説明

射撃訓練システム

【課題】 訓練者のどの部位に命中したのか判断できると共に、レーザ光を遮る障害物があったとしても命中の有無を判断することができる射撃訓練システムを提供する。
【解決手段】 レーザを発射する発射部と、レーザ発射のトリガー信号を出力するトリガー部と、レーザの発射の方向情報を出力するセンサ部と、発射部の位置情報を出力する第1GPS部と、方向情報・トリガー信号・位置情報を送信する第1無線通信部と、レーザを受光して検出信号を出力する受光部と、受光部の位置情報を出力する第2GPS部と、検出信号・位置情報を送信する第2無線通信部と、方向情報・トリガー信号・位置情報・検出信号を受信し、検出信号がある場合は検出信号に基づき、ない場合は位置情報・方向情報・トリガー信号に基づき、レーザが受光部に命中したかを判断する射撃訓練システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、訓練者がGPS(Global Position System)と無線機を所持した状態でレーザ発射器により他の訓練者と相互に射撃訓練を行う射撃訓練システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、射撃のシミュレーションを行うための装置として、いくつかのタイプの射撃訓練装置が知られている。その一つとして、レーザ光を発射するレーザ銃を用いて射撃のシミュレーションを行うための装置がある。
特許文献1(特許第3905440号)は、GPSを携帯した訓練者がレーザ小銃を用いてGPSを携帯した他の訓練者を標的として射撃訓練を行う射撃シミュレーション装置であり、レーザ小銃の方向情報と射撃側訓練者のGPS情報と標的側訓練者のGPS情報から命中を判断するものであり、途中に草等のレーザ光を遮る障害物があっても確実な判断ができる。
【特許文献1】特許第3905440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、特許文献1の従来技術では、GPS情報とレーザ小銃の方向センサに頼った判断であり、訓練者のどこに命中したのかまでは特定することができなかった。
本発明は、訓練者のどの部位に命中したのか判断できると共に、レーザ光を遮る障害物があったとしても命中の有無を判断することができる射撃訓練システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
課題を解決するための一実施形態は、
レーザを発射する発射部と、
前記発射部が前記レーザを発射するタイミングでトリガー信号を出力するトリガー部と、
前記発射部に設けられ、方向情報を出力するセンサ部と、
現在の第1位置情報を出力する第1GPS部と、
前記センサ部からの方向情報と前記トリガー部からのトリガー信号と前記第1GPS部からの第1位置情報を送信する第1無線通信部と、
前記発射部から発射されたレーザを受光して検出信号を出力する受光部と、
前記受光部の現在の第2位置情報を出力する第2GPS部と、
前記受光部からの検出信号と前記第2GPS部からの第2位置情報を送信する第2無線通信部と、
前記第1無線通信部から方向情報とトリガー信号と第1位置情報を受信し、前記第2無線通信部から検出信号と第2位置情報を受信する受信部と、前記受光部からの検出信号がある場合は検出信号に基づいて前記レーザが前記受光部に命中したかどうかを判断し、前記受光部からの検出信号がない場合は、前記第1位置情報と第2位置情報と前記方向情報と前記トリガー信号のタイミングに基づき、前記レーザが前記受光部に命中した可能性があるかどうかを判断する判断部を有する判断装置と、
を具備することを特徴とする射撃訓練システムである。
【発明の効果】
【0005】
標的側となる訓練者の受光部にレーザが当たった場合は命中と判断するため、受光部の取り付け位置に従って命中部位を特定することができる。また、草等によりレーザが遮られて受光部に当たらない場合でも、射撃側及び標的側のGPSとレーザ小銃の方向により命中の有無を判断することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、この発明の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る射撃訓練システムの一例を示す概観図、図2は、射撃訓練システムの構成の一例を示す構成図、図3は、他の構成の一例を示す構成図である。
