説明

射出成形用金型及び射出成形装置

【課題】マニホールドの重量を軽減するとともに、ノズルの設置点及び点数を容易に変更し、製品の仕様に応じて、ゲート位置(ノズル点数)を多点に自在に配置し、マニホールドに配置されるヒータをノズルの変更に合わせて自在に配置することが可能な射出成形用金型及び射出成形装置を提供する。
【解決手段】柱状であって、内部中央に底面側から円形に穿孔された中央穿孔と、柱状の側面側から中央穿孔と接続するように穿孔された1以上のパイプ接続孔を有する複数の柱状マニホールドと、パイプ接続孔の内径より小さい外径を有し、2つの柱状マニホールドのパイプ接続孔を接続する所定の肉厚を有する金属製の複数の接続パイプと、を備える柱状マニホールドユニットを有し、複数の接続パイプは、パイプ接続孔に接続された後、カシメ加工によって拡径されてパイプ接続孔に密着されることを特徴とする射出成形用金型。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、射出成形用金型及び射出成形装置に関し、特に、金型の肉厚を減少させ、金型全体の重量を低減する射出成形用金型及び射出成形装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂などの成形材料等を加工する方法として、例えば、射出成形装置が広く利用されている。射出成形装置は、射出成形用金型を備え、射出成形用金型の内部に材料通路から製品キャビティへのゲートを配置し、製品キャビティに成形材料を充填し(流し込み)所望の製品を成形している。
【0003】
上記、従来の射出成形用金型を利用した射出成形装置の一例が特許文献1に記載されている。この射出成形装置では、射出成形用金型のスプルー(材料通路の入口)から樹脂射出用の複数のノズルに至るランナー(材料通路)を、マニホールド中にドリルで穿孔して形成していた。
【0004】
また、従来の射出成形装置で用いる射出成形用金型は、必要な分量の樹脂をノズルから射出すために、ノズル内部にバルブピンを設け、このバルブピンを油圧シリンダ又はエアーシリンダで動作させることによってゲートを開閉して樹脂の射出を制御していた。
【0005】
さらに、従来の射出成形用金型は、例えば、ホットランナー方式が用いられていた。このホットランナー方式の射出成形用金型において、マニホールドに配置されるヒータは、マニホールドの所定の箇所に埋設されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−11763号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した特許文献1において、マニホールドは、成形する部品の大きさ及び印加する成形圧力に応じて、厚さが数十mmから数百mmとなるため、重量が非常に重くなる。また、ランナーをドリルで穿孔するため、作製に長時間を要して、ノズルの点数を増減する場合、ノズル点数に応じて改めて作製する必要があった。
【0008】
また、上述した射出成形用金型の油圧シリンダ又はエアーシリンダは、その大きさが大きいため、ゲート(及び対応するノズル)点数を増加する場合に、隣接する油圧シリンダ又はエアーシリンダ同士の配置位置を確保する必要から、ノズル点数の増加が制限される場合があった。
【0009】
さらに、ホットランナー方式の射出成形用金型は、ランナー全体を加熱することはできず、ランナー内部での樹脂の固化が発生する場合があった。また、後にヒータを増設することができないという問題もあった。
【0010】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、マニホールドの重量を軽減するとともに、ノズルの設置点及び点数を容易に変更し、製品の仕様に応じて、ゲート位置(ノズル点数)を多点に自在に配置し、マニホールドに配置されるヒータをノズルの変更に合わせて自在に配置することが可能な射出成形用金型及び射出成形装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一実施形態に係る射出成形用金型は、柱状であって、内部中央に底面側から円形に穿孔された中央穿孔と、前記柱状の側面側から前記中央穿孔と接続するように穿孔された1以上のパイプ接続孔を有する複数の柱状マニホールドと、前記パイプ接続孔の内径より小さい外径を有し、2つの前記柱状マニホールドのパイプ接続孔を接続する所定の肉厚を有する金属製の複数の接続パイプと、を備える柱状マニホールドユニットを有し、前記複数の接続パイプは、前記パイプ接続孔に接続された後、カシメ加工等によって拡径されて前記パイプ接続孔に密着されることを特徴とする。
