説明

導電性ゴム部材

【課題】導電性付与剤に起因しない体積抵抗率の低下を実現した導電性ゴム部材を提供する。
【解決手段】イオン導電性ポリマーを主体とするゴム基材と、酸化亜鉛と、アルカリ性シリカと、を含み且つ受酸剤を含まないゴム組成物を硬化・成形したゴム状弾性体からなり、前記ゴム基材100質量部に対し前記アルカリ性シリカを15質量部以下配合する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真式複写機及びプリンター、またはトナージェット式複写機及びプリ
ンターなどの画像形成装置の帯電ロール・現像ロール、トナー規制ロール、さらには転写
ロール・中間転写ロール及びベルトなどに好適に用いられる導電性ゴム部材に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真式複写機及びプリンターなどの画像形成装置の導電性ゴムロールは、例えば、帯電ロールの場合、体積抵抗率が10〜10Ω・cmであることが求められる。そこで、ポリウレタン、シリコーンゴム、エチレンプロピレンゴム(EPDM)、ニトリルブタジエンゴム(NBR)、又はスチレン・ブタジエンゴム(SBR)等に、カーボンブラックなどの導電性微粒子や、イオン導電剤を添加して導電性を付与した導電性ゴム部材が用いられている。
【0003】
しかしながら、低い電気抵抗値を得るためにカーボンブラックを多量に配合した場合には、リークが発生しやすい状態となるという問題があった。また、イオン導電剤を多量に配合した場合は、電気抵抗値の環境依存性が大きくなったり、イオン導電剤がブリードアウトして感光体を汚染したりする可能性があった。
【0004】
一方、エピクロルヒドリンゴムは、導電性ゴムロールで必要とされる体積抵抗率を固有抵抗値として有するものであるが、加硫時に塩素が脱離することにより、加硫が阻害されたり、シャフトが錆びたりするという問題があった。そこで、エピクロルヒドリンゴムに受酸剤を所定量配合したゴム組成物からなる導電性ロールが提案されている(特許文献1〜2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−064244号公報
【特許文献2】特開2007−264557号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、受酸剤を配合することにより抵抗値が上昇する傾向にあり、所望の体積抵抗率が得られないことが問題となっていた。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑み、導電性付与剤に起因しない体積抵抗率の低下を実現した導電性ゴム部材を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決する本発明の第1の態様は、イオン導電性ポリマーを主体とするゴム基材と、酸化亜鉛と、アルカリ性シリカと、を含み且つ受酸剤を含まないゴム組成物を硬化・成形したゴム状弾性体からなり、前記ゴム基材100質量部に対し前記アルカリ性シリカを15質量部以下配合することを特徴とする導電性ゴム部材にある。
【0009】
本発明の第2の態様は、第1の態様に記載の導電性ゴム部材において、前記ゴム組成物は、ステアリン酸を含まないものであることを特徴とする導電性ゴム部材にある。
【0010】
本発明の第3の態様は、第1又は2の態様に記載の導電性ゴム部材において、前記ゴム基材は、エピクロルヒドリンゴムからなることを特徴とする導電性ゴム部材にある。
【0011】
本発明の第4の態様は、第1〜3のいずれか一つの態様に記載の導電性ゴム部材において、前記ゴム組成物は、下記式を満たすことを特徴とする導電性ゴム部材にある。
[式1]
{アルカリ性シリカ(質量部)/酸化亜鉛(質量部)}≦2
【0012】
本発明の第5の態様は、第1〜4のいずれか一つの態様に記載の導電性ゴム部材において、前記ゴム組成物は、さらにイオン導電剤を含むことを特徴とする導電性ゴム部材にある。
【0013】
本発明の第6の態様は、第1〜5のいずれか一つの態様に記載の導電性ゴム部材において、前記導電性ゴム部材は、印加電圧500Vでの体積抵抗率が1.0×10〜1.0×10Ω・cmであることを特徴とする導電性ゴム部材にある。
【0014】
