説明

導電性組成物

【課題】焼成条件により塗膜性能が変化しにくい発熱体として用いる導電性組成物を提供
する。
【解決手段】(A)銀粉末、
(B)10〜25質量%の銀でメッキされている銀メッキニッケル粉末、 (C)ガラスフリット、
(D)有機ビヒクルを含有し、
前記(A)と(B)の合計が50〜80質量%、(C)が2〜8質量%、
残部が(D)であり、
かつ(A)と(B)の比率合計を100質量%とした場合、(A)が50〜80質量%、
(B)が20〜50質量%であることを特徴とする導電性組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は電熱調理器や自動車用ガラスの曇り止めに使用する発熱体の導電性組成物に関
するものであり、より詳細には、焼成条件により塗膜性能が変化しにくい導電性組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発熱体をガラス基板や琺瑯基板に形成する方法としてペースト状の導電性組成物をスクリーン印刷した塗膜を乾燥した後600℃〜750℃で熱処理することにより基板に焼き付け、所定の電圧を印加し発熱させることが一般的になされている。
この時、好適な発熱を得るために導電塗膜を最適な抵抗体にする必要があると同時に電圧
を印加するための端子をハンダにより取り付けている。一般的には抵抗体にするため銀に
様々な物質を添加して所定の抵抗を得る方法がとられている。
例えば、抵抗調整剤としてRh、Pd等のAgより高い体積抵抗率を有する物質やNiOを含んだガラスフリットやFe等々が用いられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2003−168322号
【特許文献2】特開2004−327356号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述のようなRhやPdでは所定の抵抗を得るには高価になり工業的に使用するには経済的でなく、またガラスフリット等で所定の抵抗を得た場合端子強度が弱くなり性能がでなくなる。また酸化物で所定の抵抗を得た場合も端子がハンダで取り付けられないため同塗膜の上にハンダ付けが可能な別の塗膜を形成する必要があり製造工程が増すため製品不良率が大きくなる可能性がる。
また、これらの組成物では焼成により銀の焼結が進み高温で焼成するほど抵抗が低くなる
ことが問題視されている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
そこで、本願発明者は種々検討を重ねた結果、(A)銀粉末、(B)銀メッキニッケル粉末、(C)ガラスフリット、(D)有機ビヒクルを含有させた導電性組成物であって、抵抗調整剤として銀メッキニッケル粉末を用いたことで、塗膜形成時の熱処理温度が違っていても得られる抵抗体の体積抵抗率の変化が小さく、また体積抵抗率が高くてもハンダ付による端子強度が高くなることで上記の課題が解決可能であることを見出した。
【0006】
上記課題を解決可能な本発明の導電性組成物は、
(A)銀粉末
(B)10〜25質量%の銀でメッキされている銀メッキニッケル粉末
(C)ガラスフリット
(D)有機ビヒクル
を含有し、前記(A)〜(D)の成分比を100質量%にした場合、
(A)と(B)の合計が50〜80質量%、(C)が2〜8質量%、
残部が(D)であり、
かつ(A)と(B)の配合比率合計を100質量%とした場合、(A)が50〜80質量%、(B)が20〜50質量%であることを特徴とする。
また、本発明は、上記の特徴を有した導電性組成物において、
(B)銀メッキニッケル粉末の粒径が0.5〜15μm、比表面積が0.6〜1.5
2/gであることを特徴とするものでもある。
【発明の効果】
【0007】
本発明の導電性組成物は、塗膜形成時の熱処理温度が違っていても得られる抵抗体の体積抵抗率の変化が小さく、また体積抵抗率が高くてもハンダ付による端子強度が高いものである。
また、本発明の導電性組成物を用いた場合、熱処理時の作業条件のバラツキが多少あっても体積抵抗率およびハンダ接合強度の良好な塗膜が形成できるため不良が少なく生産性が良いため、経済的にもコストメリットがある。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の膜形成時の熱処理温度が違っていても得られる抵抗体の体積抵抗率の変化が小さく、また体積抵抗率が高くてもハンダ付による端子強度が高くなるという導電性組成物について説明する。
本発明は、ガラス基板または琺瑯基板上に形成された導電性塗膜を発熱体として用いるも
ので導電性組成物を該基板上に付与し熱処理することにより形成されたものであることを
特徴としている。
本発明の導電性組成物は、銀粉末を導体成分とし銀メッキニッケル粉末を抵抗調整成分
とし、ガラスフリットを基板との接合成分とし有機ビヒクルを塗膜形成成分としたもので
ある。
【0009】
(A)銀粉末
(B)10〜25質量%の銀でメッキされている銀メッキニッケル粉末
(C)ガラスフリット
(D)有機ビヒクル
を含有し、前記(A)〜(D)の成分比を100質量%にした場合、
(A)と(B)の合計が50〜80質量%、(C)が2〜8質量%、
残部が(D)であり、
かつ(A)と(B)の配合比率合計を100質量%とした場合、(A)が50〜80質量%、(B)が20〜50質量%であることを特徴とする導電性組成物である。
【0010】
導電成分としての(A)銀粉末は100μmの線幅に印刷できる粉末であれば球状でもフレーク状でもまたそれ以外の形状のものであっても問題ない。
抵抗調整成分の(B)銀メッキニッケル粉末は球状でもフレーク状でも問題ないがメッキの均一性を考慮すると球状粉がより好ましい。メッキの方法は電解メッキ、無電解メッキのどちらの製法で作製したものでも用いることができる。
