説明

導電性ボールの充填装置

【課題】導電性ボールを基板に配置するための複数の開口を備えたマスクと前記基板とを位置合わせした状態で、前記複数の開口に前記導電性ボールを充填する装置を提供する。
【解決手段】充填装置は、マスク11の表面の一部の2次元的な限られた広がりを備えた区域26であって、マスク11の表面の移動先の区域に、2次元的な広がりを備えた導電性ボールの集団16を形成するヘッド20と、ヘッド20を移動する手段と、ヘッド20とともに移動されるボール供給装置60であって、移動先において、2次元的な広がりを備えた導電性ボールの集団16に導電性ボールを補充するボール供給装置60とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性ボールを基板の所定の位置に取り付けるための装置および方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
LSI(Large Scale Integration)、LCD(Liquid Crystal Display)を始めとする半導体デバイスあるいは光学デバイスなどを実装する際の電気的な接続を得るために、半田ボールが用いられる。近年、半田ボールに限らず、他の導電性金属、さらには金属をコーティングした導電性ボールであって、直径が1mm程度以下の微小な粒子を基板に搭載することが検討されている。
【0003】
特開平9−148332号公報(文献1)に、微小粒子を意図する位置に配列させる技術の一例が開示されている。この文献には、微小粒子を配列させるための開孔部を備えたマスクの上で、所定の柔らかさを有するスキージ(squeegee)と称される移動手段により微小粒子を移動させ、微小粒子をマスクの開孔部に挿入して、吸引される空気により多孔板の上に配列・吸着させることが開示されている。
【0004】
文献1のスキージは、開孔部に挿入されなかった余分な微小粒子を移動するものであり、文献1には、マスクの上で直線方向に移動するベルトにスキージを取り付けて移動することが記載されている。また、文献1には、リング状の溝を備えたマスクの上で、円盤状の保持部材に取り付けられたスキージを溝に沿って移動することが記載されている。しかしながら、いずれの場合も、微小粒子は、スキージにより、予め定められた1つの方向に移動される。スキージを往復動するものも開示されているが、その場合でも、移動方向は往方向および復方向の2方向である。
【0005】
文献1では、開孔に微小粒子を吸引挿入することにより、微小粒子を、適切に、必要な位置に配列させるようにしている。吸引の有無に関わらず、微小粒子、すなわち、導電性ボールを、マスクにパターニングされた開孔あるいは開口にミスなく充填するための条件の1つに、開口の数(開口密度)に対して十分に多い数の導電性ボールを供給することが挙げられる。しかしながら、開口の数に対して導電性ボールの数が多くなると、導電性ボールがマスクの表面を移動する時間は長くなる。そのため、様々な要因、例えば、大気との接触、ボール同士の接触、ボールとマスクの接触、さらにはボールとスキージとの摩擦および接触により、ボールの表面が磨耗したり、変形したり、電極としての性能が低下する。したがって、充填ミス、およびそれによる基板(ワーク)上への配置あるいは搭載ミスを減らそうとして大量の導電性ボールを移動しようとすると、基板に配置された導電性ボールに問題が発生する可能性が高くなる。さらに、大量のボールを移動する方法は、配置されなかった大量の導電性ボールを廃棄する必要があるために、導電性ボールのロス率が高くなり経済的にも好ましくない。
【0006】
また、導電性ボールを同じ方向にスキージにより移動すると、スキージの条件、マスクの条件などにより、スキージの長手方向にボールの粗密が発生し易く、開口への充填ミスおよびボールの搭載ミスに繋がる。導電性ボールの移動量を増やして歩留まりを改善しようとすると、上記と同様にロスが増える。文献1の装置では、マスクの上でスキージを往復動させて開口への挿入ミスを減らしている。しかしながら、往復を繰り返せば繰り返すほど、スキージの移動に伴って開孔へ挿入される粒子の数は減るので、移動による粒子の損傷が進行する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
導電性ボールを、マスクの複数の開口により確実に充填でき、基板の所定の位置に導電性ボールをより確実に配置あるいは搭載できる方法および装置が要望されている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一態様は基板に導電性ボールを配置するための複数の開口を備えたマスクと前記基板とを位置合わせする工程と、ヘッドにより、マスクの表面の一部の2次元的な限られた広がりを備えた区域であって、マスクの表面の移動先の区域に、2次元的な広がりを備えた導電性ボールの集団を形成する工程と、移動先において、2次元的な広がりを備えた導電性ボールの集団に導電性ボールを補充する工程とを有する、導電性ボールの搭載方法である。移動先における集団の密度が維持でき、ボール密度の低下により開口に充填される確率が低下することは抑制できる。
【0009】
補充する工程は、移動先において形成される2次元的な広がりを備えた導電性ボールの集団に所定の時間間隔で前記導電性ボールを供給することを含むことが望ましい。また、補充する工程は、移動先の区域に形成される2次元的な広がりを備えた導電性ボールの集団の密度を検出することと、密度が低下すると導電性ボールを供給することとを含むことが好ましい。
【0010】
本発明の他の態様の1つは、導電性ボールを基板に配置するための複数の開口を備えたマスクと基板とを位置合わせした状態で、複数の開口に導電性ボールを充填する装置である。この装置は、マスクの表面の一部の2次元的な限られた広がりを備えた区域であって、マスクの表面の移動先の区域に、2次元的な広がりを備えた導電性ボールの集団を形成するヘッドと、ヘッドを移動する手段と、ヘッドとともに移動されるボール供給装置であって、移動先において、2次元的な広がりを備えた導電性ボールの集団に導電性ボールを補充するボール供給装置とを有する。
【0011】
ボール供給装置は、移動先において形成される2次元的な広がりを備えた導電性ボールの集団に所定の時間間隔で導電性ボールを供給することが望ましい。また、充填する装置が、さらに、移動先の区域に形成される2次元的な広がりを備えた導電性ボールの集団の密度を検出するセンサーを有し、ボール供給装置は、密度が低下すると導電性ボールを供給することが好ましい。また、上記の充填装置と、基板とマスクとを位置合わせする装置とを有する搭載装置も本発明に含まれる。さらに、導電性ボールを基板に配置するための複数の開口を備えたマスクの表面に沿って移動し、移動先のマスクの一部の2次元的な限られた広がりを備えた区域に、2次元的な広がりを備えた前記導電性ボールの集団を形成するヘッドであって、移動先において、2次元的な広がりを備えた導電性ボールの集団に導電性ボールを補充する供給路を有するヘッドも本発明に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のボールマウンタの概略構成を示す平面図。
【図2】ヘッドの概略構成を示す側面図。
【図3】ヘッドの構成を上方から透かして示す図。
【図4】ヘッドの構成を断面により示す図。
【図5】スキージを拡大して示す図。
【図6】図6(a)は、ヘッドにより構成される円形の区域の軌跡の一例を示す図であり、図6(b)は軌跡の一部を拡大して示す図。
【図7】ヘッドにより構成される円形の区域の軌跡の他の例を示す図。
【図8】図8(a)は、ヘッドにより構成される円形の区域の軌跡の他の例を示す図であり、図8(b)は軌跡の一部を拡大して示す図。
【図9】図9(a)は、ヘッドの異なる例を示す斜視図であり、図9(b)は、ヘッドの構成を上方から透かして示す図。
【図10】図10(a)は、ヘッドのさらに異なる例を示す斜視図であり、図10(b)は、ヘッドの構成を上方から透かして示す図。
【図11】図11(a)は、ヘッドのさらに異なる例を示す斜視図であり、図11(b)は、ヘッドの構成を上方から透かして示す図。
