説明

射出成形機におけるグラフィック画像の表示方法

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は射出成形機におけるグラフィック画像の表示方法に係り、特に、連続運転中の運転データを取り込んで格納するマイクロコンピュータ(以下マイコンと称す)と該マイコンの制御の下に各種モード画像を表示可能な表示装置とを具備した射出成形機における運転データ等のグラフィック画像の表示方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】最近のマイコン制御の射出成形機は、カラーCRTディスプレイ、カラーLCDディスプレイ等の表示装置を具備しており、この表示装置によって、自動成形運転のための成形運転条件を設定または確認するための各種設定条件表示モード画像、自動成形運転中の多数の計測項目の実測データを表示するための各種実測データ表示モード画像、定期点検時期に自動的に点検項目を表示して定期点検を促すための定期点検モード画像、異常発生時にこの旨を認知させるためのアラームモード画像等々を表示するようになっている。
【0003】ところで、上記した実測データ表示モードで表示される画像は、従来は数字を羅列して示すことが多く、これでは例えば射出行程等の運転特性が一瞥で把握しづらいという問題があった。この点に鑑み本願出願人は、射出行程の実測データを設定値とともに表示画面上にグラフィック画像で表示させ得る機能をもつマシン(射出成形機)を開発し、特開平2−26724号として提案した。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところで上記した先願においては、グラフィック表示されるデータの最大値を自動的にグラフスケールの最大値(グラフフルスケール値)として表示画面上に設定表示し、表示画面上のグラフ表示用枠領域の端から端までの全てに実測データをグラフィック表示させ、且つ、グラフィック表示されるデータの最大値を例えば10分割する形でグラフ目盛格子と目盛数字とを生成して表示するようになっていた。このため、例えばグラフィック表示されるデータの最大値が10,12,16……等の切りのよい数値である場合にはグラフ目盛格子と目盛数字は区切りのよいものとなるも、こうした場合は稀であり、通常は表示されるデータの最大値は例えば89.1等の切りの悪い数値となり、このためグラフ目盛格子と目盛数字も切りの悪いものとなって、表示画面上のグラフィック表示データから直接値を読み取りにくいという問題があることが指摘されていた。
【0005】なお、特開昭61−290485号公報には、実験装置またはプラントから採取した生データやそれらの加工データをグラフ表示する表示システムにおいて、グラフの縦軸の表示範囲を与えられたデータから自動的に割り出すようにした技術が開示されている。この先願公報に示された表示システムにおいては、縦軸の最大値Ymaxを、与えられた最大値データの最上位の有効桁データに+1して、元の桁数に戻すことによって決定し、また、縦軸の最小値Yminを、与えられた最小値データの最上位の有効桁データのみをとって、これを元の桁数に戻すことによって決定するようにしている。したがって、この先願公報に開示された技術では、例えば、縦軸の最大値Ymax−最小値Ymin(すなわち、縦軸のフルスケール値)は、「7」や「13」といった、10や5や4などの切りのよい等分割数(切りのよい目盛格子)が得られないグラフフルスケール値となってしまうことがしばしば生じて、グラフデータからの数値の読み取りが難しくなるという問題がある。さらに、この先願公報に開示された技術では、縦軸の最小値Yminを、与えられた最小値データの最上位の有効桁データのみをとって、これを元の桁数に戻すことによって決定するので、縦軸の原点が0(零)でない場合も生じて、この場合には縦軸の原点がかさ上げされた形となり、表示されたグラフィックデータの0(零)からの絶対量が直感的に把握し難いものとなるという問題もある。
