導体接続クランプ
【課題】導線をクランプばねで挟み込む接続作業を、1人の作業者が容易かつ迅速に行なうことができる導体接続クランプを提供する。
【解決手段】棒状の金属片からなる差込金具2をハウジング3の導体挿入口4の近傍に設けられた金具挿入口5から差し込み、該差込金具2がクランプばね6と金具挿入口5内の案内側壁7との間に介在された構成とすることにより、クランプばね6が弾性力に抗して押圧変形されることによって該クランプばね6のクランプ口6aと金属導体8の差込口8aとを連通状態にした。
【解決手段】棒状の金属片からなる差込金具2をハウジング3の導体挿入口4の近傍に設けられた金具挿入口5から差し込み、該差込金具2がクランプばね6と金具挿入口5内の案内側壁7との間に介在された構成とすることにより、クランプばね6が弾性力に抗して押圧変形されることによって該クランプばね6のクランプ口6aと金属導体8の差込口8aとを連通状態にした。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線等の導線をクランプばねで挟み込むことにより接続する導体接続クランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、導線を板バネ等からなるクランプばねで挟み込む構造の接続端子が知られている。その構造は、概して、ハウジング内にクランプばねと金属導体とが配置され、電線等の導線をハウジングに設けられた挿入口から差し込み、クランプばねの弾性力で挟み込むようにしたものである。
【0003】
その具体例として、特許文献1を参照すると、クランプばねは略U字形に形成され、そのクランプ脚部で金属導体(コンタクトエレメント)に設けられた差込み開口を貫通し、クランプ脚部の端部が、差込み開口内に差し込まれた導線を押圧することによって導線を接続する構造とされている。
【0004】
このような構造において、導線を金属導体の差込み開口に挿入するため、一時的にクランプばねを押圧することによって差込み開口を開通状態にする必要がある。そのための作業として、差込み開口の近傍に設けられた挿入口からドライバーの先部のような治具を差し込むことにより、クランプばねを湾曲させ、これによって開いた金属導体の差込み開口に導線を差し込んだ後、治具を抜き出すことによって、クランプばねの弾性力で導線を挟み込むという作業手順が必要とされている。
【0005】
ところで、上記のようなクランプばねの弾性力によって導線を接続する構造においては、クランプばねの弾性力が不足すると、導線の接続箇所から発熱を生じ、これが火災の原因ともなるため、充分な弾性力を発揮し得るクランプばねが必要とされる。しかしながら、弾性力の強大なクランプばねを治具の差込み作業によって湾曲させるという作業は、作業者に大きな労力が要求され、また熟練を要することとなる。
【0006】
さらに、その接続作業においては、1人の作業者が接続端子を一方の手で持ち、他方の手で治具を握ることとなるため、導線を差し込むには他の作業者が必要となり、しかも2人の作業者が手狭な箇所で作業をするのは困難であり、非常に手間のかかる作業となっていた。
【0007】
特に、床暖房の敷設工事等において、壁面に床暖房の操作パネルを設置する場合、現場での接続作業は、接続端子を取付けた基盤を1人の作業者が壁面の所定位置まで持ち上げたうえで接続端子に導線を接続するという作業が必要となるため、この作業を1人で行うのは到底困難であり、他の作業者の協力が必要となる。
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第10103107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、導線をクランプばねで挟み込む接続作業を、1人の作業者が容易かつ迅速に行なうことができるようにした導体接続クランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題を解決するために、本発明における請求項1の導体接続クランプは、ハウジング内にクランプばねと金属導体とが配置され、クランプばねには導線のクランプ口が形成される一方、金属導体にはハウジングに設けられた導体挿入口に連通する部位に導線の差込口が形成され、クランプばねを弾性力に抗して押圧することによって連通したクランプばねのクランプ口と金属導体の差込口とに導体挿入口から導線を差し込み、クランプばねに対する押圧力を解除することで発揮される弾性力によってクランプばねのクランプ口と金属導体の差込口とで導線を挟み込むようにした導体接続クランプにおいて、棒状の金属片からなる差込金具をハウジングの導体挿入口の近傍に設けられた金具挿入口から差し込み、該差込金具がクランプばねと金具挿入口内の案内側壁との間に介在された構成とすることにより、クランプばねが弾性力に抗して押圧変形されることによって該クランプばねのクランプ口と金属導体の差込口とを連通状態にしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明における請求項2の導体接続クランプは、請求項1において、前記差込金具は剛性金属板を細幅にした棒状部材であって、該差込金具におけるクランプばねに接触する側の先端が角部を取った形状にされると共に、金具挿入口内の案内側壁に接触する側の先端が湾曲形状に形成されてなることを特徴とする請求項1記載の導体接続クランプ。
