説明

導電路

【課題】ケーブル用固定金具に係るケーブル支持部材の内側のデッドスペースの有効利用を図った導電路を提供する。
【解決手段】複数のケーブル2と、複数のケーブル2を固定するケーブル用固定金具10とを備えた導電路であって、ケーブル用固定金具10は、複数のケーブル2の外周に沿うように成形される1枚の金属板3と、金属板3の両端部を重ね合わせて形成される取付フランジ部4と、複数のケーブル2を金属板3との間で支持するケーブル支持部材5と、を備え、ケーブル支持部材5には、複数のケーブル2の長手方向に沿って、複数のケーブル2を冷却する冷媒を通すための冷媒通路5bが形成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のケーブルと、複数のケーブルを固定するケーブル用固定金具とを備えた導電路に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から冷却機能付きケーブル(導電路)は、数多く発明されている(特許文献1,2)。
【0003】
そんな中、近年、インホイルモータ(車輪のホイルの中に収容されるモータ)への給電用導電路に関する技術開発が盛んである。
【0004】
そこで、本発明者らは、インホイルモータに接続される給電用導電路に、冷却機能を付加しようと考えた。
【0005】
インホイルモータに接続される給電用導電路に冷却機能を付加することで、給電用導電路を構成する各ケーブルで発生する熱を冷却するのみならず、インホイルモータで発生し各ケーブルに伝熱した熱も冷却できるようになり、インホイルモータで発生する熱を効率よく放熱することが可能となり、メリットが大きいためである。
【0006】
また、本発明者らは、特願2010−247413で新しいケーブル用固定金具を発明しているが、当該発明は、ケーブル用固定金具内のケーブル支持部材に特徴を有するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2000−133058号公報
【特許文献2】特開2001−202837号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明者らは、ケーブル支持部材の内側がデッドスペースになっていることに、いち早く気付き、そのデッドスペースの有効利用を図ろうとした。
【0009】
また、従前は、複数のケーブルが固定されるケーブル用固定金具において、各ケーブルの中心に冷媒通路を設ける特許文献2のような構成以外は、ケーブル用固定金具が取り付けられる固定部において、ケーブルを冷却することが出来なかった。すなわち、従来技術では、ケーブル用固定金具が取り付けられる固定部でケーブルを冷却しようとすると、特許文献2のようにケーブルの中心に冷媒通路を設ける構成が必須となってしまい、導電路の設計における制約事項となってしまっていた。
【0010】
本発明は、上記事情に鑑み為されたもので、ケーブル用固定金具に係るケーブル支持部材の内側のデッドスペースの有効利用を図った導電路を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は上記目的を達成するために創案されたものであり、複数のケーブルと、該複数のケーブルを固定するケーブル用固定金具とを備えた導電路であって、前記ケーブル用固定金具は、前記複数のケーブルの外周に沿うように成形される1枚の金属板と、前記金属板の両端部を重ね合わせて形成される取付フランジ部と、前記複数のケーブルを前記金属板との間で支持するケーブル支持部材と、を備え、前記ケーブル支持部材には、前記複数のケーブルの長手方向に沿って、前記複数のケーブルを冷却する冷媒を通すための冷媒通路が形成される導電路である。
【0012】
断面視で三角状に配置された3本の前記ケーブルを備え、前記金属板は、前記3本のケーブルの外周に沿うように成形され、前記ケーブル支持部材は、前記3本のケーブル全てに接する形状に形成され、前記3本のケーブルを、前記金属板との間で支持するようにされ、前記冷媒通路は、前記ケーブル支持部材の中心部に形成されてもよい。
【0013】
前記ケーブル支持部材は、左右方向に配置された2本のケーブルの間に、該左右方向に対して垂直方向で、かつ前記左右方向に配置された2本のケーブルの長手方向に対して垂直方向に挿入されるものであり、前記ケーブル支持部材は、前記左右方向に配置された2本のケーブルの間への挿入を容易とすべく、その挿入方向における先端側が先細り形状となっていてもよい。
