説明

導電性ゴムローラ、画像形成装置及び転写ローラ

【課題】転写ローラ等の導電性ゴムローラにおいて、環境変化等によるローラ抵抗値の変動量が小さく、また、抵抗のばらつきや電圧依存性が小さい導電性ゴムローラを提供する。
【解決手段】ゴム層が、極性ゴムをゴム主成分とし、ゴム成分100質量部に対し、トルエン着色透過度(JIS K6218-4:2005)20%以上75%以下であるカーボンブラック30質量部以上80質量部以下を含有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真複写装置、プリンター及び静電記録装置等の画像形成装置において帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ等として、特に転写ローラとして、好適に使用される導電性ゴムローラに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写機や静電記録装置等の画像形成装置において、電圧印加した導電性ゴムローラを電子写真感光体表面に押し当て、帯電する接触帯電方式が主流となっている。そして、画像形成の中心である電子写真感光体ドラム(以下、単に「感光体」という)廻りに帯電、現像、転写等の各工程に応じて導電性ゴムローラが用いられている。
【0003】
近年、このような導電性ゴムローラの弾性体層(以下、「ゴム層」ともいう)のゴム成分として、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリン系ゴム等の極性ゴムが用いられている。極性ゴムはポリマー内に極性基が存在するため導電性(イオン導電性)を有し、電気抵抗のばらつき、電気抵抗の電圧依存性が小さいので、導電性ゴムローラの弾性体層に適している。
【0004】
また、感光体周りで使用される導電性ゴムローラでは、弾性体層は体積固有抵抗が2×109Ω・cm以下である場合が多い。例えば、NBRのみでは、その加硫物の体積固有抵抗は2×109Ω・cmから1×1010Ω・cmの範囲であり、弾性体層としたときは導電性が不十分となってしまう。
【0005】
そのため、加硫物の体積固有抵抗が1×107Ω・cmから3×109Ω・cmの範囲であるエピクロルヒドリン系ゴムをNBRにブレンドして、所望の体積固有抵抗が得られるように調整する方法が一般に採られている(例えば、特許文献1)。
【0006】
また、近年では、カラー化・高画質化に対応するために、弾性体層の抵抗がより低い導電性ゴムローラが求められている。そこで、エピクロルヒドリン系ゴムの単独使用や、過塩素酸イオンや塩化物イオンを含む第4級アンモニウム塩等の各種イオン導電剤の添加が試みられている(例えば、特許文献2)。
【0007】
しかしながら、このようなゴム弾性体を用いた導電性ゴムローラの場合、温度や湿度により抵抗値が変化し易く、使用環境により画像品質が変動するといった課題がある。また、第4級アンモニウム塩等の各種イオン導電剤は表面へ移行し易く、汚染や通電等による抵抗値の経時変化を生じる恐れがあるため、高速化や長寿命化に対応可能な通電耐久性が得られない場合がある。
【0008】
そこで、このような問題を解決する方法として、NBRとエピクロルヒドリン系ゴムをブレンドして使用し、これに電子導電材のカーボンブラックを配合する方法が提案されている(例えば、特許文献3)。
【0009】
また、エピクロルヒドリンゴムにカーボンブラック等の導電性フィラーを添加する方法も提案されている(例えば、特許文献4)。
【0010】
このような導電性ゴム材を用いた導電性ゴムローラにおいては、環境依存性や通電耐久性に優れた導電性ゴムローラが得られる。しかしながら、カーボンブラックによっては、ゴム材料中での分散状態により抵抗値が変動し、材料ロットによる抵抗値のばらつきが生じる他、導電性ゴムローラ内においても微妙な分散状態の違いで局所的抵抗のばらつきが生じる。さらには、このような導電性ゴム材を用いた導電性ゴムローラは、抵抗値の印加電圧による依存性が大きく、一定の抵抗値を得るために精密な印加電圧の制御装置が必要になるという問題もある。
【特許文献1】特許第3656904号公報
【特許文献2】特開2002−132020号公報
【特許文献3】特開2004−263059号公報
【特許文献4】特開2005−43703号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明の課題は、転写ローラ、帯電ローラ、現像ローラ等の導電性ゴムローラにおいて、環境変化等によるローラ抵抗値の変動量が小さく、また、抵抗ばらつきや抵抗の電圧依存性が小さい導電性ゴムローラを提供することである。さらに、本発明の課題は、環境変化等によるローラ抵抗値の変動が少ない、転写ローラを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明者らは上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、ゴム主成分を極性ゴムをとし、これにある特性で評価したカーボンブラックを配合して、弾性体層(ゴム層)としたならば、良好な性質の導電性ゴムローラが製造できることを見出した。さらに、検討して、ついに本発明に至った。
【0013】
すなわち、本発明は、導電性芯材上にゴム層が形成された導電性ゴムローラであって、ゴム層のゴム成分の主成分が極性ゴムであり、ゴム層中には、トルエン着色透過度(JIS K6218-4;2005)20%以上75%以下であるカーボンブラックが、該ゴム成分100質量部に対し、30質量部以上80質量部以下含有されていることを特徴とする導電性ゴムローラである。
【0014】
また、本発明は、カーボンブラックが、沃素吸着量(JIS K6217-1;2001)20mg/g以下、かつ、ジブチルフタレート(DBP)吸油量(JIS K6217-4;2001)40ml/100g以下である、上記導電性ゴムローラである。
【0015】
さらに、本発明は、極性ゴムが、アクリロニトリルブタジエンゴム又はエピクロルヒドリン系ゴムである上記導電性ゴムローラである。
【0016】
また、本発明は、感光体上の静電像を現像剤により顕像化する画像形成装置であって、感光体に相対する転写ローラとして、上記導電性ゴムローラが配置されている画像形成装置である。
【0017】
さらにまた、本発明は、感光体上の静電像を現像剤により顕像化する画像形成装置において感光体に相対して配置されている転写ローラが、上記導電性ゴムローラである転写ローラである。
【発明の効果】
【0018】
本発明の導電性ゴムローラは、環境変化等によるローラ抵抗値の変動量が小さく、また、抵抗ばらつきや抵抗の電圧依存性が小さい導電性ゴムローラである。そのため、本発明の導電性ゴムローラは、電子写真感光体等の像担持体に電子写真プロセスや静電記録プロセス等の作像手段で形成担持させたトナー像による転写画像を紙等の記録媒体や転写材に転写させる転写装置の転写ローラに好適なものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の導電性ゴムローラについて詳述する。
【0020】
本発明の導電性ゴムローラの断面図を図1に示す。
【0021】
本発明の導電性ゴムローラは、少なくとも表面が導電性である導電性芯材1に対して同心状に導電性のゴム層(弾性体層)2が設けられたものである。なお、導電性芯材1とゴム層2の間には接着剤層や導電性を調整する機能層が設けられていてよい。また、ゴム層2の表面は、表面性状をコントロールするための表面層が設けられていても良く、紫外線や電子線で表面処理されていてもよい。なお、本発明の導電性ゴムローラは、画像形成装置の感光体の周りに当接して使用する帯電ローラ、現像ローラ、転写ローラ等として使用する時は、必ずしも必要ではないが、使用目的に応じた表面加工されていることが好ましい。
【0022】
導電性芯材1としては、少なくとも表面が導電性であれば、通常のローラにおいて使用するものが支障なく使用できる。例えば、鉄、銅、青銅、ステンレス、鋳鉄、黄銅、アルミニウム等の棒、パイプが使用可能であり、表面をニッケル等でメッキしておくこともできる。また、カーボンブラック、金属粉、カーボン繊維、金属繊維、金属酸化物、樹脂或いは無機粉末の表面を金属化したもの等の導電性フィラーを含む樹脂組成物からなる棒、パイプ、さらに、樹脂の棒、パイプの表面を金属メッキ等で導電化したものも使用可能である。なお、導電性芯材1の外径としては、使用目的により、また、必要な強度により異なり、適宜決定すればよい。例えば、導電性ゴムローラが転写ローラ用で、材料が鉄の表面にニッケルメッキをしたものでは、外径が2mm以上12mm以下、好ましくは4mm以上8mm以下であることが適当である。
【0023】
ゴム層を形成するゴム材料として、NBR、エピクロルヒドリン系ゴム等の極性ゴムを主成分とするゴム成分に導電材、加硫剤(架橋剤)、加硫促進剤、安定剤、フィラー等の添加剤を添加したものが使用される。ここでゴム主成分とは、ゴム成分の総量に対し70質量%以上の場合を意味する。
【0024】
極性ゴムとしては、エピクロルヒドリン系ゴム又はNBRが好ましく、いずれか一方であても、混合して用いられてもよい。
【0025】
エピクロルヒドリン系ゴムとしては、特に限定されず、市販されているエピクロルヒドリン単独重合体(ECH)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体(ECH−EO)、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体(ECH−AGE)、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体(ECH−EO−AGE)等が支障なく使用できる。中でも、イオウ加硫又は有効加硫が可能であるECH−EO−AGEが好ましい。なお、エチレンオキサイドを共重合するエピクロルヒドリン系ゴムでは、エチレンオキサイドの共重合割合が40mol%以上であることがより好ましい。特に、ECH−EO−AGEでは、エチレンオキサイドの共重合割合が多くなるに従い加硫ゴムの体積固有抵抗値が小さくなる傾向がある。このため、エチレンオキサイドの共重合割合が40mol%よりも小さいと導電性ゴムローラの弾性体に必要な電気抵抗値が得にくく、エピクロルヒドリン系ゴムの配合割合が多くなり、環境依存性を高くしてしまう。より好ましくは、エピクロルヒドリン系ゴム中のエチレンオキサイドの共重合割合は38mol以上58mol%以下である。なお、上記エピクロルヒドリン系ゴムは単独あるいは2種以上のブレンドのいずれであってもよい。
【0026】
NBRは特に限定されず、市販のNBRが使用可能であるが、中でもアクリロニトリル含量が15〜25質量%であるNBRがより好ましい。平均アクリロニトリル含量が15質量%未満では、所定の抵抗値を得ることが難しく、アクリロニトリル含量が25質量%を超えると抵抗の環境依存性が大きくなる傾向にある。なお、上記NBRは単独あるいは2種以上のブレンドのいずれであってもよい。
【0027】
本発明では、ゴム層には、少なくとも、上記ゴム成分の他に、JIS K6218−4;2005によるトルエン着色透過度(以下、「トルエン着色透過度」と略す)が20%以上75%以下であるカーボンブラックが配合されていることに特徴がある。
【0028】
なお、カーボンブラックのトルエン着色透過度はカーボンブラックが未分解有機物の残留程度を示す指標である。トルエン着色透過度が20%以上75%以下の範囲にあることは、カーボンブラック中に未分解有機物の残留程度が多いことを意味している。
【0029】
なお、トルエン着色透過度が75%以下であると、カーボンブラック中の未分解有機物の残留程度が十分であり、カーボンブラック添加量に対する導電性付与効果が緩和される。したがって、カーボンブラックによる抵抗値の急激な低減を抑制し、抵抗バラツキや電圧依存性などの電子導電の欠点を抑えたまま極性ゴムの環境依存性が改善された導電性ゴムローラを可能とする。ところが、トルエン着色透過度が75%を超えるカーボンブラックでは、未分解有機物の残留程度が少なく、カーボンブラックによる導電性付与効果が高すぎてしまう。そのため、カーボンブラック添加量に対し抵抗値が急激に低下し、抵抗値の制御が困難であり、抵抗ばらつき、電圧依存性の増大等の問題も生じる。
【0030】
一方、トルエン着色透過度が20%未満であると、導電性発現のためにカーボンブラックを多量に配合する必要性が生じ、混練加工性が劣る他、得られる加硫物の硬度が高くなり過ぎる問題が生じる。
【0031】
本発明では、上記カーボンブラックを、ゴム成分100質量部に対し30質量部以上、80質量部以下の範囲で添加する。添加量が30質量部未満である場合、抵抗の環境依存性の改善効果が得られない。また、添加量が80質量部を超えると本発明範囲内のカーボンブラックであっても導電性の付与効果が高すぎ、抵抗にばらつきや電圧依存性が大きくなり、硬さも高くなり過ぎてしまう。
【0032】
本発明では、トルエン着色透過度が上記した範囲であると、カーボンブラックはいずれでも使用可能である。しかも、カーボンブラックとしては、JIS K6217−1;2001によるよう素吸着量(以下、「よう素吸着量」と略す)が20mg/g以下であることが好ましい。また、該カーボンブラックは同時にJIS K6217−4;2001によるジブチルフタレート(DBP)吸油量(以下、「DBP吸油量」と略す)が40ml/100g以下であることが好ましい。
【0033】
よう素吸着量は、カーボンブラックの粒子径の指標となるものであり、よう素吸着量が20mg/g以下であるとは、カーボンブラックが比較的大粒子径であることを意味している。また、DBP吸油量はストラクチャー(カーボンブラック粒子のつながり)の大きさの指標となるものであり、DBP吸油量が40ml/100g以下であることは、ほとんどストラクチャーをもたないことを意味している。よう素吸着量が20mg/gより大きく、かつDBP吸油量が40ml/100gより大きいことは、小粒子径・高ストラクチャーのカーボンブラックであることを意味している。この場合は、カーボンブラックによる導電性付与効果が高く、抵抗のばらつきや電圧依存性が大きくなる傾向にある。
【0034】
なお、DBP吸油量は40ml/100g以下であるが、よう素吸着量が20mg/gより大きい場合、すなわち、小粒子系・低ストラクチャーのカーボンブラックの場合、カーボンブラックのゴム成分への分散が困難となり、抵抗ばらつきが大きくなる傾向にある。逆に、よう素吸着量が20mg/g以下であるが、DBP吸油量が40ml/100gより大きい場合、すなわち、大粒子系・高ストラクチャーのカーボンブラックの場合、電圧依存性が大きくなる傾向にある。
【0035】
また、本発明の導電性ゴムローラに使用されるゴム組成物には、一般のゴムに使用されるその他の成分を必要に応じて、通常、使用される量を含有させることができる。例えば、硫黄、含硫黄化合物等の加硫剤・加硫促進剤、炭酸カルシウム等の充填剤、滑剤、サブ等の加工助剤、OBSH、ADCA、DPT等の発泡剤、尿素等の発泡助剤、酸化亜鉛、ステアリン酸等の加硫助剤などがローラの用途に応じて配合される。
【0036】
本発明の導電性ゴムローラは、導電性ゴム組成物をチューブ状に加硫成形した後導電性芯材をチューブに押し込む、導電性ゴム組成物と導電性芯材を共押出し加硫する、あるいは、導電性芯材を備えた金型に導電性ゴム組成物を注入し加硫する等で製造される。
【0037】
具体的には、未加硫の導電性ゴム組成物を押出し機よりチューブ状に2m/分から15m/分の範囲の速度で押出し、加硫缶又は連続加硫炉で140℃から160℃の温度で、20分から50分の間加熱し、導電性のゴム(弾性体)チューブを作成する。得られた導電性ゴムチューブを所定の長さに切断した後に、接着剤を塗布した導電性芯材を挿入し、更に150℃から200℃の温度で、10分から60分の間加熱して導電性芯材と導電性ゴムチューブを接着する。その後、その表面を研磨機により研磨して、導電性ゴムローラが得られる。なお、研磨条件としては、ゴム層の厚み、硬さ、研磨機等により異なるが、研磨砥石:GC#60〜120、砥石回転速度:1500RPMから2000RPM、送り速度:300mm/から700mm/分とすることが適当である。
【0038】
なお、本発明の導電性ゴムローラには、必要に応じて、弾性体層の外周上に樹脂等の層を設けることも出来る。
【0039】
本発明の導電性ゴムローラは、電子写真複写装置、プリンター及び静電記録装置等の画像形成装置において、感光体廻りに使用される帯電ローラ、転写ローラ、現像ローラ等に好適に使用可能である。中でも、感光体等の像担持体に電子写真プロセス、静電記録プロセス等の作像手段で形成担持させたトナー像による可転写画像を紙等の被転写材に転写させる画像形成装置に搭載される転写ローラとして有用である。
【実施例】
【0040】
以下に実施例及び比較例を用いて、本発明を詳細に説明するが、本発明は、これら実施例に限定されるものではない。
【0041】
はじめに、以下に示す原材料をオープンロールで混練を行い各実施例及び比較例のゴム組成物を作製した。なお、各実施例及び比較例で使用した資材は以下の通りである。
1)ゴム成分
CHR:エピクロルヒドリンゴム「ゼクロン3106」(商品名、日本ゼオン株式会社製、ECH−EO−AGE(共重合比(mol%)=40:56:4)
NBR:アクリロニトリルブタジエンゴム「Nipol DN401L」(商品名、日本ゼオン株式会社製、アクリロニトリル含量18質量%)
EPDM:エチレンプロピレンジエンゴム「EPT9070E」(商品名、三井化学株式会社製)
2)カーボンブラック
実施例、比較例において、下記表1のカーボンブラックを使用した。
【0042】
【表1】

【0043】
3)加硫剤他
イオウ(S):「サルファックスPMC」(商品名、鶴見化学工業株式会社製)、加硫剤
DM:ジベンゾチアジルジスルフィド「ノクセラーDM」(商品名、大内新興化学工業株式会社製)、加硫促進剤
TET:テトラエチルチウラムジスルフィド「ノクセラーTET」(商品名、大内新興化学工業株式会社製)、加硫促進剤
酸化亜鉛:酸化亜鉛2種(ハクスイテック株式会社製)、加硫促進助剤
ステアリン酸:「ルナックS20」(商品名、花王株式会社)、加硫促進助剤
ADCA:アゾジカルボンアミド「ビニホールAC#LQ」(商品名、永和化成株式会社製)、発泡剤
尿素:「セルペーストA」(商品名、永和化成株式会社製)、発泡助剤
また、実施例、比較例で作製した導電性ゴムローラについて、ゴム層の抵抗を下記により測定し、抵抗ムラ、抵抗の環境依存性及び抵抗の電圧依存性を評価した。
1)ゴム層の抵抗測定
作製した導電性ゴムローラを、芯材の両端に各4.9Nの荷重をかけて外径30mmのアルミニウムドラムに圧着した後、アルミニウムドラムを回転させ、導電性ゴムローラを0.5RPMで連れ回りさせた。この状態で芯材とアルミニウムドラムの間に1000Vの電圧を印加して、導電性ゴムローラ一回転にわたり抵抗を測定した。
2)抵抗ムラ
上記1)において、抵抗値の測定を、作製した導電性ゴムローラを23℃/55%RH(N/N)環境で24時間以上置いた後に、23℃/55%RH(N/N)環境で行った。測定値の最大値(Rmax)及び最小値(Rmin)から求めたlog(Rmax/Rmin)を抵抗ムラ桁とする。この値から下記基準で抵抗ムラを評価した。なお、ここで測定した一回転分の測定値の平均が当該ローラのゴム層の抵抗値(R1000)である。
○:抵抗ムラ桁1.2未満(抵抗ムラ 小)
×:抵抗ムラ桁1.2以上(抵抗ムラ 大)
3)電圧の電圧依存性
抵抗値及び抵抗ムラを測定した後に、芯材とアルミニウムドラムとの間の印加電圧を100Vに下げ、電圧が安定したところで、再び、導電性ゴムローラの抵抗を測定した。そして、その平均値を求め、R100とした。R1000及びR100から求めたlog(R100/R1000)の絶対値を電圧依存桁とする。これが小さい程、導電性ゴムローラの電圧依存性が良いと判断される。この値から下記基準で抵抗の電圧依存性を評価した。
○:電圧依存桁0.6以下 (電圧依存性 小)
△:電圧依存桁0.6超1.2以下(電圧依存性 中)
×:電圧依存桁1.2超 (電圧依存性 大)
4)抵抗の環境依存性
抵抗ムラ及び電圧依存性を測定した後に、導電性ゴムローラの抵抗を、10℃/15%RH(L/L)環境及び55℃/95%RH(H/H)環境で、上記1)に従い、それぞれ抵抗値を測定した。この時の抵抗値をそれぞれRLL、RHHとした時、log(RLL/RHH)の絶対値を環境変動桁とする。この値から下記基準で抵抗の環境依存性を評価した。なお、各測定は、測定の環境条件に1時間置き、温度・湿度条件に馴染ませた後に行った。
○:環境変動桁0.8以下 (環境依存性 小)
△:環境変動桁0.8超1.0以下(環境依存性 中)
×:環境変動桁1.0超 (環境依存性 大)
実施例1〜8
表2に示すゴム成分合計100質量部に対して、酸化亜鉛5質量部、ステアリン酸1質量部、硫黄1.5質量部、DM1.5質量部、TET1質量部、ADCA4質量部及び尿素2質量部と共に、表2に示すカーボンブラックを表2に示す量比で配合し、ゴム層用のゴム組成物を作成した。次いで、この組成物を押出し機からチューブ状に押出した後、加硫缶にて160℃で30分間加硫を行い、内径5mm、外形20mmのゴム層用のチューブを作製した。このチューブにφ6mmのステンレス製の導電性芯体を挿入し、ローラ状の成形体を得た。次いでこの成形体を外径がφ14mmになるように研磨して、導電性ゴムローラを作製した。
【0044】
作製した導電性ゴムローラの各種性能を上記により評価した。結果を表2に示す。
【0045】
比較例1〜5
使用するゴム成分を表3に示すように変更し、また、配合するカーボンブラックを表3に示すカーボンブラック及び量にする他は、実施例1〜8と同様にして、導電性ゴムローラを作製し、各種性能を評価した。結果を表3に示す。
【0046】
【表2】

【0047】
【表3】

【0048】
実施例1〜4及び比較例1、2より、カーボンブラックのトルエン着色透過度では、本発明の範囲内が適していることがわかる。トルエン着色透過度が大きい比較例1、2では環境依存性に優れた導電性ゴムローラが得られるものの、カーボンブラックによる導電性付与が高くなり過ぎ、電圧依存性や抵抗ムラが大きい。
【0049】
実施例2、5、6及び比較例3、4より、トルエン着色透過度が本発明の範囲内であるカーボンブラックを30質量部以上80質量部以下添加することが適していることがわかる。すなわち、カーボンブラックの添加量が少ない比較例3では環境依存性が大きくなっており、逆に、カーボンブラックの添加量が多い比較例4では電圧依存性や抵抗ムラが大きくなっている。
【0050】
実施例8及び比較例5より、本発明においては、極性ゴムがゴム主成分であることが適していることがわかる。すなわち、ゴム主成分が極性ゴムである実施例8は環境依存性、電圧依存性、抵抗ムラのいずれも良好であるのに対して、ゴム主成分を非極性ゴムとする比較例5では環境依存性は問題ないものの、電圧依存性や抵抗ムラが大きい。
【0051】
実施例4、7より、上記カーボンブラックがよう素吸着量20mg/g以下かつDBP吸油量40ml/100g以下である方が好ましいことがわかる。すなわち、カーボンブラックのよう素吸着量、DBP吸油量が上記範囲外の実施例7は、カーボンブラックのよう素吸着量、DBP吸油量が上記範囲内の実施例4と比べて電圧依存性が大きくなることがわかる。
【0052】
以上に示したように、本発明の導電性ゴムローラは環境変化等によるローラ抵抗値の変動量が小さく、また、抵抗ばらつきや抵抗の電圧依存性が小さい導電性ゴムローラであることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の導電性ゴムローラの一例の断面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 導電性芯材
2 ゴム層(弾性体層)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性芯材上にゴム層が形成された導電性ゴムローラであって、
ゴム層のゴム成分の主成分が、極性ゴムであり、
ゴム層中には、トルエン着色透過度(JIS K6218-4;2005)20%以上75%以下であるカーボンブラックが、該ゴム成分100質量部に対し、30質量部以上80質量部以下含有されている
ことを特徴とする導電性ゴムローラ。
【請求項2】
カーボンブラックが、よう素吸着量(JIS K6217-1;2001)20mg/g以下、かつ、ジブチルフタレート(DBP)吸油量(JIS K6217-4;2001)40ml/100g以下である、請求項1に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項3】
極性ゴムが、アクリロニトリルブタジエンゴム又はエピクロルヒドリン系ゴムである、請求項1又は2に記載の導電性ゴムローラ。
【請求項4】
感光体上の静電像を現像剤により顕像化する画像形成装置であって、感光体に相対する転写ローラとして、請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ゴムローラが配置されている画像形成装置。
【請求項5】
感光体上の静電像を現像剤により顕像化する画像形成装置において感光体に相対して配置される転写ローラが、請求項1〜3のいずれかに記載の導電性ゴムローラである転写ローラ。

【図1】
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【公開番号】特開2008−191382(P2008−191382A)
【公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−25517(P2007−25517)
【出願日】平成19年2月5日(2007.2.5)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】