射出成形機の射出圧力制御方法
【目的】 設定された射出圧力指令パターンを実射出圧力として忠実に再現して射出動作を行わせることのできる射出圧力制御方法を提供すること。
【構成】 時間t・Tの関数として射出圧力指令パターンPCMD(T)と速度指令パターンVCMD(T)を設定しておく。射出工程時には各時刻t・Tに射出圧力P(T)を検出し、射出圧力指令PCMD(T)と検出射出圧力P(T)との圧力偏差に比例する値k・[PCMD(T)−P(T)]を当該周期の速度指令VCMD(T)に加算し、射出用サーボモータM2への速度指令として射出用サーボモータM2を速度制御する。
【構成】 時間t・Tの関数として射出圧力指令パターンPCMD(T)と速度指令パターンVCMD(T)を設定しておく。射出工程時には各時刻t・Tに射出圧力P(T)を検出し、射出圧力指令PCMD(T)と検出射出圧力P(T)との圧力偏差に比例する値k・[PCMD(T)−P(T)]を当該周期の速度指令VCMD(T)に加算し、射出用サーボモータM2への速度指令として射出用サーボモータM2を速度制御する。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、射出成形機の射出圧力制御方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】射出圧力のフィードバック制御を行う射出成形機が特開昭62−97818号および特開昭64−18619号等として既に提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】これら公知の制御方法では、所望する射出圧力を得るため、目標値となる射出圧力指令を射出用サーボモータの制御系にトルク指令として直接出力し、実射出圧力を検出する圧力検出器からの圧力帰還信号と前記トルク指令とを比較してその偏差を増幅して射出用サーボモータに入力することにより射出圧力を制御するようにしていたが、制御系の応答の遅れやゲインの不適によるオーバーシュート等が生じるため、複雑な形状の射出圧力指令パターンを設定して射出圧力を制御するような場合では、設定された射出圧力指令パターンに実射出圧力を適確に追従させることは難しかった。
【0004】本発明の目的は、射出圧力指令パターンの形状が複雑な場合であっても、設定された射出圧力指令パターンを実射出圧力として忠実に再現して射出動作を行わせることのできる射出圧力制御方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、時間の関数として射出圧力指令パターンと速度指令パターンを設定し、射出工程時に所定周期毎に射出圧力を検出し、前記射出圧力指令パターンより当該周期における射出圧力指令を求め、該射出圧力指令と検出射出圧力との圧力偏差に比例する値を前記速度指令パターンから求められる当該周期の速度指令に加算して射出用サーボモータへの速度指令として射出用サーボモータを速度制御することを特徴とした構成により前記目的を達成した。
【0006】そして、設定された射出圧力指令パターンを再現するのに適した速度指令パターンを求めるため、以下に示す工程1から工程7の各処理を行う。
工程1.射出圧力指令パターンと速度指令パターンを初期設定する。
工程2.射出工程時に所定周期毎に射出圧力を検出し、前記射出圧力指令パターンより当該周期における射出圧力指令を求め、該射出圧力指令と検出射出圧力との圧力偏差に比例する値を前記速度指令パターンから求められる当該周期の速度指令に加算して射出用サーボモータへの速度指令として射出用サーボモータを速度制御して射出圧力の制御を行い、射出圧力パターンの実測データを得る。
工程3.射出圧力パターンの実測データと設定射出圧力指令パターンとを比較する。
工程4.比較結果が不満足であれば、各周期毎射出圧力指令と検出射出圧力との圧力偏差に比例係数を乗じた補正値を当該周期の速度指令に加算して新たな速度指令パターンとして設定して工程2まで戻る。
工程5.比較結果が満足であれば、成形品の良否を判定する。
工程6.判定結果が不良であれば射出圧力指令パターンおよび速度指令パターンを編集して新たな射出圧力指令パターンおよび速度指令パターンとして設定して工程2まで戻る。
工程7.判定結果が良品であれば現時点における射出圧力指令パターンおよび速度指令パターンを最終的な射出圧力指令パターンおよび速度指令パターンとして確定する。
【0007】更に、設定された射出圧力指令パターンを忠実に再現するための速度指令パターンを迅速に求めるため、各周期毎の直前の成形サイクルにおけるスクリュー移動速度および実射出圧力の検出値とその前の成形サイクルにおけるスクリュー移動速度および実射出圧力の検出値とに基いて、射出圧力変化に対する速度指令変化の追従特性を求めて前記比例係数とし、工程4の処理を行うようにした。
【0008】上述した手段は速度指令によって射出圧力を制御する場合であるが、他の場合もこれと同様であり、射出用サーボモータをトルク制御することにより射出圧力指令パターンを再現しようとする場合には、速度指令パターンおよび速度指令に換えてトルク指令パターンおよびトルク指令を適用して射出用サーボモータをトルク制御し、また、射出用サーボモータを位置制御することにより射出圧力指令パターンを再現しようとする場合には、速度指令パターンやトルク指令パターンおよび速度指令やトルク指令に換えて位置指令パターンおよび位置指令を適用して射出用サーボモータを位置制御することにより同様の目的を達成する。
【0009】
【作用】時間の関数として射出圧力指令パターンと速度指令パターンを設定する。射出工程時には所定周期毎に射出圧力を検出すると共に前記射出圧力指令パターンより当該周期における射出圧力指令を求め、該射出圧力指令と検出射出圧力との圧力偏差に比例する値を前記速度指令パターンから求められる当該周期の速度指令に加算し、射出用サーボモータへの速度指令として射出用サーボモータを速度制御する。基準となる速度指令パターンの速度指令に圧力偏差対応分の値を加算した速度指令を用いて射出用サーボモータを速度制御することで所望する射出圧力を実現するようにしたため、所望する射出圧力に対応するトルク指令と検出射出圧力との偏差のみに基いて圧力のフィードバック制御を行う場合に比べて実射出圧力の追従が安定する。
【0010】また、設定された射出圧力指令パターンを再現するのに適した速度指令パターンを求めるため、以下に示す処理を実施する。まず、所望する射出圧力指令パターンと適当に設定された速度指令パターンとにより上述の速度制御に基く圧力制御方法を実施する。そして、射出圧力パターンの実測データを得て設定射出圧力指令パターンと比較し、その比較結果が不満であれば各周期の圧力偏差に比例係数を乗じた補正値を各周期の速度指令に加算して新たな速度指令パターンとして設定する。以下、射出圧力パターンの実測データと設定射出圧力指令パターンとが一致して満足な比較結果が得られるまで、上述の速度制御に基く圧力制御、および、速度指令パターンの更新作業を交互に繰り返し実行する。速度指令パターンの更新作業により最終的には射出圧力パターンの実測データと設定射出圧力指令パターンとが一致するが、これは要するに補正値の値が零となった状態であって、設定射出圧力指令パターンを再現するに最も適した速度指令パターンが得られたことを意味する。従って、この速度指令パターンを基準となる速度指令パターンとして速度制御を行うことにより予め決められた所望の設定射出圧力指令パターンを忠実に再現することができ、外乱の変動さえなければ、以下の射出工程では圧力偏差の値は常に零となる。そこで、このようにして検出射出圧力のパターンが安定した段階で製品の良否を判定し、今度は、設定された射出圧力指令パターンがその製品に対して適切なものであったか否かを判定する。製品が不良であれば設定された射出圧力指令パターンがその製品に対して不適であることを意味するので、射出圧力指令パターンおよび速度指令パターンを編集し直し、新たに設定された設定射出圧力指令パターンが実射出圧力として再現されるまで、前記と同様の処理操作を繰り返す。また、製品が良品であれば設定された射出圧力指令パターンが適切であったことを意味するので、この射出圧力指令パターンとこれに対応する速度指令パターン、即ち、圧力偏差の値が零となったときの速度指令パターンを最終的な射出圧力指令パターンおよび速度指令パターンとして確定する。前述したように外乱の変動がなく圧力偏差の値が常に零となるのであれば射出圧力指令パターンの保存は不要ということになるが、実際には外乱の変動が皆無になるということはないので、外乱の変動による射出圧力の変動を解消するため、射出圧力指令パターンを速度指令パターンと共に保存して射出圧力指令パターンと速度指令パターンとに基く速度制御による圧力制御を実施する。
【0011】更に、設定された射出圧力指令パターンを再現するのに適した速度指令パターンを迅速に求めるため、各周期毎の直前の成形サイクルにおけるスクリュー移動速度および実射出圧力の検出値とその前の成形サイクルにおけるスクリュー移動速度および実射出圧力の検出値とに基いて、射出圧力変化に対する速度指令変化の追従特性を求めて補正値算出時の比例係数とする。スクリュー移動速度の変化に対して実射出圧力の変化の割合が大きい場合には比例係数の値が小さく設定され、また、スクリュー移動速度の変化に対して実射出圧力の変化の割合が小さい場合には比例係数の値が大きく設定されるようになるので、不用意なオーバーシュートや制御系内部の追従の遅れが防止され、検出射出圧力パターンを早急に射出圧力指令パターンに一致させることができる。
【0012】上述した作用は速度指令によって射出圧力を制御する場合であるが、他の場合もこれと同様であり、射出用サーボモータをトルク制御することにより射出圧力指令パターンを再現しようとする場合には、速度指令パターンおよび速度指令に換えてトルク指令パターンおよびトルク指令を適用して射出用サーボモータをトルク制御し、また、射出用サーボモータを位置制御することにより射出圧力指令パターンを再現しようとする場合には、速度指令パターンやトルク指令パターンおよび速度指令やトルク指令に換えて位置指令パターンおよび位置指令を適用して射出用サーボモータを位置制御する。
【0013】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0014】図1は本発明の射出圧力制御方法を適用した一実施例の電動式射出成形機30の要部を示すブロック図であり、符号33は固定プラテン、符号32は可動プラテン、符号34は射出シリンダ、符号35はスクリューである。可動プラテン32は、型締め用サーボモータM1の軸出力により、ボールナット&スクリューやトグル機構等から成る型締め機構31を介し、射出成形機30のタイバー(図示せず)に沿って移動される。また、スクリュー35は、駆動源の軸回転を射出軸方向の直線運動に変換するための駆動変換装置37を介して射出用サーボモータM2により軸方向に駆動され、また、歯車機構36を介してスクリュー回転用サーボモータM3により計量回転されるようになっている。スクリュー35の基部には圧力検出器38が設けられ、スクリュー35の軸方向に作用する樹脂圧力、即ち、射出工程における射出圧力や計量混練り工程におけるスクリュー背圧が検出される。射出用サーボモータM2にはスクリュー35の位置や移動速度を検出するためのパルスコーダP2が配備され、また、型締め用サーボモータM1には、可動プラテン32を駆動する型締め機構31のトグルヘッドの位置を検出するためのパルスコーダP1が配備されている。
【0015】射出成形機30を駆動制御する制御装置10は、数値制御用のマイクロプロセッサであるCNC用CPU25、プログラマブルマシンコントローラ用のマイクロプロセッサであるPMC用CPU18、サーボ制御用のマイクロプロセッサであるサーボCPU20、および、A/D変換器16と圧力検出器38を介して射出圧力やスクリュー背圧のサンプリング処理を行うための圧力モニタ用CPU17を有し、バス22を介して相互の入出力を選択することにより各マイクロプロセッサ間での情報伝達が行えるようになっている。
【0016】PMC用CPU18には射出成形機のシーケンス動作を制御するシーケンスプログラム等を記憶したROM13および演算データの一時記憶等に用いられるRAM14が接続され、CNC用CPU25には、射出成形機30を全体的に制御するプログラム等を記憶したROM27および演算データの一時記憶等に用いられるRAM28が接続されている。
【0017】また、サーボCPU20および圧力モニタ用CPU17の各々には、サーボ制御専用の制御プログラムを格納したROM21やデータの一時記憶に用いられるRAM19、および、成形データのサンプリング処理等に関する制御プログラムを格納したROM11やデータの一時記憶に用いられるRAM12が接続されている。更に、サーボCPU20には、該CPU20からの指令に基いてエジェクタ用(図示せず),型締め用,射出用およびスクリュー回転用等の各軸のサーボモータを駆動するサーボアンプ15が接続され、型締め用サーボモータM1に配備したパルスコーダP1および射出用サーボモータM2に配備したパルスコーダP2からの出力の各々がサーボCPU20に帰還され、パルスコーダP1からのフィードバックパルスに基いてサーボCPU20により算出された型締め機構31のトグルヘッドの現在位置や、パルスコーダP2からのフィードバックパルスに基いてサーボCPU20により算出されたスクリュー35の移動速度およびその現在位置が、RAM19の現在位置記憶レジスタおよび現在速度記憶レジスタの各々に逐次更新記憶され、更に、射出開始後の経過時間を基準として、各成形サイクルにおける所定のサンプリング周期毎に、スクリュー35の移動速度VELとその時点におけるスクリュー35の現在位置POSおよび圧力モニタ用CPU17により検出された射出圧力の現在値Pが図7に示すようなRAM12の射出データ記憶ファイルF2に更新記憶されてゆく。射出データ記憶ファイルF2は直前の成形サイクルのデータを保存するためのファイルであり、RAM12には、更に、その1つ前の成形サイクルのデータを保存するための射出データ記憶ファイルF1が設けられている。射出データ記憶ファイルF1の構成は実質的に射出データ記憶ファイルF2の構成と同一である。
【0018】インターフェイス23は射出成形機の各部に配備したリミットスイッチや操作盤からの信号を受信したり射出成形機の周辺機器等に各種の指令を伝達したりするための入出力インターフェイスである。ディスプレイ付手動データ入力装置29はCRT表示回路26を介してバス22に接続され、グラフ表示画面や機能メニューの選択および各種データの入力操作等が行えるようになっており、数値データ入力用のテンキーおよび各種のファンクションキー等が設けられている。
