説明

導電路構造及びワイヤハーネス

【課題】導電路を切断するような事態が生じても安全性を確保することが可能な導電路構造及びワイヤハーネスを提供する。
【解決手段】ワイヤハーネスに衝撃が加わると、この力はワイヤハーネスを構成する高圧導電路25の導体本体27に掛かり、導体本体27は切断部32の位置で切断状態になる。この時、導体本体27は、一方の導体端部46と他方の導体端部47とに分離した状態になる。切断部32の位置で導体本体27の切断・分離が生じると、これとともに第一オーバーモールド部30の第一端末部34と第二オーバーモールド部40の第二端末部42も分離した状態になる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、導体とこの導体を被覆する被覆部材とを備える導電路の構造に関する。また、導電路を複数本備えてなるワイヤハーネスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、エコカーとしてハイブリッド自動車や電気自動車が注目されている。また、普及率が高まってきている。ハイブリッド自動車や電気自動車は、動力源としてモータを搭載している。モータを駆動するためには、バッテリーとインバータ間を、また、インバータとモータ間を、高圧のワイヤハーネスによって電気的に接続する必要がある。高圧のワイヤハーネスは、導電路である高圧電線を複数本備えて構成されている。
【0003】
高圧のワイヤハーネスに関しては、数多くの提案がなされている。その一例としては、下記特許文献1に開示されたワイヤハーネスが挙げられるものとする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−224156号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ハイブリッド自動車や電気自動車に対し、外部から衝撃が加わった場合には、すなわち衝突等が起こった場合には、ワイヤハーネスを構成する高圧電線が切断されてしまうという虞を有している。仮に、高圧電線が切断されてこれにより剥き出しになった導体が、導電性を有する部材や機器や車体フレーム等に触れた場合を考えると、大電流が流れて非常に危険であることが分かる。
【0006】
本発明は、上記した事情に鑑みてなされたもので、導電路を切断するような事態が生じても安全性を確保することが可能な導電路構造及びワイヤハーネスを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた請求項1記載の本発明の導電路構造は、導体と、該導体の第一被覆対象部分を被覆する第一被覆部材と、該第一被覆部材の第一端末部を分離可能に覆う第二端末部を有して前記導体の第二被覆対象部分を被覆する第二被覆部材とを備え、且つ、前記第一端末部及び前記第二端末部を前記導体における切断可能な部分としての切断部の位置に合わせて配置することを特徴とする。
【0008】
このような特徴を有する本発明によれば、導電路を切断するような事態が生じると、切断部の位置で切断されて分離した一方の導体端部は、この外側に第一被覆部材の第一端末部が存在して接触が規制される。また、切断されて分離した他方の導体端部も、この外側に第二被覆部材の第二端末部が存在して接触が規制される。本発明によれば、導電路を切断するような事態が生じても導体端部が露出するようなことはない。
【0009】
この他、本発明によれば、導体に切断部を設けることで、導電路の切断可能箇所をコントロールすることが可能になる。
【0010】
請求項2記載の本発明の導電路構造は、請求項1に記載の導電路構造において、オーバーモールドにて前記第一被覆部材を設けるとともに、該第一被覆部材とは異なるオーバーモールドにて前記第二被覆部材を設けることを特徴とする。
【0011】
このような特徴を有する本発明によれば、切断部の位置で導体の切断が生じると、これとともに第一被覆部材の第一端末部と第二被覆部材の第二端末部とが分離する。本発明によれば、異なるオーバーモールドであることから、第一端末部及び第二端末部の一方が他方に付いてしまうという意図しない分離にならず、このため導体端部が露出するようなことはない。
【0012】
本発明において、異なるオーバーモールドとは、成形のタイミングが異なることや成形材料が異なること等を指すものとする。
