説明

導電性シリコーンゴムスポンジ組成物及び導電性シリコーンゴムスポンジの製造方法

【解決手段】(A)下記式
1nSiO(4-n)/2 (I)
(R1は一価炭化水素基で、1分子中に2個以上のアルケニル基を有する。nは1.95〜2.05の正数)
で表されるオルガノポリシロキサンと補強性シリカとを含んでなり、架橋前の含有水分量が0.5質量%以下であるシリコーンゴムコンパウンド、
(B)熱分解によって(A)成分を増粘又は硬化させる特性を有する非シアノ系有機アゾ発泡剤、
(C)炭酸水素ナトリウム、
(D)導電性カーボン、
(E)オルガノハイドロジエンポリシロキサンと白金族金属系触媒とからなる付加反応硬化剤
を含有してなり、架橋して得られるスポンジセルの独泡率が70%以上であり、かつスポンジ密度が0.3g/cm3以下である低密度,高発泡導電性シリコーンゴムスポンジを形成する導電性シリコーンゴムスポンジ組成物。
【効果】本発明によれば、セル形状の均一な低密度導電性シリコーンゴムスポンジを再現性よく得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発泡剤として炭酸水素ナトリウムを主発泡剤に用いた導電性シリコーンゴムスポンジ組成物、及びこれを用いて導電性シリコーンゴムスポンジを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリコーンゴムは、優れた耐候性、電気特性、低圧縮永久歪み性、耐熱性、耐寒性等の特性を有しているため、電気機器、自動車、建築、医療、食品を初めとして様々な分野で広く使用されている。その用途としては、例えば、リモートコントローラ、タイプライター、ワードプロセッサ、コンピュータ端末、楽器等のゴム接点として使用されるラバーコンタクト;建築用ガスケット;複写機用ロール、現像ロール、転写ロール、帯電ロール、給紙ロール等の各種ロール;オーディオ装置等の防振ゴム;コンピュータに使用されるコンパクトディスク用パッキン等が挙げられる。
【0003】
シリコーンゴムは様々な添加剤を添加することにより特性を付与し易い材料であり、発泡剤を添加して加熱することによりスポンジ状とすることが可能であり、また導電性カーボンを添加することにより導電性シリコーンゴムとすることが可能である。
【0004】
これらのシリコーンゴムは、一般的に、高重合度オルガノポリシロキサン(原料ポリマー)と補強性シリカ充填材とを含有する組成物の形で使用に供される。
【0005】
補強性シリカ充填材は主に、乾式シリカ(噴霧式)と湿式シリカに分類されるが、これらのシリカは表面にシラノール基をもつために親水性であり、空気中の水分を吸着することが知られている。乾式シリカは0.1〜2質量%程度、湿式シリカは1〜8質量%の吸着水を有する。従って、このような補強性シリカを含有するシリコーンゴムコンパウンドも同様に吸着水分を含んでいる。このような補強性シリカの吸着水は、シリコーンポリマーと補強性シリカとを混練、熱処理(100〜200℃加熱下での混練り)すると一時的にシリコーンゴムコンパウンド外に排除できるが、その後、空気中の湿度により水分が該シリコーンゴムコンパウンドに再吸着してしまうことが知られている。
【0006】
一方、シリコーンゴムスポンジの発泡に用いられる発泡剤としては、従来AIBN(アゾイソブチロニトリル)が多用されてきた。AIBNは、1分子量あたりの発生窒素ガスが多く、少ない添加量で高発泡のスポンジを得ることができること、及び付加反応の阻害物質となりにくいことから、有機過酸化物による架橋及び付加反応による架橋の両方の硬化系で使用されてきた。しかし、AIBNは、分解物の経口毒性(ラット、LD50)が38.9mgと高いことから、安全性の高い発泡剤が望まれていた。
【0007】
この場合、シリコーンゴムに適用される非AIBN発泡剤としては様々な物質が検討されているが、そのなかでも特に炭酸水素ナトリウム等の無機塩類の発泡剤が毒性の低さ、発泡ガスの安全性からシリコーンゴムの発泡剤として提案されており、結晶水を有する炭酸水素ナトリウムを用いるもの(特許文献1:特開平5−156061号公報)、炭酸水素ナトリウムを使用したシリコーンスポンジ用の組成物として架橋前のコンパウンド含有水分量を0.5質量%以下としたスポンジ材(特許文献2:特開2006−83237号公報)、分解によりシリコーンゴムを増粘させることが可能な有機アゾ系発泡剤:1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−メチルカルボキシレートを炭酸水素ナトリウムと併用した絶縁性低硬度スポンジ(特許文献3:特開2006−193609号公報)等が提案されている。
【0008】
一方、導電性シリコーンゴムスポンジとしては、過去より様々な提案がなされているが、そのほとんどがカーボンブラックと有機発泡剤を用いたものであり、毒性のきわめて少ない炭酸水素ナトリウムを主発泡剤に用いた高発泡で独立泡をもつ導電性シリコーンゴムスポンジの製造方法に関する検討は行われていない状況であった。
【0009】
【特許文献1】特開平5−156061号公報
【特許文献2】特開2006−83237号公報
【特許文献3】特開2006−193609号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、環境毒性が低い炭酸水素ナトリウムを発泡剤として用いて、シリコーンゴムスポンジ組成物を常圧熱気加硫させたときにセル形状が均一で独立泡をもつ低密度の導電性シリコーンゴムスポンジを再現性よく得ることができる導電性シリコーンゴムスポンジ組成物及び導電性シリコーンゴムスポンジの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討した結果、炭酸水素ナトリウム系の発泡剤をシリコーンゴム発泡体の作製に使用する場合、シリコーンゴムコンパウンドに含まれる水分量を一定の量以下に減少させたうえ、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−メチルカルボキシレート)等の非シアノ系有機アゾ発泡剤をシリコーンゴムコンパウンドの増粘剤及びスポンジセル造核剤として使用した場合、主発泡剤として炭酸水素ナトリウムを用いた架橋と発泡とのバランスが安定化し、再現性よく良好な導電性独立泡シリコーンゴムスポンジが得られることを知見し、本発明をなすに至った。