【0019】不揮発性メモリ24は射出成形作業に関する成形条件(射出条件,計量混練り条件等)と各種設定値,パラメータ,マクロ変数等を記憶する成形データ保存用のメモリである。不揮発性メモリ24には、射出開始後の経過時間に対応して速度指令VCMDを記憶する速度指令パターン記憶ファイルF3、および、同様にして射出圧力指令PCMDを記憶する射出圧力指令パターン記憶ファイルF4が設けられている。
【0020】以上の構成により、CNC用CPU25がROM27の制御プログラムや不揮発性メモリ24の成形条件等に基いて各軸のサーボモータに対してパルス分配を行い、サーボCPU20は各軸に対してパルス分配された移動指令とパルスコーダ等の検出器で検出された位置および速度のフィードバック信号に基いて、従来と同様に位置ループ制御,速度ループ制御さらには電流ループ制御等のサーボ制御を行い、いわゆるディジタルサーボ処理を実行する。また、射出用サーボモータM2は、ROM27の制御プログラムや速度指令パターン記憶ファイルF3に記憶された速度指令VCMD等のデータおよびパルスコーダP2からの位置および速度のフィードバック信号に基いてCNC用CPU25およびサーボCPU20により速度制御される。
【0021】更に、本実施例においては、速度指令パターン記憶ファイルF3の速度指令VCMDと並行して射出圧力指令パターン記憶ファイルF4の射出圧力指令PCMDに基く射出用サーボモータM2のフィードバック制御が行われるようになっている。図2はサーボCPU20によるディジタルサーボ処理の概略を示す機能ブロック図であり、図2におけるVCMDはCNC用CPU25からサーボCPU20に与えられる所定周期毎の速度指令、また、PCMDはCNC用CPU25からサーボCPU20に与えられる所定周期毎の射出圧力指令である。なお、この実施例に関していえば、速度指令および射出圧力指令を切り替える所定周期と前述の圧力モニタ用CPU17によるサンプリング周期とは同一である。サーボCPU20は、基本的に、CNC用CPU25から与えられるVCMDと射出用サーボモータM2のパルスコーダP2からの速度帰還信号とに基いてサーボアンプ15を介して射出用サーボモータM2の速度制御を行うが、その時点で圧力検出器38により検出されている検出射出圧力とCNC用CPU25から与えられている指令射出圧力PCMDとの間に偏差があれば、この偏差に所定の比例ゲインKを乗じた値を補正値として速度指令VCMDに加算して速度ループへの速度指令とし、圧力検出器38により検出される射出圧力がCNC用CPU25から与えられるPCMDに一致するように射出用サーボモータM2の速度制御を行う。なお、必要があれば、射出圧力指令PCMDと検出射出圧力の帰還ループを制御系から切り離して従来と同様に速度指令VCMDのみによる速度のフィードバック制御を行うことも可能である。
【0022】図3では射出圧力指令PCMDと検出射出圧力との圧力偏差に所定の比例ゲインK′を乗じた値を速度ループからのトルク指令TCMDに加算して電流ループへのトルク指令とすることにより射出圧力指令PCMDに対する射出圧力のフィードバック制御を行う場合の構成例について示し、また、図4では射出圧力指令PCMDと検出射出圧力との圧力偏差に所定の比例ゲインK″を乗じた値をCNC用CPU25からの位置指令DCMDに加算して位置ループへの位置指令とすることにより射出圧力のフィードバック制御を行う場合の構成例について示しているが、図2の速度制御による場合と比較すると、圧力偏差に対応する補正値を求めるための比例ゲインおよび補正値を加算する制御ループの位置が相違するのみで、作用効果に関しては差がない。図3の例では必要に応じてトルク指令TCMDのみによるフィードバック制御を従来と同様にして行うことが可能であり、また、図4の例では位置指令DCMDのみによるフィートバック制御を従来と同様にして行うことが可能である。図3の例を適用して所定周期毎のトルク指令TCMDおよび射出圧力指令PCMDにより射出用サーボモータM2のフィードバック制御を行う場合では、速度ループ制御を省略してもよく、この場合は、速度指令パターン記憶ファイルF3に換えて、トルク指令TCMDを記憶するトルク指令パターン記憶ファイルF3′を設ける。また、図4の例を適用して所定周期毎の位置指令DCMDおよび射出圧力指令PCMDにより射出用サーボモータM2のフィードバック制御を行う場合では、速度指令パターン記憶ファイルF3に換えて、位置指令DCMDを記憶する位置指令パターン記憶ファイルF3″を設けるようにする。
【0023】以下、速度指令VCMDと射出圧力指令PCMDとによって射出用サーボモータM2のフィードバック制御を行う図2の構成例を一例として取り上げ、射出圧力指令パターンを忠実に再現するのに適した速度指令パターンを求めるための処理について説明する。なお、これから成形しようとする成形品に適した最適の射出圧力指令パターンはこの時点では不明であるものとし、最適の射出圧力指令パターンを得るための条件出しの作業も同時に実施するものとして説明を行う。
【0024】図8から図10は圧力モニタ用CPU17によって実施される最適パターン検出処理の概略を示すフローチャートであり、この処理は、射出成形作業中にディスプレイ付手動データ入力装置29を介してオペレータが最適パターン検出開始指令を入力することによりに起動される。
【0025】最適パターン検出処理を開始した圧力モニタ用CPU17は、まず、初期設定完了フラグfを初期設定未実行状態を示す値0に初期化し(ステップa1)、1射出工程分の射出圧力,射出速度,スクリュー位置のサンプリング実行回数を記憶するカウンタTの値を0に初期化する(ステップa2)。次いで、圧力モニタ用CPU17は、RAM14に射出中を示すフラグSがセットされているか否かを判別するが(ステップa3)、フラグSがセットされていなければ、ステップa3の判別処理を繰り返し実行し、フラグSがセットされるまで待機する。フラグSはPMC用CPU18がシーケンスプログラムに従ってCNC用CPU25に射出開始指令を出力したときにセットされるフラグであり、CNC用CPU25が射出工程の処理を完了した時点でリセットされるようになっている。フラグSの初期値は0である。
【0026】従って、射出成形作業が開始されていなければ最適パターン検出処理の実行、つまり、ステップa3以降の処理の実行は不可能であり、既に述べた通り、オペレータは予め射出成形作業を開始させてからディスプレイ付手動データ入力装置29による最適パターン検出開始指令の入力操作を行わなければならない。これから成形しようとする成形品に適した最適の射出圧力指令パターンはこの時点で不明であるから、オペレータはディスプレイ付手動データ入力装置29を操作して機能メニューを選択し、射出速度の設定画面を表示させ、適宜のカーソル操作等により射出速度を適当に編集して、その内容を射出開始後の経過時間と射出速度との関係により不揮発性メモリ24の速度指令パターン記憶ファイルF3に速度指令パターンのVCMDとして記憶させ、ファイルF3の速度指令条件に従って射出動作を実施させるようにする。従って、最初の射出動作は速度指令と圧力指令とによる同時制御ではなく、速度制御優先のフィードバック制御によって行われることになる。なお、このまま速度制御優先のフィードバック制御を継続して連続成形作業を行わせることも可能であり、その場合は、ディスプレイ付手動データ入力装置29からの最適パターン検出開始指令の入力操作は行わない。また、速度制御優先のフィードバック制御を任意回数だけ実行してから最適パターン検出開始指令の入力操作を行ってもよく、その場合は、最適パターン検出開始指令の入力が確認された時点で、この最適パターン検出処理が開始されることになる。
【0027】最適パターン検出処理におけるステップa3の判別処理で射出工程の開始を確認した圧力モニタ用CPU17は、サンプリングタイマtをスタートさせて所定時間tが経過するまで待機し(ステップa4,ステップa5)、その後カウンタTの値をインクリメントしてサンプリング実行回数Tを更新記憶し(ステップa6)、射出圧力の現在値P,スクリュー移動速度の現在値VEL,スクリュー35の現在位置POSの値を各々対応する現在値記憶レジスタから読み込み、射出データ記憶ファイルF2のアドレスTにP(T),VEL(T),POS(T)として書き込む(ステップa7)。次いで、圧力モニタ用CPU17は、初期設定完了フラグfがセットされているか否か、即ち、射出圧力指令パターン記憶ファイルF4への射出圧力の初期設定が完了しているか否かを判別するが(ステップa8)、所定周期毎のVCMDによる速度制御優先のフィードバック制御を行っている現時点においては当然フラグfは未設定であり、圧力制御のための射出圧力指令パターンも設定されていないので、取り敢えず該時点で検出されている射出圧力Pを射出開始後の経過時間t・Tにおける指令射出圧力と見做して射出圧力指令パターン記憶ファイルF4のアドレスTにPCMD(T)として書き込み(ステップa9)、カウンタTの値が設定値mに達しているか否かを判別する(ステップa10)。なお、設定値mは1射出工程におけるサンプリングの実行回数を決める値であり、予め、t・(m−1)の値が射出所用時間と略一致するように決められている。既に説明した通り、このサンプリング周期は速度指令VCMDを切り替える所定周期と同一である。
【0028】カウンタTの値が設定値mに達していなければ、以下、圧力モニタ用CPU17は、カウンタTの値が設定値mに達するまでの間、ステップa4からステップa10の処理を繰り返し実行し、サンプリング処理の対象となった1射出工程における各サンプリング時刻t・T時の射出圧力の現在値P(T),スクリュー移動速度の現在値VEL(T),スクリュー35の現在位置POS(T)の各値を射出データ記憶ファイルF2の対応アドレスTに所定周期t毎に書き込み、また、射出圧力の現在値P(T)を射出圧力指令パターン記憶ファイルF4の対応アドレスTに射出圧力の指令値PCMD(T)として書き込んでゆく。最終的に、上述の1射出工程が完了した時点で、今終わったばかりの直前の1射出工程に関する射出圧力,スクリュー移動速度,スクリュー位置の各データが射出開始後の経過時間t・T〔但し、T=1〜m−1〕に対応して射出データ記憶ファイルF2のアドレスTに記憶され、また、射出圧力指令パターン記憶ファイルF4には直前の射出工程で用いられた速度指令パターン、つまり、速度指令パターン記憶ファイルF3の内容に対応した射出圧力指令パターン(実際には検出値である)が記憶されることになる。
【0029】ステップa10の判別結果が偽となって1射出工程の終了が確認されると、圧力モニタ用CPU17は初期設定完了フラグfがセットされているか否かを判別するが(ステップa11)、この段階ではフラグfは依然として未設定状態に維持されている。そこで、圧力モニタ用CPU17は、ディスプレイ付手動データ入力装置29の表示画面の横軸を射出開始後の経過時間、また、縦軸を射出圧力として、射出データ記憶ファイルF2の射出圧力データP(T)〔但し、T=1〜m−1〕を表示画面にグラフ表示し、最初の射出速度の設定の場合と同様、適宜のカーソル操作等によりオペレータに射出圧力指令パターンを編集させ、編集後の射出圧力指令パターンの内容P(T)′を射出開始後の経過時間t・Tとの関係により射出圧力指令パターン記憶ファイルF4のアドレスTにPCMD(T)として更新記憶させる(ステップa12)。
【0030】一例として、図5に、射出開始後の経過時間t・Tと編集前の射出圧力P(T)との関係を実線および破線からなる連続した線図で示し、射出開始後の経過時間t・Tと編集後の射出圧力P(T)′との関係を実線のみからなる線図で示す。図5のesからeeに示す区間が射出圧力P(T)を射出圧力P(T)′に編集した編集区間の一例であり、例えば、es=4,ee=6とするなら、この編集作業によって射出圧力指令パターン記憶ファイルF4の内容はes=4からee=6の区間のアドレスで図7に示すように変化する。いうまでもなく、編集前の射出圧力指令パターン記憶ファイルF4の内容は図7における射出データ記憶ファイルF2の内容P(T)と全く同様であり、射出データ記憶ファイルF2の内容P(T)それ自体は編集後も変化しない。
【0031】編集後の射出圧力指令パターンの内容P(T)′を射出圧力指令パターン記憶ファイルF4にPCMD(T)として更新記憶させた圧力モニタ用CPU17は、次いで、速度指令パターン記憶ファイルF3の速度指令データVCMD(T)と射出データ記憶ファイルF2の射出圧力データP(T)および射出圧力指令パターン記憶ファイルF4の射出圧力指令データPCMD(T)に基いて、編集によって変化した射出圧力指令PCMD(T)に対応する射出速度指令VCMD(T)を新たに求め〔但し、いずれもT=es〜ee〕、速度指令パターン記憶ファイルF3の対応アドレスにVCMD(T)として更新記憶させる(ステップa13)。新たに求められたVCMD(T)は編集によって変化した射出圧力指令PCMD(T)を実現するための速度指令であり、圧力の偏差を速度指令対応量に変換するための比例係数Gにより、ファイルF3に更新記憶すべきVCMD(T)={ファイルF3のVCMD(T)の現在値}−G・[{ファイルF2のP(T)}−{ファイルF4のPCMD(T)}]により求めることができる。前述した図5の例では速度指令パターン記憶ファイルF3の内容がes=4からee=6の区間のアドレスで図7に示すように変化する。
【0032】編集によって変化した射出圧力指令PCMD(T)を実現するための速度指令VCMD(T)を速度指令パターン記憶ファイルF3に書き込んだ圧力モニタ用CPU17は、初期設定完了フラグfをセットし(ステップa14)、射出データ記憶ファイルF1のデータをクリアして射出データ記憶ファイルF2のデータを射出データ記憶ファイルF1に転送し、射出データ記憶ファイルF2のデータをクリアする(ステップa15)。
【0033】以上が射出圧力指令パターンと速度指令パターンの初期設定に関する処理の主要部である。
【0034】次いで、圧力モニタ用CPU17はステップa2の処理へと移行してカウンタTをリセットし、前述の処理で速度指令パターン記憶ファイルF3に書き込まれた速度指令データに基いて次の射出工程が開始されるのを待機し、その後、ステップa9の処理を除くステップa2からステップa11までの処理を前記と同様にして繰り返し実行し、今回の射出工程の各サンプリング時刻t・Tで検出された射出圧力の現在値P(T),スクリュー移動速度の現在値VEL(T),スクリュー35の現在位置POS(T)の各値を射出データ記憶ファイルF2の対応アドレスTに書き込み、直前の1射出工程分の射出データを得る。
