説明

導体接続装置

【課題】各セグメントの温度を均一化し温度分布の偏りを小さくすることが可能な導体接続装置を得ること。
【解決手段】導体接続装置は、導体1,2間で互いに平行かつ軸方向に対して垂直に配置された熱導電性の1対のガイド板4a,4bと、この1対のガイド板4a,4bを跨るようにして各ガイド板4a,4bの周縁部に嵌め込まれるとともに、導体1,2間に跨って両導体の外周と接触した複数個のセグメント3と、1対のガイド板4a,4bを各セグメント3に押接して接触力を付与する弾性体5と、各セグメント3を外側から導体1,2に押接して接触力を付与するスプリング6と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体間を電気的に接続する導体接続装置に関するものであり、特に、チューリップコンタクト装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
遮断器等の開閉機器では、大径のフィンガー形状のコンタクトを用いると高コストとなるため、小径のコンタクトを多数配置したものを用いる場合がある。例えば特許文献1では、導体を軸方向垂直に並列に配置したいわゆる多軸の接続構造を用い、各導体にそれぞれ小径のフィンガーコンタクトを適用している。また、小径のコンタクトには、より安価なチューリップコンタクトと呼ばれるものがある。
【0003】
従来のチューリップコンタクトでは、導体の外周にセグメント(接触片)を放射状に配置し、各セグメントを外側からスプリングで押さえて導体と接触させている(例えば特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−053074号公報(図3)
【特許文献2】実開昭59−098511号公報(図3)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、導体を多軸に配置した場合、各導体に流れる電流が作る磁場によって、各導体にその周方向の電流分布が不均一となる電流偏流が生ずる。したがって、従来のチューリップコンタクトを多軸にした場合、セグメントに生じるジュール熱の偏りにより、コンタクトの周方向に発熱分布の偏りが生じ、温度分布も偏り、コンタクトに高温部が発生するという問題点があった。特に、コンタクトは各セグメントに熱抵抗の高い接触部を2箇所持っており、コンタクトの温度分布の偏りも大きくなる傾向にあった。
【0006】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであって、各セグメントの温度を均一化し温度分布の偏りを小さくすることが可能な導体接続装置を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上述した課題を解決し、目的を達成するために、本発明にかかる導体接続装置は、第1の導体とこの第1の導体に対向して同軸上に配置された第2の導体とを電気的に接続する導体接続装置であって、前記第1および第2の導体の軸方向に対して垂直かつ互いに平行に配置された熱導電性の1対のガイド板と、この1対のガイド板を跨るようにして各ガイド板の周縁部に嵌め込まれるとともに、前記第1および第2の導体間に跨って両導体の端部と接触した複数個の接触片と、前記1対のガイド板を前記各接触片に押接して接触力を付与する弾性体と、前記各接触片を外側から前記第1および第2の導体の端部に押接して接触力を付与するばねと、を備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、熱伝導性のガイド板を弾性体により接触片に押接することにより、ガイド板を介して接触片間の熱交換を行うことができるので、接触片間の温度の偏りが緩和される。したがって、例えば電流偏流によって発生する温度分布の偏りを小さくすることができ、規格外の高温部が生ずることがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は、実施の形態1にかかる導体接続装置の構成を示す縦断面図である。
【図2】図2は、図1におけるA−A矢視断面図である。
【図3】図3は、実施の形態2においてガイド板とセグメントとの配置関係を示す縦断面図である。
【図4】図4は、実施の形態2においてガイド板を設けていない状態での導体とセグメントとの配置関係を示す縦断面図である。
【図5】図5は、実施の形態2にかかる導体接続装置の構成を示す縦断面図である。
【図6】図6は、実施の形態1のチューリップコンタクトを多軸に配置した場合の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本発明にかかる導体接続装置の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施の形態によりこの発明が限定されるものではない。
【0011】
実施の形態1.
