説明

導電性ローラ

【課題】効率よく製造可能な、且つ、可塑剤の染み出しもなく、優れた画像を得ることのできる導電性ローラを提供する。
【解決手段】クロスヘッドダイを備えた押出機を用いて未加硫のゴム組成物を押出すと同時に、芯金を該クロスヘッドダイを通過させて、該芯金の外周面上に未加硫のゴム層を配置せしめた後、加硫工程を経て製造される導電性ローラにおいて、前記未加硫のゴム組成物が、ゴム成分として、エチレンオキサイド80モル%以上95モル%以下含むエチレンオキサイドとアリルグリシジルエーテルとが共重合されている多元共重合体(A)と、ヨウ素価が20以上35以下のエチレンプロピレンゴム(B)を含有し、且つ、該エチレンプロピレンゴム(B)の含有量が全ゴム成分に対し3質量%以上30質量%以下であるゴム組成物であることを特徴とする導電性ローラ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ローラに関し、特に、電子写真方式の画像形成装置における帯電ローラなどとして用いることのできる導電性ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンター等の電子写真方式の画像形成装置では、感光体の表面に潜像を形成し、次いで、トナーの付着によるトナー像の形成(現像)、転写紙等の記録媒体へのトナー像の転写により、プリントする方法がとられている。潜像は、通常、感光体の表面を均一に帯電させ、該感光体に光学系から映像に応じた光を投射し、光の投射された部分の帯電を消去することにより形成される。
【0003】
感光体の表面を均一帯電するための手段としては、電圧を印加した帯電部材を感光体に所定の押圧力で当接させて感光体を所定の電位に帯電させる接触帯電方式が知られている。接触帯電方式の中でも帯電ローラは、感光体への帯電が、二つの回転円筒体同士の接触によりなされるため、ブラシ帯電やブレード帯電などの他の接触帯電方式よりも容易であり、広く採用されている。
【0004】
帯電ローラは感光体との接触により帯電を行うものであるため、帯電ローラが電気的に不均一な場合、その電気的な不均一性を反映した帯電濃度ムラを生じる。従って、帯電ローラは所定の電気抵抗をもち、かつ電気的に均一であることが要求される。
【0005】
帯電ローラとしては、例えば、導電体である所定の軸体(芯金)の外周面上に、低硬度の導電性ゴム弾性体層を設け、更に必要に応じて、導電性弾性体層の外周面上に抵抗調整層や保護層を設けたものが、採用されている。帯電ローラには、感光体に対する均一な接触性を確保するために、良好な表面平滑性や高い寸法精度が要求されている。
【0006】
この低硬度の導電性ゴム弾性体層を設けるための導電性ゴム組成物として、エチレン−プロピレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム等のポリマーに、カーボンブラック等の導電性充填剤を添加し、更に低硬度を得るために軟化剤を添加したものが知られている。更には、より電気的に均一な弾性体層を設けるために、電気的中抵抗物質を用いると、感光体に均一な帯電ができることが知られている(例えば特許文献1参照。)。電気的中抵抗物質としては、例えば、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド−アリルグリシジルエーテル三元共重合体が用いられる。または、エピクロルヒドリン−エチレンオキサイド二元共重合体の単独、またはそれらの混合系のエピクロルヒドリンゴムを主体とするものが用いられる。しかしながら.押出時に未加硫のゴム組成物がクロスヘッドダイを通過した時に弾性体層の収縮によって帯電ローラの弾性体層端部が芯金から浮いてしまいローラとして形状不良となってしまうという不具合が発生する場合がある。これを防ぐために押出速度を遅くする方法が知られている。しかしながら押出速度を遅くすると生産性が低下するうえ、押出機中のゴムがスコーチをおこし加工ができなくなるといった問題がある。
【0007】
押出後のゴム層の収縮を小さくするためにゴム組成物に液状ゴムを混合する方法も知られている(例えば特許文献2参照。)。しかしこの方法では加硫後のゴム層の物性のC-setが著しく悪化してしまう傾向があり、導電性ローラの感光体への圧接時の変形に起因するローラピッチにより画像に横スジが発生する虞がある。
【0008】
【特許文献1】特開平6−266206号公報
【特許文献2】特許第3646754号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、効率よく製造可能な、且つ、可塑剤の染み出しもなく、優れた画像を得ることのできる導電性ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成した本発明は、
