説明

密閉型電池

【課題】電池ケースに設けられた貫通孔の封止部材による封止について、気密の長期間にわたる信頼性を高めることができる密閉型電池を提供すること。
【解決手段】密閉型電池100は、電池ケース110の貫通孔113eを外部から気密に封止する封止部材170を備える。この封止部材170は、外部から電池ケース110に固着された被覆部171と、貫通孔113e内に挿入された挿入部173と、電池ケース110の孔周囲部113f3に気密に圧接した環状圧接部175と、挿入部173と環状圧接部175との間にこれらと一体となって介在する介在部177とを有する。介在部177には、挿入部173の周囲を囲む環状の介在部凹溝177vが設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自身の内外を連通する貫通孔を有する電池ケースと、この電池ケース内に収容された電極体と、電池ケースの貫通孔を外部から気密に封止してなる封止部材とを備える密閉型電池に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、電解液を注入するための注液孔などの貫通孔が設けられた電池ケースと、この電池ケースに収容された電極体と、電池ケースの貫通孔を外部から気密に封止した封止部材とを備える密閉型電池が知られている。封止部材としては、例えば、金属製の蓋部材のみからなるものがある。この封止部材(金属蓋部材)915は、図23に示すように、自身の環状の周縁部915mを、電池ケース913のうち注液孔(貫通孔)913eの周囲を囲む環状の周囲部913mに、全周にわたり溶接して、注液孔913eを外部から(図23中、上方から)気密に封止する。
【0003】
しかしながら、この封止部材915では、封止部材915の周縁部915mを電池ケース913の周囲部913mに溶接する際、周囲部913mに付着していた電解液や溶接時の熱により蒸発した電解液に起因して、封止不良(溶接不良)を生じることがある。このため、封止部材915の全周溶接による注液孔913eの気密封止を確実に行うのが難しい。
【0004】
その他、図24に示すように、前述の金属蓋部材915に、ゴムからなる円板状の弾性部材926を接合した封止部材925を用いた密閉型電池がある。この封止部材925は、その弾性部材(弾性部)926を、電池ケース923のうち注液孔923eの周囲に設けた凹部923h内に嵌めて、注液孔923eを外部から(図24中、上方から)塞ぐ。そして、金属蓋部材(金属蓋部)金属蓋部915と電池ケース923との間で弾性部926を圧縮した状態で、金属蓋部915の周縁部915mを電池ケース923の周囲部923mに溶接し、弾性部926で注液孔923eを気密に封止する。なお、これに類似した密閉型電池が特許文献1に開示されている(特許文献1の図5等を参照)。
【0005】
この封止部材925では、弾性部926の径方向の寸法(図24中、左右方向の寸法)を、凹部923hの径方向の寸法と等しくし、弾性部926が凹部923hに隙間無く嵌合する形態としている。このため、弾性部926を金属蓋部915と電池ケース923との間で圧縮しても、弾性部926は径方向外側に膨張することができないので、弾性部926には、径方向外側から(凹部923hの側面から)も力が掛かる。これにより、弾性部926内には、厚み方向だけでなく、径方向にも応力も生じる。この状態では、弾性部926による気密を長期間にわたって保つのが難しい。特に、ハイブリッド自動車や電気自動車などの車載用の密閉型電池は、例えば10年以上の長期間にわたって使用されるため、気密を長期間にわたって保つことが望まれる。
【0006】
一方、この問題を解決するために、弾性部926の径方向の寸法を凹部923hの寸法よりも小さくし、弾性部926と凹部923hとの径方向の間に隙間を設ける形態とすることが考えられる。しかしながら、弾性部926を凹部923h内に配置する際に、その位置決めが難しくなるという問題が新たに生じる。
【0007】
また、図25に示すように、注液孔923e内に圧入される挿入部936と、この挿入部936と一体に繋がり挿入部936の周囲を囲む環状の環状圧接部937とを、金属蓋部915に接合した封止部材935も提案されている。この封止部材935は、その挿入部936を位置決めガイドとして利用することで、注液孔923eに対する封止部材935の位置決めを精度良く行うことができる。なお、これに類似した密閉型電池が特許文献2に開示されている(特許文献2の図2等を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2004−119329号公報
【特許文献2】特開2000−268811号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、挿入部936は、注液孔923eに圧入したときに径方向内側に圧縮されるので、挿入部936の周囲に一体に繋がった環状圧接部937も、径方向内側に引っ張られる。このため、環状圧接部937内には、厚み方向だけでなく、径方向にも応力が生じる。するとこの場合も、環状圧接部937による気密を長期間にわたって保つのが難しくなる。
【0010】
なお、挿入部936の径方向の寸法(図25中、左右方向の寸法)を小さくし、挿入部936を注液孔923eに圧入せずに、挿入部936と注液孔923eとの間に隙間ができる形態(遊嵌状)とした場合でも、挿入部936を注液孔923eに挿入する際、挿入部936の周方向の一部が注液孔923eに当接する(片当たりする)場合がある。すると、この当接部分において、挿入部936が径方向内側に圧縮され、これに伴い環状圧接部937が径方向内側に引っ張られるので、やはりこの場合も、環状圧接部937による気密を長期間にわたって保つのが難しくなる。
このように、従来の密閉型電池では、封止部材による注液孔等の貫通孔の封止について、気密を長期間にわたって保つことが難しかった。
【0011】
本発明は、かかる現状に鑑みてなされたものであって、電池ケースに設けられた貫通孔の封止部材による封止について、気密を長期間にわたって保つことができる(気密の長期信頼性が高い)密閉型電池を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するための本発明の一態様は、自身の内外を連通する貫通孔を有する電池ケースと、前記電池ケース内に収容された電極体と、前記貫通孔を外部から気密に封止してなる封止部材と、を備える密閉型電池であって、前記封止部材は、前記貫通孔を外部から覆い、前記電池ケースに固着された被覆部と、ゴム状弾性体からなり、前記被覆部のうち前記電池ケース側に位置する面である被覆部内側面から延びて前記貫通孔内に挿入された挿入部と、ゴム状弾性体からなり、前記被覆部内側面から前記挿入部の周囲を囲む形態で環状に延び、前記被覆部からの押圧により、前記電池ケースのうち前記貫通孔の周囲に位置する環状の孔周囲部に気密に圧接してなる環状圧接部と、を有し、前記挿入部と前記環状圧接部との間が相互に離間した形態、ゴム状弾性体からなり、前記被覆部内側面から環状に延び、前記挿入部と前記環状圧接部との間に介在し、これらと一体とされた介在部を有し、前記介在部に、前記挿入部の周囲を囲む環状の介在部凹溝を有する形態、及び、前記挿入部と前記環状圧接部とが直接繋がって一体とされてなり、前記挿入部のうち、前記貫通孔内に位置する孔内部よりも前記被覆部側に位置する基部に、前記基部の径方向にくびれた基部凹溝を有する形態、のいずれかとされてなる密閉型電池である。