本発明の第7の態様は、第1〜6のいずれか一つの態様に記載の導電性ゴム部材がロール形状又はベルト形状であることを特徴とする導電性ゴム部材にある。
【発明の効果】
【0015】
本発明によると、導電性付与剤に起因しない体積抵抗率の低下を実現した導電性ゴム部材となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】試験例2の結果を示す図である。
【図2】試験例2の結果を示す図である。
【図3】試験例2の結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、受酸剤を配合せずに、酸化亜鉛と、アルカリ性シリカとを併用することにより、低い体積抵抗率を実現するというものである。ゴム基材に種々の添加剤を配合すると、通常は体積抵抗率が上昇するが、本発明では、受酸剤を配合せず、さらに、酸化亜鉛と、アルカリ性シリカとを併用することにより、ゴム基材単体よりも体積抵抗率を低下させることができる。
【0018】
本発明の導電性ゴム部材は、イオン導電性ポリマーを主体とするゴム基材と、酸化亜鉛と、アルカリ性シリカと、を含み且つ受酸剤を含まないゴム組成物を硬化・成形したゴム状弾性体からなり、ゴム基材100質量部に対しアルカリ性シリカを15質量部以下配合したものである。アルカリ性シリカのみを配合したり、受酸剤を併用したりすると体積抵抗率は上昇してしまうが、酸化亜鉛と、アルカリ性シリカを併用することにより、体積抵抗率は低下する。
【0019】
体積抵抗率が低下するメカニズムは、次のように予想される。
【0020】
酸化亜鉛が、イオン導電性ポリマーの一部、例えば、塩素を脱離させる。そして、イオン導電性ポリマーの脱離したイオン(例えば、塩素)は、アルカリ性シリカの金属イオン(M)と反応して塩を形成する。この塩がゴム基材中で導電剤として作用して、体積抵抗率を低下させる。塩素が脱離した場合の反応式を式2に示す。
[式2]
SiO+HCl → SiOH+MCl
【0021】
これにより、加硫阻害やシャフト等の腐食を防止しつつ、体積抵抗率の低下を実現することができる。このように、酸化亜鉛と、アルカリ性シリカとを併用すると、酸化亜鉛により脱塩素を促すと同時に、イオン導電剤として効果の高い塩を多量に形成するため体積抵抗率が下がる。これは、アルカリ性シリカに含まれるアルカリ金属やアルカリ土類金属に起因して生成する塩がポリマーに溶解しやすいためであると考えられる。また、余剰量の酸を生成した場合は、アルカリ性シリカにより中和することができる。
【0022】
なお、従来のように受酸剤を配合すると、受酸剤が発生した酸を捕らえ、塩を形成するが、受酸剤から生成した塩がポリマーに十分に溶解せず、イオン導電剤として抵抗を下げるに至らず、受酸剤の固有体積抵抗率により、ゴム部材の体積抵抗率が上昇してしまう。
【0023】
一方、アルカリ性シリカのみを配合し、酸化亜鉛を配合しない場合は、中和によりイオン導電剤として効果の高い塩を生成して抵抗値が下がるが、シリカそのものの抵抗値が高く、導電剤として作用する塩が形成される量が少ないためか、シリカ添加量にともなって体積抵抗率が上昇してしまう。また、酸化亜鉛を配合し、アルカリ性シリカを配合しない場合は、受酸剤を用いた場合に比較して脱塩素を促して、塩の生成量が受酸剤を用いた場合よりも増加して体積抵抗率を低下させるが、余剰の酸に対する対策が必要となる。
【0024】
ゴム基材は、イオン導電性ポリマーを主体とするものである。ここでいうイオン導電性ポリマーとは、極性基を有し、且つ1.0×10〜1.0×10Ω・cm、好ましくは1.0×10〜1.0×10Ω・cmの中抵抗の体積抵抗率を示す高分子である。本発明に係るイオン導電性ポリマーは、側鎖にクロルメチル基、クロロ基等のハロゲンを含むものである。イオン導電性ポリマーの主鎖(ポリマーの主な骨格)は、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、エピクロルヒドリンゴム、アルキレンオキサイドを含むポリマー、ウレタンが挙げられ、エピクロルヒドリンゴムが好ましい。エピクロルヒドリンゴムとしては、エピクロルヒドリン単独重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド共重合体、エピクロルヒドリン−アリルグリシジルエーテル共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル四元共重合体やその誘導体などを挙げることができる。