説明

対物レンズ、顕微鏡

【課題】衝撃や振動によるレンズの光軸ずれを防止した対物レンズと、これを有する顕微鏡を提供すること。
【解決手段】複数のレンズG1〜G5をそれぞれレンズ保持枠21〜25を介してレンズ鏡筒10内に固定する対物レンズ1において、前記レンズ保持枠は略円筒状部材からなり、前記円筒状部材の二つの端面の少なくとも一方が、前記レンズ鏡筒の中心軸に直交する平面に対して傾斜して形成されていることを特徴とする対物レンズ1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、顕微鏡用の対物レンズとこれを有する顕微鏡に関する。
【背景技術】
【0002】
複数のレンズをレンズ鏡筒に内包する顕微鏡用の対物レンズは、複数のレンズそれぞれを接着あるいはカシメ固定した複数の円筒状レンズ保持部材をレンズ鏡筒内部に積み重ねて一端部をレンズ鏡筒端面突起部に当接し、他端部を押さえ環で複数の円筒状レンズ保持部材を押圧することで固定している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−310316号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
対物レンズの高性能化に伴いレンズ鏡筒に内包する個々のレンズは大型化する傾向にある。大型化して重くなったレンズは、従来のレンズ保持方法でレンズを保持したとき、対物レンズの光軸に直交する方向の衝撃や振動により前記大型化して重くなったレンズが光軸に直交する方向にずれを生じ結像性能を損なってしまうという問題がある。
【0005】
本発明は、上記課題に鑑みて行われたものであり、衝撃や振動によるレンズの光軸ずれを防止した対物レンズと、これを有する顕微鏡を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、複数のレンズをそれぞれレンズ保持枠を介してレンズ鏡筒内に固定する対物レンズにおいて、前記レンズ保持枠は略円筒状部材からなり、前記円筒状部材の二つの端面の少なくとも一方が、前記レンズ鏡筒の中心軸に直交する平面に対して傾斜して形成されていることを特徴とする対物レンズを提供する。
【0007】
また、本発明は、前記対物レンズを有することを特徴とする顕微鏡を提供する。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、衝撃や振動によるレンズの光軸ずれを抑制した対物レンズと、これを有する顕微鏡を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本実施形態にかかる対物レンズを有する顕微鏡の側面図。
【図2】第1実施形態にかかる対物レンズの断面図。
【図3】第1実施形態にかかる対物レンズに用いられるスペーサ部材の第1の例。
【図4】第1実施形態にかかる対物レンズに用いられるスペーサ部材の第2の例。
【図5】第2実施形態にかかる対物レンズの断面図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本願の実施形態にかかる対物レンズおよびこれを有する顕微鏡について図面を参照しつつ説明する。なお、以下の実施形態は、発明の理解を容易にするためのものに過ぎず、本願発明の技術的思想を逸脱しない範囲において当業者により実施可能な付加・置換等を施すことを排除することは意図していない。
【0011】
図1において、顕微鏡200は、顕微鏡本体201と、顕微鏡本体201に配置された接眼鏡筒202と、複数の対物レンズ1を観察位置に配置するレボルバ204と、標本205を載置するステージ206と、透過照明用光源207とから構成されている。
【0012】
観察者は、透過照明用光源207からの照明光をステージ206に載置した標本205に照射し、フォーカスノブ208を回転させることでステージ206を上下動し、標本205に対物レンズ1をフォーカシングし、対物レンズ203で標本205からの光を集光して、接眼鏡筒202を介して接眼レンズ209で標本205の拡大像を観察する。
【0013】
次に、顕微鏡200で使用される第1実施形態にかかる対物レンズ1について図2を参照しつつ説明する。
【0014】
(第1実施形態)
