説明

射出成形体形成用樹脂組成物および射出成形体

【課題】屈折率が高く、透明性に優れた射出成形体および射出成形体を得ることができる射出成形体形成用樹脂組成物を提供する。
【解決手段】ジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)及び環状オレフィン系樹脂(B)を含有する射出成形体形成用樹脂組成物であって、該ジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)がジシクロペンタジエン(a1)単位20〜80重量%とビニル芳香族化合物(a2)単位80〜20重量%((a1)単位および(a2)単位の合計は100重量%)とを含有し、該ジシクロペンタジエン(a1)の有する非芳香族性二重結合の水素添加率が90モル%以上であり、該ビニル芳香族化合物(a2)の有する芳香族核の水素添加率が0〜70モル%であり、重量平均分子量(Mw)が1,000〜10,000である射出成形体形成用樹脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂と環状オレフィン系樹脂とを含有する射出成形体形成用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ガラスが使用されてきた光学部品などの射出成形体は、生産性、耐衝撃性、軽量性に優れるという観点からプラスチックへの代替が進んでいる。たとえば、デジタルカメラ用レンズ、携帯電話用レンズ、CD、ブルーレイ用ピックアップレンズ、マイクロレンズに代表される光学レンズ、ディスクなどの基板、導光板、プリズムシートなどもポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、環状オレフィン系樹脂の利用が進んでいる。このうち、ポリカーボネートは複屈折が大きく、また、ポリメタクリル酸メチルは耐熱性が低く、吸水性が高いといった問題があった。
【0003】
上記の樹脂のうち、環状オレフィン系樹脂は、ガラス転移温度、光線透過率が高く、また、屈折率の異方性が小さいため、従来の光学用樹脂に比べて複屈折性が低く、耐熱性、透明性、光学特性に優れた熱可塑性樹脂として注目されている。このような環状オレフィンの特徴を利用して、たとえば、光ディスク、光学レンズ、光ファイバー、透明プラスチック基盤、低誘電材料などの電子・光学材料、光半導体封止などの封止材料などの分野において利用することが検討されている。
【0004】
しかしながら、環状オレフィン系樹脂は透明性、低吸水性、低複屈折性に優れるもののレンズ用途においては屈折率が光学用ガラスに比べて低いため、ガラスに代わる材料としての薄型化、軽量化の要求に十分に応えられていないのが現状である。従って、前述の環状オレフィン系樹脂の特徴に加え、高屈折性を兼ね備えた環状オレフィン系樹脂の開発が強く望まれている。
【0005】
樹脂の屈折率は一般に、芳香族環、ハロゲン原子または硫黄原子の含有率を高めることで向上することが知られており、環状オレフィン系樹脂への芳香族環、ハロゲン原子、硫黄原子の導入またはこれらを含有する異種重合体とのブレンドが有望である。たとえば特許文献1には、芳香族環を含有するノルボルネン誘導体の開環重合体が高屈折率であることが示されている。また、特許文献2〜5には、屈折率について述べられていないが、環状オレフィン系樹脂と石油樹脂とのブレンドが提案されている。しかしながら、前者の芳香族環含有ノルボルネン系開環重合体は、使用する単量体の製造や開環重合触媒が高価であるため、コスト高になりがちである問題があり、後者のスチレン系樹脂ブレンドはほとんどの場合、射出成形温度に該当する200〜300℃の高温下において相分離が生じるため、透明な射出成形体を得るのが非常に困難であった。さらに、相分離させずに透明性を維持しようとすると石油樹脂の添加量が制限され、所望の光学特性が得られないという問題があった。
【0006】
このため、相分離を抑え、高温下の成形を行っても透明な光学部品を容易に得ることができる、射出成形性に優れた射出成形体形成用樹脂組成物、およびその射出成形体形成用樹脂組成物を主成分とする、透明性の高いレンズなどの光学部品の出現が強く望まれていた。特に安価な材料を用いて、高屈折率を達成するための新しい手法が望まれていた。
【特許文献1】特開平7−41550号公報
【特許文献2】特開2001−324618号公報
【特許文献3】特開2003−315795号公報
【特許文献4】特開2001−74940号公報
【特許文献5】特開2001−323074号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、屈折率が高く、透明性に優れた射出成形体および射出成形体を得ることができる射出成形体形成用樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、前記課題を解決するべく鋭意研究を行った結果、本発明が上記課題を達成することを見出した。すなわち、本発明は以下の事項を含む。
【0009】
〔1〕ジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)および環状オレフィン系樹脂(B)を含有する射出成形体形成用樹脂組成物であって、該ジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)が、ジシクロペンタジエン(a1)に由来する構造単位20〜80重量%と、ビニル芳香族化合物(a2)に由来する構造単位80〜20重量%(ただし、(a1)単位および(a2)単位の合計を100重量%とする)とを含有し、該ジシクロペンタジエン(a1)に由来する構造単位の有する非芳香族性二重結合の水素添加率が90モル%以上であり、該ビニル芳香族化合物(a2)に由来する構造単位の有する芳香族核の水素添加率が0〜70モル%であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が1,000〜10,000であることを特徴とする射出成形体形成用樹脂組成物。
【0010】
〔2〕前記ジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)が1,000〜5,000であることを特徴とする〔1〕に記載の射出成形体形成用樹脂組成物。
〔3〕前記環状オレフィン系樹脂(B)が、下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位を有することを特徴とする〔1〕または〔2〕に記載の射出成形体形成用樹脂組成物。
【0011】
【化1】

ただし、式(1)中、R1〜R4は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、またはその他の1価の有機基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R1〜R4のうち任意の2つが互いに結合して、単環または多環構造を形成してもよい。R1またはR2に隣接する炭素と、R3またはR4に隣接する炭素とが結合して二重結合を形成してもよい。mは0または正の整数であり、pは0または正の整数である。
【0012】
〔4〕前記環状オレフィン系樹脂(B)が、ジシクロペンタジエンであることを特徴とする〔3〕に記載の射出成形体形成用樹脂組成物。
〔5〕〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の射出成形体形成用樹脂組成物を射出成形して得られる射出成形体。
