説明

導光板用樹脂組成物および導光板

【課題】黄色度が十分に抑制され、かつ光の出射効率に優れた導光板を作製するのに適した導光板用樹脂組成物を提供すること。
【解決手段】透明樹脂とシリコーン樹脂微粒子とを含有する導光板用樹脂組成物であって、前記樹脂組成物を成形体としたときの、200mmの光路長で測定された300nm〜800nmの波長領域における平均光線透過率が、25〜85%である、導光板用樹脂組成物。好ましくは、シリコーン樹脂微粒子が、樹脂組成物の総重量に対して0.1〜200ppmの割合で含有される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、黄色度が十分に抑制され、かつ光の出射効率に優れた導光板を調製するのに適した導光板用樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や照明装置などのバックライトとしては、例えば、導光板の側方に冷陰極管やLEDなどの光源を配置し、光源からの光を導光板背面に形成されたドットパターンやプリズム部などに反射させて導光板前面から光を均一に出射できるように構成したものが公知である。
【0003】
バックライト用の導光板としては、アクリル系樹脂などの透明樹脂中に微粒子を分散させた導光板が公知である。透明樹脂中に微粒子を分散させた導光板は、透過光が黄色味を帯びやすく(すなわち、イエローインデックス(YI)値が大きく)、このような導光板を用いた液晶表示装置は、画像が僅かに黄色味を帯びていて、高品位な画像が得られない。
【0004】
透過光の黄色味を抑制する導光板として、特許文献1には、透明樹脂の屈折率および微粒子の屈折率の差の絶対値と、微粒子の累積50%粒子径との積が所定の範囲を満たす導光板が開示されている。
しかし、この特許文献1の導光板は、黄色度が十分に抑制されない場合があり、また、光の出射効率が、十分でない場合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2010−92755号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、黄色度が十分に抑制され、かつ光の出射効率に優れた導光板を作製するのに適した導光板用樹脂組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の導光板用樹脂組成物は、以下の構成を有する。
(1)透明樹脂とシリコーン樹脂微粒子とを含有する導光板用樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物を成形体としたときの、200mmの光路長で測定された300nm〜800nmの波長領域における平均光線透過率が25〜85%である、導光板用樹脂組成物。
(2)前記シリコーン樹脂微粒子が、前記樹脂組成物の総重量に対して0.1〜200ppmの割合で含有される、(1)に記載の樹脂組成物。
(3)前記透明樹脂がメタクリル樹脂である、(1)または(2)に記載の樹脂組成物。
(4)(1)〜(3)のいずれかの項に記載の樹脂組成物から構成される導光板。
(5)LED光源を備えた液晶ディスプレイに使用される、(4)に記載の導光板。
(6)(4)または(5)に記載の導光板が備えられたことを特徴とする、面光源装置。
(7)(6)に記載の面光源装置が、液晶パネルの背面側に配置されたことを特徴とする、液晶表示装置。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、黄色度が十分に抑制され、かつ光の出射効率に優れた導光板を作製するのに適した導光板用樹脂組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の液晶表示装置の一実施態様を示す模式的側面図である。
【図2】光路長200mmでの300nm〜800nmの波長領域における平均光線透過率の測定法を説明する図である。
【図3】全光束量の測定法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<導光板用樹脂組成物>
本発明の導光板用樹脂組成物(以下、単に「樹脂組成物」と記載する場合がある)は、透明樹脂とシリコーン樹脂微粒子とを含有し、前記樹脂組成物を成形体としたときの、200mmの光路長で測定された300nm〜800nmの波長領域における平均光線透過率が25〜85%である。
【0011】
本発明の樹脂組成物に含有される透明樹脂は、透明であれば、組成、重量平均分子量など特に限定されない。例えば、メタクリル樹脂(ポリメチルメタクリレート(PMMA)など)、ポリカーボネート樹脂、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合体樹脂(ABS樹脂)、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリル−スチレン共重合体樹脂(AS樹脂)、ポリオレフィン樹脂(ポリエチレン、ポリプロピレンなど)などが挙げられる。これらの中でも、メタクリル樹脂が好ましい。
【0012】
本発明の樹脂組成物に含有されるシリコーン樹脂微粒子は、導光板を透過する光を拡散するために用いられる。
【0013】
シリコーン樹脂微粒子は、平均粒径、重量平均分子量など特に限定されない。より効率よく光を拡散するために、シリコーン樹脂微粒子は、1〜12μmの平均粒径を有することが好ましく、2〜6μmの平均粒径を有することがより好ましい。