【0013】
この密閉型電池では、電池ケースに設けられた貫通孔の封止部材による封止について、気密を長期間にわたって保つことができる。
【0014】
更に、上記の密閉型電池であって、前記挿入部は、前記貫通孔に圧入されて、前記貫通孔を密栓してなる密閉型電池とすると良い。
【0015】
更に、上記の密閉型電池であって、前記電池ケース内は、大気圧よりも減圧されてなる密閉型電池とすると良い。
【0016】
更に、上記のいずれかに記載の密閉型電池であって、前記被覆部は、互いに離間した複数のスポット溶接部により、自身の周縁部が前記電池ケースに溶接されてなる密閉型電池とすると良い。
【0017】
更に、上記のいずれかに記載の密閉型電池であって、前記環状圧接部の外部が、前記電池ケースの外部に連通してなり、前記環状圧接部は、自身の周方向の一部に、前記環状圧接部によるシール性能を、周方向の他の部位よりも低下させる凹部を有する密閉型電池とすると良い。
【0018】
更に、上記のいずれかに記載の密閉型電池であって、前記電池ケースは、前記貫通孔及び前記封止部材に近接した位置に、安全弁を有する密閉型電池とすると良い。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】実施形態1に係るリチウムイオン二次電池を示す縦断面図である。
【図2】実施形態1に係り、電極体を示す斜視図である。
【図3】実施形態1に係り、正極板及び負極板をセパレータを介して互いに重ねた状態を示す部分平面図である。
【図4】実施形態1に係り、ケース蓋部材、正極端子及び負極端子等を示す分解斜視図である。
【図5】実施形態1に係り、注液孔及び封止部材の近傍を示す部分拡大縦断面図である。
【図6】実施形態1に係り、図5の上方から見た、封止部材の近傍を示す部分拡大平面図である。
【図7】実施形態1に係り、封止部材を示す縦断面図である。
【図8】実施形態1に係り、ケース蓋部材の注液孔の近傍を示す部分拡大縦断面図である。
【図9】実施形態1に係り、図8の上方から見た、ケース蓋部材の注液孔の近傍を示す部分拡大平面図である。
【図10】実施形態1に係るリチウムイオン二次電池の製造に関し、封止部材の挿入部を注液孔に圧入する様子を示す説明図である。
【図11】実施形態2に係り、注液孔及び封止部材の近傍を示す部分拡大縦断面図である。
【図12】実施形態2に係り、封止部材を示す縦断面図である。
【図13】実施形態3に係り、注液孔及び封止部材の近傍を示す部分拡大縦断面図である。
【図14】実施形態3に係り、封止部材を示す縦断面図である。
【図15】実施形態4に係り、注液孔及び封止部材の近傍を示す部分拡大縦断面図である。
【図16】実施形態4に係り、封止部材を示す縦断面図である。
【図17】実施形態4に係り、図16の下方から見た封止部材の平面図である。
【図18】実施形態4の変形形態1に係り、封止部材を示す縦断面図である。
【図19】実施形態4の変形形態2に係り、封止部材を示す縦断面図である。
【図20】実施形態4の変形形態3に係り、封止部材を示す縦断面図である。
【図21】実施形態5に係るハイブリッド自動車を示す説明図である。
【図22】実施形態6に係るハンマードリルを示す説明図である。
【図23】従来形態1に係る密閉型電池のうち、注液孔及び封止部材の近傍を示す部分拡大縦断面図である。
【図24】従来形態2に係る密閉型電池のうち、注液孔及び封止部材の近傍を示す部分拡大縦断面図である。
【図25】従来形態3に係る密閉型電池のうち、注液孔及び封止部材の近傍を示す部分拡大縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
(実施形態1)
以下、本発明の実施の形態を、図面を参照しつつ説明する。図1に、本実施形態1に係るリチウムイオン二次電池(密閉型電池)100(以下、単に電池100とも言う)を示す。また、図2及び図3に、この電池100を構成する捲回型の電極体120及びこれを展開した状態を示す。また、図4に、ケース蓋部材113、正極端子150及び負極端子160等の詳細を示す。また、図5及び図6に、注液孔(貫通孔)113e及び封止部材170の近傍の形態を示す。なお、図1,図4及び図5における上方を電池100の上側、下方を電池100の下側として説明する。
【0021】
この電池100は、ハイブリッド自動車や電気自動車等の車両や、ハンマードリル等の電池使用機器に搭載される角型電池である。この電池100は、直方体形状の電池ケース110、この電池ケース110内に収容された捲回型の電極体120、電池ケース110に支持された正極端子150及び負極端子160等から構成されている(図1参照)。また、電池ケース110内には、非水系の電解液117が保持されている。
【0022】
このうち電池ケース110は、金属(本実施形態1ではアルミニウム)により形成されている。この電池ケース110は、上側のみが開口した箱状のケース本体部材111と、このケース本体部材111の開口111hを閉塞する形態で溶接されたケース蓋部材113とから構成されている(図1及び図4参照)。ケース蓋部材113は、電池ケース110の内部を向く内側主面113cと、電池ケース110の外部を向く外側主面113dとを有する矩形板状をなす。
【0023】
ケース蓋部材113には、電池ケース110の内圧が所定圧力に達した際に破断する安全弁113jが設けられている。また、このケース蓋部材113には、電池ケース110の内外を連通する後述する注液孔(貫通孔)113eが設けられている。この注液孔113eは、電池ケース110内が大気圧よりも減圧された状態で、後述する封止部材170で気密に封止されている。
【0024】
また、ケース蓋部材113には、それぞれ延出端子部材151とボルト153により構成される正極端子150及び負極端子160が、樹脂からなる絶縁部材155を介して固設されている(図1及び図4参照)。電池ケース110内において、正極端子150は電極体120の正極板121(その正極集電部121m)に接続され、負極端子160は電極体120の負極板131(その負極集電部131m)に接続されている(図1参照)。
【0025】
次に、電極体120について説明する。この電極体120は、絶縁フィルムを上側のみが開口した袋状に形成した絶縁フィルム包囲体115内に収容され、横倒しにした状態で電池ケース110内に収容されている(図1参照)。この電極体120は、帯状の正極板121と帯状の負極板131とを、帯状のセパレータ141を介して互いに重ねて(図3参照)、軸線AX周りに捲回し、扁平状に圧縮したものである(図2参照)。