【0012】
前記柱状マニホールドは、円柱状であってもよい。
【0013】
駆動モータと、前記駆動モータに接続される減速機と、を有し、射出ノズル内に配設されたバルブピンに接続されて前記駆動モータによって駆動されるシリンダを前記射出ノズル毎にさらに備えてもよい。
【0014】
前記駆動モータと接続され、前記駆動モータの駆動を制御することにより前記射出ノズル毎に配設されたバルブピンを駆動させて、前記射出ノズルに対応するゲートの開閉を制御する制御装置をさらに備えてもよい。
【0015】
前記接続パイプの前記所定の肉厚は、前記パイプ内を流れる溶融樹脂の圧力に応じて決定されてもよい。
【0016】
前記接続パイプは、SUS系ステンレスパイプ又は油圧配管用精密炭素鋼管であってもよい。
【0017】
前記接続パイプ上に外装される第1の絶縁材と、前記第1の絶縁材上に捲回されたヒータと、前記ヒータ上に外装される第2の絶縁材と、を有するヒータユニットをさらに備えてもよい。
【0018】
本発明の一実施形態に係る射出成形装置は、前記射出成型用金型を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、マニホールドの重量を軽減するとともに、ノズルの設置点及び点数を容易に変更し、製品の仕様に応じて、ゲート位置(ノズル点数)を多点に自在に配置し、マニホールドに配置されるヒータをノズルの変更に合わせて自在に配置することが可能な射出成形用金型及び射出成形装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態に係る射出成形用金型100の構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係る射出成形用金型100全体を示す斜視図である。
【図3】本発明の実施形態に係る射出成形用金型100を示す断面図である。
【図4】本発明の実施形態に係る柱状マニホールドユニット140を示す概略平面図である。
【図5】本発明の実施形態に係る柱状マニホールドに接続される接続パイプ122を示す概略断面図である。
【図6】図6(a)乃至(f)は、接続パイプ122に取り付けるヒータユニット180の製造方法を示す概略図である。
【図7】図7(a)乃至(b)は、接続パイプ122に取り付けるヒータユニット180の製造方法を示す概略図である。
【図8】図8は、本発明の実施形態に係る射出成形装置1を示すブロック図である。
【図9】ゲート点数を変更した時の圧力分布を示す図である。
【図10】ゲート点数を変更した時の各充填時間を示す図である。
【図11】図9に示した圧力分布から各ゲート点数における最高圧力をプロットしたグラフである。
【図12】(a)は、従来の射出成形用金型のマニホールドユニットの断面図を示し、(b)は、本実施例の射出成形用金型100の柱状マニホールドユニット140の断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を詳細に説明する。なお、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではない。
【0022】
以下、本発明の実施形態に係る射出成形用金型100について、図1乃至図3を参照しながら説明する。なお、本実施形態の射出成形用金型100は、自動車ドアトリムを成形するためのものであるが、これは一例であり、本射出成形用金型100で成形される製品は、自動車ドアトリムに限定されるものではない。
【0023】
図1は、本発明の実施形態に係る射出成形用金型100を示す斜視図である。図2は、本発明の実施形態に係る射出成形用金型100全体を示す斜視図である。図3は、本発明の実施形態に係る射出成形用金型100を示す断面図である。図1乃至図3に示すように本発明の実施形態に係る射出成形用金型100は、固定型110と、可動型170と、を備える。固定型110及び可動型170は、互いに図示上下方向に移動して開閉し、固定型110及び可動型170が閉じた時に相互間に自動車ドアトリムの形状をした製品キャビティ(図示せず)を形成するものである。なお、実際には、射出成形用金型100は、射出成形装置1に設置された場合、左右に開閉するが、本明細書においては、図示及び説明上上下に開閉するものとして図示及び説明する。
