説明

導波路型光合分波回路

【解決手段】 本発明の導波路型光合分波回路1は、第1のAWG2と複数並列配置した第2のAWG3とを組み合わせ、前記第1のアレイ導波路型回折格子回路と前記第2のアレイ導波路型回折格子回路の各回路との間で入出力される光信号のうち、所定の数だけの波長の光信号を組み合わせて前記第1のAWG2と前記第2のAWG3の各回路との間で入出力させるように構成している。
【効果】 本発明によれば、第1のAWGと複数並列配置した第2のAWGとを組み合わせ、これらの第1のAWGと第2のAWGの各回路で入出力される光信号のうち、所定の数だけの波長の光信号を組み合わせて入出力させるようにしたので、中心波長間隔やパスバンド幅の異なる光信号を合分波でき、例えば1心3波多重通信システムのような双方向の通信システムに適用できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、出力の中心波長間隔やパスバンド幅が異なる通信システムにも適用可能な光合分波回路に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、FTTH(Fiber To The Home)システムが発展するにつれて2波長のデータ信号と1波長の映像信号を1本の光ファイバで双方向通信する1心3波多重通信システムが多く用いられるようになってきている。このシステムは国際的にも標準化され、国際電気通信連合の電気通信標準化部門(ITU−T)におけるG983.3という規格にて定められている。
【0003】
この規格に定められた使用波長帯は(1)データ信号(上り)1.26〜1.36μm、(2)データ信号(下り)1.48〜1.50μm、(3)映像信号1.55〜1.56μmである。この使用波長帯域を図示すると図4のようになっており、中心波長間隔、パスバンド幅がそれぞれ異なっている。
【0004】
ところで、現在使用されているシステム構成は図5のようになっている。即ち、データ信号はセンター側(電話局側)の通信機器であるデータ用OLT(Optical Line Terminal)51からは1.31μmの波長の信号と1.49μmの波長の信号が、一方映像用OLT52からは1.55μmの波長の信号がそれぞれ伝送され、光合分波器(WDM;Wavelength Division Multiplexing)53により合波される。この合波された信号はスプリッタ54によりいくつかの信号に分岐され、例えばそのうちの一つの信号はWDM55によりデータ信号である1.31μmと1.49μmの2波長及び映像信号である1.55μmの波長に分波され、ユーザ側(加入者側)通信端末であるデータ用ONU(Optical Network Unit)56及び映像用ONU57に伝送されるようになっている。なお、双方向通信であるために光信号が上記説明と反対方向にも伝送される。
【0005】
ここで、光信号を合分波するために従来次のような技術が用いられていた。まずアレイ導波路型回折格子回路(AWG;Arrayed Waveguide Grating)が挙げられる。このAWGはシリコンまたは石英の基板上に石英系のコアとクラッドを堆積させて光導波路を集積させたPLC(Planar Lightwave Circuit)の一種で、多チャンネルの合分波を一括して行うことができるという特徴を有している(例えば、非特許文献1参照)。
【0006】
また、光結合器と遅延回路が交互に従属接続した構成のラティス型フィルター回路がある。このラティス型フィルター回路は少チャンネルの合分波に適し、AWGに比べてフラットなパスバンド幅を広くとれるという特徴を有している(例えば、特許文献1参照)。
【0007】
さらに、薄膜フィルターを用いた光合分波器も提案されている。この光合分波器は導波路中に誘電体多層膜フィルターを挿入したものである(例えば、非特許文献2参照)。
【0008】
【非特許文献1】2001年電子情報通信学会エレクトロニクスソサイエティ大会 C―3―89
【非特許文献2】2002年電子情報通信学会総合大会 C―3―153
【特許文献1】特開2003−14960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところで、上記のような従来の技術には、次のような解決すべき課題があった。
【0010】
即ち、AWGは出力の中心波長間隔やパスバンド幅が基本的に一定であるために1心3波多重通信システムのように中心波長間隔が異なり、パスバンド幅も異なるシステムには一つのAWGでは適用できないという問題があった。
【0011】
また、ラティス型フィルター回路は前記したようにAWGに比べてフラットなパスバンド幅を広くとれるという利点を有するものの、やはり出力の中心波長間隔やパスバンド幅が基本的に一定であるので1心3波多重通信システムに適用することは難しい。
【0012】
さらに、薄膜フィルターを用いた光合分波器は、出力の中心波長間隔やパスバンド幅を自由に設定できるという利点を有するが、薄膜フィルターを挿入するための工程が必要となり、また薄膜フィルターの挿入工程も難しいために歩留まりが悪くなり、コスト高になるという問題があった。
【0013】
本発明は上記のような課題を解決して1心3波多重通信システムのような出力の中心波長間隔やパスバンド幅が異なるシステムにも適した導波路型光合分波回路を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は以上の点を解決するため次のような構成からなるものである。
【0015】
