説明

導電性ゴム組成物及びその原料となるマスターバッチ

【課題】 導電性繊維の配合量(配合率)が少なくても、導電性能の高い導電性ゴム組成物、その導電性ゴム組成物の原料となるマスターバッチを提供する。
【解決手段】 ムーニー粘度[ML(1+4)125°C]が30以下のゴムに、導電性繊維を添加してなるマスターバッチ、及び、このマスターバッチを、ムーニー粘度が30以下のゴムに配合することにより、導電性繊維の配合率が1〜10%である導電性ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性を有するゴム組成物及びその原料となるマスターバッチに関し、特に、カーボンナノチューブを含む導電性ゴム組成物及びその原料となるマスターバッチに関する。
【背景技術】
【0002】
導電性ローラ、搬送ベルト等の導電部材に用いられる導電性ゴム組成物として、従来から、ゴム組成物に導電性を発現させるために、基材のゴムにアセチレンブラックやケッチェンブラック等の導電性のカーボンブラックを配合することはよく知られている。これらの導電性カーボンは、マトリックス中でパーコレーションによる導電パスを形成することにより導電性を発現するので、マトリックス中の導電性カーボンの充填量が多いほど、電子移動の経路が増し、ゴム組成物の導電性が向上する傾向にある。
【0003】
また、このよく使用されるアセチレンブラックは粒子径が大きく、ゴム組成物中の分散性に難があり、ゴム混練時のせん断応力によるストラクチャの破壊が生じ、所望の電気抵抗を得るために必要な充填量がより多くなるばかりでなく、混練、成形工程を経て得られた導電性ゴムは、電気抵抗のバラツキが大きくなる。また、ケッチェンブラックは、ストラクチャが強く長いため、混練時のせん断応力によるストラクチャの破壊は生じにくいが、導電性を発現させるために多くの充填量が必要となり、そのため硬度が高くなるため、混練、成形が困難となる。
【0004】
近年、このような困難を回避するために、カーボンナノチューブを用いた電気抵抗の制御方法が考案されている。カーボンナノチューブは、アスペクト比が大きいため、カーボンブラックと比べて少ない添加量で、マトリックス中で連続したパーコレーションを形成しやすい。
【0005】
しかし、カーボンナノチューブは凝集しやすくアスペク比が大きいので、少ない添加量で導電性を確保する、又は導電性のムラを少なくするためには、適度にカーボンナノチューブを分散させる必要がある。また、カーボンナノチューブを多量に充填するとマトリックスの粘度が飛躍的に上昇し、混練が困難となるので、少ない添加量で導電性を発現させることが、ゴム製品物性、加工性、コストにおいても重要になってくる。
【0006】
かかる問題を解決すべく、例えば、特許文献1では、ムーニー粘度が5〜35であるゴムを基材ゴムとして用い、この基材ゴムにカーボンブラックを配合してなる導電性ゴム組成物が開示されている。
【0007】
また、例えば、特許文献2では、ビーズミルや超音波等を用いて液状ポリマー中でカーボンナノチューブを予備分散することにより、カーボンナノチューブの凝集物(塊)をほぐして伸ばした後、3本のロールやニーダーを用いて混練すると、液状ポリマー中でのカーボンナノチューブの分散性に優れ、電気抵抗のばらつきが小さい導電性ゴム組成物の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開平9−204817号公報
【特許文献2】特開2005−62474号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかし、特許文献1の技術では、カーボンブラックの配合量は、基材ゴム100重量部に対して5〜35重量部と多量であり、少ない添加量で導電性を発現させるに至っていない。
また、特許文献2の技術では、カーボンナノチューブを添加することにより、急激な粘度上昇と機械特性が低下することから、カーボンナノチューブを0.1〜5重量部程度しか液状ポリマー中に充填できない。その結果、例えば、カーボンナノチューブ1重量部の配合では、電気抵抗が10E+5レベルの導電性しか得られておらず、カーボンナノチューブの性能を十分に引き出せていない。
【0010】