【0013】
また、上記課題を解決するためになされた請求項3記載の本発明のワイヤハーネスは、請求項1又は請求項2に記載の導電路構造を有する導電路を複数本備えてなることを特徴とする。
【0014】
このような特徴を有する本発明によれば、導体端部が露出しない構造の導電路を複数本備えるワイヤハーネスになることから、導電路を切断するような事態が生じても安全性が確保される。
【発明の効果】
【0015】
請求項1に記載された本発明によれば、導電路を切断するような事態が生じても導体端部の露出を防止することができるという効果を奏する。従って、安全性を確保することができるという効果を奏する。
【0016】
請求項2に記載された本発明によれば、第一被覆部材の第一端末部と第二被覆部材の第二端末部とを確実に分離させることができるという効果を奏する。従って、より確実に導体端部の露出を防止することができるという効果を奏する。
【0017】
請求項3に記載された本発明によれば、安全性の高いワイヤハーネスを提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明のワイヤハーネスの配索例を示す模式図である。
【図2】ワイヤハーネスの斜視図である。
【図3】ワイヤハーネスの断面図である。
【図4】導体の底面図である。
【図5】(a)は図4の円B部分の拡大斜視図、(b)及び(c)は変形例の拡大斜視図である。
【図6】図3の円A部分の拡大断面図であるとともに本発明の導電路構造を示す図である。
【図7】切断状態を示す拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明の導電路構造は、切断部の位置で切断されて分離した一方の導体端部の外側に第一被覆部材の第一端末部を存在させて接触を規制する導電路の構造である。また、切断されて分離した他方の導体端部の外側にも第二被覆部材の第二端末部を存在させて接触を規制する導電路の構造である。このような構造の導電路を複数本備えると、本発明のワイヤハーネスになる。
【実施例】
【0020】
以下、図面を参照しながら実施例を説明する。図1は本発明のワイヤハーネスの配索例を示す模式図である。また、図2はワイヤハーネスの斜視図、図3はワイヤハーネスの断面図、図4は導体の底面図、図5は図4の円B部分の拡大斜視図、図6は図3の円A部分の拡大断面図であるとともに本発明の導電路構造を示す図、図7は切断状態を示す拡大断面図である。
【0021】
本実施例のワイヤハーネスは、ハイブリッド自動車又は電気自動車に配索するものを対象にしている。以下では、ハイブリッド自動車での例を挙げて説明するものとする(電気自動車の場合でも本発明のワイヤハーネスの構成、構造、及び効果は基本的に同じであるものとする。尚、ハイブリッド自動車又は電気自動車に限らず、通常の自動車等でも本発明を適用することができるものとする)。
【0022】
図1において、引用符号1はハイブリッド自動車を示している。ハイブリッド自動車1は、エンジン2及びモータユニット3の二つの動力をミックスして駆動する車両であって、モータユニット3にはインバータユニット4を介して図示しないバッテリー(電池パック)からの電力が供給されるようになっている。エンジン2、モータユニット3、及びインバータユニット4は、本実施例において前輪等がある位置のエンジンルーム5に設置(搭載)されている。また、図示しないバッテリーは、エンジンルーム5の後方に存在する自動車室内、又は後輪等がある自動車後部に設置(搭載)されている。
【0023】
モータユニット3とインバータユニット4は、高圧となる本発明のワイヤハーネス21により接続されている。また、図示しないバッテリーとインバータユニット4は、高圧のワイヤハーネス6により接続されている。ワイヤハーネス6は、エンジンルーム5から例えばフロアパネルの地面側となる床下にわたって配索されている。
【0024】
ここで本実施例での補足説明をすると、モータユニット3はモータ及びジェネレータを構成に含んでいるものとする。また、インバータユニット4は、インバータ及びコンバータを構成に含んでいるものとする。モータユニット3は、シールドケース7を含むモータアッセンブリとして形成されるものとする。また、インバータユニット4もシールドケース8を含むインバータアッセンブリとして形成されるものとする。図示しないバッテリーは、Ni−MH系やLi−ion系のものであって、モジュール化してなるものとする。尚、例えばキャパシタのような蓄電装置を使用することも可能であるものとする。図示しないバッテリーは、ハイブリッド自動車1や電気自動車に使用可能であれば特に限定されないものとする。
