説明

対面式キッチン

【課題】二人のユーザーが、対面式キッチンの前方側と後方側で、調理などにおける同一または異なる各種作業をそれぞれ独立して同時に行うことができ、また、ユーザーが一人でも二人でも、作業時の身体の動線が短くて作業の負担を軽減することができる対面式キッチンを提供する。
【解決手段】対面式キッチン1は、平面視で左右方向の中心軸線CL上に水栓装置4とシンク5とコンロバーナ6とを配置している。天板部3には、前方側に位置して左右方向に延びた前方側作業領域7と、後方側に位置して左右方向に延びた後方側作業領域8とを確保している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、キャビネットとこのキャビネットの上部を覆って取付けられた天板部とを有し、二人のユーザーが調理等の作業を独立して同時に行うことのできる対面式キッチンに関する。
【背景技術】
【0002】
図10は従来の対面式キッチンの平面図である。この対面式キッチン100で二人のユーザーM,Mが前方側に並んで調理を行うためには、対面式キッチン100を左右方向に延ばす必要がある。
この対面式キッチン100では、ユーザーMは、対面式キッチン100の前方に立って中央部の調理作業領域101で調理を行い、後方側の配膳領域102で配膳を行うことができるようになっている。
【0003】
本発明に関連する従来技術としては、特許文献1(特開2006−333975号公報)に、配管類を覆ったカバー部材を天板下部で簡易に取付けることができる調理実習台が記載され、複数の実習生が調理などの作業を同時に行うことができるようになっている。
また、特許文献2(特開2001−17248号公報)には、中心線に対して前後対称形状に形成した天板とキャビネットとを有する厨房家具が記載されている。
【0004】
【特許文献1】特開2006−333975号公報
【特許文献2】特開2001−17248号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
図10に示す対面式キッチン100で、二人のユーザーM,Mが同時に作業を行う場合には、二人とも対面式キッチン100の前方側に並んで立っているので、一方のユーザーMがある作業を行なっている間は、この一方のユーザーMが邪魔になるので他のユーザーMは別の作業を行わざるを得ない。
また、この対面式キッチン100を一人のユーザーMが使用するときは、対面式キッチン100の間口が長いので、ユーザーMが作業時に移動する身体の動線Bが長くなって、作業の負担が大きくなっていた。
シンク103とコンロ104との間に調理作業領域101を配置した場合には、調理器具や食材などを持ち運ぶときの手の動線B1,B2が長くなりがちであり、これもユーザーMにとって負担になっていた。
このように、シンク103,調理作業領域101およびコンロ104を横並びに配置すると、ワークトップの間口がたとえば約1,800mm以上になってしまう。また、コンロバーナや水栓装置105の配置や、シンク103およびコンロ104の形状が、すべてワークトップの前方側からのアプローチを前提とした設計になっていた。
【0006】
上述のように対面式キッチン100は、シンク103,調理作業領域101およびコンロ104を横並びに配置した構成なので、ワークトップの間口は所定寸法以上必要である。
そして、調理作業の際には、シンク103,調理作業領域101およびコンロ104のための各作業スペースを何度も行き来するので、ワークトップの左右方向の全長が長ければ長いほど、ユーザーMにとって移動距離(動線B)が長くなって作業の負担が大きくなっていた。
台所のスペースが比較的狭くて、対面式キッチン100に対してある一定寸法以上の設置スペースを確保できない場合には、後方側のカウンタートップにシンク103かコンロ104のどちらかを配置した二列形の構成をとるか、または、カウンタートップをL形にしない限り、キッチンを対面式にできなかった。
また、対面式キッチン100のワークトップは、主に長辺の片側(すなわち、前方側)から使用することを前提として、シンク103,調理作業領域101,コンロ104の形状および配置で、水栓装置105の配置になっている。そのため、対面式キッチン100の後方側から調理を行うことは困難な構成になっていた。
【0007】
特許文献1に記載の調理実習台は、複数の実習生が調理などの作業を行うことはできるが、同一または異なる各種作業をそれぞれ独立して同時に行うための配慮はなされていなかった。
