、ねじ部材2の頭部を下にして、磁石3、複数枚の座金4、腕金5、留め具6を順番に貫通させて、最後に蝶ナット7をねじ部材2に螺着させて固定治具Aを形成する。
【0023】
磁石3は、中心にねじ部材2を貫通し、下端に段部を有する貫通孔が設けられており(図示省略)、円柱あるいは円盤形状である。これにより、ねじ部材2の頭部が磁石3の貫通孔の段部に嵌合される。また磁石3は、ネオジム磁石製の磁石本体3aと、キャップ状の枠体3bから成るネオジキャップ式の磁石である。例えば、吸着力が約14キログラム、あるいは約23キログラムのネオジキャップ式の磁石を用いる。固定治具Aは、磁石3の磁力による吸着力で、鋼構造物の塗装面に密着する構成であるため、磁力の強い磁石であれば、塗装面が湾曲していて密着しづらい鋼管等であっても、密着子1の固定を維持することができ、密着子1を誤って地面に落下させることなく、安全確実に作業を行うことができる。
【0024】
座金4は、中心にねじ部材2を貫通する貫通孔が設けられており(図示省略)、円盤形状である。座金4は、例えば鉄製、又は防錆を考慮してステンレス製である。固定治具Aでは、図1に示す通り、磁石3と腕金5との間に複数枚の座金4が挟持されている。挟持させる座金4の枚数を変更することで、腕金5の一端部を支持する位置を変更することができる。そのため密着子1の高さに合わせて、最適な位置で腕金5に密着子1を把持させることが可能となる。また、磁石3と腕金5の間に座金4を挟持させることで、磁石3の磁力による影響を弱め、腕金5の回動操作をスムーズに行うことが可能となる。
【0025】
腕金5は、例えばスチール(=鋼)製である。また腕金5は、ねじ部材2から水平方向に突出するように設けられ、略中央部で下部方向に屈曲し、再び水平方向に突出した板状である。また、図2に示すように、腕金5の一端部の長手方向には、略だ円形のスライド孔8が設けられている。このスライド孔8は、ねじ部材2を貫通させ、また、ねじ部材2を貫通させた状態で腕金5をねじ部材2の円周方向に回動可能、及びねじ部材2の半径方向に摺動可能な内径を有している。また、腕金5の一端部には、貫通孔19が設けられている。この貫通孔19に、ワイヤやひもの一端を結びつけ、他端を作業員のベルト等に結びつけて(図示省略)、固定治具Aの落下を防止する。
【0026】
また腕金5の他端部には、密着子1を側面から把持するため、切り欠き9が設けられている。そのため、腕金5の他端部は略「コ」の字型の形状となっている。このように、腕金5によって密着子1を側面から把持する構成としたため、固定治具Aによって密着子1が塗装面に固定されている状態のままで、密着子1にビニールテープ等でテーピングを施すことができ、テーピング完了後は、固定治具Aを密着子1の側面から抜いて外すことができる。そのため、塗装面への密着子1の固定を、密着子1を誤って地面に落下させることなく、安全確実に行うことができる。
【0027】
留め具6は、前記ねじ部材2を貫通させるリング10と、輪ゴム11等を通すリング12と、密着子1の落下を防止するため、密着子1の適宜の箇所に結びつけられたワイヤ13を、留め具6に連結するリング14を有している。輪ゴム11をねじ部材2と、密着子1にリング12を通して引っ掛けることで、密着子1が塗装面からずれないように固定する。また、ワイヤ13及びリング14を用いて、密着子1と留め具6とを連結する構成にすることで、密着子1の落下を防止する。なお、リング14は、ハンドル20を操作することによって、開閉可能なリングである。従って、リング14を開閉させることによって、ワイヤ13の一端を外したり、取り付けたりすることができる。
【0028】
蝶ナット7は、例えば、防錆を考慮してステンレス製である。ねじ部材2に磁石3、複数枚の座金4、腕金5を貫通させた後に、ねじ部材2に螺着させることで、腕金5が、スライド孔8を支点に摺動又は回動しないように、腕金5を締め付けて、腕金5の位置を固定する。従って逆に、蝶ナット7を緩めれば、腕金5はスライド孔8を支点に摺動又は回動自在となる。
【0029】
