説明

導電性ばね材に用いられるCu−Ni−Si系合金

【課題】強度、曲げ加工性のバランスに優れた電子部品用Cu−Ni−Si系合金。
【解決手段】Ni1.0〜4.0質量%、Niに対し1/6〜1/4濃度のSiを含有するCu−Ni−Si系基合金であって、全結晶粒界中の双晶境界(Σ3境界)の頻度が15〜60%である基合金。上記基合金は、更にMg0.2%以下、Sn0.2〜1%、Zn0.2〜1%、Co1〜1.5%、Cr0.05〜0.2%含有してもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子部品用導電性ばね材に用いられるCu−Ni−Si系合金に関し、特にコネクタ、端子、リレー、スイッチ等の電子部品に使用され、強度、曲げ加工性及び導電率のバランスに優れたCu−Ni−Si系合金に関する。
【背景技術】
【0002】
近年の電子機器の軽薄短小化に伴い、端子、コネクタ等も小型化、薄肉化が進み、強度と曲げ加工性が要求され、従来のりん青銅や黄銅といった固溶強化型銅合金に替わり、コルソン(Cu−Ni−Si系)合金、ベリリウム銅及びチタン銅といった析出強化型銅合金の需要が増加している。なかでも、コルソン合金は強度と導電率のバランスに優れ、コネクタ等の電子部品に使用される頻度が高まっている。
一般に強度と曲げ加工性は相反する性質であり、コルソン合金においても、高い強度を維持しつつ曲げ加工性を改善することが従来から研究されており、製造工程を調整し、結晶粒径、析出物の個数及び形状、集合組織を個々にあるいは相互に制御することで曲げ加工性を改善しようという取り組みが広く行われてきた。
【0003】
特許文献1では、更にCo、Zn、Mn、Cr、Alを添加したコルソン合金において、溶体化時の結晶粒成長を抑制し、曲げ加工性を改善している。特許文献2では、コルソン合金へ適量のTi、Zr、Hf又はThを含有させ、好ましくは結晶粒径を微細化する事で打ち抜き加工性及び曲げ加工性を改善している。特許文献3では、コルソン合金中のS、O含有量を0.005%未満に制限し、Sn及びMg、任意でZnの含有量を最適化し、更に結晶粒径を制御する事で曲げ加工性を改善している。
特許文献4及び5では、コルソン合金中のS含有量を制限し、Mg、Sn、Znの含有量を最適化し、結晶粒径及び結晶粒のアスペクト比を制御する事で、曲げ加工性及び応力緩和性等を改善している。特許文献6では、コルソン合金の集合組織を制御し、{123}<412>方位の極密度を規定範囲に制御する事で曲げ加工性を改善している。
特許文献7では、コルソン合金の集合組織を制御し、(I(111)+I(311))/I(220)>2.0を満たす様に集合組織を制御し、曲げ加工性を改善している。特許文献8では、コルソン合金中の熱間圧延及び溶体化処理条件を調整し、引張強度試験で降伏点効果が発現しないようにして、曲げ加工性を改善している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平5−179377号公報
【特許文献2】特開平6−184681号公報
【特許文献3】特開平11−222641号公報
【特許文献4】特開2002−38228号公報
【特許文献5】特開2002−180161号公報
【特許文献6】特開2007−92135号公報
【特許文献7】特開2006−16629号公報
【特許文献8】特開2007−169781号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年の電子部品の微細化に伴い、曲げ加工性評価において割れの有無に加え、曲げ部に発生するしわの大小も問題とされるようになった。これは、曲げ部を電気接点とする場合、しわが大きいと接触抵抗が不安定になり、電気接続の信頼性が損なわれるからである。
