説明

尋常性ざ瘡の長期間の処置のためのアダパレンおよび過酸化ベンゾイルの使用

尋常性ざ瘡の長期間の処置のためのアダパレンおよび過酸化ベンゾイルの使用。本発明は、尋常性ざ瘡の長期間の処置を提供するために、および尋常性ざ瘡の長期間の処置の方法を提供するために、それを必要とする患者に投与するための局所薬剤の調製におけるアダパレンおよび過酸化ベンゾイルを含む組成物の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尋常性ざ瘡の長期間の処置を提供するための、ならびにアダパレンおよび過酸化ベンゾイル(BPO)を含む組成物での尋常性ざ瘡の長期間の処置の方法も提供するための、それを必要とする患者に投与するための局所薬剤の調製におけるアダパレンおよびBPOを含む組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
尋常性ざ瘡は皮膚科の診療への来診の20%を構成し、十代の人口の大多数が罹患する一般的な皮膚障害である。ざ瘡のマネージメントは、特に、疾患が慢性であり、処置に対する反応が変化しやすいことを考慮すると取組みがいのあるものである。
【0003】
ざ瘡のマネージメントは、併用治療および長期間の治療戦略を必要とすることが多い(例えば、Thiboutot D.、「New treatments and therapeutic strategies for acne」、Arch Family Med、2000年、9巻、179〜187頁; Gollnick H、Cunliffe W、Berson Dら、「Management of acne, a report from a Global Alliance to Improve Outcomes in Acne」、J Am Acad Dermatol.、2003年、49巻(補完1)、S1〜S37頁)。ざ瘡の病変は上首尾であった処置レジメンを中断した後に再発することが示されているので、多くのざ瘡患者には維持療法が必要である(Gollnick H、Cunliffe W、Berson Dら、「Management of acne, a report from a Global Alliance to Improve Outcomes in Acne」、J Am Acad Dermatol.、2003年、49巻(補完1)、S1〜S37頁;Thielitz A、Helmdach M、Ropke E-M、Gollnick H、「Lipid analysis of follicular casts from cyanoacrylate strips as a new method for studying therapeutic effects of antiacne agents」、Br J Dermatol、2001年、145巻、19〜27頁)。ざ瘡の病変の望ましい低減を達成するために、およびこの通常再発する状態の短期間の改善を維持する見込みを増大するために、多くのざ瘡患者には長期間の治療が必要である(Tenaud Iら、「In vitro modulation of TLR-2, CD1d and IL-10 by adapalene on normal human skin and acne inflammatory lesions」、Exp. Dermatol.、2007年6月、16巻(6)、500〜6頁;およびThiboutot DMら、「Treatment consi
derations for inflammatory acne: clinical evidence for adapalene 0.1% in combination therapies」、J Drugs Dermatol.、2006年9月、5巻(8)、785〜94頁、再考、Erratum、J Drugs Dermatol、2007年1月、6巻(1)目次)。
【0004】
急性ざ瘡の処置に利用可能な薬剤は様々であるのに関わらず、尋常性ざ瘡の患者の長期間の処置の安全性および有効性に関する研究は殆どない。
【0005】
現在、最も有効な面皰溶解剤は、経口のイソトレチノインおよび局所のレチノイドである(Cunliffe WJ、Holland DB、Clark SM、Stables GI、「Comedogenesis: some new aetiological, clinical and therapeutic strategies」、Br J Dermatol、2000年、142巻、1084〜1091年)。経口のイソトレチノインは、毒性および催奇性の可能性があるので、長期間の治療には非実用的な選択である。レチノイドなどの局所の抗ざ瘡薬剤は皮膚の刺激の増大に関連することがあり、したがって潜在的な維持療法の耐容性に対して注意深い考慮を払わなければならない。皮膚の副作用は、特に無症候性の状態を処置する場合に、処置の遵守の見込みを低下させることがある(Koo J.、「How do you foster medication adherence for better acne vulgaris management」、SKINmed、2003年、2巻、229〜33頁;およびHaider A、Shaw JC、「Treatment of acne vulgaris」、JAMA.、2004年、292巻、726〜735頁)。
【0006】
ざ瘡の処置に利用可能な局所および全身の治療には、レチノイド、過酸化ベンゾイル(BPO)、抗生物質、およびホルモン治療が含まれる。尋常性ざ瘡は、濾胞の角化亢進、皮脂の生成の増大、アクネ菌(P.acnes)の増殖、および炎症を含めた複数の病原学的因子に関与しているので(Thiboutot DMら、「Treatment considerations for inflammatory acne: clinical evidence for adapalene 0.1% in combination therapies」、J Drugs Dermatol、2006年9月、5巻(8)、785〜94頁、再考、Erratum、J Drugs Dermatol、2007年1月、6巻(1):目次; Pariser DM、Westmoreland P、Morris A、Gold MH、Liu Y、Graeber M、「Long-term safety and efficacy of a new fixed-dose combination of adapalene 0.1% and benzoyl peroxide 2.5% for the treatment of acne vulgaris」、J Drugs Dermatol、2007年、6巻(9)、899〜905頁; Thiboutot DM、Bucko A、Eichenfield Lら、「Adapalene-benzoyl peroxide, a new fixed-dose combination for the treatment of acne vulgaris: results of a randomized, multi-centre, double-blind, controlled study」、J Am Acad Dermatol.、doi:10.1016/j.jaad.2007.06.006.、2007年7月24日オンラインで公開)、局所のレチノイドおよび抗菌物質などの補完的な機序を有する薬剤を利用する併用治療が、長期間の治療戦略の一部分として用いられている。
【0007】
