説明

導電材及び導電材の製造方法

【課題】電線やブスバー等における表面の抵抗を低下させることにより熱損失の低減を図ることが可能な導電材を提供する。
【解決手段】導電材は、導電性の芯導体12と、芯導体12の外周に電気的接触状態で設けられ導電性の金属が含浸されたCNT構造体13とにより形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電線やブスバー等に用いるための導電材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に電線やブスバーは、電源からの電力を各種の負荷に分配供給するために電源と負荷との間に配索されている。特許文献1に記載されているように、これらの材料としては、銅やアルミニウム等の導電材料が用いられている。電線においては、これらの導電材料を芯線とし、芯線の周囲を絶縁被覆によって覆っており、ブスバーにおいては、これらの導電材料によって配線回路を形成している。
【0003】
このような電線やブスバー等の導電材に電流が流れると電気抵抗により電線やブスバーは一般的に発熱するが、流れる電流値に応じてその断面積が設定されて、発熱が最小限に抑えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特公昭58−11116号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、電線やブスバー等の導電材に高周波電流が流れると、表皮効果により電流密度が導電材の表面で高くなり、高周波電流が導電材の表面側に集中して、表面側の小さな断面積中を高周波電流が流れることになるため抵抗が増大する。そして、このように電気抵抗が増大すると、熱が発生して熱損失が大きくなり、電流の伝達効率が悪くなる問題がある。
【0006】
そこで、本発明は、電線やブスバー等における表面の抵抗を低下させることにより熱損失の低減を図ることが可能な導電材及びその製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的とを達成するため、請求項1記載の発明は、導電性の金属が電気的接触状態で付着するカーボンナノチューブ構造体を含む複合体により形成されていることを特徴とする。
【0008】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の導電材であって、前記複合体は、導電性の芯導体と、この芯導体の外周に電気的接触状態で設けられ導電性の金属が電気的接触状態で付着するカーボンナノチューブ構造体とにより形成されていることを特徴とする。
【0009】
請求項3記載の発明は、請求項1又は2に記載の導電材であって、前記カーボンナノチューブ構造体は、カーボンナノチューブの表面、カーボンナノチューブの内部及びカーボンナノチューブの間に導電体が付着されて金属との濡れ性向上処理が施されていることを特徴とする。
【0010】
請求項4記載の発明は、請求項2又は3に記載の導電材であって、前記カーボンナノチューブ構造体は、加圧により導電性の金属が含浸されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5記載の発明は、請求項2又は3に記載の導電材であって、前記カーボンナノチューブ構造体は、導電性の金属が圧粉成形されていることを特徴とする。
【0012】
請求項6記載の発明は、請求項2〜5のいずれか1項に記載の導電材であって、前記カーボンナノチューブ構造体は、編組状に形成されて前記芯導体の外周に付着されていることを特徴とする。
【0013】
請求項7記載の発明は、請求項2〜5のいずれか1項に記載の導電材であって、前記カーボンナノチューブ構造体は、筒状に形成された状態で前記芯導体が内部に圧入されることにより芯導体の外周に付着されていることを特徴とする。
【0014】
請求項8記載の発明は、請求項2〜7のいずれか1項に記載の導電材であって、前記芯導体が銅又はアルミニウム及びその合金の棒体又は板体からなり、前記カーボンナノチューブ構造体は銅又はアルミニウムからなる導電性の金属が電気的接触状態で付着されていることを特徴とする。
【0015】
請求項9記載の発明は、請求項1〜8のいずれか1項に記載の導電材の製造方法であって、カーボンナノチューブ構造体に導電性の金属を電気的接触状態で付着させることを特徴とする。
【0016】