【0024】
本発明の実施形態に係る固定型110は、モータ駆動シリンダ111と、複数の柱状マニホールド120及び複数の柱状マニホールド120間をそれぞれ接続する複数の接続パイプ122を備える柱状マニホールドユニット140と、射出ノズル124と、型板114、116と、スペーサブロック115と、受け板117と、を備える。固定型110は、射出成形装置の型締装置の固定側プラテンに取り付けられる固定側取り付け板112における図示下側、つまり可動型170側の面に枠状のスペーサブロック115が固定され、このスペーサブロック115の図示下側の面に固定側受け板117が固定される。そして、この固定側受け板117の図示下側の面には、枠状の固定側型板114、116が固定されるとともに、この固定側型板114、116の内側に、製品キャビティをそれぞれ形成するキャビティ部材が固定される。また、固定側取り付け板112とスペーサブロック115と固定側受け板117との間には複数の接続パイプ122を備える複数の柱状マニホールド120が設けられる。この柱状マニホールド120と固定側取り付け板112及び固定側受け板116との間にはスペーサ(図示せず)がそれぞれ介在させてある。
【0025】
また、固定側取り付け板112には貫通孔が形成されており、この貫通孔における図示上側の周辺部にはローケートリングが固定される。また、柱状マニホールド120に固定されたスプルーブッシュが貫通孔内に挿入される。このスプルーブッシュは、射出成形装置の射出ノズル124が接続されるもので、内部がランナー(材料通路)の入口部をなすスプルーになっている。このスプルーは、柱状マニホールド120の数等に応じて必要な個数が設けられる。さらに、接続パイプ122の外周には、ランナーを加熱する加熱手段であるヒータユニット(図示せず)が設けられる。
【0026】
キャビティ部材の中央部にはそれぞれゲートブッシュが貫通状態で固定される。これらのゲートブッシュ内の孔における図示下側の先端部は、それぞれ製品キャビティに開口するゲートをなしている。さらに、キャビティ部材の図示下面の内外周部には、それぞれ成形される自動車ドアトリムに転写すべきピットなどが形成されたスタンパーを着脱可能に保持する円環状の外周側スタンパー押え及び内周側スタンパー押えが着脱可能に取り付けられる。
【0027】
固定側受け板117には、ゲートブッシュ内の孔にそれぞれ通じる一対の開口孔が貫通形成されており、これらの開口孔内にほぼ筒状の射出ノズル124がそれぞれ設けられる。これら射出ノズル124は、その柱状マニホールド120側の端部に設けられたフランジが柱状マニホールド120と固定側受け板とにより挟まれて固定される。また、射出ノズル124は、反対側の端部の外周に固定された固定リングがゲートブッシュの内周面に嵌合する。そして、筒状の射出ノズル124の内部はそれぞれランナーになっているが、これらのランナーは、固定型110及び可動型170の開閉方向と垂直で各ゲートとそれぞれ同軸的に位置する直線状部をなしており、これらのゲートを介して製品キャビティにそれぞれ通じるものである。
【0028】
そして、接続パイプ122に備えられたヒータユニット(図示せず)の加熱により、スプルー、ランナーが加熱され、ランナー内の成形材料である熱可塑性樹脂が常時溶融状態に保たれるようになっている。
【0029】
また、射出ノズル124のランナー内をそれぞれ貫通して、固定型110及び可動型170の開閉方向に移動するゲート開閉部材としての一対のバルブピンが設けられる。これらのバルブピンの一端側は、それぞれフランジを摺動自在に貫通するとともに柱状マニホールド120に形成された通孔を遊貫し、固定側取り付け板112に設けられた駆動装置としてのモータ駆動シリンダ111に接続される。すなわち、バルブピンは、それぞれモータ駆動シリンダにより柱状マニホールド120のバルブ(射出ノズル124)を開閉駆動させるものである。一方、バルブピンの他端部すなわちゲート側の端部にはこれらのゲートを開閉する弁部がフランジ状に形成される。つまり、両バルブピンは、それぞれ固定型110及び可動型170の開閉方向と垂直でかつ対応するゲートと同軸的に位置しており、弁部がゲートに嵌合することによりこれらのゲートを閉じるものである。また、バルブピンは、ゲートを閉じる位置よりも図示下方へ移動することによりゲートを開放するものであるが、弁部の図示上面は熱可塑性樹脂を円滑に案内するために、材料通路側から製品キャビティ側へ傾斜した滑らかな曲面部を有して形成することも可能である。