対物レンズ1は、円筒状のレンズ鏡筒10と、第1レンズG1〜第5レンズG5がそれぞれ組み付けられた円筒状の第1レンズ保持枠21〜第5レンズ保持枠25と、レンズ間距離を調整するためのワッシャ部材26と、これらのレンズ保持枠21〜25をレンズ鏡筒10に固定する押さえ環30等から構成されている。対物レンズ1では、複数のレンズG1〜G5はレンズ保持枠21〜25および後述するワッシャ部材26を介して押さえ環30によりレンズ鏡筒10に固定されると共に一体的に保持される。なお、ワッシャ部材26は、後述する形状を有し、レンズ間距離の調整が必要な場合に使用するものであり、レンズ保持枠21〜25のみで第1レンズG1〜G5間それぞれの距離が規定できる場合には不要であることは言うまでもない。また、ワッシャ部材26をレンズ保持枠21〜25のいずれの間に入れるかもレンズG1〜G5を組み立てる際のレンズ間距離調整の要否により決めるものであることは言うまでもない。
【0015】
レンズ鏡筒10には、対物レンズ1を図1に示すレボルバ204のレンズ取り付け穴にねじ込み固定するための雄ネジ11が形成されている。また、雄ネジ11の近傍には、対物レンズ1をレボルバ204のレンズ取り付け穴にねじ込んだ際、レボルバ204に当接する同付け面12が形成されている。
【0016】
レンズ鏡筒10の雄ネジ11側と中心軸Iに沿った方向で対向する端部13は、レンズ鏡筒10の中心軸I側に突出する突起部13aを有する。そして突起部13aの先端部分13bで規定される円形開口部の直径d(図2,図5の直径dは13b内径よりも大きく見える)はレンズ鏡筒10の内側部10aの直径Dより小さく形成されている。また、端部13のレンズ鏡筒10の内側部分は、中心軸Iに直交する面に対して所定の角度を有する面13cがレンズ鏡筒10内側に形成されている。
【0017】
第1レンズG1をレンズ鏡筒10内に保持する第1レンズ保持枠21は、断面形状が略U字状の円筒形部材(同様に符号21とする)で構成されている。また、円筒形部材21の底部には、円形開口部21aが形成され、円筒形状で中心軸I方向に延在する外側部21bを有している。この円形開口部21aに第1レンズG1がはめ込まれ、第1レンズG1は円形開口部21aの端部に接着あるいはカシメ固定することで第1レンズ保持枠21に固定される。
【0018】
第1レンズ保持枠21の外側部21bの直径は、レンズ鏡筒10の内側部10aの直径Dより僅かに小さく形成されている。これにより、第1レンズ保持枠21は、レンズ鏡筒10の内側部10aに外側部21bが係合し、第1レンズG1をレンズ鏡筒10内に保持することができる。このように第1レンズ保持枠21の外側部21bの直径がレンズ鏡筒10の内側部10aの直径Dより僅かに小さく形成されているため、第1レンズG1は中心軸Iに直交する面内で移動し、レンズ中心と光軸Iとを一致させる調芯調整を行うことができる。
【0019】
第1レンズ保持枠21の外側部21bの第1レンズG1固定側(図2上で下方側)の端部には、中心軸Iに直交する面に対して所定の角度を有する面21cが形成されている。また、面21cは、レンズ鏡筒10の突起部13でレンズ鏡筒10の内側部分に形成された面13cと略平行に形成されている。これにより、面13cと面21cは、略面接触状態で接触する。
【0020】
また、第1レンズ保持枠21外側部21bの面21cに対向する他端面21d(図2上で上方側)は、中心軸Iに直交する面に対して所定の角度を有する面が形成されている。なお、面21dは、面21cに略平行に形成されていても良い。
【0021】
また、第2レンズG2は、中心軸Iに沿った第1レンズG1の上方(図2上で上方)に配置される。
【0022】
第2レンズG2をレンズ鏡筒10内に保持する第2レンズ保持枠22は、断面形状が略U字状の円筒形部材(同様に符号22とする)で構成されている。また、円筒形部材22の底部には、円形開口部22aが形成され、円筒形状で中心軸I方向に延在する外側部22bを有している。この円形開口部22aに第2レンズG2がはめ込まれ、円形開口部22aの端部に接着あるいはカシメ固定することで第2レンズ保持枠22に固定される。
【0023】
第2レンズ保持枠22の外側部22bの直径は、レンズ鏡筒10の内側部10aの直径Dより僅かに小さく形成されている。これにより、第2レンズ保持枠22は、レンズ鏡筒10の内側部10aに外側部22bが係合し、第2レンズG2をレンズ鏡筒10内に保持することができる。このように第2レンズ保持枠22の外側部22bの直径がレンズ鏡筒10の内側部10aの直径Dより僅かに小さく形成されているため、第2レンズG2は中心軸Iに直交する面内で移動し、レンズ中心と光軸Iとを一致させる調芯調整を行うことができる。
