説明

導電性ローラ

【課題】高温多湿環境下においてもブリードを生ずることがなく、電気的に安定な導電性ローラを提供する。また、特に塗膜層の樹脂材料としてUV硬化型樹脂を用いても、硬化阻害の問題を生じない導電性ローラを提供する。
【解決手段】軸1と、その外周に担持された弾性層2と、弾性層2の外周面に形成された少なくとも1層の塗膜層3と、を備える導電性ローラである。塗膜層のうち少なくとも最外層の塗膜層3が、樹脂成分としての紫外線硬化型樹脂と、下記(1)および(2)、
(1)NaOの含有量が1質量%以上、
(2)A1の含有量が1質量%以上、
のうちのいずれか一方または双方の条件を満足するシリカと、を含み、かつ、該シリカの含有量が、樹脂成分100質量部に対し20〜100質量部の範囲内である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は導電性ローラ(以下、単に「ローラ」とも称する)に関し、詳しくは、複写機、プリンターなどの各種電子写真装置に使用される導電性ローラに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、プリンターなどの電子写真方式を用いた画像形成装置では、感光体の表面を均一に帯電させ、この感光体に光学系から映像を投射して、光が当たる部分の帯電を消去することより潜像を形成し、次いでこの静電潜像を現像、転写することによりプリントする手法が用いられている。
【0003】
この電子写真プロセスにおいて、感光体を帯電させるために用いられる帯電ローラとしては、一般に、導電体である所定の導電性軸体の外周面上に、ソリッドゴムや発泡体ゴム、樹脂材料等からなる比較的低抵抗領域(10〜10Ω)の半導電性弾性層を設け、さらにその外周面に、中抵抗領域(10〜1010Ω)の抵抗調整を目標とする塗膜層を形成した構成が一般的に採用されている。
【0004】
かかるローラ抵抗調整の目的で用いられる一般的な導電剤としては、例えば、カーボンブラックが挙げられる。また、例えば、特許文献1には、現像ローラの樹脂被覆層を、導電剤を含有する紫外線硬化型樹脂により形成するに際し、使用可能な導電剤として、カーボンブラック等の電子導電剤およびイオン導電剤の双方が挙げられている。
【特許文献1】特開2004−240389号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記ローラ抵抗の調整にアセチレンブラックなどの導電性のカーボンブラックを用いると、少量の添加で抵抗値が大きく変動するために、抵抗値を安定化させることが難しいという問題があった。
【0006】
また、低抵抗化のためにファーネスカーボンブラックなどのゴム用のカーボンブラックを用いると、所望の導電性を得るためには多量の添加量が必要となる。この場合、多量のカーボンブラックを均一に分散させるために分散剤を使用することが必要となるが、この分散剤が高温多湿の環境下でブリードする場合があり、感光体を汚染するという問題が生じていた。
【0007】
さらに、特に、塗膜層の樹脂材料として紫外線(UV)硬化型樹脂を用いる場合においては、塗膜層中にカーボンブラックを混合すると、紫外光が塗膜層表面で吸収されて硬化阻害を生ずるため、導電性を得る手段としてカーボンブラックを用いることは適していない。さらにまた、カーボンブラックに代えてイオン導電剤を用いることも考えられるが、イオン導電剤を添加する場合においても、ブリードの問題が生じてしまう。
【0008】
上記のように、カーボンブラックやイオン導電剤を用いてローラ抵抗の調整を行う従来の手法では、所望の導電性を安定的に得られるものではなく、ブリード等の他の問題を生ずることなく、ローラ抵抗の調整を可能とする技術の確立が求められていた。
【0009】
そこで本発明の目的は、高温多湿環境下においてもブリードを生ずることがなく、電気的に安定な導電性ローラを提供することにあり、また、特に塗膜層の樹脂材料として紫外線硬化型樹脂を用いても、硬化阻害の問題を生じない導電性ローラを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は鋭意検討した結果、導電剤として、シリカに導電性を付与したものを用いて、これをローラの塗膜層に適用することで、ブリードや硬化阻害の問題を生ずることなく、所望の導電性を安定的に有する導電性ローラが得られることを見出して、本発明を完成するに至った。
【0011】
すなわち、本発明の導電性ローラは、軸と、該軸の外周に担持された弾性層と、該弾性層の外周面に形成された少なくとも1層の塗膜層と、を備える導電性ローラにおいて、
前記塗膜層のうち少なくとも最外層の塗膜層が、樹脂成分としての紫外線硬化型樹脂と、下記(1)および(2)、