【0012】
即ち、本発明は、下記の導電性シリコーンゴムスポンジ組成物及び導電性シリコーンゴムスポンジの製造方法を提供する。
[I](A)下記平均組成式(I):
1nSiO(4-n)/2 (I)
(式中、R1は同一又は異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基であるが、1分子中に2個以上のアルケニル基を有する。nは1.95〜2.05の正数である。)
で表されるオルガノポリシロキサンと補強性シリカとを含んでなり、架橋前の含有水分量が0.5質量%以下であるシリコーンゴムコンパウンド、
(B)熱分解によって(A)成分を増粘又は硬化させる特性を有する非シアノ系有機アゾ発泡剤:(A)成分中のオルガノポリシロキサン100質量部に対し0.01〜10質量部、
(C)炭酸水素ナトリウム:(A)成分中のオルガノポリシロキサン100質量部に対し1〜50質量部、
(D)導電性カーボン:(A)成分中のオルガノポリシロキサン100質量部に対し1〜60質量部 及び
(E)オルガノハイドロジェンポリシロキサンと白金族金属系触媒とからなる付加反応硬化剤:(A)成分のオルガノポリシロキサンの硬化有効量
を含有してなり、架橋して得られるスポンジセルの独泡率が70%以上であり、かつスポンジ密度が0.3g/cm3以下である低密度,高発泡導電性シリコーンゴムスポンジを形成することを特徴とする導電性シリコーンゴムスポンジ組成物。
[II]更に、発泡剤として、(F)アゾジカルボンアミド(ADCA)を併用することを特徴とする[I]記載のシリコーンゴムスポンジ組成物。
[III]硬化剤として、更に1分間半減期温度が150℃以上の非アシル系有機過酸化物を併用したことを特徴とする[I]又は[II]記載のシリコーンゴムスポンジ組成物。
[IV](B)成分が、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−メチルカルボキシレート)である[I]〜[III]のいずれか1項記載のシリコーンゴムスポンジ組成物。
[V][I]〜[IV]のいずれか1項記載の導電性シリコーンゴムスポンジ組成物を発泡常圧熱風架橋することを特徴とするスポンジセルの独泡率が70%以上であり、かつスポンジ密度が0.3g/cm3以下である低密度,高発泡導電性シリコーンゴムスポンジの製造方法。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、炭酸水素ナトリウム系の発泡剤を用いて、シリコーンゴムスポンジ組成物を常圧熱気加硫させたときにセル形状の均一な低密度導電性シリコーンゴムスポンジを再現性よく得ることができる。従来多用されていたAIBN(アゾイソブチロニトリル)と異なり、炭酸水素ナトリウムは無毒なので、本発明によれば、安全にシリコーンゴムスポンジを製造することができる。上記シリコーンゴムスポンジはガスケット類、電子機器パッキン、事務機ロール類衝撃吸収体等の様々な用途で使用することができ、特に事務機ロールのトナー搬送ロールに好適である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
(A)成分
(A)成分は、下記平均組成式(I):
1nSiO(4-n)/2 (I)
(式中、R1は同一又は異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基であるが、1分子中に2個以上のアルケニル基を有する。nは1.95〜2.05の正数である。)
で表されるオルガノポリシロキサンと補強性シリカとを含んでなり、架橋前の含有水分量が0.5質量%以下であるシリコーンゴムコンパウンドである。
【0015】
オルガノポリシロキサン
上記平均組成式(I)中、R1は同一又は異種の非置換もしくは置換の、好ましくは炭素原子数1〜12、特に好ましくは炭素原子数1〜8の一価炭化水素基を示す。R1の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基;シクロアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基;及びこれらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子等のハロゲン原子、シアノ基等で置換した基が挙げられる。これらの中でも、メチル基、ビニル基、フェニル基、トリフルオロプロピル基が好ましく、メチル基、ビニル基が特に好ましい。上記平均組成式(I)中、nは1.95〜2.05の正数であるので、該オルガノポリシロキサンは基本的には分岐を有しない直鎖状であるが、本発明組成物のゴム弾性を損なわない範囲において分岐していてもよい。
【0016】
(A)成分中のオルガノポリシロキサンは、1分子中に2個以上のアルケニル基、好ましくはビニル基を有することが好ましい。具体的には、全R1の0.01〜10モル%、特に0.02〜5モル%がアルケニル基であることが好ましい。このオルガノポリシロキサンが直鎖状の場合、このアルケニル基は、分子鎖末端及び分子鎖末端でない部分のどちらか一方でのみケイ素原子に結合していても、その両方でケイ素原子に結合していてもよいが、少なくとも一個のアルケニル基が分子鎖末端のケイ素原子に結合していることが好ましい。
【0017】
(A)成分中のオルガノポリシロキサンの平均重合度は、好ましくは100以上、より好ましくは500〜100,000、特に好ましくは4,000〜20,000である。重合度がこの範囲にあると、十分なゴム強度を持ったシリコーンゴムスポンジ組成物を得ることができる。なお、この平均重合度は、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)測定データよりポリスチレン標準試料で作成した検量線を用いて換算することで求められる。
【0018】