【0025】
インバータユニット4は、本実施例においてモータユニット3の直上に配置固定されている。すなわち、インバータユニット4とモータユニット3は近接するように設置されている。このような設置状態であることから、ワイヤハーネス21は短いものとなっている。インバータユニット4とモータユニット3とに関し、引用符号9はモータユニット3の直上に配置固定するための固定脚部を示している。
【0026】
図中の矢印Xは車両上下方向を示している。また、矢印Yは車両左右方向(車両幅方向)を示している。さらに、矢印Zは車両前後方向を示している。
【0027】
先ず、本実施例のワイヤハーネス21に係る構成及び構造について具体的に説明をする。
【0028】
図2及び図3において、ワイヤハーネス21は、ハーネス本体22と、このハーネス本体22の一端に設けられるモータ側コネクタ23と、ハーネス本体22の他端に設けられるインバータ側コネクタ24とを備えて構成されている。モータ側コネクタ23及びインバータ側コネクタ24は、ハーネス本体22の一部を含んで構成されている。
【0029】
ハーネス本体22は、略同一平面上に所定の間隔をあけて並ぶ複数本(ここでは三本)の高圧導電路25(導電路)と、この複数本の高圧導電路25を一括して覆う電磁シールド部材26とを備えて構成されている。
【0030】
高圧導電路25は、導体本体27と、この導体本体27の一端及び他端に連続して設けられる接続部28、29とを有して構成されている。本実施例においては、導体本体27及び接続部28、29が特許請求の範囲に記載された導体に相当するものとする(仮に接続部が端子金具である場合には、導体本体が導体に相当するものとする)。また、高圧導電路25は、導体本体27及び接続部28、29の他に、導体本体27の外側に設けられる第一オーバーモールド部30(第一被覆部材)を有して構成されている。
【0031】
導体本体27の一端に連続する接続部28は、モータ側コネクタ23の一部を構成する部分として設けられている。また同様に、導体本体27の他端に連続する接続部29もインバータ側コネクタ24の一部を構成する部分として設けられている。
【0032】
図4において、導体本体27及び接続部28、29は、上記の如く導電路を構成する導体であって、本実施例においては導電性を有する金属板(銅や銅合金やアルミニウム製)をプレス加工することにより形成されている。導体本体27及び接続部28、29は、所定の導体幅及び肉厚を有するバスバー形状(帯板形状)に形成されている。
【0033】
尚、導体はバスバー形状に限らないものとする。例えば、素線を撚り合わせてなる導体や、断面矩形又は丸形となる棒状の導体(例えば平角単心や丸単心となる導体)であってもよいものとする。導体は、後述する切断部32を設けることが可能であれば、すなわち切断可能な部分を設けられれば特に限定されないものとする。
【0034】
導体本体27は、本実施例において平面視略クランク状に曲がる形状に形成されている(真っ直ぐであってもよいものとする)。このような導体本体27の中間には、公差吸収部31が設けられている。また、導体本体27の接続部28側となる所定位置には、切断部32が設けられている。
【0035】
公差吸収部31は、所望の変位や形状保持をすることができるように形成されている。公差吸収部31は、本実施例において山形状(谷形状)となるように形成されている(形状は一例であるものとする)。より具体的な形状としては、半円形で太鼓橋となる形状に形成されている。公差吸収部31は、導体本体27の剛性低下を図ることができるように、言い換えれば曲げや伸ばしをし易くすることができるように(変位させ易くすることができるように、可動させ易くすることができるように)形成されている。
【0036】
この他、公差吸収部31は、曲げや伸ばしをした後の状態を保持することができるように形成されている。すなわち、曲げや伸ばしをする前の状態に戻らないように形成されている(僅かな戻りは問題ないものとする。作業性や接続信頼性に影響してしまうような戻りでなければよいものとする)。