【0006】本発明は上記の点に鑑みなされたもので、その目的とするところは、表示画面上のグラフィック表示データからの数値の読み取りが容易、確実となる、自動フルスケール設定とグラフ目盛格子の自動作成とが可能で、また、1つのグラフ表示用枠領域内に複数項目のグラフィックデータを同時に表示する際にも、グラフィック表示データからの数値の読み取りが容易、確実となる、総じて視認性に優れた使い勝手のよい射出成形機におけるグラフィック画像の表示方法を提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は上記した目的を達成するため、設定された各運転条件値と各センサからの計測情報とに基づきマシンの各部を駆動制御するマイコンを具備し、該マイコンは、予め定められた成形運転プログラムに従ってチャージ行程、型開閉行程、射出行程、エジェクト行程等の一連の成形運転行程を実行させると共に、運転中の各運転条件の実測データを取り込んで格納し、また、オペレータの指示によって前記マイコンは前記設定された運転条件値あるいは前記取り込んだ実測データを変換処理して、マシンに付設された表示装置に設定データあるいは実測データのグラフィック画像を表示する射出成形機におけるグラフィック画像の表示方法において、前記マイコンは、自動スケールモード時には、表示を指示された当該グラフィック画像のためのグラフデータの最大値と、予め設定された切り(区切り)のよい数値からなるグラフフルスケール値群とを対比して、この表示用のグラフデータが収まる最小の前記グラフフルスケール値を決定し、決定されたグラフフルスケール値に基づきグラフ表示用枠領域内にグラフ目盛格子を作成すると共に目盛数値を作成して、前記グラフ表示用枠領域内に前記設定データグラフあるいは実測データグラフを表示させ、かつ、前記グラフ表示用枠領域内に複数項目の前記設定データグラフあるいは実測データグラフを同時に表示する際には、縦軸を区切るグラフ目盛格子の横格子を、各項目で共通して切り(区切り)のよい等分割数となるように自動的に選択するようにされる。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の1実施形態を、図1R>1〜図5によって説明する。図1は本実施形態に係る射出成形機の制御系統の簡略化したブロック図である。図1R>1において、1はマシン(射出成形機)全体の動作制御や表示制御などを司るマイコン、2はマシンの各部に備えられた多数のセンサで構成されるセンサ群、3はマシンの各部に配設された多数の駆動源を駆動制御するための多数のドライバ回路で構成されたドライバ群、4はマシンの前面部に配設されたキー入力装置、5は上記キー入力装置に隣接して配設された例えばカラーCRTディスプレイ、カラーLCD等よりなる表示装置である。
【0009】図1の前記マイコン1は、チャージ動作、射出動作、型開閉動作、エジェクト動作等の成形行程全体の制御や、実測データの演算・格納処理、良品/不良品の判定処理、異常判定処理等の演算・判定処理、あるいは前記表示装置5の出力画像の表示制御処理等々の各種処理を実行する。このマイコン1は、実際には各種I/Oインターフェイス、ROM、RAM、CPU等を具備したもので構成され、予め作成された各種プログラムにより各種処理を実行するも、本実施形態においては、成形条件設定記憶部10、成形プロセス制御部11、実測値記憶部12、表示処理部13等を備えたものとして、以下の説明を行う。なお、表示処理部13には、データ変換処理部14、グラフスケール生成部15、表示用固定データ格納部16、表示画像データ生成部17等が設けられている。
【0010】上記成形条件設定記憶部10には、キー入力装置4によって入力された各種運転条件値が、書き替え可能な形で記憶されている。この運転条件値としては、例えば、増締力、電力値、チャージ行程時のスクリュー位置とスクリュー回転数,スクリュー後退速度,及び背圧との関係、サックバック制御条件、射出開始点(位置)から保圧切替点(位置)までの射出速度条件並びに射出圧力条件、保圧切替時点から保圧終了時点までの2次射出圧力(保圧圧力)条件、各部のバンドヒータ温度、型閉じ(型締め)ストロークと速度制御条件並びに型締力、型開きストロークと速度制御条件、エジェクト制御条件、製品自動取り出し機の制御条件等々が挙げられる。