クロスヘッドダイを備えた押出機を用いて未加硫のゴム組成物を押出すと同時に、芯金を該クロスヘッドダイを通過させて、該芯金の外周上に未加硫のゴム層を配置せしめた後、加硫工程を経て製造される導電性ローラにおいて、前記未加硫のゴム組成物が、ゴム成分として、エチレンオキサイド80モル%以上、95モル%以下含むエチレンオキサイドとアリルグリシジルエーテルとが共重合されている多元共重合体(A)と、ヨウ素価が20以上、35以下のエチレンプロピレンゴム(B)を含有し、且つ、該エチレンプロピレンゴム(B)の含有量が全ゴム成分に対し3質量%以上、30質量%以下であるゴム組成物であることを特徴とする導電性ローラである。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、効率よく生産可能な、感光体への圧接時の変形によるローラピッチ(ローラ当接跡)に起因する画像の横スジの発生を抑えた導電性ローラを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の導電性ローラは、クロスヘッドダイを備えた押出機を用いて未加硫のゴム組成物を押出すと同時に、芯金を該クロスヘッドダイを通過させて、該芯金の外周上に未加硫のゴム層を配置せしめた後、加硫工程を経て製造される。
【0013】
前記未加硫のゴム組成物は、ゴム成分として、エチレンオキサイド80モル%以上95モル%以下含むエチレンオキサイドとアリルグリシジルエーテルとが共重合されている多元共重合体(A)を含有する。また前記未加硫のゴム組成物は、ゴム成分として、ヨウ素価が20以上35以下のエチレンプロピレンゴム(B)を含有する。このエチレンプロピレンゴム(B)の含有量は、前記未加硫のゴム組成物に含まれる全ゴム成分に対し3質量%以上30質量%以下である。
【0014】
前記多元共重合体(A)は低電気抵抗であり、そのエチレンオキサイド含有量を変化させることにより電気抵抗調整の幅が広がる。前記多元共重合体(A)のエチレンオキサイドの含有量を80モル%以上95モル%以下とすると、例えば、本発明の導電性ローラのゴム層の体積固有抵抗を、好適な値である105〜107Ω・cmに容易に調整することが出来る。
【0015】
前記多元共重合体(A)を単体で用いると、押出し後のゴム層の収縮性が大きく、形状不良(端部浮き)を抑えることが難しくなる。しかしながら、前記未加硫のゴム組成物が、ゴム成分として、ヨウ素価が20以上35以下の上記エチレンプロピレンゴム(B)を含有すると、押出し後のゴム層の収縮性を小さくすることが可能である。
【0016】
該未加硫のゴム組成物を、多元共重合体(A)とエチレンプロピレンゴム(B)とを含有するものとすると、エチレンプロピレンゴム(B)が、多元共重合体(A)と共架橋し、形成されたゴム層の圧縮永久歪の悪化を防ぐ事が可能となる。これにより、本発明の導電性ローラの感光体への圧接時の変形によるローラピッチに起因する画像の横スジの発生を抑えることが可能である。
【0017】
エチレンプロピレンゴム(B)のヨウ素価が20以上であると、圧縮永久歪を適度の範囲内のものとすることができる。この理由は、エチレンプロピレンゴム(B)のヨウ素価が十分に高いため、多元共重合体(A)とエチレンプロピレンゴム(B)との間に十分な共架橋が得られるためと考えられる。またヨウ素価が35以下であると、得られる導電性ローラの圧縮永久歪を適度な範囲とすることができるのみならず、原料のエチレンプロピレンゴム(B)として安価なものを選択できるので導電性ローラの製造コストを低減することができる。
【0018】
また、該未加硫のゴム組成物のゴム成分を、多元共重合体(A)とエチレンプロピレンゴム(B)を含有するものとすることにより、押出し後のゴム層の収縮性を小さくすることが可能である。これにより、高速の押出においても未加硫のゴム層の収縮による形状不良(端部浮き)の発生を抑えることができる。
【0019】
また、エチレンプロピレンゴム(B)の含有量が全ゴム成分に対し3質量%以上である場合、押出後の未加硫ゴム層の収縮による形状不良の発生を抑えることができる。一方、前記エチレンプロピレンゴム(B)の含有量を30質量%以下とすると、ゴム層の電気抵抗の上昇を抑えることができる。これにより、得られる導電性ローラの電気抵抗値を適正な範囲に確保することが容易となる。エチレンプロピレンゴム(B)の含有量は、全ゴム成分に対し4質量%以上10質量%以下とすることが好ましい。
【0020】