【0011】
また、大気中で熱処理をするため表面にニッケルが露出していると酸化されハンダ付が困難になるためニッケル粉末上に均一に銀をメッキすることが重要であり、またそのメッキ厚さも重要になる。均一にメッキされた銀メッキニッケル粉末は、銀が10〜25質量%の範囲で管理されることが好ましい。10質量%より少ない場合メッキの厚みが薄く熱処理により酸化が激しくなり体積抵抗率が増加するとともにハンダの濡れ性が悪くなり端子強度が得られなくなるためである。銀を25質量%より多くメッキしても塗膜物性がより効果的に得られないためである。
【0012】
本発明品は6〜80×10-6Ω・cmの体積抵抗率および端子のハンダ付強度が100N以上を有する導電性塗膜を形成するためのものであり、それらの物性を発現させるために(A)銀粉末と銀メッキニッケル粉末で体積抵抗率およびハンダ濡れ性を発現成分とし、基板との接合を発現させるために(C)ガラスフリットを発現成分とし、塗膜を形成するための印刷性を発現させるために(D)有機ビヒクルを発現成分としたものである。
【0013】
本発明の導電性組成物はその成分比を100質量%にした場合、(A)銀粉末と(B)銀
メッキニッケル粉末の合計が50〜80質量%、(C)ガラスフリットを2〜8質量%、残部が(D)有機ビヒクルとする。
(A)銀粉末と(B)銀メッキニッケル粉末の合計が50質量%より少ないと得られる導電塗膜が薄くなることによりハンダ付が困難になり端子強度が低くなることや導電性組成物中の固形分が少なくなるため熱処理後の導電塗膜にヒビワレ、ムラ等が生じ均一な塗膜が得られなくなり耐久性に問題を生じる。
80質量%より多くすると(D)有機ビヒクルの割合が少なくなりすぎるため好適な粘度および粘性を得ることができず印刷作業が困難となり良好な導電塗膜を形成することができなくなる。
このため、(A)銀粉末と(B)銀メッキニッケル粉末の合計は、50質量%〜80質量%にすることが好ましい。
【0014】
また、(C)ガラスフリットは基板と導電性粉末を結合させる役割を果しておりその組成は、600℃以下の軟化点を有したホウ酸鉛系、ホウ珪酸鉛系、ホウ酸ビスマス系、ホウ酸ビスマス亜鉛系等の組成のガラスフリットを用いることができる。ガラスフリットが2質量%より少ないと基板に形成された導電性塗膜の強度が弱くなり耐久性に問題を生じることや端子をハンダ付したときの強度が低くなる。8質量%より多くすると熱処理したときにガラスフリットが溶融し塗膜表面に多く析出し端子をハンダ付するときにハンダが導電塗膜に濡れなくなり端子の接合強度を低くする。このため、ガラスフリットは2質量%〜8質量%にすることが好ましい。
【0015】
(D)有機ビヒクルは、導電塗膜形成するための印刷性を付与させるためのものであり、熱処理工程で蒸発、燃焼分解する。一般に市販されているセルロース系樹脂、アクリル系樹脂等を比較的高沸点のターピネオール、ブチルカルビトール等の溶剤で溶解したものを用いることができる。
【0016】
また、本発明の(A)銀粉末と(B)銀メッキニッケル粉末の配合比率合計を100質量%とした場合、銀粉末が50〜80質量%、で銀メッキニッケル粉末が20〜50質量%にすることが好ましい。
銀粉末が80質量%より多いと銀の接触抵抗に誘引され体積抵抗率が6×10-6Ω・cmより低くなり、反対に50質量%より少ないと銀メッキニッケルの接触抵抗に誘引され体積抵抗率が80×10-6Ω・cmより大きくなる。このため、銀粉末と銀メッキニッケル粉末の配合比率合計を100質量%とした場合、銀粉末が50〜80質量%で銀メッキニッケル粉末が20〜50質量%にすることが好ましい。
【0017】
また、本発明で用いる(B)銀メッキニッケル粉の粒子サイズは0.5〜15μmの粒径の粉末が好ましい。15μmより大きい粒子サイズの粉末が入ると塗膜の印刷性に影響し100μmの線幅の塗膜の形成が困難になることと膜厚のバラツキが生じ均一な導電塗膜が得られなくなるためである。0.5μmより小さい粒子サイズ粉末ではメッキ膜厚が薄くなり熱処理時にニッケルの酸化がすすみ抵抗値の増大とともに塗膜表面にニッケルの酸化物が形成されハンダ付が困難になり端子の接合が最悪できなくなるため粒子サイズは0.5〜15μmの粒径の粉末であることが好ましい。
【0018】
一般的に比表面積は粒子の大きさに反比例するが本発明で用いる銀メッキニッケル粉末は0.6〜1.5m/gの比表面積のものが好ましい。0.6m/gより小さい粉末はメッキが厚く付くため熱処理をしたときに所定の体積抵抗率より低くなり、1.5m/gより大きい粉末では厚みが薄く熱処理により酸化が激しくなりハンダの濡れ性が悪くなり端子強度が得られなくなるためである。
【実施例】
【0019】
(導電性組成物の作製)
以下、本発明を実施例に基づいて更に詳細に説明する。
実施例1〜20および比較例1〜8を表1に示す導電性組成物の配合割合にて以下のように作製した。
(A)銀粉末、(B)銀メッキニッケル粉末、(C)ガラスフリットおよび(D)有機ビヒクルを表1に示す質量%の割合で3本ロールミルにより均一混合して導電性組成物とした。
(A)銀粉末と(B)銀メッキニッケル粉末の配合比率および(B)銀メッキニッケル粉末の銀メッキ量を表1に示す。
この時、銀粉末は純度99%以上のものを用い、有機ビヒクルとしてエチルセルロースを
テルピネオールに溶解したものを用いた。また、ガラスフリットは、ホウ珪酸ビスマス系
で軟化点が561℃のものを用いた。
(A)銀粉末と(B)銀メッキニッケル粉末の配合比率は銀粉末と銀メッキニッケル粉末の合計を100としたときの各々の質量比として示している。
【0020】
【表1】

