説明

封孔処理剤溶液及びそれを用いた封孔処理方法

【課題】環境汚染を引き起こす有機溶剤を含有しない水系であって、近年の小型、高密度化されたデバイスへの処理に対応するため通電せずに処理可能で、処理したい部分に対して選択的且つ定量的に封孔処理可能な封孔処理剤溶液及びそれを用いた封孔処理方法を提供する。
【解決手段】第一の成分としてメルカプト基を有しベンゼン環を含まない含窒素5員環化合物、第二の成分として炭素数10以上20以下の直鎖のアルカンチオール、第三の成分として非イオン性界面活性剤を含む、貴金属又は貴金属合金めっき材の封孔処理剤溶液。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、貴金属又は貴金属合金めっき材の封孔処理剤溶液及びそれを用いた封孔処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コネクター、スイッチ、リレー等の電子デバイスやプリント基板の回路部のめっき接点部等の電子材料として、古くからその優れた電気的特性、高耐食性による高信頼性のため、金めっきが用いられている。近年、電子機器の小型化による高密度化等が進展し、金めっき部に対してより高い信頼性が求められている。
【0003】
その一方で、経済性の追求により、金めっきの薄膜化が進行した結果、金めっき皮膜で覆われていない極微細な部分から下地めっきが露出した、いわゆるピンホールが指数関数的に増大している。その結果、ピンホールに腐食性物質(水分、硫化物、塩化物、シアン化物、アンモニア塩類等)が侵入することにより下地めっき、更にはその下の基材金属を腐食し、腐食反応による生成物が表面に析出して外観を損なうだけでなく、接触電気抵抗の増大、半田濡れ性の低下、回路の短絡等の問題を引き起こしている。
【0004】
このような問題に対し、従来から金めっきした後に封孔処理剤を作用させ、文字通り孔(ピンホール)を封じる方法で対処してきた。封孔処理剤には大別して溶剤系と水系とがある。溶剤系封孔処理剤としては、例えば、特許文献1に、ネオペンチル脂肪酸エステル、C20又は/及びC22の二塩基酸、そのアミン塩、2−n−ウンデシルイミダゾール、5−アミノテトラゾールを溶剤に溶解してなる封孔処理剤が開示されている。特許文献1に開示された溶剤には塩素系、フッ素系溶剤の他、少なくともエタノールが含まれるが、溶剤としてエタノールのみを使用したとしても水系と比較して環境への影響が大きいという問題を抱えている。
【0005】
また、特許文献2には、ポリエーテル系合成油、ポリオキシエチレンひまし油エーテル、オキサゾール系化合物を水系溶媒で溶解した封孔処理剤が開示されている。しかしながら、水系溶媒としてプロピレングリコール系化合物又はアルコールを50質量%以下に水で希釈して使用するため、揮発性が抑制されているが、水系と比較すると依然として環境への影響があり、油も含まれていることから環境問題が払拭しきれていない。
【0006】
上述のような溶剤系封孔処理剤では不可避な環境問題に対応するため、水系封孔処理剤が多数提案されている。例えば、特許文献3には、ベンゾトリアゾール系化合物、インダゾール系化合物、ベンズイミダゾール系化合物、インドール系化合物、トリアジンチオール系化合物、及びメルカプトベンゾチアゾール系化合物の1種以上からなるインヒビター、及び自己乳化剤を添加した処理液が開示されている。また、特許文献4には、ベンゾチアゾール誘導体等を6〜30mmol/Lの濃度で含む処理液が開示されている。また、特許文献5には、ベンゾトリアゾール系化合物、メルカプトベンゾチアゾール系化合物、及び、トリアジンチオール系化合物の1種以上からなるインヒビター、界面活性剤、アミン化合物を含む処理液が開示されている。このように、いずれの特許における処理方法も封孔処理液中でめっき材を陽極として直流電解する必要がある。これらの封孔処理剤は通電する必要があるが、小型化により高密度化した電子デバイスにおいては金めっきされた接点部はデバイス中に広範囲に散在しており、その全ての金めっき部に配線して通電することが困難な場合があり、近年の小型、高密度化デバイスには適用し難いという問題を抱えている。
【0007】
また、特許文献6にはテトラゾール類又はメルカプトテトラゾール類、アミン化合物、界面活性剤が、特許文献7にはチアジアゾール類又はチアジアゾロン類、アミン化合物、界面活性剤が開示されており、処理方法としては上述の特許文献3〜5と同様、通電する方法に加えて、処理液をめっき材表面に塗布、散布、あるいは処理液中にめっき材を浸漬する方法が開示されている。
【0008】