また、エチレンプロピレンゴム(B)は、100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)が5以上30以下のエチレンプロピレンゴムであることが好ましい。エチレンプロピレンゴム(B)としてこのようなエチレンプロピレンゴムを用いると、押出し後のゴム層の収縮性が小さく形状不良の発生をより効果的に抑えることが可能だからである。エチレンプロピレンゴム(B)としてムーニー粘度が5以上のものを用いると、練りの作業性が向上する。またエチレンプロピレンゴム(B)としてムーニー粘度が30以下のものを用いると、押出し後の未加硫ゴム層の収縮性が小さく形状不良の発生を抑えることができる。
【実施例】
【0021】
以下、本発明について実施例及び比較例を挙げて、具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0022】
エチレンオキサイドとアリルクリシジルエーテルとが共重合されている多元共重合体として下記のものを準備した。
・ゼオスパン8030(商品名、日本ゼオン(株)社製、エチレンオキサイド含有量89.8モル%)(ゼオスパン8030と表す。)
【0023】
また、エチレンプロピレンゴムとして下記のものを準備した。
・EPT4021(商品名、三井化学(株)製、100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)24、ヨウ素価22)(EPT4021と表す。)
・EPT4010(商品名、三井化学(株)製、100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)8、ヨウ素価22)(EPT4010と表す。)
・EPT9070E(商品名、三井化学(株)製、100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)70、ヨウ素価30、20部油展)(EPT9070Eと表す。)
・EPT3070(商品名、三井化学(株)製、100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)69、ヨウ素価13)(EPT3070と表す。)
・EPT3012P(商品名、三井化学(株)製、100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)15、ヨウ素価10)(EPT3012Pと表す。)
【0024】
(実施例1)
下記の原材料を準備した。
・ゼオスパン8030 95質量部
・EPT4021 5質量部
・酸化亜鉛 5質量部
(亜鉛華2種(商品名)、白水テック(株)製)
・ステアリン酸 1質量部
(ステアリン酸S(商品名)、花王(株)製)
・炭酸カルシウム 90質量部
(シルバーW(商品名)、白石工業(株)製)
・カーボンブラック 5質量部
(旭#60(商品名)、旭カーボン(株)製、FEF級カーボンブラック)
・イオン導電材 2質量部
(LV−70(商品名)、旭電化工業(株)製)
・ポリエステル可塑剤 5質量部
(PN−350(商品名)、アデカ・アーガス(株)製)
・ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS) 1質量部
(ノクセラーDM(商品名)、大内振興化学工業(株)製)
・テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM) 1質量部
(ノクセラーTS(商品名)、大内振興化学工業(株)製)
・イオウ 0.8質量部
(サルファックスPMC(商品名)、鶴見化学工業(株)製)
【0025】
次に、上記の原材料を混錬りし、未加硫のゴム組成物を調製した。この未加硫のゴム組成物を、φ70クロスヘッドダイを備えた押出機を用いて押出すと同時に該クロスヘッドダイに、あらかじめ接着剤を塗布した芯金を供給して通過させ、該芯金の外周上に未加硫のゴム層を配置せしめた。これにより、外径が略φ13mmのゴムローラを作製した。このとき、前記芯金として、外径Φ6mmのSUM(硫黄複合快削鋼鋼材)材にKNメッキを施したものを用いた。前記押出機による押出条件は、芯金送り速度2.5m/分(スクリュー回転数14rpm)及び芯金送り速度1.3m/分(スクリュー回転数7rpm)とした。
【0026】
このゴムローラを電気炉中で170℃の温度で1時間加熱して加硫した。加硫後、研磨砥石GC80を取り付けた研磨機にセットし、回転速度2000rpm、送り速度0.3mm/分の研削条件で外径がφ12mmになるように研削し、導電性ローラE1を作製した。
【0027】
(実施例2)
エチレンプロピレンゴムとして、EPT4010を用いた以外は実施例1と同様にして導電性ローラE2を作製した。
【0028】
(実施例3)
エチレンオキサイドとアリルクリシジルエーテルとが共重合されている多元共重合体ゼオスパン8030の量を90質量部とし、エチレンプロピレンゴムEPT4021の量を10質量部とした以外は実施例1と同様にして導電性ローラE3を作製した。
