説明

導電性塗料の静電塗装装置

【課題】塗装時における電流リークの発生を抑制し、ひいては、絶縁分離バルブに対するエアブローの簡素化と時間短縮を実現可能にする。
【解決手段】塗料供給路を印加側と非印加側とに電気的に絶縁分離し得る絶縁分離バルブ32は、一方の結合部となる凹部52と共に凹部52の底面52aに塗料供給路の接続部となる接続部54を有する雌型結合部材32Uと、凹部52に結合する他方の結合部となる凸部62を有すると共に凸部62の先端に接続部54に接続される流路の接続部となる接続部64を有する雄型結合部材32Dとからなる。雌型結合部材32Uは、非印加側に設けられ、凹部の底面52a又はその近傍に、接続部54及び接続部64に洗浄用流体を供給する洗浄用流体供給孔55aと、その洗浄用流体を排出する洗浄用流体排出孔56aと、を備える。雄型結合部材32Dは、印加側に設けられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導電性塗料に高電圧を印加して塗装を行う静電塗装装置に関する。詳しくは、塗料供給路を高電圧が印加される印加側とそれ以外の非印加側とに電気的に絶縁分離し得る絶縁分離バルブを備える導電性塗料の静電塗装装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、自動車のボディ等を塗装する塗装装置として、例えば導電性塗料の静電塗装装置が知られている。導電性塗料の静電塗装装置では、塗装ガンに供給された導電性塗料に高電圧が印加されるので、塗装ガンに対して塗料を供給する塗料供給路から、電流をリーク(漏洩)させない必要がある。このため、塗料供給路を一時的に分断して電気的な絶縁状態を形成するための絶縁分離バルブが、塗料供給路中に設けられている(例えば特許文献1参照)。
すなわち、静電塗装時においては、絶縁分離バルブは、塗料供給路を、高電圧が印加される印加側とそれ以外の非印加側とに電気的に絶縁分離する。これにより、塗装時の電流のリークが防止される。一方、塗装ガンへの塗料供給時には、絶縁分離バルブを含む塗料供給路が接続される。これにより、塗料の供給が可能となる。
【0003】
また、塗料供給時と静電塗装時との間の適当なタイミングで、絶縁分離バルブに残留した塗料を除去すべく、洗浄用流体が絶縁分離バルブに供給されて、絶縁分離バルブが洗浄される。その後、その洗浄用流体を乾かすために、絶縁分離バルブに対してエアブローが行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−257443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、従来の静電塗装装置では、入念なエアブローを行わないと、洗浄用流体が印加側に残留するおそれがあった。印加側に残留した洗浄用流体は、その後の塗装時において電流のリークを引き起こす要因となる。このため、エアブローに多大な時間を要している現状である。
【0006】
本発明は、導電性塗料の塗装時における電流リークの発生を抑制し、ひいては、絶縁分離バルブに対するエアブローの簡素化と時間短縮を実現可能にする静電塗装装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の静電塗装装置(例えば実施形態における静電塗装装置1)は、高電圧が印加される塗装ガン(例えば実施形態における塗装ガン13)に塗料供給路(例えば実施形態における塗料供給路11)を介して導電性塗料を供給する導電性塗料の静電塗装装置であって、前記塗料供給路を前記高電圧が印加される印加側とそれ以外の非印加側とに電気的に絶縁分離し得る絶縁分離バルブ(例えば実施形態における絶縁分離バルブ32)を備えるものにおいて、前記絶縁分離バルブは、一方の結合部となる凹部(例えば実施形態における凹部52)を有すると共に、前記凹部の底面(例えば実施形態における底面52a)に、前記塗料供給路の接続部となる第1接続部(例えば実施形態における接続部54)を有する雌型結合部材(例えば実施形態における雌型結合部材32U)と、前記凹部に結合する他の結合部となる凸部(例えば実施形態における凸部62)を有すると共に、前記凸部の先端に、前記第1接続部に接続される流路の接続部となる第2接続部(例えば実施形態における接続部64)を有する雄型結合部材(例えば実施形態における雄型結合部材32D)と、からなり、前記雌型結合部材及び前記雄型結合部材の何れか一方の結合部材は、前記非印加側に設けられると共に、前記第1接続部と前記第2接続部とが接続状態の位置から所定距離だけ離れているときに前記第1接続部及び前記第2接続部に洗浄用流体を供給する供給孔(例えば実施形態における洗浄用流体供給孔55a)と、前記第1接続部及び前記第2接続部に供給された洗浄用流体を排出する排出孔(例えば実施形態における洗浄用流体排出孔56a)と、を備え、他方の結合部材は、前記印加側に設けられることを特徴とする。
【0008】
この発明によれば、絶縁分離バルブを構成する雌型結合部材と雄型結合部材とのうち、非印加側の結合部材に、洗浄用流体を供給する供給孔と洗浄用流体を排出する排出孔とを設けた。その結果、洗浄用流体が流れる経路は、非印加側の結合部材内に形成され、印加側の結合部材内には形成されない。このため、導電性の洗浄用流体が非印加側の経路内に残留していたとしても、印加側に浸入することは無い。よって、塗装ガンから電流がリークするおそれがなくなる。さらに、電流のリークを考慮しなくてよいので、洗浄用流体を排出側に押し出す程度の簡易なエアブローを行えば足り、結果として、エアブローの時間も短縮される。