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、カーボンナノチューブを始めとする導電性繊維の配合量(配合率)が少なくても、電気抵抗が低くてバラツキが少ない、即ち、導電性能の高い導電性ゴム組成物を提供することである。また、その導電性ゴム組成物の原料となるマスターバッチを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討した結果、ゴムの粘度が低い場合、ゴム中の導電性繊維の分散性が良いことを見いだし、導電性繊維の配合量(配合率)が非常に少なくても導電性能の高い導電性ゴム組成物を提供できるという、本発明を完成するに至った。
【0012】
即ち、ムーニー粘度[ML(1+4)125°C]が30以下という、低い粘度のゴムをマトリックスに用い、これに導電性繊維を添加し、一旦高濃度の導電性繊維を含むマスターバッチを作製し、このマスターバッチを用いて、さらに、前記導電性繊維が低配合率となるように、ムーニー粘度が30以下のゴムを配合することにより得られたゴム組成物は、導電性能の高いゴム組成物となる。
【0013】
一旦高濃度のマスターバッチを作製するのは、導電性ゴム組成物を製造するにあたっての取扱いのしやすさからである。実施例では、導電性繊維の濃度が約15〜50%としている。導電性繊維の濃度が約50%に抑えられるのは、これより高濃度だと、混練が困難になる等逆に取扱いが難しくなることによる。一方、導電性繊維の濃度が約15%以上であるのは、あまり低濃度だとマスターバッチをとして効率が悪くなるからである。
【0014】
また、必ずしも、一旦導電性繊維が高濃度のマスターバッチを作製してから、それを希釈して、導電性ゴム組成物を得る必要はなく、直接、ムーニー粘度が30以下のゴムに導電性繊維を、低い濃度で配合してもよい。
【0015】
導電性ゴム組成物における導電性繊維の配合率は、1〜10%、好ましくは、1〜3%である。10%を超える配合量だと、本発明の目的から外れるので、10%程度としている。また、10%を超える配合量だと硬度が増すので、導電性ゴム組成物の取扱いが困難となる。導電性繊維の配合率が1〜3%であっても、後述するように、十分な導電性を得られる。
【0016】
本発明に用いられるゴムは、合成ゴムのいずれを含んでいてもよい。合成ゴムは、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、ニトリルゴム(NBR)、エチレンプロピレンゴム(EPM、EPDM)、シリコーンなど、他の合成ゴムも含め、あらゆる種類の合成ゴムを含んでいてもよい。
【0017】
本発明に用いられる導電性繊維とは、その材料の形状において、一辺が1000nm以下(好適には500nm以下)の大きさを有するカーボンを意味し、例えば、カーボンナノチューブ(単層・二層・多層タイプ、カップスタック型)、カーボンナノファイバー、カーボンナノホーンを挙げることができる。また、これらは単独でもしくは2種以上併せて用いてもよい。
【0018】
これらのナノカーボンの中でも、カーボンナノチューブが好適である。カーボンナノチューブを使用することによって、特に顕著な、補強効果及び導電性が得られる。カーボンナノチューブは、炭素6員環構造を主構造とする黒鉛(グラファイト)シートが円筒状に閉じた構造を有するチューブ状の炭素多面体である。一般に平均繊維径0.1nm〜300nm、アスペクト比10〜1000の中空繊維状のものであって、流動触媒化学気相成長法(CCVD法)、化学気相成長法(CVD法)、レーザーアブレーション法、アーク放電法等によって製造することができる。なお、本明細書に置いて、カーボンナノチューブ(CNT)のアスペクト比とは、以下の式で定義される。
(式)・・・CNTのアスペクト比=[CNT長さ]/[CNTの直径]
【0019】
また、カーボンナノチューブには、1層の黒鉛シートが円筒状に閉じた構造を有する単層カーボンナノチューブ(シングルウォールカーボンナノチューブ(SWCNT))と、黒鉛シートが何層も同心筒状に閉じた多層構造を有する多層カーボンナノチューブ(マルチウォールカーボンナノチューブ(MWCNT))とがある。いずれであってもよいが、コストの面でマルチウォールカーボンナノチューブが好ましい。
【0020】
多層カーボンナノチューブとしては、昭和電工株式会社製の商品名マルチウォール、VGCFIII、VGCFIV、VGCF−H、VGCF−S、ハイペリオン・カタリシス・インターナショナル社製の商品名Graphite Fibrils Grades BN、日機装株式会社製の商品名MWCNT、GSIクレオス社製の商品名カルベール、本荘ケミカル株式会社製のカーボンナノチューブ、バイエル社製のカーボンナノチューブ、保土谷化学工業株式会社製のMWNT−7等が挙げられる。また、単層カーボンナノチューブとしては、ナノインテグリス社の商品名IsoNanotubes−S、PureTubes、KH ケミカル社の商品名HIGH Purity等が挙げられる。
