説明

射出成形機

【課題】制御装置による制御下での電磁石のコイルへの電流供給を停止した状態において金型装置の取り付けを可能とする射出成形機を提供すること。
【解決手段】射出成形機は、電磁石49による吸着力で型締力を発生させる型締力発生機構を備える。型締力発生機構は、電磁石49のコイル48に電流を供給する電流供給部100と、電流供給部100を制御する制御装置60とを含む。制御装置60による制御下での電流供給部100によるコイル48への電流供給を停止した状態でコイル48に電流を供給する電気回路200が設けられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形機に関する。
【背景技術】
【0002】
射出成形機は、溶融樹脂を射出装置から射出して金型装置のキャビティに充填し、固化させることによって成形品を成形する。金型装置は固定金型及び可動金型で構成される。金型装置の型閉じ、型締め、及び型開きは型締装置によって行われる。
【0003】
型締装置として、モータなどの駆動源とトグル機構とを用いる方式のものが広く用いられているが、トグル機構の特性上、型締力を変更することが困難であり、応答性や安定性が悪い。また、トグル機構の動作時に曲げモーメントが発生し、金型装置を取り付ける取り付け面などが歪むことがある。
【0004】
そこで、型開閉動作にはリニアモータを用い、型締め動作に電磁石の吸着力を利用した型締装置が提案されている(例えば、特許文献1参照)。型締装置において、電磁石のコイルへの電流供給は制御装置による制御下で行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第05/090052号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
金型装置は、成形品の種類に応じて交換される。新しい金型装置を取り付けるとき、金型装置は取り付け面にボルトで仮止めされた後、型閉じされ、型締め状態でボルトを増し締めして本止めされる。ボルトの代わりに、油圧や磁力を利用したクランプ装置などが用いられてもよい。
【0007】
本止め作業は、射出成形機のカバーに設置されるドアを開けて行われるので、制御装置による誤作動を排除するため、ドアが開いている状態では型締装置への電流供給が停止される。
【0008】
この状態において、トグル機構を用いる方式は予め発生させた型締力を保持できるが、電磁石を用いる方式は型締力を保持できなかった。制御装置による電磁石のコイルへの電流供給が遮断されるためである。そのため、電磁石を用いる方式では、本止め作業が困難であった。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであって、制御装置による制御下での電磁石のコイルへの電流供給を停止した状態において金型装置の取り付けを可能とする射出成形機の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を解決するため、本発明の一の態様による射出成形機は、
固定金型が取り付けられる第1の固定部材と、
可動金型が取り付けられる第1の可動部材と、
該第1の可動部材と共に移動する第2の可動部材と、
前記第1の可動部材と前記第2の可動部材との間に配設される第2の固定部材と、
該第2の固定部材と前記第2の可動部材との間に電磁石による吸着力で型締力を発生させる型締力発生機構と、を備え、
該型締力発生機構は、前記電磁石のコイルに電流を供給する電流供給部と、該電流供給部を制御する制御装置とを含み、
該制御装置による制御下での前記電流供給部による前記コイルへの電流供給を停止した状態で前記コイルに電流を供給する電気回路が設けられることを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、制御装置による制御下での電磁石のコイルへの電流供給を停止した状態において金型装置の取り付けを可能とする射出成形機が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の一実施形態による射出成形機の型閉じ時の状態を示す図