(A)成分中のオルガノポリシロキサンの好適な具体例としては、主鎖がジメチルシロキサン単位からなるオルガノポリシロキサン、即ちジメチルポリシロキサン、又はジメチルシロキサン単位の一部がジフェニルシロキサン単位、メチルビニルシロキサン単位、及び/又はメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシロキサン単位で置換されているジメチルポリシロキサン等が挙げられる。これらのオルガノポリシロキサンは1種単独で使用しても、分子構造や重合度の異なる2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0019】
このようなオルガノポリシロキサンは、例えば、オルガノハロゲノシランの1種もしくは2種以上を(共)加水分解し、続いて縮合させることにより、又は環状ポリシロキサンをアルカリ性触媒又は酸性触媒を用いて開環重合させることにより得ることができる。
【0020】
補強性シリカ
(A)成分中の補強性シリカは、機械的強度のすぐれたシリコーンゴムスポンジ組成物を得るために充填材として添加される。この目的のためには、BET法により測定された補強性シリカの比表面積が50m2/g以上であることが好ましく、100〜400m2/gであることがより好ましい。該比表面積がこの範囲だと、本発明組成物を発泡・硬化させることにより得られる硬化物の機械的強度を高く保つことができる。このような補強性シリカとしては、例えば、煙霧質シリカ、沈降シリカ等が挙げられる。
【0021】
本発明では、良好なシリコーンゴムスポンジを得るために、(A)成分のシリコーンゴムコンパウンドは、架橋前の含有水分量を0.5質量%以下にする必要がある。該含有水分量を0.5質量%以下とするためには、(A)成分中の補強性シリカ単独での含有水分量が3質量%以下であることが好ましい。具体的には、例えば、含有水分量が1質量%以下の乾式シリカが好適に使用される。また、通常の湿式シリカは内部に細孔が存在し、水分を吸着しやすいため、含有水分量が5〜8質量%であることが多いが、内部の細孔が少ない低吸湿湿式シリカ(含有水分量が0.5〜3質量%)や疎水化処理湿式シリカ(含有水分量が0.1〜3質量%)は本発明に好適に利用される。一般的に、シリカの含有水分量は、該シリカについて加熱減量(105℃、2時間)を測定することによって測定することができる。
【0022】
補強性シリカの添加量は、上記オルガノポリシロキサン100質量部に対して、好ましくは1〜100質量部、より好ましくは5〜50質量部である。該添加量がこの範囲だと、本発明組成物を発泡・硬化させることにより得られる硬化物の機械的強度を高く保つことができる。
【0023】
その他の添加剤
(A)成分のシリコーンゴムコンパウンドには、必要に応じ、更に重合度が100以下の両末端シラノール基封鎖ジオルガノポリシロキサン、ヘキサメチルジシラザン等の分散剤、カーボンブラック、導電性金属酸化物等の導電性付与剤、石英粉、酸化亜鉛、けいそう土、炭酸カルシウム等の充填剤、酸化セリウム、酸化鉄等の耐熱性向上剤、着色剤、離型剤、難燃性付与剤等のシリコーンゴム組成物において公知の添加剤を本発明の目的を妨げない範囲で添加してもよい。
【0024】
含有水分量
(A)成分のシリコーンゴムコンパウンドの架橋前の含有水分量は、0.5質量%以下であり、好ましくは0.3質量%以下である。該含有水分量が0.5質量%を超えると、発泡剤として使用する(B)成分中の炭酸水素ナトリウムの結晶はゴムコンパウンド中の吸着水分により溶解するか、又は不安定状態となる。そのため、炭酸水素ナトリウムが、通常は約150℃程度で分解・発ガスするのに、100℃近辺の温度領域でも分解してしまう。結果的に、組成物中で架橋が生じる前にガスが発生していわゆる「ガス抜け」が発生し、スポンジ状態とならなくなってしまったり、シリコーンゴムコンパウンドの吸湿度合いにより、得られるスポンジの再現性にばらつきが生じてしまったりする。
【0025】
シリコーンゴムコンパウンドの含有水分量の測定は、予めシリコーンゴムコンパウンドを温度25℃、相対湿度50%の雰囲気にて24時間放置した後、乾燥窒素をキャリアガスにして該シリコーンゴムコンパウンドを150℃で5分間加熱することによって発生した水分(水蒸気)をカールフィッシャー法により加熱炉付き自動測定器等で測定することにより、行うことができる。
【0026】
シリコーンゴムコンパウンドの製造方法
(A)成分のシリコーンゴムコンパウンドの製造方法は、特に限定されないが、例えば、上記オルガノポリシロキサン及び補強性シリカ、並びに、必要に応じて、その他の添加剤の所定量を2本ロールミル、ニーダー、バンバリーミキサー等で均一に混練りすることによって得ることができる。このとき、該シリコーンゴムコンパウンド中の含有水分量を低減させるために、熱処理(加熱下での混練り)を行うことが好ましい。熱処理の温度、時間は特に限定されないが、例えば、100〜250℃における30分〜5時間の熱処理が挙げられる。
【0027】
(B)成分
本発明では、(B)成分として熱分解によって(A)成分を増粘あるいは硬化させることのできる特性をもった非シアノ系有機アゾ発泡剤を使用する。
【0028】
この特徴をもった非シアノ系有機アゾ発泡剤は、具体的にはその分解によってガスを発生させるだけでなく、(A)成分のオルガノポリシロキサンの分子中に存在するメチル基、アルケニル基をラジカル反応によって架橋反応させ、ポリマー粘度を上昇させることができる。
【0029】
従って、本発明のような粘度上昇を示す有機アゾ発泡剤では、スポンジ成型時にゴム内で「硬化剤による(A)成分の増粘(硬化)」と「発泡剤の分解によるガスの発生」がほぼ同時に起こるために、付加架橋の触媒量を調整して反応を制御したり、有機過酸化物の分解温度にしばられることなしに、シリコーンゴムスポンジの硬さや永久歪等の良好な物性をもとめて自由に架橋剤の選択ができるようになる。また、スポンジを成型する温度も、同様に発泡剤の分解と同時に架橋する特性から、低温から高温まで非常に幅広い温度範囲において安定したスポンジを成形することができる。これは常圧熱気中で硬化させるスポンジだけでなく、プレス発泡や円筒形の管内発泡等の規制された空間でも安定した発泡体を作製することが可能となる。
【0030】