(1)NaOの含有量が1質量%以上、
(2)A1の含有量が1質量%以上、
のうちのいずれか一方または双方の条件を満足するシリカと、を含み、かつ、該シリカの含有量が、樹脂成分100質量部に対し20〜100質量部の範囲内であることを特徴とするものである。
【0012】
本発明のローラにおいては、前記紫外線硬化型樹脂として、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂またはアクリルウレタン樹脂からなるものを用いることが好ましい。また、前記シリカは、好適には、下記(3)および(4)、
(3)NaOの含有量が5〜20質量%、
(4)A1の含有量が5〜20質量%、
のうちのいずれか一方または双方の条件を満足する。さらに、本発明において前記弾性層は発泡体からなることが好ましく、前記発泡体が、ウレタン原料を機械的撹拌により発泡させてなるウレタンフォームであることがより好ましい。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、上記構成としたことにより、ブリードに起因する感光体汚染や硬化阻害等の問題を生ずることなく、所望の導電性を備える電気的に安定な導電性ローラを実現することが可能となった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
図1に、本発明の導電性ローラの一例の幅方向断面図を示す。図示するように、本発明の導電性ローラ10は、軸1と、その外周に担持された弾性層2と、弾性層2の外周面に形成された少なくとも1層、図示する例では1層の塗膜層3と、を備えている。
【0015】
本発明においては、塗膜層3が、樹脂成分としての紫外線硬化型樹脂と、下記(1)および(2)、
(1)NaOの含有量が1質量%以上、
(2)A1の含有量が1質量%以上、
のうちのいずれか一方または双方の条件を満足するシリカと、を含み、かつ、シリカの含有量が、樹脂成分100質量部に対し20〜100質量部の範囲内である。
【0016】
シリカは通常は導電性を有しないが、上記NaOおよび/またはA1を含有させることで導電性を有するものとすることができる。本発明においては、上記(1)または(2)、特には(1)および(2)の双方の条件を満足するシリカを塗膜層配合中に含有させたことで、導電性ローラとして所望の導電性を付与することが可能となったものである。この場合、従来のような汚染物質のブリードはなく、また、シリカは光透過性が高く、カーボンブラックとは異なり紫外光を吸収しないため、塗膜層の硬化阻害の問題も生ずることがない。
【0017】
本発明に用いるシリカは、上記(1)および(2)のうちのいずれか一方または双方、好適には、下記(3)および(4)、
(3)NaOの含有量が5〜20質量%、
(4)A1の含有量が5〜20質量%、
のうちのいずれか一方または双方の条件を満足する。NaOまたはA1の含有量が1質量%未満であると所望の抵抗値が得られない。また、これらの含有量が多すぎた場合、シリカと樹脂との分散性が悪くなるため、好ましくない。本発明において使用するかかるシリカは、市販のシリカに上記所定の導電性付与成分を外添することにより、容易に得ることができる。
【0018】
また、塗膜層3中における上記シリカの含有量が、樹脂成分100質量部に対し、20質量部未満であっても所望の抵抗値が得られず、一方、100質量部を超えると、凝集等の問題を生ずることになる。なお、本発明において、塗膜層3の抵抗値は、例えば、10〜10Ω程度に調整することができる。
【0019】
本発明の導電性ローラ10においては、ローラの最外層をなす塗膜層3中に、紫外線硬化型樹脂とともに上記シリカが含まれていることが重要であり、これにより、従来のブリード等の問題を生ずることなく所望のローラ抵抗値が得られるものである。また、塗膜層を2層以上で設ける場合には、少なくとも最外層の塗膜層中に上記紫外線硬化型樹脂およびシリカを含有させることが必要であるが、最外層以外の塗膜層についても、最外層と同様の構成とすることが好ましい。
【0020】
本発明において塗膜層3に用いる紫外線硬化型樹脂は、通常、プレポリマー、モノマー、紫外線重合開始剤および添加剤を含み、紫外光の照射により硬化する樹脂であれば特に制限はなく、公知のもののうちから適宜選択して用いることができる。具体的には例えば、ポリエステル樹脂、ポリエーテル樹脂、フッ素樹脂、エポキシ樹脂、アミノ樹脂、ポリアミド樹脂、アクリル樹脂、アクリルウレタン樹脂、ウレタン樹脂、アルキッド樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、シリコーン樹脂、ポリビニルブチラール樹脂などが挙げられ、これらの1種または2種以上を混合して用いることができる。中でも、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂またはアクリルウレタン樹脂を、好適に用いることができる。