【図2】本発明の一実施形態による射出成形機の型開き時の状態を示す図
【図3】本発明の一実施形態による射出成形機の電磁石のコイルに電流を供給する回路を示す図
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照して説明するが、各図面において、同一の又は対応する構成については同一の又は対応する符号を付して説明を省略する。また、型閉じを行う際の可動プラテンの移動方向を前方とし、型開きを行う際の可動プラテンの移動方向を後方として説明する。
【0014】
図1は、本発明の一実施形態による射出成形機の型閉じ時の状態を示す図である。図2は、本発明の一実施形態による射出成形機の型開き時の状態を示す図である。図3は、本発明の一実施形態による射出成形機の電磁石のコイルに電流を供給する回路を示す図である。
【0015】
図において、10は型締装置、Frは射出成形機のフレーム、Gdは該フレームFr上に敷設される2本のレールよりなるガイド、11は固定プラテン(第1の固定部材)である。固定プラテン11は、型開閉方向(図において左右方向)に延びるガイドGdに沿って移動可能な位置調整ベースBa上に設けられてよい。なお、固定プラテン11はフレームFr上に載置されてもよい。
【0016】
固定プラテン11と対向して可動プラテン(第1の可動部材)12が配設される。可動プラテン12は可動ベースBb上に固定され、可動ベースBbはガイドGd上を走行可能である。これにより、可動プラテン12は、固定プラテン11に対して型開閉方向に移動可能である。
【0017】
固定プラテン11と所定の間隔を置いて、かつ、固定プラテン11と平行にリヤプラテン(第2の固定部材)13が配設される。リヤプラテン13は、脚部13aを介してフレームFrに固定される。
【0018】
固定プラテン11とリヤプラテン13との間に4本の連結部材としてのタイバー14(図においては、4本のタイバー14のうちの2本だけを示す。)が架設される。タイバー14を介して固定プラテン11がリヤプラテン13に固定される。タイバー14に沿って可動プラテン12が進退自在に配設される。可動プラテン12におけるタイバー14と対応する箇所にタイバー14を貫通させるための図示されないガイド穴が形成される。なお、ガイド穴の代わりに、切欠部を形成するようにしてもよい。
【0019】
タイバー14の前端部(図において右端部)には図示されないネジ部が形成され、該ネジ部にナットn1を螺合して締め付けることによって、タイバー14の前端部が固定プラテン11に固定される。タイバー14の後端部はリヤプラテン13に固定される。
【0020】
固定プラテン11には固定金型15が、可動プラテン12には可動金型16がそれぞれ取り付けられ、可動プラテン12の進退に伴って固定金型15と可動金型16とが接離させられ、型閉じ、型締め及び型開きが行われる。なお、型締めが行われるのに伴って、固定金型15と可動金型16との間に図示されないキャビティ空間が形成され、射出装置17の射出ノズル18から射出された図示されない溶融樹脂がキャビティ空間に充填される。固定金型15及び可動金型16によって金型装置19が構成される。
【0021】
吸着板22(第2の可動部材)は、可動プラテン12と平行に配設される。吸着板22は取付板27を介してスライドベースSbに固定され、スライドベースSbはガイドGd上を走行可能である。これにより、吸着板22は、リヤプラテン13よりも後方において進退自在となる。吸着板22は、磁性材料で形成されてよい。なお、取付板27はなくてもよく、この場合、吸着板22はスライドベースSbに直に固定される。
【0022】
ロッド39は、後端部において吸着板22と連結させて、前端部において可動プラテン12と連結させて配設される。したがって、ロッド39は、型閉じ時に吸着板22が前進するのに伴って前進させられて可動プラテン12を前進させ、型開き時に吸着板22が後退するのに伴って後退させられて可動プラテン12を後退させる。そのために、リヤプラテン13の中央部分にロッド39を貫通させるための穴41が形成される。
【0023】