次に、密着子1を鋼構造物の塗装面に固定させる作業手順に沿って、固定治具Aの使用方法を説明する。まず、固定治具Aの貫通孔19にワイヤ等の一端を結びつけ、他端を作業員のベルト等に結びつけて、固定治具Aの落下防止対策を施す。そして、固定治具Aの腕金5の切り欠き9で密着子1の細径部を側面から把持させる。それから、輪ゴム11をねじ部材2と、密着子1にリング12を通して引っ掛け、密着子1が切り欠き9内で動かないようにする。またワイヤ13及びリング14を用いて、密着子1と留め具6とを連結する。このようにして、固定治具Aに密着子1をセットし、図1に示すように、鋼構造物の塗装面の測定箇所近傍に、磁石3の磁力によって固定治具Aを吸着させ、これにより、密着子1を塗装面に固定する。次に、密着子1と塗装面とを接着する2液型の接着剤を練り混ぜる。そして、磁石3の磁力によって塗装面に吸着させていた固定治具Aを剥がして、練り混ぜた接着剤を密着子1の、塗装面と接する面に塗布し、測定箇所の塗装面に固定治具A及び密着子1を再び固定する。
【0030】
次に、輪ゴム11を固定治具Aから取り外し、図3に示すように、鋼構造物ごと密着子1の上面からビニールテープ21等でテーピングを施し、密着子1を塗装面に固定する。それから、ワイヤ13をリング14から取り外し、ワイヤ13の一端を測定対象の鋼構造物の適宜の箇所に結びつけて、密着子1の落下を防止する。
【0031】
次に図4に示すように、蝶ナット7を緩めて、スライド孔8に沿って、腕金5を水平方向に摺動させ、密着子1から離間させる。それから図5に示すように、腕金5を、ねじ部材2を中心に回動させ、密着子1に接触しないように、確実に距離をとってから固定治具Aを塗装面から剥がす。
【0032】
上記のように固定治具Aを構成することによって、密着子1が塗装面に固定されている状態のままで、密着子1にテーピングを施すことができ、テーピング後は固定治具Aを密着子1の側面から外すことができる。そのため、密着子1を誤って地面に落下させることなく、塗装面への密着子1の固定を、安全確実に行うことができる。また従来、2人1組の作業員で、密着子1やドーリクランプCが落下等しないように注意しながら慎重に行っていた一連の作業を、1人の作業員で行うことができるようになり、作業時間を短縮でき、かつ労力を軽減できる。
【0033】
上記実施例では、ねじ部材2に磁石3を通して、磁石3を保持し、この上から座金4、腕金5を通しているが、この構成に限定されるものではない。ねじ部材2の一端を磁石に埋め込んで固定し、磁石の背面からねじ部材2の他端を突出させ、このねじ部材2に座金4、腕金5を通す構成としても良い。
【実施例2】
【0034】
図6は、この発明に係る固定治具Bを示す正面図である。図6は固定治具Bと密着子1が鋼構造物の塗装面に固定されている状態を示している。固定治具Bは、密着子1を塗装面に固定させるもので、ねじ部材2、磁石3、座金4、腕金22、留め具6及び蝶ナット7とから成る。
【0035】
腕金22は、例えばスチール(=鋼)製である。また腕金22は、ねじ部材2から水平方向に突出するように設けられ、略中央部で下部方向に屈曲し、再び水平方向に突出した板状である。また、図6に示すように、腕金22の一端部には、貫通孔23が設けられている。この貫通孔23は、ねじ部材2を貫通させ、また、ねじ部材2を貫通させた状態で腕金22を回動可能な内径を有している。また、図7に示すように、腕金22の一端部には、貫通孔19が設けられている。
【0036】
また腕金22の他端部には、図7に示すように、密着子1を側面から把持するため、切り欠き24が、ねじ部材2の略円周方向に沿って設けられている。このような構成とすることによって、腕金22を回動させるだけで、密着子1の細径部を側面から把持したり、密着子1から外すことができる。
【0037】
なお、固定治具Bの上記以外の構成及び作用は、実施例1の固定治具Aと同様である。また、固定治具Bは、鋼構造物ごと密着子1の上面からビニールテープ21等でテーピングを施した際に、密着子1に高さがあることによって、ビニールテープ21と鋼構造物との間に隙間が生じ、腕金22を回動させてもビニールテープ21に引っ掛からない場合に利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【図1】この発明に係る固定治具Aを示す正面図である。
