説明

密閉型電池及び安全弁

【課題】要求されるシール機能と開弁機能との好適な両立を図ることができる密閉型電池、及び密閉型電池に適用して好適な復帰式の安全弁を提供する。
【解決手段】安全弁の弁座214には、弁口213から弁体230側に突出する環状の突起215が形成されている。突起215には、弁体230の軸方向の断面において縁部の形状の曲率半径が互いに異なる第1の突起領域R1と第2の突起領域R2との2つの領域が弁口213の周回方向に並行するかたちで設けられている。また、第2の突起領域R2における弁体230との単位面積当たりの面圧は、第1の突起領域R1における弁体230との単位面積当たりの面圧よりも高い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、異常な内部圧力を開放する復帰式の安全弁を有する密閉型電池、及び、密閉型電池に用いて好適な復帰式の安全弁に関する。
【背景技術】
【0002】
周知のように、携帯用の電子機器の電源として、また、電気自動車やハイブリッド自動車などの電源として、様々な二次電池が提案されている。そして、このような二次電池のうち、特に密閉型の電池には、電池ケースの内部圧力が所定の圧力を超えたときに開放するように作動して内部圧力を低下させるとともに、内部圧力の低下後は閉塞状態に復帰する安全弁、いわゆる復帰式の安全弁が設けられていることも多い。こうした安全弁は、発電要素の化学反応によって生じたガスなどによる内部圧力の異常な上昇に反応して作動することでケース内部のガスを排出させるように機能する。そして従来、このような、密閉型電池に用いられる復帰式の安全弁としては、特許文献1に記載の安全弁が知られている。
【0003】
この特許文献1に記載の安全弁は、図10に示すように、電池を構成する正極及び負極の極板群が収容される電槽に装着される弁ケース25を有している。この弁ケース25の底壁の中央には電槽に連通する弁口26が設けられているとともに、その周囲に環状のシール突起27が形成されている。また、この弁ケース25には、シール突起27に圧接されるゴム等によって構成される弁体31が収容されており、この弁体31が収容された状態で、同弁ケース25の上面開口部に弁蓋32が係合されている。そしてこの弁蓋32には、弁ケース25の内部空間と連通する開放口33が設けられている。このように構成される安全弁では、通常想定される電池の内部圧力の範囲内では、シール突起27と弁体31との間でのシール性が維持されることによって電池内部と外部との隔離がなされ、電池内部のガスが外部に漏れることはない。しかし、電池の内部圧力が異常に高まり、ある設定値に達すると、その内部圧力により弁体31が開放作動(弾性収縮)し、シール突起27と弁体31との間を介して電池内部のガスが排出されるようになる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−110388号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、こうした安全弁には、通常の使用環境下で想定される圧力下では閉弁状態を維持して電池内部の電解液や各種ガス等の内容物を電池内部に密閉するシール機能と、電池内部の圧力の異常上昇時には内圧が所定の圧力に達した時点で開弁して電池の内部圧力を開放する開弁機能との2つの機能が要求される。
【0006】
しかし、上記特許文献1に記載の安全弁を含め、従来の安全弁においては、例えば、先の図10の領域aに相当する部分の拡大構造を図11に示すように、安全弁の開弁機能を維持しつつ、同安全弁のシール機能の向上を図ることは難しい。すなわち、安全弁の開弁機能は、図10(弁体の軸方向の断面)におけるシール突起27の頂点間の長さを「L」、弁体31からシール突起27にかかる荷重を「F」、弁体31の軸方向におけるシール突起27の縁部と弁口26との接触長さであるシール長を「l」とするとき、以下の式(1)と相関がある。
【0007】

F/Ll …(1)

一方、安全弁のシール機能は、以下の式(2)と相関がある。
【0008】

l/L …(2)

このため、こうした特性を有する安全弁のシール機能を向上させようとして、例えばシール突起27のシール長「l」を長くすると、安全弁のシール機能は向上するものの同安全弁が開放する際の圧力は低下する。また、シール突起27の頂点間の長さ「L」を小さくすることによって安全弁のシール機能の向上を図ったとしても、シール突起27の頂点間の長さ「L」は弁口26の直径の範囲までしか小さくすることができず、シール機能を向上させるには限界があった。すなわち、安全弁の開弁機能を維持しつつ、安全弁のシール機能を向上させることは困難であった。
【0009】
本発明は、このような実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、要求されるシール機能と開弁機能との好適な両立を図ることができる密閉型電池、及び密閉型電池に適用して好適な復帰式の安全弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、請求項1に記載の発明は、正極および負極を有する極板群が収容された電槽に連通する弁口を有する収容部を備えた弁ケースと、前記収容部に収容される弁体と、該弁体を前記弁口に設けられた弁座に押し付けることにより前記弁口を封止する弁蓋とによって構成される復帰式の安全弁を備えた密閉型電池であって、前記弁座には、前記弁体側に突出する環状の突起が形成されてなるとともに、該突起には、前記弁体の軸方向の断面において該突起の縁部の形状の曲率半径が互いに異なる第1の突起領域と第2の突起領域との2つの領域が前記弁口の周回方向に並行して設けられており、前記安全弁において、前記第2の突起領域の外周側に前記第1の突起領域の少なくとも一部が設けられてなり、前記第2の突起領域における前記弁体との単位面積当たりの面圧は、前記第1の突起領域における前記弁体との単位面積当たりの面圧よりも高いことを要旨とする。
【0011】
上記構成によれば、安全弁の弁座には、弁体の軸方向の断面において縁部の形状の曲率半径が互いに異なる第1の突起領域と第2の突起領域とを有した環状の突起が設けられる。そして、第2の突起領域における弁体との単位面積当たりの面圧が第1の突起領域における弁体との単位面積当たりの面圧よりも高く形成されたことによって、第2の突起領域に当接される弁体の部分の圧縮力が高まる。そのため、第2の突起領域と弁体との密着状態が維持されることにより、内部圧力が或る設定値に到達するまでは、電槽に連通する安全弁の弁口の封止状態が維持される。一方、内部圧力が異常上昇し、この内部圧力が第2の突起領域と弁体との面圧を超えるような圧力(開弁圧)に達すると、その開弁圧により弁体が弾性収縮して開放作動する。すなわち、第2の突起領域と弁体との単位面積当たりの面圧が第1の突起領域と弁体との単位面積当たりの面圧よりも高く設定されているために、弁体が開放作動するときの開弁圧は第2の突起領域と弁体との面圧によって決定される。このように上記構成では、上記突起のうちの第2の突起領域によって、安全弁に要求される開弁機能が担保される。
【0012】
また、上記安全弁のシール機能は、第2の突起領域間の長さ(例えば、頂点間の長さ)を「L」、弁体から第2の突起領域への荷重を「F」、弁体の軸方向における第2の突起領域のシール長を「l」とし、この第2の突起領域の外側に設けられた第1の突起領域間の長さ(例えば、頂点間の長さ)を「L」、弁体から第1の突起領域への荷重を「F」、弁体の軸方向における第1の突起領域のシール長を「l」とするとき、以下の式(3)と相関がある。
【0013】