【0013】
〔6〕光学部品であることを特徴とする〔5〕に記載の射出成形体。
〔7〕前記光学部品がレンズであることを特徴とする〔6〕に記載の射出成形体。
【発明の効果】
【0014】
本発明の射出成形体形成用樹脂組成物は、特定のジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)を環状オレフィン系樹脂(B)に含有させて得られ、高屈折率の射出成形体を提供することができる。また、本発明の射出成形体形成用樹脂組成物は、射出成形温度に該当する200〜300℃の高温下においても相分離しないため、透明性の高い射出成形体を好適に提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
本発明の射出成形体形成用樹脂組成物は、ジシクロペンタジエン(a1)20〜80重量%とビニル芳香族化合物(a2)80〜20重量%(ただし、(a1)および(a2)の合計を100重量%とする)とを共重合させて得られ、該ジシクロペンタジエン(a1)の有する非芳香族性二重結合の水素添加率が90モル%以上であり、該ビニル芳香族化合物(a2)の有する芳香族核の水素添加率が0〜70モル%であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が1,000〜10,000であるジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)と、環状オレフィン系樹脂(B)とを含有している。
【0016】
以下、これらについて説明する。
〔ジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)〕
本発明で用いられるビニル芳香族化合物(a2)としては、特に限定されるものではない。具体的には、スチレン、α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ビニルトルエン、インデン、メチルインデンおよびこれらの混合物が挙げられる。このなかでもスチレン、α−メチルスチレンが好ましく、スチレンがより好ましい。
【0017】
ジシクロペンタジエン(a1)とビニル芳香族化合物(a2)との重合は、ジシクロペンタジエン(a1)20〜80重量%、好ましくは20〜70重量%、より好ましくは20〜60重量%と、ビニル芳香族化合物(a2)80〜20重量%、好ましくは80〜30重量%、より好ましくは80〜40重量%と有機溶媒とを混合し、熱重合により重合する。
【0018】
重合の際のモノマー添加方法としては、使用するジシクロペンタジエン(a1)およびビニル芳香族化合物(a2)の全量を反応開始前に仕込んでもよく、(a1)および(a2)の両方または一方の全量または一部を重合反応を行いながら、分割または連続で添加してもよい。
【0019】
ジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)を構成するジシクロペンタジエン(a1)およびビニル芳香族化合物(a2)の含有量が上記範囲内であると、環状オレフィン系樹脂(B)との相溶性が良好で且つ屈折率向上効果が大きいため好ましい。
【0020】
重合方法は特に制限されるものではなく、たとえば、ジシクロペンタジエン(a1)と、ビニル芳香族化合物(a2)と、有機溶媒とを混合し、ラジカル重合開始剤の存在下または非存在下にて加熱重合後に水素添加反応を行い、次いで有機溶媒を蒸留除去する方法などが挙げられる。
【0021】
本発明で用いられるジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)の製造方法において、ジシクロペンタジエン(a1)およびビニル芳香族化合物(a2)の重合には重合開始剤を用いてもよく、用いなくてもよい。また、用いる重合開始剤は、特に限定されるものではなくフリーラジカルを発生する公知の有機過酸化物、またはアゾ系のラジカ
ル重合開始剤を用いることができる。
【0022】
有機過酸化物としては、ジアセチルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド、ジイソブチロイルパーオキサイド、ジ(2,4−ジクロロベンゾイル)パーオキサイド、ジ(3,5,5−トリメチルヘキサノイル)パーオキサイド、ジオクタノイルパーオキサオド、ジラウロイルパーオキサイド、ジステアロイルパーオキサイド、ビス{4−(m−トルオイル)ベンゾイル}パーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド類;
メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルシクロヘキサノンパーオキサイド、アセチルアセトンパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド類;
【0023】
過酸化水素、t−ブチルハイドロパーオキサイド、α−クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド類;
ジ−t−ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウリルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ビス(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3などのジアルキルパーオキサイド類;
【0024】
t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシマレエート、t−ブチルパーオキシ3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(m−トルオイルパーオキシ)ヘキサン、α,α’−ビス(ネオデカノイルパーオキシ)ジイソプロピルベンゼン、クミルパーオキシネオデカノエート、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシネオデカノエート、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシネオデカノエート、t−ブチルパーオキシネオドデカノエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、ビス(t−ブチルパーオキシ)イソフタレート、2,5−ジメチル−2,5−ビス(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、t−ブチルパーオキシm−トルオイルベンゾエート、3,3’,4,4’−テトラ(t−ブチルパーオキシカルボニル)ベンゾフェノンなどのパーオキシエステル類;
【0025】
1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタン、n−ブチル4,4−ビス(t−ブチルパーオキシ)ピバレート、2,2−ビス(4,4−ジ−t−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパンなどのパーオキシケタール類;
【0026】
t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシアリルモノカーボネートなどのパーオキシモノカーボネート類;