【図12】ヘッドのさらに異なる例を部分的に拡大した断面図により示す図。
【図13】ヘッドのさらに異なる例を部分的に拡大した断面図により示す図。
【図14】ヘッドのさらに異なる例の構成を上方から透かして示す図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図1に、本発明の搭載装置の一例の概略構成を示してある。この搭載装置1は、ボールマウンタと呼ばれ、半導体基板(ウェハまたはワークピース)10の所定の位置に、導電性のボールを配置するためのものである。現状のウェハ10は、直径が8インチまたは12インチ程度のものが多い。基板10に搭載される導電性ボールは微細化されており、直径が1mm以下であり、直径が10〜500μm程度のボールを搭載することが検討されており、現状では直径30〜300μm程度のボールを搭載することが求められている。導電性ボールには、半田ボール、金あるいは銀などの金属製のボール、さらに、セラミック製のボールあるいはプラスチック製のボールに導電性のメッキなどの処理が施されたものが含まれる。
【0014】
このボールマウンタ1は、吸引などの方法により反りを矯正した水平な状態で基板10をセットするための台盤(テーブル)2と、導電性ボールを基板10の所定の位置に配置するための複数の開口を備えたマスク11を基板10にセットするためのマスクハンドラー(マスクキャリア)3と、マスク11の開口に導電性ボールを充填するための充填装置5とを備えている。マスクハンドラー3は、基板10の上と、破線で示した退避位置との間でマスク11を移動するための搬送ユニット31と、基板10とマスク11との位置あわせを行うアライメントユニット32とを備えている。マスク11を基板10にセットするためのデバイスは、マスク11の位置を固定し、基板10が上下および/または水平方向に移動してマスク11と基板10とを位置あわせするものであっても良い。
【0015】
マスク11は、微小な導電性ボールが一つずつ挿入されるのに適したサイズの開口を複数備えている。基板10は、通常、複数の半導体デバイスが含まれており、マスク11の複数の開口は、それらの半導体デバイスの所定の位置に導電性ボールを配置するためのルールに従った繰り返しのあるデザインで形成されている。マスク11に設けられたこれらの開口は、開孔、パターン孔、開口パターンなどと称されており、本明細書においても、複数の開口を対象として説明するときはそれらを開口パターンと記載することがある。
【0016】
充填装置5は、基板10にセットされたマスク11の表面11aに沿って移動し、マスク11の開口に導電性ボールを充填するためのヘッド20と、このヘッド20をマスク11の表面11aの任意の方向に移動可能なように支持するヘッド支持装置50とを備えている。ヘッド支持装置50は、マスク11に垂直な軸55を中心に回転するように支持するモータ56と、Y方向に伸縮可能なアーム53を介してモータ56を支持するキャリッジ52とを備えており、キャリッジ52はキャリッジシャフト51に沿ってX方向に移動する。したがって、支持装置50のアーム53、キャリッジ52およびキャリッジシャフト51により、ヘッド20は、マスク11の表面11aをX−Y方向の任意の位置にセットできる。また、この支持装置50により、ヘッド20を、マスク11の表面11aに沿って任意の軌跡を描くように移動できる。
【0017】
この搭載装置1は、導電性ボールを配置するための複数の開口12を備えたマスク11を基板10にセットする工程と、マスク11の表面11aに沿って移動するヘッド20により導電性ボールをマスクの開口12に充填する充填工程とを有し、基板10の所定の位置に導電性ボールを搭載する。以降においては、充填装置5の構成および動作を説明しながら、充填工程の処理の詳細についてさらに説明する。
【0018】
図2に、充填装置5のヘッド20を側面から見た様子を拡大して示してある。ヘッド20は、円盤状のスキージサポート21と、このスキージサポート21の下面21aからマスク11の表面11aに向かって突き出た6セットのスキージ22とを備えている。スキージサポート21の中心は、マスク11に対して垂直方向に延びたシャフト55に繋がっている。ヘッド20は、モータ56により、シャフト55を中心として、スキージサポート21を上方から見て時計方向に回転駆動される。このヘッド20においては、モータ56が軸55を中心としてスキージサポート21をマスク11の表面11aに沿って回転駆動する手段となり、軸55がアーム53、キャリッジ52およびキャリッジシャフト51によりマスク11の表面11aに沿ってX―Yの任意の方向に移動される。したがって、ヘッド支持装置50により、ヘッド20を回転しながら、ヘッド20をマスク11の表面11aの上を任意の軌跡を描くように移動できる。キャリッジ52には、導電性ボールをシャフト55の内部を介してスキージサポート21の中心からマスク11の上に供給するボール供給装置60が搭載されている。
【0019】
図3に、スキージサポート21の下面に取り付けられた6セットのスキージ22の配置を、スキージサポート21を上方から透かして見た状態で示してある。また、図4に、ヘッド20の構成を、スキージサポート21の直径方向に切った断面により示してある。6セットのスキージ22は、それぞれが上方から見ると長方形になるように取り付けられた複数のスウィープ部材23を備えている。スウィープ部材23は、マスク11の表面11aに比較的柔らかく接し、表面11aに残った導電性ボール15を掃き集めることができるものであれば良い。スウィープ部材23としては、マスク11の表面11aに接するように曲げられたワイヤー、マスク11の表面11aに接するような形状のゴムプレートあるいはスポンジのような弾性部材、マスク11の表面11aに接する程度に伸びた無数のワイヤーを挙げることができる。
【0020】
これらのスキージ22は、回転シャフト55と同心円状の内円26の回りに、円周方向に均等なピッチで、内円26の接線方向の時計方向に、外円27まで直線的に延びるように配置されている。したがって、スキージ22がマスク11の表面11aに接した状態で、スキージサポート21を上方から見て時計方向に回転させると、スキージ22の進行方向(回転方向)にある導電性ボール15を、矢印18のように、内円26の方向に押し払う。このため、マスク11の表面11aに残った導電性ボール15は、内円26の方向に移動され、内円26の内部に集められる。
【0021】
図3および以下の図面において、内円26および外円27として示した区域は仮想的なものである。しかしながら、このヘッド20をマスク11の表面11aにおいて、ヘッド支持装置50により回転させながら移動すると、マスク11の上に残った、内円26と外円27の範囲内の過剰な導電性ボール15は、ヘッド20の中心の内円26の方向に集められる。複数のスキージ22が、回転する方向(進行方向)に多重に配置されているので、ヘッド20が移動することにより内円26の周囲に食み出した導電性ボール15は次々と移動先の内円26の方向に集められる。したがって、ヘッド20の回転中心の回りの円形の区域26に導電性ボール15が保持され、ヘッド20の移動と共に円形の区域26が移動し、その中に保持された複数の導電性ボール15の集団16も移動する。このように、本例の充填装置5においては、ヘッド20の中心の仮想的な円形の区域26が、導電性ボール15の集団16が保持されるマスク11の表面11aの一部の区域26となり、ヘッド20の移動により、その区域26が移動する。
【0022】
図5に、スキージ22の先端がマスク11の表面11aに接している状態を拡大して示してある。各々のスキージ22は、複数のスウィープ部材23を備えており、それらがスキージ22の進行方向に多重に配置されている。複数のスウィープ部材23は、スキージ22の進行方向に対して、マスクの表面11aに当たる先端が後退するようにサポート21に取り付けられている。スウィープ部材23は、マスク11の上の導電性ボール15を進行方向Aの内側の円形の区域26の方向に軽く押す、あるいは掃くようにして移動する。このため、ヘッド20の内側の円形の領域26に導電性ボール15の集団16が形成され、維持される。区域26に集められたボール15は、自重により、その区域26にあるマスク11の開口12に落下し、開口12にボール15が充填される。基板10の表面には、マスク11の開口パターン12に対応して、予め半田付け用のフラックス17がスクリーン印刷されている。したがって、開口12に充填された導電性ボール15はフラックス17に密着し、基板10の所定の位置に仮固定される。導電性ボール15が搭載された基板10は、その後、公知のリフロー過程を経ることにより、ボール15が基板10に固定される。