/L+l/L …(3)

すなわち、安全弁のシール機能は、安全弁として必要不可欠な開弁機能を担保する第2の突起領域によるシール機能(l/L)に、さらに、同第2の突起領域とは各別の領域である第1の突起領域によるシール機能(l/L)が加算されたものとなる。これにより、上記構成によれば、第1の突起領域によるシール機能が加算される分だけ、安全弁のシール機能が向上されるようになる。
【0014】
また、このように、第1の突起領域と第2の突起領域との各別の領域によって上記突起が構成されることから、安全弁の開弁機能を担保する第2の突起領域とは別の領域、すなわち第1の突起領域のシール長lや同第1の突起領域間の長さLのみを拡大することによって、安全弁のシール機能を向上させることが可能である。よって、上記式(1)によって決定される第2の突起領域の開弁機能、換言すれば、上記安全弁の開弁圧を所望とする値に固定しつつ、安全弁のシール機能を向上させることが可能となる。これにより、安全弁として開弁機能とシール機能との好適な両立が図られるようになる。
【0015】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の密閉型電池において、前記突起は、円環状に形成されていることを要旨とする。
上記弁口とは通常、円柱状に形成されることが多く、上記構成によれば、上記突起が円環状に形成されることにより、弁口と第1及び第2の突起領域との距離をそれぞれ均等にすることができる。このため、弁口寄りに位置する突起領域と弁口との距離を全周に亘り均一にすることが可能となり、こうした突起領域にかかる内部圧力の均等化が図られるようになる。これにより、開弁圧のばらつきやシール性のばらつきを抑制することができるようになり、より安定動作する安全弁が実現可能となる。
【0016】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の密閉型電池において、前記突起の前記弁体の軸方向の断面において、第1の突起領域の曲率半径は、前記第2の突起領域の曲率半径以上であることを要旨とする。
【0017】
上記構成によれば、弁体の軸方向の断面において、第1の突起領域の曲率半径が第2の突起領域の曲率半径以上に形成されることにより、同断面における第1の突起領域のシール長(l)は、第2の突起領域のシール長(l)よりも自ずと大きくなる。これにより、第1の突起領域のシール長(l)が拡大される分だけ、同第1の突起領域でのシール機能が向上されるようになる。
【0018】
また上記構成によれば、第2の突起領域が、弁体の軸方向の断面において、その曲率半径が第1の突起領域の曲率半径よりも小さく形成される。これにより、第2の突起領域の形状が第1の突起領域の形状よりも急峻な形状となり、第2の突起領域と弁体との間での単位面積当たりの面圧の向上が促される。
【0019】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載の密閉型電池において、前記突起の前記弁体の軸方向の断面における前記第1の突起領域の曲率半径は、同断面における前記第2の突起領域の曲率半径をRとするとき、

「1×R」〜「10/3×R」

の範囲で形成されていることを要旨とする。
【0020】
シール機能を担う突起はその断面の曲率半径が小さすぎると同シール突起に当接される弁体の耐久性が悪化し、経年に伴って漏れ量が増加する。また、開弁機能を担う突起は、その断面の曲率半径が大きすぎると開弁圧のばらつきが大きくなる傾向にある。この点、上記構成によれば、上記条件のもとに第1の突起領域及び第2の突起領域を形成することにより、曲率半径の異なる突起によって第1及び第2の突起領域を形成する上で、シール突起と弁体との接触部分での耐久性の確保と、開弁圧の均等化との両立を図ることができるようになる。
【0021】
請求項5に記載の発明は、請求項1〜4のいずれか一項に記載の密閉型電池において、前記第1の突起領域及び前記第2の突起領域は2つの各別の突起からなることを要旨とする。
【0022】
上記構成によれば、第1の突起領域及び第2の突起領域にはそれぞれ、各別の2つの突起が形成される。そして、第2の突起領域に形成された突起によって開弁機能が担保されるとともに、第1及び第2の突起領域に各々形成された各突起と弁体との間で維持されるシール性によって安全弁のシール機能が担保される。これにより、シール機能及び開弁機能の要求に応じた安全弁の形状選定にかかる自由度が高められるようになる。
【0023】
請求項6に記載の発明は、請求項1〜5のいずれか一項に記載の密閉型電池において、前記第2の突起領域の前記弁体の軸方向における突出長は、前記第1の突起領域の前記弁体の軸方向における突出長よりも長いことを要旨とする。
【0024】
上記構成によるように、第2の突起領域の弁体の軸方向における突出長を、第1の突起領域の弁体の軸方向における突出長よりも長く形成することで、第2の突起領域が弁体の底面に積極的に圧接されることとなる。このため、各領域の突出長の調整を通じて、第2の突起領域と弁体との単位面積当たりの面圧を、第1の突起領域と弁体との単位面積当たりの面圧よりも高くすることが可能となる。
【0025】
請求項7に記載の発明は、請求項1〜6のいずれか一項に記載の密閉型電池において、当該密閉型電池は、ニッケル水素蓄電池からなることを要旨とする。
本発明は、請求項7にかかるように、高精度な圧力管理やシール性が要求されるニッケル水素蓄電池を構成する安全弁に適用して特に有効であり、上記構成によれば、開弁機能とシール機能とを好適に両立可能な信頼性の高いニッケル水素蓄電池を実現することが可能となる。
【0026】
請求項8に記載の発明は、正極および負極を有する極板群が収容された電槽に連通する弁口を有する収容部を備えた弁ケースと、前記収容部に収容される弁体と、該弁体を前記弁口に設けられた弁座に押し付けることにより前記弁口を封止する弁蓋とによって構成される復帰式の安全弁であって、前記弁座には、前記弁体側に突出する環状の突起が形成されてなるとともに、該突起には、前記弁体の軸方向の断面において該突起の縁部の形状の曲率半径が互いに異なる第1の突起領域と第2の突起領域との2つの領域が前記弁口の周回方向に並行して設けられており、前記第2の突起領域の外周側に前記第1の突起領域の少なくとも一部が設けられてなり、前記第2の突起領域における前記弁体との単位面積当たりの面圧は、前記第1の突起領域における前記弁体との単位面積当たりの面圧よりも高いことを要旨とする。
【0027】
上記構成によれば、安全弁の弁座には、弁体の軸方向の断面において縁部の形状の曲率半径が互いに異なる第1の突起領域と第2の突起領域とを有した環状の突起が設けられる。そして、第2の突起領域における弁体との単位面積当たりの面圧が第1の突起領域における弁体との単位面積当たりの面圧よりも高く形成されたことによって、第2の突起領域に当接される弁体の部分の圧縮力が高まる。そのため、第2の突起領域と弁体との密着状態が維持されることにより、内部圧力が或る設定値に到達するまでは、電槽に連通する安全弁の弁口の封止状態が維持される。一方、内部圧力が異常上昇し、この内部圧力が第2の突起領域と弁体との面圧を超えるような圧力(開弁圧)に達すると、その開弁圧により弁体が弾性収縮して開放作動する。すなわち、第2の突起領域と弁体との単位面積当たりの面圧が第1の突起領域と弁体との単位面積当たりの面圧よりも高く設定されているために、弁体が開放作動するときの開弁圧は第2の突起領域と弁体との面圧によって決定される。このように上記構成では、上記突起のうちの第2の突起領域によって、安全弁に要求される開弁機能が担保される。
【0028】
また、上記安全弁のシール機能は、第2の突起領域間の長さ(例えば、頂点間の長さ)を「L」、弁体から第2の突起領域への荷重を「F」、弁体の軸方向における第2の突起領域のシール長を「l」とし、この第2の突起領域の外側に設けられた第1の突起領域間の長さ(例えば、頂点間の長さ)を「L」、弁体から第1の突起領域への荷重を「F」、弁体の軸方向における第1の突起領域のシール長を「l」とするとき、以下の式(3)と相関がある。
【0029】