【0011】
さらに、本発明における請求項3の導体接続クランプは、請求項1又は2において、前記差込金具は、その後端にL字形の折曲部が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の導体接続クランプは、棒状の金属片からなる差込金具をハウジングの導体挿入口の近傍に設けられた金具挿入口から差し込み、該差込金具をクランプばねと金具挿入口内の案内側壁との間に介在することにより、クランプばねのクランプ口と金属導体の差込口とが連通した状態を保ったまま、作業現場における接続作業に提供されることとなる。
【0013】
従って、作業者は、他の治具を使用しなくても、導体挿入口に電線等の導線を差し込むだけで、導線をクランプばねのクランプ口と金属導体の差込口とに差し込むことができる。次いで、作業者は、差込金具を抜き出すだけで、クランプばねに対する押圧力が解除され、これによって発揮されるクランプばねの弾性力により、クランプばねのクランプ口と金属導体の差込口とで導線を堅固に挟み込むことが可能となる。
【0014】
また、本発明による差込金具は、剛性金属板を細幅にした棒状部材であって、該差込金具におけるクランプばねに接触する側の先端が角部を取った形状にされると共に、金具挿入口内の案内側壁に接触する側の先端が湾曲形状に形成されているため、予め、工場等で行う作業として、導体接続クランプの金具挿入口に差込金具を差し込む作業を円滑に行うことが可能となる。
【0015】
さらに、本発明における差込金具は、その後端にL字形の折曲部を形成しているため、差込金具を金具挿入口に差し込む際に使用する治具で折曲部を把持することにより、差込金具を容易に差し込むことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明による導体接続クランプ1は、図1に示すように、棒状の金属片からなる差込金具2をハウジング3の導体挿入口4の近傍に設けられた金具挿入口5から差し込み、差込金具2がクランプばね6と金具挿入口5内の案内側壁7との間に介在された構成とすることにより、クランプばね6が弾性力に抗して押圧変形されることによって該クランプばね6のクランプ口6aと金属導体8の差込口8aとを連通状態にし、この状態のクランプ口6aと差込口8aとに導線10(図4(b)参照)を差し込み可能としたものである。
【0018】
このような構成について詳細に述べると、図1のハウジング3から接続端子9を取り出すと、図2に示すようになる。この接続端子9は、クランプばね6と金属導体8とを互いに結合してなり、クランプばね6は金属導体8の接合面8bに当接されている。この接合面8bを有する部位を接合部11として、金属導体8は、接合部11の一端にて接合面8bから遠ざかる方向へ折曲形成された垂下部12と、接合部11の他端にて垂下部12とは反対方向へ折曲形成された立上部13とを備え、垂下部12の下端には2片の前側端子14、14が垂下状に形成され、接合部11と立上部13との角部には立上部13から反対方向へ2片の後側端子15、15が形成された構成とされている。
【0019】
さらに、金属導体8における垂下部12の内方一部を切開することによって長方形状の矩形の差込口8aが形成され、上記の切開により接合部11から直状に延長させてなる延長部16が後述するクランプばね6のクランプ口6aの内端に係止されている。
【0020】
一方、クランプばね6は、金属導体8の接合面8bに当接されてなる当接部17を備え、クランプばね6の全長を周状に湾曲形成すると共に、当接部17の対向側にはアール部18が形成され、アール部18から金属導体8の垂下部12の外側に沿って延長された脚部19が形成されている。また、クランプばね6の脚部19には長方形のクランプ口6aが形成され、クランプばね6を弾性力に抗する方向へ湾曲した状態にして、金属導体8の延長部16をクランプばね6のクランプ口6aに係止したことにより、クランプばね6は弾性力だけで金属導体8に結合された構成とされている。
【0021】
このような構成の接続端子9においては、図2の白抜きの矢印で示す方向にクランプばね6のアール部18を押圧することにより、クランプばね6の脚部19を2点鎖線(脚部19のみの移動状態)で示すように下方へ移動することができ、これによってクランプばね6のクランプ口6aと金属導体8の差込口8aとが連通状態となる。
【0022】