【0014】
前記各ケーブルの中心部に、前記各ケーブルの長手方向に沿って形成され、冷媒を通すケーブル内冷媒通路をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ケーブル用固定金具に係るケーブル支持部材の内側のデッドスペースの有効利用を図った導電路を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施の形態に係る導電路を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はその1B−1B線断面図、(c)はケーブル支持部材の斜視図である。
【図2】(a)は、図1の導電路において、ケーブルの周囲に冷媒を通すチューブを螺旋状に巻き付けた場合の側面図、(b)は、ケーブルの周囲に冷媒を通すチューブを巻き付けず、チューブを直接冷媒通路に接続した場合の側面図である。
【図3】本発明の他の実施の形態に係る導電路を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はその3B−3B線断面図、(c)はケーブル支持部材の斜視図である。
【図4】本発明の他の実施の形態に係る導電路を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はその4B−4B線断面図、(c)はケーブル支持部材の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を添付図面にしたがって説明する。
【0018】
図1は、本実施の形態に係る導電路を示す図であり、(a)は斜視図、(b)はその1B−1B線断面図、(c)はケーブル支持部材の斜視図である。
【0019】
図1(a)〜(c)に示すように、導電路1は、複数のケーブル2と、複数のケーブル2を固定するケーブル用固定金具10と、を備えている。本実施の形態では、断面視で三角状に配置された3本のケーブル2a,2b,2cを用いる場合を説明するが、ケーブル2の本数や配置形状はこれに限定されるものではない。
【0020】
ケーブル2は、車輪のホイル内に内蔵されたインホイルモータに電力を供給する給電用のケーブルであり、ケーブル用固定金具10は、インホイルモータから延びる3本のケーブル2を車体に固定するために用いられる。つまり、導電路1は、インホイルモータに電力を供給する給電用導電路である。
【0021】
ここでは、ケーブル2として、導体6と、導体6の周囲を覆う絶縁体7とからなるものを用いるが、これに限らず、シールド用の外部導体を備えたもの(つまり同軸ケーブル)を用いてもよい。ここでは、3本のケーブル2として、径の同じものを用いる場合を説明する。
【0022】
本実施の形態では、各ケーブル2の中心部(断面視における中心部)には、ケーブル2の長手方向に沿って、冷媒を通すケーブル内冷媒通路11が形成される。ケーブル内冷媒通路11は、ゴムチューブなどのチューブ(あるいはアルミ管などの金属管)の中空部からなる。導体6は、素線をチューブの外周に螺旋状に巻き付けた撚線で構成される。
【0023】
ケーブル用固定金具10は、断面視で三角状に配置された3本のケーブル2の外周に沿うように成形される1枚の金属板3と、金属板3の両端部を重ね合わせて形成される取付フランジ部4と、3本のケーブル2を金属板3との間で支持するケーブル支持部材5と、を備えている。
【0024】
金属板3は、帯状であり、この帯状の金属板3の両端部を板状に重ね合わせた取付フランジ部4と、取付フランジ部4の基端側に形成され、断面視で三角状に配置された3本のケーブル2のうち1本のケーブル(図1(b)では上側の1本のケーブル)2aを挟持する第1挟持部3aと、第1挟持部3aの取付フランジ部4と反対側に形成され、残りの2本のケーブル(図1(b)では下側の2本のケーブル)2b,2cを挟持する第2挟持部3bと、を有している。
【0025】
第1挟持部3aは、ケーブル2aの外周に沿うように断面視で略円形状に形成され、第2挟持部3bは、ケーブル2b,2cの外周に沿うよう断面視で略長円形状(2つの平行な直線と両直線の端部同士を接続する2つの円弧状の曲線とからなる形状)に形成される。両挟持部3a,3bの間には、くびれ部3cが形成され、くびれ部3cにて両挟持部3a,3bが滑らかに接続されるようになっている。ここでは、くびれ部3cを形成する両側の金属板3の間に隙間を形成し、この隙間を介して、ケーブル2aが挟持される空間と、ケーブル2b,2cが挟持される空間とを連通させるようにしている。