【0026】
正極板121は、芯材として、帯状のアルミニウム箔からなる正極集電箔122を有する。この正極集電箔122の両主面のうち、幅方向の一部でかつ長手方向に延びる領域上には、それぞれ正極活物質層123,123が長手方向(図3中、左右方向)に帯状に設けられている。これらの正極活物質層123,123は、正極活物質、導電剤及び結着剤から形成されている。
【0027】
正極板121のうち、自身の厚み方向に正極集電箔122及び正極活物質層123,123が存在する帯状の部位が、正極部121wである。この正極部121wは、電極体120を構成した状態において、その全域がセパレータ141を介して負極板131の後述する負極部131wと対向している(図3参照)。また、正極板121に正極部121wを設けたことに伴い、正極集電箔122のうち、幅方向の片方の端部(図3中、上方)は、長手方向に帯状に延び、自身の厚み方向に正極活物質層123が存在しない正極集電部121mとなっている。この正極集電部121mの幅方向の一部は、セパレータ141から軸線AX方向の一方側SAに渦巻き状をなして突出しており、前述の正極端子150と接続している(図1参照)。
【0028】
また、負極板131は、芯材として、帯状の銅箔からなる負極集電箔132を有する。この負極集電箔132の両主面のうち、幅方向の一部でかつ長手方向に延びる領域上には、それぞれ負極活物質層133,133が長手方向(図3中、左右方向)に帯状に設けられている。これらの負極活物質層133,133は、負極活物質、結着剤及び増粘剤から形成されている。
【0029】
負極板131のうち、自身の厚み方向に負極集電箔132及び負極活物質層133,133が存在する帯状の部位が、負極部131wである。この負極部131wは、電極体120を構成した状態において、その全域がセパレータ141と対向している。また、負極板131に負極部131wを設けたことに伴い、負極集電箔132のうち、幅方向の片方の端部(図3中、下方)は、長手方向に帯状に延び、自身の厚み方向に負極活物質層133が存在しない負極集電部131mとなっている。この負極集電部131mの幅方向の一部は、セパレータ141から軸線AX方向の他方側SBに渦巻き状をなして突出しており、前述の負極端子160と接続している(図1参照)。
【0030】
また、セパレータ141は、樹脂、具体的にはポリプロピレン(PP)とポリエチレン(PE)からなる多孔質膜であり、帯状をなす。
【0031】
次に、注液孔113e、凹部113h及び封止部材170について説明する(図5〜図9参照)。注液孔113e、凹部113h及び封止部材170は、安全弁113jの近傍に配置されている(図4参照)。具体的には、ケース蓋部材113には、注液孔113e及び凹部113hと安全弁113jが設けられている他、正極端子150及び負極端子160が固設されている。そして、注液孔113e及びこれを封止する封止部材170から正極端子150または負極端子160までの距離よりも、注液孔113e及び封止部材170から安全弁113jまでの距離が短くなる位置に、注液孔113e及び封止部材170が配置されている。
【0032】
凹部113h(図8及び図9等を参照)は、ケース蓋部材113の内側主面113c側 (図8中、下方)に凹み、外側主面113d(図8中、上方)に開口する平面視円形状をなす凹部である。この凹部113hは、円筒状をなす凹部側面113f2と、内側主面113c及び外側主面113dに平行に延びる平面をなす凹部底面113f3とにより構成されている。なお、本実施形態1では、凹部底面113f3が、注液孔113eの周囲に位置する環状の「孔周囲部」に相当する。
【0033】
注液孔113e(図8及び図9等を参照)は、電解液117を電池ケース110内に注入するために、内側主面113cと凹部底面113f3との間を貫通する形態で、凹部底面113f3の中央に設けられた円孔であり、電池ケース110の内外を連通している。この注液孔113eは、円筒状をなす孔側面113f1で構成されている。
【0034】
一方、封止部材170(図7参照)は、被覆部材(被覆部)171と弾性部材179とから構成されており、このうち弾性部材179は、挿入部173と環状圧接部175と介在部177とからなる。なお、図7中に、挿入部173と介在部177との境界、及び、介在部177と環状圧接部175との境界をそれぞれ破線で示す。
【0035】
このうち被覆部材171は、電池ケース110の材質と同じ材質、具体的には、アルミニウムからなる。この被覆部材171は、電池ケース110側(ケース蓋部材113側)(図5及び図7中、下方)に位置する主面である被覆部内側面171cと、これに平行でケース蓋部材113とは反対側(図5及び図7中、上方)に位置する主面である被覆部外側面171dとを有し、凹部113hよりも径大な円板状をなす。
【0036】
この被覆部材171は、注液孔113eを電池ケース110の外部から覆う形態で、電池ケース110に固着されている(図5及び図6参照)。具体的には、被覆部材171の外周縁に沿う円環状の周縁部171mが、ケース蓋部材113のうち凹部113hの周囲を囲む円環状の凹部周囲部113mに、周方向の4カ所で等間隔にスポット溶接されている。これにより、周方向に等間隔に互いに離間した4つのスポット溶接部171y,171y,…が形成され、被覆部材171が電池ケース110(そのケース蓋部材113)に固着されている。特に本実施形態1では、被覆部材171と電池ケース110とを同じ材質(アルミニウム)にしているので、これらの溶接をより確実なものとすることができる。
【0037】
一方、弾性部材179は、前述のように、挿入部173と環状圧接部175と介在部177とからなり、これらが一体に繋がったものである。この弾性部材179は、ゴム状弾性体、具体的には、エチレンプロピレンジエンゴム(EPDM)からなる。
このうち挿入部173は、注液孔113eよりも径小な頂面173cと、この頂面173cよりも径大で、かつ、注液孔113eよりも径大な底面173dと、これらの間を結ぶ側面173fとを有する円錐台状をなす。この挿入部173は、その底面173dが被覆部材171の被覆部内側面171cの中央に接合されており、被覆部内側面171cから延びて、注液孔113e内に挿入されている。
【0038】
本実施形態1では、挿入部173の側面173fが、注液孔113eを構成する孔側面113f1に圧接する形態で、挿入部173が注液孔113eに圧入されている。このため、挿入部173は、その全周にわたり径方向内側に圧縮されており、挿入部173内には、図5中に左右方向の矢印で示すように、径方向外側に向く応力が生じている。これにより、注液孔113eは、挿入部173で密栓されている。
【0039】