【0035】射出圧力指令PCMD(T)を実現するための速度指令VCMD(T)が速度指令パターン記憶ファイルF3に一旦書き込まれた後の射出工程、つまり、初期設定完了フラグfがセットされた後の射出工程では、射出開始後の経過時間t・Tに応じ、速度指令パターン記憶ファイルF3の速度指令VCMD(T)と並行して射出圧力指令パターン記憶ファイルF4の射出圧力指令PCMD(T)が射出用サーボモータM2の制御系に順次並列的に入力され、既に説明した図2の機能ブロックによる速度および圧力の同時制御が行われる。
【0036】ステップa9の処理は編集作業のベースとなる射出圧力指令パターンを仮に得るためと、更に、これを編集して速度および圧力の同時制御に用いる射出圧力指令パターン(ファイルF4の内容)および速度指令パターン(ファイルF3の内容)を得るための処理に過ぎず、初期設定完了フラグfがセットされた後はこれを実施しない。
【0037】また、速度指令パターン記憶ファイルF3の速度指令VCMD(T)の各値は、元々、射出圧力指令パターン記憶ファイルF4の射出圧力指令PCMD(T)に対応する射出圧力を得るための速度指令ではあるが、金型キャビティに対する樹脂の充填状況の相違等によって比例係数Gの不相応等の問題があるため、必ずしも、速度指令VCMD(T)によって射出圧力指令PCMD(T)に対応する射出圧力が得られるとは限らない。
【0038】そこで、本実施例においては初期設定完了フラグfがセットされた後の各射出工程の終了後、ステップa11の判別結果に従って以下に示す処理を実行する。この処理は、射出圧力指令パターン記憶ファイルF4に設定された射出圧力指令パターンを再現するのに適した速度指令パターンを求めるための処理である。
【0039】圧力モニタ用CPU17は、まず、射出データ記憶ファイルF2に書き込まれた直前の成形サイクルの射出工程の検出射出圧力P(T)のデータと、射出圧力指令パターン記憶ファイルF4に書き込まれた射出圧力指令PCMD(T)のデータを各ファイルのアドレスTを参照して各サンプリング時刻t・Tのデータを比較することにより、ファイルF2で示される射出圧力パターンの実測データがファイルF4で示される設定射出圧力指令パターンに対して十分に収束しているか否かを判別する(ステップa16)。この判別処理は、例えば、アドレスT=1からT=m−1の区間で|PCMD(T)−ファイルF2のP(T)|の積算値を求めて任意設定の判別基準値との大小関係を比較することや、アドレスT=1からT=m−1の区間で{PCMD(T)−ファイルF2のP(T)}2 の積算値を求めて任意設定の判別基準値との大小関係を比較すること等により自動的に行うことができる。当然、積算値が判別基準値よりも小さければ収束していると見做し、また、積算値が判別基準値よりも大きければ収束していないと見做す。また、アドレスT=1からT=m−1の区間でPCMD(T)およびファイルF2におけるP(T)のグラフをディスプレイ付手動データ入力装置29の表示画面に重合表示させることによりオペレータに一致不一致を判別させ、その判別結果を制御装置10に手動入力するようにしてもよい。射出圧力指令PCMD(T)と直前の成形サイクルの射出工程の検出射出圧力P(T)とを重ねてグラフ表示した例を実線および二点鎖線で図6に示す。
【0040】そして、その結果、直前の射出工程の検出射出圧力P(T)がファイルF4の設定射出圧力指令パターンに収束していないと判別されれば、圧力モニタ用CPU17は、以降の射出工程の検出射出圧力を設定射出圧力指令パターンに収束させるべく、直前の成形サイクルのデータを記憶した射出データ記憶ファイルF2のデータと更にその1つ前の成形サイクルのデータを記憶した射出データ記憶ファイルF1のデータとに基いて各サンプリング周期毎に射出圧力変化に対する速度指令変化の追従特性を示す比例係数Fを求め、速度指令パターン記憶ファイルF3の速度指令データに補正を加えて新たな速度指令パターンを作成し、その速度指令パターンを速度指令パターン記憶ファイルF3に更新記憶させることになる(ステップa17の速度指令パターン更新設定処理)。
【0041】図11から図12は速度指令パターン更新設定処理を詳細に示すフローチャートである。
【0042】速度指令パターン更新設定処理を開始した圧力モニタ用CPU17は、まず、射出データ記憶ファイルF2のデータ検索に用いる指標jの値を1に初期化すると共に(ステップb1)、射出データ記憶ファイルF1のデータ検索に用いる指標iの値を2に初期化する(ステップb2)。次いで、圧力モニタ用CPU17は、直前の射出工程の射出データを記憶した射出データ記憶ファイルF2のアドレスjからt・j時のサンプリングに対応するスクリュー位置データPOS(j)を読み込むと共に更にその1つ前の射出工程の射出データを記憶した射出データ記憶ファイルF1のアドレスiからt・i時のサンプリングに対応するスクリュー位置データPOS(i)を読み込み、POS(j)とPOS(i)が一致するか否かを判別する(ステップb3)。
【0043】そして、両者が一致しなければ、圧力モニタ用CPU17は、更に、POS(j)がPOS(i)よりも小さいか否か、つまり、直前の射出工程におけるt・j時のスクリュー位置POS(j)が更にその1つ前の射出工程におけるt・i時のスクリュー位置POS(i)とt・(i−1)時のスクリュー位置POS(i−1)との間にあるか否かを判別する(ステップb4)。そして、POS(j)がPOS(i)よりも小さくなければ、圧力モニタ用CPU17は、指標iの値を順次インクリメントし(ステップb5)、ステップb3もしくはステップb4の判別結果が真となるまでステップb3およびステップb4の判別処理を繰り返し実行し、直前の射出工程におけるt・j時のスクリュー位置POS(j)と一致するスクリュー位置データを有する射出データ記憶ファイルF1のアドレスi、もしくは、直前の射出工程におけるt・j時のスクリュー位置POS(j)をPOS(i−1)とPOS(i)との間に含む射出データ記憶ファイルF1のアドレスiを検出する。
【0044】直前の射出工程に関連する射出データ記憶ファイルF2のデータと更にその1つ前の射出工程に関連する射出データ記憶ファイルF1のデータとに基いて各サンプリング周期毎に射出圧力変化に対する速度指令変化の追従特性を示す比例係数Fを求める点に関しては既に述べたが、射出圧力変化に対する速度指令変化の追従特性は、実際には、金型キャビティに対する樹脂の充填の度合いによって著しく相違するので、溶融樹脂の粘性抵抗の変動等によって直前の射出工程における各サンプリング時のスクリュー位置データとその各々のサンプリング時に対応する更にその1つ前の射出工程の各サンプリング時のスクリュー位置データとが相違する場合、要するに、樹脂の充填の度合いが相違する場合では、射出開始後の経過時間を基準とするデータに基いて適正な比例係数Fを求めることは困難となる。そこで、直前の射出工程に関連するデータを記憶した射出データ記憶ファイルF2におけるアドレスjのスクリュー位置POS(j)に対応するスクリュー位置を有するデータを記憶した射出データ記憶ファイルF1のアドレスiを検出し、ファイルF2のアドレスjのデータとファイルF1のアドレスiのデータとを関連させて比例係数Fを求めるのである。
【0045】なお、スクリュー位置のサンプリングは所定周期毎に行われているため、射出データ記憶ファイルF2のPOS(j)と完全に一致するPOS(i)を有する射出データ記憶ファイルF1のアドレスが検出されること(ステップb3の判別結果が真となること)は実際には希であり、POS(j)をPOS(i−1)とPOS(i)との間に含む射出データ記憶ファイルF1のアドレスiが検出される(ステップb4の判別結果が真となる)のが普通である。
【0046】しかし、POS(j)をPOS(i−1)とPOS(i)との間に含む射出データ記憶ファイルF1のアドレスiが検出されたとしても、射出データ記憶ファイルF1はPOS(i−1)とPOS(i)に対応する検出射出圧力および検出射出速度のデータを有するのみで、POS(j)に完全に対応した検出射出圧力や検出射出速度のデータを持っているわけではないから、射出データ記憶ファイルF1におけるアドレスiおよびi−1の各データと射出データ記憶ファイルF2におけるアドレスjの各データとに基いて、ファイルF1においてPOS(j)に対応する検出射出圧力および検出射出速度のデータを改めて求めてやる必要が生じる。
【0047】そこで、ステップb4の判別結果が真となった場合、つまり、射出データ記憶ファイルF2のPOS(j)をPOS(i−1)とPOS(i)との間に含む射出データ記憶ファイルF1のアドレスiが検出された場合、圧力モニタ用CPU17は、まず、{ファイルF2のPOS(j)−ファイルF1のPOS(i−1)}/{ファイルF1のPOS(i)−ファイルF1のPOS(i−1)}の演算式を実行して分配係数aの値を求める(ステップb6)。与式の分母はPOS(i−1)からPOS(i)までのスクリュー移動量、また、与式の分子はPOS(i−1)からPOS(j)までのスクリュー移動量であるから、与式を解いて分配係数aを求めることにより、POS(i−1)とPOS(i)との間の距離を100%としたときに、POS(i−1)を始点としてPOS(j)がこの区間の何%(但し、×100)の位置に位置するかがわかる。
【0048】従って、ファイルF1におけるアドレスi−1のサンプリング時からファイルF1におけるアドレスiのサンプリング時にかけて射出速度および射出圧力がリニアに変化したものと仮定すれば、ファイルF1においてPOS(i)のスクリュー位置に対応する射出速度VEL(i′)は、{ファイルF1のVEL(i−1)}+a・{ファイルF1のVEL(i)−ファイルF1のVEL(i−1)}により求められる(ステップb7)。また、ファイルF1においてPOS(i)のスクリュー位置に対応する射出圧力P(i′)は、{ファイルF1のP(i−1)}+a・{ファイルF1のP(i)−ファイルF1のP(i−1)}により求められる(ステップb8)。
【0049】射出圧力変化に対する速度指令変化の追従特性を示す比例係数Fは、要するに、ファイルF1およびファイルF2の同一スクリュー位置POS(j)における速度変化/圧力変化の値、つまり、{(直前の射出工程のスクリュー位置POS(j)における射出速度)−(更にその1つ前の射出工程のスクリュー位置POS(j)における射出速度)}/{(直前の射出工程のスクリュー位置POS(j)における射出圧力)−(更にその1つ前の射出工程のスクリュー位置POS(j)における射出圧力)}の値であるから、{ファイルF2のVEL(j)−ファイルF1のVEL(i′)}/{ファイルF2のP(j)−ファイルF1のP(i′)}により求められる(ステップb9)。
【0050】また、偶然にも射出データ記憶ファイルF2のPOS(j)と完全に一致するPOS(i)を有する射出データ記憶ファイルF1のアドレスが検出されてステップb3の判別結果が真となった場合では、何らの問題もなく、比例係数Fは、F={ファイルF2のVEL(j)−ファイルF1のVEL(i)}/{ファイルF2のP(j)−ファイルF1のP(i)}により求められる(ステップb10)。
【0051】いうまでもなく、スクリュー移動速度の変化に対して実射出圧力の変化の割合が大きい場合には比例係数Fの値は小さく、速度指令の僅かな補正で実射出圧力を大幅に変動させることができ、また、スクリュー移動速度の変化に対して実射出圧力の変化の割合が小さい場合には比例係数Fの値は大きく、速度指令を大幅に補正しなければ実射出圧力を変動させることができない。つまり、直前およびその前の射出工程のPOS(j)位置で樹脂の粘性抵抗等が大きい場合では比例係数Fの値が小さくなり、また、樹脂の粘性抵抗等が小さい場合では比例係数Fの値が大きくなる。
【0052】このようにして、サンプリング周期t・jに対応する比例係数Fを求めた圧力モニタ用CPU17は、サンプリング周期t・jに対応して射出圧力指令パターン記憶ファイルF4の第jアドレスに記憶された射出圧力指令値PCMD(j)〔目標値〕と直前の射出工程の同一サンプリング周期に対応して記憶された検出射出圧力P(j)との圧力偏差を求め、更に、この値にスクリュー位置POS(j)に応じた比例係数Fを乗じ、圧力偏差の解消に必要とされる速度指令の補正値ΔVCMDを求める(ステップb11)。そして、圧力モニタ用CPU17は、更に、速度指令パターン記憶ファイルF3の第jアドレスに記憶された速度指令値、つまり、直前の射出工程のt・j時における速度制御で利用された速度指令値VCMD(j)に補正値であるΔVCMDを加算して次の射出工程のt・j時における速度制御で用いるべき速度指令値VCMDを算出し(ステップb12)、速度指令値VCMDおよび比例係数Fの値を速度指令パターン記憶ファイルF3の第jアドレスに更新記憶して(ステップb13)、指標jの値をインクリメントし(ステップb14)、指標jの値が設定値mに達しているか否かを判別する(ステップb15)。
【0053】当然、直前およびその前の射出工程のPOS(j)位置で樹脂の粘性抵抗等が大きい場合では比例係数Fの値が大きくなっているので、速度指令の補正値ΔVCMDの値が大きくなる。また、直前およびその前の射出工程のPOS(j)位置で樹脂の粘性抵抗等が小さい場合では比例係数Fの値が小さくなっているので、速度指令の補正値ΔVCMDの値が小さくなる。この結果、スクリュー35の各位置毎に樹脂の粘性抵抗等が変動するような場合であっても、次の射出工程における射出圧力の不用意なオーバーシュートや追従の遅れは未然に防止される。
【0054】指標jの値が設定値mに達していなければ、以下、圧力モニタ用CPU17は、ステップb15の判別処理で指標jの値が設定値mに達したことが確認されるまでの間、ステップb2からステップb15までの処理を前記と同様にして繰り返し実行し、速度指令パターン記憶ファイルF3の第1アドレスから第m−1アドレスの全ての速度指令値に対して前記と同様の補正を加え、新たな速度指令パターンとして速度指令パターン記憶ファイルF3に更新記憶し、速度指令パターン更新設定処理を終了する。
【0055】そして、速度指令パターン更新設定処理を終了した圧力モニタ用CPU17は、射出データ記憶ファイルF1のデータをクリアして射出データ記憶ファイルF2のデータを射出データ記憶ファイルF1に転送し、射出データ記憶ファイルF2のデータをクリアした後(ステップa15)、再び、ステップa2の処理へと移行してカウンタTをリセットし、前述の速度指令パターン更新設定処理で速度指令パターン記憶ファイルF3に書き込まれた速度指令データに基いて次の射出工程が開始されるのを待機し、その後、ステップa9の処理を除くステップa2からステップa11までの処理を前記と同様にして繰り返し実行し、ファイルF2に記憶された直前の射出工程の射出圧力パターンの実測データがファイルF4で示される設定射出圧力指令パターンに対して十分に収束しているか否かを判別し(ステップa16)、収束していなければ、前記と同様、ステップa17(ステップb1〜ステップb15)の速度指令パターン更新設定処理を繰り返し実行する。