【0011】前記成形プロセス制御部11は、予め作成された成形プロセス制御プログラムと、成形条件設定記憶部10に格納された設定条件値とに基づき、マシンの各部に配設された前記センサ群2(位置センサ、圧力センサ、温度センサ等々)からの計測情報及び自身に内蔵されたクロックからの計時情報を参照しつつ、前記ドライバ群3(モータドライバ、油圧シリンダドライバ、ヒータドライバ等々)を介して対応する駆動源を駆動制御し、一連の成形行程を実行させる。なお、前記センサ群3に含まれるセンサを具体的に挙げると、ACC(アキュームレータ)チャージ圧力検出センサ、スクリューストローク検出センサ、スクリュー回転数検出センサ、射出圧力及び背圧検出センサ、型開閉ストローク検出センサ、型締圧力検出センサ、型内圧検出センサ、エジェクト突出し/戻りストローク検出センサ、エジェクトシリンダ圧力検出センサ、製品自動取り出し機の動作確認センサ、各部の温度センサ、電力値検出センサ等が挙げられる。
【0012】前記実測値記憶部12には、連続自動運転時における予め設定されたモニタ項目の総べての実測データが、連続する所定回数のショットにわたって取り込まれる。取り込まれるモニタ項目としては、■時間監視項目、■位置監視項目、■回転数監視項目、■速度監視項目、■圧力監視項目、■温度監視項目、■電力監視項目等が挙げられ、前記した成形運転条件設定項目の重要項目がほぼオーバーラップするようになっている。なお、速度実測値は、前記した各ストローク(位置)検出センサからの計測情報とクロック情報とに基づき、前記マイコン1内の図示せぬ演算処理部によってリアルタイムに算出され、これが実測値記憶部12の所定エリアに格納される。
【0013】前記表示処理部13は、キー入力装置4によるオペレータが所望するモードの表示画像の呼び出し指令によって、予め作成された表示画像作成・制御プログラムに基づき、指定された表示モードの表示画像データを作成する。すなわち、オペレータによる所定の表示画像の呼び出し指令が到来すると、表示処理部13の前記データ変換処理部14は、必要に応じ前記成形条件設定記憶部10や実測値記憶部12に格納された情報から当該表示モード画像の表示に用いるためのデータを抽出すると共に、これを指定された当該表示モード画像の表示形態に対応した形に変換処理する。例えば、指定された表示モードが或る行程のグラフィック画像であると、抽出したデータを線描化処理した画像データに変換処理したり、また、指定された表示モードが或る行程の運転状態設定画像であると、抽出したデータを数値画像データに変換処理等する。また、指定された表示モードがグラフィック画像である場合には、前記グラフスケール生成部15は、上記したデータ変換処理部14の内容、もしくはオペレータのスケール指示に基づき、予め作成されたグラフスケール(グラフ目盛)生成プログラムによって、所定倍率のグラフ目盛格子画像データと目盛数値画像データとを生成する。
【0014】本実施形態においては、グラフィック画像の初期呼び出し時にはシステムは自動スケールモードを選択されるようになっており、前記グラフスケール生成部15には自動スケール指示信号S1が入力されている。この時にはグラフスケール生成部15は、前記データ変換処理部14から取り込んだ表示を指示された項目のグラフデータの横軸及び縦軸の最大値と、各項目ごとに予め設定された切り(区切り)のよい数値からなる横軸及び縦軸のグラフフルスケール値群とをそれぞれ対比して、この表示用のグラフデータが収まる最小の前記グラフフルスケール値を横軸並びに縦軸でそれぞれ決定し、決定されたグラフフルスケール値に基づきグラフ表示用枠領域内にグラフ目盛格子を作成すると共に目盛数値を作成するようになっている。例えば、チャージ行程のグラフィック画像に関しては、横軸のグラフフルスケール値群として、10,12,16,20,24,30,32,40,50,60,80,及びこれらに10の累乗もしくは1/10の累乗を乗じた数値が用意されており、また、縦軸のグラフフルスケール値群として、10,16,20,40,50,80,及びこれらに10の累乗もしくは1/10の累乗を乗じた数値が用意されている。