/L+l/L …(3)

すなわち、安全弁のシール機能は、安全弁として必要不可欠な開弁機能を担保する第2の突起領域によるシール機能(l/L)に、さらに、同第2の突起領域とは各別の領域である第1の突起領域によるシール機能(l/L)が加算されたものとなる。これにより、上記構成によれば、第1の突起領域によるシール機能が加算される分だけ、安全弁のシール機能が向上されるようになる。
【0030】
また、このように、第1の突起領域と第2の突起領域との各別の領域によって上記突起が構成されることから、安全弁の開弁機能を担保する第2の突起領域とは別の領域、すなわち第1の突起領域のシール長lや同第1の突起領域間の長さLのみを拡大することによって、安全弁のシール機能を向上させることが可能である。よって、上記式(1)によって決定される第2の突起領域の開弁機能、換言すれば、上記安全弁の開弁圧を所望とする値に固定しつつ、安全弁のシール機能を向上させることが可能となる。これにより、安全弁として開弁機能とシール機能との好適な両立が図られるようになる。
【発明の効果】
【0031】
本発明にかかる密閉型電池及び安全弁によれば、要求されるシール機能と開弁機能との好適な両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の安全弁を有する密閉型電池を具体化した第1の実施形態について、(a)はその平面構造を示す平面図、(b)はその側面構造を示す側面図。
【図2】同実施形態の電池モジュールの蓋体について、その斜視構造を示す斜視図。
【図3】同実施形態の電池モジュールの蓋体について示す図であり、(a)はその平面構造を示す平面図、(b)はその側面構造を示す側面図、(c)はその側面から見た断面構造を示す断面図。
【図4】同実施形態の電池モジュールの蓋体に設けられる安全弁の構造を示す拡大図であり、(a)は同安全弁を側面から見た断面構造を示す断面図。(b)は、(a)の突起の部分拡大図。
【図5】本発明の安全弁を有する密閉型電池を具体化した第2の実施形態について電池モジュールの蓋体に設けられる安全弁の構造を示す拡大図であり、(a)は同安全弁を側面から見た断面構造を示す断面図。(b)は、(a)の突起の部分拡大図。
【図6】本発明の安全弁を有する密閉型電池を具体化した第3の実施形態について、電池モジュールの蓋体の斜視構造を示す斜視図。
【図7】同実施形態の電池モジュールの蓋体について示す図であり、(a)はその平面構造を示す平面図、(b)はその側面構造を示す側面図、(c)はその側面から見た断面構造を示す断面図。
【図8】本発明の安全弁を有する密閉型電池を具体化した他の実施形態について、突起の部分拡大構造を示す断面図。
【図9】本発明の安全弁を有する密閉型電池を具体化した他の実施形態について、突起の部分拡大構造を示す断面図。
【図10】従来の安全弁の断面構造を示す断面図。
【図11】従来の安全弁について、図10の領域aに相当する部分の拡大構造を示す断面図。
【発明を実施するための形態】
【0033】
(第1の実施の形態)
以下、本発明にかかる復帰式の安全弁を有する密閉型電池の第1の実施の形態について、図1〜図4を参照して説明する。
【0034】
図1(a)に示すように、電池モジュールは、所要の電力容量を得るべく複数(例えば6個)の密閉型電池としての単電池140を電気的に直列接続して構成される。電池モジュールは、複数の個別の直方体状からなる単電池140を最も表面積の広い面(長側面)を縦に見てその側面にあたる短側面同士が互いに対向するように配列した構造となっている。すなわち、この電池モジュールは、例えばニッケル水素蓄電池からなる単電池140を6個連結することにより構成されている。
【0035】
電池モジュールは樹脂製であり、図1(b)に示すように、上部開口を有する樹脂製の一体電槽100と、一体電槽100の上部開口を封止する樹脂製の蓋体200とにより構成されている。一体電槽100には、正極板、負極板、セパレータ、集電板及び電解液などからなる発電要素等を収容する、6個の電槽141が設けられており、一体電槽100の上面開口が蓋体200により封止されることによりそれら電槽141がそれぞれ非連通状態に密閉区画される。なお、各電槽内の発電要素は、単電池140の充放電に伴い生じる化学反応により水素や酸素などのガスを発生させたり、逆に吸収したりする。このようなことから、過度な化学反応などが生じた際、同反応によりガスが過度に発生するようなおそれもある。
【0036】
電池モジュールの長手方向の両側面には、それぞれ外部端子120、130が設けられている。外部端子120と外部端子130との間には、単電池140が直列接続されていることから、6個の単電池140の総出力がこれら外部端子120,130から取り出される。
【0037】
電池モジュールの蓋体200には、電池モジュールの内部温度を検出するためのセンサを装着するセンサ装着穴201が設けられている。
また、本実施の形態の電池モジュールの蓋体200は、その分解構造を図2に示すように、密閉区画された6つの電槽141の内部圧力を管理する安全弁としての機能を有しており、電池モジュールの一体電槽100に接合される弁ケース210と同弁ケース210に取り付けられる弁カバー220(弁蓋)とを備えて構成されている。
【0038】
弁ケース210には、底面に弁口を有した筒状の6つの弁体収容部211が、上記電槽141の各々に対応して設けられている。各弁体収容部211には、ゴム状弾性体により構成される6つの弁体230がそれぞれ収容される。また、弁ケース210の上面には、弁カバー220が係合される弁カバー収容溝212が形成されている。そして、各弁体230が弁体収容部211にそれぞれ収容された状態で、弁カバー収容溝212に弁カバー220が係合されるようになっている。
【0039】
すなわち、蓋体200の平面構造及び側面構造を図3(a)及び図3(b)に示すように、電池モジュールの使用状態において、弁ケース210の上面には、弁カバー220が装着されるようになっている。また、図3(a)のA−A線における断面構造を図3(c)に示すように、弁ケース210の弁体収容部211は、同弁体収容部211に各弁体230を収容した状態で、弁カバー220によって封止されるようになっている。
【0040】
このような蓋体200により構成される安全弁は、対応する電槽141の内部圧力が、電池モジュール(電槽)の耐圧以下の圧力ではあるとともに、通常使用時の内部圧力を超過する圧力である異常圧力になった場合に開放作動して、電槽内の異常圧力を開放させるものである。これにより、蓋体200により封止された各単電池140の電槽141は、その内部圧力が異常圧力になったとき、安全弁が開放作動して異常圧力が開放され、その内部圧力が電槽の耐圧を超えることが防止されるようになっている。
【0041】
次に、本実施の形態の安全弁の構造について図4(a)及び図4(b)を参照して詳述する。
図4(a)に、例えば図3(c)の領域bに相当する部分の拡大構造を示すように、弁体収容部211は円筒状をなしており、その底面には、弁体収容部211の中心Oを中心として形成された円柱状の弁口213が設けられている。本実施の形態の弁口213の穴径は、例えば成形の容易性を考慮して約「1.0mm」以上に形成されている。また、弁体収容部211の内側壁には、弁体230を側面から支持する複数のリブ211aが弁体230に向かって突出形成されている。そして、弁体230は、弁体収容部211に収容されたとき、各リブ211aにより側面から支持されることにより弁体収容部211内に固定される。また、弁体230の高さは、弁体収容部211の深さよりも高く設定されている。
【0042】
弁体収容部211の底面であって弁口213の周囲には、弁体230をその底面側から支持する弁座214が設けられている。そして、この弁座214に弁体230が配置された状態で上記弁カバー収容溝212に弁カバー220が装着されることにより、弁体230が圧縮して弁口213が封止されるようになっている。
【0043】
また、本実施の形態の弁座214には、その拡大構造を図4(b)に示すように、弁口213の内周縁から弁体230側に突出する突起215が形成されている。突起215は、弁口213の中心Oを中心とした円環状に形成されており、弁体230の軸方向の断面において該突起215の縁部の形状の曲率半径が互いに異なる第1の突起領域R1と第2の突起領域R2との2つの領域を有している。これら第1の突起領域R1及び第2の突起領域R2は、それぞれ、弁口213の周回方向に並行するかたちで形成されている。これにより、突起215が形成される領域は、弁口213に直交する断面における中心Orから2分割されている。
【0044】
本実施の形態の突起215は、断面がそれぞれ曲率半径の異なる2つの複合突起として形成されており、突起215の弁体230の軸方向の断面において、第1の突起領域R1の曲率半径が第2の突起領域R2の曲率半径以上となるように形成されている。詳述すると、第1の突起領域R1の曲率半径は、「0.3mm」〜「1.0mm」の範囲で形成されている。これにより、第1の突起領域R1でのシール機能が、同第1の突起領域R1に当接される弁体230の耐久性を考慮した上で最大限発揮されるようになっている。さらに、突起215の弁体230の軸方向の断面における第1の突起領域R1の曲率半径は、同断面における第2の突起領域R2の曲率半径をRとするとき、