しかし、従来技術で評価されている曲げ加工性は、耐曲げ割れ(クラック)性であり曲げしわについてはほとんど考慮されておらず、耐曲げしわ性に優れたCu−Ni−Si系合金は得られていない。特許文献3では曲げ加工性評価においてしわの記載はあるものの曲げしわの大小についての定量評価は行われておらず、しわのない発明例は得られていない。特許文献6では曲げしわ評価を行っているが、強度と曲げ加工性に優れたCu−Ni−Si系合金を得るために{111}正極点図上における{123}<412>方位に着目し(特許文献6「0016」)、溶体化処理前の冷間圧延及び溶体化処理の条件を調整している(特許文献6「0019」)。特許文献8でも曲げしわ評価を行っているが、強度と曲げ加工性に優れたCu−Ni−Si系合金を得るために残留Ni−Si粒に着目し(特許文献8「0009」)、Ni、Si量や熱間圧延、溶体化処理条件を調整している(特許文献8「0019」)。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは上記の目的を達成すべく、従来技術とは異なり多結晶金属の粒界制御の観点から曲げ加工性について研究を重ねた結果、Cu−Ni−Si系合金の加工熱処理時に発生する焼鈍双晶の発生頻度を制御することにより高強度で、曲げしわ評価においても良好な曲げ加工性を有するCu−Ni−Si系合金を得た。
【発明の効果】
【0007】
本発明のCu−Ni−Si系合金は、高強度を維持しながら曲げ加工性が良好で曲げしわが低減された銅合金として端子、コネクタ等の用途に好適である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
次に、本発明の要件をその作用と共に説明する。
[Ni、Si]
Ni及びSiは、適切な熱処理を行うことにより、Ni2Siを主とする金属間化合物の微細な粒子を形成する。その結果、合金の強度が著しく増加し、同時に電気伝導性も上昇する。
Niは1.0〜4.0質量%、好ましくは1.5〜3質量%の範囲で添加する。Niが1.0質量%未満であると充分な強度が得られない。Niが4.0質量%を超えると、熱間圧延で割れが発生する。
Siの添加濃度(質量%)は、Niの添加濃度(質量%)の1/6〜1/4とする。Si添加濃度がNi添加濃度の1/6より少ないと強度が低下し、Ni添加濃度の1/4より多いと強度に寄与しないばかりでなく、過剰なSiによって導電性が低下する。
【0009】
[Mg、Sn、Zn、Co、Cr]
Mgには応力緩和特性及び熱間加工性を改善する効果があるが、0.2質量%を超えると鋳造性(鋳肌品質の低下)、熱間加工性及びめっき耐熱剥離性が低下する。したがって、Mgの濃度は0.2%以下と規定した。
Sn及びZnには強度及び耐熱性を改善する作用があり、更にSnには耐応力緩和特性の改善作用が、Znには、はんだ接合の耐熱性を改善する作用がある。Snは0.2〜1質量%、Znは0.2〜1質量%の範囲で添加する。前述の範囲を下回ると所望の効果が得られず、上回ると導電性が低下する。
CoおよびCrにはSiと化合物を生成し、析出により強度を改善する作用がある。更にCoには熱処理時に結晶粒の粗大化を防ぐ作用が、Crには耐熱性の改善作用がある。
Coは1〜1.5質量%、Crは0.05〜0.2質量%の範囲で添加する。前述の範囲を下回ると所望の効果が得られず、上回ると導電性が低下する。
【0010】
[双晶境界]
金属材料は通常、様々な結晶方位を有する結晶粒の集合体、すなわち多結晶体であり、金属材料中には原子の並び方の相違により境界すなわち結晶粒界が存在している。結晶粒界は隣接結晶粒間の方位差により大角粒界・小角粒界・亜粒界に分類され、一般に結晶粒界とは隣接結晶粒間の方位差が15°以上の大角粒界を指す。一方、結晶粒界は隣接結晶粒間の整合性によりランダム粒界および対応粒界に分類される。Cu−Ni−Si系合金の加工熱処理により発生する焼鈍双晶はΣ3の対応粒界であり、結晶粒間の整合性が高い。