また、図1に示すハウジング3は、上記のクランプばね6と金属導体8とを結合してなる接続端子9を収容する溝部20が該接続端子9の形状に倣って形成されると共に、前側端子14と後側端子15をハウジング3の外方へ突出させる挿通溝21、22が形成され、クランプばね6の延長部16の先端に形成された折曲片16aがハウジング3内の角部23に係止されることによって、後述するクランプばね6の押圧変形を支持するようにしている。
【0023】
また、図1に示すように、ハウジング3には、接続端子9をハウジング3の溝部20に納めた状態で、金属導体8の差込口8aに連通する導体挿入口4が形成されると共に、クランプばね6のアール部18側には、このアール部18の湾曲形状に沿った形状の案内側壁7が形成されている。また、導体挿入口4の近傍には、案内側壁7からハウジング3の外方に向けて連通状態に開口された金具挿入口5が形成されている。
【0024】
また、差込金具2の例としては、図3に示すように、剛性金属板を細幅に形成した棒状部材であって、図4(a)に示すように、差込金具2におけるクランプばね6に接触する側の先端が角部を取った形状2aに形成されると共に、金具挿入口5内の案内側壁7に接触する側の先端が湾曲形状2bに形成され、また差込金具2の途中が導体挿入口4側にわずかに突状に湾曲した形状2dを有する形状とされている。この差込金具2の途中の湾曲した形状2dは、図4(b)に示すように、金具挿入口5に挿入した差込金具2が金具挿入口5の端部に当たった状態になったとき、湾曲した形状2dによってクランプばね6のアール部18を効率的に押圧することができるようにしたものである。
【0025】
さらに、この差込金具2は、その後端にL字形の折曲部2cが形成され、差込金具2を金具挿入口5に差し込む際に使用する治具(不図示)で折曲部2cを把持することにより、差込金具2を差込む際の作業性を向上することを可能としている。
【0026】
なお、この差込金具2を利用して本発明による導体接続クランプ1の内部の通電状態を容易に検査することが可能となる。図1(b)に示すように導体接続クランプ1、1を二連に構成し、夫々の導体接続クランプ1、1の金具差込口5、5に差込金具2、2を差し込んだ状態にすると、夫々の差込金具2、2は後端の折曲部2c、2cが並列状態で外部に露出した状態になる。この二連の導体接続クランプ1、1の夫々の端子14、15を器具(不図示)に接続し、器具の側で各導体接続クランプ1、1の各端子14、15を連結した状態にすると共に、並列された差込金具2、2の後端の一方をプラス極、他方をマイナス極としてテスター等を用いて通電状態を検査することが可能となる。
【0027】
また、通電状態を検査するための専用の治具を作製することにより、この治具を並列された差込金具2、2の後端にワンタッチで当てて導体接続クランプ1、1内の通電状態を検査することも可能である。
【0028】
なお、導体接続クランプ1が一連の場合は、この導体接続クランプ1の端子14、15を器具(不図示)に接続し、器具の導電箇所と導体接続クランプ1の金具差込口5に差し込んだ差込金具2の端部とをプラス極或いはマイナス極のいずれかにしてテスター等で通電状態を容易に検査することができる。
【0029】
本来なら、導体接続クランプ1の内部の通電状態を検査するには、導体接続クランプ1の内部にテスター等を挿入する必要があって通電検査は面倒な作業となるが、上記のように本発明の導体接続クランプ1の金具差込口5に差し込んだ差込金具2は内部のクランプバネ6を介して金属導体8に接触しているため、外部に露出している差込金具2の後端を通電検査に利用することにより、容易に通電検査を行うことが可能となる。
【0030】
次に、予め、工場等で行う作業として、図4(a)に示すように、ハウジング3の金具挿入口5に差込金具2を差し込み、その先端をハウジング3内のクランプばね6と案内側壁7との間に押し入れる。この作業において、上記のように、差込金具2の先端はクランプばね6に接触する側において角部を取った形状2aを有し、案内側壁7に接触する側の先端が湾曲形状2bに形成されているため、奥方に到るまで、差込金具2をクランプばね6の強圧な弾性力に抗して円滑に進入することが可能となり、このような作業によって、図4(b)に示すように、差込金具2がクランプばね6と案内側壁7との間に介在された状態となる。これによって、クランプばね6が弾性力に抗して押圧変形され、クランプばね6のクランプ口6aと金属導体8の差込口8aとが連通状態となる。
【0031】
次いで、現場作業等においては、他の治具を用いることなく、手作業で容易に導体挿入口4から差し入れた導線10をクランプばね6のクランプ口6aと金属導体8の差込口8bとに貫通した状態に挿入することが可能となる。
【0032】
また、上記のように導線10をクランプ口6aと差込口8bとに挿入した後、図4(c)に示すように、差込金具2の折曲部2cをペンチ等の道具で挟んで引き出すだけで、クランプばね6の弾性力が発揮されることにより脚部19が上方へ移動する。これによってクランプばね6のクランプ口6aと金属導体8の差込口8aとで導線10を堅固に挟み込むことが可能となり、導線10の接続作業が終了する。