【0024】
第2レンズ保持枠22の外側部22bの第1レンズ保持枠21の端面21d側の面22c(図2上で下方側)は、中心軸Iに直交する面に対して所定の角度を有する面が形成されている。また、面22cは、面21dに略平行に形成されている。これにより、面21dと面22cは、略面接触状態で接触する。
【0025】
また、第2レンズ保持枠22外側部21bの面22cに対向する他端面22d(図2上で上方側)は、中心軸Iに直交する面に対して所定の角度を有する面が形成されている。なお、面22dは、面22cに略平行に形成されていても良い。
【0026】
また、第3レンズG3は、中心軸Iに沿った第2レンズG2の上方(図2上で上方)に配置される。
【0027】
第3レンズG3をレンズ鏡筒10内に保持する第3レンズ保持枠23は、断面形状が略U字状の円筒形部材(同様に符号23とする)で構成されている。また、円筒形部材23の底部には、円形開口部23aが形成され、円筒形状で中心軸I方向に延在する外側部23bを有している。この円形開口部23aに第3レンズG3がはめ込まれ、第3レンズG3は円形開口部23aの端部に接着あるいはカシメ固定することで第3レンズ保持枠23に固定される。
【0028】
第3レンズ保持枠23の外側部23bの直径は、レンズ鏡筒10の内側部10aの直径Dより僅かに小さく形成されている。これにより、第3レンズ保持枠23は、レンズ鏡筒10の内側部10aに外側部23bが係合し、第3レンズG3をレンズ鏡筒10内に保持することができる。このように第3レンズ保持枠23の外側部23bの直径がレンズ鏡筒10の内側部10aの直径Dより僅かに小さく形成されているため、第3レンズG3は中心軸Iに直交する面内で移動し、レンズ中心と光軸Iとを一致させる調芯調整を行うことができる。
【0029】
第3レンズ保持枠23の外側部23bの第2レンズ保持枠22の端面22d側の面23c(図2上で下方側)は、中心軸Iに直交する面に対して所定の角度を有する面が形成されている。また、面23cは、面22dに略平行に形成されている。これにより、面22dと面23cは、略面接触状態で接触する。
【0030】
また、第3レンズ保持枠23外側部23bの面23cに対向する他端面23d(図2上で上方側)は、中心軸Iに直交する面に対して所定の角度を有する面が形成されている。なお、面23dは、面23cに略平行に形成されていても良い。
【0031】
また、第4レンズG4は、中心軸Iに沿った第3レンズG3の上方(図2上で上方)に配置される。
【0032】
第4レンズG4をレンズ鏡筒10内に保持する第4レンズ保持枠24は、断面形状が略U字状の円筒形部材(同様に符号24とする)で構成されている。また、円筒形部材24の底部には、円形開口部24aが形成され、円筒形状で中心軸I方向に延在する外側部24bを有している。この円形開口部24aに第4レンズG4がはめ込まれ、第4レンズG4は円形開口部24aの端部に接着あるいはカシメ固定することで第4レンズ保持枠24に固定される。
【0033】
第4レンズ保持枠24の外側部24bの直径は、レンズ鏡筒10の内側部10aの直径Dより僅かに小さく形成されている。これにより、第4レンズ保持枠24は、レンズ鏡筒10の内側部10aに外側部24bが係合し、第4レンズG4をレンズ鏡筒10内に保持することができる。このように第4レンズ保持枠24の外側部24bの直径がレンズ鏡筒10の内側部10aの直径Dより僅かに小さく形成されているため、第4レンズG4は中心軸Iに直交する面内で移動し、レンズ中心と光軸Iとを一致させる調芯調整を行うことができる。
【0034】
第4レンズ保持枠24の外側部24bの第3レンズ保持枠23の端面23d側の面24c(図2上で下方側)は、中心軸Iに直交する面に対して所定の角度を有する面が形成されている。また、面24cは、面23dに略平行に形成されている。これにより、面23dと面24cは、略面接触状態で接触する。
【0035】
また、第4レンズ保持枠24外側部24bの面24cに対向する他端面24d(図2上で上方側)は、中心軸Iに直交する面に対して所定の角度を有する面が形成されている。なお、面24dは、面24cに略平行に形成されていても良い。
【0036】