【0030】
可動型170は、詳細には図示しないが、射出成形装置の型締装置の可動側プラテンに取り付けられる可動側取り付け板における図示上側つまり固定型110側の面に可動側受け板が固定される。この可動側受け板の図示上面には、枠状の可動側型板が固定されているとともに、この可動側型板の内側に、製品キャビティをそれぞれ形成するコア部材が固定される。また、これらのコア部材の中央部には、それぞれエア吹出しブッシュが貫通状態で固定される。さらに、両コア部材の図示上面には、それぞれ固定型110の両外周側スタンパー押えの内周側に固定型110及び可動型170の開閉方向へ摺動自在に嵌合する円柱形状の凸部が形成される。すなわち、この凸部及びエア吹出しブッシュの図示上面と外周側スタンパー押えの内周面とキャビティ部材及びゲートブッシュの図示下面との間に製品キャビティが形成されるようになっている。なお、凸部の外周側には、外周側スタンパー押えの内周面との間に介在するスライドベアリングが設けてある。
【0031】
可動側受け板には、両エア吹出しブッシュ内に臨む一対の開口孔が貫通形成されており、これらの開口孔の図示上部には、それぞれ筒状の突き出しピンが固定型及び可動型の開閉方向へ摺動自在に組み込まれる。これらの突き出しピンは、その図示下部に形成されたフランジ部が開口孔内に形成された段差面と開口孔内に固定された第1の押え板との間に位置していることにより摺動範囲が規制される。また、突き出しピンは、そのフランジ部と段差面との間に装着されたスプリングにより、可動側受け板に対して図示下方へ付勢される。そして、突き出しピンは、エア吹出しブッシュ内を摺動自在に貫通して図示上側の先端面が製品キャビティに臨んでいる。なお、突き出しピンの外周面とエア吹出しブッシュ及び開口孔の内周面との間にはそれぞれスライドベアリングが設けてある。
【0032】
突き出しピンの内側には、それぞれ押圧部材としての押圧ピンが型開閉方向へ摺動自在に組み込まれる。これらの押圧ピンは、その図示下部に形成されたフランジ部が可動側受け板の開口孔の図示下部に位置しており、第1の押え板と可動側取り付け板を貫通して可動側受け板に固定された第2の押え板との間にフランジ部が位置していることにより摺動範囲が規制されている。また、押圧ピンの円柱形状の図示上部は、突き出しピン内を摺動自在に貫通して、固定型110側のバルブピンに同軸的に対向している。そして、押圧ピンとバルブピンの弁部は同径になっており、これらの弁部は突き出しピン内に挿脱自在かつ摺動自在に嵌合するようになっている。なお、押圧ピンの外周面と突き出しピンの内周面および第2の押え板との間にはそれぞれスライドベアリングが設けてある。
【0033】
押圧ピンのフランジ部と第2の押え板との間には突き出し板が固定型110及び可動型170の開閉方向へ所定範囲可動に組み込まれる。これらの突き出し板には連動ピンが固定されており、これらの連動ピンは、押圧ピンのフランジ部及び第1の押え板を貫通して先端が突き出しピンに当接している。また、突き出し板は、この突き出し板と第1の押え板との間に装着されたスプリングにより固定型1と反対側へ付勢されている。
【0034】
一対の押圧ピン及び一対の突き出し板は、それぞれ射出成形装置の可動側プラテン側に露出しており、射出成形装置に設けられたモータなどの駆動装置により押されて独立に駆動されるものである。
【0035】
(柱状マニホールドユニット)
次に、固定側110に設けられる柱状マニホールドユニット140について図4乃至図8を参照して説明する。
【0036】
図4は、本発明の実施形態に係る柱状マニホールドユニット140を示す概略平面図である。図4に示すように、本発明の実施形態に係る柱状マニホールドユニット140は、複数の柱状マニホールド120と、複数の接続パイプ122と、複数の射出ノズル124と、複数のモータ駆動シリンダ111と、を備える。
【0037】
複数の柱状マニホールド120は、円柱状の形状で内部中央が円形に穿孔される。この柱状マニホールドの形状は円柱状が好ましいが、円柱状に限定されるわけではなく、例えば、四柱状や六角柱状などであってもよい。
【0038】