現在の指針は、ざ瘡の最も重症な症例以外の全てに局所のレチノイドおよび抗菌物質での併用治療を早期に開始し、その後過酸化ベンゾイル(BPO)ありの、またはそれなしの局所のレチノイド維持療法を続けることを推薦している(Thiboutot DMら、J Drugs Dermatol、2006年9月、5巻(8)、785〜94頁、再考、Erratum、J Drugs Dermatol、2007年1月、6巻(1)、目次)。さらなる薬剤を使用すると処置レジメンの複雑さが増大するが、併用治療はざ瘡の多面的な病態生理学的性質を是正するのに効果的である。一定用量の併用生成物は、患者が毎日忘れずに摂取しなければならない薬剤の数を低減することによって、患者および医師に対するざ瘡のマネージメントの複雑さを低減する手助けとなることができ、したがって処置の遵守を潜在的に増大する。恩恵が可能であるのに関わらず、ざ瘡の処置に利用可能な一定用量の併用生成物は比較的少数しか存在しない。局所のレチノイドを局所の抗生物質と組み合わせる1つの生成物の他に、いくつかのBPO-抗生物質の組合せが利用可能である(Harkaway KS、McGinley KJ、Foglia ANら、「Antibiotic resistance patterns in coagulase-negative staphylococci after treatment with topical erythromycin, benzoyl peroxide, and combination therapy」、Br J Dermatol.、1992年、126巻(6)、586〜90頁;Thielitz A、Krautheim A、Gollnick H.、「Update in retinoid therapy of acne」、Dermatol Ther.、2006年、19巻(5)、272〜9頁;「Adapalene-benzoyl peroxide, a new once daily fixed-dose combination for the treatment of acne vulgaris: a randomized, bilateral (split-face), dose-assessment study of cutaneous tolerability in healthy subjects」Cutis. Submitted)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】WO03/055472
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Thiboutot D.、「New treatments and therapeutic strategies for acne」、Arch Family Med、2000年、9巻、179〜187頁
【非特許文献2】Gollnick H、Cunliffe W、Berson Dら、「Management of acne, a report from a Global Alliance to Improve Outcomes in Acne」、J Am Acad Dermatol.、2003年、49巻(補完1)、S1〜S37頁
【非特許文献3】Thielitz A、Helmdach M、Ropke E-M、Gollnick H、「Lipid analysis of follicular casts from cyanoacrylate strips as a new method for studying therapeutic effects of antiacne agents」、Br J Dermatol、2001年、145巻、19〜27頁
【非特許文献4】Tenaud Iら、「In vitro modulation of TLR-2, CD1d and IL-10 by adapalene on normal human skin and acne inflammatory lesions」、Exp. Dermatol.、2007年6月、16巻(6)、500〜6頁
【非特許文献5】Thiboutot DMら、「Treatment considerations for inflammatory acne: clinical evidence for adapalene 0.1% in combination therapies」、J Drugs Dermatol.、2006年9月、5巻(8)、785〜94頁
【非特許文献6】再考、Erratum、J Drugs Dermatol、2007年1月、6巻(1)目次
【非特許文献7】Cunliffe WJ、Holland DB、Clark SM、Stables GI、「Comedogenesis: some new aetiological, clinical and therapeutic strategies」、Br J Dermatol、2000年、142巻、1084〜1091年
【非特許文献8】Koo J.、「How do you foster medication adherence for better acne vulgaris management」、SKINmed、2003年、2巻、229〜33頁
【非特許文献9】Haider A、Shaw JC、「Treatment of acne vulgaris」、JAMA.、2004年、292巻、726〜735頁
【非特許文献10】Pariser DM、Westmoreland P、Morris A、Gold MH、Liu Y、Graeber M、「Long-term safety and efficacy of a new fixed-dose combination of adapalene 0.1% and benzoyl peroxide 2.5% for the treatment of acne vulgaris」、J Drugs Dermatol、2007年、6巻(9)、899〜905頁
【非特許文献11】Thiboutot DM、Bucko A、Eichenfield Lら、「Adapalene-benzoyl peroxide, a new fixed-dose combination for the treatment of acne vulgaris: results of a randomized, multi-centre, double-blind, controlled study」、J Am Acad Dermatol.、doi:10.1016/j.jaad.2007.06.006.、2007年7月24日オンラインで公開
【非特許文献12】Harkaway KS、McGinley KJ、Foglia ANら、「Antibiotic resistance patterns in coagulase-negative staphylococci after treatment with topical erythromycin, benzoyl peroxide, and combination therapy」、Br J Dermatol.、1992年、126巻(6)、586〜90頁
【非特許文献13】Thielitz A、Krautheim A、Gollnick H.、「Update in retinoid therapy of acne」、Dermatol Ther.、2006年、19巻(5)、272〜9頁
【非特許文献14】「Adapalene-benzoyl peroxide, a new once daily fixed-dose combination for the treatment of acne vulgaris: a randomized, bilateral (split-face), dose-assessment study of cutaneous tolerability in healthy subjects」Cutis. Submitted
【非特許文献15】Chellquist E.M.およびGorman W.G.、Pharm. Res.、1992年、9巻、1341〜1346頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかし、現在、ざ瘡の指針からの短期間および長期間両方の処置の推薦と一致する組合せである、BPOおよび局所のレチノイドとの併用生成物は存在しない。
【0011】
したがって、短期間および長期間両方のざ瘡の処置に適合する有効で安全な薬物が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、尋常性ざ瘡の長期間の処置に用いられる、アダパレンおよび過酸化ベンゾイルを含む、安全で有効な組成物を提供する。
【0013】