【0009】
この場合、前記雄型結合部材又は前記雌型結合部材は、前記凸部の外周部又は前記凹部の内周部に、前記雌型結合部材の前記凹部の内周面又は前記雌型結合部材の前記凸部の外周面に嵌合するシール部材(例えば実施形態におけるシール部材65やシール部材201)をさらに備え、前記雌型結合部材又は前記雄型結合部材の少なくとも一方を移動させて、前記シール部材が前記内周面又は前記外周面に嵌合する範囲で前記第1接続部と前記第2接続部との接続状態の位置から前記所定距離(例えば実施形態におけるd=0.5mm)だけ離れた位置で停止させることが可能な分離手段(例えば実施形態における可動体18とエアシリンダ19とからなる分離機構、又は、分離機構100)をさらに備えることが好ましい。
【0010】
この発明によれば、雄型結合部材にシール部材を設け、雌型結合部材の凹部の内周面にシール部材が嵌合されている範囲で第1接続部と第2接続部とを一定の距離だけ離間させた状態で、絶縁分離バルブを洗浄することを可能とした。これにより、第1接続部と第2接続部との接続面全体の洗浄が可能となり、その結果、色混じりによる品質不良の発生を抑止することができる。また、残留の導電性塗料が印加側に付着すること等もなくなるので、塗装ガンから電流がリークするおそれがなくなる。
【0011】
この場合、前記洗浄用流体は脱イオン水であることが好ましい。
【0012】
この発明によれば、カルシウムやマグネシウム等の硬度成分を残存させることなく洗浄することが可能となる。
【0013】
この場合、前記雄型結合部材は、前記第1接続部と前記第2接続部とが接続されているときに、前記雌型結合部材の前記凹部が形成された部分を外側から覆う形状のガイド部(例えば実施形態におけるガイド部61a)をさらに備えることが好ましい。
【0014】
この発明によれば、このガイド部により、雌型結合部材と雄型結合部材との結合状態の維持を補助することが可能になる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、絶縁分離バルブを洗浄する洗浄用流体が流れる経路は、絶縁分離バルブのうち非印加側に形成されて印加側には形成されない。このため、導電性の洗浄用流体が非印加側の経路内に残留していたとしても、印加側に浸入することは無い。したがって、塗装ガンから電流がリークするおそれがなくなる。さらに、電流のリークを考慮しなくてよいので、洗浄用流体を排出側に押し出す程度の簡易なエアブローを行えば足り、結果として、エアブローの時間も短縮される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1実施形態に係る静電塗装装置の概略構成を示す模式図である。
【図2】前記第1実施形態に係る静電塗装装置の絶縁分離バルブの構成を示す縦断面図である。
【図3】前記第1実施形態に係る静電塗装装置の絶縁分離バルブの構成を示す縦断面図である。
【図4】前記第1実施形態に係る静電塗装装置の絶縁分離バルブの構成を示す縦断面図である。
【図5】前記第1実施形態に係る静電塗装装置の絶縁分離バルブの構成を示す縦断面図である。
【図6】本発明の第2実施形態の静電塗装装置のうち、分離機構と絶縁分離バルブとの周辺の概略構成を示す縦断面図である。
【図7】本発明の第2実施形態の静電塗装装置のうち、分離機構と絶縁分離バルブとの周辺の概略構成を示す縦断面図である。
【図8】本発明の第2実施形態の静電塗装装置のうち、分離機構と絶縁分離バルブとの周辺の概略構成を示す縦断面図である。
【図9】本発明の第3実施形態に係る静電塗装装置の絶縁分離バルブの構成を示す縦断面図である。
【図10】本発明の第4実施形態に係る静電塗装装置の絶縁分離バルブの構成を示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本発明の第1実施形態に係る静電塗装装置1の概略構成を示す模式図である。
静電塗装装置1は、被塗物を静電塗装するものである。被塗物として、例えば自動車のボディ等を採用することができる。
【0018】
静電塗装装置1は、塗料供給路11と、中間貯留槽12と、ベル型の塗装ガン13と、ラム14と、サーボモータ15と、トリガバルブ16と、ダンプバルブ17と、可動体18と、エアシリンダ19と、洗浄用流体供給開閉弁20と、洗浄用流体排出開閉弁21と、を備える。
【0019】
カラーチェンジバルブCVは、弁CV1と弁CV2とを備えている。弁CV1に連なる弁SV1は、色替え時等に用いられるエア(A)と洗浄用流体(W)の供給を制御する。弁CV1は、弁SV1からのエア又は洗浄用流体の供給を制御する。弁CV2は、図示せぬ複数の塗料タンクにそれぞれ接続されており、接続された燃料タンクからの導電性塗料(以下、塗料と適宜略称する)の供給を制御する。図示せぬ制御手段からの制御信号により、弁SV1、弁CV1、及び弁CV2のそれぞれの開閉が制御され、目的とする塗料、エア、又は洗浄用流体が塗料供給路11へ圧送される。
【0020】
例えば、所定の塗料タンクに貯蔵された塗料は、カラーチェンジバルブCVを介して塗料供給路11に圧送される。この塗料は、さらに、塗料供給路11を介して中間貯留槽12に圧送されて蓄積される。中間貯留槽12に蓄積された塗料は、トリガバルブ16を介して、塗装ガン13の先端に供給される。
塗装ガン13は、塗料をその先端から噴霧する。詳細には、塗装ガン13には、高電圧が印加された状態で塗料が供給される。これにより、静電塗装装置1は、塗料を帯電させて霧化し、塗装ガン13の先端から噴霧することで、静電塗装を行うことができる。