ここで、一般にアゾ化合物等はビニル化合物のラジカル重合剤として多用されており、オルガノポリシロキサンの分子中のアルケニル基(以下、Si−Viという)に対しても同じような重合剤として機能するはずと思われるが、実際は通常の発泡剤の添加量で粘度を増加させるような強いラジカルを発生させたり、また発泡剤の分解と時を同じにして粘度上昇が起きるような発泡剤はほとんどなく、アゾビスイソブチルニトリルや2,2’−アゾビス−2−メチルブチロニトリル、2,2’−アゾビズ−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(1−アセトキシ−1−フェニルエタン)等でも、分解により短時間での粘度上昇は観測できない。
【0031】
これに対し、本発明者らは、非シアノ系有機アゾ発泡剤において、その熱分解によって(A)成分、特にオルガノポリシロキサンを増粘又は硬化させる特性を有するものを見出したものである。この場合、非シアノ系有機アゾ発泡剤は、特に発泡剤(B)成分と(A)成分を混合した混合物粘度が、発泡剤(B)の熱分解温度以上の昇温によって(B)成分が分解し、ラジカルを発生することにより(A)成分が増粘し、(A)成分単独の同条件による粘度より50%以上の粘度上昇を示す有機発泡剤がよく、更に望ましくは100%以上の粘度上昇を持つ有機発泡体が望ましい。更に具体的数字で示すと、(B)成分の非シアノ系有機アゾ系発泡剤が、特に(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に(B)成分3質量部を加えた後、170℃において熱分解させながら測定したムーニー粘度ML(1+4)が、(A)成分単体のムーニー粘度に対して100%以上の粘度上昇のものがよく、更に望ましくは150%以上の粘度上昇であるものが望ましい。
【0032】
上記の特性を満たす非シアノ系有機アゾ発泡剤としては、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−メチルカルボキシレート)、2,2’−アゾビス〔N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド〕等が挙げられる。本発明では特に1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−メチルカルボキシレート)が好適である。
【0033】
(B)成分の有機発泡剤の添加量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0.01〜10質量部、好ましくは0.5〜7質量部である。0.01質量部未満であると発泡が不十分であり、10質量部より多いとポリマー成分の増粘効果が大きくなりすぎ、発泡しにくく高発泡スポンジとなりにくく、スポンジセルは不均一となったり、セルが破壊され弾力のないスポンジになったり綺麗なスキン層が形成されなくなる。
【0034】
(C)成分
(C)成分の炭酸水素ナトリウムは、炭酸アンモニウム系発泡剤、亜硝酸アンモニウム系発泡剤、アジド化合物系発泡剤等の他の無機発泡剤と異なり、分解によって強い酸やアルカリを発生することがない。また、オルガノポリシロキサンの有機過酸化物架橋や白金系触媒を使用する付加架橋を阻害しないので、多量に添加できるというメリットがある。更に、無臭・無毒である。
【0035】
(C)成分の添加量を増加させれば、スポンジの発泡倍率は高くなり、スポンジセルの壁は薄くなる。よって、(C)成分の発泡剤の増減でスポンジの密度及び硬度をコントロールすることができる。
【0036】
(C)成分の炭酸水素ナトリウムの粒子径、製品純度、表面処理の有無は任意である。また、(C)成分の炭酸水素ナトリウムは、スポンジセル造核剤、分解促進剤としての少量の酸、微量の他の無機発泡剤等と併用してもよい。
【0037】
(C)成分の添加量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して、通常、1〜50質量部、好ましくは1〜20質量部である。1質量部未満であると発生ガスが不十分でスポンジ状態となりにくく、50質量部を超えると物理的に添加困難となる場合があり、またスポンジ成型時に発生ガスが多くなりすぎるためにスポンジが内部より割れてしまう場合がある。
【0038】
(D)成分
(D)成分として使用する導電性カーボンは、その種類、配合量は制限されないが、公知の導電性カーボンブラックを使用することが可能である。
【0039】
カーボンブラックとしては、通常導電性ゴム組成物に常用されているものが使用し得、例えばアセチレンブラック、コンダクティブファーネスブラック(CF)、スーパーコンダクティブファーネスブラック(SCF)、エクストラコンダクティブファーネスブラッウ(XCF)、コンダクティブチャンネルブラック(CC)、1500〜3000℃程度の高温で熱処理されたファーネスブラックやチャンネルブラック等を挙げることができる。具体的には、アセチレンブラックとしてはデンカブラック(電気化学社製)、シャウニガンアセチレンブラック(シャウニガンケミカル社製)等が、コンダクティブファーネスブラックとしてはコンチネックスCF(コンチネンタルカーボン社製)、バルカンC(キャボット社製)等が、スーパーコンダクティブファーネスブラックとしてはコンチネックスSCF(コンチネンタルカーボン社製)、パルカンSC(キャボット社製)等が、エクストラコンダクティブファーネスブラックとしては旭HS−500(旭カーボン社製)、パルカンXC−72(キャボット社製)等が、コンダクティブチャンネルブラックとしてはコウラックスL(デグッサ社製)等が例示され、他に急冷工程を含まないオイル燃焼法で製造される(MMM Process法)カーボンブラックENSACO260G、ENSACO250G、ENSACO210G(TIMCAL社製)等が挙げられる。また、ファーネスブラックの一種であるケッチェンブラックEC及びケッチェンブラックEC−600JD(ケッチェンブラックインターナショナル社製)を用いることもできる。ファーネスブラックは、不純物、特に硫黄や硫黄化合物の量が硫黄元素の濃度で6000ppm以下、より好ましくは3000ppm以下が望ましい。なお、これらのうちでは、アセチレンブラックは不純物含有率が少ない上、発達した2次ストラクチャー構造を有することから導電性に優れており、本発明において特に好適に用いられる。なおまた、その卓越した比表面積から低充填量でも優れた導電性を示すケッチェンブラックECやケッチェンブラックEC−600JD等も好ましく使用できる。
