説明

導電膜の製造方法

【課題】カレンダーロールによって平滑化処理する場合に、しわによる変形不良の発生を抑制することができ、導電膜の高品質化並びに生産性の向上を図る。
【解決手段】導電膜の製造方法は、厚みが95μmの長尺の支持体上に銀塩を含有する乳剤層を有する感光材料を露光し、現像処理することにより金属銀部を形成して導電膜前駆体を作製する金属銀形成工程と、前記導電膜前駆体を平滑化処理して導電膜を得る平滑化処理工程とを有する。平滑化処理は、互いに対向して配置された第1カレンダーロールと第2カレンダーロールを用いて前記導電膜前駆体を押圧し、前記支持体に接触する前記第1カレンダーロールが樹脂製ロールであり、前記導電膜前駆体を前記平滑化処理工程に投入する際の搬送力をP1、前記平滑化処理を終えた前記導電膜を前記平滑化処理工程から排出する際の搬送力をP2としたとき、1/2≦P1/P2≦1である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種表示装置の透光性電磁波シールド膜、各種電子デバイスの透明電極、透明面状発熱体等として有用な導電性を兼ね備えた導電膜の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近時、各種表示装置の透光性電磁波シールド膜、各種電子デバイスの透明電極、透明面状発熱体等として有用な導電性を兼ね備えた導電膜として、金属等の導電層の細線を透明基板上にメッシュパターン状に形成したものが知られており、以下のような製造方法が知られている。
【0003】
(1)透明基材上に貼合あるいは無電解めっき等によって銅薄膜層を形成した後、フォトリソグラフィ法によって銅薄膜層をエッチングしてパターン化する方法(例えば特許文献1、特許文献2参照)。
(2)パラジウム等の無電解めっき触媒粒子を含むインクを印刷によって透明基材上にパターン状に配置し、この上に無電解めっきを行い導電層を形成する方法(例えば特許文献3、特許文献4参照)。
(3)透明基材表面に設けたハロゲン化銀感光層をパターン状に露光してパターン状に現像銀を形成し、これにめっきを施しパターン状の導電層を形成する方法(例えば特許文献5、特許文献6参照)。
【0004】
上述した3つの手法のうち、(3)のハロゲン化銀を用いる方法は、フォトリソグラフィ法に比べて工程がシンプルであり、また、印刷法に比べて細線の形成も容易であり、さらに導電層を継ぎ目無く連続して形成するのに適している等の長所がある。加えて、このような銀塩(特にハロゲン化銀)感光材料を用いた導電膜に、カレンダーロールによって平滑化処理を行うことで、導電膜の表面抵抗を十分に低減できる。しかも、所望のパターンで、均一な形状の金属銀部を形成することができ、導電膜の生産性をさらに向上させることができる、という効果もある(例えば特許文献7参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平5−16281号公報
【特許文献2】特開平10−163673号公報
【特許文献3】特開平11-170420号公報
【特許文献4】特開2003−318593号公報
【特許文献5】国際公開第01/51276号パンフレット
【特許文献6】特開2004−221564号公報
【特許文献7】特開2008−251417号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、銀塩を含有した乳剤層を有する感光材料を用いた導電膜前駆体、特に、支持体の厚みが95μm以上の長尺の支持体を用いた導電膜前駆体に対して、カレンダーロールによって平滑化処理する場合、しわによる変形不良を考慮しなければならない。特許文献7には、しわ防止の点から金属製ロールとプラスチック製ロールの組み合わせとすることができる旨の記載がある。
【0007】
しかし、しわの発生を防止するには、金属製ロールとプラスチック製ロールの組み合わせだけではなく、導電膜前駆体の搬送力についても考慮する必要がある。
【0008】
本発明はこのような課題を考慮してなされたものであり、銀塩を含有した乳剤層を有する感光材料を用いた導電膜、特に、支持体の厚みが95μm以上の長尺の支持体を用いた導電膜に対して、カレンダーロールによって平滑化処理する場合に、しわによる変形不良の発生を抑制することができ、導電膜の高品質化並びに生産性の向上を図ることができる導電膜の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
[1] 本発明に係る導電膜の製造方法は、長尺の支持体上に銀塩を含有する乳剤層を有する感光材料を露光し、現像処理することにより金属銀部を形成して導電膜前駆体を作製する金属銀形成工程と、前記導電膜前駆体を平滑化処理して導電膜を得る平滑化処理工程とを有する導電膜の製造方法において、前記支持体の厚みが95μm以上であり、前記平滑化処理は、互いに対向して配置された第1カレンダーロールと第2カレンダーロールを用いて前記導電膜前駆体を押圧し、前記支持体に接触する前記第1カレンダーロールが樹脂製ロールであり、前記導電膜前駆体を前記平滑化処理工程に投入する際の搬送力をP1、前記平滑化処理を終えた前記導電膜を前記平滑化処理工程から排出する際の搬送力をP2としたとき、
1/2≦P1/P2≦1
であることを特徴とする。
[2] 本発明において、前記導電膜前駆体の表面抵抗をR1、前記導電膜の表面抵抗をR2としたとき、
0.58≦R2/R1≦0.77
であることを特徴とする。
[3] 本発明において、前記支持体の厚みが95μm以上150μm以下であることを特徴とする。
[4] 本発明において、前記感光材料の厚みが100μm以上200μm以下であることを特徴とする。
[5] 本発明において、前記導電膜が2m以上の長尺状のものであることを特徴とする。
[6] 本発明において、前記金属銀部に接触する前記第2カレンダーロールが金属製ロールであることを特徴とする。
[7] 本発明において、前記金属製ロールの表面がエンボス加工されていることを特徴とする。
[8] 本発明において、前記金属製ロールの表面粗さが最大高さRmaxで0.05〜0.8sであることを特徴とする。
[9] 本発明において、前記乳剤層は、銀/バインダの体積比率が1/1以上であることを特徴とする。
[10] 本発明において、前記平滑化処理は、前記導電膜前駆体に対して荷重(線圧力)200〜600kgf/cm(1960〜5880N/cm)で行うことを特徴とする。
[11] 本発明において、前記平滑化処理は、前記導電膜前駆体の搬送速度を10〜50m/分で行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