【0021】
表2に実施例1〜20および比較例9〜11として、(B)銀メッキニッケル粉末の粒径、比表面積を示す。比較例9〜11は、実施例4と同様の導電性組成物配合割合、銀粉末と銀メッキニッケル粉末の配合比率、銀メッキ量のものを作製した。
銀メッキニッケル粉末特性で銀メッキ量は化学分析により測定した。
粒径はレーザー回折式粒度測定装置SALD3000J(島津製作所製)により測定した。
比表面積はBET1点法による流動式比表面積測定装置フローソーブ2300(島津製作
所製)により測定した。
【0022】
【表2】

【0023】
(物性評価用試料の作成)
実施例1〜20および比較例1〜11で作製した導電性組成物を厚さ3.5mmで10cm×10cmのグリーン色のソーダ石灰ガラス上に幅が1.0mm、長さ200mmおよび10mm×50mmのパターンをスクリーン印刷法により形成した。
印刷したソーダ石灰ガラスを120℃で10分間熱処理し溶剤を蒸発させた。その後650℃に加熱した電気炉にて5分間熱処理を施したものを評価用試料とした。
(評価項目)
体積抵抗率:塗膜を形成したソーダ石灰ガラス上の幅1.0mm長さ200mmのパターンの長さ方向の抵抗値をミリオームハイテスタ3540-02(日置電機製)にて測定し、表面粗さ計SE−3C(小阪研究所製)にて線幅および膜厚を測定し計算により体積抵抗率を得た。
端子強度:塗膜を形成したソーダ石灰ガラス上の10mm×50mmパターン上にSn
メッキ銅製端子をハンダにより接合し所定の冶具を用いて引張試験機SV−201(今田
製作所製)にて端子の接合強度を測定した。
実施例および比較例の体積抵抗率および端子接合強度結果を表3に示す。
【0024】
【表3】

【0025】
表3の結果より、本発明の導電性組成物から得られる導電性塗膜は実施例1〜20に示すとおり良好な体積抵抗率と接合強度を得ることができる。
しかし、比較例1〜8に示すとおり本発明の請求項1の範囲を外れると体積抵抗率および接合強度の一方または両方を満足させることができなくなる。
また、比較例9〜11に示すとおり請求項1の範囲を満足した導電性組成物であっても銀メッキニッケル粉末の粒径および比表面積の一方または両方が本発明の請求項2の範囲を外れると体積抵抗率および接合強度の一方または両方を満足させることができなくなる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明によれば、資源の豊富な銀およびニッケルを用いるため高価で生産量の少ない材料を用いる必要がなく安定した特性の発熱体を生産することが可能であり、自動車の曇り止めや電熱調理器に用いることができる。
従って、本発明の産業上の利用可能性は非常に高いといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)銀粉末
(B)10〜25質量%の銀でメッキされている銀メッキニッケル粉末
(C)ガラスフリット
(D)有機ビヒクル
を含有し、前記(A)〜(D)の成分比を100質量%にした場合、
(A)と(B)の合計が50〜80質量%、(C)が2〜8質量%、
残部が(D)であり、
かつ(A)と(B)の配合比率合計を100質量%とした場合、(A)が50〜80質量%、
(B)が20〜50質量%であることを特徴とする導電性組成物。
【請求項2】
(B)銀メッキニッケル粉末の粒径が0.5〜15μm、比表面積が0.6〜1.5
/gであることを特徴とする請求項1記載の導電性組成物。