特許文献8には、特定のイミダゾール化合物を有効成分として含有した処理液が開示されている。当該処理方法は処理液をめっき材表面に塗布、散布、あるいは処理液中にめっき材を浸漬する方法で、通電を行わず、上述の問題が生じない。しかしながら、この場合においても、浸漬処理方法で処理する場合には、処理対象物であるめっき材の封孔処理を施したい部分に対して選択的に、且つ、必要な膜厚の処理膜を生成させるように制御して有効成分を作用させる必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平11−279533号公報
【特許文献2】特開2010−70817号公報
【特許文献3】特開平9−170096号公報
【特許文献4】特開2000−17483号公報
【特許文献5】特開2003−129257号公報
【特許文献6】特開2008−45215号公報
【特許文献7】特開2008−63662号公報
【特許文献8】特開2009−57596号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
そこで、本発明は、環境汚染を引き起こす有機溶剤を含有しない水系であって、近年の小型、高密度化されたデバイスへの処理に対応するため通電せずに処理可能で、処理したい部分に対して選択的且つ定量的に封孔処理可能な封孔処理剤溶液及びそれを用いた封孔処理方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
ところで、炭素数10程度以上の直鎖のアルカンチオール(以下便宜上、C≧10アルカンチオールと示す)が、金上に規則正しく配列した緻密な単分子皮膜を自動的に形成し、皮膜は強力な撥水性を有することが知られている。この特性を利用して、C≧10アルカンチオールが金めっき封孔処理剤として使用されてきた。
【0012】
しかしながら、C≧10アルカンチオールは、金めっき下地のニッケル又はニッケル合金めっき等の金属にはほとんど作用しないため、近年の薄膜化によりピンホールが増大した金めっき皮膜には充分な効果が得られ難い。
ただし、金めっきの薄膜化がどんなに進行しても、金めっきの優れた電気的特性等が発揮される範囲での膜厚は残るため、金めっき上に緻密で強力な撥水性皮膜を自動生成するC≧10アルカンチオールが金めっき部のみに対しては依然として有効であり、本発明者らは、この特性を利用して上述の選択的且つ定量的な封孔処理という課題が解決できないか鋭意検討した。
また、C≧10アルカンチオールを利用する際の更なる利点として、封孔処理後の乾燥性向上が挙げられる。つまり、水系処理剤の処理後の乾燥性において、例えば揮発性溶剤を用いた溶剤系処理剤と比較すると不利になるが、C≧10アルカンチオール処理によりめっき材に強力な撥水性を付与すれば水分を除去し易くなるため、処理後の乾燥性向上にも極めて有効である。
【0013】
そこで、本発明ではC≧10アルカンチオールを含む水系の金めっき封孔処理液に、ピンホールから露出した下地のニッケル又はニッケル合金めっきに対して有効な薬剤を添加することにより、上述の選択的且つ定量的な封孔処理に対する解決手段を見出した。
まず、選択的な封孔処理については、金めっき上はC≧10アルカンチオールの単分子膜に覆われるため、ピンホール部のみが露出し、ニッケルに有効な成分がニッケルのみに対して選択的に作用することが可能となる。
次に、C≧10アルカンチオールによる処理膜は単分子皮膜であるため、金めっき上の処理膜の厚さが一定であり、ニッケルに有効な成分がピンホールから露出したニッケル表面に到達するまでの距離も、金めっき上の処理膜の厚さのバラツキがない分、一定に保たれる。
従って、ニッケルに有効な成分がピンホール部に作用して生成する処理膜の厚さについては、ピンホール周囲の金めっき上を覆う単分子膜の高さを超えて積層すると不安定となるため、ほぼ金めっき上の単分子膜の高さ以内の厚さになり、定量的な処理膜が生成する。
このように考察した上で、C≧10アルカンチオールによって生成する金めっき上の単分子膜に影響を与えることがなく、ニッケル又はニッケル合金めっきに対して有効な薬剤を探索した結果、少なくとも、メルカプトイミダゾール系化合物、メルカプトトリアゾール系化合物、メルカプトテトラゾール系化合物、メルカプトチアゾール系化合物、及び、メルカプトチアゾリン系化合物からなる群から選ばれる1種以上の化合物が有効に作用することを見出し、これに基づいて本発明を完成するに至った。これら化合物に共通する特徴として、(1)メルカプト基を有すること、(2)ベンゼン環を含まないこと、(3)含窒素5員環化合物であることが挙げられる。
【0014】
上記知見を基礎として完成した本発明は一側面において、第一の成分としてメルカプト基を有しベンゼン環を含まない含窒素5員環化合物、第二の成分として炭素数10以上20以下の直鎖のアルカンチオール、第三の成分として非イオン性界面活性剤を含む、貴金属又は貴金属合金めっき材の封孔処理剤溶液である。
【0015】