【0033】
なお、導線10の再取付けを行なう際等に、上記のように接続した導線10を抜き出す必要がある。その作業においても、上記と同様に、ハウジング3の金具挿入口5に差込金具2を差し込み、クランプばね6のクランプ口6aと金属導体8の差込口8aとを開通状態にすることにより、導線10を容易に抜き出すことができる。また、上記の差込金具2を差し込んだ状態を保つことによって、クランプ口6aと金属導体8の差込口8aとは開通状態を保つため、新たに導線10を差し入れた後、差込金具2を引き出すことによって、クランプばね6のクランプ口6aと金属導体8の差込口8aとで導線10を堅固に挟み込むことが可能となる。
【0034】
本実施例の導体接続クランプは、上記の構成のようにハウジング3の金具挿入口5からその内部に向けて差込金具2が挿入された構成を有する。ただし、ハウジング3、クランプばね6及び金属導体8等の形態は上記のものに限定されるものではなく、本発明は、少なくとも、差込金具2によって押圧変形するクランプばね6と金属導体8がハウジング3内に収容され、差込金具2によってクランプばね6を押圧変形することによって、クランプばね6のクランプ口6aと金属導体8の差込口8aとが連通して導線10を挿通し得る構成に適用することを可能とするものである。
【0035】
なお、本実施例における導体接続クランプ1は、図1(a)、(b)に示すハウジング3の側面に形成された複数の凸部3a、3a…を他のハウジング3の対向面に形成された凹部(不図示)に嵌合することによって、2連さらにはそれ以上の多数の連結体とすることができ、それぞれの導体接続クランプ1に設けられた金具挿入口4から差込金具2を挿入した構成とすることによって、導線10をそれぞれの導体挿入口5から手作業だけで挿入することを可能とするものである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の導体接続クランプによれば、導線をクランプばねで挟み込む接続作業を、1人の作業者が容易かつ迅速に行なうことができるようにした導体接続クランプとして利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a)は本発明による導体接続クランプの内部を示す側面図であり、(b)は導体接続クランプを二連に構成した端面図である。
【図2】本発明における接続端子の斜視図である。
【図3】本発明における差込金具の側面図である。
【図4】(a)は本発明による導体接続クランプの金具挿入口に差込金具を差し込んでいる状況を示す側面図であり、(b)は差込金具が奥まで差し込まれた状態であって導線を導体挿入口から差し込んでいる状況を示す側面図であり、(c)は差込金具を引抜いた状況を示す側面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 導体接続クランプ
2 差込金具
2a 角部を取った形状
2b 湾曲形状
2c 折曲部
2d 僅かに湾曲した形状
3 ハウジング
3a 凸部
4 導体挿入口
5 金具挿入口
6 クランプばね
6a クランプ口
7 案内側壁
8 金属導体
8a 差込口
8b 接合面
9 接続端子
10 導線
11 接合部
12 垂下部
13 立上部
14 前側端子
15 後側端子
16 延長部
16a 折曲片
17 当接部
18 アール部
19 脚部
20 溝部
21、22 挿通溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線等の導線をクランプばねで挟み込むことにより接続する導体接続クランプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、導線を板バネ等からなるクランプばねで挟み込む構造の接続端子が知られている。その構造は、概して、ハウジング内にクランプばねと金属導体とが配置され、電線等の導線をハウジングに設けられた挿入口から差し込み、クランプばねの弾性力で挟み込むようにしたものである。
【0003】
その具体例として、特許文献1を参照すると、クランプばねは略U字形に形成され、そのクランプ脚部で金属導体(コンタクトエレメント)に設けられた差込み開口を貫通し、クランプ脚部の端部が、差込み開口内に差し込まれた導線を押圧することによって導線を接続する構造とされている。
【0004】
このような構造において、導線を金属導体の差込み開口に挿入するため、一時的にクランプばねを押圧することによって差込み開口を開通状態にする必要がある。そのための作業として、差込み開口の近傍に設けられた挿入口からドライバーの先部のような治具を差し込むことにより、クランプばねを湾曲させ、これによって開いた金属導体の差込み開口に導線を差し込んだ後、治具を抜き出すことによって、クランプばねの弾性力で導線を挟み込むという作業手順が必要とされている。