したがって、本発明で示す第一の実施形態は組成物の使用であり、組成物は、好ましい一実施形態においては尋常性ざ瘡の長期間の処置を提供するための、それを必要とする患者に投与するための局所薬剤の調製におけるアダパレンおよびBPOを含む一定用量の組合せであり、局所薬剤の投与パターンは、少なくとも4カ月間、好ましくは少なくとも6カ月間、より好ましくは少なくとも9カ月間、優先的には少なくとも12カ月間、治療有効量の組成物を投与することを含む。
【0014】
局所薬剤は、毎日、好ましくは1日1回投与する。別の一実施形態では、局所薬剤を、2日毎に、好ましくは1日1回投与する。両方の場合において、局所薬剤を晩に洗浄後に投与する。
【0015】
好ましい一実施形態において、局所薬剤はゲル組成物である。
【0016】
局所薬剤は、組成物の全重量に対して、少なくとも0.001重量%のアダパレンを含み、優先的には0.01重量%から2重量%のアダパレンを含み、好ましくは0.01重量%から0.5重量%、最も好ましくは0.1重量%から0.3重量%を含む。薬剤は、また、組成物の全重量に対して、0.025重量%から20重量%のBPOを含み、好ましくは0.5重量%から10重量%のBPOを含み、最も好ましくは2重量%から10重量%の、優先的には2.5重量%から5重量%のBPOを含む。
【0017】
本発明の別の一実施形態は、尋常性ざ瘡の処置におけるその生物学的反応を維持するために、患者に投与するための局所薬剤の調製におけるアダパレンおよびBPOを含む組成物の使用であり、局所薬剤の投与パターンは、少なくとも4カ月間、好ましくは少なくとも6カ月間、より好ましくは少なくとも9カ月間、好ましくは少なくとも12カ月間、組成物の全重量に対して0.01重量%と0.5重量%の間のアダパレンおよび2重量%と10重量%の間のBPOを罹患している皮膚に適用することを含む。
【0018】
特に、本発明の一実施形態は、尋常性ざ瘡の処置におけるその生物学的反応を維持するための、患者に投与するための局所薬剤の調製におけるアダパレンおよびBPOを含む組成物の使用であり、局所薬剤の投与パターンは、少なくとも6カ月間、優先的には少なくとも9カ月間、より好ましくは少なくとも12カ月間、1日1回、0.1重量%のアダパレンおよび2.5重量%のBPOを罹患している皮膚に適用することを含む。
【0019】
これらの実施形態によると、局所薬剤を、優先的には20個から100個の非炎症性の病変、および/または20個から50個の炎症性の病変を含み、活動性の結節または嚢胞を含まない罹患している皮膚に適用し、好ましい実施形態では組成物がゲル組成物である。
【0020】
別の一実施形態では、本発明は、許容できる製薬上の媒体中にアダパレンおよび過酸化ベンゾイルを含む有効量の組成物を罹患している皮膚に局所適用することを含む、それを必要とする患者における尋常性ざ瘡の長期間の処置を提供する方法に関する。組成物を、少なくとも4カ月間局所適用し、優先的には少なくとも6カ月間、好ましくは9カ月間、より好ましくは少なくとも12カ月間適用する。
【0021】
「薬学的に許容できる媒体」の語は、皮膚、粘膜、および外皮と適合性である媒体を意味する。
【0022】
「一定の組合せ」の語は、これらの有効成分が、適用点までこれらを一緒に送達する同じビヒクル/媒体(単一製剤)において一定用量で組み合わされる組合せを意味すると理解すべきである。好ましくは、一定の組合せの形態における薬剤組成物はゲルであり、この場合、2つの有効成分は、製造の間に同じビヒクルにおいて分散され、密接に混合され、ビヒクルはゲルを適用する間にこれらを一緒に送達する。
【0023】
より詳しくは、本発明は、この一定用量の組合せの長期間の臨床プロファイルの評価を開示するものであり、12カ月の試験では、最高12カ月間1日1回使用した場合、尋常性ざ瘡を有する対象の処置において、1日1回のアダパレン-BPOの一定用量の組合せのゲルの安全性および有効性を評価する。
【0024】
本発明において、1日1回の適用および患者にとって快適な使用を可能にする、皮膚科学的な疾患に対する効率的な組成物を開発することも追及される。
【0025】
しかし、BPOおよびレチノイドを含む組成物の調合は困難を呈する。第一に、BPOの効率は、皮膚と接触した場合にそれが分解することに関連している。実際に、分解とともに、フリーラジカルの酸化的な性質は望ましい効果をもたらす。BPOの最適の効率に関すると、したがって、貯蔵中にその分解を防ぐのが重大である。
【0026】
さらに、BPOは、調合された生成物においてその調合が困難になる、不安定な化合物である。
【0027】
BPOの可溶性および安定性は、Chellquistらによって、エタノールにおいて、プロピレングリコールにおいて、およびポリエチレングリコール400(PEG400)と水との混合物において研究された(Chellquist E.M.およびGorman W.G.、Pharm. Res.、1992年、9巻、1341〜1346頁)。本発明らは、溶液中のBPOは溶媒およびその濃度にしたがって多少分解していることに気づいた。
【0028】
PEG400(0.5mg/g)における、エタノールにおける、およびプロピレングリコールにおけるBPOの分解時間は、40℃で、それぞれ14日、29日、および53日である。このような分解は市販の生成物とは適合性ではない。
【0029】
アダパレンおよびBPOの両方を含む組成物を調製するのに解決しなければならない別の技術上の問題点は、通常のレチノイドが天然の酸化に感受性であり、可視光線および紫外線に感受性であり、BPOが強力な酸化剤であるのであれば、同じ製剤中のこれらの化合物の化学的および物理的な適合性である。
【0030】
実際、BPOは天然の酸化に感受性なレチノイドの速やかな分解を引き起こし、トレチノインの50%が2時間以内に分解され、95%が24時間以内に分解される。
【0031】
それとは反対に、アダパレンがレチノイドである本発明の組成物を考慮すると、アダパレンの分解は24時間以内に現れなかった。
【0032】
本発明の状況において、BPOは、遊離の、またはカプセル化された形態で、例えば、あらゆる多孔性の支持体内に、吸着されたBPOの形態または吸収されたBPOの形態で用いることができる。例えば、Cardinal Health社によってMicrosponges P009A Benzoyle peroxydeの商標名で販売されているマイクロスポンジなどの多孔性の微粒子によって構成されるポリマー系内にカプセル化されているBPOであってよい。
【0033】
アダパレン(6-[3-(1-アダマンチル)-4-メトキシフェニル]-2-ナフトエ酸)は、強力なレチノイドおよび抗炎症の性質を有するナフトエ酸誘導体である。アダパレンは、尋常性ざ瘡、ならびに角化、増殖、および分化の様々な障害を含めた他のレチノイド感受性皮膚疾患を局所処置するために開発された。アダパレンは、主にケラチン合成細胞の分化を制御すること(面皰溶解効果および新たな面皰の防止)によって作用するが、抗炎症作用も有する。特に、アダパレンは耐容性の良好な局所のレチノイドである。アダパレンは、「アルコール性ローション」液剤、水性ゲル剤、およびクリーム剤の形態で、0.1%の重量濃度のDifferin(登録商標)の商品名で販売されている。これらの組成物は、ざ瘡の処置を企図するものである。
【0034】
本発明はアダパレンの塩も包含する。アダパレンの塩は、薬学的に許容できる塩基、特に、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、およびアンモニアなどの無機塩基、またはリジン、アルギニン、もしくはN-メチルグルカミンなどの有機塩基と形成する塩を意味する。「アダパレン塩」の語は、ジオクチルアミンおよびステアリルアミンなどの脂肪族アミンと形成される塩も意味する。
【0035】
特許出願WO03/055472は、さらに、アダパレンおよび過酸化ベンゾイル(BPO)を含む安定な薬剤組成物を記載している。
【0036】