【0021】
少量の添加量で良好な導電性を付与できる点から、アスペクト比が高く、かつ、チューブ径が細いものが好ましい。すなわち、本発明のカーボンナノチューブは、アスペクト比が10〜2000、より好ましくは、110〜1500、が好ましい。また、良好な導電性を付与できる点から、本発明のカーボンナノチューブは、平均繊維径が5〜200nm、特に5〜30nm、とりわけ5〜20nmが好ましい。また、平均繊維長が1μm〜100μm、特に1μm〜30μm、とりわけ1μm〜15μmが、少量の添加量で良好な導電性を付与できる点から、好ましい。
尚、当該チューブの長さ、直径は、AFM(原子間力顕微鏡)を用いて、所定範囲内に存在する100個以上の構造体について測定し、90%以上の個数が入る範囲とする。
【0022】
また、上記導電性ゴム組成物を用いたゴム製品を提供することができる。なお、本発明に係るゴム製品は、ゴム製造業において一般的に行なわれている混練工程等を経ることにより製造される。このようにしてゴム製品には、OAロール、感圧用導電ゴム、電磁波シールド用パッキン材、帯電防止を必要とするシール、パッキン、ガスケット、ゴム足などの各種ゴム組成物に用いることができる。
【0023】
本発明に係るマスターバッチの製造方法は、ムーニー粘度[ML(1+4)125°C]が30以下のゴムに、導電性繊維を添加し、混練して作製される。好ましくは、ゴムを100°C以上としてより低粘度化させるとよい。また、導電性繊維の過分散や切断を防止するため、混練する時間を、例えば、30分以下とするなど、せん断破壊を少なくするため短時間に混練を行う。
【0024】
また、本発明に係る導電性ゴム組成物の製造方法は、上記のように作製されたマスターバッチを、上記と同様高温度短時間で、ムーニー粘度の低いゴムにより、導電性繊維の配合率が1〜10%、好ましくは、1〜3%となるように配合し、混練により希釈する。希釈に使用されるゴムは、マスターバッチの作製に使用したゴムと同じであってよいし、異なっていてもよく、ムーニー粘度[ML(1+4)125°C]が30以下のゴム材であればよい。
また、本発明に係る導電性ゴム組成物の製造方法は、マスターバッチを経由せず、ムーニー粘度が30以下のゴムに、導電性繊維を添加し、混練し、導電性繊維の配合率が1〜10%、好ましくは、1〜3%となるように配合して作製してもよい。
【0025】
本発明に係るゴム組成物の製造方法は、低粘度ゴム100重量部に対して導電性繊維を15〜50重量部配合し、混練り機を用いて混練して導電性ゴムマスターバッチを得る工程(工程1)と、得られた導電性ゴムマスターバッチに他の添加剤を配合し混練する工程(工程2)と、を含むものである。
混練り機としては、一般にゴム組成物の混合に用いられるものを特に限定なく用いることができ、例えば、バンバリーミキサー、ロール、押し出し機、ニーダーなどが挙げられる。
【0026】
上記工程1では、導電性繊維の他にオイルを添加してもよい。すなわち、導電性ゴムマスターバッチは、オイルを任意成分として含有することができる。オイルを添加することで、マスターバッチの製造における加工性を改良することができる。オイルとしては、特に限定されず、ゴム組成物に一般に配合される各種プロセスオイルを用いることができる。オイルの配合量は特に限定されないが、ゴム100重量部に対して20重量部以下であることが好ましい。
【0027】
上記工程2は、更に2つの混合工程に分けることができる。すなわち、上記導電性ゴムマスターバッチに、加硫剤及び加硫促進剤を除く他の添加剤を配合し混練する工程(A)と、その後、得られた混合物に加硫剤及び加硫促進剤を配合し混練する工程(B)とに分けて実施してもよい。
【0028】
工程2(A)では、カーボンブラック、シリカ等の無機充填剤、プロセスオイル、老化防止剤、ステアリン酸、樹脂類などの添加剤を、本発明の効果を損なわない範囲内で配合してもよい。但し、工程2(A)では、硫黄等の加硫剤や加硫促進剤は配合しないことが好ましい。工程1において、これらの加硫系添加剤を配合すると、架橋反応が進んでしまい、導電性繊維の分散性を損なうためである。
【0029】