【0005】
ところで、上記のようなクランプばねの弾性力によって導線を接続する構造においては、クランプばねの弾性力が不足すると、導線の接続箇所から発熱を生じ、これが火災の原因ともなるため、充分な弾性力を発揮し得るクランプばねが必要とされる。しかしながら、弾性力の強大なクランプばねを治具の差込み作業によって湾曲させるという作業は、作業者に大きな労力が要求され、また熟練を要することとなる。
【0006】
さらに、その接続作業においては、1人の作業者が接続端子を一方の手で持ち、他方の手で治具を握ることとなるため、導線を差し込むには他の作業者が必要となり、しかも2人の作業者が手狭な箇所で作業をするのは困難であり、非常に手間のかかる作業となっていた。
【0007】
特に、床暖房の敷設工事等において、壁面に床暖房の操作パネルを設置する場合、現場での接続作業は、接続端子を取付けた基盤を1人の作業者が壁面の所定位置まで持ち上げたうえで接続端子に導線を接続するという作業が必要となるため、この作業を1人で行うのは到底困難であり、他の作業者の協力が必要となる。
【特許文献1】ドイツ連邦共和国特許出願公開第10103107号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたもので、導線をクランプばねで挟み込む接続作業を、1人の作業者が容易かつ迅速に行なうことができるようにした導体接続クランプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の問題を解決するために、本発明における請求項1の導体接続クランプは、ハウジング内にクランプばねと金属導体とが配置され、クランプばねには導線のクランプ口が形成される一方、金属導体にはハウジングに設けられた導体挿入口に連通する部位に導線の差込口が形成され、クランプばねを弾性力に抗して押圧することによって連通したクランプばねのクランプ口と金属導体の差込口とに導体挿入口から導線を差し込み、クランプばねに対する押圧力を解除することで発揮される弾性力によってクランプばねのクランプ口と金属導体の差込口とで導線を挟み込むようにした導体接続クランプにおいて、棒状の金属片からなる差込金具をハウジングの導体挿入口の近傍に設けられた金具挿入口から差し込み、該差込金具がクランプばねと金具挿入口内の案内側壁との間に介在された構成とすることにより、クランプばねが弾性力に抗して押圧変形されることによって該クランプばねのクランプ口と金属導体の差込口とを連通状態にしたことを特徴とする。
【0010】
また、本発明における請求項2の導体接続クランプは、請求項1において、前記差込金具は剛性金属板を細幅にした棒状部材であって、該差込金具におけるクランプばねに接触する側の先端が角部を取った形状にされると共に、金具挿入口内の案内側壁に接触する側の先端が湾曲形状に形成されてなることを特徴とする請求項1記載の導体接続クランプ。
【0011】
さらに、本発明における請求項3の導体接続クランプは、請求項1又は2において、前記差込金具は、その後端にL字形の折曲部が形成されたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明の導体接続クランプは、棒状の金属片からなる差込金具をハウジングの導体挿入口の近傍に設けられた金具挿入口から差し込み、該差込金具をクランプばねと金具挿入口内の案内側壁との間に介在することにより、クランプばねのクランプ口と金属導体の差込口とが連通した状態を保ったまま、作業現場における接続作業に提供されることとなる。
【0013】
従って、作業者は、他の治具を使用しなくても、導体挿入口に電線等の導線を差し込むだけで、導線をクランプばねのクランプ口と金属導体の差込口とに差し込むことができる。次いで、作業者は、差込金具を抜き出すだけで、クランプばねに対する押圧力が解除され、これによって発揮されるクランプばねの弾性力により、クランプばねのクランプ口と金属導体の差込口とで導線を堅固に挟み込むことが可能となる。
【0014】
また、本発明による差込金具は、剛性金属板を細幅にした棒状部材であって、該差込金具におけるクランプばねに接触する側の先端が角部を取った形状にされると共に、金具挿入口内の案内側壁に接触する側の先端が湾曲形状に形成されているため、予め、工場等で行う作業として、導体接続クランプの金具挿入口に差込金具を差し込む作業を円滑に行うことが可能となる。
【0015】
さらに、本発明における差込金具は、その後端にL字形の折曲部を形成しているため、差込金具を金具挿入口に差し込む際に使用する治具で折曲部を把持することにより、差込金具を容易に差し込むことが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。
【実施例1】
【0017】