アダパレンに付随する、重症ではない有害反応で報告されているものには、局所の刺激反応の一般的な徴候および症状(紅斑、剥皮、乾燥皮膚、掻痒症、灼熱、および刺痛(stinging))、局所のアレルギー反応のまれな症例(適用部位の浮腫、接触湿疹、もしくは皮膚炎)、または他の皮膚および付属器の障害(色素沈着低下および色素沈着過剰の非常にまれな症例、光線過敏反応、薄毛、発毛、顔面のワキシング(waxing)後の皮膚の糜爛)が含まれる。
【0037】
しかし、アダパレンおよび他の有効なレチノイドは、短期間(12週間)の臨床試験においてのみ試験されていた。したがって、さらに細菌の耐性を誘発しない、尋常性ざ瘡の長期間の処置の安全で有効な方法を開発することが必要とされている。
【0038】
BPOは十分確立されている抗菌薬であり、アクネ菌の抑制に対して局所の抗生物質よりも有効であり、微生物の耐性の証拠がない2。レチノイドは耐性に対して選択的な圧力を生成しないので、この組合せは抗生物質に比べて上皮性の細菌の耐性の発生を低減することが予想される。
【0039】
さらに、実施例において示すように、アダパレンおよび過酸化ベンゾイル(BPO)の一定用量の組合せである本発明の組成物は、現在の長期間の試験において十分に耐容し、アダパレンの単一治療と同様の安全性および耐容性のプロファイルを有する。
【0040】
有利なことに、本発明の組成物は、組成物の全重量に対して、0.0001重量%と20重量%の間のBPOおよび0.0001重量%と20重量%の間のアダパレンを含み、優先的には組成物の全重量に対して、それぞれ0.025重量%と10重量%の間のBPOおよび0.01重量%と2重量%の間のアダパレンを含む。
【0041】
好ましくは、および例として、ざ瘡を処置するための組成物において、BPOは組成物の全重量に対して、2重量%と10重量%の間の、優先的には2.5重量%と5重量%の間の濃度で用いられる。アダパレンは、この種の組成物において、組成物の全重量に対して、0.01重量%と1重量%の間、優先的には0.01重量%と0.5重量%の間、最も好ましくは0.1重量%から0.3重量%の濃度において用いられる。
【0042】
アダパレンおよびBPOの粒子が、少なくとも80%の粒子、好ましくは少なくとも90%の粒子が25μm未満の直径を有し、少なくとも99%の粒子が100μm未満の直径を有するようなサイズであると有利である。
【0043】
本発明の一目的は、アダパレンおよびBPOを組み合わせる組成物を用いることによって、長期間ベースで尋常性ざ瘡を処置する有効な方法を提供することである。
【0044】
本発明の別の一目的は、短期間の試験に比べて強度のより高いアダパレンおよびBPOを用いることによって、有効性が優れ、耐容性が匹敵する尋常性ざ瘡の長期間の処置を提供することである。
【0045】
本発明は、少なくとも2日毎に、好ましくは少なくとも2日毎に1回、アダパレンおよびBPOを含む組成物の治療有効量を含む局所薬剤(ここでは皮膚科学的調製物である)を患者の罹患している皮膚領域に局所適用することを含む、尋常性ざ瘡に罹患している患者を処置するための方法にも関する。より好ましくは、組成物を毎日、好ましくは少なくとも6カ月間1日1回、より好ましくは少なくとも12カ月間1日1回投与する。
【0046】
局所薬剤は皮膚科学的調製物であり、晩に洗浄後に、好ましくは1日1回罹患している皮膚領域に適用することができる。
【0047】
より詳しくは、本発明は、尋常性ざ瘡の処置におけるその生物学的反応を維持するための、患者に投与するための局所薬剤の調製におけるアダパレンおよびBPOの使用を提供し、局所薬剤の投与パターンは、1日1回、3カ月を超えて、好ましくは少なくとも4カ月間、より好ましくは少なくとも6カ月間、より好ましくは少なくとも9カ月間、最も好ましくは少なくとも12カ月間、0.1重量%のアダパレンおよび2.5重量%のBPOを投与することを含む。
【0048】
本発明は、1日1回、3カ月を超えて、好ましくは少なくとも4カ月間、より好ましくは少なくとも6カ月間、より好ましくは少なくとも9カ月間、最も好ましくは少なくとも12カ月間、0.1重量%のアダパレンおよび2.5重量%のBPOを含む局所薬剤を患者の罹患している皮膚に局所適用することを含む、尋常性ざ瘡の長期間の処置の方法にも関する。
【0049】
局所薬剤は、局所投与に適合性の形態、特に、ゲル剤、クリーム剤、ローション剤、乳剤、懸濁剤の形態における。
【0050】
好ましくは、局所薬剤は、0.1重量%のアダパレンおよび2.5重量%のBPOを含む、ゲル組成物、より好ましくは水性ゲル組成物であり、少なくとも4カ月間、より好ましくは少なくとも6カ月間、最も好ましくは少なくとも9カ月間、好ましくは少なくとも12カ月間、罹患している皮膚に適用される。局所薬剤は、罹患している皮膚が、20個から100個の非炎症性の病変、20個から50個の炎症性の病変を含み、活動性の結節または嚢胞を含まない場合に特に効率的である。
【0051】
本発明、その作動上の利点、およびその使用によって達成される特定の目的をよりよく理解するために、それにおいて本発明の好ましい実施形態を説明し、記載する図面および記載事項を参照しなければならない。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】病変の計数値におけるパーセント変化の中央値における時間経過を示す図である。病変の計数値におけるパーセント変化の中央値(ITT集団、観察データ、および12カ月LOCF)。エンドポイント:試験の間に観察された入手可能な最後のデータ。ベースライン後のデータが入手可能でなかった場合は、ベースライン値を用いた。
【図2】局所の皮膚の刺激(ベースラインより悪いもの、観察データ、および最終のスコア)の時間経過を示す図である。エンドポイントで各時点のベースラインよりも悪いスコアを有する対象のパーセント値。
【図3】最終のスコアおよび最悪のスコアを呈する局所の耐容性(安全集団)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
「最終」は、ベースライン後の期間の間に観察された入手可能な最後のデータを意味する。
【0054】
「最悪」は、ベースライン後の期間の間の最高の重症度が観察されたデータを意味する。
【0055】
本発明は、0.1重量%のアダパレンおよび2.5重量%の過酸化ベンゾイルを含むゲル組成物を使用することによる、尋常性ざ瘡の長期間の処置の方法を提供する。このような生成物は、特許出願WO03/055472に記載されている。以下に、上記で言及した組成物でざ瘡を長期関する臨床上の利点を明らかに実証する試験を詳しく述べる。
【0056】
(実施例)
組成物の全重量あたりアダパレン0.1重量%およびBPO2.5重量%を含む一定用量の組合せのゲルでの、尋常性ざ瘡の長期間の処置の臨床試験
試験デザインおよび対象
米国における28施設で行った多施設の、非盲検の、単一アームの試験において、アダパレン-BPOの一定の組合せのゲルの長期間の安全性および有効性を評価した。尋常性ざ瘡を有する対象が、最高12カ月間、顔面にアダパレン-BPOを1日1回適用した。安全性および有効性の評価は、ベースライン時、1週目、2週目、ならびに1、2、4、6、8、10、および12カ月目に行った。出産の可能性のある女性全員に対して、ベースライン時および最終試験のための来所時に、尿による妊娠試験を求めた。対象は、随時、あらゆる理由で自由に試験を中止することができた。全試験を完了しなかった対象は、可能な場合には完全に評価しなければならなかった。
【0057】
全452人の対象が、米国における28箇所の試験施設に登録した。全452人の対象が試験の薬物療法を少なくとも1回適用し、安全および有効性両方の(ITT)集団において分析された。30個から100個の非炎症性の顔の病変、20個から50個の炎症性の顔面の病変を有し、活動性の結節または嚢胞のない、12歳またはそれを超える年齢の男性および女性の対象が試験に登録した。ある種の局所および全身の処置を受けている対象には、特定のウォッシュアウト期間を必要とした。除外基準により、イソトレチノイン療法を必要とする重症のざ瘡、または妨害性の処置を必要とする他の皮膚科学的状態を有する対象の登録を禁止した。女性は、妊娠中、子育て中、または妊娠計画中である場合は除外し、評価を妨害する顔ひげを有する男性も除外した。
【0058】
【表1】