複数の接続パイプ122は、それぞれ2つの柱状マニホールド120間を接続する。柱状マニホールドは、中央部に対して側面から円形に穿孔されて開通された複数のパイプ接続孔を備え、複数の接続パイプ122は、それぞれこのパイプ接続孔に接続される。接続パイプ122は、金属で形成することが好ましく、高温下での変質がなく、耐圧性、引張強度に優れていることから油圧配管用精密炭素鋼管又はSUS系を用いることがより好ましい。
【0039】
複数の柱状マニホールド120と複数の接続パイプ122との接続は、カシメ加工(パイプカシメ工具等による加工)によって行うため、ろう付け等の接合方法を用いる必要がなく、取り外しが自在であり、射出ノズル124点数の増減に応じて作業員が簡単に増設等を行うことができる。カシメ加工で接続するだけであるが、柱状マニホールド120に穿孔するパイプ接続122の孔の直径と、接続パイプ122の外径、及び接続パイプ122の厚さを調整することで樹脂漏れのない接続が可能となる。ここで、接続パイプ122の厚さは、接続パイプ122内部を流れる樹脂の圧力に応じて決定する。カシメ加工で接続された接続パイプ122は、内部を流れる樹脂の圧力により拡径されて接続がより密接となり、樹脂漏れ等のない接続が可能となる。
【0040】
このように、円柱状の形状で内部中央が円形に穿孔された柱状マニホールド120、柱状マニホールド120の中央部に対して側面から円形に穿孔されて開通された複数のパイプ接続孔に複数の接続パイプ122を接続する構成を取ることで、マニホールドユニット140全体の重量を軽減するとともに、射出ノズルの設置点数を容易に変更できる。また、金属板にランナーを穿孔するガンドリル加工等の特殊な加工が必要ないため、製作に長時間を要することがない。なお、射出ノズルの設置点数を増加する場合、柱状マニホールドの数及び接続パイプの数を増やし、従前のマニホールドユニットに追加するだけである。なお、この時、接続パイプの長さを調整し、短い接続パイプに変更することで、マニホールドユニット全体の接地面積を増加させることなく射出ノズルの設置点数を増加可能である。
【0041】
(ヒータユニット)
図5は、本発明の実施形態に係る柱状マニホールド120に接続される接続パイプ122を示す概略断面図である。本発明の実施形態に係る射出成形用金型100は、ホットランナー方式を採用し、柱状マニホールド120及びランナーをヒータで加熱して、ランナー内の樹脂の固化を防止している。柱状マニホールド120にはヒータを捲回している。またランナーを加熱するため、図5に示すように、本発明の実施形態に係る接続パイプ122は、接続パイプ122の外側を絶縁体で被覆し、その上にヒータ182を捲回してさらに絶縁体183で被覆し、接続パイプ122の外側を絶縁体183とその内部に埋設せれたヒータ182からなるヒータユニット180で外装する(即ち、外周を覆う)ようにした。これによって、接続パイプ122全体が過熱されるため、接続パイプ122内における樹脂の固化が起きず、また、接続パイプ122に外装する(外周を覆う)ため、射出ノズル124点数の増減に伴って接続パイプ122を増減する場合でも、簡単にヒータを増減することができる。
【0042】
ここで、接続パイプ122にヒータ182を巻きつける方法の例について説明する。図6(a)乃至(f)及び図7(a)乃至(b)は、接続パイプ122に取り付けるヒータユニット180の製造方法を示す概略図である。まず、図6(a)に示すように、孔が形成されたプレート184上に接続パイプ122を配置する。次に、図6(b)に示すように、接続パイプ122にゴム型186をセットする。このゴム型186は、パイプに溝付き(らせん溝)の型が形成されたものを用いる。次に、図6(c)に示すように、ゴム型186に絶縁材料を流し、絶縁材料を固化させる。絶縁材料としては、電圧を絶縁できる材料であれば、いかなる材料を用いてもよい。次に、図6(d)に示すように、ゴム型186から絶縁体が形成された接続パイプ122を取り出し、次に、図6(e)に示すように、絶縁体に形成されたらせん溝に沿ってヒータ182を巻きつける。次に、図6(f)に示すように、ヒータ182を巻きつけた接続パイプ122を再度プレート184に配置し、ゴム型188をセットする。次に、図7(a)に示すように、ヒータ182が巻かれた絶縁体全体に絶縁材料を流し、固化させる。この工程によって、ヒータユニット180を備える接続パイプ122を形成することができる。なお、本発明に係る射出成形用金型100を備える射出成形装置は、ヒータ182の温度を制御するための制御部を備える。
【0043】
(モータ駆動シリンダとその効果)