工程2(A)の混練に用いられる混練り機としては、工程1と同様、バンバリーミキサー、ロール、ニーダーなど、一般にゴム組成物の混合に用いられるものが挙げられ、特に限定されない。
【0030】
工程2(B)では、工程2(A)で得られた導電性ゴムコンパウンドを用いて、これに加硫剤及び加硫促進剤を配合し混練する。得られた導電性ゴムコンパウンドは通例の工程により、加硫成形される。
【0031】
工程2(B)の混練に用いられる混練り機としては、工程1と同様、バンバリーミキサー、ロール、ニーダーなど、一般にゴム組成物の混合に用いられるものが挙げられ、特に限定されない。
【発明の効果】
【0032】
以上説明したように、本発明によれば、導電性繊維の配合量(配合率)が少なくても、電気抵抗が低くてバラツキが少ない、即ち、導電性能の高い導電性ゴム組成物、マスターバッチ、ゴム製品及びその製造方法を提供することができる。
【0033】
マトリックスとしてムーニー粘度の低いゴム、即ち、比較的柔らかいゴムを用いていることから、基材ゴム中へのカーボンナノチューブの分散性が良好で、ストラクチャが混練時や成形時においてせん断破壊を受けにくくなり、導電性繊維の配合量が少なくても所望の導電性が得られるとともに、混練工程や成形工程を経て得られた導電性ゴム製品の導電性のばらつきを低く抑えることができるものと考えられる。
【0034】
また、導電性繊維の添加量が少量であるため、グレーやカラー着色された導電性ゴムが得られる。また、高価なカーボンナノチューブを始めとする導電性繊維の使用量が少なく、低コストで提供できる。また、カーボンの粉落ちがなく、車輪等に使用した場合に、擦り着色がない。
【発明を実施するための形態】
【0035】
以下に本発明の実施形態について詳細に説明する。
<実施例>
<工程1(マスターバッチの作成)>
ゴム状重合体(EPT−4010(三井化学社製))640gに対し導電性繊維(カーボンナノチューブ)160gを配合し120℃、10分、20rpmの条件にて混練し、ベースのゴム材料に対して、カーボンナノチューブが20%の導電性マスターバッチを得た。なお、EPT−4010のムーニー粘度は、10である。
【0036】
<マスターバッチ基本配合>
ゴム状重合体 640g
導電性繊維(カーボンナノチューブ) 160g
【0037】
なお、このときの実施例1〜4の導電性繊維は、多層カーボンナノチューブである「FloTube9000」(シーナノテクノロジー社製、平均直径11nm、平均長さ11μm、アスペクト比は約1000)を用いて、マスターバッチを作成した。
また、実施例5〜8の導電性繊維は、多層カーボンナノチューブである「NC-7000」(ナノシル社製、平均直径9〜11nm、平均長さ1.5μm、アスペクト比は約130〜170)を用いて、マスターバッチを作成した。
また、やや導電性の劣る比較例3には、多層カーボンナノチューブである「MWNT−7」(保土谷化学工業株式会社製、平均直径40〜90nm、平均長さ約4μm(4000nm)、アスペクト比は約40〜100)を用いて、マスターバッチを作成した。
【0038】
<工程2(B)(ファイナルコンパウンドの作成)>
工程2(A)で得られたゴムコンパウンド中のゴム分100に対し、加硫剤として硫黄を1.88g、加硫促進剤(TT75E)を1.0g、加硫促進剤(M75)を0.5g、を配合し、ラボプラストミルで80°C、3分、30rpmにて混練し、導電性繊維の添加量を少なくした各実施例の混練物であるゴム材(ゴム組成物)を製造した。
【0039】
実施例1と実施例5では導電性繊維の配合率が、ゴム混練物全体に対し1%、実施例2と実施例6では3%、実施例3と実施例7では5%、実施例4と実施例8では10%となるように配合した。
なお、表1中の「ゴム混練物」には、導電性繊維を除いた配合量を示している。すなわち、ベースマトリックスと導電性マスターバッチ中のゴム状重合体とをあわせたゴム成分に、他の添加剤の配合量を含んでいる。
【0040】
<ゴム材混練り物 基本配合>
ゴム状重合体 適量
CNT入りマスターバッチ 適量
プロセスオイル 15g
酸化亜鉛2種 5.0g
ステアリン酸 1.0g
加硫剤 (硫黄) 1.88g
加硫促進剤 (TT75E) 1.0g
加硫促進剤 (M75) 0.5g
【0041】
「FloTube9000」は、アスペクト比が、1000と非常に高く、実施例1から4のように、導電性も優れる。添加量が多くなるにつれて、硬さも硬くなり、引裂強度もアップし、伸びは低下する。但し、導電性繊維の配合率が1%の実施例1、3%の実施例2であっても、10E+2〜3レベルと10E+0〜1レベルの抵抗率であり、後述する比較例1と比較例2に比べ、導電性は飛躍的に良くなっている。