【0014】
シリコーン樹脂微粒子は、好ましくは樹脂組成物の総重量に対して0.1〜200ppmの割合で含有され、より好ましくは1〜90ppm、さらに好ましくは1〜50ppmの割合で含有される。
【0015】
本発明の樹脂組成物は、成形体としたときの200mmの光路長で測定された300nm〜800nmの波長領域における平均光線透過率が25〜85%、好ましくは40〜70%であり、これによって得られる導光板の黄色度を抑制しつつ高輝度化を図ることができる。
【0016】
<導光板>
本発明の導光板は、上記樹脂組成物から構成される。具体的には、本発明の導光板は、例えば、上記樹脂組成物を押出成形法、射出成形法、熱プレス成形法などによって成形して得られる。
【0017】
前記導光板には、例えば紫外線吸収剤、熱安定化剤、酸化防止剤、耐候剤、光安定化剤、蛍光増白剤、加工安定剤等の各種添加剤を添加してもよい。
【0018】
導光板の厚さは、特に限定されないが、通常は0.05〜15mmであり、好ましくは0.1〜10mmであり、より好ましくは0.5〜5mmである。
【0019】
<面光源装置および液晶表示装置>
次に、本発明の樹脂組成物から構成された導光板を用いた面光源装置およびそれを用いた液晶表示装置の一実施態様を図1に示す。
【0020】
この液晶表示装置1は、面光源装置9と液晶パネル30とを備え、面光源装置9が液晶パネル30の背面側に配置されている。
【0021】
液晶パネル30は、相互に離間して平行状に配置された上下一対の透明電極12、13の間に液晶11が封入されてなる液晶セル20と、液晶セル20の上下両側に配置された偏光板14、15とを備えてなる。これらの液晶11、透明電極12、13、および偏光板14、15によって画像表示部が構成されている。なお、透明電極12、13の内面(液晶側の面)にはそれぞれ配向膜(図示しない)が積層されている。
【0022】
面光源装置9は、上記偏光板15の下面側(背面側)に配置されている。この面光源装置9は、平面視矩形状で上面側(前面側)が開放された薄箱型形状のランプボックス5と、ランプボックス5内に収納された導光板3および光源2と、ランプボックス5に対してその開放面を塞ぐように配置されて固定された光拡散板4とを備える。光源2は、例えばLED(発光ダイオード)光源などであり、導光板3の側方位置に配置されている。
【0023】
ランプボックス5は、白色のアクリル系樹脂板からなる。導光板3の背面3aには、白色インクによるドット印刷部(ドットパターン)が形成されていて、光源2から導光板3内にその一側面から入射した光を、ドット印刷部により反射させることによって、導光板3の前面(すなわち、光出射面3b)から光を均一に出射し得るように構成されている。
【0024】
なお、使用する導光板3は、例えば、図2に示すように周側面51が研磨処理されていても良いし、光出射面3bに均一光にするための光拡散処理が施されていても良い。また、導光板3の背面3aに、白色インク等を用いたドット印刷に代えて、プリズムの形成等の光拡散処理が施されていても良いし、或いは導光板の光出射面3b以外の面に、銀蒸着されたシートやフィルム等の光反射層が設けられていても良い。
【0025】
このように構成されていることにより、本発明の液晶表示装置1は、面光源装置9から実質的に黄色味を帯びていない白色度の高い光が高輝度で液晶パネル30に向けて出射されるため、液晶パネル30の色を正確に再現することができる。したがって、黄色味を帯びることなく、自然で高品位な明るいカラー表示を実現できる。
【0026】
図1に示す液晶表示装置1では、導光板3の4つの側面のうち、一側面側に光源2が配置された構成が採用されているが、特にこのような構成に限定されない。例えば、導光板3における対向する一対の側面に、それぞれ光源2が配置された構成を採用してもよい。
【0027】
なお、光源2としては、特に限定されず、例えば冷陰極管、熱陰極管、外部電極蛍光ランプ(EEFL)などの線状光源や、発光ダイオード(LED)などの点状光源などが挙げられる。
【0028】
本発明によれば、黄色度が十分に抑制され、かつ光の出射効率に優れた導光板を作製するのに適した導光板用樹脂組成物を提供することができる。したがって、本発明は、液晶表示装置などの分野で有用である。本発明の導光板は、特に、テレビのような大画面のLED光源を備えた液晶ディスプレイに好ましく使用される。
【実施例】
【0029】
以下、実施例および比較例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0030】
(実施例1)
(板状サンプル(導光板)の調製)
PMMA(住友化学(株)製「スミペックスEXN」、屈折率:1.49)に、架橋シリコーン微粒子(モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ・ジャパン合同会社製「トスパール145」、屈折率:1.42、平均粒径:4μm)を10ppmの割合で混合した。次いで、1軸押出機(スクリュー径20mm)を用いて、樹脂温度が250℃になるように溶融混練してストランド状に押し出し、水冷してストランドカッターで切断することにより、ペレット状のメタクリル樹脂組成物(導光板用樹脂組成物)を得た。
得られたペレット状の樹脂組成物160gを、加熱圧縮成形して、3mmの厚さを有する210mm角の板状サンプル(導光板)を調製した。
【0031】
(実施例2)