【0021】
また、塗膜層3には、上記紫外線硬化型樹脂およびシリカの他、所望に応じ公知の添加剤を適宜添加することができる。特には、ローラの表面性を制御するために、微粒子を含有させることが好ましく、これにより、塗膜層表面に適度な微小凹凸を形成することができる。かかる微粒子としては、ゴムまたは合成樹脂からなる微粒子や、カーボンからなる微粒子、シリカ系微粒子等の無機微粒子を用いることができ、シリコーンゴム、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、ウレタンエラストマー、ポリオレフィン樹脂、エポキシ樹脂、ポリスチレン樹脂、ウレタンアクリレート、メラミン樹脂、フェノール樹脂、(メタ)アクリル系樹脂、ガラス状カーボンからなる微粒子およびシリカ微粒子が特に好ましい。これら微粒子は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を混合して用いてもよい。また、この微粒子の含有量は、塗膜層の樹脂成分100質量部に対し好適には0.1〜100質量部、より好適には5〜80質量部である。また、かかる微粒子の平均粒径は、好適には1〜50μm、より好適には3〜20μmである。
【0022】
塗膜層3の総厚みは、特に制限されるものではないが、通常1〜50μm、特には1〜40μm程度とすることができる。また、塗膜層3の表面粗さ、すなわち、ローラの表面粗さは、JIS算術平均粗さRaで、通常2μm以下、特には0.5〜1.5μmの範囲内であることが好ましい。
【0023】
また、本発明の導電性ローラの軸1としては、良好な導電性を有するものであれば特に制限はなく、いずれのものも使用し得るが、例えば、硫黄快削鋼などの鋼材にニッケルや亜鉛等のめっきを施したものや、鉄、ステンレススチール、アルミニウム等の金属製の中実体からなる芯金、内部を中空にくりぬいた金属製円筒体等の金属製シャフトを用いることができる。
【0024】
弾性層2は、ローラの用途に応じて、ゴム若しくは樹脂、またはこれらの発泡体(フォーム)で形成することができ、具体的には例えば、ポリウレタンや、シリコーンゴム、ブタジエンゴム、イソプレンゴム、クロロプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、エチレン−プロピレンゴム、ポリノルボルネンゴム、スチレン−ブタジエン−スチレンゴム、エピクロルヒドリンゴム等を基材ゴムとするゴム組成物が挙げられる。
【0025】
中でも特に、ポリウレタンを用いることが好ましく、より好ましくは、発泡倍率が1.5〜50倍のポリウレタンフォームを用いる。かかるポリウレタンフォームを形成するためのポリウレタン原料としては、樹脂中にウレタン結合を含むものであれば、特に制限はない。ポリウレタン原料を構成するポリイソシアネートとしては、芳香族イソシアネートまたはその誘導体、脂肪族イソシアネートまたはその誘導体、脂環族イソシアネートまたはその誘導体が用いられる。これらの中でも芳香族イソシアネートまたはその誘導体が好ましく、特に、トリレンジイソシアネートまたはその誘導体、ジフェニルメタンジイソシアネートまたはその誘導体が好適に用いられる。
【0026】
トリレンジイソシアネートまたはその誘導体としては、粗製トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、2,4−トリレンジイソシアネートと2,6−トリレンジイソシアネートとの混合物、これらのウレア変性物、ビュレット変性物、カルボジイミド変性物、ポリオール等で変性したウレタン変性物等が用いられる。ジフェニルメタンジイソシアネートまたはその誘導体としては、例えば、ジアミノジフェニルメタンまたはその誘導体をホスゲン化して得られたジフェニルメタンジイソシアネートまたはその誘導体が用いられる。ジアミノジフェニルメタンの誘導体としては多核体などがあり、ジアミノジフェニルメタンから得られた純ジフェニルメタンジイソシアネート、ジアミノジフェニルメタンの多核体から得られたポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアネートなどを用いることができる。ポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアネートの官能基数については、通常、純ジフェニルメタンジイソシアネートと様々な官能基数のポリメリック・ジフェニルメタンジイソシアネートとの混合物が用いられ、平均官能基数が好ましくは2.05〜4.00、より好ましくは2.50〜3.50のものが用いられる。また、これらのジフェニルメタンジイソシアネートまたはその誘導体を変性して得られた誘導体、例えば、ポリオール等で変性したウレタン変性物、ウレチジオン形成による二量体、イソシアヌレート変性物、カルボジイミド/ウレトンイミン変性物、アロハネート変性物、ウレア変性物、ビュレット変性物なども用いることができる。また、数種類のジフェニルメタンジイソシアネートやその誘導体をブレンドして用いることもできる。