【0042】
また、カーボンナノチューブ「NC-7000」を用いて、同様にしてマスターバッチを作成し、ゴム材の混練り物を得た(実施例5、6、7、8)。「NC-7000は、繊維径が、9−11nmと非常に細く、かつアスペクト比も130〜170程度であるため、実施例5〜8のように、導電性に非常に優れる。添加量が多くなるにつれて、硬さも硬くなり、引裂強度もアップし、伸びは低下する。
【0043】
<比較例>
上記工程1において、ムーニー粘度が10のゴム状重合体の代わりに、ムーニー粘度が45のゴム状重合体(EPT−4045(三井化学社製))を使用した。これ以外の配合や製造方法は、比較例1は実施例1と、比較例2は実施例2と、同じである。
【0044】
硬さ、引裂強度、伸びにおいて、比較例1と実施例1、比較例2と実施例2は、ほぼ同等であるが、導電性においては著しく劣る。これは、導電性繊維が低配合率となるように、ムーニー粘度が30以下、好ましくは、10以下のゴムを配合することにより得られたゴム組成物は、導電性繊維の配合量(配合率)が1〜3%と少なくても、導電性能の高いゴム組成物となることを示す。
【0045】
一方、比較例3では、「MWNT−7」を配合したマスターバッチを用いて、同様に、所定の低いムーニー粘度(10)を有するゴム材を適量配合して、上記と同様にゴム材の混練り物であるゴム材を得た。実施例2及び実施例6に比べ、配合した導電性繊維の配合量は同じだが、アスペクト比が100程度(未満)と小さく、平均直径が40〜90nmと太く、抵抗率は約2桁劣っていた。
【0046】
<常態物性評価>
JIS K6253(硬さ試験)、JIS K6251(引張試験)に従い、160°Cで10分加硫を行ったテストピースを用いて評価した。
【0047】
<測定・評価方法>
なお、ムーニー粘度<ML(1+4)125°C>の測定方法は、JIS K6300−1:2001に従い、L形ロータを用いて、125℃において予熱1分後4分間ロータ回転させた時の粘度を測定した。
【0048】
なお、本発明は、例示した実施例に限定するものではなく、特許請求の範囲の各項に記載された内容から逸脱しない範囲の構成による実施が可能である。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ムーニー粘度[ML(1+4)125°C]が30以下のゴムに、導電性繊維を添加してなるマスターバッチ。
【請求項2】
前記導電性繊維のアスペクト比が10〜2000以上であることを特徴とする請求項1に記載のマスターバッチ。
【請求項3】
前記導電性繊維は、直径が5〜20nmであるカーボンナノチューブであることを特徴とする請求項1又は2に記載のマスターバッチ。
【請求項4】
前記導電性繊維の配合率が15〜50%であることを特徴とする請求項1乃至3に記載のマスターバッチ。
【請求項5】
請求項1乃至4に記載のマスターバッチを、ムーニー粘度[ML(1+4)125°C]が30以下のゴムに配合することにより、前記導電性繊維の配合率が1〜10%であることを特徴とする導電性ゴム組成物。
【請求項6】
請求項5に記載の導電性ゴム組成物を用いてなるゴム製品。
【請求項7】
ムーニー粘度[ML(1+4)125°C]が30以下のゴムに、導電性繊維を添加し、混練する工程からなる、マスターバッチの製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載のマスターバッチを、ムーニー粘度[ML(1+4)125°C]が30以下のゴムを用いて、前記導電性繊維の配合率が1〜10%となるように配合する工程を含む、導電性ゴム組成物の製造方法。
【請求項9】
ムーニー粘度[ML(1+4)125°C]が30以下のゴムに、導電性繊維を添加し、混練する工程と、
前記導電性繊維の配合率が1〜10%となるように配合する工程と、
を含む、導電性ゴム組成物の製造方法。

【公開番号】特開2012−167216(P2012−167216A)
【公開日】平成24年9月6日(2012.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−30244(P2011−30244)
【出願日】平成23年2月15日(2011.2.15)
【出願人】(000127307)株式会社イノアック技術研究所 (73)
【Fターム(参考)】