本発明に係る封孔処理剤溶液は一実施形態において、前記第一の成分が、メルカプトイミダゾール系化合物、メルカプトトリアゾール系化合物、メルカプトテトラゾール系化合物、メルカプトチアゾール系化合物、及び、メルカプトチアゾリン系化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上である。
【0016】
本発明に係る封孔処理剤溶液は別の一実施形態において、前記非イオン性界面活性剤の曇点が、35〜80℃である。
【0017】
本発明に係る封孔処理剤溶液は更に別の一実施形態において、前記非イオン性界面活性剤のHLBが、12〜15である。
【0018】
本発明に係る封孔処理剤溶液は更に別の一実施形態において、前記第二の成分が、オクタデカンチオールである。
【0019】
本発明に係る封孔処理剤溶液は更に別の一実施形態において、前記溶液が、有機溶剤を含まない水溶液である。
【0020】
本発明に係る封孔処理剤溶液は更に別の一実施形態において、前記貴金属が、金又は銀である。
【0021】
本発明は別の一側面において、本発明の封孔処理剤溶液を用いて、貴金属又は貴金属合金めっき材を封孔処理する工程を含む封孔処理方法である。
【0022】
本発明に係る封孔処理方法は一実施形態において、前記封孔処理を、前記封孔処理剤溶液に前記貴金属又は貴金属合金めっき材を通電せずに浸漬することで行う。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、環境汚染を引き起こす有機溶剤を含有しない水系であって、近年の小型、高密度化されたデバイスへの処理に対応するため通電せずに処理可能で、処理したい部分に対して選択的且つ定量的に封孔処理可能な封孔処理剤溶液及びそれを用いた封孔処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明に係る封孔処理剤溶液は、貴金属又は貴金属合金めっき材に対し特に有効である。本発明に係る封孔処理剤溶液は、第一の成分としてメルカプト基を有しベンゼン環を含まない含窒素5員環化合物、第二の成分として炭素数10以上20以下の直鎖のアルカンチオール、第三の成分として非イオン性界面活性剤を含む。
【0025】
メルカプト基を有しベンゼン環を含まない含窒素5員環化合物が有効である理由としては、詳細は不明であるが、この化合物がニッケルに対して反応性を示す窒素原子を有することに加えて、金に対する吸着性を示すメルカプト基をも同時に有し、更にベンゼン環を含まないことにより分子の大きさが比較的小さく、金上に単分子膜を生成した直鎖アルカンチオールの間を通過して、ピンホールから露出したニッケル又はニッケル合金めっきに到達し易いためと思われる。
【0026】
本発明の第一の成分として使用されるメルカプト基を有しベンゼン環を含まない含窒素5員環化合物としては、メルカプトイミダゾール系化合物、メルカプトトリアゾール系化合物、メルカプトテトラゾール系化合物、メルカプトチアゾール系化合物、及び、メルカプトチアゾリン系化合物等が挙げられるが、具体的には次の通り例示される。
【0027】
メルカプトイミダゾール系化合物としては、2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、2−メルカプト−4−イミダゾールカルボン酸、2−メルカプト−1,4−ジメチルイミダゾール、2−メルカプト−1,5−ジメチルイミダゾール、2−メルカプト−4,5−ジメチルイミダゾール、2−メルカプト−4−メチルイミダゾール等が用いられ、効果やコスト等の観点からより好ましく用いられるものとしては、2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、2−メルカプト−1,4−ジメチルイミダゾール、2−メルカプト−1,5−ジメチルイミダゾール、2−メルカプト−4,5−ジメチルイミダゾール、2−メルカプト−4−メチルイミダゾールが挙げられ、更により好ましくは、2−メルカプトイミダゾール、2−メルカプト−1−メチルイミダゾール、2−メルカプト−4−メチルイミダゾールが用いられる。
【0028】