ジ−sec−ブチルパーオキシジカーボネート、ジ−n−プロピルパーオキシジカーボネ
ート、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−エトキシエチルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネート、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート類;
その他、t−ブチルトリメチルシリルパーオキサイドなどが挙げられる。
【0027】
アゾ系ラジカル重合開始剤としては、アゾビスイソブチロニトリル、アゾビスイソバレロニトリル、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2−(カルバモイルアゾ)イソブチロニトリル、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−{1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル}プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−{2−(1−ヒドロキシブチル)}プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)−プロピオンアミド]、2,2’−アゾビス[N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド]、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス(N−シクロヘキシル−2−メチルプロピオンアミド)、2,2’−アゾビス[2−(5−メチル−2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジサルフェート・ジハイドレート、2,2’−アゾビス[2−(3,4,5,6−テトラヒドロピリミジン−2−イル)プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−{1−(2−ヒドロキシエチル)−2−イミダゾリン−2−イル}プロパン]ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジハイドロクロライド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチル−プロピオンアミジン]、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミドキシム)、ジメチル2,2’−アゾビスブチレート、4,4’−アゾビス(4−シアノペンタノイックアシッド)、2,2’−アゾビス(2,4,4−トリメチルペンタン)などが挙げられる。
【0028】
重合時の重合開始剤の使用量は特に制限はなく、重合を効率的に行うことができるという観点から、ジシクロペンタジエン(a1)およびビニル芳香族化合物(a2)の混合物に対して、0〜10重量%が好ましく、より好ましくは0〜8重量%、特に好ましくは0〜6重量%である。
【0029】
前記重合反応において用いられる有機溶媒としては、特に制限されるものではない。具体的には、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカンおよびトリデカンなどの脂肪族炭化水素類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、トリメチルベンゼン、クメン、ブチルベンゼンおよびジブチルベンゼンなどの芳香族炭化水素類;1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、フルフラールおよびブチルグリシジルエーテルなどのエーテル類;アセトン、メチルエチルケトンおよびシクロヘキサノンなどのケトン類;酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブおよびブチルセロソルブなどのエステル類;あるいはケロシンなどが挙げられる。これらの有機溶媒は単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。溶媒の使用量としては溶媒重量と用いたジシクロペンタジエン(a1)およびビニル芳香族化合物(a2)の合計重量の比[溶媒]/[(a1)+(a2
)]として通常0.1〜10、好ましくは0.3〜8の範囲である。
【0030】
重合温度は特に制限はない。具体的には、100〜300℃が好ましく、より好ましく
は150〜280℃である。
重合時の圧力も特に制限はなく、通常、ゲージ圧で0〜2MPaが好ましく、より好ましくは0〜1.5MPaである。また、重合時の反応雰囲気も特に制限されず、窒素、アルゴンなどの不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましく、より好ましくは窒素雰囲気下である。
【0031】
反応時間も特に制限はない。具体的には1〜20時間が好ましく、より好ましくは2〜15時間である。
前記重合方法において、重合反応終了後、水素添加反応を行い、次いで反応液から有機溶媒を除去することにより本発明で用いられるジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)が得られる。水素添加反応を行う際には、重合溶媒と同一の溶媒を用いてもよく、異なる溶媒を用いてもよい。異なる溶媒を用いる場合には重合溶液から溶媒を除去する必要があり、その方法には特に制限はないが、たとえば蒸留により重合溶媒を留去した後に異種溶媒を添加する方法が挙げられる。また、異種溶媒の種類としては重合反応に使用できる溶媒として列挙した溶媒と同様のものを挙げることができる。
【0032】
溶媒の使用量としては溶媒重量と用いたジシクロペンタジエン(a1)およびビニル芳香族化合物(a2)の合計重量の比;[溶媒]/[(a1)+(a2)]として通常0.1〜10、好ましくは0.3〜8の範囲であることが好ましい。
【0033】
水素添加触媒としては特に制限はなく通常のオレフィン性化合物の水素添加反応に用いられるものを使用することができる。この水素添加触媒としては、公知の不均一系触媒および均一系触媒をいずれも用いることができる。不均一系触媒としては、パラジウム、白金、ニッケル、コバルト、ロジウム、ルテニウムなどの貴金属触媒物質を、カーボン、シリカ、アルミナ、チタニアなどの担体に担持させた固体触媒を挙げることができる。また、均一系触媒としては、ナフテン酸ニッケル/トリエチルアルミニウム、ビス(アセチルアセトナト)ニッケル(II)/トリエチルアルミニウム、オクテン酸コバルト/n−ブチルリチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウムなどを挙げることができる。触媒の形態は粉末でも粒状でもよい。また、この水素添加反応触媒は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
【0034】
水素添加触媒の使用量としては使用する触媒の活性にも依存するが、通常は用いたジシクロペンタジエン(a1)およびビニル芳香族化合物(a2)の合計重量に対して、0.0005〜10%、好ましくは0.001〜5%である。
【0035】
水素添加反応を行う温度としても用いる触媒の活性に依存するが通常100〜300℃、好ましくは120〜280℃である。