以上説明したように、本発明に係る導電膜の製造方法によれば、銀塩を含有した乳剤層を有する感光材料を用いた導電膜、特に、支持体の厚みが95μm以上の長尺の支持体を用いた導電膜に対して、カレンダーロールによって平滑化処理する場合に、しわによる変形不良の発生を抑制することができ、導電膜の高品質化並びに生産性の向上を図ることができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の導電膜の製造方法について説明する。なお、本発明の製造方法にて製造された導電膜は、車両のデフロスタ(霜取り装置)、窓ガラス等の一部として使用可能で、電流を流すことで発熱し発熱シートとしても機能し、また、タッチパネル用電極、無機EL素子、有機EL素子あるいは太陽電池の電極、又はプリント基板としても使用することができる。
【0012】
なお、本明細書において「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0013】
〈導電膜製造用感光材料〉
[支持体]
本発明の製造方法に用いられる感光材料の支持体としては、プラスチックフイルム、プラスチック板、及びガラス板等を用いることができる。上記プラスチックフイルム及びプラスチック板の原料については、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、及びポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリスチレン、EVA等のポリオレフィン類;ポリ塩化ビニル、ポリ塩化ビニリデン等のビニル系樹脂;その他、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリサルホン(PSF)、ポリエーテルサルホン(PES)、ポリカーボネート(PC)、ポリアミド、ポリイミド、アクリル樹脂、トリアセチルセルロース(TAC)等を用いることができる。
【0014】
支持体の厚みは95μm以上であればよく、上限値は150μm以下であることが好ましい。本発明の方法によれば、支持体の厚みが95μm以上の長尺の支持体を用いた導電膜に対して、カレンダーロールによって平滑化処理する場合に、しわによる変形不良の発生を抑制することができる。支持体の厚みが100μm以上の場合にはしわによる変形不良が発生しやすいが、本発明の方法によれば、このような条件でもしわによる変形不良の発生を十分に抑制することができる。
【0015】
[銀塩含有層]
本発明の製造方法に用いられる感光材料は、支持体上に、光センサとして銀塩を含む乳剤層(銀塩含有層)を有する。銀塩含有層は、銀塩のほか、バインダ、溶媒等を含有することができる。また、疑義がない場合には、銀塩を含む乳剤層(あるいは銀塩含有層)を単に「乳剤層」と呼ぶこともある。
【0016】
支持体上に塗布されて乳剤層となる乳剤(銀塩のほか、バインダ、溶剤等を含有する液体)は、貯留タンクに一時的に貯留され、該貯留タンクから必要な量だけ排出されて送液設備を介して塗布工程に送液されることになる。送液設備としては、往復動ポンプが好ましく採用され、具体的には、プランジャーポンプやダイヤフラムポンプが使用される。
【0017】
ここで、プランジャーポンプを使用した場合と、ダイヤフラムポンプを使用した場合の違いを説明する。
【0018】
先ず、プランジャーポンプは、ピストン部分と円筒部分の間に摺動する部分が存在する。乳剤に含まれるバインダとしてのゼラチンが豊富であれば、そのゼラチンによってハロゲン化銀が保護されているため,プランジャーポンプの摺動の影響を受けない。乳剤中の銀/バインダの体積比率が1.5/1〜4/1のように、銀量が多い乳剤の場合は、バインダの量が少なくなるため、摺動による圧力被りにより還元銀が発生しやすい。そのため、塗布膜(乳剤層)中に、還元銀が混入し,現像工程において感光させた部分以外に黒ポツと呼ばれる好ましくない現象が発生する。
【0019】
一方、ダイヤフラムポンプは、プランジャーポンプとほぼ同様の構成を有するが、ピストン部分が伸び縮みする柔らかい膜(ダイヤフラム:ゴム等の膜)に置き換えた点で異なる。摺動部分が存在しないことから、乳剤中の銀/バインダの体積比率が1.5/1〜4/1のように、銀量が多い乳剤であっても、圧力被りさせずに送液することができ、好ましい。
【0020】
つまり、乳剤中の銀/バインダの体積比率が0.25/1〜1/1のように、銀量が少ない乳剤を送液する場合は、プランジャーポンプ及びダイヤフラムポンプを使用することができ、乳剤中の銀/バインダの体積比率が1.5/1〜4/1のように、銀量が多い乳剤を送液する場合は、ダイヤフラムポンプを使用することが好ましい。特に、ダイヤフラムを押えるパッキンの素材をフッ化炭素樹脂、例えばポリテトラフルオロエチレンとすることが好ましい。密閉性が高く、送液する乳剤の漏れや空気等の混入を防止することができるからである。
【0021】
乳剤層の膨潤は250%以上であることを特徴とする。本発明において、膨潤率は以下のように定義する。
膨潤率(%)=100×((b)−(a))/(a)
【0022】
上記式において、(a)は乾燥時の乳剤層膜厚、(b)は25℃の蒸留水に1分間浸漬した後の乳剤層膜厚を示している。
【0023】
乳剤層膜厚(a)の測定は、例えば試料の断面を走査型電子顕微鏡で観察することによって測定できる。膨潤後の乳剤層膜厚(b)は、膨潤した試料を液体窒素により凍結乾燥した後の試料断面を走査型電子顕微鏡で観察することにより測定可能である。
【0024】
本発明において、感光材料の乳剤層の膨潤は250%以上が好ましいが、好ましい範囲の膨潤率は乳剤層の銀/バインダの体積比率に依存する。すなわち、膜中のバインダ部は膨潤可能であるが、ハロゲン化銀は膨潤しないため、バインダ部の膨潤率が同じであっても銀/バインダの体積比率が高いほど乳剤層全体の膨潤率は低下するからである。本発明において、好ましい乳剤層の膨潤率は、乳剤層の銀/バインダの体積比率が4以下の場合は250%以上であり、乳剤層の銀/バインダの体積比率が4.5以上6未満の場合は200%以上であり、乳剤層の銀/バインダの体積比率が6以上の場合は150%以上である。
【0025】
乳剤層には、銀塩のほか、必要に応じて、染料、バインダ、溶媒等を含有することができる。以下、乳剤層に含まれる各成分について説明する。
【0026】
<染料>
感光材料には、少なくとも乳剤層に染料が含まれていてもよい。染料は、フィルタ染料としてもしくはイラジエーション防止その他種々の目的で乳剤層に含まれる。上記染料としては、固体分散染料を含有してよい。本発明に好ましく用いられる染料については、上述した特許文献7にその記載があるため、ここではその詳細説明を省略する。上記乳剤層中における染料の含有量は、イラジエーション防止等の効果と、添加量増加による感度低下の観点から、全固形分に対して0.01〜10質量%が好ましく、0.1〜5質量%がさらに好ましい。
【0027】
<銀塩>
本発明で用いられる銀塩としては、ハロゲン化銀等の無機銀塩及び酢酸銀等の有機銀塩が挙げられる。本発明においては、光センサとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましい。
【0028】
本発明で好ましく用いられるハロゲン化銀について説明する。
【0029】