また、特許文献2に記載の厨房家具は、天板とキャビネットが対称形状に形成されているが、これは天板とキャビネットの共用化を図って製造および在庫管理を簡略化して原価低減を行うためのものであり、本発明とは目的および作用効果が異なっている。
【0008】
本発明は、このような課題を解決するためになされたもので、二人のユーザーが、対面式キッチンの前方側と後方側で、調理などにおける同一または異なる各種作業をそれぞれ独立して同時に行うことができ、また、ユーザーが一人でも二人でも、作業時の身体の動線が短くて作業の負担を軽減することができる対面式キッチンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述の目的を達成するため、本発明にかかる対面式キッチンは、キャビネットと、このキャビネットの上部を覆って取付けられた天板部とを有する対面式キッチンであって、平面視で左右方向の中心軸線上にまたはこの中心軸線の近傍に沿って、水栓装置とシンクと少なくとも一つのコンロバーナとを配置し、前記天板部には、前方側に位置して左右方向に延びた前方側作業領域と、後方側に位置して左右方向に延びた後方側作業領域とを確保している。
この対面式キッチンは、左右方向の前記中心軸線に対して前後対称の形状を有しており、前記水栓装置,前記シンクおよび前記コンロバーナはこの中心軸線上に配置されているのが好ましい。
好ましくは、前記天板部は、この天板部の外周部を構成して前記前方側作業領域と前記後方側作業領域とを有するワークトップ(外周側天板)と、平面視でこのワークトップに囲まれて内方に配置され、前記水栓装置,前記シンクおよび前記コンロバーナが少なくとも設けられた中央側天板とを有している。
前記ワークトップの上面と前記中央側天板の上面は、ほぼ面一になっているのが好ましい。
好ましくは、前記コンロバーナを有するコンロは、前記コンロバーナのみが前記中央側天板より上方に露出している。
前記キャビネットの前面には、少なくとも引き出しが引き出し収納自在に設けられ、前記キャビネットの後面にも、少なくとも他の引き出しが引き出し収納自在に設けられているのが好ましい。
また、前記キャビネットの前記前面と前記後面には、前記コンロバーナを操作するためのコンロ操作部がそれぞれ設けられているのが好ましい。
好ましくは、補助プレートが前記シンクの一部を覆うように着脱可能に設けられており、この補助プレートは前記シンクの前後の外周縁部に掛け渡されている。
【発明の効果】
【0010】
本発明にかかる対面式キッチンは、上述のように構成したので、二人のユーザーが対面式キッチンの前方側と後方側で、調理などにおける同一または異なる各種作業をそれぞれ独立して同時に行うことができ、また、ユーザーが一人でも二人でも、作業時の身体の動線が短くてすみ、作業の負担が軽減される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
下記の実施例にかかる対面式キッチンは、キャビネットと、このキャビネットの上部を覆って取付けられた天板部とを有している。この対面式キッチンでは、平面視で左右方向の中心軸線上に(または、この中心軸線の近傍に沿って)、水栓装置とシンクと少なくとも一つのコンロバーナとを配置している。そして、天板部には、前方側に位置して左右方向に延びた前方側作業領域と、後方側に位置して左右方向に延びた後方側作業領域とが積極的に確保されている。
これにより、二人のユーザーが、対面式キッチンの前方側と後方側で、調理などにおける同一または異なる各種作業をそれぞれ独立して同時に行うことができ、また、ユーザーが一人でも二人でも、作業時の身体の動線を短くして作業の負担を軽減するという目的を実現している。
本発明における対面式キッチンは、台所やダイニングルームなどに設置される住宅設備機器の一種であり、たとえば、対面式のシステムキッチンやセクショナルキッチンなどが一般的である。
【実施例】
【0012】
以下、本発明にかかる一実施例を図1ないし図9を参照して説明する。
図1ないし図9は本発明の一実施例を示す図で、図1は、対面式キッチンを一方向から見たときの斜視図、図2は、対面式キッチンを他の方向から見たときの斜視図、図3は、補助プレートを取り外した状態の対面式キッチンの斜視図、図4は対面式キッチンの平面図である。
なお、説明の便宜上、各図中の符号D1,D2,D3,D4で示す各方向を、それぞれ対面式キッチンの左方,右方,前方,後方とする。
【0013】