リニアモータ28は、可動プラテン12を進退させるための型開閉駆動部であって、例えば可動プラテン12に連結された吸着板22とフレームFrとの間に配設される。なお、リニアモータ28は可動プラテン12とフレームFrとの間に配設されてもよい。
【0024】
リニアモータ28は、固定子29、及び可動子31を備える。固定子29は、フレームFr上において、ガイドGdと平行に、かつ、スライドベースSbの移動範囲に対応させて形成される。可動子31は、スライドベースSbの下端において、固定子29と対向させて、かつ、所定の範囲にわたって形成される。
【0025】
可動子31は、コア34及びコイル35を備える。そして、コア34は、固定子29に向けて突出させて、所定のピッチで形成された複数の磁極歯33を備え、コイル35は、各磁極歯33に巻装される。なお、磁極歯33は可動プラテン12の移動方向に対して直角の方向に、互いに平行に形成される。また、固定子29は、図示されないコア、及び該コア上に延在させて形成された図示されない永久磁石を備える。該永久磁石は、N極及びS極の各磁極を交互に着磁させることによって形成される。可動子31の位置を検出する位置センサ75が配置される。
【0026】
コイル35に所定の電流を供給することによってリニアモータ28を駆動すると、可動子31が進退させられる。それに伴って、吸着板22及び可動プラテン12が進退させられ、型閉じ及び型開きを行うことができる。リニアモータ28は、可動子31の位置が設定値になるように、位置センサ75の検出結果に基づいてフィードバック制御される。
【0027】
なお、本実施の形態においては、固定子29に永久磁石を、可動子31にコイル35を配設するようになっているが、固定子にコイルを、可動子に永久磁石を配設することもできる。その場合、リニアモータ28が駆動されるのに伴って、コイルが移動しないので、コイルに電力を供給するための配線を容易に行うことができる。
【0028】
なお、型開閉駆動部として、リニアモータ28の代わりに、回転モータおよび回転モータの回転運動を直線運動に変換するボールネジ機構などが用いられてもよい。
【0029】
電磁石ユニット37は、リヤプラテン13と吸着板22との間に電磁石による吸着力で型締力を生じさせる。この吸着力は、ロッド39を介して可動プラテン12に伝達する。
【0030】
なお、固定プラテン11、可動プラテン12、リヤプラテン13、吸着板22、リニアモータ28、電磁石ユニット37、ロッド39などによって型締装置10が構成される。また、電磁石ユニット37などで型締力発生機構が構成される。型締力発生機構は、電磁石49のコイル48に電流を供給する電流供給部100(図3参照)と、電流供給部100を制御する制御装置60とを含む。
【0031】
電磁石ユニット37は、リヤプラテン13側に形成された電磁石49、及び吸着板22側に形成された吸着部51からなる。吸着部51は、吸着板22の前端面の所定の部分、例えば、吸着板22においてロッド39を包囲し、かつ、電磁石49と対向する部分に形成される。また、リヤプラテン13の後端面の所定の部分、例えば、ロッド39のまわりに溝45が形成され、溝45より内側にコア46、溝45より外側にヨーク47が形成される。そして、溝45内でコア46まわりにコイル48が巻装される。
【0032】
なお、本実施形態においては、リヤプラテン13とは別に電磁石49が、吸着板22とは別に吸着部51が形成されるが、リヤプラテン13の一部として電磁石を、吸着板22の一部として吸着部を形成してもよい。また、電磁石と吸着部の配置は逆であってもよい。例えば、吸着板22側に電磁石49を設け、リヤプラテン13側に吸着部51を設けてもよい。
【0033】
電磁石ユニット37において、コイル48に電流を供給すると、電磁石49が駆動され、吸着部51を吸着し、型締力を発生させることができる。
【0034】
型締装置10のリニアモータ28及び電磁石49の駆動は、制御装置60によって制御される。制御装置60は、CPU及びメモリなどを備え、CPUによって演算された結果に応じて、リニアモータ28のコイル35や電磁石49のコイル48に電流を供給する。制御装置60には、荷重検出器55が接続される。荷重検出器55は、型締装置10において、少なくとも1本のタイバー14の所定の位置(固定プラテン11とリヤプラテン13との間における所定の位置)に設置され、当該タイバー14にかかる荷重を検出する。荷重検出器55は、例えばタイバー14の伸び量を検出するセンサによって構成される。荷重検出器55によって検出された荷重は、制御装置60に送られる。