メルカプトトリアゾール系化合物としては、5−メルカプト−1,2,3−トリアゾールナトリウム、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−メチル−1,2,4−トリアゾール、5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール−3−酢酸、3,5−ジメルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メチルチオ−1,2,4−トリアゾール、4−アミノ−3−ヒドラジノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾール等が用いられ、効果やコスト等の観点からより好ましく用いられるものとしては、5−メルカプト−1,2,3−トリアゾールナトリウム、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−メチル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾールが挙げられ、更により好ましくは、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−4−メチル−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メルカプト−1,2,4−トリアゾールが用いられる。
【0029】
メルカプトテトラゾール系化合物としては、5−メルカプトテトラゾール、5−メルカプト−1−メチルテトラゾール、5−メチルチオ−1H−テトラゾール、5−エチルチオ−1H−テトラゾール、1−エチル−5−メルカプトテトラゾール、1−カルボキシメチル−5−メルカプトテトラゾール、1−シクロヘキシル−5−メルカプトテトラゾール、1−(2−ジメチルアミノエチル)−5−メルカプトテトラゾール等が用いられ、効果やコスト等の観点からより好ましく用いられるものとしては、5−メルカプトテトラゾール、5−メルカプト−1−メチルテトラゾール、1−エチル−5−メルカプトテトラゾール、1−(2−ジメチルアミノエチル)−5−メルカプトテトラゾールが挙げられ、更により好ましくは、5−メルカプト−1−メチルテトラゾール、1−(2−ジメチルアミノエチル)−5−メルカプトテトラゾールが用いられる。
【0030】
メルカプトチアゾール系化合物としては、2−メルカプトチアゾール、2−メルカプト−4−メチルチアゾール、2−メルカプト−4,5−ジメチルチアゾール、2−メルカプト−4−メチル−5−チアゾールカルボン酸、2−メチルチオ−1,3−チアゾール、4−メチル−2−メチルメルカプトチアゾール等が用いられ、効果やコスト等の観点からより好ましく用いられるものとしては、2−メルカプトチアゾール、2−メルカプト−4−メチルチアゾール、2−メルカプト−4,5−ジメチルチアゾールが挙げられ、更により好ましくは、2−メルカプトチアゾール、2−メルカプト−4−メチルチアゾールが用いられる。
【0031】
メルカプトチアゾリン系化合物としては、2−メルカプトチアゾリン、2−メチルチオ−2−チアゾリン等が用いられ、効果やコスト等の観点からより好ましく用いられるものとしては、2−メルカプトチアゾリンが挙げられる。
【0032】
また、これらの化合物の添加濃度としては、処理液中で概ね0.001〜10質量%であり、効果、溶解度、コスト等の観点からより好ましくは0.01〜5質量%であり、更により好ましくは0.02〜2質量%である。
なお、商品形態としては、実際に使用する処理液よりも濃厚な液として供給し、使用時に希釈して処理液としてもよく、上記は処理液中の濃度である。
【0033】
本発明の第二の成分として炭素数10以上20以下の直鎖のアルカンチオールが用いられるが、効果やコスト等の観点からより好ましくは炭素数12以上18以下の直鎖のアルカンチオールが用いられる。
具体的には、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、及び、オクタデカンチオール等が用いられ、効果やコスト等の観点からより好ましくはドデカンチオール、オクタデカンチオールが用いられる。また、炭素鎖が最も長いため単分子皮膜の膜厚を最も厚くすることができ、腐食抑制効果が最大となるという利点、及び、臭気が比較的低いという利点から、より好ましくはオクタデカンチオールが用いられる。
また、これらの化合物の添加濃度としては、処理液中で概ね0.001〜10質量%であり、効果、溶解度、コスト等の観点からより好ましくは0.01〜5質量%であり、更により好ましくは0.02〜2質量%である。
なお、商品形態としては、実際に使用する処理液よりも濃厚な液として供給し、使用時に希釈して処理液としてもよく、上記は処理液中の濃度である。
【0034】
本発明の第三の成分として使用される界面活性剤としては非イオン性、カチオン性、アニオン性、両性界面活性剤のいずれも使用可能であるが、可溶化性又は分散性、溶解度、コスト等の観点からより好ましくは非イオン性界面活性剤が用いられる。また、本処理剤はめっき後に用いられることが想定され、その場合には処理液中にめっき液から金属イオンが不可避的に持ち込まれる。この金属イオンに対して非イオン性界面活性剤は反応し難く、上記の可溶化性又は分散性が安定して発揮されることからも非イオン性界面活性剤が好適であると考えられる。更に、別種の界面活性剤同士を混合して使用してもよく、具体的には以下の通り例示される。