【0023】
この充填装置5においては、円形の区域26という限られた面積に充填するためのボール15が常に集められる。したがって、区域26に集められた導電性ボール15の状態を監視することにより、マスク11の開口12にボール15が充填される状況を制御することができる。例えば、区域26に保持される導電性ボール15は、開口12に充填されることにより消費される。このため、消費されるボール量に基づいて、ボール15はボール供給装置60から区域26の内部に投入される。例えば、時間当たりに消費されるボール量に基づいて、所定時間間隔でボール15を供給することができる。したがって、区域26の導電性ボール15の集団16の密度は維持され、ボール密度の低下により開口12に充填される確率が低下することは防止される。図4に示したヘッド20は、区域26のボール15の密度を検出する光学センサー65を備えており、所定時間間隔でボールを供給しているにも関わらず、何らかの要因により区域26のボール密度が低下すると、キャリッジ52に搭載されたボール供給装置60から新しい導電性ボール15を区域26に供給する。さらに、ボール15を定期的にリニューアルする機構を設けることも可能である。長時間にわたりマスク11の開口12に振り込まれずに移動しているだけの状況が続くと、ボール15は、接触や磨耗などの要因により損傷する可能性がある。区域26に保持されたボール15を回収して、そのような品質が劣化したボールを除去し、正常なボール15のみを充填用の区域26に戻すことができる。
【0024】
ボール15を保持しながら移動する区域26の適切な面積は、導電性ボールの直径、マスク11の開口の密度などの条件により変わる。導電性ボール15の直径が10〜500μm程度であれば、直径が10〜100mmの円形の区域26をマスク上に形成できるヘッド20を用いることが望ましい。ボールを保持するための区域26が小さ過ぎると、マスク全体の開口にボールを充填するために要する時間が増大する。したがって、区域26の直径は10mm以上が好ましい。一方、区域26が大き過ぎると、区域26の内部におけるボール15の移動が不十分になり、区域26の内部に保持されるボール15の密度のムラが大きくなる。したがって、区域26の直径は100mm以下が好ましい。円形の区域26のより好ましい範囲は、20〜60mmである。
【0025】
ヘッド20の回転速度が低すぎると、区域26の内部におけるボール15の移動が不十分となり、ボール15の充填ミスが発生する可能性が上がる。したがって、ヘッド20の回転速度は、10rpm以上が好ましい。一方、回転速度が速すぎると、ボール15の移動速度が速くなり、ボール15が開口12に落ち込まないで通過する確率が高くなり、充填ミスが発生する可能性が上がる。したがって、ヘッド20の回転速度は、120rpm以下が好ましい。さらに好ましいヘッドの回転速度の範囲は、30〜90rpmである。例えば、本例の充填装置5においては、ヘッド20は、ボールが集められる円形の区域26の直径は40mm、回転数は45rpmである。
【0026】
図6から図8に、マスク11の表面11aをカバーするように、円形の区域26を移動するための軌跡の幾つかの例を示している。充填装置5のヘッド支持装置50は、マスク11の表面11aをXY平面として、そのXY平面の任意の方向にヘッド20を移動できる。また、ヘッド20の移動方向を、動的に任意に変えることができる。さらに、ヘッド20は、ヘッド20の移動方向に関わらず、回転することにより円形の区域26の中に導電性ボール15を集めて保持できる。このため、充填装置5は、円形の区域26に導電性ボール15を保持した状態で、区域26をマスク11の表面11aの任意の方向に移動することができ、また、その移動方向を任意に、動的に変えることができる。
【0027】
図6(a)は、ヘッド20をマスク11の表面11aの上を螺旋状または渦巻き状の軌跡を描くように移動した例を模式的に示したものである。ヘッド20の移動により、ボール15を充填するため円形の区域26も、螺旋状または渦巻き状の軌跡71でマスク11の表面全体を移動し、基板10の所定の位置に導電性ボール15を配置する。螺旋状または渦巻き状の軌跡71は、基板10が円形であったり、マスク11が円形であったり、導電性ボール15を充填する全体の領域が円形である場合に適している。
【0028】
なお、図6(a)には、区域26の移動の軌跡71を、回転中心が移動する線で代表して示している。また、分かりやすくするために、ヘッド20と区域26とを共に同じ円で示しているが、上述したように区域26はヘッド20と同心円状に形成されるものであり、同じ大きさになるものではない。しかしながら、区域26はヘッド20と同心円状に構成されるので、それらが移動する際の中心の軌跡は同じになる。また、本明細書において、区域26の軌跡とは、中心の移動を示すものではなく、区域26がマスク11の表面11aを移動した幅を持った跡あるいは経路を示す。さらに、区域26の軌跡は、物理的には、マスクの開口12に導電性ボール15が充填されているという結果によって跡が残ると言えるとしても、マスク11の表面11aに何らかの痕跡を示すものでなくても良い。区域26の軌跡の具体的な形態の1つは、充填装置5のヘッド支持装置50において、ヘッド20を自動的に移動するためのプログラムあるいは関数として与えられるものである。
【0029】
図6(b)に軌跡71の一部を拡大して示してある。区域26によりマスク11の表面11aの全体を漏れなくカバーするために、充填装置5のヘッド支持装置50により、ヘッド20は、区域26の軌跡の一部が重複するように動かされる。この例では、軌跡71の隣接する部分T(n)およびT(n+1)がほぼ50%重複するような軌跡71が選択されている。この軌跡71によりヘッド20を移動することにより、区域26は、結果として、マスク11の表面全体を100%の重複率で移動し、マスク11の開口12にボール15を充填する。
【0030】
図7に、ヘッド20および円形の区域26の軌跡の異なる例を示してある。この例では、区域26を、ジグザク、サインカーブまたは蛇行するような軌跡72を描くように移動し、ヘッド20を動かして、区域26によりマスク11の表面11aの全体をカバーしている。この軌跡72を採用する場合も、上記と同様に、軌跡72の隣接する部分の重複率を適当にセットすることが望ましい。
【0031】
図8(a)は、円形の基板10の代わりに、長方形の電子回路基板80に、全体が長方形の充填領域を備えたマスク81をセットして、導電性ボール15を配置する例を示してある。この例では、ヘッド20を動かすことにより、区域26を、ジグザグ、サインカーブまたは蛇行するような軌跡73を描くように移動し、区域26によりマスク81の表面81aの全体をカバーしている。図8(b)に示すように、軌跡73を採用する場合も、軌跡73の隣り合う部分T(n)およびT(n+1)を50%程度重複することが望ましい。ジグザグな軌跡73は、方形の充填領域をカバーするのに適した軌跡の1つである。また、方形の外周に沿ったルートを描く螺旋状の軌跡も、方形の充填領域をカバーするのに適した軌跡の1つである。
【0032】
マスク11の開口パターン12への充填漏れを防止するためには、区域26を、重複率の高い軌跡を描くように移動することが望ましい。一方、軌跡の重複率が高いと、ボール15を基板10の全体に配置するために要する処理時間が長くなる。また、軌跡の重複率が高いと、ボール15の消費量が低下し、ボールが長時間にわたり区域26に存在することにより損傷する確率が上がる。このため、区域26は、重複率は10〜90%の範囲の軌跡を描くように動かすことが好ましい。区域26は、重複率は30〜70%の範囲の軌跡を描くように動かすことがさらに好ましい。重複率が50%の軌跡は、区域26を移動するための最適な軌跡の1つである。