【0026】
取付フランジ部4は、第1挟持部3aから第2挟持部3bと反対側(図1(b)では上方)に延びるように、すなわち、三角状に配置されたケーブル2における三角状の1つの頂部から外方に突出するように設けられる。なお、取付フランジ部4の位置はこれに限定されるものではなく、例えば、取付フランジ部4を第2挟持部3bから下方(図1(b)における下方)に延びるように設けてもよいし、ケーブル用固定金具10を取り付ける取付スペースの形状等に応じて適宜変更可能である。
【0027】
取付フランジ部4には、固定用のボルト(図示せず)を通すための貫通孔8が形成される。この貫通孔8にボルトを通し、当該ボルトを取り付け対象の構造物(車体等)にナット等を用いて固定することにより、ケーブル用固定金具10が取り付け対象の構造物に固定される。
【0028】
ケーブル支持部材5は、3本のケーブル2a〜2cの間に挿入され、3本のケーブル2a〜2cを、金属板3との間で支持するようにされる。
【0029】
ケーブル支持部材5は、金属板3の幅(図1(a)における上下方向の長さ)と略同じ長さに形成され、ケーブル2a〜2cと接する側面は、ケーブル2a〜2cの外周に沿う円弧状の曲面に形成される。ケーブル支持部材5は、3本のケーブル2a〜2cの間にケーブル支持部材5を挿入したときに、3本のケーブル2a〜2cを金属板3との間でしっかりと固定できる適宜な大きさに形成される。
【0030】
本実施の形態では、ケーブル支持部材5は、左右方向に配置された2本のケーブル2b,2cの間に、該左右方向に対して垂直方向で、かつ左右方向に配置された2本のケーブル2b、2cの長手方向に対して垂直方向に挿入される。つまり、ケーブル支持部材5の挿入方向は、図1(b)における上側から下側の方向となる。上述のように、本実施の形態では、3本のケーブル2として、径の同じものを用いており、左右方向に配置された2本のケーブル2b,2cは同じ径である。
【0031】
ケーブル支持部材5は、2本のケーブル2b,2cの間への挿入を容易とすべく、その挿入方向における先端側(図1(c)では左手前側)が先細り形状となっている。
【0032】
先細り形状に形成されたケーブル支持部材5の先端部5aは、その幅(図1(b)における左右方向の幅)がケーブル2b、2cの間隔と略等しい幅に形成され、先端部5aよりも後方(挿入方向における後方、図1(b)では上方)のケーブル支持部材5は、3本のケーブル2a〜2cの外周に沿い、かつ、金属板3の内周面に沿う形状(つまり、3本のケーブル2a〜2cの間の空間を埋める形状)に形成される。
【0033】
なお、ここでは、ケーブル支持部材5の先端部5aを一定の幅に形成する場合を示しているが、ケーブル支持部材5の先端部5aに面取り加工や丸め加工を施したり、あるいは、ケーブル支持部材5の先端部5aを、挿入方向における先端側に向かって徐々に幅が小さくなるようにテーパ状に形成してもよい。これにより、2本のケーブル2b,2cの間への挿入をより容易とすることができる。但し、ケーブル支持部材5の先端部5aに面取り加工や丸め加工を施したり、先端部5aをテーパ状に形成する場合、その加工部は、2本のケーブル2b,2cの中心軸よりも下方に形成されることが望ましい。これは、加工部が2本のケーブル2b,2cの中心軸よりも上方にわたって形成されると、ケーブル支持部材5とケーブル2b,2cとの接触面積が小さくなり、ケーブル2b,2cをしっかりと保持できなくなるおそれがあるためである。
【0034】
ケーブル用固定金具10に3本のケーブル2a〜2cを固定する際には、まず、金属板3の両端部(つまり取付フランジ部4)が開口した状態とし、当該開口からケーブル2b,2cを第2挟持部3b内に収容すると共に、この収容後にケーブル2b,2cの間にケーブル支持部材5を挿入する。さらに、第1挟持部3a内にケーブル2aを収容し、この状態で、金属板3の両端部(取付フランジ部4)を閉口させる。
【0035】