【0040】
上記導電性カーボンブラックの添加量は、上述した(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して1〜60質量部、特に5〜40質量部とすることが好ましい。添加量が1質量部未満では所望の導電性を得ることができない場合があり、60質量部を超えると物理的混合が困難になったり機械的強度が低下したりする可能性があり、目的とするゴム弾性を得られないことがある。
【0041】
(E)成分
(E)成分の硬化剤としては、付加反応硬化剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンとヒドロシリル化触媒(白金族金属系触媒)との組み合わせによる付加反応による架橋を利用した硬化剤である。この付加反応に用いられるヒドロシリル化触媒は、(A)成分中の脂肪族不飽和基(アルケニル基、ジエン基等)と付加反応硬化剤中のオルガノハイドロジェンポリシロキサンのケイ素原子結合水素原子(即ち、SiH基)とを付加反応させる触媒である。付加架橋はHAV(常圧熱風架橋)成型時に最も熱が伝わりやすいスポンジ表面を始めに架橋させ硬化ゴム層を表面に作ることで、発泡剤のガス圧がゴム内より抜けてしまういわゆる「ガス抜け」を防止するために必須である。
【0042】
[ヒドロシリル化触媒]
ヒドロシリル化触媒としては、例えば、白金族の金属単体やその化合物等の白金族金属系触媒が挙げられる。白金族金属系触媒としては、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物用の触媒として従来公知のものが使用できる。その好ましい例としては、シリカ、アルミナ又はシリカゲルのような担体に吸着させた微粒子状白金金属、塩化第二白金、塩化白金酸、塩化白金酸6水和物のアルコール溶液、パラジウム触媒、ロジウム触媒等が挙げられるが、白金又は白金化合物がより好ましい。
【0043】
ヒドロシリル化触媒の添加量は、上記付加反応を促進できる量であればよく、好ましくは白金系金属に換算して(A)成分のオルガノポリシロキサンに対し質量基準で1ppm〜1質量%の範囲であるが、より好ましくは10〜500ppmの範囲である。該添加量がこの範囲だと、付加反応が十分に促進され、硬化が十分であり、経済的に有利である。
【0044】
また、上記の触媒のほかに硬化速度を調整する目的で、付加架橋制御剤を使用してもよい。その具体例として、エチニルシクロヘキサノールやテトラシクロメチルビニルポリシロキサン等が挙げられる。
【0045】
[オルガノハイドロジェンポリシロキサン]
オルガノハイドロジェンポリシロキサンは、1分子中に2個以上、好ましくは3個以上のSiH基を含有する限り、直鎖状及び環状のいずれであってもよく、分岐していてもよい。このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとしては、付加反応硬化型シリコーンゴム組成物の架橋剤として公知のオルガノハイドロジェンポリシロキサンを用いることができ、例えば、下記平均組成式(II):
2pqSiO(4-p-q)/2 (II)
(式中、R2は同一又は異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基であり、p及びqは、0≦p<3、0<q≦3、及び0<p+q≦3、好ましくは1≦p≦2.2、0.002≦q≦1、及び1.002≦p+q≦3を満たす正数である。)
で表されるオルガノハイドロジェンポリシロキサンを好適に用いることができる。
【0046】
上記平均組成式(II)中、R2は同一又は異種の非置換もしくは置換の、好ましくは炭素原子数1〜12、特に好ましくは炭素原子数1〜8の一価炭化水素基を示し、脂肪族不飽和結合を含まないことが好ましい。R2の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;ベンジル基、2−フェニルエチル基、2−フェニルプロピル基等のアラルキル基;及びこれらの炭化水素基の水素原子の一部又は全部をフッ素原子等のハロゲン原子等で置換した基、例えば3,3,3−トリフルオロプロピル基等が挙げられる。
【0047】
このオルガノハイドロジェンポリシロキサンが直鎖状の場合、SiH基は、分子鎖末端及び分子鎖末端でない部分のどちらか一方にのみ存在していても、その両方に存在していてもよい。また、このオルガノハイドロジェンポリシロキサンの25℃における粘度は0.5〜10,000mm2/sであることが好ましく、1〜300mm2/sであることが特に好ましい。なお、この粘度はオストワルド粘度計で測定した25℃における動粘度である。
【0048】
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンの具体例としては、下記構造式の化合物が挙げられる。
【0049】
【化1】

【0050】
(式中、kは2〜10の整数であり、s及びtは0〜10の整数である。)
【0051】
上記オルガノハイドロジェンポリシロキサンの添加量は、(A)成分中のオルガノポリシロキサンの脂肪族不飽和基(アルケニル基、ジエン基等)1個に対して該オルガノハイドロジェンポリシロキサン中のSiH基の個数が好ましくは0.5〜10個、より好ましくは0.7〜5個となる量である。該添加量がこの範囲内だと、架橋が十分であり、十分な機械的強度を得ることができ、硬化後の物理特性、特に耐熱性と低圧縮永久歪み性を維持することができる。このような添加量は、例えば、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して該オルガノハイドロジェンポリシロキサンを0.1〜40質量部添加することにより実現できる。
【0052】
有機過酸化物架橋剤
本発明においては、硬化剤として、上記付加反応硬化剤に加え、1分間半減期温度が150℃以上の非アシル系有機過酸化物の併用系であることが望ましい。