即ち、本発明はまず第1の態様として、複数の波長の光信号を合波若しくは分波するための回路であって、第1のアレイ導波路型回折格子回路と複数並列配置した第2のアレイ導波路型回折格子回路とを組み合わせ、前記第1のアレイ導波路型回折格子回路と前記第2のアレイ導波路型回折格子回路の各回路との間で入出力される光信号のうち、所定の数だけの波長の光信号を前記第1のアレイ導波路型回折格子回路と前記第2のアレイ導波路型回折格子回路の各回路との間で入出力させるように構成したことを特徴とする。
【0016】
また、第2の態様として、前記第1の態様において、前記第1のアレイ導波路型回折格子回路と前記第2のアレイ導波路型回折格子回路の各回路との間で入出力させる光信号は、複数の波長の光信号を組み合わせて入出力させるように構成したことを特徴とする。
【0017】
さらに、さらに第3の態様として、前記第2の態様において、前記第1のアレイ導波路型回折格子回路と前記第2のアレイ導波路型回折格子回路の各回路との間で入出力させる複数の波長の光信号は、隣接した波長同士の組み合わせであることを特徴とする。
【0018】
また、第4の態様として、前記第2の態様において、前記第1のアレイ導波路型回折格子回路と前記第2のアレイ導波路型回折格子回路の各回路との間で入出力させる複数の波長の光信号は、所定間隔を置いた波長同士の組み合わせであることを特徴とする。
【0019】
さらに、第5の態様として、前記第2の態様において、前記第1のアレイ導波路型回折格子回路と前記第2のアレイ導波路型回折格子回路の各回路との間で入出力させる複数の波長の光信号は、隣接した波長同士と所定間隔を置いた波長同士の組み合わせであることを特徴とする。
【0020】
また、第6の態様として、前記第1の態様において、前記第1のアレイ導波路型回折格子回路と前記第2のアレイ導波路型回折格子回路の各回路との間で入出力させる光信号は、1波長の光信号を入出力させるように構成したことを特徴とする。
【0021】
さらに、第7の態様として、前記第2の態様または前記第6の態様において、前記第1のアレイ導波路型回折格子回路と前記第2のアレイ導波路型回折格子回路の各回路との間で入出力させる光信号は、複数の波長の光信号と1波長の光信号の組み合わせを入出力させるように構成したことを特徴とする。
【0022】
また、第8の態様として、前記第1の態様から前記第7の態様におけるいずれかの態様において、前記第1のアレイ導波路型回折格子回路、前記第2のアレイ導波路型回折格子回路及び前記第1のアレイ導波路型回折格子回路と前記第2のアレイ導波路型回折格子回路との間で光信号を入出力させるための導波路を1枚の基板上に配置したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0023】
本発明の導波路型光合分波回路によれば、第1のAWGと複数並列配置した第2のAWGとを組み合わせ、これらの第1のAWGと第2のAWGの各回路で入出力される光信号のうち、所定の数だけの波長の光信号を組み合わせて入出力させるようにしたので、中心波長の間隔やパスバンド幅の異なる光信号を合分波できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施の形態について具体例を用いて説明する。
【0025】
図1は本発明の導波路型光合分波回路の一実施の形態の概観図である。図1において、本発明の導波路型光合分波回路1は、波線で囲った第1のAWG2とやはり波線で囲った第2のAWG3から組み合わせられており、第2のAWG3は複数の並列配置されたAWG3a、3b、3cからなっている。そして第1のAWG2と第2のAWG3との間は波線で囲った各入出力用導波路4により光信号の入出力が行われるようになっている。また、第1のAWG2、第2のAWG3及び光信号の入出力用導波路4は1枚の基板5の上に配置されている。なお、図1においては第2のAWG3は3個のAWG3a、3b、3cからなっているが、特に個数に限定はなく、目的に応じて3個以上配置しても一向に差し支えない。
【0026】
ここで、本発明の導波路型光合分波回路の作用について図を用いて詳しく説明する。図2は本発明の導波路型光合分波回路について模式的に示した図である。なお、図1と同一の箇所については同一の番号を付与し、以後も同様とする。
【0027】
図2(a)において、第1のAWG2には1本の光導波路から複数の波長λ1〜λnの光信号が重畳されて入力される。この重畳された複数の波長λ1〜λnの光信号は第1のAWG2においてλ1からλnまでの個々の波長に分波されて入出力用導波路4に入力される。この時の光信号の出力波形は図2(b)のようになっている。図2(b)の出力波形は中心波長の間隔やパスバンド幅が一定となっている。次に個々のλ1からλnまでの波長のうち通信システムの設計に基づいたいくつかの波長同士を組み合わせた光信号が第2のAWG3に入力される。図2(a)においては、例えば楕円で囲んだ隣接する波長同士を組み合わせて、A、B、C、Dとして第2のAWGを構成する各AWG3a、3b、3c、3dに入力される。そして第2のAWGを構成する各AWG3a、3b、3c、3dに入力された光信号はそれぞれ合波されて例えばΛ1、Λ2、Λ3、Λ4として出力されるようになっている。この時の光信号の出力波形は図2(c)のようになっている。ここで図2(c)の出力波形の中心波長の間隔やパスバンド幅は一定とはなっていない。即ち、本発明の光合分波回路は、2波長のデータ信号と1波長の映像信号を1本の光ファイバで双方向通信する1心3波多重通信システムのような中心波長間隔やパスバンド幅がそれぞれ異なっている光信号を通信するシステムに適用することが可能となる。