つまり、本発明では、2本のケーブル2b,2cを金属板3の第2挟持部3bの所定の位置に配置した後でも、ケーブル支持部材5を挿入することができるのである。これは、ケーブル支持部材5の先端側が先細り形状になっているために可能となった手順だが、仮に、先細り形状になっていない場合、上述した手順を採用することはできず、それぞれ別個の構成である2本のケーブル2b,2c及びケーブル支持部材5を一括で纏め、その後、その纏めた2本のケーブル2b,2c及びケーブル支持部材5を金属板3の第2挟持部3bの所定の位置に配置する必要がある。
【0036】
これでは、纏めた2本のケーブル2b,2c及びケーブル支持部材5を金属板3の第2挟持部3bに配置する際、金属板3の両端部をかなり開いた状態(大きく開口した状態)とする必要があり、最終的には金属板3の両端部を引き合わせて閉口することを考慮すると、かなり開いた状態の金属板3の両端部を引き合わせる過程の中で、結果として、ケーブル2b,2cがずれてしまい、作業性が悪いという問題がある。この問題は、ケーブル用固定金具10を図1(a)に示すような垂直方向に配置した際に、顕著であった。
【0037】
一方、本発明の場合、2本のケーブル2b,2cを金属板3の第2挟持部3bの所定の位置に配置した後でも、ケーブル支持部材5を挿入することができるので、金属板3の両端部の開き状態を小さくすることができる。これにより、結果として、作業がし易いという効果がある。つまり、作業性の向上を図ることができる。
【0038】
話は戻り、金属板3の両端部(取付フランジ部4)を閉口させると、第2挟持部3b内の空間が狭まるように金属板3が変形するので、第2挟持部3bによりケーブル2b,2cとケーブル支持部材5とが挟持され、ケーブル2b,2cが金属板3に対してしっかりと固定される。同様に、第1挟持部3aにはケーブル2aが挟持され、ケーブル2aが金属板3に対してしっかりと固定される。なお、貫通孔8に通したボルトを締結することで、ケーブル用固定金具10を取り付け対象の構造物に固定すると同時に、金属板3の両端部(取付フランジ部4)を閉口させることができる。
【0039】
さて、本実施の形態に係る導電路1では、ケーブル支持部材5には、ケーブル2の長手方向に沿って、ケーブル2を冷却する冷媒を通すための冷媒通路5bが形成される。冷媒通路5bは、ケーブル支持部材5の中心部(断面視における中心部)に形成される。本実施の形態では、冷媒通路5bを断面視で楕円形状に形成しているが、冷媒通路5bの形状はこれに限定されるものではない。例えば、冷媒通路5bの断面形状を各ケーブル2の一部に沿う形状に形成すれば、冷媒通路5bに冷媒を通したときに、冷媒と各ケーブル2とが対向する面積(すなわち冷媒とケーブル2との間で熱交換が行われる面積)が増加し、冷却効率を向上させることが可能である。
【0040】
図2に示すように、冷媒通路5bには、冷媒を供給するためのチューブ9が接続される。チューブ9は、図2(a)のように、3本のケーブル2の周囲に螺旋状に巻き付けられていてもよいし、図2(b)のように、3本のケーブル2に巻き付けず、冷媒通路5bに直接接続されていてもよい。図2(a)のように、3本のケーブル2の周囲に螺旋状に巻き付けることで、3本のケーブル2を長手方向にわたって全体的に冷却することが可能である。また、図2(b)のように構成することで、ケーブル用固定金具10が取り付けられる固定部のみを冷却することが可能である。なお、ここでは冷媒通路5bにチューブ9を接続する場合を説明したが、冷媒通路5bにチューブ9を通すように構成してもよい。
【0041】
チューブ9は、ケーブル2の端部にて、各ケーブル2のケーブル内冷媒通路11に接続され、冷媒を往復させるように構成される。このように構成することで、往路だけでなく復路も利用してケーブル2の冷却を行うことができ、ケーブル2の温度上昇をより抑制することが可能となる。また、冷媒を循環させる手段(冷媒のタンクや、冷媒を冷却する冷却装置、循環ポンプ等)をケーブル2の一方の端部にまとめて配置することが可能となり、システムを簡略化できる。ここでは、ケーブル内冷媒通路11を往路、チューブ9を復路としたが、チューブ9を往路、ケーブル内冷媒通路11を復路としてもよい。
【0042】
冷媒としては、特に限定するものではないが、例えば冷却水を用いることができる。ケーブル支持部材5としては、熱伝導性が高い材料からなるものを用いることが望ましく、耐熱性や冷媒に用いる材料に対する化学的な安定性等を考慮し、適宜決定するとよい。具体的には、ケーブル支持部材5としては、例えば、アルミニウム、SUS、銅などの金属、あるいは樹脂やゴムなどからなるものを用いるとよい。さらには、ケーブル支持部材5を、金属の表面にゴムをコーティングした構成としてもよい。このように構成することで、ケーブル2を金属板3との間でしっかりと保持し、かつ、冷媒による冷却効果を向上させることが可能になる。なお、全体をゴムでコーティングせずとも、ケーブル2と接する部分のみゴムでコーティングすれば、上述の効果は得られる。