【0033】
また、ヘッド20の移動速度は、遅過ぎると、ボール15を基板10の全体に配置するために要する時間がかかり過ぎる。一方、ヘッドの移動速度が速過ぎると、ボール15が開口12に落ち込まないうちに区域26が通過する確率が高くなる。したがって、ヘッド20の移動速度は、2〜60mm/sの範囲が好ましく、さらに、5〜40mm/sの範囲であることが好ましい。本例の充填装置5においては、ヘッド20の移動速度は20mm/sに設定してある。
【0034】
このように、ボールマウンタ1において採用されている充填装置5においては、マスク11の表面11aの内、ヘッド20の内円の区域26という限られた部分に導電性ボール15を保持する。それと共に、ヘッド20を動かすことにより、区域26を、その軌跡の一部が重複するようにマスクの表面11aを移動しながら、導電性ボール15をマスク11の開口12に充填し、ボール15をワークである基板10の所定の位置に配置する。この充填装置5においては、開口に充填されなかったボールをマスク上から逃がすのではなく、次の開口に充填するためにマスク上でボールを集めるので、導電性ボール15の無駄あるいは浪費を防止できる。したがって、マスク11の全面をスキージで払いながら開口12にボール15を充填する方式と異なり、膨大な量のボール15を一度に供給しなくても、充填の対象となる区域の開口(開口密度)に対して、十分な量(十分に過剰な量)のボール15の集団16により、その区域を覆うことができる。すなわち、マスクの表面の一部の小さな区域26において、その周辺の過剰なボールを集めながら、また、消費されたボールを追加しながら、その区域26の開口12に対して、ボール15の十分な過剰率を維持する。この方法により、マスク全体の開口12に対して、ボールのロス率を低くし、ボール15の浪費を防ぐと共に、高い充填率を得ることができる。
【0035】
また、充填するための区域26を、その軌跡の一部が重複するように移動することにより、区域26の移動に伴って常に新しいボール15を供給することが可能になる。したがって、新しいボール15が供給されてから基板10に配置されるまでの時間(この明細書ではライフタイム)を短くでき、また、基板10に配置される導電性ボール15のライフタイムをある程度均等にできる。したがって、基板10に配置される導電性ボール15の鮮度を一様に、高く保つことができ、損傷の少ない導電性ボール15を基板全体に配置できる。
【0036】
さらに、充填装置5のヘッド20は、スキージサポート21を回転することにより、ヘッド20の移動方向に左右されずに導電性ボール15を内側の円形の区域26に集めることができる。したがって、ヘッド20のボール15を内円の区域26に集める機能(能力)は、ヘッド20をマスク11の上のX−Yのいずれの方向に動かしても変わらない。このため、ヘッド20の移動中は常に、区域26の周囲のマスク11の上の過剰なボール15が内円の領域26に集められる。さらに、内円の区域26の一部にボール15が片寄って集合することもなく、内円の区域26の全体のボール15の分布がほぼ一様になり、2次元の広がりを持った区域26の全体で開口パターン12に対して導電性ボール15が充填できる。区域26の内部では極端なボール15の集中がなく、ボール15の過剰率や分布の極端な不均衡がなく、ほぼ一定に近い。このため、区域26を、その軌跡の一部が重なるように移動させることで、軌跡の全部を重複させなくても、充填ミスを確実に減らすことができる。
【0037】
回転することにより導電性ボール15に対して区域26の方向に移動する力を加えるヘッド20は、好ましい実施例の1つである。区域26の方向に導電性ボール15を集める方式として、ヘッドを振動させて、ヘッドの下に付いたスキージによりボール15を区域26の方向に掃き集める方式を挙げることができる。この方式では、振動する方向および数、スキージの形状により、区域26は円に限らず、円に外接する多角形になると考えられる。区域26の形状が多角形の場合、ヘッドの移動方向によっては、ボール15を収集する能力に優劣が発生する可能性がある。これに対し、円形の区域26は、ヘッド20の移動方向にボール15を収集したり保持したりする能力に優劣は生ぜず、ヘッド20の移動方向を任意に選択できる点で優れている。
【0038】
充填装置5のヘッド20のスキージ22は、充填用の区域26の周囲からボール15を集めると共に、マスク11の充填用の区域26に対応する部分を押さえて、平坦にする機能(能力)を備えている。スキージ22は、図3に示すように、ヘッド20の内円26と外円27の間、すなわち、円形の区域26の周囲28に配置されている。スキージ22の先端は、マスク11の表面11aに残存するボール15を残さないように集めるために、マスク11の表面11aに適当な圧力により押し付けられる。したがって、マスク11の区域26の部分に反りあるいは歪みがあっても、区域26の周囲28の部分をスキージ22により押さえることにより、平坦(水平)な状態に矯正できる。
【0039】
マスク11は、ボールが重複して充填されないようにするため、ボール15と同程度の厚みの薄板状の部材である。したがって、反りや歪みが発生しやすい反面、スキージ22をマスク表面11aに適度な圧力で押し付けることにより、反りや歪は矯正できる。マスク11に反りや歪があると、基板10とマスク11との間に隙間が発生する。基板10は、平行度の高いテーブル2に真空吸着方式により保持すれば、反りや歪みを矯正でき、表面を平行にできる。したがって、スキージ22でマスク11の表面11aを押して区域26の部分の歪みや反りを矯正することにより、マスク11と基板10との間に隙間が発生するのを防止でき、この隙間からボール15が迷い出てしまうことを防止できる。
【0040】
基板に装着されるボールの径が数mmあるいはそれ以上の場合、マスクの厚みも数mmであり、マスクの強度も高い。したがって、反りや歪が発生しにくく、また、その反りや歪が存在したときに、スキージで加えられる圧力程度で反りを強制することは容易ではない。さらに、ボール径が数mmであれば、基板とマスクとの間の隙間をmm単位で調整できれば隙間からボールが迷い出ることはない。しかしながら、ボールの径がμm単位になると、基板とマスクとの間の隙間もμm単位で調整しなければならない。また、マスク11と基板10との間に隙間を発生させないためには、マスク11を基板10に完全に密着することが望ましいが、基板10にはボール15を固定するためのフラックス17が印刷されている。したがって、マスク11と基板10とを完全に密着することは好ましいとはいえない。
【0041】
ボールを一方または往復動させるだけのスキージの場合、マスクのスキージが当たっている部分は、マスクの歪みや反りを矯正できるかもしれない。しかしながら、スキージにより押されてボールが溜まっているマスクの部分を矯正することができず、そこに基板とマスクとの間にボールが移動できる程度の隙間があれば、マスクの開口に充填されたボールはマスクを通り抜けてしまい、基板の所定の位置にボールを配置できない。それどころか、マスクを通り抜けたボールは、基板の表面を迷走して意図しないところに配置されたり、マスクと基板との間に挟まり、他の開口にボールが充填されるのを阻害する要因にもなる。
【0042】
これに対し、本例の充填装置5のヘッド20のスキージ22により、導電性ボール15が存在する区域26の周囲を押さえる。このため、導電性ボール15が存在する区域26においては、マスク11の水平度が矯正され、マスク11と基板10とを平行に保ち、これらの間の隙間をボール15が流出しない程度の値にすることができる。ヘッド20が移動した後の部分ではマスク11は湾曲したり、反ったりした状態に戻る可能性がある。しかしながら、導電性ボール15は、区域26に集められて、ヘッド20と共に移動する。このため、ヘッド20が移動した後には導電性ボール15は残されておらず、マスク11が歪んだり反ったりしていても、導電性ボール15が迷い出る心配はない。さらに、マスク11の開口12に充填された導電性ボール15は、基板10の表面のフラックス17により所定の位置に保持される。したがって、ヘッド20が移動してマスク11が基板10の表面から浮き上がってしまうような状態になっても支障はない。このように、本例の充填装置5においては、マスク11の反りや歪みの影響を受けずに、微小粒子をワーク10の所定の位置にミスなく確実に配置できる。