【0059】
安全性および有効性の評価
安全性および耐容性を、局所の顔面の耐容性および有害事象の評価によって評価した。各来所時に、調査者は紅斑、落屑、乾燥、刺痛/灼熱を0(なし)から3(重症)の範囲のスケールに対して点数付けした。各来所時に有害事象を評価した。ルーチンの検査データ(血液学、血液化学、および尿分析)をスクリーニング時、6カ月目、および12カ月目に収集した。
【0060】
有効性の変数は、ベースラインからの病変の計数値の減少のパーセント(合計、炎症、および非炎症)、ならびに対象のざ瘡の評価(0[完全な改善]から5[悪化]のスケールに対して)であった。病変の計数値は、鼻を除いた顔面のみに対して評価した。
【0061】
有効性および安全性の変数
表2は、この試験の間に評価した測定のフローチャートである。
【0062】
【表2】

【0063】
調査者(または責任のある被指名人)は、非炎症性の病変の計数値(開放面皰および閉鎖面皰)、ならびに炎症性の病変の計数値(丘疹および膿疱)ならびに結節/嚢胞からなる有効性の評価を行った。病変の計数値は顔面だけから取ったものである。対象のざ瘡の評価も記載した。
【0064】
非炎症性および炎症性の病変を、額、左側および右側の頬、ならびに下あごの輪郭上のアゴ上(鼻を除外する)で計数した。病変の計数の合計をスポンサーが計算した。以下の定義を用いた:
非炎症性病変
開放面皰:開放の毛穴口後に詰め込まれている皮脂腺性の材料の塊(黒色面皰)
閉鎖面皰:閉鎖の毛穴口後に詰め込まれている皮脂腺性の材料の塊(白色面皰)
炎症性病変
丘疹:直径1センチメートル未満の、小型の、固体の盛り上がり
膿疱:黄色〜白色の浸出物を含んでいる、小型の、限局性の皮膚の盛り上がり
結節/嚢胞:一般に直径1.0cmを超える、限局性の、盛り上がった病変
【0065】
対象は、以下のスケールにしたがって、ベースラインの来所時と比較して、6カ月目および12カ月目/早期終了の来所時の顔面のざ瘡を評価した。
【0066】
【表3】

【0067】
評価した安全性の変数は、局所の耐容性(紅斑、落屑、乾燥、および刺痛/灼熱)、有害事象(AE)、ならびにルーチンの検査データ(血液学、血液化学、および尿分析)であった。局所のレチノイドで処置している間に予想された副作用には、紅斑、落屑、乾燥、および刺痛/灼熱が含まれる。試験の間、これらの予想される事象の経過を局所の耐容性として評価した。
【0068】
紅斑、落屑、乾燥、および刺痛/灼熱を、以下のスケールに対して点数付けした。
【0069】
【表4】