また、環状圧接部175は、その断面が概略矩形状で、平面視円環状をなす。この環状圧接部175の外径は、凹部113hの径(凹部底面113f3の外径)よりも小さくされている。一方、環状圧接部175の内径は、注液孔113eの径よりも大きくされている。また、この環状圧接部175の高さ(厚み)は、図7に示す圧縮前の状態で、凹部113hの深さよりも若干大きくされており、図5に示す圧縮された状態で、凹部113hの深さと等しくなっている。
【0040】
この環状圧接部175は、被覆部材171の被覆部内側面171cに、挿入部173の周囲を囲む形態で接合されており、被覆部内側面171cから環状に延びている。この環状圧接部175は、被覆部材171からの押圧により、その全周にわたり厚み方向(上下方向)に圧縮されている。このため、環状圧接部175内には、図5中に上下方向の矢印で示すように、厚み方向に応力が生じている。これにより、環状圧接部175は、凹部113hの凹部底面113f3に密着しており、環状圧接部175よりも径方向内側に位置する注液孔113eの内側(電池内部)と外側(電池外部)との間が気密に封止されている。前述のように、注液孔113eは、挿入部173によっても気密に封止されているので、挿入部173と環状圧接部175とにより2重にシールされている。
【0041】
また、介在部177は、円環状をなし、被覆部材171の被覆部内側面171cに接合されて、被覆部内側面171cから環状に延びている。この介在部177は、挿入部173と環状圧接部175との間に介在し、これらと一体とされている。この介在部177には、挿入部173の周囲を囲む円環状の介在部凹溝177vが設けられている。この介在部凹溝177vは、被覆部材171側(図5及び図7中、上方)に凹み、被覆部材171とは反対側(ケース蓋部材113側、図5及び図7中、下方)に開口し、断面がU字状をなす円環U字溝である。
【0042】
この介在部177は、挿入部173が注液孔113eに圧入されて径方向内側に圧縮されたとき、介在部177のうち、介在部凹溝177vよりも径方向内側に位置する内側部177pは、径方向内側に引っ張られる。しかし、介在部凹溝177vを設けているので、介在部177のうち、介在部凹溝177vよりも径方向外側に位置する外側部177qまでは径方向内側に引っ張られ難い。このため、介在部177(その外側部177q)に繋がる環状圧接部175も、径方向内側に引っ張られ難い。
【0043】
この弾性部材179では、図25と対比すると容易に理解できるように、その環状圧接部175内には径方向の応力が殆ど生じていない。前述のように、挿入部173は注液孔113eに圧入されて径方向内側に圧縮されているものの、挿入部173と環状圧接部175との間には、介在部凹溝177vを有する介在部177が存在する。このため、挿入部173内に生じた径方向の応力が、環状圧接部175までは伝わり難いからである。
【0044】
また、環状圧接部175の径方向外側には、空間KCが設けられている。即ち、環状圧接部175の表面175cのうち、凹部113hの凹部底面113f3に圧接する圧接面175c1よりも径方向外側に位置する外側面175c2と、凹部113hの凹部側面113f2との間に、空間KCが設けられている。このため、環状圧接部175は、被覆部材171の被覆部内側面171cと凹部113hの凹部底面113f3との間で厚み方向に圧縮されたことに伴って、径方向外側に膨張している。従って、径方向外側から(凹部側面113f2から)力が掛かることにより、環状圧接部175に径方向の応力が生じることもない。
【0045】
以上で説明したように、本実施形態1に係る電池100は、自身の内外を連通する貫通孔(注液孔)113eを有する電池ケース110と、電池ケース110内に収容された電極体120と、貫通孔113eを外部から気密に封止してなる封止部材170とを備える。このうち封止部材170は、貫通孔113eを外部から覆い、電池ケース110に固着された被覆部(被覆部材)171を有する。また、封止部材170は、ゴム状弾性体からなり、被覆部171のうち電池ケース110側に位置する面である被覆部内側面171cから延びて貫通孔113e内に挿入された挿入部173を有する。また、封止部材170は、ゴム状弾性体からなり、被覆部内側面171cから挿入部173の周囲を囲む形態で環状に延び、被覆部171からの押圧により、電池ケース110のうち貫通孔113eの周囲に位置する環状の孔周囲部(凹部底面)113f3に気密に圧接してなる環状圧接部175を有する。更に、封止部材170は、ゴム状弾性体からなり、被覆部内側面171cから環状に延び、挿入部173と環状圧接部175との間に介在し、これらと一体とされた介在部177を有し、この介在部177に、挿入部173の周囲を囲む環
状の介在部凹溝177vを有する。
【0046】
この電池100では、挿入部173と環状圧接部175とが、介在部凹溝177vを有する介在部177を介して繋がった形態とされている。このため、注液孔113eに挿入された挿入部173が径方向内側に圧縮されても、環状圧接部175は、径方向内側に引っ張られ難いので、環状圧接部175内には、径方向の応力が殆ど生じない。従って、環状圧接部175による気密を長期間にわたって保つことができる。
【0047】
更に、本実施形態1では、挿入部173は、貫通孔(注液孔)113eに圧入されて、貫通孔1113eを密栓してなる。これにより、この電池100では、環状圧接部175によるシールだけでなく、挿入部173によるシールも行われているので、封止部材170による気密を長期間にわたって保つことができる。
【0048】
また、本実施形態1では、電池ケース110内は、大気圧よりも減圧されてなる。このため、使用(充放電)に伴い電池ケース110内にガスが発生した場合でも、電池ケース110内の内圧が早期に高くなるのを抑制できる。従って、電池100の安全性をより高めることができる。
【0049】
また、本実施形態1では、被覆部(被覆部材)171は、互いに離間した複数のスポット溶接部171y,171y,…により、自身の周縁部171mが電池ケース110に溶接されてなる。この電池100は、前述のように、環状圧接部175により注液孔113eが気密封止されているので、必ずしも、被覆部材171を電池ケース110に全周溶接してまでこれらの間を気密に封止する必要はない。加えて、被覆部材171を電池ケース110(そのケース蓋部材113の凹部周囲部113m)に全周溶接すると、工数が掛かりコスト高を招く。これに対し、この電池100では、被覆部材171を電池ケース110に複数箇所でスポット溶接すれば足りるので、工数が少なく、電池100を安価にすることができる。
【0050】
また、本実施形態1では、電池ケース110は、貫通孔(注液孔)113e及び封止部材170に近接した位置に、安全弁113jを有する。このため、安全弁113jから放出されたガスや電解液を排出する排出路を設計、構成する際、注液孔113e及び封止部材170が安全弁113jから近い位置にあるので、注液孔113eからガス等が排出された場合の排出路も、安全弁113j用の排出路を兼用して用いることができるように、容易に設計構成できる。