水素圧としても用いる触媒の活性に依存するが通常0.1〜10MPa、好ましくは1〜8MPaである。
【0036】
反応時間としては特に制限はないが、通常1〜10時間、好ましくは1〜8時間である。
水素添加率としてはジシクロペンタジエン(a1)由来の非芳香族性二重結合の水素添加率が全ジシクロペンタジエン由来の構造単位を100モル%とするとき、通常90モル%以上、好ましくは95モル%以上である。またビニル芳香族化合物(a2)由来の芳香族性二重結合の水素添加率(核水添率)は全ビニル芳香族化合物由来の構造単位を100モル%とするとき、通常0〜70モル%である。
【0037】
重合反応後または水素添加反応後、蒸留時の反応溶液のハンドリング性を高めるため、有機溶媒を蒸留するに先立ち、有機溶媒をさらに添加してから蒸留してもよい。添加する有機溶媒としては特に限定されないが、具体的には、ペンタン、シクロペンタン、ヘキサン、シクロヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン、ウンデカン、ドデカン、トリデカン、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、プロピルベンゼン、トリメチルベンゼン、クメン、ブチルベンゼン、ジブチルベンゼン、1,4−ジオキサン、テトラヒドロフラン、フルフラール、ブチルグリシジルエーテル、アセトン、メチルエチルケトン、シクロヘキサノン、酢酸エチル、酢酸ブチル、エチルセロソルブ、ブチルセロソルブおよびケロシン;混合溶媒である石油系の各種炭化水素溶剤;あるいは各種潤滑油などが挙げられる。これら有機溶媒は単独で用いてもよく、また2種以上の混合物として用いてもよい。これらのうち、蒸留に要する熱量や時間を低減できることから、テトラヒドロフラン、ヘキサンおよびキシレンが好ましく用いられる。
【0038】
有機溶媒の添加量には特に制限はないが、溶液が均一となり、さらに蒸留に要する時間が短くなるという点から、得られるジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)100重量部に対して10〜100重量部であることが好ましい。
【0039】
蒸留時の温度は、有機溶媒の種類にもよるが、たとえば、常圧蒸留の場合は、溶媒が残留しにくく、樹脂の熱劣化を抑えることができるという点から、100〜300℃が好ましく、150〜280℃がより好ましい。ただし、減圧蒸留を行う場合は、溶媒の種類や減圧の程度に応じて、蒸留温度を低下させることができる。
【0040】
蒸留に要する時間は、得られるジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)の種類や量、有機溶媒の種類や添加量にもよるが、たとえば、溶媒の残留、樹脂熱劣化を抑えるために、0.5〜10時間が好ましく、より好ましくは1〜8時間である。
【0041】
上述のようにして得られるジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)は、標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が1,000〜10,000であり、好ましくは1,000〜5,000、より好ましくは1000〜4000である。分子量がかかる範囲だと環状オレフィン系樹脂(B)との相溶性に優れるため、好ましい。ここで、重量平均分子量(Mw)の測定は、たとえば、ジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)をテトラヒドロフランやクロロホルムなどの溶媒に溶解させ、ポリマーの溶液濃度を0.7〜0.8重量%に調整した後、この溶液を室温から40℃の温度条件下でゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)装置に注入することにより行う。
【0042】
〔環状オレフィン系樹脂(B)〕
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂(B)としては、環状オレフィン系単量体を含む単量体(組成物)を開環(共)重合または付加(共)重合して得られるものであって、次のような(共)重合体が挙げられる。
【0043】
(i)下記式(1)で表される化合物の開環(共)重合体。
(ii)下記式(1)で表される化合物と共重合性単量体との開環共重合体。
【0044】
(iii)(i)または(ii)の開環(共)重合体の水素添加物。
(iv)(i)または(ii)の開環(共)重合体をフリーデルクラフト反応により環化した後、水素添加した(共)重合体。
【0045】
(v)下記式(1)で表される化合物と不飽和二重結合含有化合物との飽和共重合体。
(vi)下記式(1)で表される化合物、ビニル系環状炭化水素系単量体およびシクロ
ペンタジエン系単量体からなる群から選ばれる1種以上の単量体の付加(共)重合体およびその水素添加物。
【0046】
(vii)下記式(1)で表される化合物とアクリレートとの交互共重合体。
【0047】
【化2】

ただし、式(1)中、R1〜R4は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基またはその他の1価の有機基を表し、R1〜R4のうち任意の2つが互いに結合して、単環または多環構造を形成してもよく、mおよびpは、それぞれ独立に、0または正の整数を表す。
【0048】
これらの中でも、(iii)が耐熱性に優れるという点から好適である。
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、次のような化合物が挙げられるが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
【0049】
ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
トリシクロ[4.3.0.12,5]−8−デセン、
トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−デセン、
トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエン、
テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、
5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデ
セン、
8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデ
セン、
8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセ
ン、
8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、
8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、
8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
−3−ドデセン、
【0050】
5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