【0056】つまり、ステップa16の判別結果が真となって直前の射出工程の射出圧力パターンの実測データが設定射出圧力指令パターンに収束したことが確認されるまでの間は、1射出工程が完了する度に速度指令パターン更新設定処理が繰り返し実行される。この結果、速度指令パターン記憶ファイルF3に記憶される速度指令VCMDの値は設定射出圧力指令パターンに対して徐々に最適化され、最終的には、ファイルF2に書き込まれる射出圧力パターンの実測データがファイルF4で示される設定射出圧力指令パターンと略一致するようになって、ステップa16の判別結果が真となる。このとき速度指令パターン記憶ファイルF3に書き込まれているデータが設定射出圧力指令パターンに対する理想的な速度指令である。
【0057】圧力モニタ用CPU17は、ステップa16の判別結果が真となって直前の射出工程の射出圧力パターンの実測データが設定射出圧力指令パターンに収束したことが確認された段階で、ディスプレイ付手動データ入力装置29の表示画面に“収束完了”のメッセージを表示すると共に、速度指令パターン記憶ファイルF3の速度指令データVCMD(T),設定射出圧力指令パターンF4の圧力指令データPCMD(T),射出データ記憶ファイルF2に記憶された直前の射出工程の検出射出圧力のデータP(T)、および、速度指令データVCMD(T)に対応してファイルF3に記憶された各サンプリング時毎の比例係数Fの値F(T)をグラフ形式で重合表示して、最適パターン検出処理を終了する。比例係数Fのグラフは、射出圧力変化に対する速度指令変化の追従特性を各スクリュー位置毎に確かめて金型に対する樹脂の充填状態や樹脂の粘性抵抗の変化等を確認する際に利用できる。
【0058】そして、“収束完了”のメッセージを確認したオペレータは実際に成形された成形品を確認してその良否を判別し、成形品が良品であれば速度指令パターン記憶ファイルF3の速度指令パターンおよび設定射出圧力指令パターン記憶ファイルF4の圧力指令パターンをそのまま不揮発性メモリ24に該成形品専用の射出条件として保存し、また、成形品が不良であった場合には、再び、前記と同様の最適パターン検出処理をステップa12の処理から開始させて設定射出圧力指令パターンに修正を加え、前記と同様の処理を繰り返し実行させて直前の射出工程の射出圧力パターンの実測データが設定射出圧力指令パターンに収束するまで待機し、再び、成形品の良否を判別する。以下、オペレータは正常な成形品が得られるまで同様の処理操作を繰り返し実行し、良品が得られた段階で、その時点の速度指令パターン記憶ファイルF3の速度指令パターンおよび設定射出圧力指令パターン記憶ファイルF4の圧力指令パターンを不揮発性メモリ24に該成形品専用の射出条件として保存する。
【0059】条件出しの段階では、設定射出圧力指令パターンを様々に変化させ、その都度射出圧力の安定を待って成形品を確認することによって射出条件の適不適を判断する必要があるが、この実施例によれば実射出圧力を短時間の内に設定射出圧力指令パターンに収束させることができるので、設定射出圧力指令パターンを頻繁に変更して条件出しを行う必要があるような場合でも速やかに条件出しを完了させることができる。
【0060】また、ディスプレイ付手動データ入力装置29の表示画面を確認することにより、射出圧力が収束しているか否か、つまり、射出圧力が定常的に安定しているか否かを知ることができる。この結果、射出圧力の収束完了を待てずに変動過程にある不安定な射出動作に基いて設定射出圧力指令パターンの善し悪しを判断してしまうといった未熟なオペレータにありがちなミスを未然に防止することができる。
【0061】この実施例では射出圧力パターンの実測データをより早く設定射出圧力指令パターンに収束させるためにステップb2からステップb10の処理で各サンプリング時のスクリュー位置に応じた比例係数Fの値を求めるようにしているが、ある程度のオーバーシュート等を許容するのであれば、ステップb2からステップb10の処理を非実行とし、比例係数Fを定数化して前記と同様の処理を行わせてもよい。比例係数Fとしては、例えば、前述の説明で速度指令パターンの編集に用いた比例係数G等を適用する。なお、比例係数Fおよび比例係数Fに代えて用いられる比例係数Gは特許請求の範囲中に記載された比例係数に対応する構成であるが、速度指令パターンの編集に際して最初に用いた比例係数Gはこれとは無関係である。
【0062】樹脂の粘性抵抗等を始めとする外乱に変動がなければファイルF4の設定射出圧力指令パターンに基く速度制御のみで設定射出圧力指令パターンを再現することも可能であるが、実際にはある程度の外乱の変動はつきものであるから、速度指令パターン記憶ファイルF3の速度指令パターンが確定した後も、速度指令パターン記憶ファイルF3の速度指令パターンおよび設定射出圧力指令パターンF4の圧力指令パターンを保存しておき、これに基いて図2の機能ブロックの処理を継続することが望ましい。
【0063】以上、一実施例として設定射出圧力指令パターンと速度指令パターンとに基いて射出用サーボモータM2を駆動制御する場合を例に取って速度指令パターンを求めるための最適パターン検出処理について説明したが、設定射出圧力指令パターンとトルク指令パターン、または、設定射出圧力指令パターンと位置指令パターンとに基いて射出用サーボモータM2を駆動制御する場合においても、前述の実施例と概ね同様の処理操作により射出用サーボモータM2の制御方式に応じたトルク指令や位置指令の最適パターンを検出することができる。
【0064】
【発明の効果】本発明の射出圧力制御方法は、射出圧力指令パターンと共に射出用サーボモータを駆動制御するための速度,トルク,位置等の指令パターンを予め設定しておき、射出用サーボモータの駆動制御に際しては、指令パターンから求められる指令に射出圧力指令と検出射出圧力との圧力偏差に比例する値を加算して射出用サーボモータへの指令として射出用サーボモータを駆動制御するようにしたので、所望する射出圧力に対応するトルク指令と検出射出圧力との偏差のみに基いて圧力のフィードバック制御を行う従来の射出圧力制御に比べて圧力のオーバーシュートや不用意な変動が少なく、実射出圧力を適確に設定射出圧力指令パターンに追従させることができる。
【0065】また、射出圧力パターンの実測データと設定射出圧力指令パターンとが一致するまでの間、射出動作が終了する毎に射出圧力パターンの実測データを得て対応する周期毎に設定射出圧力指令パターンと比較し、各周期の圧力偏差に比例係数を乗じた補正値を指令パターンの各周期の指令値に加算して新たな指令パターンとして設定する処理を繰り返し実行するようにしたので、設定射出圧力指令パターンを再現するに最も適した指令パターンを容易に求めることができる。
【0066】更に、各周期毎の直前の成形サイクルにおけるスクリュー移動速度および実射出圧力の検出値とその前の成形サイクルにおけるスクリュー移動速度および実射出圧力の検出値とに基いて、射出圧力変化に対する指令値の変化の追従特性を求めて補正値算出時の比例係数とするようにしたので、不用意なオーバーシュートや制御系内部の追従の遅れが防止され、射出圧力を早急に射出圧力指令パターンに一致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の射出圧力制御方法を適用した一実施例の電動式射出成形機の要部を示すブロック図である。
【図2】速度指令および射出圧力指令による射出圧力のフィードバック制御の概略を示す機能ブロック図である。
【図3】トルク指令および射出圧力指令による射出圧力のフィードバック制御の概略を示す機能ブロック図である。
【図4】位置指令および射出圧力指令による射出圧力のフィードバック制御の概略を示す機能ブロック図である。
【図5】射出圧力指令パターンの編集画面を例示する図である。
【図6】射出圧力の収束を知らせるモニタ画面を例示する図である。
【図7】実施例で用いた各ファイル手段の構成を概念的に示す図である。
【図8】最適パターン検出処理の概略を示すフローチャートである。
【図9】最適パターン検出処理の概略を示すフローチャートの続きである。
【図10】最適パターン検出処理の概略を示すフローチャートの続きである。
【図11】最適パターン検出処理における速度指令パターン更新設定処理の詳細を示すフローチャートである。
【図12】速度指令パターン更新設定処理の詳細を示すフローチャートの続きである。
【符号の説明】
10 制御装置
15 サーボアンプ
17 圧力モニタ用CPU
20 サーボCPU
24 不揮発性メモリ
25 CNC用CPU
30 電動式射出成形機
35 スクリュー
38 圧力検出器
M2 射出用サーボモータ
P2 パルスコーダ
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、射出成形機の射出圧力制御方法の改良に関する。
【0002】
【従来の技術】射出圧力のフィードバック制御を行う射出成形機が特開昭62−97818号および特開昭64−18619号等として既に提案されている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】これら公知の制御方法では、所望する射出圧力を得るため、目標値となる射出圧力指令を射出用サーボモータの制御系にトルク指令として直接出力し、実射出圧力を検出する圧力検出器からの圧力帰還信号と前記トルク指令とを比較してその偏差を増幅して射出用サーボモータに入力することにより射出圧力を制御するようにしていたが、制御系の応答の遅れやゲインの不適によるオーバーシュート等が生じるため、複雑な形状の射出圧力指令パターンを設定して射出圧力を制御するような場合では、設定された射出圧力指令パターンに実射出圧力を適確に追従させることは難しかった。
【0004】本発明の目的は、射出圧力指令パターンの形状が複雑な場合であっても、設定された射出圧力指令パターンを実射出圧力として忠実に再現して射出動作を行わせることのできる射出圧力制御方法を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明は、時間の関数として射出圧力指令パターンと速度指令パターンを設定し、射出工程時に所定周期毎に射出圧力を検出し、前記射出圧力指令パターンより当該周期における射出圧力指令を求め、該射出圧力指令と検出射出圧力との圧力偏差に比例する値を前記速度指令パターンから求められる当該周期の速度指令に加算して射出用サーボモータへの速度指令として射出用サーボモータを速度制御することを特徴とした構成により前記目的を達成した。
【0006】そして、設定された射出圧力指令パターンを再現するのに適した速度指令パターンを求めるため、以下に示す工程1から工程7の各処理を行う。
工程1.射出圧力指令パターンと速度指令パターンを初期設定する。
工程2.射出工程時に所定周期毎に射出圧力を検出し、前記射出圧力指令パターンより当該周期における射出圧力指令を求め、該射出圧力指令と検出射出圧力との圧力偏差に比例する値を前記速度指令パターンから求められる当該周期の速度指令に加算して射出用サーボモータへの速度指令として射出用サーボモータを速度制御して射出圧力の制御を行い、射出圧力パターンの実測データを得る。
工程3.射出圧力パターンの実測データと設定射出圧力指令パターンとを比較する。
工程4.比較結果が不満足であれば、各周期毎射出圧力指令と検出射出圧力との圧力偏差に比例係数を乗じた補正値を当該周期の速度指令に加算して新たな速度指令パターンとして設定して工程2まで戻る。
工程5.比較結果が満足であれば、成形品の良否を判定する。
工程6.判定結果が不良であれば射出圧力指令パターンおよび速度指令パターンを編集して新たな射出圧力指令パターンおよび速度指令パターンとして設定して工程2まで戻る。
工程7.判定結果が良品であれば現時点における射出圧力指令パターンおよび速度指令パターンを最終的な射出圧力指令パターンおよび速度指令パターンとして確定する。
【0007】更に、設定された射出圧力指令パターンを忠実に再現するための速度指令パターンを迅速に求めるため、各周期毎の直前の成形サイクルにおけるスクリュー移動速度および実射出圧力の検出値とその前の成形サイクルにおけるスクリュー移動速度および実射出圧力の検出値とに基いて、射出圧力変化に対する速度指令変化の追従特性を求めて前記比例係数とし、工程4の処理を行うようにした。
【0008】上述した手段は速度指令によって射出圧力を制御する場合であるが、他の場合もこれと同様であり、射出用サーボモータをトルク制御することにより射出圧力指令パターンを再現しようとする場合には、速度指令パターンおよび速度指令に換えてトルク指令パターンおよびトルク指令を適用して射出用サーボモータをトルク制御し、また、射出用サーボモータを位置制御することにより射出圧力指令パターンを再現しようとする場合には、速度指令パターンやトルク指令パターンおよび速度指令やトルク指令に換えて位置指令パターンおよび位置指令を適用して射出用サーボモータを位置制御することにより同様の目的を達成する。
【0009】
【作用】時間の関数として射出圧力指令パターンと速度指令パターンを設定する。射出工程時には所定周期毎に射出圧力を検出すると共に前記射出圧力指令パターンより当該周期における射出圧力指令を求め、該射出圧力指令と検出射出圧力との圧力偏差に比例する値を前記速度指令パターンから求められる当該周期の速度指令に加算し、射出用サーボモータへの速度指令として射出用サーボモータを速度制御する。基準となる速度指令パターンの速度指令に圧力偏差対応分の値を加算した速度指令を用いて射出用サーボモータを速度制御することで所望する射出圧力を実現するようにしたため、所望する射出圧力に対応するトルク指令と検出射出圧力との偏差のみに基いて圧力のフィードバック制御を行う場合に比べて実射出圧力の追従が安定する。