【0043】
スキージ22を構成する部材23は、半導体デバイスの接続端子として機能する導電性ボールなどの微小粒子を適度な力で押して、区域26に向かって掃き集めることができるものであれば良い。さらに、このスウィープ部材23は、いったん開口12に挿入されたボール15を掻き出さない程度の弾性を備えたものであることが望ましい。適当なスウィープ部材23の1つは、図3から図5に示した、スキージ22の長手方向に延びた樹脂製あるいは金属製のワイヤーである。マスク11の表面に沿って長手方向に延びたワイヤーの両端をU字型に曲げてスキージサポート21に取り付けた構成の部材23は、U字型のワイヤーの腹の部分がマスク11に接する。したがって、U字型のワイヤー23は、マスク11に損傷を与えず、適当な弾性を持った状態でマスク11に押し付けられ、マスク11の孔に入っているボール15をワイヤーの先端で掻き出すことがない。さらに、U字型のワイヤー23は、スキージ22の進行方向に対して直交する方向に延びているので、ボール15を押し払う部材として適している。1つのスキージ22に多重あるいは多層に配置されたワイヤー23は、マスク11に柔軟に接しながら、確実にボール15を掃き集めるのに適している。また、ヘッド20の円形の区域26の回りに配置された複数のスキージ22は、区域26の周囲から満遍なくボール15を集め、さらに、マスク11の、区域26の周囲の部分を確実に押さえるために適している。
【0044】
図9から図14に、ヘッドの異なる例を示してある。図9(a)は、異なる例のヘッド20aを底面の側から見た状態を示し、図9(b)は、ヘッド20aをスキージサポート21の上方から透かして見た状態で示してある。このヘッド20aは、スキージサポート21と、その下面21aからマスク11の表面11aに向かって突き出た12本のスキージ22aとを備えている。このヘッド20aは、上述したヘッド20に代わり充填装置5のヘッド支持装置50に取り付けて使用できる。各々のスキージ22aは、極細のワイヤーが複数本束ねられたものであり、その両端22rをかしめることにより1本のスキージとして機能するように構成されている。スキージ22aは、全体がU字状に成形され、サポート21の裏面21aの内円26の回りに、内円26の接線方向にほぼ延びるように取り付けられている。
【0045】
図10(a)は、さらに異なる例のヘッド20bを底面の側から見た状態を示し、図10(b)は、ヘッド20bをスキージサポート21の上方から透かして見た状態で示してある。このヘッド20bは、スキージサポート21と、その下面21aからマスク11の表面11aに向かって突き出た7セットのスキージ22bを備えている。このヘッド20bは、上述したヘッド20に代わり充填装置5のヘッド支持装置50に取り付けて使用できる。これらのスキージ22bは、ポリイミドの薄板をU字状にして複数枚を積層したものである。このタイプのスキージとしては、樹脂製あるいは金属製の薄板を単体で用いるもの、あるいは積層して用いるものが挙げられる。マスク11との間で発生する可能性のある静電気の影響を避けるためには、スキージの好適な例は金属製のものである。また、プラスチック製のスキージは、表面に銅箔などの導電性の薄膜によりコーティングしたり、炭素を含有することにより導電性を与えることが望ましい。マスク11に接するスキージの先端の部分は、エッジであっても良い。スキージが薄膜により構成される場合は、その薄膜を折り返すことにより、折り返した面がマスク11に接するようにしても良い。
【0046】
図11(a)は、さらに異なる例のヘッド20cを底面の側から見た状態を示し、図11(b)は、ヘッド20cをスキージサポート21の上方から透かして見た状態で示してある。このヘッド20cは、スキージサポート21と、その下面21aからマスク11の表面11aに向かって突き出た6セットのスキージ22cを備えている。これらのスキージ22cは、ほぼ直方体状に形成された導電性のスポンジにより構成されている。このヘッド20cも、上述したヘッド20に代わり充填装置5のヘッド支持装置50に取り付けて使用できる。
【0047】
スキージの他の例としては、樹脂製あるいは金属製の極細のワイヤーをブラシの毛のようにスキージサポート21に取り付けたものを挙げることができる。また、スキージのセット数は、上記に限定されるものではない。さらに、内円26の接線方向にスキージをセットすることは、好ましい形態の1つであるが、スキージの形態は、ヘッド20を回転することより内円26の方向にボール15を掃き集めるスウィーパとして機能するものであれば良い。例えば、内円26の接線方向に対して、斜めに配置しても良く、スキージ自体を湾曲させたり、螺旋状にしたりすることが可能である。
【0048】
図12は、さらに異なるヘッド20dの構成を示している。このヘッド20dは、ボール15を掃き集めるための気体91をマスク11の表面11aに吹き付けるエアーノズル92を備えている。このヘッド20dも、上述したヘッド20に代わり充填装置5のヘッド支持装置50に取り付けて使用できる。エアーノズル92は、スキージの代わりにサポート21に取り付けられるものである。エアーノズル92の一例は、上記の図面に示した各タイプのスキージと同様に、サポート21の裏面21aの内円26の接線方向に外円27まで延びた直線状のノズル端93を備えたものである。このノズル端93には、焼結金属製などのフィルタ94が取り付けられており、フィルタ94を通してエアー91がマスク11の表面11aに向かって斜め下方に噴出する。したがって、吹き出されたエアー91は、マスク11の表面11aを内円26の方向に向かって流れる。このため、エアー91により導電性ボール15を内円の区域26の方向に吹き払いながら、ヘッド20を移動できる。さらに、マスクの表面11aに吹き付けられるエアー91の圧力により、ボールを充填する区域26の周囲のマスクの表面11aを押さえ、マスク11の歪みや反りを矯正できる。
【0049】
エアーノズル92のエアー吐出部は、フィルタ94に代わり、スリットや微小な円柱状の孔の集合により構成しても良い。また、エアー91に代わり、窒素ガスあるいはアルゴンガスといった不活性ガス、あるいは導電性ボールの帯電性を制御するためにイオン化した気体を用いることも有効である。
【0050】
エアーなどの気体を吹き出すタイプのヘッド20dにおいては、エアーの圧力によりボール15を駆動できる。したがって、充填装置5は、ヘッド支持装置50によりヘッド20dを任意の方向に動かすだけで、ヘッド20dを回転させなくても、充填するための区域26にボール15を集めることができる。ヘッド20dを回転して内円の区域26にボール15を集合させることもできる。このため、気体を吹き出すタイプのヘッド20dのみを用いる充填装置5は、ヘッドを回転駆動するモータ56を省くことが可能であり、ヘッド支持装置50の構成を簡易にできる。
【0051】
図13に、エアーを吹出すタイプのヘッドの異なる例を示してある。このヘッド20eは、スキージサポート21と、その下面21aからマスク11の表面11aに向かって突き出たスキージタイプのノズル92を備えている。ノズル92は、例えば、ゴムなどの弾性のある部材により形成されており、マスク11の表面11aに接してマスクを押さえる。ノズル92は内側に向いた吹出し口93を備えており、内側に向かってエアー91を放出することにより導電性ボール15を区域26に集める。このヘッド20eも、上述したヘッド20に代わり充填装置5のヘッド支持装置50に取り付けて使用できる。また、吹き出すエアー91により導電性ボール15を移動できるので、ヘッドを回転させずに導電性ボール15をはき集めることができるタイプでもある。
【0052】
なお、図13に示した基板10は、その表面に導電性の層10aを備えており、さらに、導電性の層10aが保護膜13でカバーされ、導電性ボール15が装着される部分のレジスト13がエッチングなどにより除去されている。したがって、マスク11はレジスト層13と密着するように基板10の上にセットできる。そして、マスク11の開口12に充填された導電性ボール15が基板の表面10aに電気的なコンタクトをもった状態で装着され、個々の導電性ボール15が接続端子として機能する。