【0027】
ポリウレタン原料を構成するポリオール成分としては、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオール、ポリテトラメチレンエーテルグリコール、酸成分とグリコール成分を縮合したポリエステルポリオール、カプロラクトンを開環重合したポリエステルポリオール、ポリカーボネートジオール等を用いることができる。エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオールは、例えば、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオール、トリエタノールアミン、ジグリセリン、ペンタエリスリトール、エチレンジアミン、メチルグルコジット、芳香族ジアミン、ソルビトール、ショ糖、リン酸等を出発物質とし、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドを付加重合したものを挙げることができるが、特に、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールを出発物質としたものが好適である。付加するエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの比率やミクロ構造については、エチレンオキサイドの比率が2〜95質量%であることが好ましく、より好ましくは5〜90質量%である。特に、末端にエチレンオキサイドが付加しているものが好ましく用いられる。また、分子鎖中のエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドの配列は、ランダムであることが好ましい。このポリエーテルポリオールの分子量は、水、プロピレングリコール、エチレングリコールを出発物質とする場合は2官能となり、重量平均分子量で300〜6000の範囲のものが好ましく、特には400〜3000の範囲のものが好ましい。また、グリセリン、トリメチロールプロパン、ヘキサントリオールを出発物質とする場合は3官能となり、重量平均分子量で900〜9000の範囲のものが好ましく、特に1500〜6000の範囲のものが好ましい。また、2官能のポリオールと3官能のポリオールを適宜ブレンドして用いることもできる。
【0028】
ポリテトラメチレンエーテルグリコールは、例えば、テトラヒドロフランのカチオン重合によって得られ、重量平均分子量が400〜4000のもの、特に650〜3000の範囲にあるものが好ましく用いられる。また、分子量の異なるポリテトラメチレンエーテルグリコールをブレンドすることも好ましい。更に、エチレンオキサイドやプロピレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを共重合して得られたポリテトラメチレンエーテルグリコールを用いることもできる。ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオールとをブレンドして用いることも好ましく、この場合、ポリテトラメチレンエーテルグリコールと、エチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとを付加重合したポリエーテルポリオールとの比率が重量比で95:5〜20:80の範囲になるように用いることが好ましく、特に90:10〜50:50の範囲になるように用いることが好ましい。また、上記ポリオール成分とともに、ポリオールをアクリロニトリル変性したポリマーポリオール、ポリオールにメラミンを付加したポリオール、ブタンジオール等のジオール類、トリメチロールプロパンなどのポリオール類やそれらの誘導体を併用することができる。
【0029】