【0070】
【表5】

【0071】
【表6】

【0072】
【表7】

【0073】
紅斑、落屑、および乾燥は調査者が評価した。刺痛/灼熱は、調査者が対象とディスカッションした後に記録した。
【0074】
皮膚の刺激の徴候および症状の局所の耐容性の尺度は、予想される徴候および症状の重症度が対象の要望または調査者の判断で彼/彼女の試験への参加の休止が生じるほどである場合のみに、有害作用とみなした。刺激をマネージメントするための投与レジメンの変更(1日おきの投与など)は、対象の試験への参加の休止とみなさなかった。
【0075】
有害事象(AE)
AEは、調査用生成物に関連していても、またはいなくても、医薬(調査用)生成物の使用に時間的に付随するあらゆる好ましくない、意図しない徴候、症状、または疾患と定義した。あらゆる新しい徴候、症状、もしくは疾患、または存在する徴候、症状、もしくは疾患の強度における臨床上意義のある増大をAEとみなした。これには、偶発的もしくは意図的な過剰投与または誤用後に対象が罹患するあらゆる新しい徴候または症状が含まれた。試験薬物の有効性の欠如は、それが他の好ましくない医学的な出来事をもたらさなければAEとみなさなかった。しかし、処置している疾患の臨床上意義のある悪化はAEとみなした。
【0076】
妊娠はAEとはみなさなかったが、重要な医学的事象であった。
【0077】
AEの重症度を、軽度、中程度、または重度と点数付けた。AEの試験薬物に対する関係は、関連あり(おそらく、多分、もしくは絶対に関連あり)または関連なし(ありそうもない、もしくは絶対に関連なし)と点数付けた。
【0078】
重症の有害事象(SAE)
SAEは、あらゆる投与量が:
死をもたらした、
命を脅かした(すなわち、事象のときに対象が死の危険性にあったが、より重症であった場合は仮定上死をもたらしていた可能性がある事象ではなかった)、
入院患者の入院または既存の入院の延長を必要とした(診断試験のためだけの入院、有害事象に関連するものだったとしても、対象が試験に入る前に計画されていたあらゆる介入のための選択的な入院、またはデイケア施設への入院は、それ自体SAEを構成するものではなかった)、
持続性の、または著しい能力障害/不能をもたらした、または
先天性異常/先天性欠損をもたらしたあらゆる都合の悪い医学的な出来事、あるいは
対象を危険に曝した、または上記に列挙した結果の1つを防ぐための介入を必要とした他の重要な医学的事象
と定義された。
【0079】
ルーチンの検査試験
血液および尿の試料を、表1の試験フローチャートに特定したスケジュールにしたがって得た。以下の血液化学を評価した:タンパク質、アルブミン、グロブリン、A/G比、(総)ビリルビン、アラニントランスアミナーゼ(ALT)、アスパラギン酸トランスアミナーゼ(AST)、アルカリホスファターゼ、γ-グルタミルトランスフェラーゼGGT、乳酸脱水素酵素(LDH)、血中尿素窒素(BUN)、クレアチニン、尿酸、(総)コレステロール、トリグリセリド、およびグルコース。
【0080】
以下の血液学パラメータを評価した:ヘマトクリット、ヘモグロビン、赤血球数、平均赤血球容積(MCV)、平均赤血球血色素(MCH)、平均赤血球血色素濃度(MCHC)、白血球数、および血小板数。
【0081】
以下に対するルーチンの尿分析を行った:色調、外観、比重、尿反応pH、グルコース、タンパク(定性)、ケトン、潜血、ビリルビン、亜硝酸塩、および白血球。
【0082】
統計学的分析
これは非盲検試験であったので、記述的なデータの提示だけを行った。正式の統計上の仮説は試験しなかった。記述統計学を用いて全てのデータを概要した。連続変数では、各来所時に収集したデータ、および各ベースライン後の来所におけるベースラインからの変化/パーセント変化に対して、対象の数(N)、平均、標準偏差(SD)、中央値、最小値および最大値を提供する。カテゴリー変数では、各カテゴリーに対する頻度およびパーセント値を提供する。
【0083】
対象の特徴および有効性のデータに対する概要は全て、処置を意図した(ITT)集団をベースにしたものであった(この集団は、試験薬剤を処方した、登録した全ての対象からなっていた)。安全性のデータは全て、安全性集団(少なくとも1回、試験薬物を適用した全ての対象)をベースにしたものである。
【0084】
処置期間によってデータを概要するためのアルゴリズムにしたがって、分析のための来所を帰属した。同じ間隔内に複数の測定値が存在する場合は、目標の試験日に最も近い測定値を分析用に用いた。目標の日に比べてタイミングが等しく異なる2つの測定値を採用した場合、名目上の来所回数からのデータ(症例の報告書式上に記載されている)を分析に用いた。例えば、360日目および367日目に測定値を収集した場合、360日目に収集したデータを12カ月目の分析に用い、367日目に収集したデータをエンドポイントの分析において用いた。全てのデータを分析用に来所を帰属させるのに用いたが、いくつかのデータは来所のウインドウ内に複数の観察があったので分析に用いなかった。
【0085】
処置した対象全てに対する対象データを、試験の4つの四半期:「ベースラインから<3カ月」、「3カ月から<6カ月」、「6カ月から<9カ月」、および「9カ月から1年」によって概要した。各期間に対して危険性のある対象の数(すなわち、各期間の最初に入手可能な対象)を表にした。危険性のある対象の数を、各対象の処置期間をベースに決定する。これらの計算に対して、各月を30日であると考え、7日の来所ウインドウを用いた。したがって、「ベースラインから<3カ月」は1日目から82日目、「3カ月から<6カ月」は83日目から172日目、「6カ月から<9カ月」は173日目から262日目、「9カ月から1年」は263日目から352日目、ならびに「1年およびそれを超える」は353日およびそれを超える。
【0086】
同じ原理によって、対象の完了/中断を、対象によって、および四半期によって概要した。各四半期間の中断率を、期間内に中断した対象の数を所与の期間の間の危険性のある対象の数で除すことによって計算した。
【0087】
分析すべき、計画された安全性の変数は以下の通りであった。
1.局所の耐容性の評価(紅斑、落屑、乾燥、刺痛/灼熱)をベースラインおよび各ベースライン後の来所時に、「0(=なし)」から「3(=重症)」のスケール上で評価した。
2.各来所時にAEを評価した。
3.ルーチンの検査データ(血液学、血液化学、尿分析)を、スクリーニング時、6カ月目、および12カ月/早期終了の来所時に収集した。
【0088】
分析すべき、計画された有効性の変数は:
1.計画されたベースライン後の来所時の、顔面の炎症性、非炎症性、および全体の病変の計数値におけるベースラインからのパーセント変化。
2. 6カ月目、および12カ月/早期終了の来所時の、「5」(悪化)から「0」(完全な改善)のスケールに対する、対象のざ瘡の評価。
【0089】
非炎症性の病変の計数値は開放面皰と閉鎖面皰の和であった。炎症性の病変の計数値は丘疹と膿疱の和であった。他の病変の計数値は結節と嚢胞の和であった。病変の計数値の和は、炎症性、非炎症性、および他の病変の和であった。対象のざ瘡の評価を、5(悪化)から0(完全な改善)のスケール上で評価した。
【0090】
処置を意図した(ITT)集団は、薬剤を処方した、登録した全ての対象と定義した。安全性の集団は、試験薬剤を少なくとも1回適用した、登録した全ての対象と定義した。主なプロトコールの逸脱のある対象を表にした。プロトコールによる(PP)集団は、この試験用に規定されなかった。
【0091】
全データの分析を、予め確立されている分析計画にしたがって行った。約300人の対象が少なくとも6カ月間アダパレン-BPOに確実に曝露され、100人の対象が最高1年間確実に曝露されるように、450人のサンプルサイズを選択した。安全性データを全て、安全性集団をベースに概要した。有害事象を頻度表において表にし、経時の有害事象のプロファイルを評価するために四半期によって概要した。耐容性の変数(紅斑、落屑、乾燥、刺痛/灼熱)を重症度スコアによって概要した。スクリーニング対最後のベースライン後の来所時の検査データに対するシフトの表を、各検査パラメータに対して表にした。全ての有効性データを、ITT集団をベースに概要した。
【0092】
各来所時に収集した病変の計数データ、ならびにベースライン後の来所時のベースラインからの変化およびパーセント変化を概要した。対象のざ瘡の評価を表にした。記述統計学を用いてデータを概要した。正式の統計上の仮説は試験しなかった。
【0093】
安全性の集団を、無作為化し、少なくとも1回処置した全ての患者と定義した。処置を意図した(ITT)集団には、試験薬剤を処方した無作為化された対象が全て含まれていた。各時点で、観察されたデータを用いて、および最終観測値持越し法(LOCF)を用いて有効性の評価を評価した。主なプロトコールの偏差を有する対象を表にした。プロトコールによる(PP)集団は、この試験用に規定されなかった。
【0094】
結果
対象の処理およびベースラインの特徴
全452人の対象が試験に登録した(表1)。全452人の対象が、試験薬剤を少なくとも1回適用し、ITTおよび安全性の集団において分析された。全397人(87.8%)の対象を3カ月またはそれを超えて評価し、366人(81.0%)を6カ月またはそれを超えて評価し、334人(73.9%)を9カ月またはそれを超えて評価した。全体で327人(72.3%)の対象が12カ月の試験を完了した。曝露の程度の平均(±SD)は294.6(±117.7)日であった。有効性がなかったために中断した対象はなく、有害事象による中断は低かった(2.0%)。ITT集団のベースラインの特徴を表1に概要する。
【0095】
有効性の評価
ITT集団における病変の計数におけるパーセント変化に対する結果を、図1および表8に示す。
【0096】
【表8】

【0097】
12カ月目の来所まで試験に残っていた327人の対象に対して(観察データ)、合計の、炎症性の、および非炎症性の病変の計数における低減のパーセント値は、それぞれ70.8%、76%、および70%であった。ITT LOCFデータを考慮した場合、全体の、炎症性のおよび非炎症性の病変の計数におけるベースラインからの中央のパーセント値の低減は12カ月目で、それぞれ64.9%、69.5%、および65.7%であった。炎症性の、非炎症性の、および合計の病変における低減は、1週目程度の早期から始まって観察された。試験に残っていた患者に対しては、病変の計数は、試験の最初の4カ月を通して低減し続け、低減は試験期間の間維持された。
【0098】
対象の評価は、12カ月のアダパレン-BPO処置での臨床上の改善を実証していた。試験終了時、330人の対象(330/411、80.3%)が中程度の、明らかな、または完全な改善を報告し、45人の対象(45/411、10.9%)が最低限の改善を報告し、36人の対象(36/411、8.8%)が無変化または悪化を報告した。結果は、年齢、性別、または人種に関係なく類似していた。
【0099】
図1は、12カ月の試験の経過の間、顔面のざ瘡に対するアダパレン-BPOの併用治療の効果を説明するものである。
【0100】
【表9】