本発明の実施形態に係る射出成形装置では、ゲート点数の増加の自在性を確保するため、従来の油圧シリンダ又はエアーシリンダより小さい配置スペースで配置できるモータ駆動シリンダ111を用い、ゲート(及び対応するノズル)点数の増加の自在性を確保することを可能にした。また、モータ駆動シリンダ111を用いているため、シリンダの動作はモータのON・OFFのみで制御できる。従って、従来の油圧シリンダ又はエアーシリンダを用いた射出成形用金型では対応が困難であった複数のノズル毎の開閉の制御が可能となった。これにより、例えば、樹脂の射出を、中央部のノズルを開いて樹脂を射出した後中央部のノズルを閉じ、次いで中央部に隣接するノズルを開いて樹脂を射出して閉じる動作を、中央部のノズルから順次周辺部のノズルへと切り替えていく等の制御が可能となり、樹脂の流入が比較的困難な個所や、肉厚の薄い箇所等への樹脂流入が容易にできるようになった。さらに、ゲート点数を増加することで従来の射出成形用金型装置に比して、低圧での射出成形が可能となった。そして、この結果、金型の肉厚を減少させることが可能となり、金型全体の重量を軽減できた。
【0044】
そこで以下に上述したモータ駆動シリンダ111の構成及びその作用を説明する。本発明に係る射出成形用金型100は、射出ノズル124の開閉を制御するバルブピンに接続されるシリンダが、モータで駆動される。従来の射出成形用金型では、油圧シリンダ又はエアーシリンダを用いていた。これらのシリンダは大きな接地面積を必要とするため、射出ノズルの配置点数を増加する場合隣接するシリンダ同士の接地面積が障害となり、射出ノズルの多点配置を困難にする場合があった。そこで、本発明に係る射出成形用金型100においては、モータと、モータの回転を減速する減速機と、モータの回転を上下動に変換するギヤ等からなる変換装置と、バルブピンに接続されるシリンダと、を備えるモータ駆動シリンダ111を開発し、射出ノズル124毎にモータ駆動シリンダ111をそれぞれ配設した。また、各モータ駆動シリンダ111は制御装置に接続され、制御装置によるモータのON、OFFの制御により、キャビティに成形用樹脂を注入するゲートの開閉が制御される。
【0045】
このモータ駆動シリンダ111の作用を説明する。自動車ドアトリムの成形に際しては、まず固定型110と可動型170とを閉じて、これら固定型110及び可動型170の間に製品キャビティ150を形成する。固定型110及び可動型170を閉じた後、モータ駆動式シリンダ111の駆動によりバルブピンを可動型170側へ移動させる。これにより、固定型110側のバルブピンの弁部が可動型170側の筒状の突き出しピン内に嵌合し、ゲートが開放された状態になる。なお、バルブピンにより押されて可動型170側の押圧ピンは固定型110と反対側へ移動する。この状態で、射出成形装置の射出ノズル124から溶融した熱可塑性樹脂を射出する。この樹脂の射出を、中央部のノズルを開いて樹脂を射出した後中央部のノズルを閉じ、次いで中央部に隣接するノズルを開いて樹脂を射出して閉じる動作を、中央部のノズルから順次周辺部のノズルへと切り替えていく等の制御が可能となり、樹脂の流入が比較的困難な個所や、肉厚の薄い箇所等への樹脂を流入し、開放されたゲートから製品キャビティ150内にそれぞれ充填する。
【0046】
その後、図示していない駆動装置により両押圧ピンを固定型110側へ移動させる。これらの駆動ピンにより押されて両バルブピンも移動し、そのバルブピンの弁部がゲートにそれぞれ嵌合し、これらのゲートが閉じられる。つまり、ゲートにおいて、製品キャビティ150内の樹脂と材料通路内の樹脂とが互いに切断される。
【0047】
さらに、製品キャビティ150内の樹脂、つまり製品である自動車ドアトリムが十分に冷却して固化した後、固定型110と可動型170とを開ける。この固定型110と可動型170とを開ける際に、成形された自動車ドアトリムはまず固定型110から離れる。さらに、図示していない駆動装置により突き出し板を固定型110側に移動させる。これに伴い、連動ピンにより押されて突き出しピンも固定型110側に移動し、この突き出しピンにより突き出されて自動車ドアトリムが可動型170から離れる。こうして離型された自動車ドアトリムは、図示していない取り出し装置により取り出される。
【0048】
その後、再び固定型110と可動型170とが閉じて以上の工程が繰り返される。そして、以上の工程を通じて、スプルーブッシュ内のスプルー、柱状マニホールドのランナーおよびバルブ本体の材料通路内の樹脂は、ヒータユニットの加熱により常時溶融状態に保たれる。