また、イソシアネートをポリオールによりあらかじめプレポリマー化してもよく、その方法としては、ポリオールとイソシアネートを適当な容器に入れ、充分に攪拌し、30〜90℃、より好ましくは40〜70℃に、6〜240時間、より好ましくは24〜72時間保温する方法が挙げられる。この場合、ポリオールとポリイソシアネートとの分量の比率は、得られるプレポリマーのイソシアネート含有率が4〜30質量%となるように調節することが好ましく、より好ましくは6〜15質量%である。イソシアネートの含有率が4質量%未満であると、プレポリマーの安定性が損なわれ、貯蔵中にプレポリマーが硬化してしまい、使用に供することができなくなるおそれがある。また、イソシアネートの含有率が30質量%を超えると、プレポリマー化されていないイソシアネートの含有量が増加し、このイソシアネートは、後のポリウレタン硬化反応において用いるポリオール成分と、プレポリマー化反応を経ないワンショット製法に類似の反応機構により硬化するため、プレポリマー法を用いる効果が薄れる。イソシアネートをあらかじめポリオールによりプレポリマー化したイソシアネート成分を用いる場合のポリオール成分としては、上記ポリオール成分に加えて、エチレングリコールやブタンジオール等のジオール類、トリメチロールプロパンやソルビトール等のポリオール類やそれらの誘導体を用いることもできる。
【0030】
ポリウレタン原料には、イオン導電剤や電子導電剤等の導電剤、カーボンブラックや無機炭酸塩等の充填材、フェノールやフェニルアミン等の酸化防止剤、低摩擦化剤、電荷調整剤などを添加することができる。イオン導電剤の例としては、テトラエチルアンモニウム、テトラブチルアンモニウム、ドデシルトリメチルアンモニウム(例えば、ラウリルトリメチルアンモニウム)、ヘキサデシルトリメチルアンモニウム、オクタデシルトリメチルアンモニウム(例えば、ステアリルトリメチルアンモニウム)、ベンジルトリメチルアンモニウム、変性脂肪酸ジメチルエチルアンモニウムなどの過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、硫酸塩、エチル硫酸塩、カルボン酸塩、スルホン酸塩などのアンモニウム塩、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウムなどのアルカリ金属やアルカリ土類金属の過塩素酸塩、塩素酸塩、塩酸塩、臭素酸塩、ヨウ素酸塩、ホウフッ化水素酸塩、トリフルオロメチル硫酸塩、スルホン酸塩などが挙げられる。また、電子導電剤の例としては、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等の導電性カーボン;SAF、ISAF、HAF、FEF、GPF、SRF、FT、MT等のゴム用カーボン;酸化処理を施したインク用カーボン、熱分解カーボン、天然グラファイト、人造グラファイト;酸化スズ、酸化チタン、酸化亜鉛等の導電性金属酸化物;ニッケル、銅、銀、ゲルマニウム等の金属などを挙げることができる。これらの導電剤は単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。その配合量には特に制限はなく、所望に応じ適宜選定可能であるが、通常は、ポリウレタン原料100質量部に対し、0.1〜40質量部、好ましくは0.3〜20質量部の割合であり、これにより、弾性層2の抵抗値を、例えば、10〜10Ω程度に調整することができる。
【0031】
ポリウレタン原料の硬化反応に用いる触媒としては、トリエチルアミン、ジメチルシクロヘキシルアミン等のモノアミン類、テトラメチルエチレンジアミン、テトラメチルプロパンジアミン、テトラメチルヘキサンジアミン等のジアミン類、ペンタメチルジエチレントリアミン、ペンタメチルジプロピレントリアミン、テトラメチルグアニジン等のトリアミン類、トリエチレンジアミン、ジメチルピペラジン、メチルエチルピペラジン、メチルモルホリン、ジメチルアミノエチルモルホリン、ジメチルイミダゾール等の環状アミン類、ジメチルアミノエタノール、ジメチルアミノエトキシエタノール、トリメチルアミノエチルエタノールアミン、メチルヒドロキシエチルピペラジン、ヒドロキシエチルモルホリン等のアルコールアミン類、ビス(ジメチルアミノエチル)エーテル、エチレングリコールビス(ジメチル)アミノプロピルエーテル等のエーテルアミン類、スタナスオクトエート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫マーカプチド、ジブチル錫チオカルボキシレート、ジブチル錫ジマレエート、ジオクチル錫マーカプチド、ジオクチル錫チオカルボキシレート、フェニル水銀プロピオン酸塩、オクテン酸鉛等の有機金属化合物などが挙げられる。これらの触媒は単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0032】