【0029】
(実施例4)
エチレンオキサイドとアリルグリシジルエーテルとが共重合されている多元重合体ゼオスパン8030の量を80質量部とし、エチレンプロピレンゴムEPT4021の量を20質量部とした以外は実施例1と同様にして導電性ローラE4を作製した。
【0030】
(実施例5)
エチレンオキサイドとアリルグリシジルエーテルとが共重合されている多元重合体ゼオスパン8030の量を90質量部とした。かつ、エチレンプロピレンゴムをEPT9070Eとし、その量を12質量部とした以外は実施例1と同様にして導電性ローラE5を作製した。
【0031】
(比較例1)
エチレンオキサイドとアリルグリシジルエーテルとが共重合されている多元重合体ゼオスパン8030の量を100質量部とし、エチレンプロピレンゴムの量を0質量部とした以外は実施例1と同様にして導電性ローラR1を作製した。
【0032】
(比較例2)
エチレンオキサイドとアリルグリシジルエーテルとが共重合されている多元重合体ゼオスパン8030の量を98質量部とし、エチレンプロピレンゴムEPT4021の量を2質量部とした以外は実施例1と同様にして導電性ローラR2を作製した。
【0033】
(比較例3)
エチレンオキサイドとアリルグリシジルエーテルとが共重合されている多元重合体ゼオスパン8030の量を65質量部とし、エチレンプロピレンゴムEPT4021の量を35質量部とした以外は実施例1と同様にして導電性ローラR3を作製した。
【0034】
(比較例4)
エチレンオキサイドとアリルグリシジルエーテルが共重合されている多元重合体ゼオスパン8030の量を90質量部とし、かつエチレンプロピレンゴムをEPT3070とし、その量を10質量部とした以外は実施例1と同様にして導電性ローラR4を作製した。
【0035】
(比較例5)
エチレンオキサイドとアリルグリシジルエーテルが共重合されている多元重合体ゼオスパン8030の量を90質量部とした。かつ、エチレンプロピレンゴムをEPT3012Pとし、その量を10質量部とした以外は実施例1と同様にして導電性ローラR5を作製した。
【0036】
上記実施例及び比較例にて作製した導電性ローラは、次のようにして評価した。得られた結果を纏め表1に示した。
【0037】
<形状>
実施例及び比較例の各々にて作製した各50本の導電性ローラのゴム層の端部の形状を目視により観察し、該ゴム層が芯金から浮いている本数を調べた。
【0038】
<導電性ローラの電気抵抗>
実施例及び比較例の各々にて作製した導電性ローラを30rpmの回転速度でSUSドラムと接触させながら回転した。このような状態の下で、導電性ローラの芯金とSUSドラムとの間に200Vの電圧を印加した。回転中に測定された最大の電気抵抗値と最小の電気抵抗値を測定し、該最大の電気抵抗値と該最小の電気抵抗値の平均値を導電性ローラの電気抵抗値とした。
【0039】
<圧縮永久歪>
実施例及び比較例の各々にて調製した各々の未加硫ゴム組成物から、160℃で30分間加熱して加硫しテストピースを作製した。このテストピースにて、加硫ゴム物理試験方法(JIS K6301)に基づき圧縮永久歪を測定した。圧縮率はテストピースの厚みに対し25%とし、熱処理温度、熱処理時間はそれぞれ70℃、22時間とした。
【0040】
<画像>
実施例及び比較例の各々にて作製した導電性ローラのゴム層の外周面上に以下に示す方法によって表層面を形成し、表面層を備えた導電性ローラを作製した。
次に示す原材料を準備した。
・アクリルポリオール溶液 100質量部
(PLACCEL DC2016(商品名)、ダイセル化学社製、有効成分70質量%、希釈溶剤としてキシレン30質量%を含有)
・イソシアネートA 40質量部
(VESTANAT B1370(商品名)、デグサ社製、イソホロンジイソシアネート(IPDA)60質量%、希釈溶剤としてn−酢酸ブチル15質量%、キシレン25質量%を含有)
・イソシアネートB 30質量部
(DURANATE TPA−B80E(商品名)、旭化成ケミカルズ社製、ヘキサメチレンジイソシアネート(HDI)80質量%、希釈剤として酢酸エチル20質量%を含有)
・カーボンブラック 100質量部
(CS−Bk100Y(商品名)、戸田工業社製)
・表面処理酸化チタン 25質量部
(SMT−150IB(商品名)、テイカ社製)
・ポリメチルメタクリレート(PMMA)樹脂粒子 50質量部
(MAX−12(商品名)、積水化成品工業社製)
・変性ジメチルシリコーンオイル 0.08質量部
(SH28PA(商品名)、東レ・ダウコーニング・シリコーン社製)
・メチルイソブチルケトン 400質量部
上記原材料をミキサーを用いて撹拌し混合液を調製した。ついで、その混合液を循環式のビーズミル分散機を用いて分散処理(処理速度500ml/min)を行い、浸漬塗工用の塗料を調製した。なお、この塗料の粘度は8.0mPasであった。