アルキレンオキサイドを含むポリマーとしては、エチレンオキサイド単独重合体、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド共重合体、エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル共重合体、エチレンオキサイド−プロピレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体やその誘導体などを挙げることができる。ウレタンとしては、エーテル系、エステル系、又はカーボネート系グリコールから調製されるポリウレタンが挙げられる。なお、イオン導電性ポリマーは、単独で用いても併用してもよい。また、ゴム基材は、イオン導電性ポリマーを主体とするものであればよく、適宜、その他のゴム、例えば、ポリウレタン、エピクロルヒドリンゴム、ニトリルゴム(NBR)、スチレンゴム(SBR)、クロロプレンゴム等をブレンドしてもよい。
【0025】
なお、本発明の導電性ゴム部材は、受酸剤を配合しないものであるが、ここでいう受酸剤とは、ハイドロタルサイト、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、酸化鉛等の受酸能力の高いものを指す。
【0026】
アルカリ性シリカとは、pHが7以上の湿式シリカであり、酸化亜鉛と併用することにより、体積抵抗率が低下する。また、アルカリ性シリカを配合することにより、加工性が向上し、加硫時間も短くなる。
【0027】
ここで、アルカリ性シリカは、ゴム基材100質量部に対して15質量部以下配合、好ましくは10質量部以下配合する。アルカリ性シリカを15質量部より多く配合すると、体積抵抗率は上昇してしまう。ゴム基材100質量部に対し、酸化亜鉛の総量を0.1〜30質量部配合するのが好ましい。これにより、所望の体積抵抗率とすることができる。なお、酸化亜鉛の総量が30質量部より多くなると、体積抵抗率が高くなってしまう虞がある。
【0028】
また、ゴム組成物は、下記式を満たすものであるのが好ましい。これにより、容易に所望の体積抵抗率とすることができる。アルカリ性シリカの割合が大きくなりすぎると、塩の形成による体積抵抗率の低下の効果が十分に得られなくなってしまう虞がある。
[式1]
(アルカリ性シリカ(質量部)/酸化亜鉛(質量部))≦2
【0029】
ゴム組成物は、ステアリン酸を含まないものであるのが好ましい。ステアリン酸を配合しないことにより、ステアリン酸を配合したものに比べてさらに体積抵抗率が低下するためである。また、ステアリン酸がブリードして感光体等を汚染したりする虞がない。
【0030】
上述のように、本発明の導電性ゴム部材は、イオン導電性付与剤やカーボンブラック等の導電性付与材を用いることなく、体積抵抗率を低下させることができるが、イオン導電性付与剤やカーボンブラック等を配合して体積抵抗率をさらに低下させるようにしてもよい。このとき、上記ゴム組成物に少量のイオン導電性付与剤やカーボンブラックを配合することで体積抵抗率がより低下する。すなわち、本発明にかかるゴム組成物に従来よりも少量のイオン導電性付与剤やカーボンブラックを配合することにより、導電性ゴム部材は所望の体積抵抗率を得ることができる。
【0031】
本発明の導電性ゴム部材は、イオン導電性付与剤やカーボンブラック等の導電性付与材を配合することなく体積抵抗率を低下させることができ、導電性付与材を配合する場合も少量でよいため、イオン導電性付与剤がブリードアウトしたり、温度や湿度、印加電圧の変化により体積抵抗率が変化したりする虞がなく、耐汚染性に優れ、環境特性に優れたものとなる。
【0032】