塗装ガン13は、上下左右に自在に往復動可能なラム14に固定されている。したがって、被塗物の形状に応じてラム14を上下左右に往復動させることにより、塗装ガン13の先端と被塗物との間隔をほぼ一定に維持させることができる。
【0021】
塗料供給路11には、塗料ホース31、絶縁分離バルブ32、及び塗料ホース33が設けられている。
絶縁分離バルブ32は、可動体18に固定されている雌型結合部材32Uと、塗装ガン13に固定されている雄型結合部材32Dとを備えている。可動体18は、ラム14に固定されたエアシリンダ19によって上下動される。したがって、可動体18が下動すると、雌型結合部材32Uが雄型結合部材32Dに接合する。また、可動体18が上動すると、雌型結合部材32Uが雄型結合部材32Dから分離する。
【0022】
サーボモータ15は、中間貯留槽12に設けられるピストン41の位置を精密制御する。サーボモータ15の制御によりピストン41が前進すると、すなわち図1中塗装ガン13の先端に近づく方向に移動すると、中間貯留槽12内に蓄積された塗料は、トリガバルブ16を介して塗装ガン13へ圧送される。また、サーボモータ15の制御によりピストン41が後進すると、すなわち図1中塗装ガン13の先端から離れる方向に移動すると、塗料が、絶縁分離バルブ32から塗料ホース33を介して吸引され、中間貯留槽12に蓄積されていく。
【0023】
トリガバルブ16は、中間貯留槽12から塗装ガン13への塗料の供給を制御する。ダンプバルブ17は、色替え時等における塗料の廃液の排出を制御する。洗浄弁SV3は、塗装ガン13の洗浄時に用いられるエア(A)と洗浄用流体(W)の供給を制御する。トリガバルブ16、ダンプバルブ17、及び洗浄弁SV3のそれぞれは、図示せぬ制御手段からの制御信号により開閉が制御される。
【0024】
洗浄弁SV2は、絶縁分離バルブ32の洗浄時に用いられるエア(A)と洗浄用流体(W)の供給を制御する。洗浄用流体供給開閉弁20は、エア又は洗浄用流体の洗浄弁SV2から雌型結合部材32Uへの供給を制御する。洗浄用流体排出開閉弁21は、雌型結合部材32Uからのエア又は洗浄用流体の排出を制御する。図示せぬ制御手段からの制御信号により、洗浄弁SV2、洗浄用流体供給開閉弁20、及び洗浄用流体排出開閉弁21のそれぞれの開閉が制御される。これにより、洗浄用流体又はエアが、洗浄弁SV2、洗浄用流体供給開閉弁20、絶縁分離バルブ32の雌型結合部材32U、及び洗浄用流体排出開閉弁21の順番で伝送されていく。
【0025】
図2は、静電塗装装置1の絶縁分離バルブ32の構成を示す縦断面図である。
なお、絶縁分離バルブ32を構成する各部材については、雌型結合部材32Uと雄型結合部材32Dとが結合される側の端を、先端と称し、その反対側の端を、基端と称する。
【0026】
絶縁分離バルブ32の雌型結合部材32Uは、バルブボディ51と、凹部52と、塗料供給通路53と、接続部54と、洗浄用流体供給部材55と、洗浄用流体排出部材56と、を備える。
【0027】
可動体18(図1)に固定されたバルブボディ51の先端には、凹部52が設けられている。凹部52は、雄型結合部材32Dの凸部62と結合する結合部として機能する。
バルブボディ51の中央内部から凹部52の底面52aまでを貫通するように、塗料供給通路53が形成されている。
凹部52の底面52aに設けられた接続部54は、凹部52と凸部62とが結合した場合に雄型結合部材32Dの接続部64と係合し、その結果、塗料供給通路53を、雄型結合部材32Dの塗料供給通路63に接続させる。
バルブボディ51の図2中右側面には、洗浄用流体供給部材55が配設されている。洗浄用流体供給部材55の中央内部から凹部52の底面52aまでを貫通するように、洗浄用流体供給孔55aが形成されている。また、バルブボディ51の同図中左側側面には、洗浄用流体排出部材56が配設されている。洗浄用流体排出部材56の中央内部から凹部52の底面52aまでを貫通するように、洗浄用流体排出孔56aが形成されている。
したがって、洗浄用流体供給開閉弁20(図1)からのエア又は洗浄用流体は、洗浄用流体供給孔55aを介して絶縁分離バルブ32に供給される。また、供給されたエア又は洗浄用流体は、洗浄用流体排出孔56aを介して洗浄用流体排出開閉弁21(図1)へ排出される。
【0028】
一方、絶縁分離バルブ32の雄型結合部材32Dは、バルブボディ61と、凸部62と、塗料供給通路63と、接続部64と、シール部材65と、を備える。
【0029】
塗装ガン13(図1)に固定されたバルブボディ61の先端には、凸部62が設けられている。凸部62は、雌型結合部材32Uの凹部52と結合する結合部として機能する。
バルブボディ61の中央内部から凸部62の上面62aまでを貫通するように、塗料供給通路63が形成されている。
凸部62の上面62aのうち、凹部52と凸部62とが結合した場合に雌型結合部材32Uの接続部54と係合する領域が、接続部64として設けられている。なお、接続部64は、このように本実施の形態では、凸部62の上面62aの一部の領域として形成されているが、凸部62とは独立した部材により構成することも可能である。接続部64は、雌型結合部材32Uの接続部54と係合することで、塗料供給通路63を、雌型結合部材32Uの塗料供給通路53に接続させる。
シール部材65は、接続部54と接続部64とが一定距離だけ離間した状態で凹部52の内周面に嵌合するように、凸部62の外周部に設けられている。