また、第5レンズG5は、中心軸Iに沿った第4レンズG4の上方(図2上で上方)で、図1に示すレボルバ104側に配置される。
【0037】
第5レンズG4をレンズ鏡筒10内に保持する第5レンズ保持枠25は、断面形状が略U字状の円筒形部材(同様に符号25とする)で構成されている。また、円筒形部材25の底部には、円形開口部25aが形成され、円筒形状で中心軸I方向に延在する外側部25bを有している。この円形開口部25aに第5レンズG5がはめ込まれ、第5レンズG5は円形開口部25aの端部に接着あるいはカシメ固定することで第5レンズ保持枠25に固定される。
【0038】
第5レンズ保持枠25の外側部25bの直径は、レンズ鏡筒10の内側部10aの直径Dより僅かに小さく形成されている。これにより、第5レンズ保持枠25は、レンズ鏡筒10の内側部10aに外側部25bが係合し、第5レンズG5をレンズ鏡筒10内に保持することができる。このように第5レンズ保持枠25の外側部25bの直径がレンズ鏡筒10の内側部10aの直径Dより僅かに小さく形成されているため、第5レンズG5は中心軸Iに直交する面内で移動し、レンズ中心と光軸Iとを一致させる調芯調整を行うことができる。
【0039】
第5レンズ保持枠25の外側部25bの第4レンズ保持枠24の端面24d側の面25c(図2上で下方側)は、中心軸Iに直交する面に対して所定の角度を有する面が形成されている。また、面25cは、面24dに略平行に形成されている。これにより、面24dと面25cは、略面接触状態で接触する。
【0040】
また、第5レンズ保持枠25外側部25bの面25cに対向する他端面25d(図2上で上方側)は、中心軸Iに直交する面に対して所定の角度を有する面が形成されている。なお、面25dは、面25cに略平行に形成されていても良い。
【0041】
そして、第1レンズ枠部材21から第5レンズ枠部材25は、円筒状の押さえ環30がねじ込まれることによりレンズ鏡筒10内に固定される。円筒状の押さえ環30は、その外周部にレンズ鏡筒10の内周部に形成されたネジ部10bに螺合するネジ30aが形成されている。また、第5レンズ保持枠25の面25dに当接する面30cは、中心軸Iに直交する面に対して所定の角度を有する面が形成されている。また、面30cは、面25dに略平行に形成されている。これにより、面25dと面30cは、略面接触状態で接触する。
【0042】
円筒状の押さえ環30がねじ込まれると、第1レンズ枠部材21から第5レンズ枠部材25は、レンズ鏡筒10の先端13方向に押圧され第1レンズG1から第5レンズ5Gがレンズ保持枠21から25を介してレンズ鏡筒10内に固定される。この際、面13c〜30cは、それぞれ面接触し、個々のレンズ保持枠21〜25が中心軸Iに直交する方向にずれることを防止する。
【0043】
このようにして、本実施形態にかかる対物レンズ1が構成されている。なお、各レンズ保持枠21〜25の各面21c〜25dは、レンズ鏡筒10の内側一周にわたって形成しても良いし、一部分が面接触するように形成しても良い。一周にわたって形成することで製造が簡単になる。
【0044】
また、本実施形態の対物レンズ1では、第3レンズ保持枠23と第4レンズ枠24との間に、レンズ間の光軸上の距離を調節するために、図3に示す略輪帯状のワッシャ部材26が面23dと面24cとの間に配置されている。ワッシャ部材26は、円錐形状の所定厚さの金属板、を円錐の中心軸に対して直交する2平面でカットした形状を有している。また、小さい方の直径は上記各レンズ枠の内径dに略等しく、大きい方の直径D’は上記各レンズ枠の外径(レンズ鏡筒10の内径Dより僅かに小さい径D’)に略等しく形成されている。これにより外側の面26cと内側の面26dとは略平行に形成されている。そして、第3レンズ保持枠23と第4レンズ枠24との間に挟み込んだ際、面26cは面23dに面接触し、面26dは面24cに面接触する。
【0045】
また、図4に示すように、別のワッシャ部材126は、輪帯状の薄板の周方向の一部を切り欠いた形状のものとすることもできる。輪帯状の薄板の周方向の一部を切り欠くことで、ワッシャ部材126が平板であっても、各レンズ保持枠の間に挟持された際、各レンズ保持枠相互の形状に変形して、各レンズ保持枠間の距離を調節することができると共に、各レンズ保持枠を保持することができる。
【0046】