【0043】
本実施の形態の作用を説明する。
【0044】
本実施の形態に係る導電路1では、ケーブル支持部材5に、複数のケーブル2の長手方向に沿って、複数のケーブル2を冷却する冷媒を通すための冷媒通路5bを形成している。
【0045】
従来、ケーブル支持部材5の内側はデッドスペースとなっていたが、本発明によれば、このデッドスペースを有効利用し、ケーブル用固定金具10が取り付けられる固定部でケーブル2を冷却することが可能になる。なお、本実施の形態では各ケーブル2にケーブル内冷媒通路11を設けているが、ケーブル内冷媒通路11は必須でなく省略可能であり、本発明によれば、各ケーブル2にケーブル内冷媒通路11を設けずとも、ケーブル用固定金具10が取り付けられる固定部にてケーブル2を冷却することが可能である。
【0046】
さらに、導電路1では、ケーブル支持部材5を、その挿入方向における先端側が先細り形状となるように形成しているので、ケーブル支持部材5をケーブル2b,2c間に挿入する作業が容易となり、3本のケーブル2をケーブル用固定金具10に固定する作業が容易となる。よって、ケーブル2を配索する際の作業性を向上できる。
【0047】
また、導電路1では、ケーブル2a〜2c間にケーブル支持部材5を挿入し、当該ケーブル支持部材5により、ケーブル2a〜2cを、金属板3との間で支持するようにしているので、ケーブル2a〜2cを金属板3に対してしっかりと固定できる。よって、車両用に用いた場合であっても、ケーブル用固定金具10が取り付けられる固定部にて、振動によりケーブル2a〜2cの位置ずれが発生してしまうことを抑制できる。
【0048】
なお、ケーブル支持部材5を用いずに、ケーブル2b,2cを第2挟持部3bで直接挟持させることも考えられるが、この場合、ケーブル2b,2cが過度に変形してしまうおそれがあり、当該変形によりケーブル2b,2cが断線したり、ケーブル2b,2cの電気的特性が悪化したりするおそれがある。
【0049】
さらに、金属板3のみでケーブル2を固定する場合、外力による金属板3の変形、あるいは金属板3の加工不良によりケーブル2がしっかりと固定されないおそれが生じるが、本発明の導電路1では、ケーブル用固定金具10において、ケーブル支持部材5によりケーブル2b,2cをより強固に固定することができるため、外力による金属板3の変形や、金属板3の加工不良があった場合でも、形状を保持し、ケーブル2をしっかりと固定できる。よって、信頼性を向上できる。
【0050】
また、導電路1では、ケーブル2a〜2cを、ケーブル支持部材5と金属板3とで挟持する構成であるため、ケーブル2a〜2cの周囲に遊びが生じない。よって、ケーブル2a〜2cをしっかりと固定し、位置決めすることができる。
【0051】
さらに、導電路1では、ケーブル用固定金具10の金属板3が分割構成となっていないため、ケーブル用固定金具10の組み立て作業が不要であり、ケーブル2の配索における作業性を向上できる。
【0052】
さらにまた、導電路1では、ケーブル用固定金具10の金属板3を、断面視で三角状に配置した3本のケーブル2の外周に沿うように成形するため、ケーブル用固定金具10全体を小型化し、ケーブル用固定金具10の部分における配索スペースを小さくすることができ、省スペース化に寄与する。また、ケーブル支持部材5が振動により回転してしまうこともないので、ケーブル2b,2cをしっかりと固定し、位置決めすることができる。
【0053】
次に、本発明の他の実施の形態を説明する。
【0054】
図3(a)〜(c)に示す導電路31は、図1の導電路1において、金属板3を断面視で略三角状に形成したケーブル用固定金具32を用いたものである。なお、導電路31では、ケーブル内冷媒通路11を省略しているが、各ケーブル2にケーブル内冷媒通路11を形成するようにしてもよい。
【0055】