【0051】
次いで、上記電池100の製造方法について説明する。まず、別途形成した帯状の正極板121及び負極板131を、帯状のセパレータ141を介して互いに重ね(図3参照)、巻き芯を用いて軸線AX周りに捲回する。その後、これを扁平状に圧縮して電極体120を形成する(図2参照)。
【0052】
また、安全弁113j及び注液孔113e等を形成したケース蓋部材113と、延出端子部材151及びボルト153とを用意し、これらを射出成形用の金型にセットする。そして、射出成形により絶縁部材155を形成して、ケース蓋部材113に正極端子150及び負極端子160を固設する(図4参照)。
【0053】
次に、正極端子150と電極体120の正極集電部121mとを接続(溶接)する。また、負極端子160と電極体120の負極集電部131mとを接続(溶接)する。その後、ケース本体部材111及び絶縁フィルム包囲体115を用意し、ケース本体部材111内に絶縁フィルム包囲体115を介して電極体120を収容すると共に、ケース本体部材111の開口111hをケース蓋部材113で塞ぐ。そして、レーザ溶接により、
ケース本体部材111とケース蓋部材113とを溶接して、電池ケース110を形成する(図1参照)。
【0054】
また別途、被覆部材171と弾性部材179とからなる封止部材170(図7参照)を形成しておく。具体的には、金属板からなる被覆部材171を射出成形用の金型にセットし、射出成形により、挿入部173、環状圧接部175及び介在部177からなる弾性部材179を成形する。
【0055】
次に、前述の電池を、真空チャンバ内に入れて、真空チャンバ内を減圧する。そして、注液用ノズルを注液孔113e内に挿入して、注液用ノズルから電池ケース110内に電解液117を注液する。その後、注液孔113eの周囲(凹部113h及び凹部周囲部113m等)を不織布で拭いて清掃する。
【0056】
次に、減圧下で第1の封止を行う。即ち、この封止部材170のうちの挿入部173を、電池ケース110(ケース蓋部材113)の外部から(上方から)注液孔113e内に圧入する。これにより、挿入部173と注液孔113eとの間が気密に封止される。その際、挿入部173は位置決めガイドとしての役割も果たすので、注液孔113eに対する封止部材170の位置決めを精度良く行うことができる。
【0057】
その後、真空チャンバ内を大気圧に戻して、真空チャンバからこの電池を取り出す。これにより、電池ケース110内は大気圧よりも減圧された状態となる。従って、次述する第2の封止を、電池ケース110内を減圧状態に保ったまま、大気圧下で行うことができる。
【0058】
次に、大気圧下で第2の封止を行う。まず、図10に示すように、封止部材170の被覆部材171をケース蓋部材113側に(下方に)押圧して、環状圧接部175をケース蓋部材113の凹部113hの凹部底面113f3に圧接させると共に、被覆部材171の周縁部171mをケース蓋部材113の凹部周囲部113mに当接させる。
【0059】
その後、被覆部材171の周縁部171mを、ケース蓋部材113の凹部周囲部113mに溶接する。具体的には、封止部材170をケース蓋部材113側に押圧した状態で、レーザ溶接により、被覆部材171の周縁部171mをケース蓋部材113の凹部周囲部113mに、周方向の4カ所に等間隔にスポット溶接する。これにより、環状圧接部175と凹部底面113f3との間が密着するので、環状圧接部175よりも径方向内側に位置する注液孔113eの内側(電池内部)と外側(電池外部)との間が気密に封止される。前述のように、注液孔113eは、挿入部173によっても気密に封止されているので、挿入部173と環状圧接部175とにより2重にシールされる。
【0060】
次に、コンディショニング工程(初期充放電工程)において、この電池100の充放電を行う。かくして、電池100が完成する。
【0061】
(実施形態2)
次いで、第2の実施の形態について説明する。本実施形態2に係るリチウムイオン二次電池(密閉型電池)200では、封止部材270の形態(図11及び図12参照)が、実施形態1に係る封止部材170の形態と異なる。それ以外は、実施形態1と同様であるので、実施形態1と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
【0062】
本実施形態2に係る封止部材270の弾性部材279は、実施形態1と同様な挿入部173と環状圧接部175とを有する。但し、この弾性部材279は、挿入部173と環状圧接部175とが互いに離間した別体で構成されており、実施形態1における介在部177のような介在部を有しない。
【0063】
このため、この弾性部材279では、挿入部173を注液孔113eに挿入しても、環状圧接部175に径方向の応力は生じない。挿入部173が注液孔113eに圧入により径方向内側に圧縮されても、挿入部173と環状圧接部175との間が相互に離間しており、挿入部173内に生じた径方向の応力が、環状圧接部175まで伝わらないからである。
なお、環状圧接部175の径方向外側には、実施形態1と同様に空間KCが設けられている。このため、径方向外側から(凹部側面113f2から)力が掛かることにより、環状圧接部175に径方向の応力が生じることもない。
【0064】
このように、本実施形態2の電池200は、挿入部173と環状圧接部175との間が相互に離間した形態とされている。挿入部173と環状圧接部175とは互いに独立しているので、挿入部173が注液孔113e(孔側面113f1)により径方向内側に圧縮されても、環状圧接部175は径方向に引っ張られない。従って、環状圧接部175内には径方向の応力が生じず、環状圧接部175による気密を長期間にわたって保つことができる。その他、実施形態1と同様な部分は、実施形態1と同様な作用効果を奏する。
【0065】
(実施形態3)
次いで、第3の実施の形態について説明する。本実施形態3に係るリチウムイオン二次電池(密閉型電池)300では、封止部材370の形態(図13及び図14参照)が、実施形態1または2に係る封止部材170,270の形態と異なる。それ以外は、実施形態1と同様であるので、実施形態1と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
【0066】
本実施形態3に係る封止部材370は、実施形態1と同様な被覆部材171を有するが、弾性部材379の形態が異なる。この封止部材370の弾性部材379は、挿入部373と環状圧接部375とからなる。これら挿入部373と環状圧接部375とは、直接繋がって一体とされており、両者の間には実施形態1に係る介在部177のような介在部は存在しない。なお、図14中に、挿入部373と環状圧接部375との境界を破線で示す。加えて、後述するように、挿入部373にくびれ状の基部凹溝373vを有する点でも、実施形態1と相違している。