図1ないし図4に示すように、対面式キッチン1は、全体的に左右方向に延びた所定の形状(ここでは、矩形状)をなして、台所やダイニングルームに設置されている。対面式キッチン1は、左右方向に延びた矩形状のキャビネット2と、キャビネット2の上部を覆って取付けられた天板部3とを有している。
対面式キッチン1は、平面視で左右方向の中心軸線CL上に(または、この中心軸線CLの近傍に沿って)、水栓装置4とシンク5と少なくとも一つの(ここでは、二つの)コンロバーナ6とが配置されている。
天板部3には、前方側に位置して左右方向に延びた前方側作業領域7と、後方側に位置して左右方向に延びた後方側作業領域8とが、積極的に確保されている。前方側作業領域7と後方側作業領域8の各奥行き寸法(前後方向の寸法)Eはたとえば150mm以上であり、この十分な奥行き寸法Eにより、調理用の作業スペースが十分に確保されている。
【0014】
したがって、二人のユーザーM,Mは、対面式キッチン1の前方側と後方側で、相手に邪魔されず且つ相手の邪魔にならず、調理などにおける同一または異なる各種作業をそれぞれ独立して同時に行うことができる。
天板部3に前方側作業領域7と後方側作業領域8を確保したので、シンク5やコンロバーナ6の各前方や後方の作業領域7,8に調理道具や食材などを置くことができ、天板部3の中央の調理スペースを常に整然とした状態に保つことができる。
水栓装置4,シンク5および複数(ここでは、二つ)のコンロバーナ6は、中心軸線CL上に配置されているので、前方のユーザーMと後方のユーザーMのいずれからも近いところに位置することになり、ユーザーM,Mは、これら水栓装置4などに容易に手を伸ばして作業することができる。
対面式キッチン1の前方側では一人のユーザーMが作業し、後方側では他の一人のユーザーMが作業を行うので、対面式キッチン1の間口Lが短くなる。その結果、対面式キッチン1を使用するユーザーが一人でも二人でも、作業時の身体の動線Bが短くてすみ、ユーザーMにとって作業の負担が軽減される。
【0015】
前方側作業領域7と後方側作業領域8は、それぞれ対面式キッチン1の間口Lのほぼ全体に設定されている。したがって、前方のユーザーMは、広い前方側作業領域7を使って各種作業を自在に且つ快適に行うことができ、また、後方のユーザーMも、広い後方側作業領域8を使って各種作業を自在に且つ快適に行うことができる。この作業を行う際に、ユーザーM,M同士は、相手に邪魔されず且つ相手の邪魔にならない。
前方側作業領域7と後方側作業領域8は、それぞれ前方側のユーザーMと後方側のユーザーMのすぐ近くに配置されているので、各ユーザーM,Mは各作業領域7,8で、力を要する作業(たとえば、食材を切ったり、混ぜたり、こねたりする作業)を容易に且つ能率よく行うことができ、使い勝手がよい。
【0016】
対面式キッチン1は、間口の全長(たとえば、長さ寸法L=1,800mm)に収められたモジュールになっているので、間口が一間半の台所スペースであっても、約800mmの幅の通路を確保しつつ対面式キッチン1を設置することができる。また、間口が二間の台所スペースであれば、約800mmの幅の通路を両側に確保したアイランドスタイルの対面式キッチン1を実現できる。
このように、対面式キッチン1は間口Lが短いので、台所におけるキッチンのための設置スペースに制約のあることが多いわが国の住宅事情に合致する。
上述のように、対面式キッチン1は、片側(前方側または後方側)での調理作業はもちろんのこと、両側(前方側および後方側)からであっても、同等に調理作業が可能なスペースを確保しながら、比較的狭小な台所スペースに設置可能なモジュールの対面式のキッチンにすることができる。
【0017】
本実施例では、対面式キッチン1は、左右方向の中心軸線CLに対して前後対称の形状を有し、水栓装置4,シンク5およびコンロバーナ6は、この中心軸線CL上に配置されている。
その結果、水栓装置4やコンロバーナ6の配置、およびシンク5やコンロ9の形状を共通化することができ、キャビネット2,天板部3の設計,製造および各種部品の在庫管理が容易になる。
【0018】
キャビネット2の前面(前方D3側の面)には、少なくとも引き出し(たとえば、複数の引き出し15,16,17など)が、引き出し収納自在に設けられ、被収納物を収納可能になっている。
また、キャビネット2の後面(後方D4側の面)にも、少なくとも他の引き出し(たとえば、複数の引き出し15,16,17など)が引き出し収納自在に設けられ、被収納物を収納可能になっている。