【0030】
なお、バルブボディ61の先端に形成されたガイド部61aは、凹部52と凸部62とが結合した場合に、すなわち、接続部54と接続部64とが接続した場合に、凹部52が形成された部分を外部から覆う形状を有している。これにより、雌型結合部材32Uと雄型結合部材32Dとの結合状態の維持を補助することができる。
【0031】
次に、以上の第1実施形態の静電塗装装置1の動作について説明する。
特に絶縁分離バルブ32周辺の動作については、図2乃至図5を参照して説明する。
図3乃至図5は、図2と同様に、静電塗装装置1の絶縁分離バルブ32の構成を示す縦断面図である。ただし、図2乃至図5のそれぞれにおいては、雌型結合部材32Uがそれぞれ異なる位置に配置されている。図2乃至図5の順に、雌型結合部材32Uが雄型結合部材32Dに接近していく様子を示すためである。
【0032】
静電塗装に先がけて、先ず、塗料が中間貯留槽12へ供給されて蓄積される。
具体的には、エアシリンダ19によって可動体18が下動していくのに応じて、絶縁分離バルブ32の雌型結合部材32Uが、図2乃至図4の順で示されるように、雄型結合部材32Dに接近していくように下動していく。
最終的には、図5に示されるように、雌型結合部材32Uが雄型結合部材32Dに接合する。すなわち、雌型結合部材32Uの凹部52と雄型結合部材32Dの凸部62とが結合し、その結果、雌型結合部材32Uの接続部54と雄型結合部材32Dの接続部64とが係合する。これにより、雌型結合部材32Uの塗料供給通路53と雄型結合部材32Dの塗料供給通路63とが接続される。すなわち、カラーチェンジバルブCVから中間貯留槽12を結ぶ塗料供給路11が接続される。
このような状態で、カラーチェンジバルブCVによって目的とする塗料が選択されると、選択された塗料は、塗料ホース31、絶縁分離バルブ32、及び塗料ホース33を介して、中間貯留槽12に圧送されて蓄積されていく。
【0033】
所定量の塗料が中間貯留槽12に蓄積されると、エアシリンダ19によって可動体18が上動し、それに応じて、絶縁分離バルブ32の雌型結合部材32Uが図4の状態となるまで上動する。図4の状態とは、雄型結合部材32Dのシール部材65が雌型結合部材32Uの凹部52の内周面に嵌合する範囲内で、雌型結合部材32Uの接続部54と雄型結合部材32Dの接続部64とが所定距離(例えば0.5mm)だけ離間している状態をいう。
【0034】
図4の状態においては、雌型結合部材32Uの凹部52と雄型結合部材32Dの凸部62とにより囲まれた空間(以下、洗浄空間と称する)内に、塗料が残留していることがある。そこで、この塗料を除去すべく、次のようにして、洗浄空間内が洗浄される。
すなわち、洗浄弁SV2から洗浄用流体(W)が、洗浄用流体供給開閉弁20を介して、絶縁分離バルブ32の雌型結合部材32Uに供給される。この洗浄用流体は、洗浄用流体供給孔55aを介して洗浄空間に供給されて、洗浄空間内の洗浄に利用される。
このように、本実施形態では、雌型結合部材32Uの接続部54と雄型結合部材32Dの接続部64とが所定距離(例えば0.5mm)だけ離間した状態で洗浄が行われるので、接続部54と接続部64との全体の洗浄が可能になる。その結果、塗料もほぼ除去されるので、その後色替え等が行われたとしても、色混じりによる品質不良の発生を抑止することができる。
洗浄に用いられた洗浄用流体は、洗浄空間内に残留していた塗料と共に、雌型結合部材32Uの洗浄用流体排出孔56aを介して洗浄用流体排出開閉弁21へ排出される。
【0035】
なお、絶縁分離バルブ32を洗浄するための洗浄用流体の種類は、特に限定されない。例えば本実施の形態では、脱イオン水が洗浄用流体として採用されている。カルシウムやマグネシウム等の硬度成分を残存させることなく洗浄することが可能となり、シール部材65等のシール性を維持できるからである。逆に、硬水は、乾燥後に硬度成分が残存し易いことからシール性の低下が懸念されるため、洗浄用流体としては不適である。
【0036】
絶縁分離バルブ32の洗浄が終了すると、その洗浄用流体を乾かすためにエアブローが行われる。
すなわち、図4の状態のまま、洗浄弁SV2からエア(A)が、洗浄用流体供給開閉弁20を介して、絶縁分離バルブ32の雌型結合部材32Uに供給される。このエアは、洗浄用流体供給孔55aを介して洗浄空間内に供給されて、雌型結合部材32Uの洗浄用流体排出孔56aを介して洗浄用流体排出開閉弁21へ排出される。
【0037】
エアブローが終了すると、静電塗装の前処理として、絶縁分離バルブ32は、塗料供給路11を印加側と非印加側とに電気的に絶縁分離する。
具体的には、エアシリンダ19によって可動体18が上動していくのに応じて、絶縁分離バルブ32の雌型結合部材32Uが、図4,図3,図2の順で示されるように、雄型結合部材32Dから遠ざかるように上動していく。
最終的には、図2に示されるように、雌型結合部材32Uの接続部54と雄型結合部材32Dの接続部64とが一定距離(例えば180mm以上)だけ離間した状態で、雌型結合部材32Uと雄型結合部材32Dとが保持される。これにより、電気的な絶縁が保たれることになる。
【0038】
このようにして電気的な絶縁が保たれた状態で、静電塗装が行われる。
すなわち、電源の電圧が昇圧されて、塗装ガン13に高電圧が印加される。そして、塗料が、中間貯留槽12からトリガバルブ16を介して塗装ガン13の先端に供給される。すると、この塗料は、高電圧が印加されて帯電し、塗装ガン13の先端から噴霧される。これにより、静電塗装が行われる。