【0035】
制御装置60は、図3に示すように、電磁石49のコイル48に電流を供給する電流供給部(ドライバ)100と接続されており、電流供給部100を制御する。電流供給部100の制御は、後述の型締め処理部62によって行われる。
【0036】
電流供給部100は、DC電源(例えば、充電器)PWと接続されており、制御装置60からの制御信号に応じた電流値の電流を電磁石49のコイル48に供給する。電流供給部100は、例えばパワーモジュールなどを含む。
【0037】
電流供給部100は、射出成形機のカバーに設置されるドアが閉じたときのみ電磁石49のコイル48への電流供給を許容するオン状態となる図示されない開閉監視スイッチを含んでよい。開閉監視スイッチがオフ状態となると、電流供給部100による電磁石49のコイル48への電流供給が遮断される。
【0038】
なお、開閉監視スイッチは、電流供給部100に含まれず、制御装置60に接続されていてもよい。この場合、制御装置60は、開閉監視スイッチの状態がオフ状態になると、電流供給部100による電磁石49のコイル48への電流供給を遮断する。
【0039】
次に、型締め装置10の動作について説明する。
【0040】
制御装置60の型開閉処理部61によって型閉じ工程が制御される。図2の状態(型開きの状態)において、型開閉処理部61は、コイル35に電流を供給して、リニアモータ28を駆動する。可動プラテン12が前進して、図1に示すように、可動金型16が固定金型15に当接させられる。このとき、リヤプラテン13と吸着板22との間、即ち電磁石49と吸着部51との間には、ギャップδが形成される。なお、型閉じに必要とされる力は、型締力と比較されて十分に小さくされる。
【0041】
続いて、制御装置60の型締め処理部62は、型締め工程を制御する。型締め処理部62は、電磁石49のコイル48に電流を供給し、電磁石49に吸着部51を吸着する。それに伴って、吸着板22及びロッド39を介して型締力が可動プラテン12に伝達され、型締めが行われる。
【0042】
型締力は荷重検出器55によって検出される。検出された型締力は制御装置60に送られ、型締力が設定値になるように型締め処理部62が電流供給部100を制御して、コイル48に供給される電流を調整し、フィードバック制御する。この間、射出装置17において溶融させられた溶融樹脂が射出ノズル18から射出され、金型装置19のキャビティ空間に充填される。
【0043】
キャビティ空間内の樹脂が冷却固化すると、型開閉処理部61は、型開き工程を制御する。型締め処理部62は、図1の状態において、電磁石49のコイル48への電流供給を停止する。それに伴って、リニアモータ28が駆動され、可動プラテン12が後退し、図2に示すように、可動金型16が後退して型開きが行われる。
【0044】
次に、金型装置19の交換時の型厚調整について説明する。
金型装置19の交換に伴い、新しい金型装置19が取り付けられると、金型装置19の厚さが変わり、型閉じが終了した時点でリヤプラテン13と吸着板22との間に形成されるギャップδが変わる。
【0045】
そこで、射出成形機は、金型装置19の厚さに応じてギャップδを調整する型厚調整装置70を備える。型厚調整装置70は、型厚調整用モータ71、ギヤ72、ナット73、ロッド39などによって構成される。ロッド39は吸着板22の中央部分を貫通し、ロッド39の後端部にねじ43が形成される。ねじ43と、吸着板22に対して回転自在に支持されたナット73とが螺合させられる。ナット73の外周面に図示されない大径のギヤが形成され、このギヤと、型厚調整用モータ71の出力軸71aに取り付けられた小径のギヤ72が噛合させられる。ナット73及びねじ43によって運動方向変換部が構成され、該運動方向変換部において、ナット73の回転運動がロッド39の直進運動に変換される。
【0046】