「1×R」〜「10/3×R」

の範囲で形成されることとなる。これにより、開弁圧を好適に維持できる。
【0045】
また、突起215は、第2の突起領域R2の弁体230の軸方向における突出長H2が第1の突起領域R1の同軸方向における突出長H1よりも長く形成されている。すなわち、突起215の頂点が、第2の突起領域R2に位置する構造となる。これにより、突起215の頂点は、同突起215の形成領域の中心Orよりも内周寄り、すなわち同中心Orよりも弁口213寄りに位置することとなる。突起215の頂点から弁口213の中心Oまでを半径とするシール径の直径は、約「2.5mm」以下となるように形成されている。このように本実施の形態では、突起215の頂点が突起215の形成領域の中心Orよりも内周側に形成されたことで、シール径の縮小化が図られており、突起215(弁口213)の周回方向におけるシール径の周長が必要最小限の長さに規定される。これにより、突起215と弁体230との間で維持されるシール性の向上が図られている。
【0046】
そして、このように構成される突起215では、第1の突起領域R1の曲率半径が第2の突起領域R2の曲率半径以上となるように形成されたことにより、突起215の第1の突起領域R1における断面形状は第2の突起領域R2の断面形状よりも緩やかな傾斜面をなす。これに対し、突起215の第2の突起領域R2における断面形状は、第1の突起領域R1における断面形状よりも急峻な傾斜面をなす。これにより、弁体230の軸方向の断面において、突起215の第1の突起領域R1における弁体230の底面との接触長さである第1のシール長lは、突起215の第2の突起領域R2における弁体230の底面との接触長さである第2のシール長lよりもさらに長くなる。よって、第1のシール長lが拡大された分だけ、上記式(3)によって決定される安全弁のシール機能が向上されるようになる。
【0047】
一方、突起215の第2の突起領域R2における弁体230の底面との単位面積当たりの面圧は、第2の突起領域R2における断面形状が急峻で第2の突起領域R2の突出長H2が第1の突起領域R1の突出長H1よりも長く形成されたことにより、第2の突起領域R2における弁体230の底面との単位面積当たりの面圧は、第1の突起領域R1における弁体230の底面との単位面積当たりの面圧よりも確実に高められることとなる。
【0048】
以下、本実施の形態の安全弁の作用を図4(b)を参照して説明する。
図4(b)に示すように、弁体収容部211に弁体230が収容された状態で弁カバー220が弁カバー収容溝212に装着されると、弁体230の底面は、弁座214に形成された突起215に押し付けられる。これにより、弁体230の底面形状が突起215の形状に応じて弾性変形することにより、弁体230の底面と突起215とが密着して弁口213が封止される。こうして、各電槽141では、その密閉状態が維持されることにより、電槽141内部のガスや電解液の漏出が抑制される。
【0049】
なおこのとき、開弁機能を担う第2の突起領域R2とは別の領域として、さらに第1の突起領域R1が突起215に形成されていることにより、突起215と弁体230との間でのシール機能が第1の突起領域R1が形成された分だけ高められている。このため、たとえ、開弁機能を担う第2の突起領域R2と弁体230との間から電槽141内のガスや電解液が漏出するようなことがあっても、第2の突起領域R2の外周に形成された第1の突起領域R1と弁体230との間で維持されるシール機能によって電槽141内部のガスや電解液が漏出することが的確に抑止される。
【0050】
一方、電槽141の内部圧力が異常上昇し、突起215と弁体230との面圧によって定まる開弁圧に達すると、弁体230が弾性変形して開放作動する。これにより、電槽141で発生したガスは、弁口213、弁体収容部211の隙間、弁カバー220を順に介して電池モジュール外部へと排出される。
【0051】
なおこのとき、弁体230が開放作動するときの開弁圧は、突起215の第2の突起領域R2と弁体230との面圧と相関がある。すなわち、突起215の第2の突起領域R2と弁体230との単位面積当たりの面圧が、第1の突起領域R1と弁体230との単位面積当たりの面圧よりも高いことにより、電槽141の内部圧力が第2の突起領域R2と弁体230との面圧に到達するまでの間、弁体230は開放作動せず、電槽141の密閉状態が維持される。そして、本実施の形態では、こうした突起215の第2の突起領域R2により、弁体230との面圧を十分に高めることが可能となり、開弁圧を所望とする設定値まで高めるとともに、同開弁圧を設定値に的確に維持することが可能となっている。また、本実施の形態では、突起215が弁口213の中心Oを中心として円環状に形成されたことにより、弁口213の中心Oから突起215の第2の突起領域R2までの距離は、全周に亘って均等な構成となる。このため、突起215の第2の突起領域R2にかかる圧力を全面に亘って均等にすることが可能となり、突起215の第2の突起領域R2による開弁圧の均等化が図られるようになる。これにより、弁体230の開放作動が、所望とする設定値(開弁圧)で安定して行われるようになる。さらに本実施の形態では、第2の突起領域R2が第1の突起領域R1よりも内周側に形成されたことにより、弁体230が開放動作する際、弁体230の底面のうちの第2の突起領域R2に接する部分によって囲まれる領域で弁体230が弾性変形する。このため、弁体230の底面のうち、第1の突起領域R1(第2の突起領域R2の外側部分)と接触する部分においては弾性変形が小さく、弁体230と第1の突起領域R1との密閉状態が的確に維持される。
【0052】
本実施の形態では、このように電槽141の内部圧力が開弁圧よりも低いときは、弁体230と突起215の第1の突起領域R1との間で維持されるシール機能によって電槽141の密閉状態が維持され、電槽141の内容物が漏出することが抑制される。さらに、突起215が第1の突起領域R1と第2の突起領域R2との二重構造となっていることも相まって、電槽141の内容物が漏出することが確実に抑制されるようになっている。そして、こうした電槽141の密閉状態は、電槽141の内部圧力が突起215の第2の突起領域R2と弁体230との面圧により定まる開弁圧に到達するまで維持されることとなる。このように本実施の形態では、要求される開弁機能を維持しつつ、シール機能を好適に向上させることが可能となる。
【0053】
そして、電槽141の内部圧力が開弁圧に到達したのち、弁体230の開放作動を通じて電槽141の内部圧力が開弁圧未満に低下して以降は、弁体230の形状が復元することにより、電槽141の密閉状態が再び維持されることとなる。
【0054】
以上説明したように、本実施形態の密閉型電池及び安全弁によれば、以下の効果が得られるようになる。
(1)上記突起215を、弁体230の軸方向の断面において該突起215の縁部の形状の曲率半径が互いに異なる第1の突起領域R1と第2の突起領域R2とによって構成した。そして、第2の突起領域R2における弁体230との単位面積当たりの面圧を、第1の突起領域R1における弁体230との単位面積当たりの面圧よりも高く設定した。よって、安全弁に要求される開弁機能が突起215の第2の突起領域R2にて担保されるとともに、第1の突起領域R1と第2の突起領域R2との2つの領域によって安全弁のシール機能が担保される。これにより、安全弁の開弁機能を維持しつつ、シール機能を向上させることが可能となる。