【0049】
本実施形態によれば、ゲート点数の増加の自在性を確保するため、小さい配置スペースで配置できるモータ駆動シリンダを用い、ゲート(及び対応するノズル)点数の増加の自在性を確保することを可能にした。また、モータ駆動シリンダを用いているため、シリンダの動作はモータのON・OFFのみで制御できる。したがって、複数のノズル毎の開閉の制御が可能となった。さらに、ゲート点数を増加することで、低圧での射出成形が可能となり、この結果、金型の肉厚を減少させることが可能となり、金型全体の重量を軽減できる。
【0050】
また、本発明においては、接続パイプ124の外周を絶縁体で被覆し、その上にヒータを捲回してさらに絶縁体で被覆する。即ち、接続パイプ124の外周にヒータを埋設した絶縁材を配設する。これによって、接続パイプ全体が過熱されるため、接続パイプ内のランナーにおける樹脂の固化が起きず、また、パイプに外装する(外周を覆う)ため、ノズル点数の増減に伴ってパイプを増減する場合でも、簡単にヒータユニット180を増減することができる。
【0051】
(射出成形装置)
次に、本発明の実施形態に係る射出成形装置1について図面を説明する。図8は、本発明の実施形態に係る射出成形装置1を示すブロック図である。射出成形装置1は、上述した射出成形用金型100と、温度制御部2と、モータ駆動シリンダ制御部3と、を備える。射出成形用金型100については、上述したため説明は省略する。温度制御部2は、射出成形用金型100のヒータユニット180の温度を制御する。モータ駆動シリンダ制御部3は、シリンダの動作を制御し。これによって複数のノズル毎の開閉を制御する。
【0052】
本発明の実施形態に係る射出成形装置1は、ヒータユニット180の温度を温度制御部2で制御し、シリンダの動作及び複数のノズル毎の開閉をモータ駆動シリンダ制御部3で制御することによって、ゲート点数を増加しても、温度制御及びシリンダの動作及び複数のノズル毎の開閉を制御できるため、低圧での射出成形が可能となり、この結果、金型の肉厚を減少させることが可能となり、金型全体の重量を軽減できる。
【実施例】
【0053】
次に、本発明の実施例について説明する。本実施例では自動車ドアトリムを成形し、成形するときのゲート点数、すなわち柱状マニホールドユニット140のモータ駆動シリンダ111、柱状マニホールド120、接続パイプ122及び射出ノズル124の点数を4点、6点、18点と順次増やしていった場合の圧力の推移及び充填時間についてゲート点数毎に解析を行った。自動車ドアトリムの仕様は、縦895mm×横735mm×高さ115mm、重さ1.5tである。表1には、自動車ドアトリムに用いた材料の物性データに示し、表2には、自動車ドアトリムの成形条件を示し、表3には、射出成形用金型のサイズを示す。
【0054】
【表1】

【0055】
【表2】

【0056】
【表3】

【0057】
表1乃至表3に示した材料物性データ、成形条件、射出成形装置のサイズの条件で自動車ドアトリムを成形し、このときの圧力分布を図9に示す。図9では、ゲート点数、ゲートレイアウト、最高圧力、解析結果をそれぞれ示した。図9に示した解析結果の圧力分布において、ゲート点数を増やすにしたがって充填時間に対する圧力分布が均一になっていくため、低い圧力で十分に充填できることがわかった。
【0058】
図10は、ゲート点数を変更した時の各充填時間を示す。図10では、ゲート点数、ゲートレイアウト、充填時間、解析結果をそれぞれ示した。図10に示した解析結果の充填分布において、充填パターンを変更した成形では、充填時間をほぼ同じにして成形すると、ゲートの数が増えるにつれ、成形圧力は、4点のゲート点数と18点のゲート点数とを比較すると、充填圧力が約半分になる。したがって、圧力に余裕ができるため、充填時間を更に早くすることで、品質の良い製品が得やすいと推測できる。また、この結果から、成形条件の幅として考えると、成形方法を自由に設定できる範囲が広くなりことがわかった。
【0059】
図9に示した圧力分布から各ゲート点数における最高圧力をプロットしたグラフを、図11に示す。図11では、縦軸に圧力(MPa)を示し、横軸にゲート点数を示す。図11に示すように、4点のゲート点数と18点のゲート点数とを比較すると、充填圧力が約半分になり、製品形状に多少の凹凸が見られても、ゲート点数が18点の場合充填時間が短いことで、末端部分の未充填部分が充填される圧力も大きく変わらない。