なお、ワッシャ部材26、126は、第3レンズ保持枠23と第4レンズ枠24との間のみならず、第1レンズ保持枠21と第2レンズ枠22との間、第2レンズ保持枠22と第3レンズ枠23との間、第4レンズ保持枠24と第5レンズ枠25との間にも配置できることは言うまでもない。
【0047】
本実施形態の対物レンズ1では、レンズ鏡筒10の先端内側の面13cから各レンズ保持枠21〜25および押さえ環30のそれぞれの端面21c〜30cは、中心軸Iに直交する面に対して所定の角度を有する面がレンズ鏡筒10内側一周にわたって形成され、各面が面接触するように形成されている。この結果、中心軸Iに対して直交する方向の振動や衝撃が加わった場合でも、レンズ厚さが厚く重量の重いレンズ(例えば、第4レンズG4など)を保持するレンズ保持枠24が、中心軸Iに直交する方向にずれることを防止することができ、レンズの光軸ずれを防ぐことができる。なお、このずれを防止する効果は、レンズ保持枠24のみならず、中心軸Iに直交する面に対して傾斜した面形状を有する他のレンズ保持枠も有している。また、接触面を傾斜して形成することで、この面の接触抵抗を増加させることができることもレンズ保持枠のずれ防止に効果がある。
【0048】
以上述べたように、本実施形態の対物レンズ1は、レンズ鏡筒10に形成された不図示の芯ずれ調整孔を介して各レンズの芯ずれを調整したあと押さえ環30でレンズ保持部材21〜25を介してレンズG1〜G5をレンズ鏡筒10内に固定することで、中心軸Iに対して直交する方向の振動や衝撃が加わってもレンズG1〜G5の光軸ずれを防止することができる。
【0049】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態にかかる対物レンズ101について図5を参照しつつ説明する。第2実施形態の対物レンズ101は、第1レンズ保持枠121、第2レンズ保持枠122、および第3レンズ保持枠123が第1実施形態の対物レンズ1と異なっている。第1実施形態の対物レンズ1と同様の構成には同じ符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0050】
本第2実施形態の対物レンズ101は、各レンズをレンズ鏡筒10内に挿入して押さえ環30で全レンズを仮固定した後、調芯のためのレンズである第2レンズG2を光軸に直交する面内で移動して芯出しをし、本固定を行うように構成している。以下、詳説する。
【0051】
図5において、対物レンズ101は、レンズ鏡筒10に、第1レンズG1〜第5レンズG5をそれぞれレンズ保持枠121、122、123、24、25を介して挿入し、押さえ環30で固定するように構成されている。
【0052】
第1レンズG1をレンズ鏡筒10内に保持する第1レンズ保持枠121は、断面形状が略U字状の円筒形部材(同様に符号121とする)で構成されている。また、円筒形部材121の底部には、円形開口部121aが形成され、円筒形状で中心軸I方向に延在する外側部121bを有している。この円形開口部121aに第1レンズG1がはめ込まれ、第1レンズG1は円形開口部121aの端部に接着あるいはカシメ固定することで第1レンズ保持枠121に固定される。
【0053】
第1レンズ保持枠121の外側部121bの直径は、レンズ鏡筒10の内側部10aの直径Dより僅かに小さく形成されている。これにより、第1レンズ保持枠121は、レンズ鏡筒10の内側部10aに外側部121bが係合し、第1レンズG1をレンズ鏡筒10内に保持することができる。このように第1レンズ保持枠21の外側部121bの直径がレンズ鏡筒10の内側部10aの直径Dより僅かに小さく形成されているため、第1レンズG1は中心軸Iに直交する面内で移動し、レンズ中心と光軸Iとを一致させる調芯調整を行うことができる。
【0054】
第1レンズ保持枠121の外側部121bの第1レンズG1固定側(図2上で下方側)の端部には、中心軸Iに直交する面に対して所定の角度を有する面121cが形成されている。また、面121cは、レンズ鏡筒10の突起部13でレンズ鏡筒10の内側部分に形成された面13cと略平行に形成されている。これにより、面13cと面121cは、略面接触状態で接触する。
【0055】
また、第1レンズ保持枠121外側部121bの面121cに対向する他端面121d(図2上で上方側)は、中心軸Iに直交する面に対して略平行な面が形成されている。
【0056】