請求項10記載の発明は、請求項2〜8のいずれか1項に記載の導電材の製造方法であって、導電性の芯導体の外周に電気的接触状態でカーボンナノチューブ構造体を付着させることを特徴とする。
【0017】
請求項11記載の発明は、請求項2〜8のいずれか1項に記載の導電材の製造方法であって、カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの表面、カーボンナノチューブの内部又はカーボンナノチューブの間に導電体を付着させて金属との濡れ性向上処理を施した後、カーボンナノチューブ構造体を編組状に形成して導電性の芯導体の外周に付着させ、前記芯導体に付着した編組状のカーボンナノチューブ構造体に導電性の金属を電気的接触状態で付着させることを特徴とする。
【0018】
請求項12記載の発明は、請求項2〜8のいずれか1項に記載の導電材の製造方法であって、カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの表面、カーボンナノチューブの内部又はカーボンナノチューブの間に導電体を付着させて金属との濡れ性向上処理を施した後、カーボンナノチューブ構造体に導電性の金属を含浸させて筒状に形成し、この筒状のカーボンナノチューブ構造体の内部に導電性の芯導体を密着状態で挿入することを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
請求項1記載の発明によれば、導電材を構成する複合体が導電性の金属が電気的接触状態で付着されたカーボンナノチューブ構造体を含んでおり、カーボンナノチューブ構造体の優れた導電性により複合体の表面部分の電気抵抗が小さくなっている。このため、熱の発生が抑制されて熱損失を小さくすることができる。
【0020】
請求項2記載の発明によれば、芯導体の外周にカーボンナノチューブ構造体を電気的接触状態で付着させた複合体により導電材を形成することにより、高周波電流が流れて表皮効果により電流密度が芯導体の表面側に集中しても、カーボンナノチューブ構造体の優れた導電性により表面部分の抵抗が小さいので熱の発生が抑制され熱損失を小さくすることができる。
【0021】
請求項3の発明によれば、カーボンナノチューブの表面及びカーボンナノチューブの内部及びカーボンナノチューブの間に導電体を付着させることにより、カーボンナノチューブ内に電子がより入りやすくなって高速で電子が流れるので導電性を向上させることができ、抵抗を低減できる。またカーボンナノチューブ間に導電体を付着させることにより、一つのカーボンナノチューブから他のカーボンナノチューブへも電子が入りやすくなり、さらに高速で電子を流すことができるので、導電性がさらに向上して抵抗が小さくなる。
【0022】
請求項4記載の発明によれば、カーボンナノチューブ構造体に導電性の金属が含浸されていることにより、カーボンナノチューブ構造体と芯導体との良好な電気的接触状態を得ることができる。
【0023】
請求項5記載の発明によれば、カーボンナノチューブ構造体が、導電性の金属が圧粉成形により圧粉体に形成されていることにより、カーボンナノチューブ構造体と芯導体との良好な電気的接触状態を得ることができる。
【0024】
請求項6記載の発明によれば、カーボンナノチューブ構造体が編組状となって芯導体の外周に付着されているので、芯導体との良好な電気的接触状態とすることができる。
【0025】
請求項7記載の発明によれば、請求項6記載の発明と同様に、筒状のカーボンナノチューブ構造体の内部に芯導体が圧入されているため、芯導体との良好な電気的接触状態とすることができる。
【0026】
請求項8記載の発明によれば、芯導体が銅又はアルミニウム及びその合金からなり、カーボンナノチューブ構造体に銅又はアルミニウムが含浸されているため、カーボンナノチューブ構造体と芯導体との間の抵抗が小さくなると共に、良好な良好な電気的接触状態を得ることができる。
【0027】
請求項9記載の発明によれば、導電性に優れたカーボンナノチューブ構造体を製造することができる。
【0028】
請求項10記載の発明によれば、芯導体の外周にカーボンナノチューブ構造体を電気的接触状態で付着させた複合体を製造できるため、高周波電流が流れても熱の発生を抑制でき熱損失を小さくすることが可能な導電材を製造することができる。
【0029】