【0053】
図14に、ヘッドのさらに異なる例をスキージサポートの上方から透かして見た状態を示してある。このヘッド20fは、方形のスキージサポート21と、そのスキージサポート21の裏面21aからマスク11の表面11aに向かって延びた平面視がV字状の2セットのスキージ22fとを備えている。V字状の2セットのスキージ22fは、その間に方形の区域26が形成されるように向かい合ってサポート21に取り付けられている。したがって、ヘッド20fを図面の左右方向に振動することにより導電性ボール15はスキージ22fの間の区域26に集められ、その区域26の中で自重により導電性ボール15はマスク11の開口12に充填される。また、区域26の周囲のマスク11の表面11aはスキージ22fにより押さえられるので、マスク11の歪みなどは矯正される。ヘッド20fは、振動しながら導電性ボール15を区域26の中に保持したまま、XY平面の任意の方向に移動できる。そして、スキージ22fを振動させながら導電性ボール15を集める動作を行うので、区域26の内部における導電性ボール15の分布の偏りを減らすことができる。
【0054】
導電性ボール15が集められる区域26の形状は、ヘッドが回転あるいは振動(揺動)し、さらに、ヘッドが任意の方向に進むので、ほとんどの場合は、明確な境界をもった幾何学的な図形にならない。しかしながら、ヘッドが回転しながらボールを集めるタイプは、区域26は略円形ということができる。また、ヘッドが振動しながらボールを集めるタイプは、区域26は、スキージの形状に依存した円形または円形に外接する多角形ということができる。多角形は、正方形に限定されず、三角形、さらには、5角形以上の多角形を含む。
【0055】
なお、上述したヘッドは幾つかの例であり、上記に限定されるものではない。ヘッドは、2次元的な、限られた広がりを備えた区域に充填用の導電性ボールを集団で保持しながら、マスクの表面を移動するものであり、その好適な1つの形態は、充填用の区域の周辺から導電性を掃き集められるものである。導電性ボールのロス率を低減し、経済的に導電性ボールを基板の所定の位置に搭載できる。そして、ヘッドを、その軌跡の一部が重複するようにマスクの表面を移動することにより、マスク全体の開口に効率よく導電性ボールを充填でき、充填ミスを減らすことができる。
【0056】
本例のボールマウンタ1は、マスクハンドラー3と充填装置5とを搭載しているが、さらに、基板10を搬送してテーブル2にセットする装置、基板10の表面にフラックスを塗布する装置などを共に搭載することも可能である。これらの装置により、マスクをセットする工程およびボールを充填する工程に先立ち、基板をテーブルにセットする工程、フラックスを塗布する工程などを行うことも可能である。そして、これらの工程をシリーズで行なうシステムを提供することも可能である。
【0057】
以上に説明したように、この明細書には、基板に導電性ボールを配置するための複数の開口を備えたマスクと前記基板とを位置合わせする工程と、前記マスクの表面に沿って移動するヘッドにより、前記導電性ボールの集団を前記マスクの表面の一部の区域に保持し、さらに、その区域の軌跡の一部が重複するように、前記区域を移動する充填工程とを有する導電性ボールの搭載方法が含まれる。前記充填工程では、前記区域を、ジグザグ状または螺旋状に移動することが好ましい。前記充填工程では、前記ヘッドにより、前記区域の周辺から前記区域に向かって前記導電性ボールを集めることが好ましい。前記区域の典型的なものは、円または円に外接する多角形である。
【0058】
前記充填工程では、前記ヘッドを、前記マスクに対して垂直な軸を中心に回転させながら、前記垂直な軸を前記マスクの表面に沿って移動し、前記ヘッドの回転により前記導電性ボールを前記区域に集めることが好ましい。前記充填工程では、前記ヘッドを、前記マスクに対して垂直な軸を中心に回転させながら、前記垂直な軸を前記マスクの表面に沿って移動し、前記ヘッドの回転中心と共に移動する円形の前記区域の周囲の前記マスクの表面を、前記ヘッドから突き出た部材、または、気体の吹き出しにより掃いて、前記導電性ボールを前記区域に集めることが好ましい。前記充填工程では、前記ヘッドから突き出た部材、または、気体の吹き出しにより、前記マスクの前記区域の周囲を押さえることが好ましい。
【0059】
また、前記充填工程では、前記ヘッドを、前記マスクに対して垂直な軸を中心に回転させながら、前記垂直な軸を前記マスクの表面に沿って移動し、前記ヘッドから前記マスクの表面に向かって突き出たスキージにより、前記区域の周囲の前記マスクの表面を掃くことが好ましい。前記充填工程では、前記スキージにより、前記マスクの前記区域の周囲を押さえることが好ましい。また、前記充填工程では、前記区域の周囲の前記マスクの表面を、前記ヘッドから吹き出される気体により掃いて、前記導電性ボールを前記区域に集めることが好ましい。
【0060】
基板に導電性ボールを配置するための複数の開口を備えたマスクと前記基板とを位置合わせする工程と、前記マスクの表面に沿って前記導電性ボールを移動するためのヘッドを、その軌跡の少なくとも一部が重複するように移動する充填工程とを有する導電性ボールの搭載方法も有効である。基板に導電性ボールを配置するための複数の開口を備えたマスクと前記基板とを位置合わせする工程と、前記マスクの表面に沿って移動可能なヘッドにより、前記導電性ボールを、前記マスクの表面の一部の区域に、その区域の周囲から集めると共に、その区域を移動する充填工程とを有する導電性ボールの搭載方法も有効である。
【0061】
導電性ボールを基板に配置するための複数の開口を備えたマスクと前記基板とを位置合わせした状態で、前記複数の開口に前記導電性ボールを充填する装置であって、前記マスクの表面の一部の区域に前記導電性ボールの集団を保持するためのヘッドと、前記ヘッドを前記マスクの表面に沿って移動するように支持するヘッド支持手段とを有する充填装置も開示されている。前記ヘッド支持手段は、前記ヘッドを、前記マスクの表面に沿って、ジグザグを描く方向または螺旋を描く方向に、前記区域の軌跡の一部が重複するように移動することが好ましい。前記ヘッド支持手段は、前記ヘッドを、前記マスクの表面に沿って、任意の方向に移動可能であることが好ましい。
【0062】
また、前記ヘッドは、前記区域の周囲から、前記区域に向けて、前記導電性ボールを集める手段を備えていることが好ましい。前記区域に、前記導電性ボールを供給する手段をさらに有することが好ましい。前記導電性ボールの典型的なものは、直径30〜300μm程度の半田ボール、金ボールまたは銅ボールである。
【0063】
また、上記に記載の充填装置と、前記基板と前記マスクとを位置合わせする装置とを有する搭載装置も開示されている。
【0064】
導電性ボールを基板に配置するための複数の開口を備えたマスクと前記基板とを位置合わせした状態で、前記複数の開口に前記導電性ボールを充填する装置であって、前記マスクの表面の一部の区域に向けて、その区域の周囲から前記導電性ボールを集める手段を備えたヘッドと、前記ヘッドを前記マスクの表面に沿って移動するように支持するヘッド支持手段とを有する充填装置も開示されている。前記ヘッド支持手段は、前記ヘッドを、前記マスクの表面に沿って、任意の方向、ジグザグを描く方向および螺旋を描く方向の内の少なくともいずれかの方向に移動可能であることが好ましい。
【0065】
前記ヘッド支持手段は、前記ヘッドを前記マスクに対して垂直な軸を中心に回転する手段と、前記垂直な軸を前記マスクの表面に沿って移動する手段とを備えており、前記導電性ボールを集める手段は、当該ヘッドの回転により、当該ヘッドの回転中心を中心とする円形の前記区域の方向に前記導電性ボールを移動させることが好ましい。前記導電性ボールを集める手段は、前記ヘッドから突き出た部材、または、気体の吹き出しにより、前記円形の区域の周囲の前記マスクの表面を掃くためのスウィーパであることが好ましい。前記スウィーパは、前記ヘッドから突き出た部材、または、気体の吹き出しにより、前記区域の周囲の前記マスクの表面を押さえることが好ましい。
【0066】