また、第2レンズG2は、中心軸Iに沿った第1レンズG1の上方(図2上で上方)に配置される。
【0057】
第2レンズG2をレンズ鏡筒10内に保持する第2レンズ保持枠122は、断面形状が略U字状の円筒形部材(同様に符号122とする)で構成されている。また、円筒形部材122の底部には、円形開口部122aが形成され、円筒形状で中心軸I方向に延在する外側部122bを有している。この円形開口部122aに第1レンズG2がはめ込まれ、第2レンズG2は円形開口部122aの端部に接着あるいはカシメ固定することで第2レンズ保持枠122に固定される。
【0058】
第2レンズ保持枠122の外側部122bの直径は、レンズ鏡筒10の内側部10aの直径Dより僅かに小さく形成されている。これにより、第2レンズ保持枠122は、レンズ鏡筒10の内側部10aに外側部122bが係合し、第2レンズG2をレンズ鏡筒10内に保持することができる。このように第2レンズ保持枠22の外側部122bの直径がレンズ鏡筒10の内側部10aの直径Dより僅かに小さく形成されているため、第2レンズG2は中心軸Iに直交する面内で移動し、レンズ中心と光軸Iとを一致させる調芯調整を行うことができる。
【0059】
第2レンズ保持枠122の外側部122bの第1レンズ保持枠121の端面121d側の面122c(図2上で下方側)は、中心軸Iに直交する面に対して略平行な面が形成されている。また、面122cは、面121dに略平行に形成されている。これにより、面121dと面122cは、略面接触状態で接触する。
【0060】
また、第2レンズ保持枠122外側部122bの面122cに対向する他端面122d(図2上で上方側)は、面122cと同様に中心軸Iに直交する面に対して略平行な面が形成されている。
【0061】
また、第2レンズ保持枠122が係合するレンズ鏡筒10の外周部分には、調芯のための部材、例えば調芯棒など、を挿入するための複数の孔110が形成されている。なお、孔110は、レンズ鏡筒10の一周の少なくとも三箇所に形成されていることが好ましい。さらに孔110は孔同士の位置が等しい中心角度で形成されていることが好ましい。このように構成することで、第2レンズG2を中心軸Iに直交する面内で移動することが可能になる。
【0062】
レンズ鏡筒10と第2レンズ保持部材122をこのような形状に構成することで、第2レンズG2で調芯調整を行うことを可能にしている。
【0063】
また、第3レンズG3は、中心軸Iに沿った第2レンズG2の上方(図2上で上方)に配置される。
【0064】
第3レンズG3をレンズ鏡筒10内に保持する第3レンズ保持枠123は、断面形状が略U字状の円筒形部材(同様に符号123とする)で構成されている。また、円筒形部材123の底部には、円形開口部123aが形成され、円筒形状で中心軸I方向に延在する外側部123bを有している。この円形開口部123aに第3レンズG3がはめ込まれ、第3レンズG3は円形開口部123aの端部に接着あるいはカシメ固定することで第3レンズ保持枠123に固定される。
【0065】
第3レンズ保持枠123の外側部123bの直径は、レンズ鏡筒10の内側部10aの直径Dより僅かに小さく形成されている。これにより、第3レンズ保持枠123は、レンズ鏡筒10の内側部10aに外側部123bが係合し、第3レンズG3をレンズ鏡筒10内に保持することができる。このように第3レンズ保持枠123の外側部23bの直径がレンズ鏡筒10の内側部10aの直径Dより僅かに小さく形成されているため、第3レンズG3は中心軸Iに直交する面内で移動し、レンズ中心と光軸Iとを一致させる調芯調整を行うことができる。
【0066】
第3レンズ保持枠123の外側部123bの第2レンズ保持枠122の端面122d側の面123c(図2上で下方側)は、中心軸Iに直交する面に対して略平行な面が形成されている。また、面123cは、面122dに略平行に形成されている。これにより、面122dと面123cは、略面接触状態で接触する。
【0067】
また、第3レンズ保持枠123外側部123bの面123cに対向する他端面123d(図2上で上方側)は、中心軸Iに直交する面に対して所定の角度を有する面が形成されている。
【0068】
また、第4レンズG4と第5レンズG5は、第1実施形態と同様に構成されているので詳細な説明を省略する。なお、各レンズ保持枠21〜25の各面21c〜25dは、レンズ鏡筒10の内側一周にわたって形成しても良いし、一部分が面接触するように形成しても良い。一周にわたって形成することで製造が簡単になる。