従って、例えばチャージ行程の横軸データたる全ストローク値(スクリューの全後退距離)が78mmであると、横軸のグラフフルスケール値として80(mm)が選択され、チャージ行程の縦軸データたる背圧の最大値が83.5kgfであると縦軸のグラフフルスケール値として100(kgf)が選択される。そしてグラフスケール生成部15は、このように決定された横軸並びに縦軸のグラフフルスケール値に基づき、各グラフック表示項目ごとに予め定められているグラフ表示用枠領域(図2の21)内に、これも予め定められている切りのよい分割数(例えば、4,5,8,10,20などの等分割数)となるようにグラフ目盛格子(図2の22)をドット表示で作成し、また、これに見合った目盛数値データ(図2の23)を作成する。さらに、グラフ目盛格子の各単位格子を、これも切りのよい分割数(例えば、4,5,10)となるようにドットで分割したデータ(図3)として作成する。なお、上述した切りのよいグラフフルスケール値群、及びこれに応じたグラフ目盛格子のための切りのよい等分割数は、任意に設定可能で、視認性並びにソフトウェア構築の負担の双方を勘案して適当に設定すればよい。
【0015】一方、オペレータのキー操作によって、グラフスケール生成部15にスケール設定指示信号S2が到来すると、前記表示処理部13はスケール設定モード(オペレータによるスケール設定モード)となる。本実施形態においては、単にスケール設定指示信号S2のみが入力された状態では、表示処理部13は自動スケールモードを抜け出た状態にあって、最新にグラフスケール生成部15で作成したグラフ目盛画像データと目盛数値画像データとを固定した状態(固定スケールモード)にあり、この状態で前記データ変換処理部14からのデータの最大値が変化しても、グラフ目盛画像データと目盛数値画像データは変化しない。そして、このようなスケール設定モードの初期状態から、オペレータが所望するグラフック表示項目を指定して、このグラフック表示項目に対する拡大/縮小率を指定するためのスケール指示信号、すなわち横軸並びに縦軸の最小値,最大値〔(Xmim ,Xmax )、(Ymim ,Ymax )〕を入力すると、グラフスケール生成部15は、オペレータによるスケール設定値に基づき、グラフ表示用枠領域内の横軸の最小値,最大値を(Xmim ,Xmax )とし、また縦軸の最小値,最大値を(Ymim ,Ymax )として、グラフ表示用枠領域内に区切りのよい目盛数値となるようにグラフ目盛格子を作成すると共に、これに見合った目盛数値を作成する。
【0016】また、前記データ変換処理部14では、上述の如くグラフスケール生成部15で作成されたグラフ目盛格子画像データと目盛数値画像データの情報を受けて、当該グラフ目盛格子上に乗せるべきデータを、このグラフ目盛に応じた拡大/縮小率に変換処理して線描化データとする。
【0017】これら、データ変換処理部14及びグラフスケール生成部15の生成処理データは、前記表示画像データ生成部17に取り込まれ、所定倍率のグラフ目盛格子画像データ上の所定位置に、このグラフ目盛に応じた拡大/縮小率に変換処理して取り込まれグラフィック画像データが重ね書きして合成処理される。また、前記表示用固定データ格納部16に予め作成されて格納されている多数のモード画像用の固定データたる文字,記号,グラフィック図形,罫線データ等々から、当該表示モード画像の表示に用いるためのデータが抽出されて、これが表示画像データ生成部17に取り込まれ、同じく表示用の画像データとして合成される。これによって、表示画像データ生成部17には、指定されたグラフィック表示画像用のグラフ目盛,目盛数字,線描グラフ,モード表示文字,単位記号,項目表示文字等が所定配置・合成され、且つカラー分け情報等が付加された画像データが作成され、これが書き換え可能に保持される。なお、指定された表示モードがグラフィック画像でない場合には、データ変換処理部14と表示用固定データ格納部16の内容とによって、同様に指定された表示画像用の画像データが表示画像データ生成部17に生成・保持される。