Σ値とは粒界の整合性を示す指標であり、結晶粒界を挟む左右の結晶格子を重ね合わせた時、重なり合う対応格子点と格子点の密度比が1/nのとき、Σ=nの対応関係にあると称する。双晶境界は原子の整合性が良い為、境界近傍において不均一変形が起こりにくく、曲げ変形時、境界近傍を基点とする割れやしわが発生しにくい。このため、結晶粒界と双晶境界を合わせた全境界(ここでは、小角粒界及び亜粒界を除く)中の双晶境界の割合を制御する事で、曲げ加工性を改善する事が出来る。
本発明のCu−Ni−Si系合金では、全境界中の双晶境界(Σ3境界)の頻度(割合)を15%以上60%以下、好ましくは30%以上60%以下に制御する事で曲げ加工性が改善される。15%未満では、所望の曲げ加工性が得られず、60%を超えると溶体化時の結晶粒が粗大化し、強度低下が起こる。
【0011】
双晶境界の割合を求める方法としては、例えば、FESEM(Field Emission Scanning Electron Microscope)によるEBSP(Electron Back Scattering Pattern)法がある。この方法は、試料表面に斜めに電子線を当てたときに生じる後方散乱電子回折パターン(菊地パターン)に基づき、結晶方位を解析する方法である。本方法で結晶方位を解析した後、隣接結晶方位間の方位差を求め、ランダム粒界および各対応粒界の割合(粒界性格分布)を決定することが出来る。双晶境界はΣ3対応粒界に相当するため、双晶境界の割合は(対応粒界Σ3の長さの総和)/(結晶粒界の長さの総和)×100で計算される。なお、結晶粒界とは隣接結晶粒間の方位差が15°以上となる境界を指し、小角粒界や亜粒界を含まない。
【0012】
本発明における双晶は焼鈍双晶であり、圧延後の焼鈍により発生する再結晶に付随して生成する双晶である。双晶の発生頻度は材料の積層欠陥エネルギーと相関があり、積層欠陥エネルギーが低いと焼鈍時に発生する双晶頻度は上昇し、高いと頻度が低下する。一方、積層欠陥エネルギーは、固溶Ni・Si量を増加させること(正確には、固溶Si量を増加させること)により低下する。従って、双晶境界頻度を増加させるには最終の再結晶焼鈍(本発明では溶体化処理に対応する)より前に積層欠陥エネルギーを低くするために固溶Ni・Si量を増大させればよい。
しかし、従来のコルソン合金の製造方法では、NiおよびSiの固溶は溶体化処理時に行う事が通例であり、熱間圧延を不必要に高温で行う事はコスト増加に加え、熱間圧延時に割れの危険が増大する事から行われていなかった。また、溶体化処理を熱間圧延で兼ねる製造方法もあったが、溶体化処理に相当する焼鈍後、熱間圧延を行っても、鋳造時に発生したNi−Si晶出物を完全に固溶させるには至らず、積層欠陥エネルギーを十分に低下させる事は出来なかった。この結果、従来法で得られる双晶境界頻度は12%程度であった。一方、本発明では鋳造時の冷却速度を上げる事でNi−Si晶出物の個数および粒径を減少させ、さらに、熱間圧延工程で割れが発生しない限度内において高温長時間の焼鈍条件を採用し、材料を冷却する事で固溶Ni・Si量を従来法に比して高め、所望とする双晶境界頻度を得た。
【0013】
[製造方法]
本発明のコルソン合金は、「溶解、鋳造→熱間圧延→面削」後、溶体化処理と冷間圧延および時効処理を組み合わせた一般的な製造プロセスで製造され、最終冷間圧延後に歪取焼鈍を行う場合や溶体化処理を熱間圧延で兼ねる場合もある。焼鈍双晶は溶体化処理時の再結晶に伴い発生する為、双晶境界の頻度15%以上60%以下を達成するためには、上記鋳造から熱間圧延までの条件を下記の範囲内で行い、最終の再結晶焼鈍、即ち溶体化処理以前にNi及びSiを充分に固溶しておくとよい。
鋳造時のインゴット冷却速度を300〜500℃/minとし、鋳造冷却時に粗大Ni−Si粒子の晶出を抑制する。インゴット冷却速度500℃/minを超える速度は、費用面から実用的でない。次に加熱温度940〜1000℃、好ましくは950〜980℃で加熱時間3〜6hで焼鈍してインゴットに残留したNi−Si粒子を固溶させた後、熱間圧延を行う。加熱温度940℃未満又は3時間未満であると、残留したNi−Si粒子の固溶が不十分である。一方、熱間圧延時の1000℃を超える高温での焼鈍は熱間圧延割れの危険が増大する。6時間を超える焼鈍は上記温度域では所望の効果に対し過剰な焼鈍となり、費用面から好ましくない。熱間圧延終了時の材料温度は650℃以上とする。650℃未満であると熱延中に析出するNi2Si量が増加し、十分な固溶Ni・Si量を確保出来ない為、双晶境界頻度が低下する。