【0039】
静電塗装が行われている間、絶縁分離バルブ32のうち、雄型結合部材32Dには高電圧が印加されているのに対して、電気的な絶縁が保たれている雌型結合部材32Uには、高電圧は印加されない。すなわち、本実施形態では、雄型結合部材32Dが印加側に設けられており、雌型結合部材32Uが非印加側に設けられている。洗浄用流体が流れる経路(以下、洗浄経路と称する)は、上述のごとく、非印加側の雌型結合部材32U内に形成されており、印加側の雄型結合部材32D内には形成されていない。このため、導電性の洗浄用流体が非印加側の洗浄経路内に残留していたとしても、印加側に浸入することは無い。したがって、塗装ガン13から電流がリークするおそれはない。
このように、本実施形態では電流のリークを考慮しなくてよいので、洗浄用流体を排出側(図1の例では洗浄用流体排出開閉弁21側)に押し出す程度の簡易なエアブローを行えば足り、その結果、エアブローの時間が短縮される。なお、洗浄用流体を排出側に押し出す程度のエアブローが必要な理由は、その程度の押し出しをしないと、電気的な絶縁をする目的で雌型結合部材32Uが雄型結合部材32Dから分離するときに、洗浄用流体が引き戻されて、印加側の雄型結合部材32Dに付着してしまうおそれがあるからである。すなわち、このような状態のまま静電塗装が行われると、雄型結合部材32Dに付着した洗浄用流体により、電流がリークするおそれがあるからである。
【0040】
以上、本発明が適用される静電塗装装置として、第1実施形態の静電塗装装置1について説明した。しかしながら、本発明は、第1実施形態に限定されるものではなく、様々な実施形態を取ることが可能である。
【0041】
例えば、絶縁分離バルブ32の雌型結合部材32Uと雄型結合部材32Dとを分離させる分離機構として、第1実施形態では、可動体18とエアシリンダ19とからなる分離機構が採用されていた。
しかしながら、分離機構の構成は、第1実施形態の構成に特に限定されず、雌型結合部材32Uと雄型結合部材32Dとを、次の第1乃至第3の位置の各位置で保持させ得る構成であれば足りる。
第1の位置とは、塗料が中間貯留槽12へ供給される場合に取られる位置であって、雄型結合部材32Dの凸部62と雌型結合部材32Uの凹部52とが結合する位置である。なお、以下、第1の位置を、結合位置と称する。例えば第1実施形態では、図5が、雌型結合部材32Uと雄型結合部材32Dとが結合位置に保持されている状態を示している。
第2の位置とは、絶縁分離バルブ32が洗浄される場合に取られる位置であって、雄型結合部材32Dのシール部材65が雌型結合部材32Uの凹部52の内周面に嵌合する状態で、雌型結合部材32Uの接続部54と雄型結合部材32Dの接続部64とが所定距離(例えば0.05mm)だけ離間している位置である。なお、以下、第2の位置を、洗浄位置と称する。例えば第1実施形態では、図4が、雌型結合部材32Uと雄型結合部材32Dとが洗浄位置に保持されている状態を示している。
第3の位置とは、静電塗装が行われている場合に取られる位置であって、雌型結合部材32Uの接続部54と雄型結合部材32Dの接続部64との間の距離が、塗装ガン13に高電圧が印加された状態で電気的な絶縁を保つことが可能な所定距離(例えば180mm以上)となっている位置である。なお、以下、第3の位置を、分離位置と称する。例えば第1実施形態では、図2が、雌型結合部材32Uと雄型結合部材32Dとが分離位置に保持されている状態を示している。
【0042】
以下、第1実施形態とは異なる分離機構を備える実施形態を、本発明の第2実施形態として、その説明をしていく。
図6乃至図8は、本発明の第2実施形態の静電塗装装置のうち、分離機構100と絶縁分離バルブ32との周辺の概略構成を示す縦断面図である。
ただし、図6は、絶縁分離バルブ32の雌型結合部材32Uと雄型結合部材32Dとが分離位置に保持されている状態を示している。図7は、雌型結合部材32Uと雄型結合部材32Dとが洗浄位置に保持されている状態を示している。図8は、雌型結合部材32Uと雄型結合部材32Dとが結合位置に保持されている状態を示している。
【0043】
図6乃至図8において、図1乃至図5と対応する箇所には同一の符号を付してあり、それらの説明については適宜省略する。なお、図6乃至図8と、図2乃至図5とでは視点の方向が異なるために、図6乃至図8には、洗浄用流体供給部材55と洗浄用流体排出部材56とが図示されていない。ただし、第2実施形態の雌型結合部材32Uにも、第1実施形態と同様に、洗浄用流体供給部材55と洗浄用流体排出部材56とはそれぞれ配設されている。
【0044】
分離機構100は、主シリンダ111と、主ロッド112と、洗浄位置用シリンダ113と、洗浄位置用ロッド114と、可動筺体115と、ストッパ116と、を備える。
主シリンダ111は、上下方向に、可動筺体115内に配設されている。主シリンダ111には、前後進可能に主ロッド112が格納されている。ただし、主ロッド112の後進方向(主シリンダ111に格納される方向)は、上方向とされている。
洗浄位置用シリンダ113は、可動筺体115内の主シリンダ111の上方に配設されている。洗浄位置用シリンダ113には、前後進可能に洗浄位置用ロッド114が格納されている。ただし、洗浄位置用ロッド114の後進方向(洗浄位置用シリンダ113に格納される方向)は、下方向とされている。
可動筺体115の底部には、主ロッド112と絶縁分離バルブ32とが対向するようにそれぞれ固着されている。したがって、主シリンダ111による主ロッド112の前後進動作に連動して、可動筺体115と雌型結合部材32Uも上下動する。