【0053】
本発明で付加架橋に併用する有機過酸化物は、(B)成分の1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−メチルカルボキシレート)発泡剤の分解温度及び(C)成分の炭酸水素ナトリウムの分解温度150℃よりも高い温度で分解、架橋するものを選択し、(A)成分のオルガノポリシロキサンのフル硬化を目的とする。
【0054】
有機過酸化物の具体例を各化合物の名称と共に1分間半減期温度を括弧内に示して以下に例示する。本発明にはt−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート(パーオキシエステル系、155℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン(ジアルキル系、180℃)、2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキシン(ジアルキル系、194℃)、ジ−t−ブチルパーオキサイド(ジアルキル系、186℃)、ジクミルパーオキサイド(ジアルキル系、175℃)、クミル−t−ブチルパーオキサイド(ジアルキル系、173℃)、p−メンタンハイドロパーオキサイド(ハイドロパーオキサイド系、200℃)等が好適に用いられるが、その中でも特に1分間半減期温度が170℃以上のジアルキルパーオキサイド系が有機過酸化物の安定性等から好ましく利用される。これらの有機過酸化物は、1種単独でも2種以上の混合物としても利用することができる。
【0055】
有機過酸化物の添加量は(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して好ましくは0.1〜15質量部であり、特に好ましくは0.2〜10質量部である。
【0056】
(F)成分
更に発泡剤として、(F)成分としてアゾジカルボンアミド(ADCA)を、ガスを発生させる発泡剤として併用してもよい。アゾジカルボンアミドはガス発生量が270ml/gと多く、また分解温度が200℃と高温であるが、分解助剤に尿素系、有機亜鉛化合物を用いることにより、容易に分解温度を120〜170℃程度に下げることが可能であり、分子内にシリコーンゴムの硬化を阻害する硫黄化合物、リン酸塩類等を持たないため、本発明に好適に使用される。(F)成分のアゾジカルボンアミドの添加量は、(A)成分のオルガノポリシロキサン100質量部に対して0〜20質量部、好ましくは0.5〜10質量部である。添加によりスポンジはより高発泡低密度とすることが可能であり、20質量部より多いと発泡ガスが多すぎてスポンジが割れたり、ADCA分解物のアミン化合物による付加架橋阻害により、表面架橋性が低下し、ガス抜けしたりするおそれがある。
【0057】
このように本発明のスポンジの発泡メカニズムは、(A)成分を増粘させ、セルコントロールを行う(B)成分、発泡ガス発生量調整のための(C),(F)成分、完全架橋のための(E)成分とスポンジを作製するための各添加剤の役割が明確に分離可能なため、特に(C),(F)成分の発泡剤の多量添加により容易に独立泡を保ちつつ、高発泡、低密度スポンジ、特にスポンジ密度が0.3g/cm3以下の導電スポンジを効率よく作製することが容易である。
【0058】
本発明のシリコーンゴムスポンジ組成物には、必要に応じて更に粉砕石英、珪藻土等の非補強性シリカ、炭酸カルシウム等の充填剤、着色剤、耐熱向上剤、難燃性向上剤、受酸剤、熱伝導向上剤等の添加剤や離型剤、アルコキシシラン、ジフェニルシランジオール、カーボンファンクショナルシラン、両末端シラノール封鎖低分子シロキサン等の分散剤等を添加してもよい。
【0059】
また、発泡剤として少量のジニトロソペンタメチレンテトラミン(DPT)を併用してもよい。ジニトロソペンタメチレンテトラミンは分解物のヘキサメチレンテトラミンは弱い付加架橋の架橋阻害物となるため、ジニトロソペンタメチレンテトラミンの使用量はアゾジカルボンアミド添加量に対して20質量%以下であることが望ましい。なお、DPTは配合しなくてもよいが、配合する場合は、アゾジカルボンアミド添加量に対して10質量%以上とすることが好ましい。
【0060】
[製造方法]
本発明のシリコーンゴムスポンジ組成物の製造方法は、特に限定されないが、例えば、上述した(A),(D)成分を予め2本ロールミル、ニーダー、バンバリーミキサー等で混合後、(B),(C),(E)成分及びその他の添加剤を再び2本ロールミル、ニーダー、バンバリーミキサー等で均一に混練りすることによって得ることができる。
【0061】
このようにして調製されたシリコーンゴムスポンジ組成物を加熱して発泡させ、硬化させることにより、容易にシリコーンゴムスポンジを得ることができる。その発泡・硬化方法は、発泡剤の分解及びシリコーンゴムの加硫のために十分な熱をかけられる方法であれば特に制限されない。本発明では、特に常圧熱気加硫(HAV)が好適に採用される。具体的には、加熱温度は好ましくは100〜500℃、特に好ましくは150〜350℃であり、加熱時間は好ましくは数秒〜1時間、特に好ましくは10秒〜30分である。
【0062】
必要に応じ、180〜250℃で1〜10時間程度、2次加硫してもよい。更に、本発明は低密度スポンジとするため、特に常圧熱気加硫(HAV)を推奨する。常圧熱気加硫(HAV)の方法としては、押出成形による連続常圧熱気加硫(HAV)、プレス、カレンダー成形後に常圧熱気加硫(HAV)を行う等の方法を用いることができる。
【0063】
このようにして得られるシリコーンゴムスポンジは、低密度、高発泡導電性のものである。本発明により得られるシリコーンゴムスポンジは、スポンジセルの独泡率が70%以上であり、好ましくは80%以上である。独泡率が70%未満であるとセルが大きくならず(膨らみにくく)低密度のスポンジにならない。なお、独泡率とは、スポンジ中の気泡(セル)が独立泡になっている割合(独立泡と連続泡の合計気泡に対する独立泡の割合)であり、下記式により求めることができる。
[(減圧下吸水後のスポンジ試料の質量−当初スポンジ試料の質量)