【0055】
(2)第2の突起領域R2を、第1の突起領域R1よりも内周側に形成した。これにより、突起215の第2の突起領域R2と弁体230との間での面圧によって定まる開弁圧を容易かつ的確に調整し、第1の突起領域R1が開弁圧に達するまでシール機能向上の役割を確実に果たすことができる。
【0056】
(3)突起215を、円環状に形成することとした。このため、弁口213寄りに形成された第2の突起領域R2にかかる圧力の均等化が促されるようになり、ひいては、開弁圧の均等化が図れるようになる。
【0057】
(4)突起215を、弁口213に直交する断面がそれぞれ曲率半径の異なる2つの複合突起として形成した。そして、突起215の弁体230の軸方向における断面において、第1の突起領域R1の曲率半径を、第2の突起領域R2の曲率半径以上とした。これにより、曲率半径が相違するかたちで形成された第1の突起領域R1及び第2の突起領域R2によって、弁体230との間での面圧を異ならしめることが可能となる。また、これにより、開弁機能を担わない領域、すなわち、第1の突起領域R1のシール長lが拡大されることとなり、ひいては、この拡大されたシール長lに比例して安全弁のシール機能が高められるようになる。
【0058】
(5)突起215において、第2の突起領域R2の弁体230の軸方向における突出長H2を、第1の突起領域R1の同軸方向における突出長H1よりも長くした。これにより、第2の突起領域R2における弁体230との単位面積当たりの面圧を、それらの接触面積とは異なる要素によって向上させることが可能となり、より自由度の高い開弁圧の設定が可能となる。またこれにより、第2の突起領域R2と弁体230との単位面積当たりの面圧を、第1の突起領域R1と弁体230との単位面積当たりの面圧よりも確実に高めることが可能となる。すなわち、安全弁としての開弁機能を第2の突起領域R2に安定して担保させることが可能となる。
【0059】
(6)密閉区画された複数の電槽141によって上記電槽を構成し、複数の電槽141の各々に対して上記安全弁を設けた。これにより、密閉区画された各電槽141を単位として、安全弁による圧力管理と密閉状態の確保とを実現することができるようになる。
【0060】
(7)上記安全弁を備える密閉型電池として、ニッケル水素蓄電池を採用することとした。これにより、より高精度な圧力管理や的確な密閉状態の確保が要求されるニッケル水素蓄電池であっても、上記安全弁による開弁機能とシール機能との好適な両立を通じて、より信頼性の高いニッケル水素蓄電池を実現することが可能となる。
【0061】
(第2の実施の形態)
以下、本発明にかかる密閉型電池及び安全弁を具体化した第2の実施の形態について図5(a)及び図5(b)を参照して説明する。なお、この第2の実施の形態は、上記第1の突起領域R1及び第2の突起領域R2を2つの各別の突起によって構成したものであり、その基本的な構成は先の第1の実施の形態と共通になっている。
【0062】
図5は、先の図4に対応する図として、この第2の実施の形態にかかる安全弁の断面構造を示したものである。なお、この図5において、先の第1の実施の形態に示した各要素と同一の要素についてはそれぞれ同一の符号を付して示しており、それら要素についての重複する説明は割愛する。
【0063】
図5(a)に示すように、本実施の形態の突起216は、2つの突起216a及び216bによって構成されており、それら突起216a及び216bが弁口213の中心Oを中心として円環状に形成されている。突起216は、その拡大構造を図5(b)に示すように、第1の突起領域R1に突出形成された第1突起216aと、第2の突起領域R2に突出形成された第2突起216bとによって構成されている。そして、第2の突起領域R2に形成される第2突起216bの弁体230の軸方向における突出長H2は、第1の突起領域R1に形成された第1突起216aの弁体230の軸方向における突出長H1よりも長く形成されている。これにより、突出長が長く形成された第2突起216bと弁体230との単位面積当たりの面圧が、第1突起216aと弁体230との単位面積当たりの面圧よりも確実に高くなるように調整されている。すなわち、本実施の形態では、第2突起216bが安全弁としての開弁機能を担っており、この第2突起216bと弁体230との面圧によって弁体230が開放作動するときの開弁圧が決定される。
【0064】
なお、本実施の形態の突起216は、弁体230の軸方向の断面における第1突起216aの曲率半径と第2突起216bの曲率半径とが近似するものの、各曲率半径が互いに異なるかたちで形成されている。そして、本実施の形態においても、安全弁として開弁機能を担保する第2突起216bとは各別の突起、すなわち第1突起216aが突起216に形成されたことにより、同第1突起216aが追加された分、安全弁としてのシール機能が高められている。
【0065】
以下、本実施の形態の安全弁の作用を図5(b)を参照して説明する。
図5(b)に示すように、弁体収容部211に弁体230が収容された状態で弁カバー220が弁カバー収容溝212に装着されると、弁体230の底面は、弁座214に形成された突起216に押し付けられる。これにより、弁体230の底面形状が第1突起216a及び第2突起216bの各形状に応じて弾性変形することにより、弁体230の底面と第1突起216a及び第2突起216bとが密着して弁口213が封止される。こうして、各電槽141では、その密閉状態が維持されることにより、電槽141内部のガスや電解液の漏出が抑制される。
【0066】
なおこのとき、開弁機能を担う第2突起216bとは各別の突起として第1突起216aが、開弁圧に達するまで弾性変形が小さい第2突起216bの外周側に形成されていることにより、突起216と弁体230との間でのシール機能は、第2突起216bと第1突起216aとの2つの部材によって担保される。このため、たとえ、弁口213寄りに位置する第2突起216bと弁体230との間から電槽141内のガスや電解液が漏出するようなことがあっても、第1突起216aと弁体230との間で維持されるシール機能によって電槽141内部のガスや電解液が漏出することが的確に抑止される。
【0067】
一方、電槽141の内部圧力が異常上昇し、第2突起216bと弁体230との面圧によって定まる開弁圧に達すると、弁体230が弾性変形して開放作動する。これにより、電槽141で発生したガスは、弁口213、弁体収容部211の隙間、弁カバー220を順に介して電池モジュール外部へと排出される。
【0068】
また、本実施の形態でも、第1突起216a及び第2突起216bが弁口213の中心Oを中心として円環状に形成されたことにより、弁口213の中心Oから第2突起216bまでの距離は、全周に亘って均等になる。このため、第2突起216bにかかる圧力を全面に亘って均等にすることが可能となり、第2突起216bによる開弁圧の均等化が図られるようになる。これにより、弁体230の開放作動が、所望とする設定値で安定して行われるようになる。さらに本実施の形態でも、第2突起216bが第1突起216aよりも内周側に形成されたことにより、弁体230が開放動作する際、弁体230の底面のうちの第2突起216bに接する部分によって囲まれる領域で、弁体230が弾性変形する。このため、弁体230の底面のうち、第1突起216aと接触する部分においては、弁体230と同第1突起216aとの密閉状態が的確に維持される。
【0069】