本発明においては、ポリウレタン原料にシリコーン整泡剤や各種界面活性剤を配合することが、フォーム材のセルを安定させるために好ましい。シリコーン整泡剤としては、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合物等が好適に用いられ、分子量350〜15000のジメチルポリシロキサン部分と分子量200〜4000のポリオキシアルキレン部分とからなるものが特に好ましい。ポリオキシアルキレン部分の分子構造は、エチレンオキサイドの付加重合物やエチレンオキサイドとプロピレンオキサイドとの共付加重合物が好ましく、その分子末端をエチレンオキサイドとすることも好ましい。界面活性剤としては、カチオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、両性等のイオン系界面活性剤や各種ポリエーテル、各種ポリエステル等のノニオン性界面活性剤が挙げられる。シリコーン整泡剤や各種界面活性剤の配合量は、ポリウレタン原料100質量部に対して0.1〜10質量部とすることが好ましく、0.5〜5質量部とすることが更に好ましい。
【0033】
本発明で用いるポリウレタンフォームは、密度が0.2〜0.8g/cmであることが好ましく、より好ましくは0.3〜0.6g/cmである。また、ポリウレタンフォームのアスカーC硬度は20〜65°が好ましく、より好ましくは25〜45°である。
【0034】
また、本発明において、ポリウレタン原料をあらかじめ発泡させるための方法としては、従来から用いられているメカニカルフロス法、水発泡法、発泡剤フロス法等の方法を用いることができるが、特には、不活性ガスを混入しながら機械的攪拌により発泡させるメカニカルフロス法を用いることが好ましい。ここで、メカニカルフロス法において用いる不活性ガスは、ポリウレタン反応において不活性なガスであればよく、ヘリウム、アルゴン、キセノン、ラドン、クリプトン等の狭義の不活性ガスの他、窒素、二酸化炭素、乾燥空気等のポリウレタン原料と反応しない気体が挙げられる。発泡させたポリウレタン原料を金属モールド等に注型し、硬化させることにより、金属モールドに接した部分に自己スキン層(薄い層状の皮膜)が形成されたポリウレタンフォームを得ることができる。その際、金属モールドの内面をフッ素樹脂等でコーティングする等の方法により、金属モールドに離型性を付与することができる。
【0035】
本発明の導電性ローラを製造するに際して、弾性層2の成形条件については特に制限はなく、通常の条件に従うことができ、例えば、15〜80℃、好ましくは20〜65℃の範囲の温度においてポリウレタン原料の発泡を開始させ、軸1を配置した金属モールド内に注入完了後、70〜120℃程度の温度でキュアを行い、次いで、脱型することにより、弾性層2を得ることができる。また、塗膜層3は、上記紫外線硬化型樹脂およびシリカを含む塗工液を調製して、この塗工液をディップ塗布、スプレー塗布、ロールコーター塗布などの公知の手法を用いて弾性層2の外周面に塗布し、乾燥させた後、紫外線照射により硬化(架橋)させることにより形成することができる。
【0036】
本発明の導電性ローラは、特に制限されるものではなく、電子写真方式の画像形成装置における現像ローラ、帯電ローラ、転写ローラ(トナー供給ローラ、クリーニングローラ)等の各種ローラ部材として好適に用いることができ、特には、現像ローラまたは帯電ローラとして有用である。本発明のローラの抵抗値は、上記弾性層および塗膜層の各抵抗値の調整により、10〜10Ω、特には10〜10Ωの範囲内とすることができる。
【実施例】
【0037】
以下、本発明を、実施例を用いてより詳細に説明する。
図1に断面図を示すような、軸1と、その外周に担持された弾性層2と、その外周面に形成された1層の塗膜層3と、を備える現像ローラとしての導電性ローラ10を、塗膜層3の配合のみを下記表1に示すようにそれぞれ変えて作製した。
【0038】
まず、芯金1(φ8mm、長さ260mm、材質:硫黄快削鋼)の外周に、メカニカルフロス法によりポリウレタンフォームを担持させた。
【0039】
具体的には、イソシアネート成分(プレポリマー化イソシアネートTDI+ポリエーテルポリオール)100質量部と、ポリオール成分(ポリエーテルポリオール)20質量部と、カーボンブラック(アセチレンブラック)2質量部と、イオン導電剤(過塩素酸ナトリウム)0.2質量部とからなるポリウレタン原料を調製し、このポリウレタン原料をミキサーにより機械的に攪拌して乾燥空気を混入して、発泡させた。この発泡ポリウレタン原料を、端部にシャフトを貫通させるための穴が設けられ、かつ、シャフトを支持するための金属製キャップが設置されている金属製円筒状割りモールドに注型した。このモールドの内部には、前記芯金1を、外周に接着剤を塗布した状態で配置した。次いで、発泡ポリウレタン原料が注型されたモールドを110℃に調整した熱風オーブン中に1時間放置し、発泡ポリウレタン原料を硬化させた。