面削後、加工度85%以上の冷間圧延を実施し、700〜820℃で5sec〜30minの溶体化処理(この場合は、最終の再結晶焼鈍となる。)を行った後、350〜550℃で2〜30hの時効処理を行う。さらに、加工度5%〜50%で冷間圧延を行う。
【実施例1】
【0014】
(試料の製造)
電気銅を溶解し、添加元素を大気溶解炉中に所定量投入し、溶湯を攪拌した。その後、鋳込み温度1250℃で鋳型に出湯し、インゴットを得た。鋳型の水冷条件を変える事で、鋳造時のインゴット冷却速度を表中の条件に調整した。鋳造時のインゴット冷却速度とは、溶湯が凝固後、インゴット温度が1100℃から500℃に至るまでの平均冷却速度(℃/min)である。次にこのインゴットを以下の順で加工・熱処理し、板厚0.25mmの試料を得た。
(1)インゴットを表中の条件で焼鈍・熱間圧延し、板厚を所定の厚みに仕上げた後、水冷した。
(2)表層の酸化スケールを面削で除去した。
(3)板厚0.3mmまで冷間圧延を実施した。
(4)表中の溶体化温度で1分間の溶体化処理を実施した。
(5)450℃×10hの条件で時効処理を施した。
(6)時効材を0.25mmまで冷間圧延した。
上記材料について、下記基準に従い双晶境界に関するEBSP測定、引張試験及びW曲げ試験を実施した。
【0015】
[双晶境界]
双晶境界の割合を求める方法として、FESEM(Field Emission Scanning Electron Microscope)によるEBSP(Electron Back Scattering Pattern)法を用いた。本方法で結晶方位を解析した後、隣接結晶方位間の方位差を求め、粒界性格分布を決定した。観察倍率は1000倍とし、観察視野の合計は2mm2とした。対応粒界はΣ値を用いて表され、双晶境界はΣ3対応粒界に相当する。双晶境界の割合(%)は(対応粒界Σ3の長さの総和)/(結晶粒界の長さの総和)×100で計算される。なお、式中の結晶粒界とは隣接結晶粒間の方位差が15°以上となる境界を指し、小粒界や亜粒界を含まない。
【0016】
[引張強さ]
各銅合金板について、圧延方向に平行な方向に引張試験を行い、JIS Z2241に準拠して求めた。下記実施例で高強度とは、合金Aに関しては引張強度700MPa以上であることを、合金Bに関しては650MPa以上であることを、合金Cに関しては600MPa以上である事をいう。
【0017】
[曲げ割れ]
曲げ軸が圧延方向と平行になるようにして幅10mm×長さ30mmの短冊試験片を採取した。この試験片のW曲げ試験(JIS H3130)を行い、割れの発生しない最小曲げ半径をMBR(Minimum Bend Radius)とし、板厚t(mm)との比MBR/tにより評価した。合金Aに関しては、Bad way(B.W.)方向のMBR/tが1以下の場合、曲げ加工性の割れ評価が良好(○)であり、それ以外を不良(×)と判断した。
合金BおよびCに関しては、MBR/tが0.5以下の場合、曲げ加工性が良好と判定した。
[曲げしわ]
上記W曲げ試験において、MBRで曲げ加工された試験片の曲げ凸部表面に観察されるしわのSEM像を写真撮影した。写真上で曲げしわの幅の測定を行い、試験片内での最大の曲げしわの幅を求めた。各供試材につき3つの試験片に対して測定を行い、平均値を曲げしわの幅とした。B.W.方向の曲げしわの幅が30μm以下の場合、曲げ加工性のしわ評価が良好(○)であり、30μmを超えると不良(×)と判断した。なお、表中「−」は評価不能を示す。
【0018】
本発明に係るNi−Si系銅合金A(Cu−2%Ni−0.5%Si−0.1%Mg)の実施例を、表1に示す。