前記導電性ボールを集める手段は、前記ヘッドから前記マスクの表面に向かって突き出た、前記円形の区域の周囲の前記マスクの表面を掃くための複数のスキージを具備することが好ましい。前記複数のスキージは、前記円形の区域の接線方向に延びていることが好ましい。前記複数のスキージは、それらの移動方向に多重に配置されていることが好ましい。前記複数のスキージは、前記円形の区域の周囲の前記マスクの表面を押さえることが好ましい。
【0067】
前記導電性ボールを集める手段は、前記ヘッドから前記区域の周囲に気体を吹き出し、前記導電性ボールを掃き集めるためのノズルを備えていることも好ましい。
【0068】
導電性ボールを基板に配置するための複数の開口を備えたマスクと前記基板とを位置合わせした状態で、前記複数の開口に前記導電性ボールを充填する装置であって、前記マスクの表面の一部の区域に前記導電性ボールの集団を保持するためのヘッドと、前記ヘッドを、その軌跡の少なくとも一部が重複して移動するように支持するヘッド支持手段とを有する充填装置も開示されている。
【0069】
導電性ボールを基板に配置するための複数の開口を備えたマスクの表面に沿って、前記マスクに対して垂直な軸を中心に回転しながら移動するヘッドであって、前記ヘッドが回転すると、当該ヘッドの回転中心の回りの円形の区域の方向に前記導電性ボールを集める手段を有するヘッドも含まれる。前記導電性ボールを集める手段は、前記ヘッドから突き出た部材、または、気体の吹き出しにより、前記円形の区域の周囲の前記マスクの表面を掃くためのスウィーパであることが好ましい。前記スウィーパは、前記突き出た部材または気体の吹き出しにより、前記円形の区域の周囲の前記マスクの表面を押さえることが好ましい。
【0070】
これらの方法および装置においては、マスクの表面全体を一方向に、または往復動するスキージにより導電性ボールを1つの方向あるいは往復する方向に移動する代わりに、マスクの表面の一部の区域にヘッドの回転などによりボールを集め、その区域に導電性ボールの集団を保持し、さらに、その区域の軌跡の一部が重複するように、区域を移動する。そして、区域のそのような移動により、マスクの表面をカバーし、マスクの開口に導電性ボールを充填する。すなわち、1つの形態は、基板に導電性ボールを配置するための複数の開口を備えたマスクと基板とを位置合わせする工程と、マスクの表面に沿って移動するヘッドにより、導電性ボールの集団をマスクの表面の一部の区域に保持し、さらに、その区域の軌跡の一部が重複するように、区域を移動する充填工程とを有する、導電性ボールの搭載方法である。また、上記の1つの形態は、導電性ボールを基板に配置するための複数の開口を備えたマスクと基板とを位置合わせした状態で、複数の開口に導電性ボールを充填する装置であって、マスクの表面の一部の区域に導電性ボールの集団を保持するためのヘッドと、ヘッドをマスクの表面に沿って移動するように支持するヘッド支持手段とを有する、導電性ボールの充填装置である。さらに、上記の1つの形態は、この充填装置と、基板とマスクとを位置合わせする装置とを有する搭載装置である。
【0071】
ヘッドおよび区域をマスクの表面に沿って移動することは、マスクおよび基板と、ヘッドおよび区域との相対的な位置が変化することを意味し、ヘッドおよび基板の何れか一方、あるいは両方を移動することを含む。基板とは、導電性ボールが搭載される対象を示し、半導体ウェハ、回路基板、転写用基板およびその他のワークピースを含むものである。区域の軌跡とは、区域がマスクの表面を移動したことにより通過した部分あるいは経路を示す。また、区域が通過することにより、マスクの軌跡に当たる部分の開口には導電性ボールが充填されるが、マスクの表面などに通過したことを示す明瞭な跡が残ることを要するものではない。
【0072】
マスク上の導電性ボールを単純に移動するのではなく、限られた区域に保持した状態で移動する。これにより、マスクの表面に導電性ボールが自由に広がることを防止し、導電性ボールの集団が存在する範囲を限定する。したがって、比較的少数の導電性ボールにより、区域内の導電性ボールの密度を高くでき、その区域が通過する部分のマスクの開口に対し効率良く導電性ボールを充填できる。このため、充填ミスの発生率を低くできる。そして、この充填率の高い区域を、その軌跡の一部が重複するように動かすことで、マスクの表面全体を漏れなくカバーし、導電性ボールの充填ミスの発生率を極めて小さくできる。
【0073】
また、マスク上の限られた区域に保持すべき導電性ボールの数は、マスク全体の開口に対し一様に充填するために要求される微小粒子の量に比較すれば非常に少なくて良い。したがって、マスク上を移動することにより損傷する可能性のある導電性ボールの量は少なくなり、充填する際にロスになる導電性ボールの量は少なくなる。
【0074】
さらに、マスクの上を往復動するだけのスキージであると、同じ領域を完全に重複してスキージが動くので、最初のスキージの通過を除くと、その後のスキージの動きによっては充填ミスの開口にボールが充填されるだけである。したがって、往復動の場合は、最初の一回または数回を除き、スキージによりボールを繰り返し移動して充填ミスを減らそうとすると、ボールの損傷だけが進み、この点でもボールのロスが大量に発生しやすい。
【0075】
充填率の高い区域を、その軌跡の一部が重複するように動かすことで、マスクの表面全体を漏れなくカバーする。したがって、区域の移動により、新たに充填される開口が表れる。このため、区域内に導電性ボールを供給する手段を設け、区域を移動しながら充填された導電性ボールに相当する量を補充することにより、区域内に保持される導電性ボールを新鮮な状態に保つことができる。あるいは、新しい導電性ボールが区域に補充されてからマスクの開口に充填され、基板の上の所定の位置に配置されるまでのライフタイム(消費されるまでの時間)を短くでき、マスクの開口に充填されるまでの導電性ボールのライフタイムのばらつきを小さくできる。このため、基板の所定の位置に、一様に品質の良い導電性ボールを配置することができ、導電性ボールを基板に搭載する作業の歩留まりを改善できる。
【0076】
区域あるいはヘッドの軌跡を一部重複させて、マスクの表面全体をカバーするためには、区域をジグザグ状に、またはサインカーブを描くように移動させることができる。区域を螺旋状または渦巻き状に移動しても良い。軌跡の隣接する部分の重複率を50%あるいはそれ以上にすることにより、最終的には、区域により、マスクの表面を100%あるいはそれ以上の重複率でカバーできる。一方、軌跡の隣接する部分の重複率を高くすると、区域の移動に伴い開口に充填されるボールの数は減り、ライフタイムが長くなり、ボールが損傷する確率が高くなる。したがって、軌跡の重複率は50%程度であることが望ましく、マスクの開口に対し、品質の高い導電性ボールをミスなく充填できる確率が向上する。
【0077】
導電性ボールとマスクの開口との干渉によるボールの品質低下を防止するなどの点から、導電性ボールは、重力、すなわち自重により、マスクの開口に落下するように充填されることが望ましい。導電性ボールを一方向に押し続けると、多数のボールが集中することによりボール同士が干渉して開口に落下しなくなる可能性がある。さらに、そのような状態のボールをスキージで強制的に開口に押し込むことは好ましくない。導電性ボールを区域に保持することにより、その区域を任意の方向に移動することが可能となる。それと共に、区域の移動方向を適度に変えることにより、導電性ボールが区域内に極端に偏在することを抑制できる。したがって、自重による、導電性ボールの開口への充填を促進できる。
【0078】
区域に導電性ボールをホールドする1つの方法は、その区域からボールが逃げないように区域を囲うことである。しかしながら、区域からボールが完全に逃げないように囲う努力は幾つかの問題を発生させる。例えば、スキージなどのボールを移動する手段がマスクの表面に完全に密着するように圧力をかける必要があり、それにより、開口に充填されたボールが飛び出したり、マスクが損傷したりする可能性がある。また、万一、ボールが区域から逃げ出した場合は、そのボールがマスクに残ったり、迷いボールとなって基板の予期しないところに付着する要因となる。
【0079】