【0067】
このうち挿入部373は、実施形態1と同様に、径小な頂面373cと径大な底面373dとこれらの間を結ぶ側面373fとを有する円錐台状をなす。この挿入部373は、被覆部材171の被覆部内側面171cの中央から延びて、注液孔113e内に挿入される。この挿入部373は、図14中に破線で示すように、図14中、上下方向に、先端部373sと当接部373tと基部373kの3つの部位に分けられる。
【0068】
このうち中央に位置する当接部373tは、挿入部373を注液孔113eに挿入(より具体的には圧入)したときに、注液孔113e(孔側面113f1)に当接(より具体的には圧接)する部位である(図13参照)。また、先端部373sは、当接部373tよりも電池内部側(図13中、下方)に位置する円錐台状の部位である。また、基部373kは、当接部373tよりも電池外部側(被覆部材171側、図13中、上方)に位置する円柱状の部位である。そして、本実施形態3では、この基部373kのうち当接部373tとの境界部分に、径方向内側に向けてU字状で円環状にくびれた基部凹溝373vが形成されている。
【0069】
また、環状圧接部375は、その断面が概略矩形状で、平面視円環状をなす。この環状圧接部375は、挿入部373の周囲を囲む形態で挿入部373(その基部373k)と直接繋がって一体とされており、被覆部材171の被覆部内側面171cに接合されている。この環状圧接部375は、被覆部材171からの押圧により、その全周にわたり厚み方向(上下方向)に圧縮されている。このため、環状圧接部375内は、図13中に上下方向の矢印で示すように、厚み方向に応力が生じている。これにより、環状圧接部375は、凹部113hの凹部底面113f3に密着しており、電池ケース110内を気密に封止されている。
【0070】
本実施形態3の弾性部材379でも、挿入部373(その当接部373t)が注液孔113eを構成する孔側面113f1に圧接する形態で、挿入部373が注液孔113eに圧入されている。このため、挿入部373(その当接部373t)は、その全周にわたり径方向内側に圧縮されており、挿入部373内には、図13中に左右方向の矢印で示すように、径方向外側に向く応力が生じている。これにより、注液孔113eは、挿入部373(その当接部373t)で密栓されている。
【0071】
但し、本実施形態3では、この当接部373tよりも被覆部材171側に位置する基部373kのうち、当接部373tとの境界部分に、基部凹溝373vが形成されている。このため、当接部373tが注液孔113e(孔側面113f1)により径方向内側に圧縮されても、基部373kのうち、基部凹溝373vよりも被覆部材171側(図13中、上方)の部位までは、径方向内側に圧縮され難い。従って、基部373kには、径方向の応力が殆ど生じない。また、この基部373kの径方向外側に繋がる環状圧接部375も径方向内側に引っ張られ難いので、環状圧接部375内にも径方向の応力は殆ど生じない。即ち、圧入により当接部373tに生じた径方向の応力は、環状圧接部375まで伝わり難い。
【0072】
なお、本実施形態3でも、環状圧接部375の径方向外側には、実施形態1,2と同様に、空間KCが設けられている。即ち、環状圧接部375の表面375cのうち、圧接面375c1よりも径方向外側に位置する外側面375c2と、凹部113hの凹部側面113f2との間に、空間KCが設けられている。このため、径方向外側から(凹部側面113f2から)力が掛かることにより、環状圧接部375に径方向の応力が生じることもない。
【0073】
このように、本実施形態3に係る電池300は、弾性部材379をなす挿入部373と環状圧接部375とが直接繋がって一体とされてなり、挿入部373のうち、貫通孔(注液孔)113eに当接する当接部373tよりも被覆部材171側に位置する基部373kに、基部373kの径方向にくびれた基部凹溝373vを有する形態とされている。このため、注液孔113eに挿入された挿入部373(その当接部373t)が径方向内側に圧縮されても、環状圧接部375までは径方向内側に引っ張られ難いので、環状圧接部375内にも、径方向の応力が生じ難い。従って、環状圧接部375による気密を長期間にわたって保つことができる。その他、実施形態1と同様な部分は、実施形態1と同様な作用効果を奏する。
【0074】
(実施形態4)
次いで、第4の実施の形態について説明する。本実施形態4に係るリチウムイオン二次電池(密閉型電池)400では、封止部材470の形態(図15〜図17参照)が、実施形態1〜3に係る封止部材170,270,370の形態と異なる。それ以外は、実施形態1と同様であるので、実施形態1と同様な部分の説明は、省略または簡略化する。
【0075】
本実施形態4に係る封止部材470は、被覆部材171の他、挿入部173、環状圧接部475及び介在部177からなる弾性部材479から構成されている。このうち、被覆部材171と、弾性部材479のうちの挿入部173及び介在部177は、実施形態1と同様である。但し、実施形態1では、被覆部材171の周縁部171mを、ケース蓋部材113の凹部周囲部113mに、周方向の4カ所のスポット溶接部171y,171y,…で接合した(図5及び図6参照)。これに対し、本実施形態4では、このうち3カ所のスポット溶接部171y,171y,…のみを形成しており、図5及び図6中、左側に示すスポット溶接部171yを形成しない(図15参照)。
【0076】
環状圧接部475は、その断面が概略矩形状で、平面視円環状をなす。この環状圧接部475は、被覆部材171の被覆部内側面171cに、挿入部173の周囲を囲む形態で接合されており、被覆部材171からの押圧により、その全周にわたり厚み方向(上下方向)に圧縮されている。このため、環状圧接部475内は、図15中に上下方向の矢印で示すように、厚み方向に応力が生じている。これにより、環状圧接部475は、凹部113hの凹部底面113f3に密着しており、電池ケース110内を気密に封止している。なお、実施形態1と同様に、挿入部173と環状圧接部475との間には、介在部凹溝177vを有する介在部177が介在するため、挿入部173内に生じる径方向の応力は、環状圧接部475まで伝わり難い。
【0077】
加えて、この環状圧接部475は、その周方向の一部(本実施形態4では、安全弁113jに最も近い部位(図15〜図17中、左側))である密着低下部475gに、凹部475w1を有している。具体的には、この凹部475w1は、環状圧接部475の密着低下部475gにおいて、環状圧接部475の表面475cのうち、凹部底面113f3に圧接する圧接面475c1よりも径方向外側に位置する外側面475c2に形成されている。また、この凹部475w1は、径方向内側に凹み、径方向外側に開口する形態とされている。
【0078】