【0041】
実施例及び比較例にて作製した導電性ローラに上記塗液を用いてディッピング用塗料を作製し、ディッピング法にて塗布して膜厚が16μmの表面層を被覆形成し、ローラ形状の帯電部材を得た。このようにして得られた表面層を備えた導電性ローラを電子写真装置(HP ColorLaserJet3000(商品名)、ヒューレットパッカード社製)に装着した。温度23℃、湿度55%RHの雰囲気下において、画像出しを行い、得られた画像を目視にて観察し、下記の基準に基づいて画像評価を行った。
○:画像上にローラ当接跡が見られない。
×:画像上にローラ当接跡が横スジ状に見られる。
【0042】
【表1】

【0043】
上記結果から明らかなように、未加硫のゴム組成物として、下記の未加硫ゴム組成物を用いると、クロスヘッドダイを備えた押出機により、容易に高速で未加硫のゴム層を芯金の外周上に配置せしめることができる。
・エチレンオキサイドを80モル%以上95モル%以下含むエチレンオキサイドとアリルグリシジルエーテルとが共重合されている多元共重合体(A)、及び、
・ヨウ素価が20以上35以下のエチレンプロピレンゴム(B)を含有し、且つ、該エチレンプロピレンゴム(B)の含有量が全ゴムの成分に対し3質量%以上30質量%以下であるゴム組成物
【0044】
本発明の導電性ローラは、このようにして芯金の外周面上に未加硫のゴム層を配置せしめた後、加硫工程を経て製造される。
【0045】
表1に示されているように、実施例1〜5の導電性ローラのゴム層の外周面上に表面層を備えた導電性ローラを搭載した電子写真装置においては、何れも感光体への圧接時の変形によるローラピッチに起因する横スジの発生の問題はないことが確認された。
【0046】
更に、実施例1〜4では、芯金送り速度2.5m/minにおいても端部浮き不良が見られなかった。実施例5では、芯金送り速度1.3m/minで端部浮き不良が見られなかった。ムーニー粘度が高いエチレンプロピレンゴムEPT9070Eを用いた場合においても、端部浮き不良のない導電性ローラを得ることができた。
【0047】
これに対し、エチレンオキサイド89.8モル%含むエチレンオキサイドとアリルグリシジルエーテルとが共重合されている多元共重合体(A)単独処方である比較例1では未加硫のゴム層を芯金の外周面上に配置せしめたとき該ゴム層端部に浮きが生じてしまう。また比較例2ではエチレンプロピレンゴムの混合量が少ないため押出し後のゴム層の収縮を抑える効果が少なく、形状不良(端部浮き)が完全には無くならなかった。また比較例3ではエチレンプロピレンゴムの混合量が多いため導電性ローラの電気抵抗が大きくなってしまい、画像評価で画像濃度ムラが発生した。また比較例4では混合したエチレンプロピレンゴム(EPT3070)のヨウ素価が小さいため、圧縮永久歪が大きく、画像評価で画像にローラピッチに起因する横スジが発生してしまった。また、比較例5で混合するエチレンプロピレンゴム(EPT3012P)もヨウ素価が小さいため、圧縮永久歪が大きく、画像評価で画像にローラピッチに起因する横スジが発生してしまった。
【0048】
上記実施例は、本発明の導電性ローラが、電子写真等の画像形成装置における帯電ローラなどに有効であることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クロスヘッドダイを備えた押出機を用いて未加硫のゴム組成物を押出すと同時に、芯金に該クロスヘッドダイを通過させて、該芯金の外周上に未加硫のゴム層を配置せしめた後、加硫工程を経て製造される導電性ローラにおいて、前記未加硫のゴム組成物が、ゴム成分として、エチレンオキサイド80モル%以上、95モル%以下含むエチレンオキサイドとアリルグリシジルエーテルとが共重合されている多元共重合体(A)と、ヨウ素価が20以上、35以下のエチレンプロピレンゴム(B)を含有し、且つ、該エチレンプロピレンゴム(B)の含有量が全ゴム成分に対し3質量%以上、30質量%以下であるゴム組成物であることを特徴とする導電性ローラ。
【請求項2】
前記エチレンプロピレンゴム(B)が、100℃におけるムーニー粘度(ML1+4)が5以上、30以下のエチレンプロピレンゴムであることを特徴とする請求項1記載の導電性ローラ。

【公開番号】特開2009−128758(P2009−128758A)
【公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−305633(P2007−305633)
【出願日】平成19年11月27日(2007.11.27)
【出願人】(393002634)キヤノン化成株式会社 (640)
【Fターム(参考)】