5−フェニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フェニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−ペンタフルオロエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリス(フルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5−ジフルオロ−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
【0051】
5−フルオロ−5−ペンタフルオロエチル−6,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジフルオロ−5−ヘプタフルオロ−イソプロピル−6−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5−クロロ−5,6,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,6−ジクロロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−トリフルオロメトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
5,5,6−トリフルオロ−6−ヘプタフルオロプロポキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、
8−フルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ジフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−ペンタフルオロエチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン

8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8−メチル−8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3
−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン

8,8,9−トリス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10
]−3−ドデセン、
8,8,9,9−テトラフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ド
デセン、
【0052】
8,8,9,9−テトラキス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5
.17,10]−3−ドデセン、
8,8−ジフルオロ−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5
.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−トリフルオロメトキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,8,9−トリフルオロ−9−ペンタフルオロプロポキシテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−フルオロ−8−ペンタフルオロエチル−9,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8,9−ジフルオロ−8−ヘプタフルオロイソプロピル−9−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−クロロ−8,9,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−
3−ドデセン、
8,9−ジクロロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、
8−メチル−8−(2,2,2−トリフルオロエトキシカルボニル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン。
これらの中でも、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エンおよびトリシク
ロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエンが好適に用いられる。
【0053】
これらは、1種単独で、または2種以上を併用することができる。
上記R1およびR3は、それぞれ独立に、水素原子または炭素原子数1〜10、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜2の炭化水素基を表す。また、前記炭化水素基はアルキル基であり、好ましくは炭素原子数1〜4のアルキル基、より好ましくは炭素原子数1〜2、特に好ましくはメチル基である。このようなアルキル基が、−(CH2nCOORで表される基のように、極性基を含んだ基である場合、得られる環状オレフィン系樹脂(B)の吸湿性を低くできるため好ましい。
【0054】
上記R2およびR4は、それぞれ独立に、水素原子または1価の有機基を表すのが望ましく、またR2およびR4の少なくとも1つは、極性基であるのが望ましい。
極性基としては、カルボキシル基、水酸基、アルコキシカルボニル基、アリロキシカルボニル基、アミノ基、アミド基およびシアノ基などが挙げられる。また、これらの極性基
は、メチレン基などの極性を有さない連結基を介して結合していてもよいし、カルボニル基、エーテル基、シリルエーテル基、チオエーテル基およびイミノ基などの極性を有する2価の有機基を介して結合していてもよい。これらの極性基のうち、カルボキシル基、水酸基、アルコキシカルボニル基およびアリロキシカルボニル基が好ましく、アルコキシカルボニル基およびアリロキシカルボニル基が特に好ましい。
【0055】
また、アルキル基が、−(CH2nCOORで表される基である場合、得られる射出成形体が高屈折率となるためこのましい。
ここで、−(CH2nCOORで表される基において、Rは、炭素数1〜12、好ましくは炭素数1〜4、より好ましくは炭素数1〜2の炭化水素基、好ましくはアルキル基である。また、nは、通常0〜5を表すが、好ましくは0〜3を表す。nの値が小さいほど、得られる環状オレフィン系樹脂(B)のガラス転移温度が高くなるので好ましく、さらにnが0を表す場合は、その合成も容易である点で好ましい。
【0056】
上記mおよびpは、それぞれ独立に、0〜3の整数を表すのが望ましく、m+p=0〜4を満たすことが好ましく、m+p=0〜2がより好ましく、m=1のときp=0であることが特に好ましい。m=1、p=0である場合は、得られる環状オレフィン系樹脂(B)のガラス転移温度が高く、かつ機械的強度も優れるため、好適である。
【0057】
本発明において、環状オレフィン系樹脂(B)は、公知の方法により得ることができ、たとえば、特開平1−132626号公報、特開2006−77257号公報および特開2008−955号公報に記載の方法により得ることができる。
【0058】