【0028】
なお、図2においては第1のAWG2から出力された光信号のうち隣接する波長同士を組み合わせて第2のAWG3に入力させるようにしたが、第1のAWG2から出力された光信号を所定間隔を置いた波長同士を組み合わせて第2のAWG3に入力させるようにしてもよい。また、隣接する波長同士と所定間隔を置いた波長同士を組み合わせて第2のAWG3に入力させるようにしてもよい。
【0029】
さらに、第1のAWG2から出力された光信号のうち1波長の光信号だけを第2のAWG3に入力させるようにしてもよい。即ち、例えば図2(a)における第2のAWGを構成する各AWG3a〜3dのうちの一つのAWGには1波長だけを入力させ、他の3つのAWGには複数の波長を組み合わせた光信号を入力させるようにしても差し支えない。要するに必要とする通信システムの設計思想に基づいて最適な組み合わせを選択すればよい。
【0030】
ここで、本発明の光合分波回路は導波路のみで構成が可能であるため他の機能を有する光回路との集積化が可能である。例えば、図3に示すようにOLT31やONU32としてLD(Laser Diode)のような光源33やPD(Photo Diode)のような受光素子34と本発明の光合分波回路であるWDM35との一体化も可能である。なお、OLTとONUとの間にはスプリッタ36が設けられ、光信号の分波、合波が行われる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明はWDM−PON(Wavelength Division Multiplexing−Passive Optical Network)システム用光合分波器やCWDM(Coarse Wavelength Division Multiplexing)システム用光合分波器等にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の導波路型光合分波回路の一実施の形態を説明する概観図である。
【図2】本発明の導波路型光合分波回路の作用を説明する模式図である。
【図3】本発明の導波路型光合分波回路の適用例を説明する図である。
【図4】1心3波多重通信システムの使用波長帯域を説明する図である。
【図5】従来の1心3波多重通信システムの構成例を説明する図である。
【符号の説明】
【0033】
1 導波路型光合分波回路
2 第1のAWG
3 第2のAWG
4 入出力用導波路
5 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の波長の光信号を合波若しくは分波するための回路であって、第1のアレイ導波路型回折格子回路と複数並列配置した第2のアレイ導波路型回折格子回路とを組み合わせ、前記第1のアレイ導波路型回折格子回路と前記第2のアレイ導波路型回折格子回路の各回路との間で入出力される光信号のうち、所定の数だけの波長の光信号を前記第1のアレイ導波路型回折格子回路と前記第2のアレイ導波路型回折格子回路の各回路との間で入出力させるように構成したことを特徴とする導波路型光合分波回路。
【請求項2】
前記第1のアレイ導波路型回折格子回路と前記第2のアレイ導波路型回折格子回路の各回路との間で入出力させる光信号は、複数の波長の光信号を組み合わせて入出力させるように構成したことを特徴とする請求項1記載の導波路型光合分波回路。
【請求項3】
前記第1のアレイ導波路型回折格子回路と前記第2のアレイ導波路型回折格子回路の各回路との間で入出力させる複数の波長の光信号は、隣接した波長同士の組み合わせであることを特徴とする請求項2記載の導波路型光合分波回路。
【請求項4】
前記第1のアレイ導波路型回折格子回路と前記第2のアレイ導波路型回折格子回路の各回路との間で入出力させる複数の波長の光信号は、所定間隔を置いた波長同士の組み合わせであることを特徴とする請求項2記載の導波路型光合分波回路。
【請求項5】
前記第1のアレイ導波路型回折格子回路と前記第2のアレイ導波路型回折格子回路の各回路との間で入出力させる複数の波長の光信号は、隣接した波長同士と所定間隔を置いた波長同士の組み合わせであることを特徴とする請求項2記載の導波路型光合分波回路。
【請求項6】
前記第1のアレイ導波路型回折格子回路と前記第2のアレイ導波路型回折格子回路の各回路との間で入出力させる光信号は、1波長の光信号を入出力させるように構成したことを特徴とする請求項1記載の導波路型光合分波回路。
【請求項7】
前記第1のアレイ導波路型回折格子回路と前記第2のアレイ導波路型回折格子回路の各回路との間で入出力させる光信号は、複数の波長の光信号と1波長の光信号の組み合わせを入出力させるように構成したことを特徴とする請求項2または請求項6記載の導波路型光合分波回路。
【請求項8】
前記第1のアレイ導波路型回折格子回路、前記第2のアレイ導波路型回折格子回路及び前記第1のアレイ導波路型回折格子回路と前記第2のアレイ導波路型回折格子回路との間で光信号を入出力させるための導波路を1枚の基板上に配置したことを特徴とする請求項1から請求項7までのいずれかの請求項に記載の導波路型光合分波回路。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−113465(P2006−113465A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−303062(P2004−303062)
【出願日】平成16年10月18日(2004.10.18)
【出願人】(000002255)昭和電線電纜株式会社 (71)
【Fターム(参考)】