本実施の形態では、このように電槽141の内部圧力が開弁圧よりも低いときは、弁体230と第1突起216aとの間で維持されるシール機能によって、電槽141の密閉状態が維持され、電槽141の内容物が漏出することが抑制される。さらに、突起216が第1突起216aと第2突起216bとの二重構造となっていることも相まって、電槽141の内容物が漏出することが確実に抑制されるようになっている。そして、こうした電槽141の密閉状態は、電槽141の内部圧力が第2突起216bと弁体230との面圧により定まる開弁圧に到達するまで維持されることとなる。このように本実施の形態においても、要求される開弁機能とシール機能との双方を高めつつ、それら開弁機能及びシール機能の両立を図ることができるようになる。
【0070】
そして、電槽141の内部圧力が開弁圧に到達したのち、弁体230の開放作動を通じて電槽141の内部圧力が開弁圧未満に低下して以降は、弁体230の形状が復元することにより、電槽141の密閉状態が再び維持されることとなる。
【0071】
以上説明したように、本実施形態の密閉型電池及び安全弁によれば、前記(1)〜(3)、(5)〜(7)に準じた効果が得られるとともに、前記(4)に代えて以下の効果が得られるようになる。
【0072】
(4A)上記突起を、第1の突起領域R1及び第2の突起領域R2にそれぞれ対応する各別の第1突起216a及び第2突起216bによって構成した。これにより、第2突起216bのシール長や直径を変更することなく、換言すれば、それらシール長や直径によって変化する第2突起216bの開弁機能を固定しつつも、安全弁としてのシール機能を向上させることが可能となる。また、これにより、シール機能及び開弁機能の要求に応じた安全弁の形状選定にかかる自由度が高められるようになる。
【0073】
(第3の実施の形態)
以下、本発明にかかる密閉型電池及び安全弁を具体化した第3の実施の形態について図6及び図7を参照して説明する。なお、この第3の実施の形態は、上記密閉型電池として上記電槽が連通されている密閉型電池を採用したものであり、その基本的な構成は先の第1の実施の形態と共通になっている。
【0074】
図6及び図7は、先の図2及び図3に対応する図として、この第3の実施の形態にかかる安全弁の構成例を示したものである。なお、これら図6及び図7において、先の第1の実施の形態に示した各要素と同一の要素についてはそれぞれ同一の符号を付して示しており、それら要素についての重複する説明は割愛する。
【0075】
図6に示すように、本実施の形態の密閉型電池の蓋体200Aは、電池モジュール内の電槽に連通するとともに、1つの安全弁300が取り付けられる連通口210Aを有している。
【0076】
本実施の形態の安全弁300は、連通口210Aに係合されることにより蓋体200Aに装着される弁ケース310と、同弁ケース310に係合される弁カバー320とによって構成されている。なお、本実施の形態の安全弁300も、例えば樹脂によって形成されている。
【0077】
弁ケース310は、ゴム状弾性体によって構成される弁体330を収容する筒状の弁体収容部311を備えている。弁体収容部311の内側壁には、弁体330をその側面から支持する複数のリブ311aが突出形成されている。また、弁ケース310には、底面が円形上の弁カバー320を収容する円形状の弁カバー収容溝312が形成されている。また、弁ケース310の底面には、図示は省略するが電槽に連通する弁口が形成されている。
【0078】
そして、このように構成される安全弁300は、蓋体200Aの平面構造及び側面構造を図7(a)及び図7(b)に示すように、弁ケース310の弁体収容部311に弁体330を収容した状態で蓋体200Aの連通口210Aに装着される。これにより、図7(a)のA−A線における断面構造を図7(c)に示すように、弁ケース210は、弁体収容部211に各弁体230が収容された状態で、弁カバー220により封止されるようになっている。
【0079】
そして本実施の形態では、こうした安全弁300を構成する弁ケース310の弁体収容部311の底面に、弁体330をその底面から支持する突起として、弁体330との面圧が上記条件を満たす第1の突起領域及び第2の突起領域を有する突起が形成されている。すなわち、第2の突起領域における弁体330との単位面積当たりの面圧は、第1の突起領域における弁体330との単位面積当たりの面圧よりも高く設定されており、この第2の突起領域によって安全弁300の開弁機能が担保されている。
【0080】
このように本実施の形態でも、弁体収容部311の底面に設けられた第1の突起領域及び第2の突起領域を有する突起によって安全弁300に要求される開弁機能を維持しつつ、シール機能の向上が図られるようになる。
【0081】
以上説明したように、本実施形態の密閉型電池及び安全弁によれば、前記(1)〜(5)、(7)に準じた効果が得られるとともに、前記(6)に代えて以下の効果が得られるようになる。
【0082】
(6A)上記電槽を、連通する複数の電槽によって構成し、各電槽に連通する連通口210Aを備えた蓋体200Aに1つの安全弁300を設けた。これにより、たとえ電池モジュールを構成する各電槽が連通する構成であれ、1つの安全弁300のシール機能及び開弁機能の好適な両立が図れるようになる。また、これにより、上記突起を有した安全弁の汎用性が図られるようになる。
【0083】
(他の実施の形態)
なお上記各実施形態は、以下の態様で実施することもできる。
・上記第2の実施の形態では、密閉区画された複数の電槽141によって上記電槽を構成し、複数の電槽141の各々に対して上記安全弁を設けることとした。これに限らず、先の第3の実施の形態と同様、密閉型電池の電槽が連通する場合には、同電池の蓋体に各別の2つの突起を弁座に有する1つの安全弁を設けることとしてもよい。この場合にも、上記(4A)、(6A)に準じた効果を得ることができる。また、上記各実施の形態において、密閉区画された複数の単電池から構成される電池モジュールに対し、それら単電池の一部にだけ安全弁を設けてもよい。これにより密閉型電池における安全弁の設計自由度などの向上が図られるようになる。
【0084】
・上記各実施の形態では、第2の突起領域R2の弁体230の軸方向における突出長H2を、第1の突起領域R1の弁体230の軸方向における突出長H1よりも長くした。これに限らず、第2の突起領域R2の突出長H2と第1の突起領域R1の突出長H1と等しくすることや、第2の突起領域R2の突出長H2を、第1の突起領域R1の突出長H1よりも短くすることも可能である。この場合には例えば、第1の突起領域R1と弁体230との接触面積よりも第2の突起領域R2と弁体230との接触面積を小さくすることによって、第2の突起領域R2と弁体230との単位面積当たりの面圧を、第1の突起領域R1と弁体230との単位面積当たりの面圧よりも高くする。
【0085】