このような凹部475w1を設けたことで、環状圧接部475の密着低下部475gは、環状圧接部475の周方向の他の部位よりも、シール性能が低下する。即ち、凹部475w1が設けられた密着低下部475gにおいて、環状圧接部475の圧接面475c1がケース蓋部材113の凹部底面113f3に圧接する圧力が、周方向の他の部位よりも小さくなっている。このため、環状圧接部475の密着低下部475gでは、密着性が低下し、周方向の他の部位よりもシール性能が低くされている。
【0079】
以上で説明したように、本実施形態4に係る電池400も、実施形態1と同様に、挿入部173と環状圧接部475とが、介在部凹溝177vを有する介在部177を介して繋がった形態とされている。このため、注液孔113eに挿入された挿入部173が径方向内側に圧縮されても、環状圧接部475は、径方向内側に引っ張られ難いので、環状圧接部475内には、径方向に応力が生じ難い。従って、環状圧接部475による気密を長期間にわたって保つことができる。
【0080】
加えて、本実施形態4では、環状圧接部475の密着低下部475gに前述の凹部475w1を設けている。加えて、封止部材470の被覆部材171とケース蓋部材113とを、全周溶接ではなく、スポット溶接により接合しているので、環状圧接部475の外部(径方向外側)が、電池ケース110の外部に連通している。
【0081】
このため、封止部材470の環状圧接部475及び挿入部173が経年劣化して、もし、環状圧接部475でのシールが十分にできなくなったときには、環状圧接部475のうちでも、まずシール性能が最も低くされた密着低下部475gを通じて、電池ケース110内に発生したガスや電解液が、環状圧接部475の径方向外側に放出される。そして更に、このガス等は、被覆部材171と凹部周囲部113mとの間を通じて、図15中
に矢印で示すように、電池ケース110の外部に排出される。排出されたガス等は、安全弁113jに向かい易いので、安全弁113j用に設ける排出路を兼用させ易くなる。その他、実施形態1と同様な部分は、実施形態1と同様な作用効果を奏する。
【0082】
なお、本実施形態4では、環状圧接部475の密着低下部475gでシール性能を低下させる凹部475w1を、環状圧接部475の表面475cのうち外側面475c2に設けたが、凹部の形成位置や形態はこれに限定されない。例えば、図18に示すように、凹部475w2を、環状圧接部475の径方向内側から径方向外側に向けて凹む形態で設けることにより、環状圧接部475の密着低下部475gでシール性能を低下させてもよい。
【0083】
また、図19に示すように、凹部475w3を、環状圧接部475の圧接面475c1から被覆部材171側に向けて凹む形態で設けることにより、環状圧接部475の密着低下部475gでシール性能を低下させてもよい。また、図20に示すように、凹部475w4を、環状圧接部475のうち、外側面475c2と圧接面475c1との境界に設けることにより、環状圧接部475の密着低下部475gでシール性能を低下させてもよい。
【0084】
図18に示す凹部475w2を設けた場合には、図15及び図16に示す凹部475w1を設けた場合と同様に、密着低下部475gにおいて、圧接面475c1が凹部底面113f3に圧接する圧力が、環状圧接部475の周方向の他の部位よりも小さくなる。このため、この密着低下部475gでシール性能が低下する。一方、図19または図20に示す凹部475w3,475w4を設けた場合には、密着低下部475gにおいて、凹部底面113f3に圧接する圧接面475c1の面積(圧接面積)が、環状圧接部475の周方向の他の部位よりも小さくなる。このため、この密着低下部475gでシール性能が低下する。
【0085】
(実施形態5)
次いで、第5の実施の形態について説明する。本実施形態5に係るハイブリッド自動車(車両)700(以下、単に自動車700とも言う)は、実施形態1に係る電池100を搭載し、この電池100に蓄えた電気エネルギを、駆動源の駆動エネルギの全部または一部として使用するものである(図21参照)。
【0086】
この自動車700は、電池100を複数組み合わせた組電池710を搭載し、エンジン740、フロントモータ720及びリアモータ730を併用して駆動するハイブリッド自動車である。具体的には、この自動車700は、その車体790に、エンジン740と、フロントモータ720及びリアモータ730と、組電池710(電池100)と、ケーブル750と、インバータ760とを搭載する。そして、この自動車700は、組電池710(電池100)に蓄えられた電気エネルギを用いて、フロントモータ720及びリアモータ730を駆動できるように構成されている。
【0087】
前述したように、電池100は、長期間にわたり封止部材170で注液孔113eを気密に封止できるので、この自動車700の耐久性を高くできる。なお、実施形態1に係る電池100に代えて、実施形態2〜4に係る電池200,300,400を搭載してもよい。
【0088】
(実施形態6)
次いで、第6の実施の形態について説明する。本実施形態6のハンマードリル800は、実施形態1に係る電池100を搭載した電池使用機器である(図22参照)。このハンマードリル800は、本体820の底部821に、電池100を含むバッテリパック810が収容されており、このバッテリパック810を、ドリルを駆動するためのエネルギー源として利用している。
【0089】
前述したように、電池100は、長期間にわたり封止部材170で注液孔113eを気密に封止できるので、このハンマードリル800の耐久性を高くできる。なお、実施形態1に係る電池100に代えて、実施形態2〜4に係る電池200,300,400を搭載してもよい。
【0090】
以上において、本発明を実施形態に即して説明したが、本発明は上述の実施形態1〜6に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で、適宜変更して適用できることは言うまでもない。
【0091】
例えば、実施形態1〜4では、電池ケースの内外を連通する「貫通孔」として、電解液117を注入するための注液孔113eを例示したが、これに限られない。貫通孔としては、例えば、電池ケース内のガスを抜くための通気孔などが挙げられる。また、実施形態1〜4では、「貫通孔」を、電池ケース110のうちケース蓋部材113に設けたが、貫通孔の形成位置はこれに限られない。貫通孔は、例えば、ケース本体部材111の側面や底面に設けてもよい。また、「貫通孔」の形状を円孔としたが、貫通孔の形状はこれに限られない。貫通孔の形状としては、例えば、平面視楕円状、平面視長円状、平面視矩形状、平面視多角形状などが挙げられる。
【0092】
また、実施形態1〜4では、「電極体」として、各々帯状をなす正極板121及び負極板131をセパレータ141を介して互いに重ねて捲回してなる捲回型の電極体120を例示したが、電極体120の形態はこれに限られない。例えば、電極体を、各々所定形状(例えば矩形状など)をなす正極板及び負極板をセパレータを介して交互に複数積層してなる積層型としてもよい。