【0035】
非イオン性界面活性剤としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(又はエステル)、ポリオキシアルキレンフェニル(又はアルキルフェニル)エーテル、ポリオキシアルキレンナフチル(又はアルキルナフトチル)エーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル(又は該フェニル基にさらにポリオキシアルキレン鎖を付加した)、ポリオキシアルキレンビスフェノールエーテル系、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンソルビット脂肪酸エステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレングリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン、エチレンジアミンのポリオキシアルキレン縮合物付加物、ポリオキシアルキレン脂肪酸アミド、ポリオキシアルキレンヒマシ油(又は/及び硬化ヒマシ油)、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルホルマリン縮合物、グリセリン(又はポリグリセリン)脂肪酸エステル系界面活性剤、ペンタエリスリトール脂肪酸エステル、ソルビタンモノ(セスキ、トリ)脂肪酸エステル系界面活性剤、高級脂肪酸モノ(ジ)エタノールアミド、アルキル・アルキロードアミド、オキシエチレンアルキルアミン、ポリアルキレングリコール、ポリアルキレンジアミン、ポリビニルピロリドン、及び、ポリエチレンイミン等が用いられ、溶解度、コスト等の観点からより好ましくはポリオキシアルキレンアルキルエーテル(又はエステル)、ポリオキシアルキレンフェニル(又はアルキルフェニル)エーテルが用いられ、更により好ましくはポリオキシアルキレンアルキルエーテル(又はエステル)が用いられる。
【0036】
カチオン性界面活性剤としては、テトラ低級アルキルアンモニウムハライド、アルキルトリメチルアンモニウムハライド、ヒドロキシエチルアルキルイミダゾリン、ポリオキシエチレンアルキルメチルアンモニウムハライド、アルキルベンザルコニウムハライド、ジアルキルジメチルアンモニウムハライド、アルキルジメチルベンジルアンモニウムハライド、アルキルアミン塩酸塩、アルキルアミン酢酸塩、アルキルアミンオレイン酸塩、アルキルアミノエチルグリシン、及び、アルキルピリジニウムハライド系等が好適に用いられる。
【0037】
アニオン性界面活性剤としては、アルキル(又はホルマリン縮合物)−β−ナフタレンスルホン酸(又はその塩)、脂肪酸セッケン、アルキルスルホン酸塩系、α−オレフィンスルホン酸塩、アルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキル(又はアルコキシ)ナフタレンスルホン酸塩、アルキルジフェニルエーテルジスルホン酸塩、アルキルエーテルスルホン酸塩、アルキル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸エステル塩、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル硫酸エステル酸塩、高級アルコールリン酸モノエステル塩、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸(塩)、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシアルキレンフェニルエーテルリン酸塩、ポリオキシエチレンアルキルエーテル酢酸塩、アルキロイルザルコシン、アルキロイルザルコシネート、アルキロイルメチルアラニン塩、N−アシルスルホカルボン酸塩、アルキルスルホ酢酸塩、アシルメチルタウリン酸ナトリウム、アルキル脂肪酸グリセリン硫酸エステル塩、硬化ヤシ油脂肪酸グリセリル硫酸ナトリウム、アルキルスルホカルボン酸エステル塩系、アルキルスルホコハク酸塩、ジアルキルスルホコハク酸塩、アルキルポリオキシエチレンスルホコハク酸、及び、スルホコハク酸モノオレイルアミドナトリウム塩(又は、そのアンモニウム塩やTEA塩)等が好適に用いられる。
【0038】
両性界面活性剤としては、2−アルキル−N−カルボキシメチル(又はエチル)−N−ヒドロキシエチル(又はメチル)イミダゾリニウムベタイン、2−アルキル−N−カルボキシメチル(又はエチル)−N−カルボキシメチルオキシエチルイミダゾリニウムベタイン、ジメチルアルキルベタイン、N−アルキル−β−アミノプロピオン酸(又はそのナトリウム塩)、アルキル(ポリ)アミノエチルグリシン、N−アルキル−N−メチル−β−アラニン(又はそのナトリウム塩)、及び、脂肪酸アミドプロピルジメチルアミノ酢酸ベタイン等が好適に用いられる。