請求項11記載の発明によれば、金属との濡れ性向上処理を施すことにより、カーボンナノチューブ内に電子がより入りやすくなって高速で電子が流れ、しかも一つのカーボンナノチューブから他のカーボンナノチューブへも電子が入りやすくなり、高速で電子を流すことができるので、導電性が向上した小さな抵抗のカーボンナノチューブ構造体とすることができる。そして、このカーボンナノチューブ構造体を編組状として芯導体の外周に付着させ、カーボンナノチューブ構造体に導電性の金属を含浸させるため、カーボンナノチューブ構造体と芯導体とが良好な電気的接触状態となった導電材を製造することができる。
【0030】
請求項12記載の発明によれば、請求項10と同様に、金属との濡れ性向上処理を施すことにより、カーボンナノチューブ内に電子がより入りやすくなって高速で電子が流れ、しかも一つのカーボンナノチューブから他のカーボンナノチューブへも電子が入りやすくなり、高速で電子を流すことができるので、導電性が向上した小さな抵抗のカーボンナノチューブ構造体とすることができる。そして、このカーボンナノチューブ構造体に導電性の金属を含浸させて内部に芯導体を密着状態で挿入するため、カーボンナノチューブ構造体と芯導体とが良好な電気的接触状態となった導電材を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明の第1実施形態の導電材を示す斜視図である。
【図2】本発明の第2実施形態の導電材を示す斜視図である。
【図3】芯導体の外周にカーボンナノチューブ構造体を付着させ、アルミニウムを含浸させた本発明の第2実施形態の導電材を示し、(a)は斜視図、(b)は断面図である。
【図4】(a)、(b)、(c)はカーボンナノチューブにナノ金属粒子からなる導電体を付着させた状態を示す説明図である。
【図5】芯導体の外周にカーボンナノチューブ構造体を横巻状に付着させた本発明の第3実施形態の導電材を示す斜視図である。
【図6】(a)はカーボンナノチューブ構造体に導電性金属を含浸させた複合体を示す斜視図、(b)は芯導体を示す斜視図、(c)は芯導体を複合体に圧入させた状態を示す斜視図である。
【図7】従来の導電材と本発明の導電材の径を比較して示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の導電材の実施形態により具体的に説明する。なお、各実施形態において、同一の部材には同一の符号を付して対応させてある。
【0033】
[第1実施形態]
図1は、本発明の第1実施形態の導電材11を示す。導電材11は、カーボンナノチューブ構造体13を含む複合体によって形成されている。
【0034】
カーボンナノチューブ構造体13は、ナノレベルの大きさのカーボンナノチューブ(以下、「CNT」と略称する。)を単位とするものであり、このCNTの複数の集合体によってCNT構造体13が形成される。
【0035】
CNTは、6個の炭素が結びついた六角形構造となっており、この六角形構造がさらに他の六角形構造と結合された状態で円筒状に形成された構造体である。これらの複数のCNTの構造体から繊維CNTが形成され、複数の繊維CNTの集合体から、絡み合った繊維CNTを伸ばして揃えて、これに撚りを加えて均一な一定の太さの糸状にすることで紡糸状のCNT構造体が形成される。さらに、紡糸状のCNT構造体を編組状に編むことにより編組状のCNT構造体が筒状(円筒状)に形成される。本発明におけるCNT構造体13は、繊維CNT、繊維CNTの集合体、紡糸状のCNT構造体及びこれを編んだ編組状のCNT構造体を含むものである。
【0036】
このような紡糸状又は編組状のCNT構造体13には、導電性の金属が含浸される。導電性の金属としては、アルミニウム又は銅及びその合金が用いられる。CNT構造体13に導電性の金属を含浸させるには、真空加圧含浸法によってCNT構造体13にこれらの導電性の金属を含浸させる。この場合、既に出願されている特開2001−107203号公報に記載されている「複合材料及びその製造方法」の技術、特開2002−59257号公報に記載されている「複合材料」の技術、特開2002−194515号公報に記載されている「複合材料及びその製造方法」の技術を用いて、CNT構造体13に導電性の金属を含浸させることができる。
【0037】
なお、実施形態において、導電性の金属として銅またはアルミニウム及びその合金を用いる理由は、これらの金属、合金の融点は、カーボンが燃えない温度領域あり、融点の高い導電性の金属を含浸させようとすると、CNTが燃えてしまうからである。また、他の導電性の金属としては、錫やマグネシウム、及びこれらの合金が挙げられる。