導電性付与材を配合する場合は、イオン導電性付与材が好ましいが、各種カーボンブラックや、金属粉などの電子導電性付与材、又はこれらを混合して用いることができる。イオン導電性付与材としては、有機塩類、無機塩類、金属錯体、イオン性液体等が挙げられる。有機塩類、無機塩類としては、過塩素酸リチウム、4級アンモニウム塩、三フッ化酢酸ナトリウムなどが挙げられる。また、金属錯体としては、ハロゲン化第二鉄−エチレングリコールなどを挙げることができ、具体的には、特許第3655364号公報に記載されたジエチレングリコール−塩化第二鉄錯体などを挙げることができる。一方、イオン性液体は、室温で液体である溶融塩であり、常温溶融塩とも呼ばれるものであり、特に、融点が70℃以下、好ましくは30℃以下のものをいう。具体的には、特開2003−202722号公報に記載された1−エチル−3−メチルイミダゾリウムビス(トリフルオロメチルスルフォニル)イミド、1−ブチル−3−エチルイミダゾリウムトリフルオロメチルスルフォニル)イミドなどを挙げることができる。
【0033】
なお、上述したゴム組成物の加硫は、過酸化物加硫及び硫黄加硫のいずれでもよく、特に限定されるものではない。
【0034】
本発明の導電性ゴム部材は、印加電圧500Vでの体積抵抗率が1.0×10〜1.0×10Ω・cmであるのが好ましい。イオン導電性ポリマーを主体とするゴム基材と、酸化亜鉛と、アルカリ性シリカと、を含み且つ受酸剤を含まないゴム組成物を硬化・成形することにより、上述の体積抵抗率の導電性ゴム部材とすることができる。
【0035】
本発明にかかる導電性ゴム部材は、例えば、ロールやベルト等に用いて好適なものである。具体的には、電子写真式複写機及びプリンター、またはトナージェット式複写機及びプリンターなどの画像形成装置の帯電ロール・現像ロール、トナー規制ロール、さらには転写ロール・中間転写ロール及びベルトなどに好適に用いることができる。
【0036】
以下本発明を実施例に基づいて説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0037】
(実施例1)
<ロールの製造>
エピクロルヒドリンゴム(1)(エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体;ECH/EO/AGE=40/56/4)100質量部に、酸化亜鉛5質量部、湿式シリカ(ニップシールNA;日本シリカ工業社製)5質量部、カーボンブラック(EC;三菱化学社製)2質量部、サンセラーCZ(三新化学工業社製)1.5質量部、チウラム系加硫促進剤(三新化学社製、サンセラーTT)1質量部、硫黄0.5質量部をそれぞれ添加してロールミキサーで混練りし、これをシャフトに押出し成形後、180℃×15分加硫を行い、実施例1の導電性ロールを得た。
【0038】
(実施例2)
実施例1において、湿式シリカを10質量部とした以外は同様にして、実施例2の導電性ロールを得た。
【0039】
(実施例3)
実施例1において、湿式シリカを15質量部とした以外は同様にして、実施例3の導電性ロールを得た。
【0040】
(実施例4)
実施例1において、エピクロルヒドリンゴム(1)の代わりに、エピクロルヒドリンゴム(2)(エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体;ECH/EO/AGE=27/70/3)を用いた以外は同様にして、実施例4の導電性ロールを得た。
【0041】
(実施例5)
実施例2において、エピクロルヒドリンゴム(1)の代わりに、エピクロルヒドリンゴム(2)を用いた以外は同様にして、実施例5の導電性ロールを得た。
【0042】
(実施例6)
実施例3において、エピクロルヒドリンゴム(1)の代わりに、エピクロルヒドリンゴム(2)を用いた以外は同様にして、実施例6の導電性ロールを得た。
【0043】
(実施例7)
実施例1において、湿式シリカを1質量部とした以外は同様にして、実施例7の導電性ロールを得た。
【0044】
(実施例8)
実施例1において、湿式シリカを2.5質量部とした以外は同様にして、実施例8の導電性ロールを得た。
【0045】
(実施例9)
実施例1において、さらにイオン導電剤(三フッ化酢酸ナトリウム)を0.4質量部配合した以外は同様にして、実施例9の導電性ロールを得た。
【0046】
(比較例1)
実施例1において、湿式シリカを配合しなかった以外は同様にして、比較例1の導電性ロールを得た。
【0047】
(比較例2)
実施例5において、湿式シリカを配合しなかった以外は同様にして、比較例2の導電性ロールを得た。
【0048】
(比較例3)
実施例1において、湿式シリカを20質量部とした以外は同様にして、比較例3の導電性ロールを得た。
【0049】
(比較例4)