【0010】また、設定された射出圧力指令パターンを再現するのに適した速度指令パターンを求めるため、以下に示す処理を実施する。まず、所望する射出圧力指令パターンと適当に設定された速度指令パターンとにより上述の速度制御に基く圧力制御方法を実施する。そして、射出圧力パターンの実測データを得て設定射出圧力指令パターンと比較し、その比較結果が不満であれば各周期の圧力偏差に比例係数を乗じた補正値を各周期の速度指令に加算して新たな速度指令パターンとして設定する。以下、射出圧力パターンの実測データと設定射出圧力指令パターンとが一致して満足な比較結果が得られるまで、上述の速度制御に基く圧力制御、および、速度指令パターンの更新作業を交互に繰り返し実行する。速度指令パターンの更新作業により最終的には射出圧力パターンの実測データと設定射出圧力指令パターンとが一致するが、これは要するに補正値の値が零となった状態であって、設定射出圧力指令パターンを再現するに最も適した速度指令パターンが得られたことを意味する。従って、この速度指令パターンを基準となる速度指令パターンとして速度制御を行うことにより予め決められた所望の設定射出圧力指令パターンを忠実に再現することができ、外乱の変動さえなければ、以下の射出工程では圧力偏差の値は常に零となる。そこで、このようにして検出射出圧力のパターンが安定した段階で製品の良否を判定し、今度は、設定された射出圧力指令パターンがその製品に対して適切なものであったか否かを判定する。製品が不良であれば設定された射出圧力指令パターンがその製品に対して不適であることを意味するので、射出圧力指令パターンおよび速度指令パターンを編集し直し、新たに設定された設定射出圧力指令パターンが実射出圧力として再現されるまで、前記と同様の処理操作を繰り返す。また、製品が良品であれば設定された射出圧力指令パターンが適切であったことを意味するので、この射出圧力指令パターンとこれに対応する速度指令パターン、即ち、圧力偏差の値が零となったときの速度指令パターンを最終的な射出圧力指令パターンおよび速度指令パターンとして確定する。前述したように外乱の変動がなく圧力偏差の値が常に零となるのであれば射出圧力指令パターンの保存は不要ということになるが、実際には外乱の変動が皆無になるということはないので、外乱の変動による射出圧力の変動を解消するため、射出圧力指令パターンを速度指令パターンと共に保存して射出圧力指令パターンと速度指令パターンとに基く速度制御による圧力制御を実施する。
【0011】更に、設定された射出圧力指令パターンを再現するのに適した速度指令パターンを迅速に求めるため、各周期毎の直前の成形サイクルにおけるスクリュー移動速度および実射出圧力の検出値とその前の成形サイクルにおけるスクリュー移動速度および実射出圧力の検出値とに基いて、射出圧力変化に対する速度指令変化の追従特性を求めて補正値算出時の比例係数とする。スクリュー移動速度の変化に対して実射出圧力の変化の割合が大きい場合には比例係数の値が小さく設定され、また、スクリュー移動速度の変化に対して実射出圧力の変化の割合が小さい場合には比例係数の値が大きく設定されるようになるので、不用意なオーバーシュートや制御系内部の追従の遅れが防止され、検出射出圧力パターンを早急に射出圧力指令パターンに一致させることができる。
【0012】上述した作用は速度指令によって射出圧力を制御する場合であるが、他の場合もこれと同様であり、射出用サーボモータをトルク制御することにより射出圧力指令パターンを再現しようとする場合には、速度指令パターンおよび速度指令に換えてトルク指令パターンおよびトルク指令を適用して射出用サーボモータをトルク制御し、また、射出用サーボモータを位置制御することにより射出圧力指令パターンを再現しようとする場合には、速度指令パターンやトルク指令パターンおよび速度指令やトルク指令に換えて位置指令パターンおよび位置指令を適用して射出用サーボモータを位置制御する。
【0013】
【実施例】以下、図面を参照して本発明の実施例を説明する。
【0014】図1は本発明の射出圧力制御方法を適用した一実施例の電動式射出成形機30の要部を示すブロック図であり、符号33は固定プラテン、符号32は可動プラテン、符号34は射出シリンダ、符号35はスクリューである。可動プラテン32は、型締め用サーボモータM1の軸出力により、ボールナット&スクリューやトグル機構等から成る型締め機構31を介し、射出成形機30のタイバー(図示せず)に沿って移動される。また、スクリュー35は、駆動源の軸回転を射出軸方向の直線運動に変換するための駆動変換装置37を介して射出用サーボモータM2により軸方向に駆動され、また、歯車機構36を介してスクリュー回転用サーボモータM3により計量回転されるようになっている。スクリュー35の基部には圧力検出器38が設けられ、スクリュー35の軸方向に作用する樹脂圧力、即ち、射出工程における射出圧力や計量混練り工程におけるスクリュー背圧が検出される。射出用サーボモータM2にはスクリュー35の位置や移動速度を検出するためのパルスコーダP2が配備され、また、型締め用サーボモータM1には、可動プラテン32を駆動する型締め機構31のトグルヘッドの位置を検出するためのパルスコーダP1が配備されている。
【0015】射出成形機30を駆動制御する制御装置10は、数値制御用のマイクロプロセッサであるCNC用CPU25、プログラマブルマシンコントローラ用のマイクロプロセッサであるPMC用CPU18、サーボ制御用のマイクロプロセッサであるサーボCPU20、および、A/D変換器16と圧力検出器38を介して射出圧力やスクリュー背圧のサンプリング処理を行うための圧力モニタ用CPU17を有し、バス22を介して相互の入出力を選択することにより各マイクロプロセッサ間での情報伝達が行えるようになっている。
【0016】PMC用CPU18には射出成形機のシーケンス動作を制御するシーケンスプログラム等を記憶したROM13および演算データの一時記憶等に用いられるRAM14が接続され、CNC用CPU25には、射出成形機30を全体的に制御するプログラム等を記憶したROM27および演算データの一時記憶等に用いられるRAM28が接続されている。
【0017】また、サーボCPU20および圧力モニタ用CPU17の各々には、サーボ制御専用の制御プログラムを格納したROM21やデータの一時記憶に用いられるRAM19、および、成形データのサンプリング処理等に関する制御プログラムを格納したROM11やデータの一時記憶に用いられるRAM12が接続されている。更に、サーボCPU20には、該CPU20からの指令に基いてエジェクタ用(図示せず),型締め用,射出用およびスクリュー回転用等の各軸のサーボモータを駆動するサーボアンプ15が接続され、型締め用サーボモータM1に配備したパルスコーダP1および射出用サーボモータM2に配備したパルスコーダP2からの出力の各々がサーボCPU20に帰還され、パルスコーダP1からのフィードバックパルスに基いてサーボCPU20により算出された型締め機構31のトグルヘッドの現在位置や、パルスコーダP2からのフィードバックパルスに基いてサーボCPU20により算出されたスクリュー35の移動速度およびその現在位置が、RAM19の現在位置記憶レジスタおよび現在速度記憶レジスタの各々に逐次更新記憶され、更に、射出開始後の経過時間を基準として、各成形サイクルにおける所定のサンプリング周期毎に、スクリュー35の移動速度VELとその時点におけるスクリュー35の現在位置POSおよび圧力モニタ用CPU17により検出された射出圧力の現在値Pが図7に示すようなRAM12の射出データ記憶ファイルF2に更新記憶されてゆく。射出データ記憶ファイルF2は直前の成形サイクルのデータを保存するためのファイルであり、RAM12には、更に、その1つ前の成形サイクルのデータを保存するための射出データ記憶ファイルF1が設けられている。射出データ記憶ファイルF1の構成は実質的に射出データ記憶ファイルF2の構成と同一である。
【0018】インターフェイス23は射出成形機の各部に配備したリミットスイッチや操作盤からの信号を受信したり射出成形機の周辺機器等に各種の指令を伝達したりするための入出力インターフェイスである。ディスプレイ付手動データ入力装置29はCRT表示回路26を介してバス22に接続され、グラフ表示画面や機能メニューの選択および各種データの入力操作等が行えるようになっており、数値データ入力用のテンキーおよび各種のファンクションキー等が設けられている。
【0019】不揮発性メモリ24は射出成形作業に関する成形条件(射出条件,計量混練り条件等)と各種設定値,パラメータ,マクロ変数等を記憶する成形データ保存用のメモリである。不揮発性メモリ24には、射出開始後の経過時間に対応して速度指令VCMDを記憶する速度指令パターン記憶ファイルF3、および、同様にして射出圧力指令PCMDを記憶する射出圧力指令パターン記憶ファイルF4が設けられている。
【0020】以上の構成により、CNC用CPU25がROM27の制御プログラムや不揮発性メモリ24の成形条件等に基いて各軸のサーボモータに対してパルス分配を行い、サーボCPU20は各軸に対してパルス分配された移動指令とパルスコーダ等の検出器で検出された位置および速度のフィードバック信号に基いて、従来と同様に位置ループ制御,速度ループ制御さらには電流ループ制御等のサーボ制御を行い、いわゆるディジタルサーボ処理を実行する。また、射出用サーボモータM2は、ROM27の制御プログラムや速度指令パターン記憶ファイルF3に記憶された速度指令VCMD等のデータおよびパルスコーダP2からの位置および速度のフィードバック信号に基いてCNC用CPU25およびサーボCPU20により速度制御される。
【0021】更に、本実施例においては、速度指令パターン記憶ファイルF3の速度指令VCMDと並行して射出圧力指令パターン記憶ファイルF4の射出圧力指令PCMDに基く射出用サーボモータM2のフィードバック制御が行われるようになっている。図2はサーボCPU20によるディジタルサーボ処理の概略を示す機能ブロック図であり、図2におけるVCMDはCNC用CPU25からサーボCPU20に与えられる所定周期毎の速度指令、また、PCMDはCNC用CPU25からサーボCPU20に与えられる所定周期毎の射出圧力指令である。なお、この実施例に関していえば、速度指令および射出圧力指令を切り替える所定周期と前述の圧力モニタ用CPU17によるサンプリング周期とは同一である。サーボCPU20は、基本的に、CNC用CPU25から与えられるVCMDと射出用サーボモータM2のパルスコーダP2からの速度帰還信号とに基いてサーボアンプ15を介して射出用サーボモータM2の速度制御を行うが、その時点で圧力検出器38により検出されている検出射出圧力とCNC用CPU25から与えられている指令射出圧力PCMDとの間に偏差があれば、この偏差に所定の比例ゲインKを乗じた値を補正値として速度指令VCMDに加算して速度ループへの速度指令とし、圧力検出器38により検出される射出圧力がCNC用CPU25から与えられるPCMDに一致するように射出用サーボモータM2の速度制御を行う。なお、必要があれば、射出圧力指令PCMDと検出射出圧力の帰還ループを制御系から切り離して従来と同様に速度指令VCMDのみによる速度のフィードバック制御を行うことも可能である。
【0022】図3では射出圧力指令PCMDと検出射出圧力との圧力偏差に所定の比例ゲインK′を乗じた値を速度ループからのトルク指令TCMDに加算して電流ループへのトルク指令とすることにより射出圧力指令PCMDに対する射出圧力のフィードバック制御を行う場合の構成例について示し、また、図4では射出圧力指令PCMDと検出射出圧力との圧力偏差に所定の比例ゲインK″を乗じた値をCNC用CPU25からの位置指令DCMDに加算して位置ループへの位置指令とすることにより射出圧力のフィードバック制御を行う場合の構成例について示しているが、図2の速度制御による場合と比較すると、圧力偏差に対応する補正値を求めるための比例ゲインおよび補正値を加算する制御ループの位置が相違するのみで、作用効果に関しては差がない。図3の例では必要に応じてトルク指令TCMDのみによるフィードバック制御を従来と同様にして行うことが可能であり、また、図4の例では位置指令DCMDのみによるフィートバック制御を従来と同様にして行うことが可能である。図3の例を適用して所定周期毎のトルク指令TCMDおよび射出圧力指令PCMDにより射出用サーボモータM2のフィードバック制御を行う場合では、速度ループ制御を省略してもよく、この場合は、速度指令パターン記憶ファイルF3に換えて、トルク指令TCMDを記憶するトルク指令パターン記憶ファイルF3′を設ける。また、図4の例を適用して所定周期毎の位置指令DCMDおよび射出圧力指令PCMDにより射出用サーボモータM2のフィードバック制御を行う場合では、速度指令パターン記憶ファイルF3に換えて、位置指令DCMDを記憶する位置指令パターン記憶ファイルF3″を設けるようにする。
【0023】以下、速度指令VCMDと射出圧力指令PCMDとによって射出用サーボモータM2のフィードバック制御を行う図2の構成例を一例として取り上げ、射出圧力指令パターンを忠実に再現するのに適した速度指令パターンを求めるための処理について説明する。なお、これから成形しようとする成形品に適した最適の射出圧力指令パターンはこの時点では不明であるものとし、最適の射出圧力指令パターンを得るための条件出しの作業も同時に実施するものとして説明を行う。
【0024】図8から図10は圧力モニタ用CPU17によって実施される最適パターン検出処理の概略を示すフローチャートであり、この処理は、射出成形作業中にディスプレイ付手動データ入力装置29を介してオペレータが最適パターン検出開始指令を入力することによりに起動される。
【0025】最適パターン検出処理を開始した圧力モニタ用CPU17は、まず、初期設定完了フラグfを初期設定未実行状態を示す値0に初期化し(ステップa1)、1射出工程分の射出圧力,射出速度,スクリュー位置のサンプリング実行回数を記憶するカウンタTの値を0に初期化する(ステップa2)。次いで、圧力モニタ用CPU17は、RAM14に射出中を示すフラグSがセットされているか否かを判別するが(ステップa3)、フラグSがセットされていなければ、ステップa3の判別処理を繰り返し実行し、フラグSがセットされるまで待機する。フラグSはPMC用CPU18がシーケンスプログラムに従ってCNC用CPU25に射出開始指令を出力したときにセットされるフラグであり、CNC用CPU25が射出工程の処理を完了した時点でリセットされるようになっている。フラグSの初期値は0である。
【0026】従って、射出成形作業が開始されていなければ最適パターン検出処理の実行、つまり、ステップa3以降の処理の実行は不可能であり、既に述べた通り、オペレータは予め射出成形作業を開始させてからディスプレイ付手動データ入力装置29による最適パターン検出開始指令の入力操作を行わなければならない。これから成形しようとする成形品に適した最適の射出圧力指令パターンはこの時点で不明であるから、オペレータはディスプレイ付手動データ入力装置29を操作して機能メニューを選択し、射出速度の設定画面を表示させ、適宜のカーソル操作等により射出速度を適当に編集して、その内容を射出開始後の経過時間と射出速度との関係により不揮発性メモリ24の速度指令パターン記憶ファイルF3に速度指令パターンのVCMDとして記憶させ、ファイルF3の速度指令条件に従って射出動作を実施させるようにする。従って、最初の射出動作は速度指令と圧力指令とによる同時制御ではなく、速度制御優先のフィードバック制御によって行われることになる。なお、このまま速度制御優先のフィードバック制御を継続して連続成形作業を行わせることも可能であり、その場合は、ディスプレイ付手動データ入力装置29からの最適パターン検出開始指令の入力操作は行わない。また、速度制御優先のフィードバック制御を任意回数だけ実行してから最適パターン検出開始指令の入力操作を行ってもよく、その場合は、最適パターン検出開始指令の入力が確認された時点で、この最適パターン検出処理が開始されることになる。