ストッパ116は、可動筺体115の上部において、洗浄位置用ロッド114と対向するように配置されている。ストッパ116は、洗浄位置用ロッド114に係止した場合には、可動筺体115の下方への移動を規制する。換言すると、ストッパ116が洗浄位置用ロッド114に係止している状態で、洗浄位置用シリンダ113により洗浄位置用ロッド114が前進(上動)すると、それに連動してストッパ116も上動し、その結果、可動筺体115も上動する。
【0045】
なお、第2実施形態の静電塗装装置のその他の構成は、図1の第1実施形態の静電塗装装置1の構成と基本的に同様であるので、図示が省略されており、それゆえ、ここではその説明は省略する。
【0046】
次に、以上の第2実施形態の静電塗装装置の動作について説明する。
ただし、第2実施形態の静電塗装装置の動作は、第1実施形態の静電塗装装置1の動作と比較すると、絶縁分離バルブ32と分離機構100の動作のみが異なり、その他の動作は一致する。そこで、以下、絶縁分離バルブ32と分離機構100の動作のみを説明する。
【0047】
先ず、塗料が中間貯留槽12へ供給されて蓄積される場合には、主シリンダ111によって主ロッド112が前身(下動)していくのに応じて、可動筺体115と雌型結合部材32Uが、雄型結合部材32Dに接近していくように下動していく。
なお、このとき、洗浄位置用ロッド114は、ストッパ116と接触しないように、洗浄位置用シリンダ113内に格納されている。
最終的には、雌型結合部材32Uの凹部52と雄型結合部材32Dの凸部62とが結合して、可動筺体115と雌型結合部材32Uの下動が停止する。これにより、図8に示されるように、雌型結合部材32Uと雄型結合部材32Dとは結合位置に保持される。
【0048】
その後、所定量の塗料が中間貯留槽12に蓄積されると、洗浄位置用シリンダ113によって洗浄位置用ロッド114が前進(上動)していく。洗浄位置用ロッド114がある程度前進(上動)すると、ストッパ116が洗浄位置用ロッド114に係止するようになる。したがって、それ以降、洗浄位置用ロッド114が前進(上動)すると、ストッパ116が固着された可動筺体115と、雌型結合部材32Uとが連動して上動する。そして、洗浄位置用ロッド114がストロークエンドまで前進(上動)して停止すると、可動筺体115と雌型結合部材32Uも停止する。
【0049】
ここで、洗浄位置用ロッド114がストロークエンドまで前進(上動)して停止した場合において、雌型結合部材32Uの接続部54と雄型結合部材32Dの接続部64とが所定距離d(例えばd=0.5mm)だけ離間するように、洗浄位置用シリンダ113の設置位置や洗浄位置用ロッド114のストロークエンドが調整されているとする。
このような調整がなされていると、図7に示されるように、雌型結合部材32Uの接続部54と雄型結合部材32Dの接続部64とが所定距離d(例えばd=0.5mm)だけ離間した位置、すなわち、洗浄位置で、雌型結合部材32Uと雄型結合部材32Dとを保持させた状態で、絶縁分離バルブ32の洗浄が可能になる。
これにより、第1実施形態の場合と同様に、雌型結合部材32Uの接続部54と雄型結合部材32Dの接続部64との全体の洗浄が可能になる。その結果、塗料の残留もほぼ無くなるので、その後色替え等が行われても、色混じりによる品質不良の発生を抑止することができる。
さらに、第2実施形態では、主シリンダ111と主ロッド112のみならず、洗浄位置用シリンダ113と洗浄位置用ロッド114が用いられている。これにより、洗浄中、雌型結合部材32Uと雄型結合部材32Dとの配置位置を洗浄位置に保持させておくことが、より一段と確実にできる。
【0050】
絶縁分離バルブ32の洗浄が終了し、その後のエアブローも終了すると、主シリンダ111によって主ロッド112が後進(上動)していくのに応じて、可動筺体115と雌型結合部材32Uが、雄型結合部材32Dから遠ざかるように上動していく。
最終的には、主ロッド112が最後まで後進(上動)して停止すると、可動筺体115と雌型結合部材32Uの上動も停止する。これにより、図6に示されるように、雌型結合部材32Uと雄型結合部材32Dとは分離位置で保持される。すなわち、雌型結合部材32Uの接続部54と雄型結合部材32Dの接続部64とが一定距離D(例えばD=180mm以上)だけ離間して保持される。これにより、電気的な絶縁が保たれることになる。
その後、第1実施形態と同様に、電気的な絶縁が保たれた状態で、静電塗装が行われる。
【0051】
次に、第1及び第2実施形態とは異なる絶縁分離バルブを備える実施形態を、本発明の第3及び第4実施形態として、その説明をしていく。
【0052】
図9は、第3実施形態に係る静電塗装装置1の絶縁分離バルブ32の構成を示す縦断面図である。
【0053】
図2と図9とを比較するに、図2の第1実施形態に係る絶縁分離バルブ32においては、雌型結合部材32Uは上方に配置され、雄型結合部材32Dは下方に配置されていた。これに対して、図9の第3実施形態に係る絶縁分離バルブ32においては、逆に、雌型結合部材32Uは下方に配置され、雄型結合部材32Dは上方に配置されている。
なお、第3実施形態に係る静電塗装装置1のその他の構成や動作については、第1実施形態に係る静電塗装装置1と同様であるので、それらの説明は省略する。
【0054】