【0018】前記表示画像データ生成部17の画像データは、図示せぬフレームバッファに転送されて一時記憶され、表示処理部13の指令によってこのフレームバッファの出力が前記表示装置5に送出されて、表示装置5の表示画面上には所定モードの画像データが表示されることになる。
【0019】図2は、オペレータがチャージ行程のグラフィック画像の表示を指定したときに、自動スケールモードで表示装置5の表示画面上に呼び出される最新成形サイクルのチャージ行程グラフィック画像を示している。同図において、横軸はスクリューの位置(スクリューの後退ストローク)を示しており、これのスケールを示す数値が下側に表わされている。図2に示したチャージ行程の例では、スクリューの全ストローク(前進限たる射出完了位置から後退限たる計量完了点までのストローク)は約78mmで、表示画面の横軸のフルスケール値は80mmが設定されており、横軸全体を区切るグラフ目盛格子22の縦格子線は80mmを20に等分割する形に生成されている。また、グラフ表示用枠領域21の縦軸は同図で左側が背圧を示しており、これのスケールを示す数値が同図の左側に表わされており、図2の例では、背圧の実測最大値が約83.5kgfで背圧用の縦軸のフルスケール値は100kgfが設定されている。さらに縦軸の同図で右側はスクリューの回転数並びにスクリューの後退速度を示しており、これらのスケールを示す数値が同図の右側に2段重ね(上が回転数で下が速度)でそれぞれ表わされており、図2の例では、スクリューの回転数の実測最大値が約42rpmで回転数用の縦軸のフルスケール値は50rpmが設定されており、スクリューの後退速度の実測最大値が約37.5mm/sで後退速度用の縦軸のフルスケール値は40mm/sが設定されている。
【0020】図2に示した例では、縦軸は3つの項目(背圧、回転数、速度)の値を示す指標となり且つそれぞれのフルスケール値が異なっているので、前記グラフスケール生成部15は、縦軸を区切るグラフ目盛格子22の横格子を、各項目で共通して区切りのよい等分割数となるように選択し、ここでは縦軸を10に等分割するようにしている。このようにすると、縦軸のフルスケール値が各項目毎に異なっていても、各項目のグラフィックデータの数値の読み取りが、視認性よく容易に行えることとなる。
【0021】図3は、上記したグラフ目盛格子22の要部拡大図を示しており、グラフ目盛格子22の各単位目盛格子線は、同図に示すように単位目盛格子を切りのよい分割数でドット分割した形で表示されるようになっており、ここでは単位目盛格子の縦及び横は、それぞれ5つのドットで表現されるようになっている。
【0022】なお図2において、24は背圧の実測データ、25はスクリュー回転数の実測データ、26はスクリュー後退速度の実測データをそれぞれ示しており、また、27は背圧の設定データ、28はスクリュー回転数の設定データをそれぞれ示している。ここで、図2の表示画面において、圧力、速度、回転数に関するグラフ特性線はそれぞれ異なるカラーで表示され、且つ、このカラー分けに応じてそれぞれの目盛数字、単位、文字が同一のカラーで統一して表示されるようになっており、オペレータには一目でどのグラフ特性線が何を表わしているのかを認知できるようになっている(なお、このカラー分けは他のグラフック画像においても同様である)。
【0023】斯様に自動スケールモードでのグラフック画像は、切りのよいフルスケール値とこれに見合った切りのよい目盛で示されるので、表示画面上での各データの読み取りが容易・確実になる。
【0024】ここで、図2の表示画面において下側に示されたのは、グラフィック画像表示状態時に表示される前記キー入力装置4中の図示せぬファンクションキーに割当てられた現在の操作機能と現在の表示モードを示しており、当初の状態では「=1回書き」と「=自動」とが表示されており、この状態ではマイコン1は実測グラフィックデータを最新の成形1サイクル分のみを線描し、また、グラフのスケールをマイコン1の表示処理部13が自動スケールモードで設定・作成してもので表示している。そして、この状態で「1回/重ね」に対応するファンクションキーをプッシュすると、「=1回書き」の表示が「=重ね書き」に切替わって、表示処理部13は重ね書きモードとなり、実測グラフックデータが最新成形サイクルを含む複数成形サイクルにわたって重ね書きされて表示される。