【0040】
硬化したポリウレタンフォームをモールドから取り外して、下記表1にそれぞれ示す配合にて調製した塗工液をディップ塗布することにより、その外周に、膜厚15μmの塗膜層3を形成した。これにより、ローラ本体部がφ16mm、長さ240mmである現像ローラを作製した。得られたローラの表面粗さはJIS算術平均粗さRaで1.1μmであった。
【0041】
<表面硬度>
各供試ローラの表面硬度を、マイクロゴム硬度計MD−1(高分子計器社製)を用いて測定した。ローラ硬度は、40〜65°であれば問題なく良好である。
【0042】
<ローラ抵抗>
各供試ローラの軸体に1kgの荷重が掛かるようにSUS製の板に圧着した状態で、軸体とSUS板との間に300Vの電圧を印加することにより、ローラ抵抗を測定した。ローラ抵抗は、現像ローラとしての性能を確保する観点からは、10〜10Ω程度であれば問題なく良好である。
【0043】
<感光体汚染>
各供試ローラを感光体ドラム(OPC)に1kgの荷重で押し付け、40℃×95%RHの高温高湿下で放置した。所定期間(1週間)後に取り出し、各ローラを実機に組み付けて画像出しし、ローラと接触部の画像を下記基準にて判定した。
○:感光ドラムの汚染が見られなかったもの
△:感光ドラムの汚染が若干見られたもの
×:ブリードして感光ドラムの汚染が見られたもの
【0044】
これらの結果を、下記の表1中に併せて示す。
【0045】
【表1】

*1)UV3000B:アクリルウレタン樹脂(日本合成化学(株)製)
*2)TMP−3:EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート(日本合成科学(株)製)
*3)ウレタン粒子:アートパールC800(根上工業(株)製),平均粒径10μm
*4)光開始剤:ダロキュア−1173(チバスペシャリティーケミカルズ(株)製)
*5)イオン導電剤:MP100(四級アンモニウム塩)
*6)カーボンブラック:アセチレンブラック
【0046】
上記表1に示すように、塗膜層に、紫外線硬化型樹脂とともに、導電剤として本発明に係る特定のシリカを含有させた各実施例のローラにおいては、感光体汚染の問題を生ずることなく、所望のローラ抵抗が得られていることが確かめられた。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施の形態に係る導電性ローラを示す幅方向断面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 軸
2 弾性層
3 塗膜層
10 導電性ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸と、該軸の外周に担持された弾性層と、該弾性層の外周面に形成された少なくとも1層の塗膜層と、を備える導電性ローラにおいて、
前記塗膜層のうち少なくとも最外層の塗膜層が、樹脂成分としての紫外線硬化型樹脂と、下記(1)および(2)、
(1)NaOの含有量が1質量%以上、
(2)A1の含有量が1質量%以上、
のうちのいずれか一方または双方の条件を満足するシリカと、を含み、かつ、該シリカの含有量が、樹脂成分100質量部に対し20〜100質量部の範囲内であることを特徴とする導電性ローラ。
【請求項2】
前記紫外線硬化型樹脂が、ポリエステル骨格を有するウレタン樹脂またはアクリルウレタン樹脂からなる請求項1記載の導電性ローラ。
【請求項3】
前記シリカが、下記(3)および(4)、
(3)NaOの含有量が5〜20質量%、
(4)A1の含有量が5〜20質量%、
のうちのいずれか一方または双方の条件を満足する請求項1または2記載の導電性ローラ。
【請求項4】
前記弾性層が発泡体からなる請求項1〜3のうちいずれか一項記載の導電性ローラ。
【請求項5】
前記発泡体が、ウレタン原料を機械的撹拌により発泡させてなるウレタンフォームである請求項4記載の導電性ローラ。

【図1】
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【公開番号】特開2009−25418(P2009−25418A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−186309(P2007−186309)
【出願日】平成19年7月17日(2007.7.17)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】