【0027】最適パターン検出処理におけるステップa3の判別処理で射出工程の開始を確認した圧力モニタ用CPU17は、サンプリングタイマtをスタートさせて所定時間tが経過するまで待機し(ステップa4,ステップa5)、その後カウンタTの値をインクリメントしてサンプリング実行回数Tを更新記憶し(ステップa6)、射出圧力の現在値P,スクリュー移動速度の現在値VEL,スクリュー35の現在位置POSの値を各々対応する現在値記憶レジスタから読み込み、射出データ記憶ファイルF2のアドレスTにP(T),VEL(T),POS(T)として書き込む(ステップa7)。次いで、圧力モニタ用CPU17は、初期設定完了フラグfがセットされているか否か、即ち、射出圧力指令パターン記憶ファイルF4への射出圧力の初期設定が完了しているか否かを判別するが(ステップa8)、所定周期毎のVCMDによる速度制御優先のフィードバック制御を行っている現時点においては当然フラグfは未設定であり、圧力制御のための射出圧力指令パターンも設定されていないので、取り敢えず該時点で検出されている射出圧力Pを射出開始後の経過時間t・Tにおける指令射出圧力と見做して射出圧力指令パターン記憶ファイルF4のアドレスTにPCMD(T)として書き込み(ステップa9)、カウンタTの値が設定値mに達しているか否かを判別する(ステップa10)。なお、設定値mは1射出工程におけるサンプリングの実行回数を決める値であり、予め、t・(m−1)の値が射出所用時間と略一致するように決められている。既に説明した通り、このサンプリング周期は速度指令VCMDを切り替える所定周期と同一である。
【0028】カウンタTの値が設定値mに達していなければ、以下、圧力モニタ用CPU17は、カウンタTの値が設定値mに達するまでの間、ステップa4からステップa10の処理を繰り返し実行し、サンプリング処理の対象となった1射出工程における各サンプリング時刻t・T時の射出圧力の現在値P(T),スクリュー移動速度の現在値VEL(T),スクリュー35の現在位置POS(T)の各値を射出データ記憶ファイルF2の対応アドレスTに所定周期t毎に書き込み、また、射出圧力の現在値P(T)を射出圧力指令パターン記憶ファイルF4の対応アドレスTに射出圧力の指令値PCMD(T)として書き込んでゆく。最終的に、上述の1射出工程が完了した時点で、今終わったばかりの直前の1射出工程に関する射出圧力,スクリュー移動速度,スクリュー位置の各データが射出開始後の経過時間t・T〔但し、T=1〜m−1〕に対応して射出データ記憶ファイルF2のアドレスTに記憶され、また、射出圧力指令パターン記憶ファイルF4には直前の射出工程で用いられた速度指令パターン、つまり、速度指令パターン記憶ファイルF3の内容に対応した射出圧力指令パターン(実際には検出値である)が記憶されることになる。
【0029】ステップa10の判別結果が偽となって1射出工程の終了が確認されると、圧力モニタ用CPU17は初期設定完了フラグfがセットされているか否かを判別するが(ステップa11)、この段階ではフラグfは依然として未設定状態に維持されている。そこで、圧力モニタ用CPU17は、ディスプレイ付手動データ入力装置29の表示画面の横軸を射出開始後の経過時間、また、縦軸を射出圧力として、射出データ記憶ファイルF2の射出圧力データP(T)〔但し、T=1〜m−1〕を表示画面にグラフ表示し、最初の射出速度の設定の場合と同様、適宜のカーソル操作等によりオペレータに射出圧力指令パターンを編集させ、編集後の射出圧力指令パターンの内容P(T)′を射出開始後の経過時間t・Tとの関係により射出圧力指令パターン記憶ファイルF4のアドレスTにPCMD(T)として更新記憶させる(ステップa12)。
【0030】一例として、図5に、射出開始後の経過時間t・Tと編集前の射出圧力P(T)との関係を実線および破線からなる連続した線図で示し、射出開始後の経過時間t・Tと編集後の射出圧力P(T)′との関係を実線のみからなる線図で示す。図5のesからeeに示す区間が射出圧力P(T)を射出圧力P(T)′に編集した編集区間の一例であり、例えば、es=4,ee=6とするなら、この編集作業によって射出圧力指令パターン記憶ファイルF4の内容はes=4からee=6の区間のアドレスで図7に示すように変化する。いうまでもなく、編集前の射出圧力指令パターン記憶ファイルF4の内容は図7における射出データ記憶ファイルF2の内容P(T)と全く同様であり、射出データ記憶ファイルF2の内容P(T)それ自体は編集後も変化しない。
【0031】編集後の射出圧力指令パターンの内容P(T)′を射出圧力指令パターン記憶ファイルF4にPCMD(T)として更新記憶させた圧力モニタ用CPU17は、次いで、速度指令パターン記憶ファイルF3の速度指令データVCMD(T)と射出データ記憶ファイルF2の射出圧力データP(T)および射出圧力指令パターン記憶ファイルF4の射出圧力指令データPCMD(T)に基いて、編集によって変化した射出圧力指令PCMD(T)に対応する射出速度指令VCMD(T)を新たに求め〔但し、いずれもT=es〜ee〕、速度指令パターン記憶ファイルF3の対応アドレスにVCMD(T)として更新記憶させる(ステップa13)。新たに求められたVCMD(T)は編集によって変化した射出圧力指令PCMD(T)を実現するための速度指令であり、圧力の偏差を速度指令対応量に変換するための比例係数Gにより、ファイルF3に更新記憶すべきVCMD(T)={ファイルF3のVCMD(T)の現在値}−G・[{ファイルF2のP(T)}−{ファイルF4のPCMD(T)}]により求めることができる。前述した図5の例では速度指令パターン記憶ファイルF3の内容がes=4からee=6の区間のアドレスで図7に示すように変化する。
【0032】編集によって変化した射出圧力指令PCMD(T)を実現するための速度指令VCMD(T)を速度指令パターン記憶ファイルF3に書き込んだ圧力モニタ用CPU17は、初期設定完了フラグfをセットし(ステップa14)、射出データ記憶ファイルF1のデータをクリアして射出データ記憶ファイルF2のデータを射出データ記憶ファイルF1に転送し、射出データ記憶ファイルF2のデータをクリアする(ステップa15)。
【0033】以上が射出圧力指令パターンと速度指令パターンの初期設定に関する処理の主要部である。
【0034】次いで、圧力モニタ用CPU17はステップa2の処理へと移行してカウンタTをリセットし、前述の処理で速度指令パターン記憶ファイルF3に書き込まれた速度指令データに基いて次の射出工程が開始されるのを待機し、その後、ステップa9の処理を除くステップa2からステップa11までの処理を前記と同様にして繰り返し実行し、今回の射出工程の各サンプリング時刻t・Tで検出された射出圧力の現在値P(T),スクリュー移動速度の現在値VEL(T),スクリュー35の現在位置POS(T)の各値を射出データ記憶ファイルF2の対応アドレスTに書き込み、直前の1射出工程分の射出データを得る。
【0035】射出圧力指令PCMD(T)を実現するための速度指令VCMD(T)が速度指令パターン記憶ファイルF3に一旦書き込まれた後の射出工程、つまり、初期設定完了フラグfがセットされた後の射出工程では、射出開始後の経過時間t・Tに応じ、速度指令パターン記憶ファイルF3の速度指令VCMD(T)と並行して射出圧力指令パターン記憶ファイルF4の射出圧力指令PCMD(T)が射出用サーボモータM2の制御系に順次並列的に入力され、既に説明した図2の機能ブロックによる速度および圧力の同時制御が行われる。
【0036】ステップa9の処理は編集作業のベースとなる射出圧力指令パターンを仮に得るためと、更に、これを編集して速度および圧力の同時制御に用いる射出圧力指令パターン(ファイルF4の内容)および速度指令パターン(ファイルF3の内容)を得るための処理に過ぎず、初期設定完了フラグfがセットされた後はこれを実施しない。
【0037】また、速度指令パターン記憶ファイルF3の速度指令VCMD(T)の各値は、元々、射出圧力指令パターン記憶ファイルF4の射出圧力指令PCMD(T)に対応する射出圧力を得るための速度指令ではあるが、金型キャビティに対する樹脂の充填状況の相違等によって比例係数Gの不相応等の問題があるため、必ずしも、速度指令VCMD(T)によって射出圧力指令PCMD(T)に対応する射出圧力が得られるとは限らない。
【0038】そこで、本実施例においては初期設定完了フラグfがセットされた後の各射出工程の終了後、ステップa11の判別結果に従って以下に示す処理を実行する。この処理は、射出圧力指令パターン記憶ファイルF4に設定された射出圧力指令パターンを再現するのに適した速度指令パターンを求めるための処理である。
【0039】圧力モニタ用CPU17は、まず、射出データ記憶ファイルF2に書き込まれた直前の成形サイクルの射出工程の検出射出圧力P(T)のデータと、射出圧力指令パターン記憶ファイルF4に書き込まれた射出圧力指令PCMD(T)のデータを各ファイルのアドレスTを参照して各サンプリング時刻t・Tのデータを比較することにより、ファイルF2で示される射出圧力パターンの実測データがファイルF4で示される設定射出圧力指令パターンに対して十分に収束しているか否かを判別する(ステップa16)。この判別処理は、例えば、アドレスT=1からT=m−1の区間で|PCMD(T)−ファイルF2のP(T)|の積算値を求めて任意設定の判別基準値との大小関係を比較することや、アドレスT=1からT=m−1の区間で{PCMD(T)−ファイルF2のP(T)}2 の積算値を求めて任意設定の判別基準値との大小関係を比較すること等により自動的に行うことができる。当然、積算値が判別基準値よりも小さければ収束していると見做し、また、積算値が判別基準値よりも大きければ収束していないと見做す。また、アドレスT=1からT=m−1の区間でPCMD(T)およびファイルF2におけるP(T)のグラフをディスプレイ付手動データ入力装置29の表示画面に重合表示させることによりオペレータに一致不一致を判別させ、その判別結果を制御装置10に手動入力するようにしてもよい。射出圧力指令PCMD(T)と直前の成形サイクルの射出工程の検出射出圧力P(T)とを重ねてグラフ表示した例を実線および二点鎖線で図6に示す。
【0040】そして、その結果、直前の射出工程の検出射出圧力P(T)がファイルF4の設定射出圧力指令パターンに収束していないと判別されれば、圧力モニタ用CPU17は、以降の射出工程の検出射出圧力を設定射出圧力指令パターンに収束させるべく、直前の成形サイクルのデータを記憶した射出データ記憶ファイルF2のデータと更にその1つ前の成形サイクルのデータを記憶した射出データ記憶ファイルF1のデータとに基いて各サンプリング周期毎に射出圧力変化に対する速度指令変化の追従特性を示す比例係数Fを求め、速度指令パターン記憶ファイルF3の速度指令データに補正を加えて新たな速度指令パターンを作成し、その速度指令パターンを速度指令パターン記憶ファイルF3に更新記憶させることになる(ステップa17の速度指令パターン更新設定処理)。
【0041】図11から図12は速度指令パターン更新設定処理を詳細に示すフローチャートである。
【0042】速度指令パターン更新設定処理を開始した圧力モニタ用CPU17は、まず、射出データ記憶ファイルF2のデータ検索に用いる指標jの値を1に初期化すると共に(ステップb1)、射出データ記憶ファイルF1のデータ検索に用いる指標iの値を2に初期化する(ステップb2)。次いで、圧力モニタ用CPU17は、直前の射出工程の射出データを記憶した射出データ記憶ファイルF2のアドレスjからt・j時のサンプリングに対応するスクリュー位置データPOS(j)を読み込むと共に更にその1つ前の射出工程の射出データを記憶した射出データ記憶ファイルF1のアドレスiからt・i時のサンプリングに対応するスクリュー位置データPOS(i)を読み込み、POS(j)とPOS(i)が一致するか否かを判別する(ステップb3)。
【0043】そして、両者が一致しなければ、圧力モニタ用CPU17は、更に、POS(j)がPOS(i)よりも小さいか否か、つまり、直前の射出工程におけるt・j時のスクリュー位置POS(j)が更にその1つ前の射出工程におけるt・i時のスクリュー位置POS(i)とt・(i−1)時のスクリュー位置POS(i−1)との間にあるか否かを判別する(ステップb4)。そして、POS(j)がPOS(i)よりも小さくなければ、圧力モニタ用CPU17は、指標iの値を順次インクリメントし(ステップb5)、ステップb3もしくはステップb4の判別結果が真となるまでステップb3およびステップb4の判別処理を繰り返し実行し、直前の射出工程におけるt・j時のスクリュー位置POS(j)と一致するスクリュー位置データを有する射出データ記憶ファイルF1のアドレスi、もしくは、直前の射出工程におけるt・j時のスクリュー位置POS(j)をPOS(i−1)とPOS(i)との間に含む射出データ記憶ファイルF1のアドレスiを検出する。
【0044】直前の射出工程に関連する射出データ記憶ファイルF2のデータと更にその1つ前の射出工程に関連する射出データ記憶ファイルF1のデータとに基いて各サンプリング周期毎に射出圧力変化に対する速度指令変化の追従特性を示す比例係数Fを求める点に関しては既に述べたが、射出圧力変化に対する速度指令変化の追従特性は、実際には、金型キャビティに対する樹脂の充填の度合いによって著しく相違するので、溶融樹脂の粘性抵抗の変動等によって直前の射出工程における各サンプリング時のスクリュー位置データとその各々のサンプリング時に対応する更にその1つ前の射出工程の各サンプリング時のスクリュー位置データとが相違する場合、要するに、樹脂の充填の度合いが相違する場合では、射出開始後の経過時間を基準とするデータに基いて適正な比例係数Fを求めることは困難となる。そこで、直前の射出工程に関連するデータを記憶した射出データ記憶ファイルF2におけるアドレスjのスクリュー位置POS(j)に対応するスクリュー位置を有するデータを記憶した射出データ記憶ファイルF1のアドレスiを検出し、ファイルF2のアドレスjのデータとファイルF1のアドレスiのデータとを関連させて比例係数Fを求めるのである。