【0025】また、図2の状態で「スケールモード」に対応するファンクションキーをプッシュすると、「=自動」の表示が「=設定」に切り替わって、マイコン1の表示処理部13はスケール設定受け付け状態となり(前記したスケール設定指示信号S2が入力された状態となり)、この状態で例えば他のファンクションキーで拡大/縮小する項目を選択し、次にテンキーの操作で、前記したように横軸並びに縦軸の最小値,最大値(Xmim ,Xmax )、(Ymim ,Ymax )を順次入力すると、グラフスケール生成部15は、オペレータによるスケール設定値に基づき、グラフ表示用枠領域内の横軸の最小値,最大値を(Xmim ,Xmax )とし、また縦軸の最小値,最大値を(Ymim ,Ymax )として、グラフ表示用枠領域21内に区切りのよい目盛数値となるようにグラフ目盛格子を作成すると共に、これに見合った目盛数値を作成し、前記表示用画像データ生成部17に送出する。また、前記データ変換処理部14は、グラフスケール生成部15でのグラフ目盛格子と目盛数値に対応する拡大/縮小率で、指定された項目の線描グラフデータを作成し、これからグラフ表示用枠領域21内に収まる範囲の線描グラフデータを抽出して表示用画像データ生成部17に送出する。従って、オペレータの指示したスケールに応じた拡大/縮小率でスケールの生成が行なわれ、これに応じてグラフが描かれるようになっている。
【0026】図4は、図2の状態で拡大する項目として背圧を選択し、横軸並びに縦軸の最小値,最大値をそれぞれ(20,30)、(70,80)とした時の拡大画像を示している。斯様に、オペレータは簡単な操作で任意の項目のグラフを簡単な操作で拡大(もしくは縮小)できるので、所望スケールでのグラフデータの観察が容易に行なえることとなる。
【0027】なお、前記したように単にスケール設定指示信号S2のみを入力した状態に留めおくと固定スケールモードとなり、現在のスケールが固定されるので、こうすることにより、異なる運転設定条件の設定データグラフ同志や異なる運転設定条件下の実測データグラフ同志を、固定されたグラフ目盛格子上に同時に表示して対比可能となる。
【0028】以上、チャージ行程のグラフィック画像を例にとって説明したが、本実施形態では他の行程のグラフィック画像の表示も同様に処理可能となっている。例えば、図5は、オペレータが射出行程のグラフィック画像の表示を指定したときに、自動スケールモードで表示装置5の表示画面に呼び出される最新成形サイクルのチャージ行程グラフィック画像を示している。同図において、横軸の右半分はスクリューの位置(右端の計量完了点から中央の保圧切替え点までの1次射出行程のスクリューの前進ストローク)をスクリュー前進限を0として右側に増加するように示しており、横軸の左半分は時間(保圧切替え時点から保圧完了時点までの保圧行程時間)を保圧切替え点を0として左側に増加するように示しており、これらのスケールを示す数値が下側に表わされている。また、縦軸は同図で左側が射出圧を示しており、これのスケールを示す数値が同図の左側に表わされており、縦軸の同図で右側は射出速度を示しており、これのスケールを示す数値が同図の右側に表わされている。また同図において、31が射出速度の実測データ、32が射出圧力の実測データをそれぞれ示しており、また、33が射出速度の設定データ、34が射出圧力の設定データをそれぞれ示している。ここで、図5においては、グラフ表示用枠領域は、1次射出行程のグラフ表示用枠領域21Aと保圧行程のグラフ表示用枠領域21Bとに分けられ、それぞれの領域21A,21Bで別個に自動グラフモードでのスケール作成が行なわれるようになっている。なお、冗長を避けるためこれ以上図示しないが、本実施形態ではこの他にも型開閉行程のグラフィック画像やエジェクト行程グラフィック画像等々が同様にグラフィック表示可能となっている。