【0101】
安全性の評価
局所の耐容性の評価
局所の耐容性の変数(紅斑、落屑、乾燥、および刺痛/灼熱)を、重症度スコアによって各来所時の4ポイントスケール(0=なしから3=重症)上で概要した。「最悪」が最高のスコアで、「最終」がベースライン後の期間の間の最終の観察であった場合に、各対象の「最悪」のスコアおよび「最終」のスコアを概要した。
【0102】
局所の耐容性のデータがベースラインのスコアよりも悪い(スコアが高い)対象の数を、各ベースライン後の来所時に表にした。各対象に対する「最悪」および「最終」のスコアがベースラインより高い場合に表にした。
【0103】
全体的に、アダパレン-BPOでの処置は、尋常性ざ瘡を有する対象において最高12カ月間用いた場合、安全で、耐容性が良好だった。試験処置後の紅斑、落屑、乾燥、および刺痛/灼熱の重症度に対するスコアを図2に概要する。試験処置の局所の皮膚の耐容性は試験を通して良好であり、紅斑、乾燥、落屑、および刺痛/灼熱に対する平均の耐容性スコアは、各試験来所時に、全て1(軽度)未満であった。全対象の平均の最悪スコアは、軽度の刺激と一致していた。平均の皮膚の耐容性スコアの最高はベースライン後の最初の試験来所(1週目)に記録され、次いでベースラインスコアに類似のレベルまで低減した。
【0104】
紅斑、落屑、乾燥、および刺痛/灼熱を、ベースライン時および各ベースライン後の来所時に、「0」(=なし)、から「3」(=重症)スケールのスケール上に等級付けした。結果は、各々の徴候および症状に対して同様であった。最悪の重症度のスコアは、概ね、軽度から中程度であり、たまに重症であった。
【0105】
局所の耐容性の評価がベースラインより悪い対象における最悪の重症度のスコアの概要を、表10に提供する。重症の局所の耐容性のスコアの出現率は、全体の徴候および症状の0.4%から3.3%までの範囲であった。
【0106】
【表10】

【0107】
ベースラインのスコアよりも悪かった局所の耐容性の評価のスコアの大半は、紅斑では29.3%、落屑では40.2%、乾燥では45.2%、および刺痛/灼熱では50.8%の対象に対して、アダパレン/過酸化ベンゾイルゲルで処置した第1週の間に報告された(表10)。しかし、紅斑、落屑、および刺痛/灼熱の出現率は急速に低減し、4カ月目までには10%またはそれ未満の対象によって報告された。乾燥の出現率は4カ月目までには12%未満であり、その後の4カ月目では9%と14%の間で試験の残りの間変動した。
【0108】
局所の皮膚の刺激の予想された徴候および症状は、重症度において軽度から中程度であった。重症のスコアを有した対象はほとんどいなかった(表11)。
【0109】
【表11】

【0110】
有害事象
症例の報告書書式(CRF)上に記録された全てのAEを、データ一覧表において示す。
AEは、全対象に対しても概要した。1人の対象は1つを超える事象が報告されても身体組織1つあたり1回だけ計数し、1つを超える出現が報告されてもCOSTART(Coding Symbols for Thesaurus of Adverse Reaction Terms)1つ当たり1回だけ計数した。
四半期によるAEの出現を「ベースラインから<3カ月」、「3カ月から<6カ月」。「6カ月から<9カ月」、および「9カ月から1年」に対して概要した。各期間に対するAEの出現を、期間内にAE発症の日にちのある対象の数を、1期間あたりに危険性のある対象の数によって除して計算した。
AEの概要表を統計分析計画(SAP)に列挙する。
【0111】
試験の経過にわたる有害事象の概要を表12に示す。試験の間、全体で288人の対象(63.7%)が有害事象を経験した。全147人の対象(32.5%)に処置に関連する有害事象(すなわち、「おそらく」、「多分」、または「明らかに関連する」と評価された試験薬物に対する有害事象の関係)があった。最も一般的な処置に関連する有害事象は乾燥皮膚(17.3%)であった(表13)。有害事象の大多数は重症度において軽度または中程度であった。ほとんどの有害事象は、治療の最初の3カ月以内に生じ、その後の来所時に出現は低減した。19人の対象(4.2%)のみに重症の有害事象があり、このうち10人の対象(2.2%)に、少なくともおそらく試験処置に関連すると考えられる重症の有害事象があった。試験の12カ月の経過の間、9人の対象のみに中断をもたらす10個の有害事象があった。これら10個の有害事象のうち、7個が試験処置に関連するものであった。
【0112】
【表12】