これにより、対面式キッチン1の前方側で作業を行うユーザーMと、後方側で作業を行う他のユーザーMは、反対側にわざわざ移動しなくても、被収納物を引き出しに対して出し入れして、調理などの作業を独立して同時に行うことができる。
【0019】
対面式キッチン1の前方側と後方側には、中心軸線CLに対して対称な位置に食器洗い乾燥機18がそれぞれ設けられている。キャビネット2の前面と後面には、コンロ9のコンロバーナ6を操作するためのコンロ操作部19がそれぞれ設けられている。
その結果、各ユーザーMは、わざわざ反対側に移動しなくても、食器洗い乾燥機18で食器を洗浄,乾燥させ、また、コンロ操作部19を操作して各コンロバーナ6を他のユーザーMから独立して同時に使用することができる。
【0020】
天板部3は、天板部3の外周部を構成して前方側作業領域7と後方側作業領域8とを有するワークトップ(すなわち、外周側天板)10と、平面視でこのワークトップ10に囲まれて内方に配置され、水栓装置4,シンク5およびコンロバーナ6が少なくとも設けられた中央側天板11とを有している。
天板部3を、ワークトップ10と中央側天板11の二つの部材に分割したので、ワークトップ10と中央側天板11をそれぞれ最適な素材で構成することができる。
たとえば、中央側天板11は、水栓装置4とシンク5とコンロ9とが設けられているので、耐熱性に優れて傷が付きにくいステンレス製板により構成されている。他方、ワークトップ10は、人造大理石により構成すれば、高熱に弱く傷が付きやすいが外観的に美しく高級感があり且つ耐久性に優れている点で好ましい。
【0021】
天板部3の上面全体を平面状にするために、ワークトップ10の上面と中央側天板11の上面はほぼ面一になっている。これにより、天板部3の上面に段差がなくなって、調理器具や食器類を天板部3上のどこに置いても安定するので好ましい。
前記構成の天板部3の上面(すなわち、シンク5,コンロバーナ6を除いた平面状の上面)は、段差がないので広い調理台として使用することができ、特に、コンロバーナ6のすぐ近くまで調理スペースとして使用することができるので、使い勝手がよい。
【0022】
図5は天板部3の部分拡大断面図である。図5(A)に示す実施例にかかる天板部3では、ワークトップ10と中央側天板11の各上面を面一に構成している。この場合には、ワークトップ10と中央側天板11との間に段差がないので、調理器具や食器などを常に安定した状態で天板部3に置くことができる。
図5(B)に示す変形例の天板部3では、ワークトップ10の上面より、中央側天板11の上面を若干低くしている。こうすれば、ワークトップ10上にこぼれた水が中央側天板11側に流れてシンク5に流入するので、ワークトップ10上の水が床面を濡らす恐れがない。
さらに、図5(C)に示す変形例では、ワークトップ10の上面を中央側天板11の上面より若干低くしている。この場合には、ワークトップ10の上に置いた食器類や調理用器具などが、中央側天板11の縁11aに当たって移動が規制されるので、うっかりシンク5内に落ちることがなくなる。
本実施例および変形例では、ステンレス製の中央側天板11と人造大理石製のワークトップ10は、金具28(または、ねじ,接着剤)で固定されているか、または接合部に樹脂を注入することにより固定されている。
このように、対面式キッチン1の実際の使用の状況や目的に応じて、図5(A),(B),(C)にそれぞれ示す天板部3の構成を使い分けて製造するのが好ましい。
なお、天板部3をワークトップ10と中央側天板11に分割した場合を示したが、天板部3の全体をステンレスなど金属により一体的に形成した場合であってもよい。
【0023】
本実施例では、コンロ9は二つのコンロバーナ6を有しており、コンロバーナ6のみが中央側天板11より上方に露出している。これにより、中央側天板11において、コンロバーナ6以外の部分の上面を平面状に形成して、天板部3に広い平面状の調理スペースを確保することができる。
【0024】
対面式キッチン1では、二人のユーザーM,Mが同時にシンク5での作業を行う場合に備えて、シンク5は、平面視で左右方向に比較的長く延びた形状になっている。その結果、シンク5にスペースをとられてしまって天板部3での調理用スペースが狭くなるので、シンク5の部分に補助プレート20が設けられている。
シンク5の全体を使用しなくてもよいときに、補助プレート20を使用できるようになっており、補助プレート20は、シンク5の一部を覆うように着脱可能になっている。