【0029】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、表示画面上のグラフィック表示データからの数値の読み取りが容易、確実で、また、1つのグラフ表示用枠領域内に複数項目のグラフィックデータを同時に表示する際にも、グラフィック表示データからの数値の読み取りが容易、確実な、総じて視認性に優れた使い勝手のよい射出成形機におけるグラフィック画像の表示方法が提供でき、その価値は多大である。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の1実施形態に係る射出成形機の制御系統の簡略化したブロック図である。
【図2】本発明の1実施形態によるチャージ行程の自動スケールモードでのグラフィック画像の1例を示す説明図である。
【図3】本発明の1実施形態によるグラフ目盛格子の要部拡大図である。
【図4】本発明の1実施形態による拡大グラフィック画像の1例を示す説明図である。
【図5】本発明の1実施形態による射出行程の自動スケールモードでのグラフィック画像の1例を示す説明図である。
【符号の説明】
1 マイコン(マイクロコンピュータ)
2 センサ群
3 ドライバ群
4 キー入力装置
5 表示装置
10 成形条件設定記憶部
11 成形プロセス制御部
12 実測値記憶部
13 表示処理部
14 データ変換処理部
15 グラフスケール生成部
16 表示用固定データ格納部
17 表示画像データ生成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】 設定された各運転条件値と各センサからの計測情報とに基づきマシンの各部を駆動制御するマイクロコンピュータを具備し、該マイクロコンピュータは、予め定められた成形運転プログラムに従ってチャージ行程、型開閉行程、射出行程、エジェクト行程等の一連の成形運転行程を実行させると共に、運転中の各運転条件の実測データを取り込んで格納し、また、オペレータの指示によって前記マイクロコンピュータは前記設定された運転条件値あるいは前記取り込んだ実測データを変換処理して、マシンに付設された表示装置に設定データあるいは実測データのグラフィック画像を表示する射出成形機において、前記マイクロコンピュータは、自動スケールモード時には、表示を指示された当該グラフィック画像のためのグラフデータの最大値と、予め設定された切り(区切り)のよい数値からなるグラフフルスケール値群とを対比して、この表示用のグラフデータが収まる最小の前記グラフフルスケール値を決定し、決定されたグラフフルスケール値に基づきグラフ表示用枠領域内にグラフ目盛格子を作成すると共に目盛数値を作成して、前記グラフ表示用枠領域内に前記設定データグラフあるいは実測データグラフを表示させ、かつ、前記グラフ表示用枠領域内に複数項目の前記設定データグラフあるいは実測データグラフを同時に表示する際には、縦軸を区切るグラフ目盛格子の横格子を、各項目で共通して切り(区切り)のよい等分割数となるように自動的に選択するようにしたことを特徴とする射出成形機におけるグラフィック画像の表示方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【特許番号】特許第3002442号(P3002442)
【登録日】平成11年11月12日(1999.11.12)
【発行日】平成12年1月24日(2000.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願平9−352799
【分割の表示】特願平3−229757の分割
【出願日】平成3年8月16日(1991.8.16)
【公開番号】特開平10−202715
【公開日】平成10年8月4日(1998.8.4)
【審査請求日】平成9年12月22日(1997.12.22)
【出願人】(000222587)東洋機械金属株式会社 (299)
【参考文献】
【文献】特開 平2−89554(JP,A)
【文献】特開 昭61−220818(JP,A)
【文献】特開 昭61−290485(JP,A)
【文献】特開 昭58−27235(JP,A)
【文献】特開 昭60−19193(JP,A)
【文献】特開 昭61−134832(JP,A)
【文献】特開 平2−23420(JP,A)
【文献】実開 昭57−116988(JP,U)