本発明に係る射撃訓練システム1は、図1乃至図3において、一例として、射撃側の訓練者P1と、標的側の訓練者P2が参加するものであり、射撃側の訓練者P1が装備する射撃訓練装置10−1と、標的側の訓練者P2が装備する射撃訓練装置10−2と、両者と通信を行なって命中や評価を判断する判断装置である中央局30を具備する。また、射撃と標的の両方を備える射撃訓練装置10を具備する。
射撃側の訓練者P1が装備する射撃訓練装置10−1は、全体の動作を制御する制御部11と、衛星と通信を行なうことで現在の位置情報を検出して出力するGPS受信器12と、中央局30と無線通信を行なう無線通信部13と、レーザ送信器20を有する。レーザ送信器20は、少なくとも、レーザ発射のタイミングであるトリガー信号を外部に出力するトリガー部21と、レーザ送信器20の指す方向を検出して方向信号を出力する方向検知部22と、レーザ送信器20の種類(模擬している火器の種類)や使用者を示している識別データ23と、レーザを発射するレーザ素子24を有している。レーザ送信器20から発射されるレーザ光には、識別データ23がのせられる。
【0007】
また、レーザ送信器20は、それぞれ図示されてはいないが、射撃音等の音声信号を生成する発音部と、発音部からの音声信号に応じて射撃音等を出力するスピーカと、レーザ素子24がレーザを発射するためのタイミングを与える引金と、トリガー信号を制御部11に有線でまたはワイヤレス信号で供給するインターフェース部を有する。
【0008】
また、標的側の訓練者P2が装備する射撃訓練装置10−2は、全体の動作を制御する制御部11と、衛星と通信を行なうことで現在の位置情報を検出して出力するGPS受信器12と、中央局30と無線通信を行なう無線通信部13と、上述したレーザ送信器20から発射されたレーザ光を検出して検出信号を出力する複数の受光部14と、無線通信部13から警告信号を受けて訓練者P2にレーザが命中したことを音声や光等で知らせる報知部15を有している。なお、各受光部14は訓練者P2の各部位に取り付けられ、それぞれ異なる検出信号を出力する。また、射撃訓練装置10では、両方の構成を有する。
【0009】
また、中央局30は、射撃訓練の結果を管理する管理部31と、射撃訓練装置10−1,10−2の無線通信部13と無線通信を行う無線通信部32と、訓練者データ、射撃データ、損耗データ、評価データ等を格納しているデータベース部33を有している。
また、さらに、本発明に係る射撃訓練システム1は、訓練者が射撃側であると同時に標的側となる訓練においては、図3のように、射撃訓練装置10,10’は、両方の装備を有するものである。なお、射撃側や被射撃側は、必ずしも人である必要はなく、車両や建物などの固定物であってもよい。
【0010】
(処理動作)
次に、上述した構成をもつ射撃訓練システム1の評価処理を含む処理動作について、図4及び図5に示すフローチャートを用いて詳細に説明する。また、図6は、射撃訓練システムが生成する射撃データ、損耗データ、評価データの一例を示す説明図である。
【0011】
射撃訓練装置10,10’,10−1,10−2…に対して、中央局30の管理部31は、はじめに、各訓練者のGPS受信器12からの位置情報を無線通信部32を介して取得する(ステップS11)。さらに、管理部31は、各訓練者の小銃装置である各レーザ送信器20の方向検知部22からの方向データ(方向、方位角、仰角等)を無線通信部32を介して取得する(ステップS12)。ここで、方向データは、一例として、X軸、Y軸、Z軸で表される3次元の方向情報である。次に、管理部31は、各訓練者のトリガー部21からのトリガー信号を無線通信部32を介して検出するべく監視する(ステップS13)。すなわち、中央局30の管理部31は、各訓練者のうちの誰かが小銃装置であるレーザ送信器20の引き金を引いたかどうかを無線通信部32を介して監視している。
【0012】
管理部31が無線通信部32を介してトリガー信号を検出すると、管理部31は、このトリガー信号のタイミングで訓練者の受光部14の検出信号が無線通信部32を介してあったかどうかを判断する(ステップS14)。検出信号が検出できれば、管理部31は、この検出信号がアクティブであれば、検出信号に従って、小銃装置であるレーザ送信器20からのレーザは訓練者の受光部14に命中したと判断する(ステップS15)。