このように、雌型結合部材32Uは雄型結合部材32Dの下方に配置されているので、洗浄用流体供給孔55aまたは洗浄用流体排出孔56aから洗浄用流体が、印加側の雄型結合部材32Dに滴下することは起こり得ない。したがって、塗装ガン13から電流がリークするおそれがより一段と抑制される。
【0055】
また、洗浄用流体供給孔55a及び洗浄用流体排出孔56aは、重力方向に傾斜して設けられている。したがって、洗浄用流体供給孔55a内および洗浄用流体排出孔56a内に残留した洗浄用流体は、重力方向に傾斜して流れることになるので、印加側の雄型結合部材32Dに滴下することは起こり得ない。したがって、塗装ガン13から電流がリークするおそれがより一段と抑制される。
【0056】
図10は、第4実施形態に係る静電塗装装置1の絶縁分離バルブ32の構成を示す縦断面図である。
【0057】
図2と図10とを比較するに、図2の第1実施形態に係る絶縁分離バルブ32においては、雄型結合部材32Dにシール部材65が備えられていた。これに対して、図10の第4実施形態に係る絶縁分離バルブ32においては、逆に、雌型結合部材32Uにシール部材201が設けられている。すなわち、シール部材201は、接続部54と接続部64とが一定距離だけ離間した状態で凸部62の外周面に嵌合するように、凹部52の内周部に設けられている。
なお、第4実施形態に係る静電塗装装置1のその他の構成や動作については、第1実施形態に係る静電塗装装置1と同様であるので、それらの説明は省略する。
【0058】
第1乃至第4実施形態によれば、以下のような効果がある。
(1)特許文献1に記載の従来技術では、絶縁分離バルブ用の洗浄経路は、印加側の結合部材(下側バルブ)内にも形成されていた。このため、導電性の洗浄用流体が印加側の結合部材内に残留して、静電塗装中に電流がリークするおそれがあった。特に、水性塗料で一般的に使われるアミン(例えばジメチルエチルアミン等)を成分とした洗浄用流体が利用された場合、ホースや壁面にアミンが析出するため、電流のリークの発生確率はより一段と高くなる。そこで、このような電流のリークの発生確率を低減させるためには、洗浄後の入念なエアブローが必要であった。特に、難洗浄性塗料(例えば水性プライマー等)が利用された場合、洗浄は勿論のこと、エアブローにも多大な時間を要していた。
これに対して、第1乃至第4実施形態においては、洗浄用流体供給孔55aと洗浄用流体排出孔56aとを、絶縁分離バルブ32のうち、非印加側の雌型結合部材32Uに設けた。その結果、洗浄経路は、非印加側の雌型結合部材32U内に形成され、印加側の雄型結合部材32D内には形成されない。このため、導電性の洗浄用流体が、非印加側の洗浄経路内にたとえ残留していたとしても、印加側に浸入することは無い。よって、塗装ガン13から電流がリークするおそれがなくなる。さらに、電流のリークを考慮しなくてよいので、洗浄用流体を排出側に押し出す程度の簡易なエアブローを行えば足り、結果として、エアブローの時間も短縮される。
【0059】
(2)特許文献1に記載の従来技術では、絶縁分離バルブの洗浄は、印加側の結合部材(下側バルブ)と非印加側の結合部材(上側バルブ)とを接合した状態で行われていた。このため、両者の結合部材の接合面の洗浄が出来ないか又は出来たとしても不十分であった。その結果、塗料を十分に除去できず、その後色替え等が行われると、色混じりによる品質不良が発生するおそれがあった。また、残留の塗料が印加側の結合部材に付着等すると、静電塗装時に電流がリークするおそれもあった。
これに対して、第1乃至第3実施形態においては、雄型結合部材32Dにシール部材65を設け、雌型結合部材32Uの凹部52の内周面にシール部材65が嵌合する範囲内で凸部62と凹部52とを離間させた状態で、絶縁分離バルブ32を洗浄することを可能にした。また、第4実施形態においては、雌型結合部材32Uにシール部材201を設け、雌型結合部材32Uの凸部62の外周面にシール部材201が嵌合する範囲内で凸部62と凹部52とを離間させた状態で、絶縁分離バルブ32を洗浄することを可能にした。すなわち、雌型結合部材32Uと雄型結合部材32Dとを洗浄位置で保持させた状態で、絶縁分離バルブ32を洗浄することを可能とした。これにより、雌型結合部材32Uの接続部54と雄型結合部材32Dの接続部64との全体(従来の接合面全体に相当)の洗浄が可能になる。その結果、色混じりによる品質不良の発生を抑止することができる。また、塗料の残留がほぼなくなるので、印加側に塗料が付着すること等もなくなり、その結果、塗装ガン13から電流がリークするおそれがなくなる。
【0060】
(3)第1乃至第4実施形態においては、絶縁分離バルブ32の洗浄用流体として、脱イオン水を採用することができる。これにより、カルシウムやマグネシウム等の硬度成分を残存させることなく洗浄することが可能となる。
【0061】
(4)第1乃至第4実施形態においては、雄型結合部材32Dのバルブボディ61にガイド部61aを形成させるようにした。ガイド部61aは、凹部52と凸部62とが結合した場合に、すなわち、雌型結合部材32Uの接続部54と雄型結合部材32Dの接続部64とが接続した場合に、凹部52が形成された部分を外部から覆う形状を有している。したがって、雌型結合部材32Uと雄型結合部材32Dとの結合状態の維持を補助することが可能になる。
【0062】
(5)第4実施形態においては、雌型結合部材32Uを、雄型結合部材32Dの下方に配置させるようにした。したがって、洗浄用流体供給孔55aまたは洗浄用流体排出孔56aから洗浄用流体が、印加側の雄型結合部材32Dに滴下することは起こり得ない。その結果、塗装ガン13から電流がリークするおそれがより一段と抑制される。