金型装置19の厚さに対応させて、型厚調整用モータ71を駆動し、ナット73をねじ43に対して所定量回転させると、吸着板22に対するロッド39の位置が調整され、固定プラテン11及び可動プラテン12に対する吸着板22の位置が調整されて、ギャップδを最適な値にすることができる。即ち、可動プラテン12と吸着板22との間の型開閉方向(図において左右方向)における距離を変えることによって、型厚の調整が行われる。
【0047】
型厚調整用モータ71は、サーボモータであってよく、エンコーダ部71bを含んでよい。エンコーダ部71bは、型厚調整用モータ71の出力軸71aの回転量などを検出し、検出結果を制御装置60に送信する。制御装置60は、ギャップδが設定値になるように、型厚調整用モータ71をフィードバック制御する。
【0048】
次に、金型装置19の取り付けについて説明する。
新しい金型装置19を取り付けるとき、金型装置19は、クレーンなどで吊持された状態で、固定プラテン11にボルトで仮止めされる。その後、可動プラテン12が前進して金型装置19に接触し、続いて、金型装置19が型締めされる。型締め状態で、固定金型15が固定プラテン11に、可動金型16が可動プラテン12にそれぞれボルトで本止めされる。ボルトの代わりに、油圧や磁力を利用したクランプ装置などが用いられてもよい。
【0049】
本止め作業は、射出成形機のカバーに設置されるドアを開けて行われるので、電流供給部100による電磁石49のコイル48への電流供給を停止した状態(以下、「停止状態」ともいう)で行われる。制御装置60による誤作動を排除するためである。
【0050】
停止状態は、各種検出器の検出結果に基づいて動作がフィードバック制御される駆動源(例えば、電磁石49、リニアモータ28、及び型厚調整用モータ71を含む)の駆動制御が自動で停止されるサーボオフ状態であってよい。
【0051】
本実施形態の射出成形機は、停止状態で、電磁石49のコイル48に電流を供給する電気回路200を備える。
【0052】
電気回路200は、図3に示すように、電磁石49のコイル48とDC電源(例えば、充電器)PWとを接続し、電流供給部100とは独立に電磁石49に電流を供給する。電気回路200は、電流供給部100とは異なり、制御装置60に接続されておらず、制御装置60による制御を受けない。
【0053】
電気回路200が電磁石49のコイル48に電流を供給することにより、電磁石49が吸着部51を吸着する。それに伴って、吸着板22及びロッド39を介して型締力が可動プラテン12に伝達され、型締めが行われる。よって、停止状態において型締力を発生させることができ、金型の本止め作業を行うことができる。
【0054】
電気回路200は、例えば、手動スイッチ202、ギャップ監視スイッチ204、及び可変抵抗器206などで構成される。手動スイッチ202及びギャップ監視スイッチ204の両方がコイル48への電流供給を許容するオン状態のとき、可変抵抗器206の抵抗値に応じた電流値の電流が電磁石49のコイル48に供給され、電磁石49が吸着部51を吸着する。
【0055】
手動スイッチ202は、電磁石49のコイル48への電流供給を許容するオン状態と禁止するオフ状態とに手動で切り換えられるスイッチである。電気回路200による電流供給をユーザの意思で開始、終了することができる。
【0056】
ギャップ監視スイッチ204は、電磁石49と吸着部51との間に形成されるギャップδが所定値δ0以下のときのみ電流供給を許容するオン状態となり、ギャップδが所定値δ0を超えるときに電流供給を禁止するオフ状態となる。ギャップδが所定値δ0以下のときのみ、電気回路200による電流供給が許容されるので、電磁石49が吸着部51を吸着するとき、吸着板22や可動プラテン12、可動金型16などの前進を制限することができる。所定値δ0は、例えば1.0mm〜1.5mmの範囲内で設定される。
【0057】
ギャップ監視スイッチ204は、リヤプラテン13側に設置され、吸着板22側に設置される操作片によって操作される操作スイッチであってよい。また、ギャップ監視スイッチ204は、操作スイッチの操作に応じて、オン状態とオフ状態とに切り換えられる電磁接触器などでもよい。
【0058】