本発明においては、光センサとしての特性に優れるハロゲン化銀を用いることが好ましく、ハロゲン化銀に関する銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等で用いられる技術は、本発明においても用いることができる。
【0030】
上記ハロゲン化銀に含有されるハロゲン元素は、塩素、臭素、ヨウ素及びフッ素のいずれであってもよく、これらを組み合わせでもよい。例えば、AgCl、AgBr、AgIを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられ、さらにAgBrやAgClを主体としたハロゲン化銀が好ましく用いられる。塩臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀もまた好ましく用いられる。より好ましくは、塩臭化銀、臭化銀、沃塩臭化銀、沃臭化銀であり、最も好ましくは、塩化銀50モル%以上を含有する塩臭化銀、沃塩臭化銀が用いられる。
【0031】
ハロゲン化銀は固体粒子状であり、露光、現像処理後に形成されるパターン状金属銀層の画像品質の観点からは、ハロゲン化銀の平均粒子サイズは、球相当径で0.1〜1000nm(1μm)であることが好ましく、0.1〜100nmであることがより好ましく、1〜50nmであることがさらに好ましい。なお、ハロゲン化銀粒子の球相当径とは、粒子形状が球形の同じ体積を有する粒子の直径である。
【0032】
本発明に用いられる乳剤層用塗布液であるハロゲン化銀乳剤は、P.Glafkides著 Chimieet Physique Photographique(Paul Montel社刊、1967年)、G.F.Dufin著 Photographic Emulsion Chemistry(The Forcal Press刊、1966年)、V.L.Zelikmanほか著 Making and Coating Photographic Emulsion(The Forcal Press刊、1964年)等に記載された方法を用いて調製することができる。
【0033】
<バインダ>
乳剤層には、銀塩粒子を均一に分散させ、且つ、乳剤層と支持体との密着を補助する目的でバインダを用いることができる。本発明において上記バインダとしては、非水溶性ポリマー及び水溶性ポリマーのいずれもバインダとして用いることができるが、後述の温水に浸漬又は蒸気に接触させる処理により除去される水溶性バインダーの比率が多いことが好ましい。
【0034】
上記バインダとしては、例えば、ゼラチン、カラギーナン、ポリビニルアルコール(PVA)、ポリビニルピロリドン(PVP)、澱粉等の多糖類、セルロース及びその誘導体、ポリエチレンオキサイド、ポリサッカライド、ポリビニルアミン、キトサン、ポリリジン、ポリアクリル酸、ポリアルギン酸、ポリヒアルロン酸、カルボキシセルロース等が挙げられる。これらは、官能基のイオン性によって中性、陰イオン性、陽イオン性の性質を有する。
【0035】
好ましくはゼラチンが使用される。ゼラチンとしては石灰処理ゼラチンの他、酸処理ゼラチンを用いてもよく、ゼラチンの加水分解物、ゼラチン酵素分解物、その他(アミノ基、カルボキシル基を修飾したフタル化ゼラチン、アセチル化ゼラチン)を使用することができるが、銀塩調製工程において使用するゼラチンはアミノ基の正の電荷を無電荷あるいは負の電荷に変えたゼラチンを用いることが好ましいが、さらにフタル化ゼラチンを用いるのがより好ましい。
【0036】
乳剤層中に含有されるバインダの含有量は、特に限定されず、分散性と密着性を発揮し得る範囲で適宜決定することができる。乳剤層中のバインダの含有量は、銀/バインダ体積比率が1/2以上であることが好ましく、1/1以上であることがより好ましい。
【0037】
<溶媒>
上記乳剤層の形成に用いられる溶媒は、特に限定されるものではないが、例えば、水、有機溶媒(例えば、メタノール等アルコール類、アセトン等、ケトン類、ホルムアミド等のアミド類、ジメチルスルホキシド等のスルホキシド類、酢酸エチル等のエステル類、エーテル類等)、イオン性液体、及びこれらの混合溶媒を挙げることができる。本発明の乳剤層に用いられる溶媒の含有量は、前記乳剤層に含まれる銀塩、バインダ等の合計の質量に対して30〜90質量%の範囲であり、50〜80質量%の範囲であることが好ましい。
【0038】
[非感光性中間層]
ゼラチン又はゼラチン及びSBRを含む層であり、その他に架橋剤や界面活性剤等の添加剤を含有することができる。
【0039】
[その他の層構成]
乳剤層の上に保護層を設けてもよい。本発明において「保護層」とは、ゼラチンや高分子ポリマーといったバインダからなる層を意味し、擦り傷防止や力学特性を改良する効果を発現するために感光性を有する乳剤層上に形成される。その厚みは0.3μm以下が好ましい。上記保護層の塗布方法及び形成方法は特に限定されず、公知の塗布方法を適宜選択することができる。
【0040】
〈導電膜の製造方法〉
上記の感光材料を用いて、導電膜を製造する方法について説明する。
【0041】
本発明の導電膜の製造方法では、先ず、支持体上に銀塩を含有する乳剤層を有する感光材料を露光し、現像処理を施す。その後、現像処理により形成された金属銀部を平滑化処理(例えば、カレンダー処理)する。なお、金属銀部を形成する際には、金属銀部と光透過性部又は金属銀部と絶縁性部を形成してもよく、全面露光することでフイルムの全面に金属銀部を形成することもできる。なお、本発明によって得られる導電膜は、パターン露光によって金属が支持体上に形成されたものであるが、パターン露光は走査露光方式であっても面露光方式であってもよい。また、金属銀部は露光部に形成される場合と、未露光部に形成される場合とがある。
【0042】
パターンの例としては、電磁波シールド膜の製造用にはメッシュ状のパターンであり、プリント基板の製造には、配線パターンであり、パターンの形状の更なる詳細は目的に応じて適宜調整することができる。
【0043】
本発明の導電膜の製造方法は、感光材料と現像処理の形態によって、次の3通りの形態が含まれる。
(1)物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を化学現像又は熱現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる態様。
(2)物理現像核をハロゲン化銀乳剤層中に含む感光性ハロゲン化銀黒白感光材料を溶解物理現像して金属銀部を該感光材料上に形成させる態様。
(3)物理現像核を含まない感光性ハロゲン化銀黒白感光材料と、物理現像核を含む非感光性層を有する受像シートを重ね合わせて拡散転写現像して金属銀部を非感光性受像シート上に形成させる態様。
【0044】
いずれの態様もネガ型現像処理及び反転現像処理のいずれの現像を選択することもできる(拡散転写方式の場合は、感光材料としてオートポジ型感光材料を用いることによってネガ型現像処理を行う態様も可能である)。
【0045】