【0037】
このような公差吸収部31には、スリット33が形成されている。スリット33は、公差吸収部31における導体幅方向中間に形成されている。また、導体幅方向に対して略直交する方向に延びるように形成されている。スリット33は、公差吸収部31において更に剛性低下を図る部分として形成されている。公差吸収部31は、スリット33の形成に伴い断面積の減少が生じないようにするため、導体幅方向外側に若干膨出するような形状に形成されている。
【0038】
尚、公差吸収部31は、本実施例において導体本体27に一つ設けられているが、この限りでないものとする。また、導体本体27のほぼ中央位置に設けられているが、この限りでないものとする。すなわち、所望の変位等に必要な数や箇所に設けてよいものとする。
【0039】
図4及び図5において、切断部32は、導体本体27における切断可能な部分として設けられている。また、切断部32は、例えば衝突のような外力が加わった場合に、導体本体27において真っ先に切断される部分として設けられている。
【0040】
切断部32は、図5(a)に示す如く溝32aを全周に形成する形態や、特に図示しないがバスバー平面部分にV溝やU溝を形成する形態や、図5(b)に示す如くノッチ32bをバスバー両側部分に形成する形態や、図5(c)に示す如くバスバー平面部分を貫通する穴32cとノッチ32bとの組み合わせによる形態や、特に図示しないがバスバー平面部を潰して薄肉に形成する形態等が挙げられるものとする。
【0041】
尚、切断部32は、上記の如く導体本体27の接続部28側となる所定位置に配設されているが、この限りでないものとする。
【0042】
切断部に関し、上記のような切断部32を設けない場合が考えられる。この場合の一例としては、スリット33を有する公差吸収部31を切断部として機能させることが考えられる。
【0043】
図2、図3、及び図6において、第一オーバーモールド部30は、絶縁性及び柔軟性を有する被覆部材として設けられている。第一オーバーモールド部30は、導体本体27を保護することができる部分として、また、防水等をすることができる部分として設けられている。第一オーバーモールド部30は、ゴムや熱可塑性エラストマー等のエラストマーを用いて導体本体27をオーバーモールドすることにより形成されている。
【0044】
本実施例において、第一オーバーモールド部30による図示の被覆範囲(符号省略)は、特許請求の範囲に記載された第一被覆対象部分に相当するものとする。
【0045】
第一オーバーモールド部30は、この一端(接続部28側となる部分)に第一端末部34を有している。第一端末部34は、切断部32を覆う部分として形成されている。また、第一端末部34は、後述する一方の導体端部46を露出させない部分として形成されている。
【0046】
図2ないし図4において、接続部28及び29は、モータユニット3及びインバータユニット4(図1参照)における図示しない接続部の形態に合わせて形成されている。また、モータ側コネクタ23及びインバータ側コネクタ24の形態にも合わせて形成されている。本実施例においては、接続部28及びモータユニット3の図示しない接続部同士を重ねてボルト及びナットで締結することができるように、また、接続部29及びインバータユニット4の図示しない接続部同士を重ねてボルト及びナットで締結することができるように形成されている。接続部28、29の各先端位置には、貫通孔35が形成されている。
【0047】
図2ないし図7において、電磁シールド部材26は、電磁シールド機能を発揮させるための部材であって、例えば編組又は金属箔を筒状にすることにより形成されている。電磁シールド部材26は、本実施例においてモータ側コネクタ23及びインバータ側コネクタ24を覆うような長さで形成されている。
【0048】
電磁シールド部材26の固定は、通常、シールドシェルを用いて固定するのが一般的であるが、本実施例においては導電性を有する締め付け固定部材36と、この締め付け固定部材36をモータユニット3のシールドケース7及びインバータユニット4のシールドケース8(図1参照)に締結することが可能な図示しないボルトとを備えて固定するようになっている。締め付け固定部材36は、環状のプレート形状となる端末押圧部37と、この端末押圧部37に連成される一対の固定部38とを有している。一対の固定部38には、上記図示しないボルトに対するボルト挿通孔(符号省略)が貫通形成されている。