/水の密度(1.00)]/[(1−(スポンジ密度/未発泡のゴム材料密度))
×(スポンジ試料質量/スポンジ密度)]×100=A
100−A=独泡率(%)
【0064】
また、得られたシリコーンゴムスポンジのスポンジ密度は0.3g/cm3以下、好ましくは0.05〜0.25g/cm3である。密度が0.3g/cm3よりも大きいとスポンジの硬度が高くなってしまい、小さすぎると多量の発泡剤が必要となりコスト高となる場合がある。なお、発明において、スポンジ密度はJIS K6249に準じて測定した値である。
【実施例】
【0065】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるものではない。なお、下記例中の「部」は質量部を示す。
【0066】
シリコーンゴムコンパウンドの含有水分量の測定方法及び常圧熱気加硫時のスポンジ特性測定法について下記に示す。
【0067】
[シリコーンゴムコンパウンドの含有水分量の測定方法]
カールフィッシャー法を用いた加熱炉付き自動測定器である平沼産業製の水分測定装置(AQV−6、EV−6)を使用してシリコーンゴムコンパウンドの含有水分量を測定した。条件は下記の通りである。
【0068】
シリコーンゴムコンパウンド量:1g
キャリアガス:乾燥窒素、0.3L/min
加熱温度/時間:150℃/5分間
脱水溶媒:CP溶媒(クロロホルム/プロピレンカーボネート混合溶媒)
【0069】
[スポンジ特性測定法]
ジメチルポリシロキサン及び補強性シリカをニーダーで混合し、所定の条件で熱処理した。得られたシリコーンゴムコンパウンド100部に所定量の発泡剤及び架橋剤を2本ロールミルで混合し、得られた組成物を2本ロールミルで6ミリメートル厚のシートに成形した。このシートを250℃の温度に加熱した熱風乾燥器の中で15分間発泡・硬化させた。できあがったスポンジの密度(g/cm3)を測定し、スポンジセルの状態を目視観察した。密度の測定はJIS K6249に準じて行った。
【0070】
[独泡率の測定方法]
1)スポンジ試料の密度と質量を測定する。2)スポンジを真空容器に置いた容器中の水に沈め、その状態で真空容器内を10mmHg以下に減圧する。3)真空容器内を常圧に戻した後に5分間放置してスポンジに吸水させる。4)吸水した状態でスポンジの質量を計量する。次に、下記の計算に従って独泡率を求める。
【0071】
[(減圧下吸水後のスポンジ試料の質量−当初スポンジ試料の質量)
/水の密度(1.00)]/[(1−(スポンジ密度/未発泡のゴム材料密度))
×(スポンジ試料質量/スポンジ密度)]×100=A
100−A=独泡率(%)
【0072】
[実施例1]
ジメチルシロキサン単位99.825モル%、メチルビニルシロキサン単位0.15モル%、ジメチルビニルシロキサン単位0.025モル%からなり、平均重合度が約8,000であるオルガノポリシロキサン100部、乾式シリカAerosil200(日本エアロジル(株)製、BET法による比表面積200m2/g)40部、両末端にシラノール基を有し、粘度が29mm2/s(23℃)のジメチルポリシロキサン5部をニーダーで混合し、180℃で2時間熱処理して、シリコーンゴムコンパウンドを作製した。
【0073】
次に、上記シリコーンゴムコンパウンド100部に対し、発泡剤として炭酸水素ナトリウム(試薬グレード)7.5部、有機アゾ系発泡剤1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−メチルカルボキシレート)1部、デンカブラック(電気化学社製)10部、並びに付加反応硬化剤としてC−25A(白金触媒)/C−25B(オルガノハイドロジェンシロキサン系架橋剤)(共に信越化学工業製)=1.0部/2.0部を添加した後、2本ロールミルで混合し、得られた組成物を2本ロールミルで6ミリメートル厚のシートに成形した。このシートを250℃の内部温度に設定された乾燥器に15分間入れて加熱し、発泡・硬化させた。作製したスポンジシートの評価結果を表1に示す。なお、シリコーンゴムコンパウンドの架橋前の含有水分量は、0.1質量%である。
【0074】
[実施例2]
発泡剤を1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−メチルカルボキシレート)から、2,2’−アゾビス〔N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド〕へ変更した以外は実施例1と同様にしてスポンジ発泡体を作製し、試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0075】
[実施例3]
発泡剤炭酸水素ナトリウム(試薬グレード)7.5部を12.5部にした以外は実施例1と同様にしてスポンジ発泡体を作製し、試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0076】
[実施例4]
更に、アゾジカルボンアミド(ADCA)1.5部を使用した以外は実施例1と同様にしてスポンジ発泡体を作製し、試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0077】
[実施例5]
硬化剤にジアルキルパーオキサイドA1.5部を併用する以外は実施例1と同様にしてスポンジ発泡体を作製し、試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0078】
[実施例6]
アゾジカルボンアミド(ADCA)1.5部、硬化剤にジアルキルパーオキサイドA1.5部を併用する以外は実施例1と同様にしてスポンジ発泡体を作製し、試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0079】
[実施例7]
発泡剤に尿素を添加して分解温度を160℃に低下させたアゾジカルボンアミド1.5部、硬化剤にジアルキルパーオキサイドA1.5部を併用する以外は実施例1と同様にしてスポンジ発泡体を作製し、試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0080】
[実施例8]