本発明による導体接続クランプ1は、図1に示すように、棒状の金属片からなる差込金具2をハウジング3の導体挿入口4の近傍に設けられた金具挿入口5から差し込み、差込金具2がクランプばね6と金具挿入口5内の案内側壁7との間に介在された構成とすることにより、クランプばね6が弾性力に抗して押圧変形されることによって該クランプばね6のクランプ口6aと金属導体8の差込口8aとを連通状態にし、この状態のクランプ口6aと差込口8aとに導線10(図4(b)参照)を差し込み可能としたものである。
【0018】
このような構成について詳細に述べると、図1のハウジング3から接続端子9を取り出すと、図2に示すようになる。この接続端子9は、クランプばね6と金属導体8とを互いに結合してなり、クランプばね6は金属導体8の接合面8bに当接されている。この接合面8bを有する部位を接合部11として、金属導体8は、接合部11の一端にて接合面8bから遠ざかる方向へ折曲形成された垂下部12と、接合部11の他端にて垂下部12とは反対方向へ折曲形成された立上部13とを備え、垂下部12の下端には2片の前側端子14、14が垂下状に形成され、接合部11と立上部13との角部には立上部13から反対方向へ2片の後側端子15、15が形成された構成とされている。
【0019】
さらに、金属導体8における垂下部12の内方一部を切開することによって長方形状の矩形の差込口8aが形成され、上記の切開により接合部11から直状に延長させてなる延長部16が後述するクランプばね6のクランプ口6aの内端に係止されている。
【0020】
一方、クランプばね6は、金属導体8の接合面8bに当接されてなる当接部17を備え、クランプばね6の全長を周状に湾曲形成すると共に、当接部17の対向側にはアール部18が形成され、アール部18から金属導体8の垂下部12の外側に沿って延長された脚部19が形成されている。また、クランプばね6の脚部19には長方形のクランプ口6aが形成され、クランプばね6を弾性力に抗する方向へ湾曲した状態にして、金属導体8の延長部16をクランプばね6のクランプ口6aに係止したことにより、クランプばね6は弾性力だけで金属導体8に結合された構成とされている。
【0021】
このような構成の接続端子9においては、図2の白抜きの矢印で示す方向にクランプばね6のアール部18を押圧することにより、クランプばね6の脚部19を2点鎖線(脚部19のみの移動状態)で示すように下方へ移動することができ、これによってクランプばね6のクランプ口6aと金属導体8の差込口8aとが連通状態となる。
【0022】
また、図1に示すハウジング3は、上記のクランプばね6と金属導体8とを結合してなる接続端子9を収容する溝部20が該接続端子9の形状に倣って形成されると共に、前側端子14と後側端子15をハウジング3の外方へ突出させる挿通溝21、22が形成され、クランプばね6の延長部16の先端に形成された折曲片16aがハウジング3内の角部23に係止されることによって、後述するクランプばね6の押圧変形を支持するようにしている。
【0023】
また、図1に示すように、ハウジング3には、接続端子9をハウジング3の溝部20に納めた状態で、金属導体8の差込口8aに連通する導体挿入口4が形成されると共に、クランプばね6のアール部18側には、このアール部18の湾曲形状に沿った形状の案内側壁7が形成されている。また、導体挿入口4の近傍には、案内側壁7からハウジング3の外方に向けて連通状態に開口された金具挿入口5が形成されている。
【0024】
また、差込金具2の例としては、図3に示すように、剛性金属板を細幅に形成した棒状部材であって、図4(a)に示すように、差込金具2におけるクランプばね6に接触する側の先端が角部を取った形状2aに形成されると共に、金具挿入口5内の案内側壁7に接触する側の先端が湾曲形状2bに形成され、また差込金具2の途中が導体挿入口4側にわずかに突状に湾曲した形状2dを有する形状とされている。この差込金具2の途中の湾曲した形状2dは、図4(b)に示すように、金具挿入口5に挿入した差込金具2が金具挿入口5の端部に当たった状態になったとき、湾曲した形状2dによってクランプばね6のアール部18を効率的に押圧することができるようにしたものである。
【0025】
さらに、この差込金具2は、その後端にL字形の折曲部2cが形成され、差込金具2を金具挿入口5に差し込む際に使用する治具(不図示)で折曲部2cを把持することにより、差込金具2を差込む際の作業性を向上することを可能としている。
【0026】
なお、この差込金具2を利用して本発明による導体接続クランプ1の内部の通電状態を容易に検査することが可能となる。図1(b)に示すように導体接続クランプ1、1を二連に構成し、夫々の導体接続クランプ1、1の金具差込口5、5に差込金具2、2を差し込んだ状態にすると、夫々の差込金具2、2は後端の折曲部2c、2cが並列状態で外部に露出した状態になる。この二連の導体接続クランプ1、1の夫々の端子14、15を器具(不図示)に接続し、器具の側で各導体接続クランプ1、1の各端子14、15を連結した状態にすると共に、並列された差込金具2、2の後端の一方をプラス極、他方をマイナス極としてテスター等を用いて通電状態を検査することが可能となる。