【0013】
一方、管理部31は、無線通信部32を介して検出信号が検出できない場合(ステップS14)、トリガー信号のタイミングで、トリガー信号のあった訓練者のGPS受信器12からの位置情報と、方向検知部22からの方向情報に基づき、その位置情報(x、y、z)からその方向情報(x、y、z)が示す先に、他の訓練者のGPS受信器12からの位置情報(x、y、z)が存在するかどうかを判断する(ステップS16)。ここで、命中の判定において、標的となる位置情報(x、y、z)は、一例として、位置情報(x、y、z)を中心とした立方体の領域(x±α、y±α、z±α)(αは被命中者の大きさに応じて設定される定数)として扱ってもよい。または、位置情報(x、y、z)を球の中心とした定数αを半径とする球の領域として判断してもよい。このように各訓練者の双方のGPS受信器12の位置情報と、小銃装置であるレーザ送信器20の方向情報により、命中したかどうかを判断することで、受光部14からの検出信号がある場合は訓練者のどの部位に命中したのかを特定することができ、また、レーザ光が草等の障害物で遮られて受光部14がレーザ光を検出しない場合でも、GPS受信器12の位置座標に応じて命中の有無を判断することができる。
【0014】
また、図5のフローチャートが示すステップ21においては、さらに、受光部14の検出程度、射撃を行った訓練者と標的となった訓練者の距離、小銃の種類等、その他の要素を加味して、訓練者の命中の程度を評価して評価データを生成する(ステップS21)。
【0015】
管理部31は、命中したものと判断すると、警告信号を無線通信部32を介して発信することで、無線通信部13を介して、報知部15のブザー音や発光ダイオード等の発光により命中した訓練者P2に命中の事実を知らせる(ステップS17)。このとき、標的となった訓練者P2だけでなく、管理部31は、レーザを命中させた訓練者P1に命中の事実を例えば命中された場合とは異なる警告信号を送信して、命中された場合とは異なる音色や異なる発光色の発光により訓練者P1に知らせてもよい
【0016】
管理部31は、命中した場合もしない場合もこの記録を判定データとしてデータベース部33に記録する(ステップS18)。また、図5のフローチャートのステップS21におけるように判定結果に基づく評価データを生成した場合は、判定データ(射撃データ・損耗データ)と評価データをデータベース部33に記録する(ステップS22)。
【0017】
このとき、管理部31の記録するデータの一例として、図6に示すように、複数の訓練者毎に、射撃データ、損耗データ、評価データ等を記録してもよい。
ここで、射撃データは、訓練者が行う射撃に関するデータであり、『管理情報、時刻情報、方向情報、命中度(部位)、相手情報、距離情報、…』等を記録することが好適である。
ここで、管理情報とは、基本情報であり例えば機体番号や管理ソフトウェアのバージョン等の情報、時刻情報とは、射撃を行った日時情報、方向情報とは、射撃を行った際の方向検知部22からの方向情報、命中度(部位)とは、受光部14からの検出信号によって特定される命中部位や火器の種類に応じた損耗の程度又はGPS受信器12の位置情報の程度「標的の位置情報とどれくらいの距離で離れているか」や火器の種類に応じた程度、相手情報とは、射撃により標的となった訓練者の情報、距離情報とは、射撃した訓練者と標的となった訓練者のGPS受信器12の位置情報の距離をいう。
【0018】
また、損耗データは、訓練者が射撃されたことによる損耗の程度を示すデータで、『管理情報、時刻情報、累積損耗データ、命中度(部位)、受光データ、相手情報、方向情報、距離情報、…』等を記録することが好適である。
時刻情報とは、訓練者が射撃された日時情報、累積損耗データとは、命中度に応じて累積が加算される損耗の程度を示すデータ、命中度(部位)とは、受光部14からの検出信号によって特定される命中の部位や火器の種類に応じた損耗の程度又はGPS受信器12の位置情報の程度「標的の位置情報とどれくらいの距離で離れているか」や火器の種類に応じた程度、相手情報とは、射撃を行ってきた訓練者の情報、距離情報とは、射撃した訓練者と標的となった訓練者のGPS受信である。
【0019】