比較例3において、エピクロルヒドリンゴム(1)の代わりに、エピクロルヒドリンゴム(2)を用いた以外は同様にして、比較例4の導電性ロールを得た。
【0050】
(比較例5)
比較例1において、酸化亜鉛の代わりに酸化マグネシウムを5質量部配合した以外は同様にして、比較例5の導電性ロールを得た。
【0051】
(比較例6)
比較例1において、酸化亜鉛の代わりに酸化カルシウムを5質量部配合した以外は同様にして、比較例6の導電性ロールを得た。
【0052】
(比較例7)
比較例1において、酸化亜鉛の代わりにハイドロタルサイトを5質量部配合した以外は同様にして、比較例7の導電性ロールを得た。
【0053】
(比較例8)
実施例1において、さらに酸化マグネシウムを5質量部配合した以外は同様にして、比較例8の導電性ロールを得た。
【0054】
(比較例9)
実施例1において、さらにハイドロタルサイトを5質量部配合した以外は同様にして、比較例9の導電性ロールを得た。
【0055】
(比較例10)
比較例1において、酸化亜鉛を配合しなかった以外は同様にして、比較例10の導電性ロールを得た。
【0056】
(比較例11)
実施例1において、酸化亜鉛を配合しなかった以外は同様にして、比較例11の導電性ロールを得た。
【0057】
(比較例12)
実施例2において、酸化亜鉛を配合しなかった以外は同様にして、比較例12の導電性ロールを得た。
【0058】
(比較例13)
実施例3において、酸化亜鉛を配合しなかった以外は同様にして、比較例13の導電性ロールを得た。
【0059】
(比較例14)
比較例4において、酸化亜鉛を配合しなかった以外は同様にして、比較例14の導電性ロールを得た。
【0060】
(比較例15)
比較例2において、酸化亜鉛を配合しなかった以外は同様にして、比較例15の導電性ロールを得た。
【0061】
(比較例16)
実施例4において、酸化亜鉛を配合しなかった以外は同様にして、比較例16の導電性ロールを得た。
【0062】
(比較例17)
実施例5において、酸化亜鉛を配合しなかった以外は同様にして、比較例17の導電性ロールを得た。
【0063】
(比較例18)
実施例6において、酸化亜鉛を配合しなかった以外は同様にして、比較例18の導電性ロールを得た。
【0064】
(比較例19)
比較例4において、酸化亜鉛を配合しなかった以外は同様にして、比較例19の導電性ロールを得た。
【0065】
(比較例20)
比較例7において、さらに湿式シリカを5質量部配合した以外は同様にして、比較例20の導電性ロールを得た。
【0066】
(試験例1)ゴム硬度測定
各実施例及び各比較例の導電性ロールで使用したゴム部材を用いて、厚さ12mmのサンプルを作製し、JIS K6253に従ってゴム硬度(タイプ A)を25℃で測定した。結果を表1〜4に示す。
【0067】
(試験例2)体積抵抗率測定
各実施例及び各比較例の導電性ロールで使用したゴム部材を用いて、別途平板プレスにより2mm厚のシート状サンプルを作製し、JIS K6271に従って体積抵抗率を測定した。なお、測定は、常温常湿環境(N/N:25℃×55%RH)にて、ULTRA HIGH RESISTANCE METER R8340A(株式会社アドバンテスト製)を用いて行った。このときの印加電圧は印加電圧500Vであった。体積抵抗から体積抵抗率を求めた。結果を表1〜4及び図1〜3に示す。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
【表3】

【0071】
【表4】

【0072】
(結果のまとめ)
表1及び3に示すように、酸化亜鉛とアルカリ性シリカを併用した実施例1の導電性ロールは、酸化亜鉛のみを配合した比較例1の導電性ロール、受酸剤を配合した比較例5〜7の導電性ロールよりも体積抵抗率が低下した。
【0073】
図1に示すように、アルカリ性シリカを配合したが酸化亜鉛を配合していない比較例11〜14の導電性ロール及び比較例16〜19の導電性ロールはそれぞれ、アルカリ性シリカ及び酸化亜鉛いずれも配合していない比較例10及び比較例15よりも体積抵抗率が上昇した。これより、酸化亜鉛を配合しない場合は、アルカリ性シリカを配合することにより体積抵抗率が上昇することがわかった。
【0074】