【0049】
電磁シールド部材26は、この端末部分に一対の固定部38に対する逃がし部分を形成し、その上で端末部分を外側にして端末押圧部37を挿入するとともに、挿入後に端末部分を内側へ折り返して端末押圧部37の内縁を通過させると、これにより略袋状の保持部が形成されて締め付け固定部材36を保持することができるようになっている(詳しくは特願2010−132585号参照)。そして、締め付け固定部材36を図示しないボルトで固定すると、端末押圧部37とシールドケース7(8)との間に電磁シールド部材26の端末部分が挟み込まれ、これにより電気的な接続も完了するようになっている。
【0050】
図2及び図3において、モータ側コネクタ23は、高圧導電路25における接続部28を含んで構成されている。また、モータ側コネクタ23は、接続部28をオーバーモールドして設けられるハウジング部39及び第二オーバーモールド部40(第二被覆部材)を含んで構成されている。モータ側コネクタ23の先端は、モータユニット3のシールドケース7(図1参照)に差し込まれ、内部において電気的な接続がなされるようになっている。
【0051】
ハウジング部39は、コネクタハウジングとしての機能を発揮することができるような形状に形成されている。ハウジング部39の先端外縁には、ゴムパッキン41が設けられている。このようなハウジング部39の後端には、第二オーバーモールド部40が連成されている。ハウジング部39及び第二オーバーモールド部40は、上記オーバーモールドにて同時に成形されている。
【0052】
図3及び図6において、第二オーバーモールド部40は、絶縁性を有する被覆部材として設けられている。第二オーバーモールド部40は、接続部28を保護することができる部分として、また、防水等をすることができる部分として設けられている。このような第二オーバーモールド部40の端部は、第二端末部42として形成されている。
【0053】
第二端末部42は、第一端末部34を分離可能に覆う部分として形成されている。また、第二端末部42は、第一端末部34を介在させた状態で切断部32を覆う部分として形成されている。さらに、第二端末部42は、後述する他方の導体端部47を露出させない部分として形成されている。
【0054】
本実施例において、第二オーバーモールド部40による図示の被覆範囲(符号省略)は、特許請求の範囲に記載された第二被覆対象部分に相当するものとする。
【0055】
図2及び図3において、インバータ側コネクタ24は、モータ側コネクタ23と同様に高圧導電路25における接続部29を含んで構成されている。また、インバータ側コネクタ24は、接続部29をオーバーモールドして設けられるハウジング部43及び第三オーバーモールド部44を含んで構成されている。インバータ側コネクタ24の先端は、インバータユニット4のシールドケース8(図1参照)に差し込まれ、内部において電気的な接続がなされるようになっている。
【0056】
ハウジング部43は、コネクタハウジングとしての機能を発揮することができるような形状に形成されている。ハウジング部43の先端外縁には、ゴムパッキン45が設けられている。このようなハウジング部43の後端には、第三オーバーモールド部44が連成されている。第三オーバーモールド部44は、上記第二オーバーモールド部40と同様に形成されている。
【0057】
次に、上記構成及び構造に基づきながら、ワイヤハーネス21の配索について説明をする。
【0058】
図1ないし図3において、ワイヤハーネス21の配索は、モータ側コネクタ23をモータユニット3に接続固定するとともに、締め付け固定部材36及び図示しないボルトを介して電磁シールド部材26の端末部分(一端側の端末部分)をシールドケース7に接続固定する作業を先ず行う。この作業による接続固定が完了すると、ワイヤハーネス21の一端は固定状態になる。
【0059】