発泡剤を有機亜鉛化合物を添加して分解温度を160℃に低下させたアゾジカルボンアミド1.5部、硬化剤にジアルキルパーオキサイドA1.5部を併用する以外は実施例1と同様にしてスポンジ発泡体を作製し、試験を行った。評価結果を表1に示す。
【0081】
[比較例1]
有機アゾ系発泡剤1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−メチルカルボキシレート)1部を使用しない以外は実施例1と同様にしてスポンジ発泡体を作製し、試験を行った。評価結果を表2に示す。
【0082】
[比較例2]
有機アゾ系発泡剤1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−メチルカルボキシレート)を12部に増量する以外は実施例1と同様にしてスポンジ発泡体を作製し、試験を行った。評価結果を表2に示す。
【0083】
[比較例3]
発泡剤炭酸水素ナトリウム(試薬グレード)7.5部を0.5部に減量した以外は実施例1と同様にしてスポンジ発泡体を作製し、試験を行った。評価結果を表2に示す。
【0084】
[比較例4]
発泡剤炭酸水素ナトリウム(試薬グレード)7.5部を50部に増量した以外は実施例1と同様にしてスポンジ発泡体を作製し、試験を行った。評価結果を表2に示す。
【0085】
[比較例5]
硬化剤を付加硬化剤CからPO硬化剤A1.5部に変更する以外は実施例1と同様にしてスポンジ発泡体を作製し、試験を行った。評価結果を表2に示す。
【0086】
[比較例6]
硬化剤を付加硬化剤CからPO硬化剤B0.7部に変更する以外は実施例1と同様にしてスポンジ発泡体を作製し、試験を行った。評価結果を表2に示す。
【0087】
【表1】

【0088】
【表2】

【0089】
〔表1、2への注〕
有機発泡剤A:1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−メチルカルボキシレート):分解温度約106℃
有機発泡剤B:2,2’−アゾビス〔N−(2−プロペニル)−2−メチルプロピオンアミド〕:分解温度約69℃
有機発泡剤C:アゾジカルボンアミド(ADCA):分解温度約204℃
有機発泡剤D:アゾジカルボンアミド+尿素系分解助剤含有品:分解温度約160℃
有機発泡剤E:アゾジカルボンアミド+有機亜鉛化合物分解助剤含有品:分解温度約160℃
無機発泡剤F:炭酸水素ナトリウム(平均粒子径20μm)
導電性カーボン:デンカブラック(電気化学社製)
PO硬化剤A:2,5−ジメチル−2,5−ジ−t−ブチルパーオキシヘキサン(1分間半減期温度180℃)
PO硬化剤B:p−メチルベンゾイルパーオキサイド(1分間半減期温度128℃)
付加硬化剤C:C−25A(白金触媒)/C−25B(オルガノハイドロジェンシロ
キサン系架橋剤)=1.0部/2.0部
尿素系分解助剤:セルトンNP(三協化成株式会社製)
【0090】
発泡剤の分解温度測定方法
発泡剤分解温度はガス量自動測定装置(TYPE CT−1)を用いて発泡剤1g/DOP 10ml、2℃/minの条件にて測定した。
【0091】
[評価]
本発明のシリコーンゴムスポンジ組成物から、特に1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−メチルカルボキシレート)をシリコーンゴム増粘剤及びスポンジセル造核剤として使用し、主発泡剤として炭酸水素ナトリウムを用いた架橋と発泡とのバランスが安定化し、再現性よく良好な高発泡導電性独立泡スポンジが得られることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)下記平均組成式(I):
1nSiO(4-n)/2 (I)
(式中、R1は同一又は異種の非置換もしくは置換の一価炭化水素基であるが、1分子中に2個以上のアルケニル基を有する。nは1.95〜2.05の正数である。)
で表されるオルガノポリシロキサンと補強性シリカとを含んでなり、架橋前の含有水分量が0.5質量%以下であるシリコーンゴムコンパウンド、
(B)熱分解によって(A)成分を増粘又は硬化させる特性を有する非シアノ系有機アゾ発泡剤:(A)成分中のオルガノポリシロキサン100質量部に対し0.01〜10質量部、
(C)炭酸水素ナトリウム:(A)成分中のオルガノポリシロキサン100質量部に対し1〜50質量部、
(D)導電性カーボン:(A)成分中のオルガノポリシロキサン100質量部に対し1〜60質量部 及び
(E)オルガノハイドロジエンポリシロキサンと白金族金属系触媒とからなる付加反応硬化剤:(A)成分のオルガノポリシロキサンの硬化有効量
を含有してなり、架橋して得られるスポンジセルの独泡率が70%以上であり、かつスポンジ密度が0.3g/cm3以下である低密度,高発泡導電性シリコーンゴムスポンジを形成することを特徴とする導電性シリコーンゴムスポンジ組成物。
【請求項2】
更に、発泡剤として、(F)アゾジカルボンアミド(ADCA)を併用することを特徴とする請求項1記載のシリコーンゴムスポンジ組成物。
【請求項3】
硬化剤として、更に1分間半減期温度が150℃以上の非アシル系有機過酸化物を併用したことを特徴とする請求項1又は2記載のシリコーンゴムスポンジ組成物。
【請求項4】
(B)成分が、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−メチルカルボキシレート)である請求項1〜3のいずれか1項記載のシリコーンゴムスポンジ組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項記載の導電性シリコーンゴムスポンジ組成物を発泡常圧熱風架橋することを特徴とするスポンジセルの独泡率が70%以上であり、かつスポンジ密度が0.3g/cm3以下である低密度,高発泡導電性シリコーンゴムスポンジの製造方法。

【公開番号】特開2008−214439(P2008−214439A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−51799(P2007−51799)
【出願日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】