本発明で用いられる環状オレフィン系樹脂(B)は、30℃のクロロベンゼン溶液(濃度0.5g/dL)中で測定した対数粘度[η]が、0.3〜1.0dL/gであることが好ましい。また、環状オレフィン系樹脂(B)のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定される標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)は、通常10,000〜500,000、好ましくは20,000〜200,000、より好ましくは30,000〜150,000である。分子量が小さすぎると、得られる射出成形体などの強度が低くなることがある。一方、分子量が大きすぎると、溶液粘度が高くなりすぎて、本発明の射出成形体形成用樹脂組成物の生産性や加工性が悪化することがある。
【0059】
〔その他の添加剤〕
本発明の射出成形体形成用樹脂組成物は、さらに、必要に応じて耐熱劣化性や耐光性を改良するために、酸化防止剤や紫外線吸収剤などを含有していてもよい。
【0060】
酸化防止剤としては、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2,2'−ジオ
キシ−3,3'−ジ−t−ブチル−5,5'−ジメチルジフェニルメタン、テトラキス[メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタ
ン、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ
ベンジル)ベンゼン、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェ
ニル)プロピオネート、2,2'−ジオキシ−3,3'−ジ−t−ブチル−5,5'−ジエチルフェニルメタン、3,9−ビス[1,1−ジメチル−2−(β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ)エチル]、2,4,8,10−テト
ラオキサスピロ[5.5]ウンデカン、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホス
ファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル
)ホスファイト、サイクリックネオペンタンテトライルビス(2,6−ジ−t−ブチル−
4−メチルフェニル)ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイトが挙げられる。
【0061】
紫外線吸収剤としては、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−
メトキシベンゾフェノン、2−(2H−ベンゾトリアゾール-2-イル)-4,6-ビス(1-メチル-1-フェニルエチル)フェノール、2−(2H−ベンゾトリアゾール-2-イル)-
4,6-ジ-t-ペンチルフェノール、2-ベンゾトリアゾール-2-イル4,6-ジ-t-ブチル
フェノール、2,2'-メチレンビス〔4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-[(2
H−ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]〕などが挙げられる。
【0062】
本発明の射出成形体形成用樹脂組成物を構成するジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)および環状オレフィン系樹脂(B)の含有量は、ジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)および環状オレフィン系樹脂(B)の合計100重量部中、ジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)が5〜70重量部、好ましくは10〜50重量部、環状オレフィン系樹脂(B)が95〜30重量部、好ましくは90〜50重量部である。ジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)および環状オレフィン系樹脂(B)の含有量が上記範囲にあると、得られる射出成形体が必要な強度を有し、且つ高屈折率となるため、好ましい。
【0063】
また、前記添加剤の含有量は、環状オレフィン系樹脂(B)100重量部に対して、通常0.01〜10重量部、好ましくは0.03〜5重量部である。
さらに、加工性を向上させる目的で、滑剤などの添加剤、色相を改良するために染料または蛍光増白剤を添加してもよい。
【0064】
〔射出成形体形成用樹脂組成物の調製〕
本発明の射出成形体形成用樹脂組成物は、たとえば、下記(I)〜(III)の方法によ
り得ることができる。
(I)ジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)と環状オレフィン系樹脂(B)とその他の添加剤とを、二軸押出機またはロール混練機などを用いて混合する方法。(II)環状オレフィン系樹脂(B)を適当な溶媒に溶解した溶液に、ジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)およびその他の添加剤を添加し、適当な攪拌機を用いて混合する方法。
(III)ジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)またはその溶液と、環状オレフィン系樹脂(B)またはその溶液と、その他の添加剤とを混合し、devolatilizerや押出機などを用いて脱溶媒し、混合する方法。
【0065】
なお、このとき使用する溶媒としては、ジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)および環状オレフィン系樹脂(B)の製造に使用する重合溶媒などの一般的な溶媒を用いることができる。
【0066】
〔射出成形体〕
本発明の射出成形体は、ジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)と、環状オレフィン系樹脂(B)と、任意成分としてその他の添加剤とを含有する射出成形体形成用樹脂組成物を射出成形することにより得られる。
【0067】
本発明の射出成形体形成用樹脂組成物を、射出成形法により厚さ3.2mmの成形板を300℃の加熱下で成形したとき、該成形板の曇価は1%以下、好ましくは0.6%以下である。
【0068】
射出成形機としては、特に限定されないが、たとえば、シリンダーの方式としてはインライン方式、プリプラ方式;駆動方式としては油圧式、電動式、ハイブリッド式;型締め方式としては直圧式、トグル式;射出方向としては横型、縦型などが挙げられる。また、
型締め方式は射出圧縮できるものでもよい。シリンダー径および型締め力は目的の射出成形体の形状により決まるが、一般に射出成形体の投影面積が大きい場合は、型締め力を大きくすることが好ましく、射出成形体の容量が大きい場合はシリンダー径の大きくすることが好ましい。
【0069】
シリンダーがインライン式の場合、圧縮比、長さ/直径の比、サブフライトの有無などのスクリュー形状は適宜選択でき、スクリュー表面には、クロム系、チタン系、窒化物系、炭素系など、公知のコーティングを施してもよい。また、計量や射出動作の安定性を向上するためにスクリューの回転や圧力を制御する機構などを設けてもよい。また、シリンダー内や射出成形体形成用樹脂組成物を貯蔵するホッパー内を減圧にしたり、シリンダーおよびホッパーを窒素などの不活性ガスでシールしたりすることは、射出成形体が安定的に得られるという観点から好ましい。
【0070】