ワイヤハーネス21の一端が固定状態になると、次にインバータ側コネクタ24をインバータユニット4に接続固定する作業を行う。また、締め付け固定部材36及び図示しないボルトを介して電磁シールド部材26の端末部分(他端側の端末部分)をシールドケース8に接続固定する作業を行う。この時、例えばインバータユニット4に位置ズレが生じていた場合には、或いは寸法公差が比較的大きくとられていた場合には、インバータ側コネクタ24の位置を変位させて位置ズレ或いは寸法公差を吸収し、この上で接続固定を完了させる(ワイヤハーネス21は、公差吸収部31を有することから、この公差吸収部31にて矢印X、Y、Z方向への曲げや伸ばしをして上記変位をさせることができ、これにより位置ズレ或いは寸法公差を吸収することができる)。
【0060】
続いて、ハイブリッド自動車1に衝突が起こった場合のワイヤハーネス21の作用について説明をする。
【0061】
図1において、ハイブリッド自動車1に衝突が起こった場合を考えると、エンジン2及びモータユニット3に対してインバータユニット4が例えば後方へ移動する。ワイヤハーネス21はモータユニット3及びインバータユニット4に接続された状態にあることから、インバータユニット4が後方へ移動した場合、ワイヤハーネス21には自身を引っ張るような衝撃が加わることになる。
【0062】
ワイヤハーネス21に上記の衝撃が加わると、この力はワイヤハーネス21を構成する高圧導電路25の導体本体27に掛かり、導体本体27は図6及び図7に示す如く切断部32の位置で切断状態になる。この時、導体本体27は、一方の導体端部46と他方の導体端部47とに分離した状態になる。切断部32の位置で導体本体27の切断・分離が生じると、これとともに第一オーバーモールド部30の第一端末部34と第二オーバーモールド部40の第二端末部42も分離した状態になる。
【0063】
上記一方の導体端部46は、この外側に第一オーバーモールド部30の第一端末部34が存在することから、これにより電気的な接触が規制された状態になる。また、上記他方の導体端部47も、この外側に第二オーバーモールド部40の第二端末部42が存在することから、電気的な接触が規制された状態になる。
【0064】
以上、図1ないし図7を参照しながら説明してきたように、本発明によれば、高圧導電路25を切断するような事態が生じても一方の導体端部46及び他方の導体端部47の露出を防止することができるという効果を奏する。従って、安全性を確保することができるという効果を奏する。また、本発明によれば、安全性の高いワイヤハーネス21を提供することができるという効果も奏する。
【0065】
本発明は本発明の主旨を変えない範囲で種々変更実施可能なことは勿論である。
【符号の説明】
【0066】
1…ハイブリッド自動車
2…エンジン
3…モータユニット
4…インバータユニット
5…エンジンルーム
6…ワイヤハーネス
21…ワイヤハーネス
22…ハーネス本体
23…モータ側コネクタ
24…インバータ側コネクタ
25…高圧導電路(導電路)
26…電磁シールド部材
27…導体本体(導体)
28、29…接続部(導体)
30…第一オーバーモールド部(第一被覆部材)
31…公差吸収部
32…切断部
33…スリット
34…第一端末部
35…貫通孔
36…締め付け固定部材
37…端末押圧部
38…固定部
39…ハウジング部
40…第二オーバーモールド部(第二被覆部材)
41…ゴムパッキン
42…第二端末部
43…ハウジング部
44…第三オーバーモールド部
45…ゴムパッキン
46…一方の導体端部
47…他方の導体端部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体と、該導体の第一被覆対象部分を被覆する第一被覆部材と、該第一被覆部材の第一端末部を分離可能に覆う第二端末部を有して前記導体の第二被覆対象部分を被覆する第二被覆部材とを備え、且つ、前記第一端末部及び前記第二端末部を前記導体における切断可能な部分としての切断部の位置に合わせて配置する
ことを特徴とする導電路構造。
【請求項2】
請求項1に記載の導電路構造において、
オーバーモールドにて前記第一被覆部材を設けるとともに、該第一被覆部材とは異なるオーバーモールドにて前記第二被覆部材を設ける
ことを特徴とする導電路構造。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の導電路構造を有する導電路を複数本備えてなる
ことを特徴とするワイヤハーネス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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