ここでいう化学現像、熱現像、溶解物理現像、及び拡散転写現像は、当業界で通常用いられている用語どおりの意味であり、写真化学の一般教科書、例えば菊地真一著「写真化学」(共立出版社刊行)、C.E.K.Mees編「The Theory of Photographic Prosess,第4版」等に解説されている。
【0046】
[露光]
本発明の製造方法では、支持体上に設けられた銀塩含有層の露光を行う。露光は、電磁波を用いて行うことができる。電磁波としては、例えば、可視光線、紫外線等の光、X線等の放射線等が挙げられる。さらに露光には波長分布を有する光源を利用してもよく、特定の波長の光源を用いてもよい。照射光のパターン化の形態としては、電磁波シールド膜の製造用にはメッシュ状のパターンであり、プリント基板の製造には、配線パターンである。
【0047】
[現像処理]
本発明の製造方法では、銀塩含有層を露光した後、さらに現像処理が施される。上記現像処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる通常の現像処理の技術を用いることができる。現像液については特に限定はしないが、PQ現像液、MQ現像液、MAA現像液等を用いることもできる。市販品としては、例えば、富士フイルム社処方のCN−16、CR−56、CP45X、FD−3、パピトールや、KODAK社処方のC−41、E−6、RA−4、Dsd−19、D−72等の現像液、又はそのキットに含まれる現像液を用いることができる。また、リス現像液を用いることもできる。リス現像液としては、KODAK社処方のD85等を用いることができる。
【0048】
本発明の製造方法では、上記の露光及び現像処理を行うことにより露光部に金属銀部が形成されると共に、未露光部に後述する光透過性部が形成される。また、上記現像処理に続き、必要によりサンプルを水洗し、脱バインダ処理を行うことにより、さらに導電性の高いフイルムを得ることができる。なお、本発明では、現像温度、定着温度及び水洗温度は25℃以下で行うことが好ましい。
【0049】
本発明の製造方法における現像処理は、未露光部分の銀塩を除去して安定化させる目的で行われる定着処理を含むことができる。本発明の製造方法において、定着処理は、銀塩写真フイルムや印画紙、印刷製版用フイルム、フォトマスク用エマルジョンマスク等に用いられる定着処理の技術を用いることができる。
【0050】
現像処理で用いられる現像液には、画質を向上させる目的で、画質向上剤を含有することができる。上記画質向上剤としては、例えば、ベンゾトリアゾール等の含窒素へテロ環化合物を挙げることができる。また、リス現像液を利用する場合は、特にポリエチレングリコールを使用することも好ましい。
【0051】
現像処理後の露光部に含まれる金属銀の質量は、露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上の含有率であることが好ましく、80質量%以上であることがさらに好ましい。露光部に含まれる銀の質量が露光前の露光部に含まれていた銀の質量に対して50質量%以上であれば、高い導電性を得やすいため好ましい。
【0052】
現像処理後の露光部に含まれる金属銀部は銀及び、非導電性の高分子からなり、銀/非導電性高分子の体積比率が2/1以上であることを好ましく、3/1以上であることがさらに好ましい。
【0053】
本発明における現像処理後の階調は、特に限定されるものではないが、4.0を超えることが好ましい。現像処理後の階調が4.0を超えると、光透過性部の透明性を高く保ったまま、導電性金属部の導電性を高めることができる。階調を4.0以上にする手段としては、例えば、前述のロジウムイオン、イリジウムイオンのドープが挙げられる。
【0054】
[酸化処理]
本発明の製造方法では、現像処理後の金属銀部は、好ましくは酸化処理が行われる。酸化処理を行うことにより、例えば、光透過性部に金属が僅かに沈着していた場合に、該金属を除去し、光透過性部の透過性をほぼ100%にすることができる。
【0055】
上記酸化処理としては、例えば、Fe(III)イオン処理等、種々の酸化剤を用いた公知の方法が挙げられる。酸化処理は、銀塩含有層の露光及び現像処理後に行うことができる。
【0056】
本発明では、さらに露光及び現像処理後の金属銀部を、Pdを含有する溶液で処理することもできる。Pdは、2価のパラジウムイオンであっても金属パラジウムであってもよい。この処理により金属銀部の黒色が経時変化することを抑制できる。
【0057】
なお、本発明の製造方法においては、線幅、開口率、銀含有量を特定したメッシュ状の金属銀部を、露光・現像処理によって直接支持体上に形成するため、十分な表面抵抗率を有することから、さらに金属銀部に物理現象及び/又はメッキ処理を施してあらためて導電性を付与する必要がない。このため、簡易な工程で透光性の導電膜を製造することができる。
【0058】
上述の通り、本発明の透光性の導電膜は、車両のデフロスタ(霜取り装置)、窓ガラス等の一部として使用可能で、電流を流すことで発熱し発熱シートとしても機能し、また、タッチパネル用電極、無機EL素子、有機EL素子あるいは太陽電池の電極、又はプリント基板としても使用することができる。
【0059】
[還元処理]
現像処理後に還元水溶液に浸漬することで、好ましい導電性の高いフイルムを得ることができる。還元水溶液としては、亜硫酸ナトリム水溶液、ハイドロキノン水溶液、パラフェニレンジアミン水溶液、シュウ酸水溶液等を用いることができ、水溶液pHは10以上とすることがさらに好ましい。
【0060】
[平滑化処理]
本発明の製造方法では、現像処理済みの金属銀部(全面金属銀部、金属メッシュ状パターン部又は金属配線パターン部)に平滑化処理を施す。これによって金属銀部の導電性が顕著に増大する。さらに、金属銀部と光透過性部の面積を好適に設計することで、高い電磁波シールド性と高い透光性とを同時に有し、且つ、メッシュ部が黒色の透光性電磁波シールド膜や、各種電子デバイスの透明電極、透明面状発熱体等として有用な導電性を兼ね備えた導電膜が得られる。
【0061】
平滑化処理は、例えばカレンダーロールにより行うことができる。カレンダーロールは、通常、一対のロールからなる。以下、カレンダーロールを用いた平滑化処理をカレンダー処理と記す。
【0062】
カレンダー処理に用いられるロールとしては、エポキシ、ポリイミド、ポリアミド、ポリイミドアミド等の樹脂製ロール又は金属製ロールが用いられる。特に、片面に乳剤層を有する場合は、しわの発生を抑制するために、以下の条件にてカレンダー処理することが好ましい。
【0063】
(1) 長尺の支持体上に銀塩を含有する乳剤層を有する感光材料を露光し、その後、現像処理し、好ましくは定着処理することにより金属銀部が形成された導電膜前駆体の前記支持体の厚みが95μm以上であること。
(2) カレンダー処理は互いに対向して配置された第1カレンダーロールと第2カレンダーロールを用いて導電膜前駆体を押圧すること。
(3) 支持体に接触する第1カレンダーロールが樹脂製ロールであること。
(4) 導電膜前駆体をカレンダー処理工程に投入する際の搬送力をP1、カレンダー処理を終えた導電膜をカレンダー処理工程から排出する際の搬送力をP2としたとき、