補助プレート20は、シンク5の前後の外周縁部21に係合して掛け渡されるようになっており、シンク5の外周縁部21に係合して左右方向にスライド可能である。これにより、補助プレート20を、左右方向の任意の位置に移動させたり、使用しないときには取り外すことができる。
【0025】
補助プレート20は平面視で矩形をなしており、その上面は、コンロバーナ6の周囲における中央側天板11の上面とほぼ面一になるような厚みを有している。したがって、ワークトップ10,中央側天板11および補助プレート20の各上面が合わさって、全体的に段差のないフラットな状態になる。
これにより、シンク5の全体を使用しないときに、補助プレート20を外周縁部21に係合させて取付ければ、補助プレート20が天板部3の一部を構成することになって、天板部3と補助プレート20により、フラットで広い調理台を確保することができる。
補助プレート20があれば、シンク5のスペースの一部を調理スペースとして使い分けることができるので、平面視で天板部3の全体をコンパクトにすることができる。
【0026】
図6は、対面式キッチン1における天板部3の使い方の一例を示す平面図、図7は、天板部3の他の使い方を示す平面図、図8は、天板部3のさらに他の使い方を示す平面図、図9は、対面式キッチン1が設置された住宅22の一部を示す平面図である。
図6ないし図8に示す対面式キッチン1では、前方のユーザーMと後方のユーザーMの二人のユーザーのために、天板部3上にそれぞれ広い作業領域が確保されていることが分かる。
たとえば、図6に示す例では、前方側のユーザーMは、前方側作業領域7,コンロバーナ6の手前の作業領域23,補助プレート20を含む中央部の作業領域24を使用して、各種作業を後方側のユーザーMから独立して行うことができる。
これに対して後方側のユーザーMは、後方側作業領域8,コンロバーナ6より手前(後方側)の作業領域23,補助プレート20を含む中央部の作業領域24が確保されているので、これらの領域8,23,24を使用して、各種作業を前方側のユーザーMから独立して行うことができる。
天板部3上で調理用器具や食材などを持ち運ぶときの手の動線B3,B4,B5は短くてすむので、両方のユーザーM,Mにとって作業の負担が少ない。
図7,図8では、作業の内容によって変化する作業領域7,8,23,24の一例を示している。
【0027】
本発明では、対面式キッチン1に、前方側作業側領域7と後方側作業領域8を積極的に確保したので、前方のユーザーMと後方のユーザーMは、対面式キッチン1の前方側と後方側で、相手に邪魔されず且つ相手の邪魔にならず、同一または異なる各種作業をそれぞれ独立して同時に行うことができる。
また、従来は必要としていた一定寸法以上の間口を確保できない比較的狭小な台所スペースであっても、本実施例の対面式キッチン1は、間口Lが短くてコンパクトなので、対面スタイルのキッチンを実現することができる。
このように、本発明は、一台の対面式キッチン1で二人のユーザーM,Mが同時に自由に調理を行いたいという要求と、台所スペースが狭いが対面スタイルのキッチンが欲しいという要求の両方を、同時に実現することができる。
【0028】
ユーザーMが一人の場合でも二人の場合でも、作業時に自分自身が移動するための身体の動線Bと、調理用器具や食器などを持ち運ぶときの手の動線B3,B4,B5とが短くて済むので、ユーザーMにとっての作業の負担が軽減される。
対面式キッチン1に、前方側作業側領域7と後方側作業領域8を積極的に確保したので、調理作業領域をシンク5やコンロ9と並べて天板部中央に確保する必要がなくなる。その結果、対面式キッチン1の間口Lが短くてすむので、ユーザーMが左右方向に移動する移動距離(動線B)が短くなって、作業の負担が軽減する。
また、天板部3に前方側作業側領域7と後方側作業領域8があるので、天板部3上にこぼれた水が、対面式キッチン1の外部に流れて床面を濡らす恐れが少なくなる。
【0029】
図9は、対面式キッチン1が台所25に設置され、この台所25に隣接するダイニングルーム26にテーブル27が設置された場合を示している。
この場合、二人のユーザーM,Mが、対面式キッチン1の前方側と後方側で、調理などをそれぞれ独立して同時に行い、矢印に示すようにそれぞれ独立して移動することができるので、作業の能率がよい。
【0030】
本実施例では、左右方向の中心軸線CLが直線状で、対面式キッチン1の全体が矩形状をなしている場合を示したが、中心軸線CLは、曲線,L形のように直線以外の場合であってもよい。
たとえば、中心軸線CLが曲線の場合には、対面式キッチン1は全体的に平面視で湾曲した形状を有することになり、または、中心軸線CLがL形の場合には、対面式キッチン1は平面視でL形になる。