また、評価データは、上記した複数回の射撃の射撃データと複数回の射撃による損耗の損耗データを総合的に評価したデータであり、『射撃データに基づく評価データ、損耗データに基づく評価データ、射撃データ・損耗データの履歴に基づく評価データ、全訓練者の評価データに基づく相対的な評価データ…』等が記録されることが好適である。射撃データに基づく評価データとは、複数回の訓練者の射撃を総合的に評価したデータであり、損耗データに基づく評価データとは、複数回の射撃による訓練者の損耗を総合的に評価したデータであり、射撃データ・損耗データの履歴に基づく評価データとは、例えば、訓練者の過去1週間(又は1ヶ月等の一定期間)の射撃データ・損耗データの履歴を統計的に処理したデータであり、全訓練者の評価データに基づく相対的な評価データとは、一人の訓練者だけの評価データでなく他の全訓練者の評価データと比べた当該訓練者の相対的な評価データであり、全体の訓練者中の順位とか偏差値等、訓練の条件と関連付けた評価データ等である。
【0020】
このように、データベース部33にて、複数の訓練者毎に、射撃データ、損耗データ、評価データ等を長期に渡って記録し、また、記録結果に基づいて再び評価することで、訓練者の訓練の状況が理解しやすくなり、訓練者の意欲を向上させ、効率的な射撃訓練を行うことができる。
【0021】
以上記載した様々な実施形態により、当業者は本発明を実現することができるが、更にこれらの実施形態の様々な変形例を思いつくことが当業者によって容易であり、発明的な能力をもたなくとも様々な実施形態へと適用することが可能である。従って、本発明は、開示された原理と新規な特徴に矛盾しない広範な範囲に及ぶものであり、上述した実施形態に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係る射撃訓練システムの一例を示す概観図。
【図2】本発明の一実施形態に係る射撃訓練システムの構成の一例を示す構成図。
【図3】本発明の一実施形態に係る射撃訓練システムの他の構成の一例を示す構成図。
【図4】同じく射撃訓練システムの射撃処理の一例を示すフローチャート。
【図5】同じく射撃訓練システムの射撃処理の他の一例を示すフローチャート。
【図6】同じく射撃訓練システムが生成する射撃データ、損耗データ、評価データの一例を示す説明図。
【符号の説明】
【0023】
1…射撃訓練システム、10、10’、10−1、10−2…射撃訓練装置、11…制御部、12…GPS受信部、13…無線通信部、14…受光部、15…報知部、20…レーザ送信器、21…トリガー部、22…方向検知部、23…識別データ部、30…中央局、31…管理部、32…無線通信部、33…データベース部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザを発射する発射部と、
前記発射部が前記レーザを発射するタイミングでトリガー信号を出力するトリガー部と、
前記発射部に設けられ、前記レーザの発射の方向情報を出力するセンサ部と、
前記発射部の現在の第1位置情報を出力する第1GPS部と、
前記センサ部からの方向情報と前記トリガー部からのトリガー信号と前記第1GPS部からの第1位置情報を送信する第1無線通信部と、
前記発射部から発射されたレーザを受光して検出信号を出力する受光部と、
前記受光部の現在の第2位置情報を出力する第2GPS部と、
前記受光部からの検出信号と前記第2GPS部からの第2位置情報を送信する第2無線通信部と、
前記第1無線通信部から方向情報とトリガー信号と第1位置情報を受信し、前記第2無線通信部から前記検出信号と前記第2位置情報を受信する受信部と、前記受光部からの検出信号がある場合は検出信号に基づいて前記レーザが前記受光部に命中したかどうかを判断し、前記受光部からの検出信号がない場合は、前記第1位置情報と第2位置情報と前記方向情報と前記トリガー信号のタイミングに基づき、前記レーザが前記受光部に命中した可能性があるかどうかを判断する判断部を有する判断装置と、
を具備することを特徴とする射撃訓練システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−78212(P2010−78212A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−246117(P2008−246117)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【出願人】(000001122)株式会社日立国際電気 (5,007)
【Fターム(参考)】