1/2≦P1/P2≦1
であること。
【0064】
これによって、銀塩を含有した乳剤層を有する感光材料を用いた導電膜、特に、支持体の厚みが95μm以上の長尺の支持体を用いた導電膜に対して、カレンダーロールによって平滑化処理する場合に、しわによる変形不良の発生を抑制することができ、導電膜の高品質化並びに生産性の向上を図ることができる。また、導電膜が2m以上の長尺状のものであっても、しわによる変形不良の発生を抑制することができる。
【0065】
さらに好ましい条件としては、以下の通りである。少なくともいずれか1つを満足すればよい。
(a) 導電膜前駆体の金属銀部に接触する第2カレンダーロールが金属製ロールであること。
(b) 金属製ロールの表面が鏡面加工されていること。
(c) 金属製ロールの表面がエンボス加工されていること。
(d) エンボス加工された金属製ロールの表面粗さは、最大高さRmaxで0.05〜0.8sであること。
(e) 感光材料の乳剤層は、銀/バインダの体積比率が1/1以上であること。
(f) カレンダー処理は、導電膜前駆体に対して荷重(線圧力)200kgf/cm(1960N/cm)以上(好ましくは200〜600kgf/cm(1960〜5880N/cm)、より好ましくは300〜600kgf/cm(2940〜5880N/cm))で行うこと。
(g) カレンダー処理は、導電膜前駆体の搬送速度を10〜50m/分で行うこと。
(h) 導電膜前駆体の表面抵抗をR1、導電膜の表面抵抗をR2としたとき、
0.58≦R2/R1≦0.77
であること。
【0066】
カレンダー処理の適用温度は10℃(温調なし)〜100℃が好ましく、より好ましい温度は、金属メッシュ状パターンや金属配線パターンの画線密度や形状、バインダー種によって異なるが、おおよそ10℃(温調なし)〜50℃の範囲にある。
【0067】
以上に述べたように本発明の製造方法によって、表面抵抗が1.9(オーム/sq)未満という高い導電性を有する導電膜を簡便で低コストで製造することができる。
【0068】
すなわち、本発明の導電膜の製造方法によれば、支持体上に銀塩を含有する銀塩含有層を有する感光材料を露光し現像処理することで、支持体上に0.1〜10g/m2である銀を含む金属銀部を有し、表面抵抗が1.9未満である導電膜(但し、金属銀部上にさらに導電性層は形成されていない)を得ることができる。
【0069】
〔温水に浸漬又は蒸気に接触させる処理〕
本発明の方法では、支持体上に導電性金属部を形成した後、前記の導電性金属部が形成された支持体を温水ないしはそれ以上の温度の加熱水に浸漬させるか又は水蒸気に接触させる。これにより短時間で簡便に導電性及び透明性を向上させることができる。水溶性バインダの一部が除去されて金属(導電性物質)同士の結合部位が増加しているものと考えられる。本プロセスは、現像処理後に実施できるが、平滑化処理後に行うことが望ましい。
【0070】
支持体を浸漬させる温水ないしはそれ以上の温度の加熱水の温度は好ましくは60℃以上100℃以下であり、より好ましくは80℃〜100℃である。また、支持体に接触させる水蒸気の温度は、1気圧で100℃以上140℃以下が好ましい。温水ないしはそれ以上の温度の加熱水への浸漬時間又は蒸気への接触時間は、使用する水溶性バインダーの種類によって異なるが、支持体のサイズが60cm×1mの場合、約10秒〜約5分程度が好ましく、約1分〜約5分がさらに好ましい。
【0071】
[めっき処理]
本発明においては、上記平滑化処理を行えばよいが、金属銀部に対してめっき処理を行ってもよい。めっき処理により、さらに表面抵抗を低減でき、導電性を高めることができる。平滑化処理は、めっき処理の前段又は後段のいずれで行ってもよいが、めっき処理の前段で行うことで、めっき処理が効率化され均一なめっき層が形成される。めっき処理としては、電解めっきでも無電解めっきでもよい。まためっき層の構成材料は十分な導電性を有する金属が好ましく、銅が好ましい。
【0072】
なお、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、本発明と例えば下記公報に開示の技術を組合わせて使用することができる。特開2004−221564号公報、特開2004−221565号公報、特開2007−200922号公報、特開2006−352073号公報、国際公開第2006/001461号パンフレット、特開2007−129205号公報、特開2007−235115号公報、特開2007−207987号公報、特開2006−012935号公報、特開2006−010795号公報、特開2006−228469号公報、特開2006−332459号公報、特開2007−207987号公報、特開2007−226215号公報、国際公開第2006/088059号パンフレット、特開2006−261315号公報、特開2007−072171号公報、特開2007−102200号公報、特開2006−228473号公報、特開2006−269795号公報、特開2006−267635号公報、国際公開第2006/098333号パンフレット、特開2006−324203号公報、特開2006−228478号公報、特開2006−228836号公報、国際公開2006/098336号パンフレット、国際公開第2006/098338号パンフレット、特開2007−009326号公報、特開2006−336090号公報、特開2006−336099号公報、特開2006−348351号公報、特開2007−270321号公報、特開2007−270322号公報、国際公開第2006/098335号パンフレット、特開2007−201378号公報、特開2007−335729号公報、国際公開第2006/098334号パンフレット、特開2007−134439号公報、特開2007−149760号公報、特開2007−208133号公報、特開2007−178915号公報、特開2007−334325号公報、特開2007−310091号公報、2007−116137号公報、特開2007−088219号公報、特開2007−207883号公報、特開2007−013130号公報、国際公開第2007/001008号パンフレット、特開2005−302508号公報、特開2008−218784号公報、特開2008−227350号公報、特開2008−227351号公報、特開2008−244067号公報、特開2008−267814号公報、特開2008−270405号公報、特開2008−277675号公報、特開2008−277676号公報、特開2008−282840号公報、特開2008−283029号公報、特開2008−288305号公報、特開2008−288419号公報、特開2008−300720号公報、特開2008−300721号公報、特開2009−4213号公報、特開2009−10001号公報、特開2009−16526号公報、特開2009−21334号公報、特開2009−26933号公報、特開2008−147507号公報、特開2008−159770号公報、特開2008−159771号公報、特開2008−171568号公報、特開2008−198388号公報、特開2008−218096号公報、特開2008−218264号公報、特開2008−224916号公報、特開2008−235224号公報、特開2008−235467号公報、特開2008−241987号公報、特開2008−251274号公報、特開2008−251275号公報、特開2008−252046号公報、特開2008−277428、特開2009−21153号公報。