【0045】なお、スクリュー位置のサンプリングは所定周期毎に行われているため、射出データ記憶ファイルF2のPOS(j)と完全に一致するPOS(i)を有する射出データ記憶ファイルF1のアドレスが検出されること(ステップb3の判別結果が真となること)は実際には希であり、POS(j)をPOS(i−1)とPOS(i)との間に含む射出データ記憶ファイルF1のアドレスiが検出される(ステップb4の判別結果が真となる)のが普通である。
【0046】しかし、POS(j)をPOS(i−1)とPOS(i)との間に含む射出データ記憶ファイルF1のアドレスiが検出されたとしても、射出データ記憶ファイルF1はPOS(i−1)とPOS(i)に対応する検出射出圧力および検出射出速度のデータを有するのみで、POS(j)に完全に対応した検出射出圧力や検出射出速度のデータを持っているわけではないから、射出データ記憶ファイルF1におけるアドレスiおよびi−1の各データと射出データ記憶ファイルF2におけるアドレスjの各データとに基いて、ファイルF1においてPOS(j)に対応する検出射出圧力および検出射出速度のデータを改めて求めてやる必要が生じる。
【0047】そこで、ステップb4の判別結果が真となった場合、つまり、射出データ記憶ファイルF2のPOS(j)をPOS(i−1)とPOS(i)との間に含む射出データ記憶ファイルF1のアドレスiが検出された場合、圧力モニタ用CPU17は、まず、{ファイルF2のPOS(j)−ファイルF1のPOS(i−1)}/{ファイルF1のPOS(i)−ファイルF1のPOS(i−1)}の演算式を実行して分配係数aの値を求める(ステップb6)。与式の分母はPOS(i−1)からPOS(i)までのスクリュー移動量、また、与式の分子はPOS(i−1)からPOS(j)までのスクリュー移動量であるから、与式を解いて分配係数aを求めることにより、POS(i−1)とPOS(i)との間の距離を100%としたときに、POS(i−1)を始点としてPOS(j)がこの区間の何%(但し、×100)の位置に位置するかがわかる。
【0048】従って、ファイルF1におけるアドレスi−1のサンプリング時からファイルF1におけるアドレスiのサンプリング時にかけて射出速度および射出圧力がリニアに変化したものと仮定すれば、ファイルF1においてPOS(i)のスクリュー位置に対応する射出速度VEL(i′)は、{ファイルF1のVEL(i−1)}+a・{ファイルF1のVEL(i)−ファイルF1のVEL(i−1)}により求められる(ステップb7)。また、ファイルF1においてPOS(i)のスクリュー位置に対応する射出圧力P(i′)は、{ファイルF1のP(i−1)}+a・{ファイルF1のP(i)−ファイルF1のP(i−1)}により求められる(ステップb8)。
【0049】射出圧力変化に対する速度指令変化の追従特性を示す比例係数Fは、要するに、ファイルF1およびファイルF2の同一スクリュー位置POS(j)における速度変化/圧力変化の値、つまり、{(直前の射出工程のスクリュー位置POS(j)における射出速度)−(更にその1つ前の射出工程のスクリュー位置POS(j)における射出速度)}/{(直前の射出工程のスクリュー位置POS(j)における射出圧力)−(更にその1つ前の射出工程のスクリュー位置POS(j)における射出圧力)}の値であるから、{ファイルF2のVEL(j)−ファイルF1のVEL(i′)}/{ファイルF2のP(j)−ファイルF1のP(i′)}により求められる(ステップb9)。
【0050】また、偶然にも射出データ記憶ファイルF2のPOS(j)と完全に一致するPOS(i)を有する射出データ記憶ファイルF1のアドレスが検出されてステップb3の判別結果が真となった場合では、何らの問題もなく、比例係数Fは、F={ファイルF2のVEL(j)−ファイルF1のVEL(i)}/{ファイルF2のP(j)−ファイルF1のP(i)}により求められる(ステップb10)。
【0051】いうまでもなく、スクリュー移動速度の変化に対して実射出圧力の変化の割合が大きい場合には比例係数Fの値は小さく、速度指令の僅かな補正で実射出圧力を大幅に変動させることができ、また、スクリュー移動速度の変化に対して実射出圧力の変化の割合が小さい場合には比例係数Fの値は大きく、速度指令を大幅に補正しなければ実射出圧力を変動させることができない。つまり、直前およびその前の射出工程のPOS(j)位置で樹脂の粘性抵抗等が大きい場合では比例係数Fの値が小さくなり、また、樹脂の粘性抵抗等が小さい場合では比例係数Fの値が大きくなる。
【0052】このようにして、サンプリング周期t・jに対応する比例係数Fを求めた圧力モニタ用CPU17は、サンプリング周期t・jに対応して射出圧力指令パターン記憶ファイルF4の第jアドレスに記憶された射出圧力指令値PCMD(j)〔目標値〕と直前の射出工程の同一サンプリング周期に対応して記憶された検出射出圧力P(j)との圧力偏差を求め、更に、この値にスクリュー位置POS(j)に応じた比例係数Fを乗じ、圧力偏差の解消に必要とされる速度指令の補正値ΔVCMDを求める(ステップb11)。そして、圧力モニタ用CPU17は、更に、速度指令パターン記憶ファイルF3の第jアドレスに記憶された速度指令値、つまり、直前の射出工程のt・j時における速度制御で利用された速度指令値VCMD(j)に補正値であるΔVCMDを加算して次の射出工程のt・j時における速度制御で用いるべき速度指令値VCMDを算出し(ステップb12)、速度指令値VCMDおよび比例係数Fの値を速度指令パターン記憶ファイルF3の第jアドレスに更新記憶して(ステップb13)、指標jの値をインクリメントし(ステップb14)、指標jの値が設定値mに達しているか否かを判別する(ステップb15)。
【0053】当然、直前およびその前の射出工程のPOS(j)位置で樹脂の粘性抵抗等が大きい場合では比例係数Fの値が大きくなっているので、速度指令の補正値ΔVCMDの値が大きくなる。また、直前およびその前の射出工程のPOS(j)位置で樹脂の粘性抵抗等が小さい場合では比例係数Fの値が小さくなっているので、速度指令の補正値ΔVCMDの値が小さくなる。この結果、スクリュー35の各位置毎に樹脂の粘性抵抗等が変動するような場合であっても、次の射出工程における射出圧力の不用意なオーバーシュートや追従の遅れは未然に防止される。
【0054】指標jの値が設定値mに達していなければ、以下、圧力モニタ用CPU17は、ステップb15の判別処理で指標jの値が設定値mに達したことが確認されるまでの間、ステップb2からステップb15までの処理を前記と同様にして繰り返し実行し、速度指令パターン記憶ファイルF3の第1アドレスから第m−1アドレスの全ての速度指令値に対して前記と同様の補正を加え、新たな速度指令パターンとして速度指令パターン記憶ファイルF3に更新記憶し、速度指令パターン更新設定処理を終了する。
【0055】そして、速度指令パターン更新設定処理を終了した圧力モニタ用CPU17は、射出データ記憶ファイルF1のデータをクリアして射出データ記憶ファイルF2のデータを射出データ記憶ファイルF1に転送し、射出データ記憶ファイルF2のデータをクリアした後(ステップa15)、再び、ステップa2の処理へと移行してカウンタTをリセットし、前述の速度指令パターン更新設定処理で速度指令パターン記憶ファイルF3に書き込まれた速度指令データに基いて次の射出工程が開始されるのを待機し、その後、ステップa9の処理を除くステップa2からステップa11までの処理を前記と同様にして繰り返し実行し、ファイルF2に記憶された直前の射出工程の射出圧力パターンの実測データがファイルF4で示される設定射出圧力指令パターンに対して十分に収束しているか否かを判別し(ステップa16)、収束していなければ、前記と同様、ステップa17(ステップb1〜ステップb15)の速度指令パターン更新設定処理を繰り返し実行する。
【0056】つまり、ステップa16の判別結果が真となって直前の射出工程の射出圧力パターンの実測データが設定射出圧力指令パターンに収束したことが確認されるまでの間は、1射出工程が完了する度に速度指令パターン更新設定処理が繰り返し実行される。この結果、速度指令パターン記憶ファイルF3に記憶される速度指令VCMDの値は設定射出圧力指令パターンに対して徐々に最適化され、最終的には、ファイルF2に書き込まれる射出圧力パターンの実測データがファイルF4で示される設定射出圧力指令パターンと略一致するようになって、ステップa16の判別結果が真となる。このとき速度指令パターン記憶ファイルF3に書き込まれているデータが設定射出圧力指令パターンに対する理想的な速度指令である。
【0057】圧力モニタ用CPU17は、ステップa16の判別結果が真となって直前の射出工程の射出圧力パターンの実測データが設定射出圧力指令パターンに収束したことが確認された段階で、ディスプレイ付手動データ入力装置29の表示画面に“収束完了”のメッセージを表示すると共に、速度指令パターン記憶ファイルF3の速度指令データVCMD(T),設定射出圧力指令パターンF4の圧力指令データPCMD(T),射出データ記憶ファイルF2に記憶された直前の射出工程の検出射出圧力のデータP(T)、および、速度指令データVCMD(T)に対応してファイルF3に記憶された各サンプリング時毎の比例係数Fの値F(T)をグラフ形式で重合表示して、最適パターン検出処理を終了する。比例係数Fのグラフは、射出圧力変化に対する速度指令変化の追従特性を各スクリュー位置毎に確かめて金型に対する樹脂の充填状態や樹脂の粘性抵抗の変化等を確認する際に利用できる。
【0058】そして、“収束完了”のメッセージを確認したオペレータは実際に成形された成形品を確認してその良否を判別し、成形品が良品であれば速度指令パターン記憶ファイルF3の速度指令パターンおよび設定射出圧力指令パターン記憶ファイルF4の圧力指令パターンをそのまま不揮発性メモリ24に該成形品専用の射出条件として保存し、また、成形品が不良であった場合には、再び、前記と同様の最適パターン検出処理をステップa12の処理から開始させて設定射出圧力指令パターンに修正を加え、前記と同様の処理を繰り返し実行させて直前の射出工程の射出圧力パターンの実測データが設定射出圧力指令パターンに収束するまで待機し、再び、成形品の良否を判別する。以下、オペレータは正常な成形品が得られるまで同様の処理操作を繰り返し実行し、良品が得られた段階で、その時点の速度指令パターン記憶ファイルF3の速度指令パターンおよび設定射出圧力指令パターン記憶ファイルF4の圧力指令パターンを不揮発性メモリ24に該成形品専用の射出条件として保存する。
【0059】条件出しの段階では、設定射出圧力指令パターンを様々に変化させ、その都度射出圧力の安定を待って成形品を確認することによって射出条件の適不適を判断する必要があるが、この実施例によれば実射出圧力を短時間の内に設定射出圧力指令パターンに収束させることができるので、設定射出圧力指令パターンを頻繁に変更して条件出しを行う必要があるような場合でも速やかに条件出しを完了させることができる。
【0060】また、ディスプレイ付手動データ入力装置29の表示画面を確認することにより、射出圧力が収束しているか否か、つまり、射出圧力が定常的に安定しているか否かを知ることができる。この結果、射出圧力の収束完了を待てずに変動過程にある不安定な射出動作に基いて設定射出圧力指令パターンの善し悪しを判断してしまうといった未熟なオペレータにありがちなミスを未然に防止することができる。
【0061】この実施例では射出圧力パターンの実測データをより早く設定射出圧力指令パターンに収束させるためにステップb2からステップb10の処理で各サンプリング時のスクリュー位置に応じた比例係数Fの値を求めるようにしているが、ある程度のオーバーシュート等を許容するのであれば、ステップb2からステップb10の処理を非実行とし、比例係数Fを定数化して前記と同様の処理を行わせてもよい。比例係数Fとしては、例えば、前述の説明で速度指令パターンの編集に用いた比例係数G等を適用する。なお、比例係数Fおよび比例係数Fに代えて用いられる比例係数Gは特許請求の範囲中に記載された比例係数に対応する構成であるが、速度指令パターンの編集に際して最初に用いた比例係数Gはこれとは無関係である。
【0062】樹脂の粘性抵抗等を始めとする外乱に変動がなければファイルF4の設定射出圧力指令パターンに基く速度制御のみで設定射出圧力指令パターンを再現することも可能であるが、実際にはある程度の外乱の変動はつきものであるから、速度指令パターン記憶ファイルF3の速度指令パターンが確定した後も、速度指令パターン記憶ファイルF3の速度指令パターンおよび設定射出圧力指令パターンF4の圧力指令パターンを保存しておき、これに基いて図2の機能ブロックの処理を継続することが望ましい。
【0063】以上、一実施例として設定射出圧力指令パターンと速度指令パターンとに基いて射出用サーボモータM2を駆動制御する場合を例に取って速度指令パターンを求めるための最適パターン検出処理について説明したが、設定射出圧力指令パターンとトルク指令パターン、または、設定射出圧力指令パターンと位置指令パターンとに基いて射出用サーボモータM2を駆動制御する場合においても、前述の実施例と概ね同様の処理操作により射出用サーボモータM2の制御方式に応じたトルク指令や位置指令の最適パターンを検出することができる。
【0064】
【発明の効果】本発明の射出圧力制御方法は、射出圧力指令パターンと共に射出用サーボモータを駆動制御するための速度,トルク,位置等の指令パターンを予め設定しておき、射出用サーボモータの駆動制御に際しては、指令パターンから求められる指令に射出圧力指令と検出射出圧力との圧力偏差に比例する値を加算して射出用サーボモータへの指令として射出用サーボモータを駆動制御するようにしたので、所望する射出圧力に対応するトルク指令と検出射出圧力との偏差のみに基いて圧力のフィードバック制御を行う従来の射出圧力制御に比べて圧力のオーバーシュートや不用意な変動が少なく、実射出圧力を適確に設定射出圧力指令パターンに追従させることができる。
【0065】また、射出圧力パターンの実測データと設定射出圧力指令パターンとが一致するまでの間、射出動作が終了する毎に射出圧力パターンの実測データを得て対応する周期毎に設定射出圧力指令パターンと比較し、各周期の圧力偏差に比例係数を乗じた補正値を指令パターンの各周期の指令値に加算して新たな指令パターンとして設定する処理を繰り返し実行するようにしたので、設定射出圧力指令パターンを再現するに最も適した指令パターンを容易に求めることができる。