【図2】この発明に係る固定治具Aを示す上面図である。
【図3】この発明に係る固定治具Aによって密着子が把持され、塗装面に、固定されている密着子に、テーピングが施された状態を示す斜視図である。
【図4】この発明に係る固定治具Aの腕金を摺動させて、密着子から離間させた状態を示す正面図である。
【図5】この発明に係る固定治具Aの腕金を回動させて、密着子から離間させた状態を示す上面図である。
【図6】この発明に係る固定治具Bを示す正面図である。
【図7】この発明に係る固定治具Bの腕金を回動させて、密着子を把持させたり、密着子から離間させた状態を示す上面図である。
【図8】従来のドーリクランプCの構成を示す正面図である。
【符号の説明】
【0039】
A:固定治具、B:固定治具、C:ドーリクランプ
1:密着子、2:ねじ部材、3:磁石、4:座金、5:腕金、6:留め具、7:蝶ナット、8:スライド孔、9:切り欠き、10:リング、11:輪ゴム、12:リング、13:ワイヤ、14:リング、15:磁石、16:腕金、17:本体、18:ねじ部材、19:貫通孔、20:ハンドル、21:ビニールテープ、22:腕金、23:貫通孔、24:切り欠き

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼構造物の塗装面の塗料の付着力をテストする密着子の固定治具において、
塗装面に吸着する磁石と、当該磁石を保持するとともに、腕金を支持するねじ部材と、塗装面を検査する略糸巻き状の密着子を把持する腕金とからなる固定治具であって、
前記ねじ部材は、当該ねじ部材の一端部に、前記磁石を固定させて保持し、また前記腕金を支持し、
当該腕金の一端部の長手方向には、スライド孔を有し、当該スライド孔に前記ねじ部材を貫通させ、かつ、この腕金の上から当該ねじ部材に締付自在なナットを螺着させ、また当該腕金の一端部は、前記スライド孔を通じて、当該ねじ部材に、当該ねじ部材の円周方向に回動自在、かつ、当該ねじ部材の半径方向に摺動自在に支持されており、当該腕金の他端部には、前記密着子の細径部を側面から把持する切り欠きが設けられていることを特徴とする、固定治具。
【請求項2】
鋼構造物の塗装面の塗料の付着力をテストする密着子の固定治具において、
塗装面に吸着する磁石と、当該磁石を保持するとともに、腕金を支持するねじ部材と、塗装面を検査する略糸巻き状の密着子を把持する腕金とからなる固定治具であって、
前記ねじ部材は、当該ねじ部材の一端部に、前記磁石を固定させて保持し、また前記腕金を支持し、
当該腕金の一端部には、貫通孔を有し、当該貫通孔に前記ねじ部材を貫通させ、かつ、この腕金の上から当該ねじ部材に締付自在なナットを螺着させ、また当該腕金の一端部は、前記貫通孔を通じて、当該ねじ部材に、当該ねじ部材の円周方向に回動自在に支持されており、当該腕金の他端部には、前記密着子の細径部を側面から把持する切り欠きが、当該ねじ部材の略円周方向に沿って設けられていることを特徴とする、固定治具。
【請求項3】
ねじ部材に支持されている前記腕金の一端部と、ねじ部材に保持されている前記磁石との間に、一枚又は複数枚の座金がねじ部材に被冠され、挟持されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の固定治具。
【請求項4】
前記ねじ部材に一端を係止し、他端を、前記腕金の切り欠きに挟持された密着子に係止した輪ゴムを設けたことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の固定治具。
【請求項5】
前記磁石がネオジキャップ式の磁石である、請求項1〜4のいずれかに記載の固定治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−149164(P2011−149164A)
【公開日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−9453(P2010−9453)
【出願日】平成22年1月19日(2010.1.19)
【出願人】(505272618)株式会社TLC (18)
【出願人】(508032963)株式会社スカイテック (2)
【Fターム(参考)】