【実施例】
【0073】
以下に本発明の実施例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。なお、以下の実施例に示される材料、使用量、割合、処理内容、処理手順等は、本発明の趣旨を逸脱しない限り適宜変更することができる。したがって、本発明の範囲は以下に示す具体例により限定的に解釈されるべきものではない。
【0074】
〔第1実施例〕
<実施例1〜6、比較例1〜7>
[乳剤の調製]
・1液:
水 750ml
フタル化処理ゼラチン 20g
塩化ナトリウム 3g
1,3−ジメチルイミダゾリジン−2−チオン 20mg
ベンゼンチオスルホン酸ナトリウム 10mg
クエン酸 0.7g
・2液
水 300ml
硝酸銀 150g
・3液
水 300ml
塩化ナトリウム 38g
臭化カリウム 32g
ヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム
(0.005%KCl 20%水溶液) 5ml
ヘキサクロロロジウム酸アンモニウム
(0.001%NaCl 20%水溶液) 7ml
【0075】
3液に用いるヘキサクロロイリジウム(III)酸カリウム(0.005%KCl 20%水溶液)及びヘキサクロロロジウム酸アンモニウム(0.001%NaCl 20%水溶液)は、それぞれの錯体粉末をそれぞれKCl20%水溶液、NaCl20%水溶液に溶解し、40℃で120分間加熱して調製した。
【0076】
38℃、pH4.5に保たれた1液に、2液と3液の各々90%に相当する量を攪拌しながら同時に20分間にわたって加え、0.16μmの核粒子を形成した。続いて下記4液、5液を8分間にわたって加え、さらに、2液と3液の残りの10%の量を2分間にわたって加え、0.21μmまで成長させた。さらに、ヨウ化カリウム0.15gを加え5分間熟成し粒子形成を終了した。
【0077】
・4液
水 100ml
硝酸銀 50g
・5液
水 100ml
塩化ナトリウム 13g
臭化カリウム 11g
黄血塩 5mg
【0078】
その後、常法に従ってフロキュレーション法によって水洗した。具体的には、温度を35℃に下げ、硫酸を用いてハロゲン化銀が沈降するまでpHを下げた(pH3.6±0.2の範囲であった)。次に、上澄み液を約3リットル除去した(第一水洗)。さらに3リットルの蒸留水を加えてから、ハロゲン化銀が沈降するまで硫酸を加えた。再度、上澄み液を3リットル除去した(第二水洗)。第二水洗と同じ操作をさらに1回繰り返して(第三水洗)、水洗・脱塩行程を終了した。水洗・脱塩後の乳剤をpH6.4、pAg7.5に調整し、安定剤として1,3,3a,7−テトラアザインデン100mg、防腐剤としてプロキセル(商品名、ICI Co.,Ltd.製)100mgを加えた。最終的に塩化銀を70モル%、沃化銀を0.08モル%含む平均粒子径0.22μm、変動係数9%のヨウ塩臭化銀立方体粒子乳剤を得た。最終的に乳剤として、pH=6.4、pAg=7.5、電導度=4000μS/cm、密度=1.4×103kg/m3、粘度=20mPa・sとなった。
【0079】
[塗布試料の作製]
上記乳剤に下記化合物(Cpd−1)8.0×10-4モル/モルAg、1,3,3a,7−テトラアザインデン1.2×10-4モル/モルAgを添加しよく混合した。次いで、膨潤率調製のため必要により、下記化合物(Cpd−2)を添加し、クエン酸を用いて塗布液pHを5.6に調整した。
【0080】
【化1】

【0081】
厚み100μmのポリエチレンテレフタレート(PET)上に下塗り層を形成した後、乳剤を用いて上記のように調製した乳剤層塗布液を、下塗り層上にAg5g/m2、ゼラチン0.4g/m2になるように塗布し、その後、乾燥させたものを塗布試料とした。
【0082】
得られた塗布試料は、乳剤層の銀/バインダ体積比率(銀/GEL比(vol))が1/1であり、本発明の導電膜形成用感光材料に好ましく用いられる銀/バインダ体積比率1/1以上を満足する。
【0083】
[露光、現像処理]
次いで、乾燥させた塗布膜にライン/スペース=5μm/195μmの現像銀像を与えうる格子状のフォトマスクライン/スペース=195μm/5μm(ピッチ200μm)の、スペースが格子状であるフォトマスクを介して高圧水銀ランプを光源とした平行光を用いて露光し、引き続き現像、定着、水洗、乾燥という工程を含む処理を行った。
【0084】
(現像液の組成)
現像液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
ハイドロキノン 15g/L
亜硫酸ナトリウム 30g/L
炭酸カリウム 40g/L
エチレンジアミン・四酢酸 2g/L
臭化カリウム 3g/L
ポリエチレングリコール2000 1g/L
水酸化カリウム 4g/L
pH 10.5に調整
【0085】
(定着液の組成)
定着液1リットル中に、以下の化合物が含まれる。
チオ硫酸アンモニウム(75%) 300ml
亜硫酸アンモニウム・一水塩 25g/L
1,3-ジアミノプロパン・四酢酸 8g/L
酢酸 5g/L
アンモニア水(27%) 1g/L
ヨウ化カリウム 2g/L
pH 6.2に調整
【0086】
[還元処理]
上記のように現像処理したサンプルを40℃に保温した亜硫酸ナトリウム(10wt%)水溶液に10分浸漬した。
【0087】
[カレンダー処理]
上記のように現像処理したサンプル(導電膜前駆体)に対して以下に示す条件でカレンダー処理した。内訳を表1に示す。
【0088】
【表1】

【0089】
(実施例1)
カレンダーロールとして、金属銀部に対向する金属製ロール(鉄芯+ハードクロムメッキ、鏡面加工、ロール直径250mm)と、支持体に対向する樹脂製ロール(鉄芯+エポキシ樹脂コート、ロール直径250mm)を用い、これら金属製ロールと樹脂製ロール間にサンプルを通し、荷重200kgf/cm(1960N/cm)にてサンプルに対してカレンダー処理を行うことにより、実施例1に係る導電膜を得た。このとき、サンプルをカレンダー処理工程に投入する際の搬送力(投入搬送力P1)は20(kg/幅)、カレンダー処理を終えたサンプルをカレンダー処理工程から排出する際の搬送力(排出搬送力P2)は20(kg/幅)で、P1/P2=1とした。また、サンプルの搬送速度を10m/分とした。
【0090】
(実施例2)
荷重を400kgf/cm(3920N/cm)としたこと以外は、実施例1と同様にして実施例2に係る導電膜を得た。
【0091】
(実施例3)
投入搬送力P1を15(kg/幅)、荷重を400kgf/cm(3920N/cm)としたこと以外は、実施例1と同様にして実施例3に係る導電膜を得た。