【0060】
次に、本実施例で製作した射出成形用金型100の柱状マニホールドユニット140と従来の射出成形用金型のマニホールドユニットとを比較した場合について図12(a)及び(b)を参照して説明する。図12(a)は、従来の射出成形用金型のマニホールドユニットの断面図を示し、(b)は、本実施例の射出成形用金型100の柱状マニホールドユニット140の断面図を示す。図12(b)に示した、本実施例に係る隣接するバルブピンの中心位置間の距離xは、図12(a)に示した、従来の隣接するバルブピンの中心位置間の距離x’に比べて約1/2以下に短縮されていることがわかる。また、図12(b)に示した、本実施例に係るモータ駆動シリンダの厚さa及び柱状マニホールドの厚さbは、図12(a)に示した、本実施例に係る油圧シリンダ又はエアーシリンダの厚さa’及びマニホールドの厚さb’と比べて約3割厚さが減っていることがわかる。このように、本実施例に係る射出成形用金型100の柱状マニホールドユニット140は、従来の射出成形用金型のマニホールドユニットと比べて、射出成形用金型の隣接するバルブピンの中心位置を短縮することができ、厚さを減少させることができる。
【0061】
以上説明したとおり、本発明の実施例において、柱状マニホールドユニット、ヒータユニット及びモータ駆動シリンダを備える本発明に係る射出成形用金型100を用いることにより、低圧での射出成形が可能となり、この結果、金型の肉厚を減少させることが可能となり、金型全体の重量を軽減できた。
【符号の説明】
【0062】
1…射出成形装置、2…温度制御部、3…モータ駆動シリンダ制御部、100…射出成形用金型、110…固定型、170…可動型、111…モータ駆動シリンダ、120…柱状マニホールド、122…接続パイプ、140…柱状マニホールドユニット、124…射出ノズル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
柱状であって、内部中央に底面側から円形に穿孔された中央穿孔と、前記柱状の側面側から前記中央穿孔と接続するように穿孔された1以上のパイプ接続孔を有する複数の柱状マニホールドと、
前記パイプ接続孔の内径より小さい外径を有し、2つの前記柱状マニホールドのパイプ接続孔を接続する所定の肉厚を有する金属製の複数の接続パイプと、を備える柱状マニホールドユニットを有し、
前記複数の接続パイプは、前記パイプ接続孔に接続された後、カシメ加工によって拡径されて前記パイプ接続孔に密着されることを特徴とする射出成形用金型。
【請求項2】
前記柱状マニホールドは、円柱状であることを特徴とする請求項1に記載の射出成形用金型。
【請求項3】
駆動モータと、
前記駆動モータに接続される減速機と、を有し、
射出ノズル内に配設されたバルブピンに接続されて前記駆動モータによって駆動されるシリンダを前記射出ノズル毎にさらに備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の射出成形用金型。
【請求項4】
前記駆動モータと接続され、前記駆動モータの駆動を制御することにより前記射出ノズル毎に配設されたバルブピンを駆動させて、前記射出ノズルに対応するゲートの開閉を制御する制御装置をさらに備えることを特徴とする請求項3に記載の射出成形用金型。
【請求項5】
前記接続パイプの前記所定の肉厚は、前記パイプ内を流れる溶融樹脂の圧力に応じて決定されることを特徴とする請求項1乃至請求項4に記載の射出成形用金型。
【請求項6】
前記接続パイプは、SUS系ステンレスパイプ又は油圧配管用精密炭素鋼管であることを特徴とする請求項1乃至請求項5に記載の射出成形用金型。
【請求項7】
前記接続パイプ上に外装される第1の絶縁材と
前記第1の絶縁材上に捲回されたヒータと、
前記ヒータ上に外装される第2の絶縁材と、
を有するヒータユニットをさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項6に記載の射出成形用金型。
【請求項8】
前記請求項1乃至請求項7に記載の射出成型用金型を備えることを特徴とする射出成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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