なお、操作スイッチと操作片の配置は逆でもよく、操作スイッチが吸着板22側に配置され、操作片がリヤプラテン13側に配置されてもよい。また、操作スイッチの代わりに、非接触式の近接スイッチを用いてもよい。
【0059】
可変抵抗器206は、電磁石49のコイル48に供給される電流の電流値を可変とするものであって、手動で抵抗値が変わる。抵抗値が低くなるほど、電流値が上昇し、電磁石49の吸着力が強くなる。よって、可変抵抗器206を用いて型締力を調節することが可能である。
【0060】
次に、上記構成の射出成形機を用いた金型装置19の取り付け方法(本止め作業)について説明する。
【0061】
先ず、仮止め作業後、リニアモータ28を駆動し、可動プラテン12を可動金型16に当接させる。このとき、電磁石20と吸着部51との間に形成されるギャップδ(>0)は所定値δ0以下となり、ギャップ監視スイッチ204がオン状態となる。ギャップδが所定値δ0以下となるよう、リニアモータ28の駆動後または駆動前に、型厚調整装置70を用いて、吸着板22と可動プラテン11との間の距離を調整してよい。
【0062】
次いで、射出成形機のドアを開けると、射出成形機が停止状態となり、電流供給部100による電磁石49のコイル48への電流供給が遮断される。
【0063】
次いで、電気回路200によって電磁石49のコイル48に電流を供給する。先ず、手動スイッチ202をオン状態とし、次いで、可変抵抗器206の抵抗値を徐々に下げ、コイル48に流す電流値を設定値まで徐々に上げる。よって、電磁石49が吸着部51を吸着し、吸着板22及びロッド39を介して型締力が可動プラテン12に伝達され、型締めが行われる。従って、型締め状態で本止め作業を行うことができる。
【0064】
以上、本発明の一実施形態について説明したが、本発明は、上記の実施形態に制限されることはなく、本発明の範囲を逸脱することなく、上記の実施形態に種々の変形や置換を加えることができる。
【0065】
例えば、上記実施形態の電気回路200は、射出成形機が停止状態のとき電磁石49のコイル48への電流供給を許容し、停止状態が解除されたときコイル48への電流供給を禁止するスイッチを含んでよい。電気回路200及び電流供給部100の両方が同時に電磁石49のコイル48に電流供給するのを回避することができる。
【符号の説明】
【0066】
10 型締装置
11 固定プラテン(第1の固定部材)
12 可動プラテン(第1の可動部材)
13 リヤプラテン(第2の固定部材)
15 固定金型
16 可動金型
22 吸着板(第2の可動部材)
37 電磁石ユニット(型締力発生機構)
48 コイル
49 電磁石
60 制御装置
100 電流供給部
200 電気回路
204 ギャップ監視スイッチ
206 可変抵抗

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定金型が取り付けられる第1の固定部材と、
可動金型が取り付けられる第1の可動部材と、
該第1の可動部材と共に移動する第2の可動部材と、
前記第1の可動部材と前記第2の可動部材との間に配設される第2の固定部材と、
該第2の固定部材と前記第2の可動部材との間に電磁石による吸着力で型締力を発生させる型締力発生機構と、を備え、
該型締力発生機構は、前記電磁石のコイルに電流を供給する電流供給部と、該電流供給部を制御する制御装置とを含み、
該制御装置による制御下での前記電流供給部による前記コイルへの電流供給を停止した状態で前記コイルに電流を供給する電気回路が設けられることを特徴とする射出成形機。
【請求項2】
前記電気回路は、前記コイルに供給される電流の電流値を可変とする可変抵抗器を含む請求項1に記載の射出成形機。
【請求項3】
前記電気回路は、前記電磁石と前記電磁石に吸着される吸着部との間に形成されるギャップが所定値以下のときに前記コイルへの電流供給を許容し、前記ギャップが所定値を超えるときに前記コイルへの電流供給を禁止するスイッチを含む請求項1または2に記載の射出成形機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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