【0069】
以上述べたように、調芯レンズである第2レンズG2を保持するレンズ保持枠122の両端面122c、122dを、中心軸Iに直交する面に対して略平行に形成し、この端面122cに接する面121d、面122dに接する面123cをそれぞれ中心軸Iに直交する面に対して略平行に形成している。これにより第2レンズG2を中心軸Iに直交する面内で容易に移動することが可能になり、調芯時の第2レンズG2の移動が容易となる。なお、第2レンズG2は、調芯後孔110から接着剤を注入して固定しても良いし、第2レンズG2が軽量で中心軸Iに直交する方向の振動や衝撃で移動する心配がなければそのままとしても良い。
【0070】
また、上述のレンズ保持枠に形成されたそれぞれの傾斜面の中心軸Iに直交する面に対してなす角度は数度から数十度の範囲で形成されていれば良い。具体的には、2°〜60°、好ましくは5°〜45°、さらに好ましくは5°〜20°であれば振動や衝撃でレンズ保持枠が移動することを防止することができる。
【符号の説明】
【0071】
1、101 対物レンズ
10 レンズ鏡筒
11 雄ネジ
12 同付け面
13 端部(突起部)
21 第1レンズ保持枠
22 第2レンズ保持枠
23 第3レンズ保持枠
24 第4レンズ保持枠
25 第5レンズ保持枠
26 ワッシャ部材
30 押さえ環
200 顕微鏡
201 顕微鏡本体
202 接眼鏡筒
204 レボルバ
205 標本
206 ステージ
207 透過照明用光源
208 フォーカスノブ
209 接眼レンズ
G1 第1レンズ
G2 第2レンズ
G3 第3レンズ
G4 第4レンズ
G5 第5レンズ
I 中心軸(光軸)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のレンズをそれぞれレンズ保持枠を介してレンズ鏡筒内に固定する対物レンズにおいて、
前記レンズ保持枠は略円筒状部材からなり、
前記円筒状部材の二つの端面の少なくとも一方が、前記レンズ鏡筒の中心軸に直交する平面に対して傾斜して形成されていることを特徴とする対物レンズ。
【請求項2】
前記レンズ保持部材の互いに接触する前記端面の傾斜は、略等しく形成されていることを特徴とする請求項2に記載の対物レンズ。
【請求項3】
前記複数のレンズのうち調芯を行うレンズの前記レンズ保持枠の前記二つの端面は、前記レンズ鏡筒の中心軸に直交する平面に略平行に形成され、当該調芯を行うレンズの前記レンズ保持枠を挟持する他のレンズの前記レンズ保持枠の二つの端面それぞれは、一端面は前記レンズ鏡筒の中心軸に直交する平面に略平行に形成され、他端面は前記レンズ鏡筒の中心軸に直交する平面に対して傾斜して形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の対物レンズ。
【請求項4】
前記レンズ保持枠の間に、前記レンズ保持枠で保持されたレンズの光軸上の距離を変更する略輪帯状のワッシャ部材を有することを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の対物レンズ。
【請求項5】
前記ワッシャ部材は、当該ワッシャ部材を挟持する前記レンズ保持枠の端面の傾斜と略等しく形成された面を有することを特徴とする請求項4に記載の対物レンズ。
【請求項6】
前記ワッシャ部材は、当該ワッシャ部材の周方向の一部が切り欠かれて形成されていることを特徴とする請求項4に記載の対物レンズ。
【請求項7】
前記レンズ鏡筒は、中心角が略等しい少なくとも三つの孔を有することを特徴とする請求項1から6のいずれか一項に記載の対物レンズ。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか一項に記載の対物レンズを有することを特徴とする顕微鏡。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−20134(P2013−20134A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−153994(P2011−153994)
【出願日】平成23年7月12日(2011.7.12)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】