【0038】
導電性の金属が含浸されたCNT構造体13は、優れた導電性を有しており、このCNT構造体13を含む複合材は、その表面部分の抵抗が小さくなっている。このため、熱の発生が抑制されて熱損失を小さくすることができる。従って、このCNT構造体13を電線やブスバー等の導電材に用いることにより、高周波電流が流れても電流の伝達効率が低下することがなくなる。
【0039】
[第2実施形態]
図2及び図3は、本発明の第2実施形態の導電材14を示す。この導電材14は、導電性の芯導体12と、この芯導体12の外周に電気的接触状態で付着した編組状のCNT構造体13との複合体によって形成されている。
【0040】
芯導体12は、銅製の棒体又は板材によって形成された銅コア材又はアルミニウム製の棒体又は板材によって形成されたアルミニウムコア材で形成されている。芯導体12に用いるいずれの材質も導電率が高く、電流密度耐性が高く、高熱伝導性に優れたものとなっている。この実施形態では、芯導体12が銅製の棒体からなる銅コア材で形成されている。この銅コア材の外周に、編組状に形成されたCNT構造体13が付着され、この状態でCNT構造体13に対して導電性の金属としてのアルミニウムを含浸するものである。
【0041】
CNTにおいては、単位CNT間の結合力が弱く、単位CNT同士の接触抵抗が大きい。このため、本実施形態の複合体14では、CNTの表面、CNTの内部及びCNTの間に金属ナノ粒子からなる導電体をナノスケールで付着させることにより、いわゆる濡れ性を向上させる濡れ性向上処理が施されている。
【0042】
この濡れ性向上処理の方法としては、既に出願されている特表2009−535294に記載された「炭素と非炭素との組織化されたアセンブリー、及びその製造方法」の技術を用いる。これにより、図4に示すようにCNT15の表面、CNT15の内部及びCNT15の間に金属ナノ粒子18からなる非炭素物質(Fe、Si、Co、Cr、Mn、Mo、Nb、Ta、Th、Ti、U、V、Y、Zr)を付着させる。CNT15の表面、CNTの内部、CNT間に金属ナノ粒子を付着させることにより、CNT15同士が金属ナノ粒子18によって強い結合(共有結合)になると推定され、金属ナノ粒子18間の低抵抗化が図れるので、CNT15間が低抵抗となる。すなわち、CNT15の内部を通り、金属ナノ粒子18を通って隣接するCNT15に電子が移動する場合、CNT15間が低抵抗なのでCNT間の導電性が高くなる。従って、CNT15間にバインダとしての金属ナノ粒子18を付着させることによって単位CNT間の結合力が強化し電気的な接触抵抗を小さくすることによりCNT15間の高い導電性が得られる。
【0043】
また、CNT15の表面に付着した金属ナノ粒子18は、電子が金属ナノ粒子18を通ってCNT15の内部を通過し易くなり、さらにCNT15の内部に付着した金属ナノ粒子18によって電子がより流れ易くなることで高い導電性が得られる。
【0044】
このような金属ナノ粒子18が付着したCNT15から形成した繊維CNTの集合体から絡み合った繊維CNTを伸ばして揃えて、これに撚りを加えて均一な一定の太さの糸状に形成した紡糸状のCNT構造体13を、銅コア材からなる芯導体12の表面(外周)に編組状に付着させることにより編組が形成される。
【0045】
そして、芯導体12である銅コア材の外周に編組状のCNT構造体13が付着した状態で、CNT構造体13に導電性の金属としてのアルミニウム16が含浸されている。CNT構造体13にアルミニウム16を含浸させるには、第1実施形態と同様に、上記特開2001−107203号公報、特開2002−59257号公報又は特開2002−194515号公報に記載されている真空加圧含浸法を行うことにより行うことができる。
【0046】
これにより、芯導体12とCNT構造体13とからなる複合体によって導電材14が形成される。この導電材14は、優れた導電性を有し、その表面部分の抵抗が小さくなっているため、熱の発生が抑制されて熱損失を小さくすることができる。従って、この導電材14を電線やブスバー等の導電材に用いることにより、高周波電流が流れても電流の伝達効率が低下することがなくなる。
【0047】
なお、本実施形態では、アルミニウムを含浸させたが、含浸させる導電性の金属として、カーボンが燃えることのない温度域の融点を有する金属であれば他の金属例えば、銅、錫、マグネシウムでも良い。
【0048】
[第3実施形態]