【0092】
(実施例4)
投入搬送力P1を10(kg/幅)、荷重を400kgf/cm(3920N/cm)としたこと以外は、実施例1と同様にして実施例4に係る導電膜を得た。
【0093】
(実施例5)
投入搬送力P1を10(kg/幅)、荷重を400kgf/cm(3920N/cm)、搬送速度を50m/分としたこと以外は、実施例1と同様にして実施例5に係る導電膜を得た。
【0094】
(実施例6)
荷重を400kgf/cm(3920N/cm)、搬送速度を50m/分としたこと以外は、実施例1と同様にして実施例6に係る導電膜を得た。
【0095】
(比較例1)
カレンダーロールとして、一対の金属製ロール(鉄芯+ハードクロムメッキ、鏡面加工、ロール直径250mm)を用い、これら一対の金属製ロール間にサンプルを通し、荷重300kgf/cm(2940N/cm)にてサンプルに対してカレンダー処理を行うことにより、比較例1に係る導電膜を得た。このとき、投入搬送力P1は40(kg/幅)、排出搬送力P2は20(kg/幅)で、P1/P2=2とした。また、サンプルの搬送速度を10m/分とした。
【0096】
(比較例2)
投入搬送力P1を45(kg/幅)としたこと以外は、比較例1と同様にして比較例2に係る導電膜を得た。
【0097】
(比較例3)
投入搬送力P1を45(kg/幅)、荷重を200kgf/cm(1960N/cm)としたこと以外は、比較例1と同様にして比較例3に係る導電膜を得た。
【0098】
(比較例4)
投入搬送力P1を45(kg/幅)、荷重を200kgf/cm(1960N/cm)、搬送速度を50m/分としたこと以外は、比較例1と同様にして比較例4に係る導電膜を得た。
【0099】
(比較例5)
荷重を400kgf/cm(3920N/cm)、搬送速度を50m/分としたこと以外は、比較例1と同様にして比較例5に係る導電膜を得た。
【0100】
(比較例6)
投入搬送力P1を30(kg/幅)、荷重を400kgf/cm(3920N/cm)、搬送速度を50m/分としたこと以外は、比較例1と同様にして比較例6に係る導電膜を得た。
【0101】
(比較例7)
投入搬送力P1を20(kg/幅)、荷重を400kgf/cm(3920N/cm)、搬送速度を50m/分としたこと以外は、比較例1と同様にして比較例7に係る導電膜を得た。
【0102】
[評価]
カレンダー処理を終えた実施例1〜6並びに比較例1〜7へのしわの発生状態を目視にて観察して評価した。評価結果を上記表1に示す。上記表1からわかるように、サンプルの金属銀部に金属製ロールを対向させ、サンプルの支持体に樹脂製ロールを対向させ、さらに、投入搬送力P1と排出搬送力P2との比(P1/P2)が1/2≦P1/P2≦1を満足する実施例1〜6では、しわの発生は観察できなかった。一方、サンプルを一対の金属製ロールでカレンダー処理し、且つ、投入搬送力P1と排出搬送力P2との比(P1/P2)が1/2≦P1/P2≦1を満足しない比較例1〜7ではしわが発生していることが観察された。
【0103】
〔第2実施例〕
金属製ロールとして鏡面加工された金属製ロールを用いた場合(実施例11〜15)と、エンボス加工された金属製ロールを用いた場合(実施例16〜20)での表面抵抗の減少率の違いを荷重を変えて測定した。なお、乳剤の調製、塗布試料の作製、露光・現像処理、還元処理は上述した実施例1と同様の方法で行った。
【0104】
[表面抵抗の測定]
実施例11〜20について、カレンダー処理前のサンプル(定着後)の表面抵抗値と、カレンダー処理後のサンプルの表面抵抗値を測定した。表面抵抗をダイアインスツルメンツ社製ロレスターGP(型番MCP−T610)直列4探針プローブ(ASP)にて任意の10箇所測定した値の平均値を表面抵抗値とした。実施例11〜20の測定結果を内訳と共に表2に示す。
【0105】
【表2】

【0106】
実施例1の支持体の厚みを90μm、120μm、150μmに代えたこと以外は実施例1と同様にしてカレンダ処理した導電膜を得た。これらの導電膜でもしわの発生のないものが得られた。支持体の厚みを厚くした場合にはしわが発生し易いが、本発明のように搬送力を調整することでしわの発生が抑制できる。
【0107】
(実施例11)
カレンダーロールとして、金属銀部に対向する金属製ロール(鉄芯+ハードクロムメッキ、鏡面加工、ロール直径250mm)と、支持体に対向する樹脂製ロール(鉄芯+エポキシ樹脂コート、ロール直径250mm)を用い、これら金属製ロールと樹脂製ロール間にサンプルを通し、荷重200kgf/cm(1960N/cm)にてサンプルに対してカレンダー処理を行うことにより、実施例11に係る導電膜を得た。なお、投入搬送力P1は20(kg/幅)、排出搬送力P2は20(kg/幅)で、P1/P2=1とした。また、サンプルの搬送速度を10m/分とした。カレンダー処理前のサンプル(定着後)の表面抵抗値は1.845(オーム/sq)、カレンダー処理後のサンプルの表面抵抗値は1.246(オーム/sq)で、減少率は1.246/1.845=0.68、すなわち、32%の減少であった。
【0108】
(実施例12)
荷重を300kgf/cm(2940N/cm)としたこと以外は、実施例11と同様にして実施例12に係る導電膜を得た。この場合、減少率は0.862/1.41=0.61で、39%の減少であった。
【0109】
(実施例13)
荷重を400kgf/cm(3920N/cm)としたこと以外は、実施例11と同様にして実施例13に係る導電膜を得た。この場合、減少率は0.914/1.533=0.60で、40%の減少であった。
【0110】
(実施例14)
荷重を500kgf/cm(4900N/cm)としたこと以外は、実施例11と同様にして実施例14に係る導電膜を得た。この場合、減少率は1.14/1.8=0.63で、37%の減少であった。
【0111】
(実施例15)
荷重を600kgf/cm(5880N/cm)としたこと以外は、実施例11と同様にして実施例15に係る導電膜を得た。この場合、減少率は1.025/1.771=0.58で、42%の減少であった。
【0112】
(実施例16)
カレンダーロールとして、金属銀部に対向する金属製ロール(鉄芯+ハードクロムメッキ、エンボス加工、表面粗さRmax=0.05〜0.8s、ロール直径250mm)と、支持体に対向する樹脂製ロール(鉄芯+エポキシ樹脂コート、ロール直径250mm)を用いたこと以外は、実施例11と同様にして実施例16に係る導電膜を得た。この場合、減少率は1.336/1.74=0.77で、23%の減少であった。
【0113】
(実施例17)
荷重を300kgf/cm(2940N/cm)としたこと以外は、実施例16と同様にして実施例17に係る導電膜を得た。この場合、減少率は1.162/1.716=0.68で、32%の減少であった。
【0114】
(実施例18)
荷重を400kgf/cm(3920N/cm)としたこと以外は、実施例16と同様にして実施例18に係る導電膜を得た。この場合、減少率は1.266/1.642=0.77で、23%の減少であった。