【0113】
【表13】

【0114】
5人の対象(5/452、1.1%)に、全部で6つの重症の有害事象(うつ、ブドウ球菌感染症、鎖骨骨折、湿疹、双極性障害、および薬物乱用)があったが、これらは全て非皮膚科学的であり、試験薬物に非関連であった。試験の間、死亡はなく、試験において感作の症例の確定は生じなかった。1年の経過にわたって、ルーチンの検査パラメータ(臨床化学、血液学、および尿分析)において臨床的に関係のある薬物に関連する変化は観察されなかった。10人の対象(10/452、2.2%)に、臨床的に意義のあるベースライン後の検査評価が有害事象として報告されたが、これらは処置に関連するとみなされなかった。
【0115】
この試験は、独特な、レチノイド(アダパレン0.1%)およびBPO2.5%の一定用量の組合せの安全性および有効性の、最初の、長期間の、臨床的な評価である。この1日1回の組合せは、ざ瘡の複数の病理学的要因を是正し、抗生物質耐性に対する危険性なしに、速やかで持続性の有効性を提供する。全体に、試験の結果は、尋常性ざ瘡を有する対象を長期間マネージメントするための、アダパレンおよびBPOの一定用量の組合せのゲル剤の安全で効果的な使用を支持するものである。安全性に関すると、有害事象および皮膚の刺激の症状のほとんどは軽度から中程度であり、試験の早期に生じ、一過性であった。治療を開始するときに毎日保湿剤を使用すると、乾燥皮膚などの一般的な有害事象のほとんどを回避する助けとなり得る。有害事象による中断の率は低く(2.0%)、有効性がないために中断した対象がいなかったことは重要である。臨床的に有意義な炎症性のおよび非炎症性の病変の計数の低減が、1週目ほどの早期に観察され、最高1年間持続した。80パーセント(80%)の対象が、中程度の、明らかな、または完全なざ瘡の改善を報告した。この試験の結果は、以前の12週の、二重盲検のコントロール試験と一致しており、このコントロール試験は、アダパレン-BPOの組合せは有意に大きな病変の低減をもたらし、対応する単一治療に比べて作用の開始が早く、アダパレンの安全性プロファイルは匹敵できることを示していた。
【0116】
ざ瘡は慢性疾患であるので、ざ瘡のマネージメントは、ざ瘡をコントロールし、改善を維持するために長期間の治療戦略を必要とすることが多い。最も重症のざ瘡以外の全てでは補完的な作用機序を有する薬剤との併用治療をできるだけ早く利用し、次いで維持治療を続けるべきである。この試験で観察されたように、アダパレン-BPOの一定用量の組合せの使用を、中程度から重症のざ瘡の、開始の治療および長期間の治療両方に用いることができる。
【0117】
以前の試験は、アダパレンゲル0.1%との併用治療の使用は、他の局所のレチノイドに比べてより耐容性があり、より率の低い有害事象が付随することがあることを示していた25〜29。これら以前の実験と一致して、アダパレンを一定用量の製剤におけるBPOと組合せた場合は、前臨床試験、大規模な二重盲検のコントロール臨床試験、および現在の長期間の試験において耐容性が良好であり、アダパレンの単一治療と同様の安全性および耐容性のプロファイルであった。さらに、耐容性の良好な、一定用量の併用治療はより便利でもあり、ざ瘡の処置レジメンを簡単にし、したがって処置の遵守を潜在的に改善することがある。
【0118】
この試験の結果は、最近公開されたざ瘡の維持試験に報告されているものと適合する。ざ瘡の病変は併用処置のレジメンを中断した後に戻ってしまうことが示されており、したがって多くのざ瘡患者には長期間の治療が必要である。この試験では、ざ瘡の病変はベースラインから約4カ月目まで低減し続け、治療効果は年間を通して維持された。長期間の処置と、その後の無症状性の微小面皰の発生を制限する助けとなり、それによって最初の改善後の疾患の再発を防ぐ上首尾の最初の治療の価値を実証する、発表されている試験はいくつか存在する。例えば、Thiboutotらは、以前のアダパレン-ドキシサイクリンの併用治療試験において上首尾に処置された253人の患者において、ゲルのビヒクルに対して0.1%のアダパレンのゲルの維持効果を評価した。この16週間の試験は、ビヒクルに対して0.1%のアダパレンのゲルでの持続性の処置の意義深い臨床的利点を実証していた。将来の試験では、維持療法としてアダパレン-BPOを適切に評価することが必要とされるが、現在の試験の長期間の安全性および有効性の結果は、この一定用量の組合せでのざ瘡のマネージメントが利用可能な医療設備を拡大することで、短期間および長期間両方の治療をカスタマイズするより大きな柔軟性が提供されることを示唆している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
局所薬剤の投与パターンが、少なくとも4カ月間治療有効量の組成物を投与することを含む、尋常性ざ瘡の長期間の処置を提供するための、それを必要とする患者に投与するための局所薬剤の調製におけるアダパレンおよび過酸化ベンゾイルを含む組成物の使用。
【請求項2】
アダパレンおよび過酸化ベンゾイルを含む組成物が一定用量の組合せである、請求項1に記載の使用。
【請求項3】
局所薬剤を少なくとも6カ月間投与する、請求項1に記載の使用。
【請求項4】
局所薬剤を少なくとも9カ月間投与する、請求項1に記載の使用。
【請求項5】
局所薬剤を少なくとも12カ月間投与する、請求項1に記載の使用。
【請求項6】
局所薬剤を毎日、好ましくは1日1回投与する、請求項1から5に記載の使用。
【請求項7】
局所薬剤を2日毎に投与する、請求項1から5に記載の使用。
【請求項8】
局所薬剤を晩に洗浄後に投与する、請求項1から7に記載の使用。
【請求項9】
局所薬剤がゲル組成物である、請求項1から8に記載の使用。
【請求項10】
局所薬剤が、組成物の全重量に対して少なくとも0.001重量%のアダパレンを含む、請求項1または請求項2に記載の使用。
【請求項11】
局所薬剤が、組成物の全重量に対して、0.01重量%から2重量%のアダパレンを含み、好ましくは0.01重量%から0.5重量%、最も好ましくは0.1重量%から0.3重量%のアダパレンを含む、請求項1に記載の使用。
【請求項12】
局所薬剤が、組成物の全重量に対して0.025重量%から20重量%の過酸化ベンゾイルを含み、好ましくは2重量%から10重量%のBPO、最も好ましくは2.5重量%から5重量%の過酸化ベンゾイルを含む、請求項10または請求項11に記載の使用。
【請求項13】
局所薬剤の投与パターンが、少なくとも4カ月間、好ましくは少なくとも6カ月間、組成物の全重量に対して0.01重量%と0.5重量%の間のアダパレンおよび2重量%と10重量%の間の過酸化ベンゾイルを罹患している皮膚に適用することを含む、尋常性ざ瘡の処置におけるその生物学的反応を維持するために、患者に投与するための局所薬剤の調製におけるアダパレンおよび過酸化ベンゾイルを含む組成物の使用。
【請求項14】
局所薬剤を少なくとも9カ月、好ましくは少なくとも12カ月投与する、請求項6に記載の使用。
【請求項15】
局所薬剤の投与パターンが、少なくとも6カ月間、1日1回、0.1重量%のアダパレンおよび2.5重量%のBPOを罹患している皮膚に適用することを含む、尋常性ざ瘡の処置におけるその生物学的反応を維持するための、患者に投与するための局所薬剤の調製におけるアダパレンおよび過酸化ベンゾイルを含む組成物の使用。
【請求項16】
局所薬剤を、少なくとも9カ月間罹患している皮膚に適用する、請求項15に記載の使用。
【請求項17】
局所薬剤を、少なくとも12カ月間罹患している皮膚に適用する、請求項15に記載の使用。
【請求項18】
罹患している皮膚が、20個から100個の非炎症性の病変、20個から50個の炎症性の病変を含み、活動性の結節または嚢胞を含まない、請求項13から17に記載の使用。
【請求項19】
組成物がゲル組成物である、請求項1から18のいずれか一項に記載の使用。
【請求項20】
許容できる製薬上の媒体中にアダパレンおよび過酸化ベンゾイルを含む有効量の組成物を罹患している皮膚に局所適用することを含む、それを必要とする患者における尋常性ざ瘡の長期間の処置を提供する方法。
【請求項21】
組成物を少なくとも4カ月間局所適用する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
組成物を少なくとも6カ月間、好ましくは少なくとも9カ月間、より好ましくは少なくとも12カ月間局所適用する、請求項20に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate


【公表番号】特表2011−510907(P2011−510907A)
【公表日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−547688(P2009−547688)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/051155
【国際公開番号】WO2008/092911
【国際公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【出願人】(599045604)ガルデルマ・リサーチ・アンド・デヴェロップメント (117)
【Fターム(参考)】