【0027】
また、通電状態を検査するための専用の治具を作製することにより、この治具を並列された差込金具2、2の後端にワンタッチで当てて導体接続クランプ1、1内の通電状態を検査することも可能である。
【0028】
なお、導体接続クランプ1が一連の場合は、この導体接続クランプ1の端子14、15を器具(不図示)に接続し、器具の導電箇所と導体接続クランプ1の金具差込口5に差し込んだ差込金具2の端部とをプラス極或いはマイナス極のいずれかにしてテスター等で通電状態を容易に検査することができる。
【0029】
本来なら、導体接続クランプ1の内部の通電状態を検査するには、導体接続クランプ1の内部にテスター等を挿入する必要があって通電検査は面倒な作業となるが、上記のように本発明の導体接続クランプ1の金具差込口5に差し込んだ差込金具2は内部のクランプバネ6を介して金属導体8に接触しているため、外部に露出している差込金具2の後端を通電検査に利用することにより、容易に通電検査を行うことが可能となる。
【0030】
次に、予め、工場等で行う作業として、図4(a)に示すように、ハウジング3の金具挿入口5に差込金具2を差し込み、その先端をハウジング3内のクランプばね6と案内側壁7との間に押し入れる。この作業において、上記のように、差込金具2の先端はクランプばね6に接触する側において角部を取った形状2aを有し、案内側壁7に接触する側の先端が湾曲形状2bに形成されているため、奥方に到るまで、差込金具2をクランプばね6の強圧な弾性力に抗して円滑に進入することが可能となり、このような作業によって、図4(b)に示すように、差込金具2がクランプばね6と案内側壁7との間に介在された状態となる。これによって、クランプばね6が弾性力に抗して押圧変形され、クランプばね6のクランプ口6aと金属導体8の差込口8aとが連通状態となる。
【0031】
次いで、現場作業等においては、他の治具を用いることなく、手作業で容易に導体挿入口4から差し入れた導線10をクランプばね6のクランプ口6aと金属導体8の差込口8bとに貫通した状態に挿入することが可能となる。
【0032】
また、上記のように導線10をクランプ口6aと差込口8bとに挿入した後、図4(c)に示すように、差込金具2の折曲部2cをペンチ等の道具で挟んで引き出すだけで、クランプばね6の弾性力が発揮されることにより脚部19が上方へ移動する。これによってクランプばね6のクランプ口6aと金属導体8の差込口8aとで導線10を堅固に挟み込むことが可能となり、導線10の接続作業が終了する。
【0033】
なお、導線10の再取付けを行なう際等に、上記のように接続した導線10を抜き出す必要がある。その作業においても、上記と同様に、ハウジング3の金具挿入口5に差込金具2を差し込み、クランプばね6のクランプ口6aと金属導体8の差込口8aとを開通状態にすることにより、導線10を容易に抜き出すことができる。また、上記の差込金具2を差し込んだ状態を保つことによって、クランプ口6aと金属導体8の差込口8aとは開通状態を保つため、新たに導線10を差し入れた後、差込金具2を引き出すことによって、クランプばね6のクランプ口6aと金属導体8の差込口8aとで導線10を堅固に挟み込むことが可能となる。
【0034】
本実施例の導体接続クランプは、上記の構成のようにハウジング3の金具挿入口5からその内部に向けて差込金具2が挿入された構成を有する。ただし、ハウジング3、クランプばね6及び金属導体8等の形態は上記のものに限定されるものではなく、本発明は、少なくとも、差込金具2によって押圧変形するクランプばね6と金属導体8がハウジング3内に収容され、差込金具2によってクランプばね6を押圧変形することによって、クランプばね6のクランプ口6aと金属導体8の差込口8aとが連通して導線10を挿通し得る構成に適用することを可能とするものである。
【0035】
なお、本実施例における導体接続クランプ1は、図1(a)、(b)に示すハウジング3の側面に形成された複数の凸部3a、3a…を他のハウジング3の対向面に形成された凹部(不図示)に嵌合することによって、2連さらにはそれ以上の多数の連結体とすることができ、それぞれの導体接続クランプ1に設けられた金具挿入口4から差込金具2を挿入した構成とすることによって、導線10をそれぞれの導体挿入口5から手作業だけで挿入することを可能とするものである。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明の導体接続クランプによれば、導線をクランプばねで挟み込む接続作業を、1人の作業者が容易かつ迅速に行なうことができるようにした導体接続クランプとして利用することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】(a)は本発明による導体接続クランプの内部を示す側面図であり、(b)は導体接続クランプを二連に構成した端面図である。