【0039】
また、これらの界面活性剤の添加濃度としては、処理液中で概ね0.001〜5質量%であり、可溶化/分散性、溶解度、コスト、発泡性等の観点からより好ましくは0.01〜5質量%である。
なお、上記の界面活性剤は第二の成分である炭素数10以上20以下の直鎖アルカンチオールを水溶液中に均一に分散する目的で添加され、第一の成分である、メルカプト基を有しベンゼン環を含まない含窒素5員環化合物が水に溶解し難い場合には可溶化にも用いられる。
このような用途に適した非イオン性界面活性剤としては、HLBが12〜15、又は/且つ、曇点が35〜80℃であるものが好適に用いられ、より好ましくはHLBが12〜14、又は/且つ、曇点が40〜70℃であるものが好適に用いられる。
ここで、「HLB」は、「親水親油平衡」を意味し、親水基と親油基のバランスを示す値で、0〜20の数値で表され、0に近いほど親油性が高く、20に近いほど親水性が高くなる。また、「曇点」は、非イオン性界面活性剤の水溶液を加温していく際にポリエーテル鎖と水との水素結合が切れて、水溶解度が急激に減少し、水と分離(相分離)して不透明となったときの温度を指す。
【0040】
本発明の封孔処理剤を用いて部品の金めっき部を処理する条件としては、浸漬、噴霧、塗布等の方法が挙げられ、封孔処理剤の液温は30〜80℃であり、好ましくは35〜70℃であり、より好ましくは40〜60℃である。処理時間は1秒〜10分、好ましくは2秒〜5分、より好ましくは5秒〜2分である。
【実施例】
【0041】
以下、実施例に基づき本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲内で任意の変形をなし得るものである。
【0042】
・試験片、封孔処理
実施例1〜7及び比較例1〜9として、銅板上にニッケルめっき3μmを形成した後、金めっき0.1μmを形成し、表1に示した各処理液中に50℃で30秒間浸漬し、続いて水洗後、温風乾燥したものを試験片として使用した。
・試験方法
亜硫酸ナトリウム252g、りん酸水素2カリウム110g、りん酸2水素カリウム230gを1リットルの水に溶解させた液をデシケータ内に入れ、同時に各々の処理片をその容器内上部に固定し、蓋をして密閉した。
デシケータを40℃の恒温槽内に保持し、デシケータ内の二酸化硫黄ガス濃度が10ppm前後であることを確認しながら、24時間経過毎に試験片を取り出し、表面の腐食状態を観察した。また、水洗して撥水性を評価した。
・結果
表1に実施例の封孔処理液組成を示す。表2に比較例の封孔処理液組成を示す。表3に腐食試験結果を示す。
【0043】
【表1】

【0044】
【表2】

【0045】
【表3】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の成分としてメルカプト基を有しベンゼン環を含まない含窒素5員環化合物、第二の成分として炭素数10以上20以下の直鎖のアルカンチオール、第三の成分として非イオン性界面活性剤を含む、貴金属又は貴金属合金めっき材の封孔処理剤溶液。
【請求項2】
前記第一の成分が、メルカプトイミダゾール系化合物、メルカプトトリアゾール系化合物、メルカプトテトラゾール系化合物、メルカプトチアゾール系化合物、及び、メルカプトチアゾリン系化合物からなる群から選ばれる1種又は2種以上である請求項1に記載の封孔処理剤溶液。
【請求項3】
前記非イオン性界面活性剤の曇点が、35〜80℃である請求項1又は2に記載の封孔処理剤溶液。
【請求項4】
前記非イオン性界面活性剤のHLBが、12〜15である請求項1〜3のいずれかに記載の封孔処理剤溶液。
【請求項5】
前記第二の成分が、オクタデカンチオールである請求項1〜4のいずれかに記載の封孔処理剤溶液。
【請求項6】
前記溶液が、有機溶剤を含まない水溶液である請求項1〜5のいずれかに記載の封孔処理剤溶液。
【請求項7】
前記貴金属が、金又は銀である請求項1〜6のいずれかに記載の封孔処理剤溶液。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載の封孔処理剤溶液を用いて、貴金属又は貴金属合金めっき材を封孔処理する工程を含む封孔処理方法。
【請求項9】
前記封孔処理を、前記封孔処理剤溶液に前記貴金属又は貴金属合金めっき材を通電せずに浸漬することで行う請求項8に記載の封孔処理方法。

【公開番号】特開2012−172190(P2012−172190A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−34739(P2011−34739)
【出願日】平成23年2月21日(2011.2.21)
【出願人】(593002540)株式会社大和化成研究所 (29)
【Fターム(参考)】