本発明に係るNi−Si系銅合金B(Cu−1.6%Ni−0.4%Si−0.4%Sn−0.5%Zn)の実施例を、表2に示す。
本発明に係るNi−Si系銅合金C(Cu−1.6%Ni−0.4%Si)の実施例を、表3に示す。
比較例1、8及び15では、鋳造時の冷却速度が300℃/min未満なので、インゴットに粗大Ni−Si粒晶出物が生成し、母相へのNi及びSiの固溶量が低下し、積層欠陥エネルギーが十分に低下しないため、双晶境界頻度が15%未満であった。
比較例2〜4、9〜11及び16〜18では、熱延条件が940℃以上かつ3h以上、及び終了温度650℃以上のいずれかを満たさないので、Ni−Si粒介在物が十分に固溶せず、積層欠陥エネルギーが低下しないため、双晶境界頻度が15%未満であった。
比較例5、12及び19では、冷間加工度が85%以下なので、溶体化時の再結晶が不十分で双晶境界頻度が15%未満となった。
比較例6、13及び20では、溶体化温度が700℃以下なので、再結晶が不十分で、双晶境界頻度が15%未満となり、強度も低下した。
比較例7、14及び21では、溶体化温度が820℃を超えているので、双晶境界頻度が60%を超え、結晶粒径が大きくなるため、曲げしわ幅が大きくなった。
【0019】
【表1】

【0020】
【表2】

【0021】
【表3】

【実施例2】
【0022】
(試料の製造)
電気銅を溶解し、大気溶解炉中に添加元素を表4に示す所望の組成となる様に所定量投入し、溶湯を攪拌した。その後、鋳込み温度1250℃で鋳型に出湯し、冷却速度を400℃/minに調整し、インゴットを得た。次に、このインゴットを以下の順で加工・熱処理し、板厚0.25mmの試料を得た。
(1)インゴットを950℃で4時間焼鈍後、圧延後の終了温度が700℃になる様に熱間圧延を実施した。
(2)表層の酸化スケールを面削し、板厚を5mmに仕上げた。
(3)板厚0.3mmまで冷間圧延を実施した。
(4)750℃で1分間の溶体化処理を実施した。
(5)450℃×10hの条件で時効処理を施した。
(6)時効材を0.25mmまで冷間圧延した。
上記材料について、双晶境界に関するEBSP測定、引張試験、導電率及びW曲げ試験を実施した。双晶境界頻度及びW曲げ試験の評価は前述の実施例1と同様に行い、引張強さは組成の影響を大きく受けるため、600MPa以上を高強度と判定した。
【0023】
【表4】

【0024】
結果を表5に示す。表5に示す様に、発明例13〜24は所望の双晶境界頻度が得られ、曲げ加工性が良好であり、強度も良好であった。比較例22はNi量が規定量に比べて低く、曲げ加工性は良好であるが、引張強さが低下した。比較例23はNi量が規定量に比べて高く、熱間圧延割れが発生し、試料作製が不可となった。
【0025】
【表5】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
1.0〜4.0質量%のNiを含有し、Niの質量%濃度に対し1/6〜1/4の濃度のSiを含有し、残部がCu及び不可避的不純物からなるCu−Ni−Si系合金であって、EBSP測定による集合組織観察の結果、全結晶粒界中の双晶境界(Σ3境界)の頻度を15%以上60%以下に制御した合金。
【請求項2】
更に0.2質量%以下のMgを含有する請求項1に記載のCu−Ni−Si系合金。
【請求項3】
更にSnを0.2〜1質量%、Znを0.2〜1質量%含有する請求項1又は2に記載のCu−Ni−Si系合金。
【請求項4】
更にCoを1〜1.5質量%、Crを0.05〜0.2質量%含有する請求項1〜3いずれか1項記載のCu−Ni−Si系合金。

【公開番号】特開2009−263784(P2009−263784A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82784(P2009−82784)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(591007860)日鉱金属株式会社 (545)
【Fターム(参考)】