・上記第1及び第3の実施の形態では、上記突起を、弁体230の軸方向における断面がそれぞれ曲率半径の異なる2つの複合突起215として形成した。また、上記第2の実施の形態では、上記突起の第1の突起領域R1及び第2の突起領域R2を2つの各別の突起216a及び216bによって構成した。これに限らず、先の図4及び図5に対応する図として、例えば図8に示すように、上記突起を、弁口213の内周縁の直上に頂点217bを有する断面三角形状の突起217によって構成するようにしてもよい。この場合には、曲率半径が無限大となる傾斜面217aが形成される領域が第1の突起領域R1、頂点217bが形成される領域が第2の突起領域R2となる。そして、同構成によっても、急峻な形状をなす第2の突起領域R2(頂点217b)と弁体230との単位面積当たりの面圧が、第2の突起領域R2よりも緩やかな形状をなす第1の突起領域R1(傾斜面217a)と弁体230との単位面積当たりの面圧よりも高くなる。すなわち、第2の突起領域R2(頂点217b)によって安全弁の開弁機能が担保される。また、この突起217によれば、第1の突起領域R1(傾斜面217a)と弁体230との接触長さであるシール長が、第2の突起領域R2(頂点217b)と弁体230との接触長さであるシール長よりも大幅に大きくなる。すなわち、開弁機能を担う第2の突起領域R2(頂点217b)と弁体230との間での密閉状態を維持しつつも、頂点217bの外周側に形成された第1の突起領域R1(傾斜面217a)によって、安全弁としてのシール機能が大幅に高められることとなる。
【0086】
・また同様に、先の図4及び図5に対応する図として、例えば図9に示すように、上記突起を、弁体230の軸方向の断面において、所定の曲率半径のもとに突起の形成領域の全面に形成された第1突起218aと、同第1突起218aの頂点に同第1突起218aよりも小さく形成された第2突起218bとを備える突起218によって構成するようにしてもよい。この突起218であれ、第1突起218aの表面のうち第2突起218bの非形成領域を第1の突起領域R1、第2突起218bが形成される領域を第2の突起領域R2とするとき、第2の突起領域R2(第2突起218b)と弁体230との接触面積が、第1の突起領域R1と弁体230との接触面積よりも小さくなる。さらに、第2突起218bの頂点が、第1突起218aの頂点よりも高いために、第2の突起領域R2と弁体230との単位面積当たりの面圧は、第1の突起領域R1と弁体230との単位面積当たりの面圧よりも確実に高められる。またこの場合には、弁体230の軸方向の断面において、第1の突起領域R1のうち第2の突起領域R2より外側の領域において弁体230と接触することにより、第2の突起領域R2による安全弁の開弁機能を維持しつつ、第1の突起領域R1と弁体230との密着状態により安全弁のシール機能が大幅に高められるようになる。またこの他、上記突起とは、弁口213の周回方向に並行する第1の突起領域と第2の突起領域との2つの領域を有して形成されるとともに、それら各領域における弁体との単位面積当たりの面圧が相違するように設定された形状を有するものであればよい。
【0087】
・上記突起を、弁口213の上面から見たときに円環状となるかたちで形成した。これに限らず、上記突起を、弁口213を上面から見たとき、例えば多角形状となるかたちで形成してもよい。またこの他、上記突起とは、弁口213の周囲に環状に形成されるものであればよく、シール機能と開弁機能とを両立することができれば任意の形状とすることができる。
【0088】
・上記各実施形態では、電池モジュールが樹脂製、すなわち一体電槽100と蓋体200とが樹脂製である場合について例示したが、これに限らず、一体電槽や蓋体は、金属などの樹脂以外の材料により形成されていてもよい。これにより、安全弁を有する電池モジュールの種類を拡大させることができるようになる。また、第3の実施の形態では、1つの安全弁300が樹脂製である場合について例示したが、これに限らず、安全弁300は、金属などの樹脂以外の材料により形成されていてもよい。
【0089】
・上記各実施の形態では、安全弁の材質と蓋体200の材質とが同じである場合について例示したが、これに限らず、安全弁の材質と蓋体の材質とが異なってもよい。この場合、異なる材料を一体形成したり、蓋体に安全弁を取り付けるようにしてもよい。これにより安全弁の設計自由度が高められるようになる。
【0090】
・上記各実施形態では、6個の単電池140を電気的に直接接続して構成される電池モジュールについて例示した。しかしこれに限らず、電池モジュールを構成する単電池の数は、6個よりも少なくても、逆に6個よりも多くてもよい。これにより、安全弁が採用される電池モジュールの種類などが拡げられる。
【0091】
・上記各実施形態では、単電池を複数連結した電池モジュールに安全弁を設ける場合について例示したが、これに限らず、安全弁を、単電池1つだけからなる電池モジュールや、電池モジュール以外の単電池の電槽などに設けることもできる。これにより、安全弁の適用される電池の種類が多様な電池に拡げられる。
【0092】
・上記各実施形態では、ニッケル水素電池からなる電池モジュールである場合について例示したが、これに限らず、電池モジュールなどの電池としては、ニッケルカドミウム電池やリチウムイオン電池等の二次電池(蓄電池)であってもよい。これにより、この電池用端子と、それを用いた電池の適用範囲が拡げられる。
【0093】
・上記各実施形態では、電池が二次電池である場合について例示したが、これに限らず、電池は一次電池でもよい。
・上記各実施形態では、安全弁が密閉型電池に用いられる場合について例示したがこれに限らず、このような安全弁を、密閉型電池に準じ、内部圧力が異常に上昇するおそれがある密閉型の容器に用いることもできる。これにより、このような安全弁の採用可能性が高められるようになる。
【符号の説明】
【0094】
100…一体電槽、120…外部端子、130…外部端子、140…単電池、141…電槽、200…蓋体、200A…蓋体、201…センサ装着穴、210…弁ケース、210A…連通口、211…弁体収容部、211a…リブ、212…弁カバー収容溝、213…弁口、214…弁座、215…複合突起、216…突起、216a…第1突起、216b…第2突起、217…突起、217a…突起の傾斜面、217b…突起の頂点、218…突起、218a…第1突起、218b…第2突起、220…弁カバー、230…弁体、300…安全弁、310…弁ケース、311…弁体収容部、311a…リブ、312…弁カバー収容溝、320…弁カバー、330…弁体、R1…第1の突起領域、R2…第2の突起領域。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
正極および負極を有する極板群が収容された電槽に連通する弁口を有する収容部を備えた弁ケースと、前記収容部に収容される弁体と、該弁体を前記弁口に設けられた弁座に押し付けることにより前記弁口を封止する弁蓋とによって構成される復帰式の安全弁を備えた密閉型電池であって、
前記弁座には、前記弁体側に突出する環状の突起が形成されてなるとともに、該突起には、前記弁体の軸方向の断面において該突起の縁部の形状の曲率半径が互いに異なる第1の突起領域と第2の突起領域との2つの領域が前記弁口の周回方向に並行して設けられており、
前記安全弁において、前記第2の突起領域の外周側に前記第1の突起領域の少なくとも一部が設けられてなり、前記第2の突起領域における前記弁体との単位面積当たりの面圧は、前記第1の突起領域における前記弁体との単位面積当たりの面圧よりも高い
ことを特徴とする密閉型電池。
【請求項2】
前記突起は、円環状に形成されている
請求項1に記載の密閉型電池。
【請求項3】
前記突起の前記弁体の軸方向の断面において、第1の突起領域の曲率半径は、前記第2の突起領域の曲率半径以上である
請求項1または2に記載の密閉型電池。
【請求項4】
前記突起の前記弁体の軸方向の断面における前記第1の突起領域の曲率半径は、同断面における前記第2の突起領域の曲率半径をRとするとき、