【0063】
(6)第4実施形態においては、洗浄用流体供給孔55a及び洗浄用流体排出孔56aを、重力方向に傾斜して設けるようにした。したがって、洗浄用流体供給孔55a内および洗浄用流体排出孔56a内に残留した洗浄用流体は、重力方向に傾斜して流れることになるので、印加側の雄型結合部材32Dに滴下することは起こり得ない。その結果、塗装ガン13から電流がリークするおそれがより一段と抑制される。
【0064】
なお、本発明は前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形、改良等は本発明に含まれるものである。
例えば、絶縁分離バルブ32を分離させる分離手法としては、上述の第1乃至第4実施形態では、雄型結合部材32Dを固定して、雌型結合部材32Uを可変させる手法が採用された。しかしながら、分離手法は、当該手法に特に限定されない。例えば、雌型結合部材32Uを固定して、雄型結合部材32Dを可変させる手法を採用することもできるし、雌型結合部材32Uと雄型結合部材32Dとの両者を可変させる手法を採用することもできる。
また例えば、絶縁分離バルブ32の分離の方向も、上述の第1乃至第4実施形態では上下方向とされていが、当該方向に特に限定されず、任意の方向でよい。
また例えば、絶縁分離バルブ32の構成は、上述の第1乃至第4実施形態の構成に特に限定されず、非印加側の雌型結合部材32U内に洗浄経路を形成させる一方で印加側の雄型結合部材32D内には洗浄経路を形成させないことを可能にする構成であれば足りる。具体的には例えば、洗浄用流体供給孔55aと洗浄用流体排出孔56aとは、上述の第1乃至第4実施形態では雌型結合部材32Uの凹部52の底面52aに設けられていたが、これに限定されない。例えば、雌型結合部材32Uの接続部54と雄型結合部材32Dの接続部64とが接続状態の位置から所定距離だけ離れているときに、接続部54と接続部64とに洗浄液を供給して排出できる位置、具体的には例えば凹部52の底面52aの近傍に設けるようにしてもよい。
また例えば、洗浄用流体供給孔55aと洗浄用流体排出孔56aとは、上述の第1乃至第4実施形態では雌型結合部材32Uに設けられていたが、これに限定されない。例えば、洗浄用流体供給孔55aと洗浄用流体排出孔56aとは、雄型結合部材32Dに設けるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 静電塗装装置
11 塗料供給路
13 塗装ガン
18 可動体
19 エアシリンダ
32 絶縁分離バルブ
32D 雄型結合部材
32U 雌型結合部材
52 凹部
53 塗料供給通路
54 接続部
55a 洗浄用流体供給孔
56a 洗浄用流体排出孔
61a ガイド部
62 凸部
63 塗料供給通路
64 接続部
100 分離機構
201 シール部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高電圧が印加される塗装ガンに塗料供給路を介して導電性塗料を供給する導電性塗料の静電塗装装置であって、
前記塗料供給路を前記高電圧が印加される印加側とそれ以外の非印加側とに電気的に絶縁分離し得る絶縁分離バルブを備えるものにおいて、
前記絶縁分離バルブは、
一方の結合部となる凹部を有すると共に、前記凹部の底面に、前記塗料供給路の接続部となる第1接続部を有する雌型結合部材と、
前記凹部に結合する他方の結合部となる凸部を有すると共に、前記凸部の先端に、前記第1接続部に接続される流路の接続部となる第2接続部を有する雄型結合部材と、
からなり、
前記雌型結合部材及び前記雄型結合部材の何れか一方の結合部材は、
前記非印加側に設けられると共に、
前記第1接続部と前記第2接続部とが接続状態の位置から所定距離だけ離れているときに、前記第1接続部及び前記第2接続部に洗浄用流体を供給する供給孔と、前記第1接続部及び前記第2接続部に供給された洗浄用流体を排出する排出孔と、
を備え、
他方の結合部材は、前記印加側に設けられる
ことを特徴とする導電性塗料の静電塗装装置。
【請求項2】
前記雄型結合部材又は前記雌型結合部材は、前記凸部の外周部又は前記凹部の内周部に、前記雌型結合部材の前記凹部の内周面又は前記雌型結合部材の前記凸部の外周面に嵌合するシール部材をさらに備え、
前記雌型結合部材又は前記雄型結合部材の少なくとも一方を移動させて、前記シール部材が前記内周面又は前記外周面に嵌合する範囲で前記第1接続部と前記第2接続部との接続状態の位置から前記所定距離だけ離れた位置で停止させることが可能な分離手段をさらに備える
ことを特徴とする請求項1に記載の導電性塗料の静電塗装装置。
【請求項3】
前記洗浄用流体は脱イオン水である
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の導電性塗料の静電塗装装置。
【請求項4】
前記雄型結合部材は、前記第1接続部と前記第2接続部とが接続されているときに、前記雌型結合部材の前記凹部が形成された部分を外側から覆う形状のガイド部をさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至3のうちのいずれかに記載の導電性塗料の静電塗装装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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