【0093】
また、実施形態1〜4では、「被覆部」として、電池ケース110と同じ材質(アルミニウム)からなる被覆部材171を例示したが、被覆部の材質は適宜変更できる。また、実施形態1〜4では、スポット溶接により、被覆部材171を電池ケース110に固着させたが、固着方法はこれに限られない。例えば、全周溶接により、被覆部材171を電池ケース110に固着させてもよい。また、ロウ材や接着剤を用いて、被覆部材171を電池ケース110に固着させてもよい。
【0094】
また、実施形態1〜4では、封止部材の「挿入部」として、円錐台状の挿入部173,373を例示したが、挿入部の形状や大きさは適宜変更できる。また、実施形態1〜4では、「挿入部」として、注液孔113eに圧入される形態の挿入部171,373を例示したが、これに限られない。例えば、挿入部の径方向の寸法を小さくして、挿入部と注液孔とが圧接することなく互いに当接する形態や、挿入部と注液孔とが隙間を介して近接する形態としてもよい。
【0095】
また、実施形態1〜4では、「挿入部」、「環状圧接部」及び「介在部」として、EPDMからなる挿入部173,373、環状圧接部175,375,475及び介在部177を例示したが、ゴム弾性体の材質はこれに限られない。例えば、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ニトリルゴム(NBR)、ポリプロピレン(PP)、ペルフルオロアルコキシフッ素樹脂(PFA)などを用いてもよい。
【0096】
また、実施形態1,4では、「介在部凹溝」として、U字溝からなる介在部凹溝177vを例示したが、介在部凹溝の形状や大きさは適宜変更できる。また、実施形態3では、「基部凹溝」として、U字溝からなる基部凹溝373vを例示したが、基部凹溝の形状や大きさは適宜変更できる。
【0097】
また、実施形態5では、本発明に係る電池100を搭載する車両として、ハイブリッド自動車700を例示したが、これに限られない。本発明に係る電池を搭載する車両としては、例えば、電気自動車、プラグインハイブリッド自動車、ハイブリッド鉄道車両、フォークリフト、電気車いす、電動アシスト自転車、電動スクータなどが挙げられる。
【0098】
また、実施形態6では、本発明に係る電池100を搭載する電池使用機器して、ハンマードリル800を例示したが、これに限られない。本発明に係る電池を搭載する電池使用機器としては、例えば、パーソナルコンピュータ、携帯電話、電池駆動の電動工具、無停電電源装置など、電池で駆動される各種の家電製品、オフィス機器、産業機器などが挙げられる。
【符号の説明】
【0099】
100,200,300,400 リチウムイオン二次電池(密閉型電池)
110 電池ケース
111 ケース本体部材
113 ケース蓋部材
113e 注液孔(貫通孔)
113h 凹部
113j 安全弁
113m 凹部周囲部
120 電極体
150 正極端子
160 負極端子
170,270,370,470 封止部材
171 被覆部材(被覆部)
171c 被覆部内側面
171d 被覆部外側面
171m (被覆部材の)周縁部
171y スポット溶接部
173,373 挿入部
373s 先端部
373t 当接部
373k 基部
373v 基部凹溝
175,375,475 環状圧接部
175c,375c,475c (環状圧接部の)表面
175c1,375c1,475c1 (表面のうちの)圧接面
175c2,375c2,475c2 (表面のうちの)外側面
475g 密着低下部(環状圧接部の周方向一部)
475w1,475w2,475w3,475w4 凹部
177 介在部
177v 介在部凹溝
179,279,379,479 弾性部材
700 ハイブリッド自動車(車両)
710 組電池
800 ハンマードリル(電池使用機器)
810 バッテリパック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
自身の内外を連通する貫通孔を有する電池ケースと、
前記電池ケース内に収容された電極体と、
前記貫通孔を外部から気密に封止してなる封止部材と、を備える
密閉型電池であって、
前記封止部材は、
前記貫通孔を外部から覆い、前記電池ケースに固着された被覆部と、
ゴム状弾性体からなり、前記被覆部のうち前記電池ケース側に位置する面である被覆部内側面から延びて前記貫通孔内に挿入された挿入部と、
ゴム状弾性体からなり、前記被覆部内側面から前記挿入部の周囲を囲む形態で環状に延び、前記被覆部からの押圧により、前記電池ケースのうち前記貫通孔の周囲に位置する環状の孔周囲部に気密に圧接してなる環状圧接部と、を有し、
前記挿入部と前記環状圧接部との間が相互に離間した形態、
ゴム状弾性体からなり、前記被覆部内側面から環状に延び、前記挿入部と前記環状圧接部との間に介在し、これらと一体とされた介在部を有し、前記介在部に、前記挿入部の周囲を囲む環状の介在部凹溝を有する形態、及び、
前記挿入部と前記環状圧接部とが直接繋がって一体とされてなり、前記挿入部のうち、前記貫通孔に当接し得る当接部よりも前記被覆部側に位置する基部に、前記基部の径方向にくびれた基部凹溝を有する形態、のいずれかとされてなる
密閉型電池。
【請求項2】
請求項1に記載の密閉型電池であって、
前記挿入部は、前記貫通孔に圧入されて、前記貫通孔を密栓してなる
密閉型電池。
【請求項3】
請求項2に記載の密閉型電池であって、
前記電池ケース内は、大気圧よりも減圧されてなる
密閉型電池。
【請求項4】
請求項1〜請求項3のいずれか一項に記載の密閉型電池であって、
前記被覆部は、
互いに離間した複数のスポット溶接部により、自身の周縁部が前記電池ケースに溶接されてなる
密閉型電池。
【請求項5】
請求項1〜請求項4のいずれか一項に記載の密閉型電池であって、
前記環状圧接部の外部が、前記電池ケースの外部に連通してなり、
前記環状圧接部は、
自身の周方向の一部に、前記環状圧接部によるシール性能を、周方向の他の部位よりも低下させる凹部を有する
密閉型電池。
【請求項6】
請求項1〜請求項5のいずれか一項に記載の密閉型電池であって、
前記電池ケースは、
前記貫通孔及び前記封止部材に近接した位置に、安全弁を有する
密閉型電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【公開番号】特開2012−248336(P2012−248336A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−117343(P2011−117343)
【出願日】平成23年5月25日(2011.5.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【出願人】(390035909)興国インテック株式会社 (18)
【Fターム(参考)】