「1×R」〜「10/3×R」

の範囲で形成されている
請求項3に記載の密閉型電池。
【請求項5】
前記第1の突起領域及び前記第2の突起領域は2つの各別の突起からなる
請求項1〜4のいずれか一項に記載の密閉型電池。
【請求項6】
前記第2の突起領域の前記弁体の軸方向における突出長は、前記第1の突起領域の前記弁体の軸方向における突出長よりも長い
請求項1〜5のいずれか一項に記載の密閉型電池。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の密閉型電池において、
当該密閉型電池は、ニッケル水素蓄電池からなる
ことを特徴とする密閉型電池。
【請求項8】
正極および負極を有する極板群が収容された電槽に連通する弁口を有する収容部を備えた弁ケースと、前記収容部に収容される弁体と、該弁体を前記弁口に設けられた弁座に押し付けることにより前記弁口を封止する弁蓋とによって構成される復帰式の安全弁であって、
前記弁座には、前記弁体側に突出する環状の突起が形成されてなるとともに、該突起には、前記弁体の軸方向の断面において該突起の縁部の形状の曲率半径が互いに異なる第1の突起領域と第2の突起領域との2つの領域が前記弁口の周回方向に並行して設けられており、
前記第2の突起領域の外周側に前記第1の突起領域の少なくとも一部が設けられてなり、前記第2の突起領域における前記弁体との単位面積当たりの面圧は、前記第1の突起領域における前記弁体との単位面積当たりの面圧よりも高い
ことを特徴とする安全弁。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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