射出成形の際、射出成形体のソリの低減や安定した連続成形のために、金型装置のキャビティー内を減圧する方法または射出圧縮方法が好適に用いられる。
金型装置のキャビティー内を減圧して射出成形する場合、減圧度は、ゲージ圧で、好ましくは−0.08MPa以下、さらに好ましくは−0.09MPa以下、特に好ましくは−0.1MPa以下である。上記範囲を超えると、減圧度が不足し、光透過性および光拡散性に優れた射出成形体を得られない場合がある。
【0071】
上記範囲の減圧度は、公知の方法、たとえば、真空ポンプを使用して達成される。キャビティー周囲やエジェクター機構部などに、Oリングなどの公知のシール材を使用することが好ましく、射出成形体に不純物が混入しない範囲で真空用のグリースなどを使用してもよい。また、真空ポンプなどの減圧装置と接続するための吸引口は、金型装置内の任意の場所に設ければよいが、通常、エジェクター機構部、スプルーおよびランナーの端部、入れ子構造部などに設けられる。また、真空吸引シーケンスは、金型装置の開閉に併せて電磁バルブなどで制御してもよく、常時運転してもよく、溶融樹脂の充填時に金型装置のキャビティー内を所望の減圧度にできる方法であれば特に制限されない。
【0072】
金型装置のキャビティー内を減圧して射出成形する場合、キャビティーを閉じ、減圧になった状態で溶融樹脂を射出するため、通常、射出遅延時間を設定する。射出遅延時間は、使用する真空ポンプの能力およびキャビティーサイズに依存するが、通常、0.5〜3秒程度である。
【0073】
一方、射出圧縮成形方法では、キャビティー間隔を射出成形体の厚みの1.5〜20倍に設定し、その隙間に溶融樹脂を射出し、シリンダー側で測定される樹脂の圧力を200〜2,000kgf/cm2の範囲に保持しながら、金型装置内の射出成形体面を圧縮し
、キャビティーの間隔を狭くすればよい。
【0074】
また、金型装置のコアを射出成形体の厚みの1.1〜10倍に設定して可動状態とし、そこに溶融樹脂を射出して、射出開始あるいは射出終了後から、可動側コアを平均速度0.01mm/sec〜1mm/secで圧縮してもよい。
【0075】
これらの射出圧縮成形方法には、公知の成形機が用いられる。
射出成形のその他の条件は、特に限定されるものではないが、通常、シリンダー温度が260〜350℃、金型装置温度は、射出成形体形成用樹脂組成物のガラス転移温度Tgに基づいて、通常Tg−1〜Tg−40℃、好ましくはTg−5〜Tg−30℃の範囲である。また、射出速度は、本発明の射出成形体の大きさや成形機のシリンダーサイズにより異なるが、たとえば、シリンダー径が28mmの場合、通常80mm/sec以上、好ましくは90〜250mm/secである。保圧では、射出成形体の形状が保持できる程
度の最小圧・時間に適宜調整することが好ましい。
【0076】
本発明の射出成形体形成用樹脂組成物から形成された射出成形体は、レンズなどの光学部品に好適に用いられる。
【0077】
〔実施例〕
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例および比較例において、「部」および「%」は、特に断りのない限り、「重量部」および「重量%」を意味する。
【0078】
〔評価方法〕
本発明で用いられるジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)および環状オレフィン系樹脂(B)は、以下の測定結果に基づいて評価した。
【0079】
<重量平均分子量(Mw)>
ゲルパーミエーションクロマトグラフ装置(東ソー社製、HLC−8220GPC、カラム;東ソー社製ガードカラムHXL−H、TSK gel G7000HXL、TSK gel GMHXL2本およびTSK gel G2000HXLを順次連結、溶媒;テトラヒドロフラン、流速;1mL/min、サンプル濃度;0.7〜0.8重量%、注入量;70μL、測定温度;40℃、検出器;RI(40℃)、標準物質;東ソー社製TSKスタンダードポリスチレン)を用い、ジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)および環状オレフィン系樹脂(B)の重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)を測定した。
【0080】
<ガラス転移温度(Tg)>
示差走査熱量計(SIIナノテクノロジー社製、DSC6220)を用いて、日本工業規格K7121に従って環状オレフィン系樹脂(B)の補外ガラス転移開始温度(以下単に「ガラス転移温度(Tg)」という。)を求めた。
【0081】
<水素添加率>
超伝導核磁気共鳴吸収装置(NMR、Bruker社製、AVANCE500)を用い、重水素化クロロホルム中で1H−NMRを測定し、ジシクロペンタジエン−ビニル芳香
族系石油樹脂(A)および環状オレフィン系樹脂(B)の水素添加率を算出した。
【0082】
〔環状オレフィン系樹脂(B)の合成〕
<合成例1>環状オレフィン系樹脂(B1)の合成
下記式(2)で表される8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(DNM)74部、ジシクロペンタジエン(DCP
)25部およびビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(NB)1部を単量体として用い、分子量調節剤の1−へキセン18部、およびトルエン200部とともに、窒素置換した反応容器に仕込んで100℃に加熱した。これにトリエチルアルミニウム 0.005
部、メタノール変性WCl6(無水メタノール:PhPOCl2:WCl6=103:63
0:427(重量比))0.005部を加えて60分反応させることにより開環共重合体溶液を得た。得られた開環共重合体の1H−NMR測定結果から、開環共重合体の構成す
る単量体の比率(重量比)は、72.76/26.01/1.23=DNM/DCP/NBであることが分かった。
【0083】
次いで、得られた開環共重合体溶液に、水素添加触媒としてRuHCl(CO)[P(C6533を0.06部添加し、水素ガス圧を10MPaとし、160〜200℃の温度で3時間反応させた。反応終了後、トルエン100重量部、蒸留水3重量部、乳酸0.
72重量部および過酸化水素0.00214重量部を加え、60℃で30分加熱した。その後、メタノール200重量部を加え、60℃で30分加熱し、これを25℃まで冷却し、2層に分離した。その後、上澄み液を500重量部除去し、再びトルエン350重量部、水3重量部を加え、60℃で30分加熱し、メタノールを240重量部加え、60℃で30分加熱してから25℃まで冷却し、2層に分離した。さらに、上澄み液を500重量部除去し、トルエン350重量部、水3重量部を加え、60℃で30分加熱し、メタノール240重量部を加え、60℃で30分加熱して25℃まで冷却し、2層に分離した。最後に上澄み液500重量部を除去後、ポリマー溶液を50℃に加温し、2.0μm、1.0μmおよび0.2μmのそれぞれのフィルターを用いて循環濾過をした。1000時間後もフィルターの差圧は一定で、フィルター目詰まりは発生しなかった。溶液のメタノールとトルエンとの比率をガスクロマトグラフィーにて確認したところ、重量比でメタノール/トルエン=20/80であった。その後、ポリマー固形分量を55%まで濃縮し、250℃、4torr、滞留時間1時間で脱溶媒処理を行い、10μmのポリマーフィルターを通過させて、環状オレフィン系樹脂(B1)を得た。
【0084】