図1は、本実施の形態にかかる導体接続装置の構成を示す縦断面図である。また、図2は、図1におけるA−A矢視断面図である。本実施の形態にかかる導体接続装置は例えばチューリップコンタクト装置であり、導体1と、この導体1と対向して同軸上に配置された導体2と、導体1,2間にて互いに平行かつ軸方向に対して垂直に配置された1対のガイド板4a,4bと、この1対のガイド板4a,4b間に挟持された弾性体5と、ガイド板4a,4bの外周部に嵌めこまれ、導体1,2間に跨って両導体の端部の外周とそれぞれ接触した複数個のセグメント(接触片)3と、各セグメント3を外側から導体1,2に押接して接触部20での接触力を付与するスプリング(ばね)6と、を備えている。このようなチューリップコンタクト装置は、ガス絶縁開閉装置の導体の接続箇所または遮断器等の電力開閉器などに用いることができる。
【0012】
導体1,2は、電路を形成する例えば円筒状の同径の導体である。また、導体1,2はそれぞれ端部を対向させ、円筒の軸線方向に所定の間隔をおいて配置されている。
【0013】
ガイド板4a,4bは熱導電性に優れた例えば銅またはアルミニウム製の金属板からなる。ガイド板4a,4bは例えば円板状である。また、ガイド板4a,4bの周縁部には円板の中心から放射状に配置された複数の切欠が形成され、各切欠にはそれぞれセグメント3が嵌め込まれている。詳細には、セグメント3にも2箇所に切欠が設けられており、そのうちの一方の切欠がガイド板4aの一の切欠に嵌め込まれ、他方の切欠がガイド板4bの対応する切欠に嵌め込まれている。このようにセグメント3をガイド板4a,4bを介して放射状に複数配置してチューリップコンタクトが構成される。
【0014】
弾性体5は例えばコイルばね等からなり、ガイド板4a,4bをそれぞれ複数個のセグメント3に押接して軸方向の接触力を付与し、ガイド板4a,4bおよびセグメント3間の接触を確保する。
【0015】
また、導体1,2の組を複数並列に配置したいわゆる多軸の構成の場合についても、導体1,2の各組に対して、それぞれ図1、図2のコンタクト構造を付与することができる。図6は、チューリップコンタクト装置を多軸にした構成例を示す断面図であり、例えば4つのチューリップコンタクトが配置されている。このような多軸の構成は、例えば遮断器等の導体接続に用いられる。
【0016】
次に、本実施の形態の動作について説明する。図1、図2において、例えば導体1,2を通流する電流に偏流が生じ周方向に電流分布が偏った場合、セグメント3を通流する電流もセグメント3間で異なり、ジュール熱による発熱量もセグメント3に応じて異なる。したがって、電流のより大きいセグメント3ではより高温になる傾向にあるが、セグメント3は熱伝導性の良いガイド板4a,4bで支持されているので、これらのガイド板4a,4bを介して熱の移動が起こり、セグメント3間の温度差が解消され、ほぼ均等な温度分布が実現される。
【0017】
このような電流偏流は、例えばチューリップコンタクトを多軸に配置した場合に発生する(図6)。すなわち、導体1,2の組を多軸に配置した場合、導体1,2の各組に流れる電流が生成する磁場によって、導体1,2の電流分布に周方向の偏りが発生する。したがって、セグメント3に流れる電流にも偏流が生じ、ジュール熱による発熱にも偏りが生じて、各セグメント3の温度は周方向について一定ではなくなる。例えば、図6の例では、範囲A内のセグメント3を流れる電流が他に比べて大きくなる。しかしながら、本実施の形態では、2枚のガイド板4a,4bの間にある弾性体5によって各セグメント3に熱伝導性の良いガイド板4a,4bが押接されているので、高温部の熱は低温部に伝えられ、各セグメント3の温度差を緩和することができる。
【0018】
なお、電流の偏流以外の原因でチューリップコンタクト装置のセグメント3間に温度差が生じる場合にも、同様の動作で温度分布の偏差が解消される。
【0019】
また、差込む導体1,2の芯ずれが起きる場合やチューリップコンタクトの組立公差、セグメント3の加工公差等によって、セグメント3にガイド板4a,4bを押付けても、熱伝導が行われるべきガイド板4a,4bとセグメント3との間に間隙が生じる場合は、この間隙に熱伝導グリースや熱伝導シート等の熱伝導性の良い物質を挟み込むことで、各セグメント3の温度差を緩和できるという効果を確保できる。
【0020】
本実施の形態によれば、熱伝導性の良いガイド板4a,4bを弾性体5でセグメント3に押接することにより、ガイド板4a,4bを介してセグメント3間の熱交換を行うことができ、セグメント3間の温度の偏りが緩和される。したがって、例えば電流の偏流によって発生する温度分布の偏りを小さくすることができ、規格外の高温部が生ずることがない。
【0021】
また、セグメント3間での温度差を解消して高温部の発生を抑制することができるので、より小さなチューリップコンタクトを使用することができ、機器および設置面積の縮小化につながる。
【0022】
実施の形態2.