【0115】
(実施例19)
荷重を500kgf/cm(4900N/cm)としたこと以外は、実施例16と同様にして実施例19に係る導電膜を得た。この場合、減少率は1.192/1.804=0.66で、34%の減少であった。
【0116】
(実施例20)
荷重を600kgf/cm(5880N/cm)としたこと以外は、実施例16と同様にして実施例20に係る導電膜を得た。この場合、減少率は1.212/1.743=0.70で、30%の減少であった。
【0117】
[評価]
表2からわかるように、実施例11〜20では、導電膜前駆体の表面抵抗をR1、導電膜の表面抵抗をR2としたとき、0.58≦R2/R1≦0.77が得られており、表面抵抗を効率よく低減できていることがわかる。なお、エンボス加工の金属製ロールを用いた実施例16〜20は、鏡面加工の金属製ロールを用いた実施例11〜15よりも減少率が低い。これは、エンボス加工の表面の凹凸と樹脂の表面との組み合わせで、サンプルに対して圧力が均一にかからず、金属銀部の銀密度が高まっていないためだと考えられる。
【0118】
〔第3実施例〕
調製した乳剤を送液する送液設備をプランジャーポンプとした場合(参考例1〜6)と、ダイヤフラムポンプとした場合(実施例21〜26)とでの単位面積あたりの黒ポツの発生個数[個/mm2]を計数した。計数は、顕微鏡を用いて目視にて黒ポツを確認しながら行った。その結果を表3に示す。
【0119】
【表3】

【0120】
(参考例1、実施例21)
乳剤の銀/バインダ体積比率を0.25/1とした以外は、上述した実施例1と同様にして導電膜を作製した。
【0121】
(参考例2、実施例22)
乳剤の銀/バインダ体積比率を0.5/1とした以外は、上述した実施例1と同様にして導電膜を作製した。
【0122】
(参考例3、実施例23)
上述した実施例1(乳剤の銀/バインダ体積比率を1/1)と同様にして導電膜を作製した。
【0123】
(参考例4、実施例24)
乳剤の銀/バインダ体積比率を1.5/1とした以外は、上述した実施例1と同様にして導電膜を作製した。
【0124】
(参考例5、実施例25)
乳剤の銀/バインダ体積比率を2/1とした以外は、上述した実施例1と同様にして導電膜を作製した。
【0125】
(参考例6、実施例26)
乳剤の銀/バインダ体積比率を4/1とした以外は、上述した実施例1と同様にして導電膜を作製した。
【0126】
[評価]
表3に示すように、プランジャーポンプを使用した参考例1〜6のうち、乳剤の銀/バインダ体積比率を1/1以上の参考例3〜6は、黒ポツが発生しており、特に、乳剤の銀/バインダ体積比率が増加するにつれて、黒ポツの発生個数が指数関数的に増えていることがわかる。
【0127】
これに対して、ダイヤフラムポンプを使用した実施例21〜26は、測定範囲、すなわち、乳剤の銀/バインダ体積比率が0.25/1〜4/1の範囲にわたって黒ポツの発生はなかった。
【0128】
このことから、乳剤中の銀/バインダ体積比率が1.5/1〜4/1のように、銀量が多い乳剤を送液する場合は、ダイヤフラムポンプを使用することが好ましいことがわかる。
【0129】
なお、本発明に係る導電膜の製造方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
長尺の支持体上に銀塩を含有する乳剤層を有する感光材料を露光し、現像処理することにより金属銀部を形成して導電膜前駆体を作製する金属銀形成工程と、前記導電膜前駆体を平滑化処理して導電膜を得る平滑化処理工程とを有する導電膜の製造方法において、
前記支持体の厚みが95μm以上であり、
前記平滑化処理は、互いに対向して配置された第1カレンダーロールと第2カレンダーロールを用いて前記導電膜前駆体を押圧し、
前記支持体に接触する前記第1カレンダーロールが樹脂製ロールであり、
前記導電膜前駆体を前記平滑化処理工程に投入する際の搬送力をP1、前記平滑化処理を終えた前記導電膜を前記平滑化処理工程から排出する際の搬送力をP2としたとき、
1/2≦P1/P2≦1
であることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の導電膜の製造方法において、
前記導電膜前駆体の表面抵抗をR1、前記導電膜の表面抵抗をR2としたとき、
0.58≦R2/R1≦0.77
であることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項3】
請求項1記載の導電膜の製造方法において、
前記支持体の厚みが95μm以上150μm以下であることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項4】
請求項1記載の導電膜の製造方法において、
前記感光材料の厚みが100μm以上200μm以下であることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項5】
請求項1記載の導電膜の製造方法において、
前記導電膜が2m以上の長尺状のものであることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項6】
請求項1記載の導電膜の製造方法において、
前記金属銀部に接触する前記第2カレンダーロールが金属製ロールであることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項7】
請求項6記載の導電膜の製造方法において、
前記金属製ロールの表面がエンボス加工されていることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項8】
請求項6又は7記載の導電膜の製造方法において、
前記金属製ロールの表面粗さが最大高さRmaxで0.05〜0.8sであることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項9】
請求項1記載の導電膜の製造方法において、
前記乳剤層は、銀/バインダの体積比率が1/1以上であることを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項10】
請求項1記載の導電膜の製造方法において、
前記平滑化処理は、前記導電膜前駆体に対して荷重(線圧力)200〜600kgf/cm(1960〜5880N/cm)で行うことを特徴とする導電膜の製造方法。
【請求項11】
請求項1記載の導電膜の製造方法において、
前記平滑化処理は、前記導電膜前駆体の搬送速度を10〜50m/分で行うことを特徴とする導電膜の製造方法。

【公開番号】特開2010−199052(P2010−199052A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−131305(P2009−131305)
【出願日】平成21年5月29日(2009.5.29)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】