得られた環状オレフィン系樹脂(B1)は、重量平均分子量(Mw)6.10×104
、分子量分布(Mw/Mn)3.8、ガラス転移温度(Tg)146℃、また、水素添加率を求めたところ、99.9%以上であった。
【0085】
【化3】

<合成例2>環状オレフィン系樹脂(B2)の合成
合成例1において、単量体としてDNM100部のみを用いたこと以外は、合成例1と同様にして環状オレフィン系樹脂(B2)を得た。得られた環状オレフィン系樹脂(B2)は、重量平均分子量(Mw)5.50×104、分子量分布(Mw/Mn)3.8、ガ
ラス転移温度(Tg)167℃であった。合成例1と同様にして、水素添加率を求めたところ、99.9%以上であった。
【0086】
[実施例1]
<射出成形体形成用樹脂組成物の調製>
ジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A1)(ジシクロペンタジエン(a1)/スチレン(a2)の組成(重量)比は50:50、重量平均分子量(Mw)は3196、非芳香族核の水素添加率は99モル%以上、芳香族核の水素添加率は0モル%)10重量部と、合成例1で得た環状オレフィン系樹脂(B1)90重量部とをブレンドした後、二軸押出機(TEM−37BS、東芝機械製)を用いて溶融混合し、ペレット状の射出成形体形成用樹脂組成物を得た。シリンダー温度は280℃、軸回転速度は100rpm、押出し速度は10〜20kg/hrであった。得られたペレットの外観は透明であった。
【0087】
<射出成形体の形成>
得られた射出成形体形成用樹脂組成物を100℃で4時間真空乾燥し、窒素雰囲気下で常圧に戻した後、窒素を封入したアルミニウム製の袋に密封して保管した。射出成形体形成用樹脂組成物を、幅60mm、長さ80mm、厚み1mmの平板、1個取りの金型を用いて、射出成形機(ファナック社製、α2000iB、シリンダー径25mm、型締め100ton)により射出成形を行い、板状の射出成形体を得た。
【0088】
射出成形の条件としては、シリンダー温度305℃、金型温度は金型パーティング面の実温で100℃、射出速度は120mm/secとした。
得られた射出成形体について以下の評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
<相溶性>
ASTM D1003法に準じてヘイズを測定した。(株)村上色彩技術研究所製HM−150型ヘーズメーターを用いて、射出成形体の任意の3箇所のヘイズを測定して、その平均値をとった。ヘイズが0.5%より小さいものを○、5.0%より大きいものを×とした。
【0090】
<屈折率>
メトリコン社製PC−2010型プリズムカプラを用い、射出成形体の任意の5箇所の屈折率を測定し、最大値および最小値を除く3点の平均値の値を採用した。なお、光源には408、633および830nmのレーザー光源を用い、得られた屈折率からコーシーの式を用いた回帰計算により589nmにおける屈折率を算出した。
【0091】
<耐熱性(ガラス転移温度(Tg))>
示差走査熱量計(DSC)(SIIナノテクノロジー社製、DSC6220)を用いて、日本工業規格K7121に従って射出成形体の補外ガラス転移開始温度(以下単に「ガラス転移温度(Tg)」という。)を求めた。
【0092】
[実施例2〜21および比較例1〜5]
実施例1において、射出成形体形成用樹脂組成物を表1に示す組成比に変更したこと以外は実施例1と同様にして、射出成形体の形成および評価を行った。結果を表1に示す。
【0093】
表1において、比較例1〜2では、(B)成分のみを用いたため、相溶性は測定しなかった。また、比較例3および5では、樹脂組成物が相溶しなかったため、屈折率およびガラス転移温度(Tg)を測定できなかった。比較例4では、射出成形体が得られなかったため、屈折率を測定できなかった。
【0094】
なお、表1中のジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A1)〜(A7)および比較例で用いた(A8)〜(A11)について詳細を表2に示す。
【0095】
【表1】

【0096】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0097】
本発明の射出成形体は屈折率が高く、透明性に優れているため、光学レンズ、導光板、拡散板、透明プラスチック基板、マイクロレンズおよび光ディスク基板などに好適に用いられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)および環状オレフィン系樹脂(B)を含有する射出成形体形成用樹脂組成物であって、
該ジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)が、
ジシクロペンタジエン(a1)に由来する構造単位20〜80重量%と、ビニル芳香族化合物(a2)に由来する構造単位80〜20重量%(ただし、(a1)単位および(a2)単位の合計を100重量%とする)とを含有し、
該ジシクロペンタジエン(a1)に由来する構造単位の有する非芳香族性二重結合の水素添加率が90モル%以上であり、
該ビニル芳香族化合物(a2)に由来する構造単位の有する芳香族核の水素添加率が0〜70モル%であり、
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した標準ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)が1,000〜10,000である
ことを特徴とする射出成形体形成用樹脂組成物。
【請求項2】
前記ジシクロペンタジエン−ビニル芳香族系石油樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)が1,000〜5,000であることを特徴とする請求項1に記載の射出成形体形成用樹脂組成物。
【請求項3】
前記環状オレフィン系樹脂(B)が、下記式(1)で表される化合物に由来する構造単位を有することを特徴とする請求項1または2に記載の射出成形体形成用樹脂組成物。
【化1】

(式(1)中、R1〜R4は、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1〜30の炭化水素基、またはその他の1価の有機基であり、それぞれ同一でも異なっていてもよい。また、R1
4のうち任意の2つが互いに結合して、単環または多環構造を形成してもよい。R1またはR2に隣接する炭素と、R3またはR4に隣接する炭素とが結合して二重結合を形成して
もよい。mは0または正の整数であり、pは0または正の整数である。)
【請求項4】
前記式(1)で表される化合物が、ジシクロペンタジエンであることを特徴とする請求項3に記載の射出成形体形成用樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載の射出成形体形成用樹脂組成物を射出成形して得られる射出成形体。
【請求項6】
光学部品であることを特徴とする請求項5に記載の射出成形体。
【請求項7】
前記光学部品がレンズであることを特徴とする請求項6に記載の射出成形体。

【公開番号】特開2009−256504(P2009−256504A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−108968(P2008−108968)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】