ケーブル用固定金具32で用いるケーブル支持部材33は、上述のケーブル支持部材5と同様に、その挿入方向における先端側が先細り形状とされ、その先細り形状の先端部33aが、ケーブル2b、2cの間隔と略等しい幅に形成され、先端部33aよりも後方(挿入方向における後方、図3(b)では上方)のケーブル支持部材33が、3本のケーブル2a〜2cの外周に沿い、かつ、金属板3の内周面に沿う形状に形成されている。また、ケーブル支持部材33の中心部(断面視における中心部)には、ケーブル2の長手方向に沿って、ケーブル2を冷却する冷媒を通すための冷媒通路33bが形成される。
【0056】
また、導電路31では、ケーブル用固定金具32の取付フランジ部4の取付面と反対側の面、換言すれば、ボルトを取り付けた際にボルトの頭部が位置する側の面(図3(a)では右手前の面)から、3本のケーブル2a〜2cの外周に沿う金属板3に延びるように、変形防止用リブ34が形成されている。変形防止用リブ34は、取付フランジ部4の変形を防止するためのものであり、取付フランジ部4に対して垂直に延びるように形成される。なお、上述の図1で示したケーブル用固定金具10においても、取付フランジ部4の変形を防止するために、変形防止用リブ34を形成することが可能である。
【0057】
図4(a)〜(c)に示す導電路41は、図3の導電路31において、ケーブル支持部材33に2つの冷却通路33cを形成するようにしたものである。2つの冷却通路33cを形成することで、ケーブル内冷媒通路11を形成せずとも、冷媒を往復させることが可能となり、冷媒の往路だけでなく復路においても、ケーブル用固定金具32が取り付けられる固定部でケーブル2を冷却することが可能になる。なお、2つの冷媒通路33cを形成せずとも、図1,3の導電路1,31で用いたケーブル支持部材5,33の冷媒通路5b、33bに仕切りを形成する等して冷媒通路5b、33bを2分割するように構成しても、同様の効果が得られる。
【0058】
本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加え得ることは勿論である。
【0059】
例えば、上記実施の形態では、導電路1,31,41をインホイルモータに電力を供給する給電用導電路として用いる場合を説明したが、本発明の用途はこれに限定されるものではない。
【0060】
また、上記実施の形態では、3本のケーブル2として、径の同じものを用いた場合を説明したが、3本のケーブル2として、径の異なるものを用いてもよい。また、本発明は、2本のケーブル2b,2cに異なる径のものを用いた場合であっても、当然に適用可能である。
【符号の説明】
【0061】
1 導電路
2 ケーブル
3 金属板
4 取付フランジ部
5 ケーブル支持部材
5b 冷媒通路
10 ケーブル固定用金具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のケーブルと、該複数のケーブルを固定するケーブル用固定金具とを備えた導電路であって、
前記ケーブル用固定金具は、
前記複数のケーブルの外周に沿うように成形される1枚の金属板と、
前記金属板の両端部を重ね合わせて形成される取付フランジ部と、
前記複数のケーブルを前記金属板との間で支持するケーブル支持部材と、
を備え、
前記ケーブル支持部材には、前記複数のケーブルの長手方向に沿って、前記複数のケーブルを冷却する冷媒を通すための冷媒通路が形成される
ことを特徴とする導電路。
【請求項2】
断面視で三角状に配置された3本の前記ケーブルを備え、
前記金属板は、前記3本のケーブルの外周に沿うように成形され、
前記ケーブル支持部材は、前記3本のケーブル全てに接する形状に形成され、前記3本のケーブルを、前記金属板との間で支持するようにされ、
前記冷媒通路は、前記ケーブル支持部材の中心部に形成される
請求項1記載の導電路。
【請求項3】
前記ケーブル支持部材は、左右方向に配置された2本のケーブルの間に、該左右方向に対して垂直方向で、かつ前記左右方向に配置された2本のケーブルの長手方向に対して垂直方向に挿入されるものであり、
前記ケーブル支持部材は、前記左右方向に配置された2本のケーブルの間への挿入を容易とすべく、その挿入方向における先端側が先細り形状となっている
請求項2記載の導電路。
【請求項4】
前記各ケーブルの中心部に、前記各ケーブルの長手方向に沿って形成され、冷媒を通すケーブル内冷媒通路をさらに備えた
請求項1〜3いずれかに記載の導電路。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate