説明

導電性ゴムローラー及び転写ローラー

【課題】転写ローラーや帯電ローラー等の導電性ゴムローラーにおいて、C.セット性の良い導電性ゴムローラーを提供する。
【解決手段】導電性芯材上にゴム層が成形されている導電性ゴムローラーにおいて、該ゴム層のゴム材料がアクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムとポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体で構成され、その合計質量を100とした場合、該ゴム材料に対するチウラム系促進剤(A)とチアゾール系促進剤(B)の合計が1.0質量部<A+B<5.0質量部、かつその質量比が1.0<A/B<4.5であることを特徴とする導電性ゴムローラー。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電子写真複写装置、プリンター等の電子写真装置において、使用される導電性ゴムローラーに関し、特には感光体等の像担持体に電子写真プロセス、静電記録プロセス等の作像手段で形成担持させたトナー像による可転写画像を紙等の記録媒体、転写材に転写させる転写装置の転写ローラーに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンターなど、電子写真方式の電子写真装置の多くに帯電ローラー、転写ローラー、現像ローラー等の導電性ゴムローラーが用いられている。これらのゴムローラーに導電性を付与するのにカーボンブラックなどの導電性の充填材を加える方法、あるいはアクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム等のイオン導電性のゴム材料を配合する方法が挙げられる。これらのローラーは各々ドラムに対して荷重が加えられた状態で接触して画像を形成する。また、これらのゴムローラーは用途の上で長時間、高い荷重をかけられ続けるものである。その結果、いずれのゴムにおいても圧縮によるゴムの変形からC.セットを起こしてしまう。このことから導電性ゴムローラーはそのC.セット性が比較的良好なウレタンゴム等を用いる手法がとられている(例えば、特許文献1、特許文献2参照)。
【0003】
しかし、長時間の通電耐久を行った場合の抵抗値の変動が大きいことや、製造方法の問題等から転写ローラーや帯電ローラーではアクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロロヒドリンゴム等のゴム材料が広く使用されている。従来アクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴムを用いた配合では加圧により生じた歪が画像にスジとなって現れるという問題があり、C.セット性の改良が求められている。
【特許文献1】特開平10−171210号公報
【特許文献2】特開2002−070835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従って転写ローラーや帯電ローラー等の導電性ゴムローラーにおいて、C.セット性の良い導電性ゴムローラーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、導電性芯材上にゴム層が成形されている導電性ゴムローラーにおいて、該ゴム層のゴム材料がアクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムとポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体で構成され、その合計の質量を100とした場合、該ゴム材料に対するチウラム系促進剤(A)とチアゾール系促進剤(B)の合計が1.0質量部<A+B<5.0質量部であり、かつその質量比が1.0<A/B<4.5であることを特徴とする導電性ゴムローラーである。
【0006】
本発明では、このような導電性ゴムローラーを転写ローラーとして利用することにより、この用途での有用性を増している。
【発明の効果】
【0007】
ゴム層のゴム材料の主成分としてのアクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴム、ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体を用いた混合物に、チウラム系促進剤(A)例えばテトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィドと、チアゾール系促進剤(B)例えばジベンゾチアジルジスルフィドの合計が1.0質量部<A+B<5.0質量部であり、かつその質量比が1.0<A/B<4.5となるように加えた場合、ローラーのC.セット跡とローラーのC.セット跡による画像の白スジに対して著しく低減できる導電性ゴムローラーが得られる。
【0008】
従って上記導電性ゴムローラー用ゴム組成物を用いた導電性ゴムローラーは電子写真技術の電子写真に用いられる転写ローラーなどに好適に使用することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明について詳細に説明する。
【0010】
図1に、本発明の転写ローラー22の全体図を示す。61は芯金(導電性芯材)であり、62は弾性層(ゴム層)である。
【0011】
図2に、本発明に係る導電性ゴムローラーを電子写真装置に使用した一例を示す。同図に示す電子写真装置は、電子写真方式のプロセスカートリッジを使用したレーザプリンターであり、同図はその概略構成を示す縦断面図である。また、同図に示す電子写真装置には、転写ローラーを有する転写装置が装着されている。
【0012】
同図に示す電子写真装置は、像担持体として、ドラム型の電子写真感光体(以下「感光ドラム」という。)1を備えている。感光ドラム1は、接地された円筒アルミニウム支持体の外周面に、有機光導電体(OPC)からなる感光層を設けたものである。この感光ドラム1は、駆動手段(不図示)により、矢印R1方向に所定のプロセススピード(周速度)、例えば50mm/secで回転駆動される。
【0013】
感光ドラム1表面は、接触帯電部材としての帯電ローラー2によって均一に帯電される。帯電ローラー2は、感光ドラム1表面に接触配置されており、感光ドラム1の矢印R1方向の回転に伴って矢印R2方向に従動回転する。帯電ローラー2には、帯電バイアス印加電源(高圧電源)により振動電圧(交流電圧VAC+直流電圧VDC)が印加され、これにより感光ドラム1表面は、−600V(暗部電位Vd)に一様に帯電処理される。帯電後の感光ドラム1表面は、レーザスキャナから出力されてミラーによって反射されたレーザ光3、すなわち、目的の画像情報の時系列電気デジタル画像信号に対応して変調されたレーザ光により走査露光を受ける。これにより、感光ドラム1表面には、目的の画像情報に対応した静電潜像(明電部位Vl=−150V)が形成される。
【0014】
その静電潜像は、現像装置4の現像スリーブに印加された現像バイアスによって、負に帯電されたトナー5が付着され、トナー像として反転現像される。
【0015】
一方、給紙部(不図示)から給搬送された紙等の転写材(記録媒体)7が、転写ガイドにガイドされて、感光ドラム1と転写ローラー6との間の転写部(転写ニップ部)Tに、感光ドラム1上のトナー像とタイミングを合わせるようにして供給される。転写部Tに供給された転写材7は、転写バイアス印加電源により転写ローラー6に印加された転写バイアスによって、表面に感光ドラム1上のトナー像が転写される。61は転写ローラー6の導電性芯材(芯金)、62はゴム層(弾性層)である。このとき、転写材7に転写されないで感光ドラム1表面に残ったトナー(残留トナー)は、クリーニング装置8によって除去され、廃トナー容器9に収容される。
【0016】
転写部Tを通った転写材7は、感光ドラム1から分離されて定着装置10へ導入され、ここでトナー像の定着処理を受け、電子写真物(プリント)として電子写真装置本体(不図示)外部に排出される。
【0017】
本発明の導電性ゴムローラー(図1)は以下のようにして作成した。
【0018】
[導電性ローラー]:ゴム組成物は、ゴム材料がアクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムとポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体で構成され、通常、カーボンブラック等の導電材や他の助剤、また硫黄等の加硫剤、加硫促進剤、発泡剤を混合したものである。
【0019】
加硫促進剤には各種あるが、チアゾール系促進剤、チウラム系促進剤が本発明では好ましく用いられる。
【0020】
チウラム系促進剤としては、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド等があり、ここに挙げたものは使用条件を整えることで本発明に適用可能である。
【0021】
チアゾール系促進剤としては、2−メルカプトベンゾチアゾール、ジベンゾチアジルジスルフィド等があり、ここに挙げたものは使用条件を整えることで本発明に適用可能である。
【0022】
なお、チウラム系促進剤の分子量が以上650以下である場合が望ましく、この範囲内とすることで、加硫速度が速くなり、充分に発泡した発泡体が得られないことや、架橋密度が低くなり、ローラーのC.セットによる白スジが画像上に発生するということを防止し易い。
【0023】
押出し機(不図示)を用いてゴム組成物を押出し、未加硫のチューブ状の導電性ゴム成形物を得た後、加硫缶にて160℃×30分の加硫を行いチューブ状の導電性ゴム成形物を作成し、次いでφ4〜10mmの導電性芯材を前記チューブ状の導電性ゴム成形物の内径部に圧入し、ローラー状の成形体を得た。この成形体を、研磨砥石GC80を取り付けた研磨機(不図示)にセットし、研磨条件として回転速度2000RPM、送り速度500m/分で外径がφ14.5mmになるように研磨し、導電性発泡ゴムローラーを作成した。
【実施例】
【0024】
各実施例及び比較例で使用した材料は以下の通りである。
アクリロニトリルブタジエンゴム
[商品名:ニポールDN401LL 日本ゼオン(株)]
エピクロルヒドリンゴム
[商品名:ゼクロン3106 日本ゼオン(株)]
ポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体
[商品名:ZSN8030 日本ゼオン(株)]
チアゾール系促進剤:ジベンゾチアジルジスルフィド
[商品名:ノクセラーDM−P 大内新興化学(株)]
チウラムジスルフィド系促進剤(1):テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド
[商品名:ノクセラーTOT−N 大内新興化学(株)]
チウラムジスルフィド系促進剤(2):テトラメチルチウラムジスルフィド
[商品名:ノクセラーTT−P 大内新興化学(株)]
硫黄
[商品名:サルファックスPMC 鶴見化学(株)]
【0025】
(ローラーのC.セット性の試験条件)
ローラーの通電耐久試験は、導電性ゴムローラーの軸体に片側4.9Nの荷重が両方に掛かるようにして外径30mmの感光ドラムに圧着した状態で、40℃、95%RHの環境に4日間放置した。その後、ローラー表面を観察し、C.セット跡がない場合に○、C.セット跡が認められる場合に×として評価した。更にローラーをプリンター本体にセットし、ハーフトーン画像で画像出し評価を行い、画像にローラーのC.セット跡による白スジがない場合に○、白スジが認められる場合に×として評価を行った。
【0026】
本発明の実施例・比較例は、転写ローラーとしての動作確認を主に行っているが、上記、C.セットの試験は、帯電ローラー、現像ローラー等に対しても有効であるが、更に、各々の機能部品としての要請事項に合わせるべく実験的に調整することを要するのは言うまでも無い。
【0027】
(モジュラス)
(株)上島製作所のユニトロンTS−3013を用いて測定し、M100の値によって100%モジュラスを判定した。ゴム材料の100%モジュラスが0.4MPa以上が本発明の導電性ゴムローラーとしては有用であり、これよりモジュラスの小さい場合は、ローラーのC.セット跡による白スジが画像上に現れるという問題が生じ易い。
【0028】
(加硫速度)
アルファテクノロジーズ(株)のレオメーターMDR2000を用いて、160℃で20min測定し、T10の時間(min)によって加硫速度を判定した。
【0029】
本発明に適合する加硫速度は、1.0〜2.0minであることが好ましく、1.0min未満であると、充分に発泡した発泡体を得ることができないという問題が生じ易く、2.0minを超えると、充分な架橋密度が得られず、ローラーのC.セット跡による白スジが画像上に現れるという問題が生じ易い。
【0030】
(実施例1〜5)
本発明のゴム材料の主成分としてアクリロニトリルブタジエンゴム、エピクロルヒドリンゴムとポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体を用いた混合物にテトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(TOT):(ノクセラーTOT−N 大内新興化学(株))、テトラメチルチウラムジスルフィド (TET):(ノクセラーTT−P 大内新興化学(株))、ジベンゾチアジルジスルフィド(DM):(ノクセラーDM−P 大内新興化学(株))を加えたものを実施例とした。表1、2に記載。
【0031】
表1に記載事項により、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(A)とジベンゾチアジルジスルフィド(B)の合計が1.0質量部<A+B<5.0質量部であり、かつその質量比が1.0<A/B<4.5となる場合、ローラーにC.セット跡がなく、且つ良好な画像が得られることが分かる。
【0032】
(比較例1〜6)
比較例としてはテトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(A)とジベンゾチアジルジスルフィド(B)の質量比がA/B≦1.0となる場合、テトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(A)とジベンゾチアジルジスルフィド(B)の質量比がA/B≧4.5となる場合、およびテトラキス(2−エチルヘキシル)チウラムジスルフィド(A)とジベンゾチアジルジスルフィド(B)の合計が1.0質量部となる場合を取り上げた。
【0033】
比較例1ではチウラム系促進剤がチアゾール系促進剤よりも少ないためM100が低く、ローラーにセット跡が認められ画像にも白スジが発生した。
【0034】
比較例2では比較例1と同様にチウラム系促進剤がチアゾール系促進剤よりも少ない。M100は0.45MPaと良好な値を示したが、A/Bが0.7であるためローラーにセット跡が認められ画像にも白スジが発生した。
【0035】
比較例3ではT10が0.99で加硫速度が速すぎるためにローラー硬度が高くなり、C.セット性の試験ではローラー表面にセット跡が認められ、画像にも白スジが発生した。
【0036】
比較例4ではT10が2.42で加硫が非常に遅く、また加硫が不十分であるためにローラーにセット跡が認められ、画像にも白スジが発生した。
【0037】
比較例5ではA+Bが1.0であるため、M100が0.26と低い値となり、ローラー表面にセット跡が発生し、画像にも白スジが認められた。
【0038】
比較例6ではA+Bが5.5であり、ローラー硬度が高くなりすぎてしまった。C.セット性試験の結果はローラー表面にセット跡が認められ、画像にも白スジが発生した。
【0039】
【表1】

【0040】
【表2】

【図面の簡単な説明】
【0041】
【図1】本発明に係る転写ローラーの全体断面図。
【図2】本発明に係る電子写真装置の全体断面図。
【符号の説明】
【0042】
1…感光ドラム
2…帯電装置
3…露光手段
4…現像装置
5…トナー
6…転写ローラー
7…記録媒体
8…クリーニング
ブレード
9…廃トナー容器
10…定着装置
61…芯金
62…弾性層
T…転写ニップ部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性芯材上にゴム層が成形されている導電性ゴムローラーにおいて、該ゴム層のゴム材料がアクリロニトリルブタジエンゴムとエピクロルヒドリンゴムとポリエチレンオキサイド−ポリプロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体で構成され、その合計質量を100とした場合、該ゴム材料に対するチウラム系促進剤(A)とチアゾール系促進剤(B)の合計が1.0質量部<A+B<5.0質量部であり、かつその質量比が1.0<A/B<4.5であることを特徴とする導電性ゴムローラー。
【請求項2】
該ゴム材料の100%モジュラス(JIS K 6251による)が0.4MPa以上であることを特徴とする請求項1に記載の導電性ゴムローラー。
【請求項3】
該チウラム系促進剤(A)の分子量が200以上650以下であることを特徴とする請求項1または2に記載の導電性ゴムローラー。
【請求項4】
該ゴム材料の加硫速度(T10)が1.0〜2.0minであることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の導電性ゴムローラー。
【請求項5】
該ゴム層が発泡体で構成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の導電性ゴムローラー。
【請求項6】
電子写真装置に搭載される転写装置の転写ローラーであって、該転写ローラーが請求項1乃至5のいずれかに記載の導電性ゴムローラーであることを特徴とする転写ローラー。


【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−58537(P2006−58537A)
【公開日】平成18年3月2日(2006.3.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−239519(P2004−239519)
【出願日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】