これに対し、酸化亜鉛とアルカリ性シリカとを併用した実施例1〜3の導電性ロール及び実施例4〜6の導電性ロールは、それぞれ比較例10及び比較例15よりも体積抵抗率が低下した。これより、酸化亜鉛とアルカリ性シリカを併用することにより、体積抵抗率が低下することがわかった。特に、(アルカリ性シリカ/酸化亜鉛)≦2を満たし、且つアルカリ性シリカを10質量部以下配合した実施例1〜2及び実施例7〜8、並びに実施例4〜5は、体積抵抗率の低下が顕著であった。
【0075】
また、図2に示すように、酸化亜鉛とアルカリ性シリカを併用し且つ受酸剤を含まない実施例1の導電性ロールは、さらに酸化マグネシウムを配合した比較例8の導電性ロール及びさらにハイドロタルサイトを配合した比較例9の導電性ロールよりも、体積抵抗率が大幅に低下した。これより、受酸剤を含まず、且つ酸化亜鉛とアルカリ性シリカを併用する導電性ロールは、受酸剤を含む導電性ロールよりも体積抵抗率が低下することがわかった。
【0076】
また、受酸剤(ハイドロタルサイト)と、湿式シリカとを併用した場合(比較例20)、受酸剤を配合して湿式シリカを配合しないもの(比較例7)より、体積抵抗率が上昇することがわかった。
【0077】
図3に示すように、酸化亜鉛とアルカリ性シリカとを配合した実施例1の導電性ロールは、酸化亜鉛のみを配合した比較例1の導電性ロールよりも体積抵抗率が低下した。また、酸化亜鉛及びアルカリ性シリカに加え、さらにイオン導電剤を0.4質量部配合した実施例9の導電性ロールは、実施例1の導電性ロールよりもさらに体積抵抗率が低下した。これより、酸化亜鉛とアルカリ性シリカを併用すると、イオン導電剤を少量配合することにより、さらに体積抵抗率が低下することがわかった。
【0078】
以上より、イオン導電性ポリマーを主体とするゴム基材と、酸化亜鉛と、アルカリ性シリカとを含み且つ受酸剤を含まないゴム組成物を硬化・成形したゴム状弾性体からなり、ゴム基材100質量部に対しアルカリ性シリカを15質量部以下配合した導電性ゴム部材は、体積抵抗率の低いものとなることがわかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン導電性ポリマーを主体とするゴム基材と、酸化亜鉛と、アルカリ性シリカと、を含み且つ受酸剤を含まないゴム組成物を硬化・成形したゴム状弾性体からなり、前記ゴム基材100質量部に対し前記アルカリ性シリカを15質量部以下配合することを特徴とする導電性ゴム部材。
【請求項2】
請求項1に記載の導電性ゴム部材において、前記ゴム組成物は、ステアリン酸を含まないものであることを特徴とする導電性ゴム部材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の導電性ゴム部材において、前記ゴム基材は、エピクロルヒドリンゴムからなることを特徴とする導電性ゴム部材。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の導電性ゴム部材において、前記ゴム組成物は、下記式を満たすことを特徴とする導電性ゴム部材。
[式1]
{アルカリ性シリカ(質量部)/酸化亜鉛(質量部)}≦2
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の導電性ゴム部材において、前記ゴム組成物は、さらにイオン導電剤を含むことを特徴とする導電性ゴム部材。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項に記載の導電性ゴム部材において、前記導電性ゴム部材は、印加電圧500Vでの体積抵抗率が1.0×10〜1.0×10Ωcmであることを特徴とする導電性ゴム部材。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の導電性ゴム部材がロール形状又はベルト形状であることを特徴とする導電性ゴム部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−75926(P2011−75926A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−228693(P2009−228693)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000227412)シンジーテック株式会社 (99)
【Fターム(参考)】