実施の形態1では、同径の導体を電気的に接続するチューリップコンタクト装置について説明したが、本実施の形態では、異径の導体を電気的に接続するチューリップコンタクト装置について説明する。
【0023】
図3は、ガイド板8a,8bとセグメント7との配置関係を示す縦断面図、図4は、ガイド板8a,8bを設けていない状態での導体11,12とセグメント7との配置関係を示す縦断面図、図5は、本実施の形態にかかる導体接続装置の構成を示す縦断面図である。なお、図5は、図3と図4を合わせた図であり、換言すれば、図3および図4は、図5の構成の要部を分けて図示したものである。
【0024】
本実施の形態では、導体11と、この導体11よりも大径の導体12とが対向して配置されている。また、熱導電性に優れた1対のガイド板8a,8bが互いに平行かつ軸方向に対して垂直に配置され、これらのガイド板8a,8bの周縁部には複数個のセグメント7が嵌め込まれている。また、これらのセグメント7は導体11,12間に跨って両導体の端部とそれぞれ接触している。特に、セグメント7と導体12との接触箇所においては、セグメント7に設けられた切欠を介してセグメント7を導体12に引掛けることにより接続している。また、複数のスプリング(ばね)10は、各セグメント7を外側から導体11,12に押接して接触力を付与する。
【0025】
ガイド板8a,8bは例えば円環状の金属板からなる。各セグメント7にはさらに2箇所に切欠が設けられており、そのうちの一方の切欠にガイド板8aが嵌め込まれ、他方の切欠にガイド板8bが嵌め込まれている。また、ガイド板8aは、切欠内で例えばウェーブワッシャからなる弾性体9を軸方向に向かうその一方の面に重ねるように配置してセグメント7に嵌め込まれている。図示例では、ガイド板8aに対して弾性体9は導体11側に挟み込まれており、この弾性体9はガイド板8aの導体12側の面をセグメント7に押接する。なお、ガイド板8bについても同様である。
【0026】
このチューリップコンタクト装置の組み立て工程について説明すれば、まず、ウェーブワッシャ等の弾性体9をガイト板8a,8bに取付け押さえ付けながら、セグメント7を導体12に引掛けた後ガイド板8a,8bに差し込む。その後、スプリング10をセグメント7に取り付ける。そして、導体11をチューリップコンタクト装置に抜差しすることによって、導体11、12の電気的な開閉ができるようになっている。
【0027】
なお、実施の形態1と同様に、熱伝導が行われるべきガイド板8a,8bとセグメント7との間に間隙が生じる場合は、この間隙に熱伝導性の良い部材を挟み込むことで熱伝導性を確保できる。
【0028】
本実施の形態の動作は実施の形態1と同様であり、導体11,12の径が互いに異なる場合についても、実施の形態1と同様の効果を奏する。
【0029】
また、ガイド板8a,8bを円環状にしたので、通電時に導体11の先端部がガイド板8bを貫通する形になり、チューリップコンタクト装置の軸方向のサイズを縮小することができる。なお、導体11,12に対して、実施の形態1のガイド板4a,4bおよび弾性体5を適用することもできるが、この場合、セグメント7の軸方向の長さがより大きくなる。
【産業上の利用可能性】
【0030】
以上のように、本発明にかかる導体接続装置は、セグメント(接触片)の温度差を緩和して高温部の発生の抑制に適している。
【符号の説明】
【0031】
1,2,11,12 導体
3,7 セグメント
4a,4b,8a,8b ガイド板
5,9 弾性体
6,10 スプリング
20 接触部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の導体とこの第1の導体に対向して同軸上に配置された第2の導体とを電気的に接続する導体接続装置であって、
前記第1および第2の導体の軸方向に対して垂直かつ互いに平行に配置された熱導電性の1対のガイド板と、
この1対のガイド板を跨るようにして各ガイド板の周縁部に嵌め込まれるとともに、前記第1および第2の導体間に跨って両導体の端部と接触した複数個の接触片と、
前記1対のガイド板を前記各接触片に押接して接触力を付与する弾性体と、
前記各接触片を外側から前記第1および第2の導体の端部に押接して接触力を付与するばねと、
を備えることを特徴とする導体接続装置。
【請求項2】
前記弾性体は前記1対のガイド板の間に挟持されていることを特徴とする請求項1に記載の導体接続装置。
【請求項3】
前記各接触片には前記各ガイド板が嵌め込まれる切欠が設けられており、前記各ガイド板は前記切欠内で前記弾性体を軸方向に向かうその一方の面に重ねるように配置して嵌め込まれていることを特徴とする請求項1に記載の導体接続装置。
【請求項4】
前記第1の導体の径は前記第2の導体の径よりも大きく、前記1対のガイド板はそれぞれ環状であり、通電状態では前記第2の導体の先端部が前記ガイド板を貫通するように配置されることを特徴とする請求項3に記載の導体接続装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−268656(P2010−268656A)
【公開日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−119875(P2009−119875)
【出願日】平成21年5月18日(2009.5.18)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】