図5は、本発明の第3実施形態の導電材19を示す。上記第2実施形態では、銅コア材からなる芯導体12の外周にCNT構造体13を編組状に付着させて編組を形成したのに対して、この実施形態では、図5に示すように、銅コア材からなる芯導体12の外周に紡糸CNT13を横巻状に付着させている。このように銅コア材からなる芯導体12の外周に紡糸状のCNT構造体13を横巻状に付着させた状態で、上記第2実施形態と同様に、真空加圧含浸法により導電性の金属としてのアルミニウム16を含浸させて導電材19を形成する。
【0049】
[第4実施形態]
図6は、本発明の第4実施形態の導電材21を示す。上記第2実施形態では、芯導体12の外周に紡糸状のCNT構造体13を付着させ、次ぎに導電性の金属としてのアルミニウム16を含浸させているのに対して、この実施形態では、CNT構造体13に第2実施形態と同様に、導電体を付着させる濡れ性向上処理を施した状態で、CNT構造体13の繊維の集合体に第1実施形態と同様の真空加圧含浸法により導電性の金属としてのアルミニウム16を含浸させた複合体17を形成する。
【0050】
図6(a)は複合体17を示し、筒状(円筒状)に成形されている。このようなCNT構造体13における繊維CNTの集合体にアルミニウム16が含浸された筒状の複合体17の内部に、図6(b)に示す銅コア材からなる芯導体12を、図6(c)に示すように圧入することで芯導体12とCNT構造体13からなる筒状の複合体17によって導電材21とする。この導電材21においては、芯導体12の圧入により、芯導体12がCNT構造体13に密着状態で挿入される。
【0051】
なお、この第4実施形態では、アルミニウム16が含浸された筒状のCNT構造体13の内部に芯導体12を圧入したが、スウェージングを行うことにより芯導体12の表面に対し、アルミニウム16が含浸された筒状のCNT構造体13の複合体17の内面を密着接触させても良い。
【0052】
以上説明した実施形態2〜4によれば、導電性の芯導体12と、この芯導体12の外周に電気的接触状態で付着するCNT構造体13とからなる複合体によって導電材14,19,21が形成されていることにより、高周波電流が芯導体12の表面に流れても、表面側には高い導電率を有するCNT構造体13が付着されているので、抵抗を低減することができる。また、表面の抵抗を低減することができるので、表皮効果によって高周波電流が表面側に集中しても発熱量が少ないので、熱損失が低減される。
【0053】
又、CNT構造体13は、他の導電材料(アルミニウムや銅)と比較して軽いので、芯導体12を用いた構造においては、外周に付着するCNT構造体13の分だけ芯導体12の径を小さくすることができる。このため、電線やブスバー全体の重さを軽減することができる。
【0054】
また、図7に示すように、従来必要な径L1の大きさに設定されていた導電材23に対し、同等の導電率を有する本発明の導電材14,19,21を同等の導電率とする場合、その径L2を小さくすることができる。
【0055】
なお、以上の実施形態では、CNT構造体13を円筒状に形成しているが、円筒状以外の筒状に形成しても良い。
【0056】
また、上記各実施形態では、CNT構造体13に銅またはアルミニウム及びその合金等の導電性の金属を加圧により含浸させた例を示したが、圧粉成形によりCNT構造体13に銅またはアルミニウム及びその合金等の導電性の金属を混ぜ合わせて圧粉体としても良い。
【0057】
また、上記各実施形態では、芯導体12が銅製の棒体からなる銅コア材で形成され、CNT構造体13に導電性の金属としてアルミニウムを含浸又は圧粉成形させた例を示し、導電性の金属コア材の周囲に導電性の金属を含浸又は圧粉成形させた例をしたが、導電性の金属を含浸又は圧粉成形させたCNT構造体の周囲に導電性の金属を配置しても良い。
【0058】
以下に、芯導体12とCNT構造体13との組合せを示す。
【0059】
(1)中心部の導電性のコア材の周囲に導電性の金属が付着したCNT構造体を配置する場合の組合せは、
芯導体12 CNT構造体
(a)銅コア材 アルミニウムが付着(第1〜第4実施形態)
(b)アルミニウムのコア材 銅が付着
(c)銅コア材 銅が付着
(d)アルミニウムのコア材 アルミニウムが付着
(2)中心部に金属が付着したCNT構造体を配置しその周囲に導電性の金属(芯導体)を被せる場合の組合せ
CNT構造体 芯導体(外周導体)
(a)アルミニウムが付着 銅材