【0031】
以上、本発明の実施例を説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲で種々の変形,付加などが可能である。
なお、各図中同一符号は同一または相当部分を示す。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、キャビネットとこのキャビネットの上部を覆って取付けられた天板部とを有する対面式キッチンに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】図1ないし図9は本発明の一実施例を示す図で、図1は、対面式キッチンを一方向から見たときの斜視図である。
【図2】対面式キッチンを他の方向から見たときの斜視図である。
【図3】補助プレートを取り外した状態の対面式キッチンの斜視図である。
【図4】対面式キッチンの平面図である。
【図5】天板部の部分拡大断面図である。
【図6】対面式キッチンにおける天板部の使い方の一例を示す平面図である。
【図7】天板部の他の使い方を示す平面図である。
【図8】天板部のさらに他の使い方を示す平面図である。
【図9】対面式キッチンが設置された住宅の一部を示す平面図である。
【図10】従来の対面式キッチンの平面図である。
【符号の説明】
【0034】
1 対面式キッチン
2 キャビネット
3 天板部
4 水栓装置
5 シンク
6 コンロバーナ
7 前方側作業領域
8 後方側作業領域
9 コンロ
10 ワークトップ
11 中央側天板
15,16,17 引き出し
19 コンロ操作部
20 補助プレート
21 外周縁部
CL 中心軸線
D1 左方
D2 右方
D3 前方
D4 後方

【特許請求の範囲】
【請求項1】
キャビネットと、このキャビネットの上部を覆って取付けられた天板部とを有する対面式キッチンであって、
平面視で左右方向の中心軸線上にまたはこの中心軸線の近傍に沿って、水栓装置とシンクと少なくとも一つのコンロバーナとを配置し、
前記天板部には、前方側に位置して左右方向に延びた前方側作業領域と、後方側に位置して左右方向に延びた後方側作業領域とを確保していることを特徴とする対面式キッチン。
【請求項2】
請求項1に記載の対面式キッチンであって、
この対面式キッチンは左右方向の前記中心軸線に対して前後対称の形状を有しており、前記水栓装置,前記シンクおよび前記コンロバーナはこの中心軸線上に配置されていることを特徴とする対面式キッチン。
【請求項3】
請求項1または2に記載の対面式キッチンであって、
前記天板部は、この天板部の外周部を構成して前記前方側作業領域と前記後方側作業領域とを有するワークトップと、平面視でこのワークトップに囲まれて内方に配置され、前記水栓装置,前記シンクおよび前記コンロバーナが少なくとも設けられた中央側天板とを有することを特徴とする対面式キッチン。
【請求項4】
請求項3に記載の対面式キッチンであって、前記ワークトップの上面と前記中央側天板の上面とはほぼ面一になっていることを特徴とする対面式キッチン。
【請求項5】
請求項3または4に記載の対面式キッチンであって、前記コンロバーナを有するコンロは、前記コンロバーナのみが前記中央側天板より上方に露出していることを特徴とする対面式キッチン。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかの項に記載の対面式キッチンであって、
前記キャビネットの前面には少なくとも引き出しが引き出し収納自在に設けられ、前記キャビネットの後面にも少なくとも他の引き出しが引き出し収納自在に設けられていることを特徴とする対面式キッチン。
【請求項7】
請求項6に記載の対面式キッチンであって、前記キャビネットの前記前面と前記後面には、前記コンロバーナを操作するためのコンロ操作部がそれぞれ設けられていることを特徴とする対面式キッチン。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかの項に記載の対面式キッチンであって、
補助プレートが前記シンクの一部を覆うように着脱可能に設けられており、この補助プレートは前記シンクの前後の外周縁部に掛け渡されていることを特徴とする対面式キッチン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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