「トスパール145」を1ppmの割合で混合したこと以外は、実施例1と同様にしてメタクリル樹脂組成物を得、板状サンプルを調製した。
【0032】
(比較例1および2)
架橋シリコーン微粒子「トスパール145」に代えて、ポリスチレン微粒子(積水化成品工業(株)製「SBX−12」、屈折率:1.59、平均粒径:12μm)を表1に示す割合で混合したこと以外は、実施例1と同様にしてメタクリル樹脂組成物を得、板状サンプルを調製した。
【0033】
実施例1、比較例1および2で得られた板状サンプルを用いて、平均光線透過率、イエローインデックス(YI)、および全光束量の評価を行った。評価方法は、以下の通りである。
【0034】
<200mmの光路長における可視光の平均光線透過率の測定>
得られた板状サンプルを、図2に示すように、幅50mm×長さ200mmの大きさに切断した。次いで、4つの側面51を研磨機(メガロテクニカ(株)製「プラビューティーPB−500」)で研磨して、試験片50を得た。
この試験片50の200mmの光路長における光線透過率を、(株)日立製作所製のプラスチック特性測定システム(U−4000型分光光度計および大型試料室積分球付属装置で構成される)を用いて、波長300nm〜800nmの範囲で5nm毎に測定し、得られた光線透過率の算術平均値を「可視光の平均光線透過率」とした。結果を表1に示す。
【0035】
<イエローインデックス(YI)の評価>
上記試験片50の200mmの光路長における光線透過率を、上記プラスチック特性測定システムを用いて、波長300nm〜800nmの範囲で5nm毎に測定し、得られた測定値から、JIS Z−8722に記載の方法に準じてXYZ値を求め、JIS K−7105に記載の方法に準じて黄色度(YI)を算出した。YIが10未満の場合、黄色度が抑制されていると評価した。結果を表1に示す。
【0036】
<全光束量の測定>
得られた板状サンプルを、図3に示すように、幅60mm×長さ80mmの大きさに切断した。次いで、4つの側面611、612、613、614を研磨機(メガロテクニカ(株)製「プラビューティーPB−500」)で研磨して、試験片60を得た。
この試験片60の4つの側面のうち、1つの側面611のみから入光するように6灯のLED62を照射し、残りの側面612、613、614には、内側に黒色粘着面および外側に白色面を有するテープ((株)寺岡製作所製の反射・遮光用フィルム片面テープ6370)を貼合した。このようにテープを貼合することにより、側面611から照射された光が、試験片60の両面の面方向に発光する光の量を測定することができる。
次いで、試験片60を(株)ネムテック製の球面光束計(型式1500型、直径1500mm)内にセットし、Labsphere社製のDiode Array Spectrometer(Model DAS-1100/2100)のSLMS softwareを用いて、350〜800nmの波長領域の光束量を測定した。結果を表1に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
表1に示すように、本発明の樹脂組成物を用いた実施例1および2の板状サンプル(導光板)は、黄色度が十分に抑制され、かつ光の出射効率に優れていることがわかる。一方、比較例1の板状サンプル(導光板)は、光の出射効率が低いことがわかる。また、比較例2の板状サンプル(導光板)は、黄色度が抑制されていないことがわかる。
【符号の説明】
【0039】
1 液晶表示装置
2 光源
3 導光板
4 光拡散板
5 ランプボックス
9 面光源装置
11 液晶
12、13 透明電極
14、15 偏光板
20 液晶セル
30 液晶パネル
50 試験片(導光板)
51 試験片(導光板)の側面
60 試験片(導光板)
611、612、613、614 試験片(導光板)の側面
62 LED

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明樹脂とシリコーン樹脂微粒子とを含有する導光板用樹脂組成物であって、
前記樹脂組成物を成形体としたときの、200mmの光路長で測定された300nm〜800nmの波長領域における平均光線透過率が25〜85%である、導光板用樹脂組成物。
【請求項2】
前記シリコーン樹脂微粒子が、前記樹脂組成物の総重量に対して0.1〜200ppmの割合で含有される、請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
前記透明樹脂がメタクリル樹脂である、請求項1または2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかの項に記載の樹脂組成物から構成される導光板。
【請求項5】
LED光源を備えた液晶ディスプレイに使用される、請求項4に記載の導光板。
【請求項6】
請求項4または5に記載の導光板が備えられたことを特徴とする、面光源装置。
【請求項7】
請求項6に記載の面光源装置が、液晶パネルの背面側に配置されたことを特徴とする、液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−188504(P2012−188504A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−51884(P2011−51884)
【出願日】平成23年3月9日(2011.3.9)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】