そこで、ヘッドにより、区域の周辺から区域に向かって導電性ボールを集めることにより、区域に導電性ボールの集団を保持する。すなわち、1つの形態は、基板に導電性ボールを配置するための複数の開口を備えたマスクと基板とを位置合わせする工程と、マスクの表面に沿って移動可能なヘッドにより、導電性ボールをマスクの表面の一部の区域に、その区域の周囲から集めると共に、その区域を移動する充填工程とを有する搭載方法である。また、他の1つの形態は、マスクの表面の一部の区域に導電性ボールの集団を保持するためのヘッドと、ヘッドをマスクの表面に沿って移動するように支持するヘッド支持手段とを有する充填装置である。
【0080】
区域の移動方向に関わらず、区域に向かって導電性ボールを集めやすい区域の形状は、円または円に外接する多角形である。例えば、区域に向かって周囲の導電性ボールを掃き集めるようにヘッドを振動させることができる。また、ボールを充填するための区域に向かってヘッドからエアーなどの気体を吹き出すことにより、導電性ボールを掃き集めることができる。導電性ボールを集めるための好ましい方法の1つは、ヘッドを回転させることにより、ヘッドの中心の区域に向かって導電性ボールを動かして導電性ボールを集めることである。ヘッドを、マスクに対して垂直な軸を中心に回転させながら、垂直な軸をマスクの表面に沿って移動し、ヘッドの回転により導電性ボールを区域に集めることにより、導電性ボールの集団を区域に保持しながら移動させることができる。
【0081】
充填装置のヘッド支持手段は、ヘッドをマスクに対して垂直な軸を中心に回転する手段と、垂直な軸をマスクの表面に沿って移動する手段とを備えていることが望ましい。また、ヘッドは、当該ヘッドの回転により、ヘッドの回転中心の回りの同心円状の円形の区域(内円)の方向に導電性ボールを移動させる、導電性ボールを集める手段を備えていることが望ましい。導電性ボールを集める手段は、磁性体あるいは帯電体であれば、その反発力を利用するものであっても良い。集める手段の好ましいものの1つは、ヘッドから突き出た部材、または、気体の吹き出しにより、円形の区域の周囲のマスクの表面を掃くためのスウィーパである。スウィーパは、導電性ボールを区域の方向に移動させる配置あるいは形状であれば良い。例えば、渦巻状に湾曲した形状、半径方向に対して回転の中心に向いた形状などがある。
【0082】
ヘッドから突き出た部材の1つの形態は、マスクの表面を掃く効果が得られるスキージと称されるものである。導電性ボールを集める円形の区域の接線方向に延びた形態は、直線状の簡易な形状のスキージの1つであり、複数のスキージを備えたヘッドを回転することにより、円形の区域の周囲にある導電性ボールに対して円形の区域の方向に力を加えることができる。さらに、複数のスキージを、それらの移動方向、すなわち、ヘッドの回転により移動する方向に多重に配置することにより、他のスキージから漏れた導電性ボールを捕らえて、円形の区域の方向に確実に回収できる。
【0083】
区域の周囲から導電性ボールを集めるために、ヘッドから突き出た部材あるいはヘッドから吹き出された気体は、区域の周囲のマスクを基板に対して押さえる機能も果たす。導電性ボールを搭載する基板が半導体デバイスのウェハあるいはワーク(ワークピース)である場合、基板は大型化する傾向にあり、それに合わせてマスクも大型になる。一方、デバイスの集積化が進むに連れて、導電性ボールは小型化する傾向にあり、導電性ボールの一例は、直径30〜300μm程度の半田ボール、金ボールまたは銅ボールである。したがって、ボールを基板に搭載する際に、マスクの歪みや反りにより、基板とマスクとの間に発生する隙間の影響を少なくすることが重要となる。基板は、裏側から吸引することにより面精度を出すことは比較的容易であるのに対し、マスクは表も裏も補強できないので面精度を出すことが困難である。特に、マスクが大型になると歪や反りを無くすことは難しくなり、ボールが小径になると、微小な隙間にボールが入り込んで迷いボールとなる可能性がある。さらに、導電性ボールに対してマスクは密着していることが望ましいが、基板にはボールを機械的および電気的に接続するためのフラックスが印刷されている場合があり、基板にマスクを密着させることが好ましくないこともある。
【0084】
マスク全体の平坦度あるいは面精度を改善する代わりに、マスクの表面の一部である、区域の周囲を押さえることにより部分的に平坦度を改善する。これにより、導電性ボールが充填される限られた区域内で、マスクの平坦度が改善されるので、迷いボールの発生を未然に防止できる。また、区域内に導電性ボールを集めて保持することにより、マスクの他の領域で隙間があっても、迷いボールが発生するのを防止できる。したがって、本発明の搭載方法および装置に用いられるマスクの1つの形態は、ヘッドから突き出た部材あるいはヘッドから吹き出された気体により押さえられて平坦度が改善されるような柔軟性を備えたものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板に導電性ボールを配置するための複数の開口を備えたマスクと前記基板とを位置合わせする工程と、
ヘッドにより、前記マスクの表面の一部の2次元的な限られた広がりを備えた区域であって、前記マスクの表面の移動先の区域に、2次元的な広がりを備えた前記導電性ボールの集団を形成する工程と、
前記移動先において、前記2次元的な広がりを備えた導電性ボールの集団に前記導電性ボールを補充する工程とを有する、導電性ボールの搭載方法。
【請求項2】
請求項1において、前記補充する工程は、前記移動先において形成される前記2次元的な広がりを備えた導電性ボールの集団に所定の時間間隔で前記導電性ボールを供給することを含む、導電性ボールの搭載方法。
【請求項3】
請求項1または2において、前記補充する工程は、前記移動先の区域に形成される前記2次元的な広がりを備えた導電性ボールの集団の密度を検出することと、
前記密度が低下すると前記導電性ボールを供給することとを含む、導電性ボールの搭載方法。
【請求項4】
導電性ボールを基板に配置するための複数の開口を備えたマスクと前記基板とを位置合わせした状態で、前記複数の開口に前記導電性ボールを充填する装置であって、
前記マスクの表面の一部の2次元的な限られた広がりを備えた区域であって、前記マスクの表面の移動先の区域に、2次元的な広がりを備えた前記導電性ボールの集団を形成するヘッドと、
前記ヘッドを移動する手段と、
前記ヘッドとともに移動されるボール供給装置であって、前記移動先において、前記2次元的な広がりを備えた導電性ボールの集団に前記導電性ボールを補充するボール供給装置とを有する充填装置。
【請求項5】
請求項4において、前記ボール供給装置は、前記移動先において形成される前記2次元的な広がりを備えた導電性ボールの集団に所定の時間間隔で前記導電性ボールを供給する、充填装置。
【請求項6】
請求項4または5において、前記移動先の区域に形成される前記2次元的な広がりを備えた導電性ボールの集団の密度を検出するセンサーを有し、
前記ボール供給装置は、前記密度が低下すると前記導電性ボールを供給する、充填装置。
【請求項7】
請求項4ないし6のいずれかに記載の充填装置と、
前記基板と前記マスクとを位置合わせする装置とを有する搭載装置。
【請求項8】
導電性ボールを基板に配置するための複数の開口を備えたマスクの表面に沿って移動し、移動先の前記マスクの一部の2次元的な限られた広がりを備えた区域に、2次元的な広がりを備えた前記導電性ボールの集団を形成するヘッドであって、
前記移動先において、前記2次元的な広がりを備えた導電性ボールの集団に前記導電性ボールを補充する供給路を有するヘッド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2013−93636(P2013−93636A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2013−33484(P2013−33484)
【出願日】平成25年2月22日(2013.2.22)
【分割の表示】特願2010−140813(P2010−140813)の分割
【原出願日】平成17年6月30日(2005.6.30)
【出願人】(592141488)アスリートFA株式会社 (96)