(b)銅が付着 銅材
(c)アルミニウムが付着 アルミニウム
(d)銅が付着 アルミニウム
上記の組合せの中で、(2)−(a)、(b)は、銅が付着した芯導体(外周導体)が外周にあるので、腐食の軽減を図ることができる。
【0060】
また、(1)−(b)、(c)の場合でも、銅が付着したCNT構造体が外周にあるので、腐食の軽減を図ることができる。
【符号の説明】
【0061】
11、14、19、21 導電材
12 芯導体
13 カーボンナノチューブ構造体
16 導電性の金属
17 複合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導電性の金属が電気的接触状態で付着するカーボンナノチューブ構造体を含む複合体により形成されていることを特徴とする導電材。
【請求項2】
請求項1記載の導電材であって、前記複合体は、導電性の芯導体と、この芯導体の外周に電気的接触状態で設けられ導電性の金属が電気的接触状態で付着するカーボンナノチューブ構造体とにより形成されていることを特徴とする導電材。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の導電材であって、前記カーボンナノチューブ構造体は、カーボンナノチューブの表面、カーボンナノチューブの内部及びカーボンナノチューブの間に導電体が付着されて金属との濡れ性向上処理が施されていることを特徴とする導電材。
【請求項4】
請求項2又は3に記載の導電材であって、前記カーボンナノチューブ構造体は、加圧により導電性の金属が含浸されていることを特徴とする導電材。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の導電材であって、前記カーボンナノチューブ構造体は、導電性の金属が圧粉成形されていることを特徴とする導電材。
【請求項6】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の導電材であって、前記カーボンナノチューブ構造体は、編組状に形成されて前記芯導体の外周に付着されていることを特徴とする導電材。
【請求項7】
請求項2〜5のいずれか1項に記載の導電材であって、前記カーボンナノチューブ構造体は、筒状に形成された状態で前記芯導体が内部に圧入されることにより芯導体の外周に付着されていることを特徴とする導電材。
【請求項8】
請求項2〜7のいずれか1項に記載の導電材であって、前記芯導体が銅又はアルミニウム及びその合金の棒体又は板体からなり、前記カーボンナノチューブ構造体は銅又はアルミニウムからなる導電性の金属が電気的接触状態で付着されていることを特徴とする導電材。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれか1項に記載の導電材の製造方法であって、カーボンナノチューブ構造体に導電性の金属を電気的接触状態で付着させることを特徴とする導電材の製造方法。
【請求項10】
請求項2〜8のいずれか1項に記載の導電材の製造方法であって、導電性の芯導体の外周に電気的接触状態でカーボンナノチューブ構造体を付着させることを特徴とする導電材の製造方法。
【請求項11】
請求項2〜8のいずれか1項に記載の導電材の製造方法であって、カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの表面、カーボンナノチューブの内部又はカーボンナノチューブの間に導電体を付着させて金属との濡れ性向上処理を施した後、カーボンナノチューブ構造体を編組状に形成して導電性の芯導体の外周に付着させ、前記芯導体に付着した編組状のカーボンナノチューブ構造体に導電性の金属を電気的接触状態で付着させることを特徴とする導電材の製造方法。
【請求項12】
請求項2〜8のいずれか1項に記載の導電材の製造方法であって、カーボンナノチューブ構造体におけるカーボンナノチューブの表面、カーボンナノチューブの内部又はカーボンナノチューブの間に導電体を付着させて金属との濡れ性向上処理を施した後、カーボンナノチューブ構造体に導電性の金属を含浸させて筒状に形成し、この筒状のカーボンナノチューブ構造体の内部に導電性の芯導体を密着状態で挿入することを特徴とする導電材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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