【0066】更に、各周期毎の直前の成形サイクルにおけるスクリュー移動速度および実射出圧力の検出値とその前の成形サイクルにおけるスクリュー移動速度および実射出圧力の検出値とに基いて、射出圧力変化に対する指令値の変化の追従特性を求めて補正値算出時の比例係数とするようにしたので、不用意なオーバーシュートや制御系内部の追従の遅れが防止され、射出圧力を早急に射出圧力指令パターンに一致させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の射出圧力制御方法を適用した一実施例の電動式射出成形機の要部を示すブロック図である。
【図2】速度指令および射出圧力指令による射出圧力のフィードバック制御の概略を示す機能ブロック図である。
【図3】トルク指令および射出圧力指令による射出圧力のフィードバック制御の概略を示す機能ブロック図である。
【図4】位置指令および射出圧力指令による射出圧力のフィードバック制御の概略を示す機能ブロック図である。
【図5】射出圧力指令パターンの編集画面を例示する図である。
【図6】射出圧力の収束を知らせるモニタ画面を例示する図である。
【図7】実施例で用いた各ファイル手段の構成を概念的に示す図である。
【図8】最適パターン検出処理の概略を示すフローチャートである。
【図9】最適パターン検出処理の概略を示すフローチャートの続きである。
【図10】最適パターン検出処理の概略を示すフローチャートの続きである。
【図11】最適パターン検出処理における速度指令パターン更新設定処理の詳細を示すフローチャートである。
【図12】速度指令パターン更新設定処理の詳細を示すフローチャートの続きである。
【符号の説明】
10 制御装置
15 サーボアンプ
17 圧力モニタ用CPU
20 サーボCPU
24 不揮発性メモリ
25 CNC用CPU
30 電動式射出成形機
35 スクリュー
38 圧力検出器
M2 射出用サーボモータ
P2 パルスコーダ
【特許請求の範囲】
【請求項1】 時間の関数として射出圧力指令パターンと速度指令パターンを設定し、射出工程時に所定周期毎に射出圧力を検出し、前記射出圧力指令パターンより当該周期における射出圧力指令を求め、該射出圧力指令と検出射出圧力との圧力偏差に比例する値を前記速度指令パターンから求められる当該周期の速度指令に加算して射出用サーボモータへの速度指令として射出用サーボモータを速度制御することを特徴とした射出成形機の射出圧力制御方法。
【請求項2】 前記射出圧力指令パターンおよび速度指令パターンを次の工程を行うことにより求めるようにした請求項1記載の射出成形機の射出圧力制御方法。
工程1.射出圧力指令パターンと速度指令パターンを初期設定する。
工程2.設定された射出圧力指令パターンと速度指令パターンとにより請求項1記載の方法で射出圧力制御を行い、射出圧力パターンの実測データを得る。
工程3.射出圧力パターンの実測データと設定射出圧力指令パターンとを比較する。
工程4.比較結果が不満足であれば、各周期毎射出圧力指令と検出射出圧力との圧力偏差に比例係数を乗じた補正値を当該周期の速度指令に加算して新たな速度指令パターンとして設定して工程2まで戻る。
工程5.比較結果が満足であれば、成形品の良否を判定する。
工程6.判定結果が不良であれば射出圧力指令パターンおよび速度指令パターンを編集して新たな射出圧力指令パターンおよび速度指令パターンとして設定して工程2まで戻る。
工程7.判定結果が良品であれば現時点における射出圧力指令パターンおよび速度指令パターンを最終的な射出圧力指令パターンおよび速度指令パターンとして確定する。
【請求項3】 各周期毎の直前の成形サイクルにおけるスクリュー移動速度および実射出圧力の検出値とその前の成形サイクルにおけるスクリュー移動速度および実射出圧力の検出値とに基いて、射出圧力変化に対する速度指令変化の追従特性を求めて前記比例係数とし、工程4の処理を行うようにした請求項2記載の射出成形機の射出圧力制御方法。
【請求項4】 時間の関数として射出圧力指令パターンとトルク指令パターンを設定し、射出工程時に所定周期毎に射出圧力を検出し、前記射出圧力指令パターンより当該周期における射出圧力指令を求め、該射出圧力指令と検出射出圧力との圧力偏差に比例する値を前記トルク指令パターンから求められる当該周期のトルク指令に加算して射出用サーボモータへのトルク指令として射出用サーボモータをトルク制御することを特徴とした射出成形機の射出圧力制御方法。
【請求項5】 前記射出圧力指令パターンおよびトルク指令パターンを次の工程を行うことにより求めるようにした請求項4記載の射出成形機の射出圧力制御方法。
工程1.射出圧力指令パターンとトルク指令パターンを初期設定する。
工程2.設定された射出圧力指令パターンとトルク指令パターンとにより請求項4記載の方法で射出圧力制御を行い、射出圧力パターンの実測データを得る。
工程3.射出圧力パターンの実測データと設定射出圧力指令パターンとを比較する。
工程4.比較結果が不満足であれば、各周期毎射出圧力指令と検出射出圧力との圧力偏差に比例係数を乗じた補正値を当該周期のトルク指令に加算して新たなトルク指令パターンとして設定して工程2まで戻る。
工程5.比較結果が満足であれば、成形品の良否を判定する。
工程6.判定結果が不良であれば射出圧力指令パターンおよびトルク指令パターンを編集して新たな射出圧力指令パターンおよびトルク指令パターンとして設定して工程2まで戻る。
工程7.判定結果が良品であれば現時点における射出圧力指令パターンおよびトルク指令パターンを最終的な射出圧力指令パターンおよびトルク指令パターンとして確定する。
【請求項6】 各周期毎の直前の成形サイクルにおけるスクリュー移動速度および実射出圧力の検出値とその前の成形サイクルにおけるスクリュー移動速度および実射出圧力の検出値とに基いて、射出圧力変化に対するトルク指令変化の追従特性を求めて前記比例係数とし、工程4の処理を行うようにした請求項5記載の射出成形機の射出圧力制御方法。
【請求項7】 時間の関数として射出圧力指令パターンと位置指令パターンを設定し、射出工程時に所定周期毎に射出圧力を検出し、前記射出圧力指令パターンより当該周期における射出圧力指令を求め、該射出圧力指令と検出射出圧力との圧力偏差に比例する値を前記位置指令パターンから求められる当該周期の位置指令に加算して射出用サーボモータへの位置指令として射出用サーボモータを位置制御することを特徴とした射出成形機の射出圧力制御方法。
【請求項8】 前記射出圧力指令パターンおよび位置指令パターンを次の工程を行うことにより求めるようにした請求項7記載の射出成形機の射出圧力制御方法。
工程1.射出圧力指令パターンと位置指令パターンを初期設定する。
工程2.設定された射出圧力指令パターンと位置指令パターンとにより請求項7記載の方法で射出圧力制御を行い、射出圧力パターンの実測データを得る。
工程3.射出圧力パターンの実測データと設定射出圧力指令パターンとを比較する。
工程4.比較結果が不満足であれば、各周期毎射出圧力指令と検出射出圧力との圧力偏差に比例係数を乗じた補正値を当該周期の位置指令に加算して新たな位置指令パターンとして設定して工程2まで戻る。
工程5.比較結果が満足であれば、成形品の良否を判定する。
工程6.判定結果が不良であれば射出圧力指令パターンおよび位置指令パターンを編集して新たな射出圧力指令パターンおよび位置指令パターンとして設定して工程2まで戻る。
工程7.判定結果が良品であれば現時点における射出圧力指令パターンおよび位置指令パターンを最終的な射出圧力指令パターンおよび位置指令パターンとして確定する。
【請求項9】 各周期毎の直前の成形サイクルにおけるスクリュー移動速度および実射出圧力の検出値とその前の成形サイクルにおけるスクリュー移動速度および実射出圧力の検出値とに基いて、射出圧力変化に対する位置指令変化の追従特性を求めて前記比例係数とし、工程4の処理を行うようにした請求項8記載の射出成形機の射出圧力制御方法。
【請求項1】 時間の関数として射出圧力指令パターンと速度指令パターンを設定し、射出工程時に所定周期毎に射出圧力を検出し、前記射出圧力指令パターンより当該周期における射出圧力指令を求め、該射出圧力指令と検出射出圧力との圧力偏差に比例する値を前記速度指令パターンから求められる当該周期の速度指令に加算して射出用サーボモータへの速度指令として射出用サーボモータを速度制御することを特徴とした射出成形機の射出圧力制御方法。
【請求項2】 前記射出圧力指令パターンおよび速度指令パターンを次の工程を行うことにより求めるようにした請求項1記載の射出成形機の射出圧力制御方法。
工程1.射出圧力指令パターンと速度指令パターンを初期設定する。
工程2.設定された射出圧力指令パターンと速度指令パターンとにより請求項1記載の方法で射出圧力制御を行い、射出圧力パターンの実測データを得る。
工程3.射出圧力パターンの実測データと設定射出圧力指令パターンとを比較する。
工程4.比較結果が不満足であれば、各周期毎射出圧力指令と検出射出圧力との圧力偏差に比例係数を乗じた補正値を当該周期の速度指令に加算して新たな速度指令パターンとして設定して工程2まで戻る。
工程5.比較結果が満足であれば、成形品の良否を判定する。
工程6.判定結果が不良であれば射出圧力指令パターンおよび速度指令パターンを編集して新たな射出圧力指令パターンおよび速度指令パターンとして設定して工程2まで戻る。
工程7.判定結果が良品であれば現時点における射出圧力指令パターンおよび速度指令パターンを最終的な射出圧力指令パターンおよび速度指令パターンとして確定する。
【請求項3】 各周期毎の直前の成形サイクルにおけるスクリュー移動速度および実射出圧力の検出値とその前の成形サイクルにおけるスクリュー移動速度および実射出圧力の検出値とに基いて、射出圧力変化に対する速度指令変化の追従特性を求めて前記比例係数とし、工程4の処理を行うようにした請求項2記載の射出成形機の射出圧力制御方法。
【請求項4】 時間の関数として射出圧力指令パターンとトルク指令パターンを設定し、射出工程時に所定周期毎に射出圧力を検出し、前記射出圧力指令パターンより当該周期における射出圧力指令を求め、該射出圧力指令と検出射出圧力との圧力偏差に比例する値を前記トルク指令パターンから求められる当該周期のトルク指令に加算して射出用サーボモータへのトルク指令として射出用サーボモータをトルク制御することを特徴とした射出成形機の射出圧力制御方法。
【請求項5】 前記射出圧力指令パターンおよびトルク指令パターンを次の工程を行うことにより求めるようにした請求項4記載の射出成形機の射出圧力制御方法。
工程1.射出圧力指令パターンとトルク指令パターンを初期設定する。
工程2.設定された射出圧力指令パターンとトルク指令パターンとにより請求項4記載の方法で射出圧力制御を行い、射出圧力パターンの実測データを得る。
工程3.射出圧力パターンの実測データと設定射出圧力指令パターンとを比較する。
工程4.比較結果が不満足であれば、各周期毎射出圧力指令と検出射出圧力との圧力偏差に比例係数を乗じた補正値を当該周期のトルク指令に加算して新たなトルク指令パターンとして設定して工程2まで戻る。
工程5.比較結果が満足であれば、成形品の良否を判定する。
工程6.判定結果が不良であれば射出圧力指令パターンおよびトルク指令パターンを編集して新たな射出圧力指令パターンおよびトルク指令パターンとして設定して工程2まで戻る。
工程7.判定結果が良品であれば現時点における射出圧力指令パターンおよびトルク指令パターンを最終的な射出圧力指令パターンおよびトルク指令パターンとして確定する。
【請求項6】 各周期毎の直前の成形サイクルにおけるスクリュー移動速度および実射出圧力の検出値とその前の成形サイクルにおけるスクリュー移動速度および実射出圧力の検出値とに基いて、射出圧力変化に対するトルク指令変化の追従特性を求めて前記比例係数とし、工程4の処理を行うようにした請求項5記載の射出成形機の射出圧力制御方法。
【請求項7】 時間の関数として射出圧力指令パターンと位置指令パターンを設定し、射出工程時に所定周期毎に射出圧力を検出し、前記射出圧力指令パターンより当該周期における射出圧力指令を求め、該射出圧力指令と検出射出圧力との圧力偏差に比例する値を前記位置指令パターンから求められる当該周期の位置指令に加算して射出用サーボモータへの位置指令として射出用サーボモータを位置制御することを特徴とした射出成形機の射出圧力制御方法。
【請求項8】 前記射出圧力指令パターンおよび位置指令パターンを次の工程を行うことにより求めるようにした請求項7記載の射出成形機の射出圧力制御方法。
工程1.射出圧力指令パターンと位置指令パターンを初期設定する。
工程2.設定された射出圧力指令パターンと位置指令パターンとにより請求項7記載の方法で射出圧力制御を行い、射出圧力パターンの実測データを得る。
工程3.射出圧力パターンの実測データと設定射出圧力指令パターンとを比較する。
工程4.比較結果が不満足であれば、各周期毎射出圧力指令と検出射出圧力との圧力偏差に比例係数を乗じた補正値を当該周期の位置指令に加算して新たな位置指令パターンとして設定して工程2まで戻る。
工程5.比較結果が満足であれば、成形品の良否を判定する。
工程6.判定結果が不良であれば射出圧力指令パターンおよび位置指令パターンを編集して新たな射出圧力指令パターンおよび位置指令パターンとして設定して工程2まで戻る。
工程7.判定結果が良品であれば現時点における射出圧力指令パターンおよび位置指令パターンを最終的な射出圧力指令パターンおよび位置指令パターンとして確定する。
【請求項9】 各周期毎の直前の成形サイクルにおけるスクリュー移動速度および実射出圧力の検出値とその前の成形サイクルにおけるスクリュー移動速度および実射出圧力の検出値とに基いて、射出圧力変化に対する位置指令変化の追従特性を求めて前記比例係数とし、工程4の処理を行うようにした請求項8記載の射出成形機の射出圧力制御方法。
【図3】
【図1】
【図2】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図12】
【図9】
【図10】
【図11】
【図1】
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【図10】
【図11】
【公開番号】特開平7−308946
【公開日】平成7年(1995)11月28日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平6−124742
【出願日】平成6年(1994)5月16日
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
【公開日】平成7年(1995)11月28日
【国際特許分類】
【出願日】平成6年(1994)5月16日
【出願人】(390008235)ファナック株式会社 (1,110)
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