【図2】本発明における接続端子の斜視図である。
【図3】本発明における差込金具の側面図である。
【図4】(a)は本発明による導体接続クランプの金具挿入口に差込金具を差し込んでいる状況を示す側面図であり、(b)は差込金具が奥まで差し込まれた状態であって導線を導体挿入口から差し込んでいる状況を示す側面図であり、(c)は差込金具を引抜いた状況を示す側面図である。
【符号の説明】
【0038】
1 導体接続クランプ
2 差込金具
2a 角部を取った形状
2b 湾曲形状
2c 折曲部
2d 僅かに湾曲した形状
3 ハウジング
3a 凸部
4 導体挿入口
5 金具挿入口
6 クランプばね
6a クランプ口
7 案内側壁
8 金属導体
8a 差込口
8b 接合面
9 接続端子
10 導線
11 接合部
12 垂下部
13 立上部
14 前側端子
15 後側端子
16 延長部
16a 折曲片
17 当接部
18 アール部
19 脚部
20 溝部
21、22 挿通溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内にクランプばねと金属導体とが配置され、クランプばねには導線のクランプ口が形成される一方、金属導体にはハウジングに設けられた導体挿入口に連通する部位に導線の差込口が形成され、クランプばねを弾性力に抗して押圧することによって連通したクランプばねのクランプ口と金属導体の差込口とに導体挿入口から導線を差し込み、クランプばねに対する押圧力を解除することで発揮される弾性力によってクランプばねのクランプ口と金属導体の差込口とで導線を挟み込むようにした導体接続クランプにおいて、
棒状の金属片からなる差込金具をハウジングの導体挿入口の近傍に設けられた金具挿入口から差し込み、該差込金具がクランプばねと金具挿入口内の案内側壁との間に介在された構成とすることにより、クランプばねが弾性力に抗して押圧変形されることによって該クランプばねのクランプ口と金属導体の差込口とを連通状態にしたことを特徴とする導体接続クランプ。
【請求項2】
前記差込金具は剛性金属板を細幅にした棒状部材であって、該差込金具におけるクランプばねに接触する側の先端が角部を取った形状にされると共に、金具挿入口内の案内側壁に接触する側の先端が湾曲形状に形成されてなることを特徴とする請求項1記載の導体接続クランプ。
【請求項3】
前記差込金具は、その後端にL字形の折曲部が形成されたことを特徴とする請求項1又は2記載の導体接続クランプ。
【請求項1】
ハウジング内にクランプばねと金属導体とが配置され、クランプばねには導線のクランプ口が形成される一方、金属導体にはハウジングに設けられた導体挿入口に連通する部位に導線の差込口が形成され、クランプばねを弾性力に抗して押圧することによって連通したクランプばねのクランプ口と金属導体の差込口とに導体挿入口から導線を差し込み、クランプばねに対する押圧力を解除することで発揮される弾性力によってクランプばねのクランプ口と金属導体の差込口とで導線を挟み込むようにした導体接続クランプにおいて、
棒状の金属片からなる差込金具をハウジングの導体挿入口の近傍に設けられた金具挿入口から差し込み、該差込金具がクランプばねと金具挿入口内の案内側壁との間に介在された構成とすることにより、クランプばねが弾性力に抗して押圧変形されることによって該クランプばねのクランプ口と金属導体の差込口とを連通状態にしたことを特徴とする導体接続クランプ。
【請求項2】
前記差込金具は剛性金属板を細幅にした棒状部材であって、該差込金具におけるクランプばねに接触する側の先端が角部を取った形状にされると共に、金具挿入口内の案内側壁に接触する側の先端が湾曲形状に形成されてなることを特徴とする請求項1記載の導体接続クランプ。
【請求項3】
前記差込金具は、その後端にL字形の折曲部が形成されたことを特徴とする請求項1又は2記載の導体接続クランプ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図2】
【図3】
【図4】
【公開番号】特開2009−272089(P2009−272089A)
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−120185(P2008−120185)
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(595012648)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月2日(2008.5.2)
【出願人】(595012648)
【Fターム(参考)】
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