説明

小便器ユニット

【課題】ライニングユニットと小便器と手すりとを有し快適に使用できる小便器ユニットを提供する。
【解決手段】前面と上面とを有するライニングユニットと、前記ライニングユニットの前記前面に取り付けられた小便器と、前記小便器の左右において前記ライニングユニットの前記前面に取り付けられ、前記前面と略平行な方向に延在する部分を有する水平部を有する手すりと、を備え、前記小便器の上面は、前記手すりの前記水平部よりも低い位置に設けられ、前記ライニングユニットの前記上面は、前記手すりの前記水平部よりも低い位置に設けられ、前記ライニングユニットの前記前面から前記小便器のボウル開口の上端までの距離は、前記ライニングユニットの前記前面から前記手すりの前記水平部までの距離よりも小さいことを特徴とする小便器ユニットが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小便器ユニットに関し、具体的には、ライニングユニットと小便器と手すりとを有する小便器ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
小便器に手すりを組み合わせることにより、身体に障害をもたれた方や高齢者などでも楽に小便器を使用することができる。小便器に組み合わせる通常の手すりは、小便器の両側から一対のサイドバーが突出し、これら左右のサイドバーの上を横バーがつないだ形態を有する。手すりを利用する使用者は、その上体を横バーにもたれかかるようにして、小便器を使用する。
【0003】
一方、これら小便器や手すりを取り付ける壁面として、「ライニングユニット」などと呼ばれるユニットがある(例えば、特許文献1)。これは、その内部に配管や電気配線などを収納可能としたユニットであり、取付現場での設置作業が簡単で見栄えもよいトイレを提供できるものである。
【特許文献1】特開平08−164093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、ライニングユニットに小便器と手すりとを取り付けた場合、手すりを利用して小便器を快適に使うためには、改善の余地がある。
【0005】
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、ライニングユニットと小便器と手すりとを有し快適に使用できる小便器ユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様によれば、前面と上面とを有するライニングユニットと、前記ライニングユニットの前記前面に取り付けられた小便器と、前記小便器の左右において前記ライニングユニットの前記前面に取り付けられ、前記前面と略平行な方向に延在する部分を有する水平部を有する手すりと、を備え、前記小便器の上面は、前記手すりの前記水平部よりも低い位置に設けられ、前記ライニングユニットの前記上面は、前記手すりの前記水平部よりも低い位置に設けられ、前記ライニングユニットの前記前面から前記小便器のボウル開口の上端までの距離は、前記ライニングユニットの前記前面から前記手すりの前記水平部までの距離よりも小さいことを特徴とする小便器ユニットが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ライニングユニットと小便器と手すりとを有し快適に使用できる小便器ユニットが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付す。
【0009】
図1は、本発明の実施の形態に係る小便器ユニットが設置されたトイレ室を例示する模式図である。
また、図2は、本実施形態の小便器ユニットを例示する3面図である。
【0010】
図1に例示したトイレ室の壁面900には、ライニングユニット100が設置され、このライニングユニット100の前面に小便器200と手すり300が取り付けられている。ライニングユニット100は、その内部に小便器200に洗浄水を供給する給水管や、小便器200からの排水を排出する排水管140(図5参照)、また、電磁弁や人体検知センサなどの接続のための電気配線や、臭気を吸引する脱臭管、さらにマイクロ波センサ150(図5参照)などを適宜収容している。ライニングユニット100の前面110は、これらの要素を収容するためにトイレ室の壁面900よりも突出している。つまり、トイレ室の壁面900は、ライニングユニット100の上面120の奥行き(矢印Aの方向の長さ)だけ後退している。
【0011】
本実施形態の小便器200は、斜め上方に向けて開口したボウル面230を有する。すなわち、小便器200のボウル開口の下端220は使用者からみて手前側(矢印Aの方向)にあり、一方、ボウル開口の上端210は使用者からみて後方(矢印Aとは反対の方向)に後退している。その結果、小便器200の上面240の奥行き(矢印Aの方向の長さ)は、小便器200の奥行き(ライニングユニット100の前面110から小便器200のボウル開口の下端220までの長さ)に比べて顕著に小さい。その結果、後に詳述するように、小便器200を上方から眺めた時に、そのボウル面230のほぼ全体を見ることができる。
【0012】
このように、小便器200のボウル面230を斜め上方に向けて開口すると、使用者に開放感を与え、見栄えがよくすっきりとしたデザインになる。さらに、使用者に与える圧迫感を大幅に減らすことができる。つまり、使用者は従来よりも小便器200に近づきやすくなる。その結果として、尿をボウル面230に確実に落下させることができ、小便器200の手前の床面に尿を落とすことが抑制される。つまり、すっきりとしたデザインで見栄えのよいトイレ室が、さらに清潔に使用されることによって、使用者に快適な使用感を与えるという重畳的な効果が得られる。
【0013】
また、小便器200の上面240を後退させ、ボウル面230を開放することにより、清掃も容易となり、その結果としてさらに清潔な状態を維持することができる。すなわち、水垢や汚れなどの少ない清潔な小便器200を維持できる。
【0014】
次に、本実施形態の手すり300は、ライニングユニット100の前面110に対して略垂直に前方(矢印Aの方向)に突出した一対の基部310と、基部310の先端から斜め後方にそれぞれ延びた一対の傾斜部320と、略水平方向に延在しこれら傾斜部320の先端をつなぐ水平部330と、を有する。本具体例においては、水平部330は、基部310の先端よりも後退(矢印Aとは反対の方向)した位置に設けられている。つまり、傾斜部320は、水平部330に向かって後退する方向に傾斜している。
【0015】
そして、本実施形態においては、小便器200の上面240よりも手すり300の水平部330の方が高い位置に設けられている。またさらに、ライニングユニット100の上面120は、手すり300の水平部330よりも低い位置に設けられている。
【0016】
小便器200の上面240よりも手すり300の水平部330を高い位置に設けることにより、手すりを利用する使用者の圧迫感が大幅に低減する。またさらに、ライニングユニット100の上面120を手すり300の水平部330よりも低い位置に設けることにより、使用者に開放感を与え圧迫感はさらに低減する。
またさらに、手すり300の傾斜部320を小便器200のボウル面230の開口端(リムライン)のうちの左右の側辺部250と略同一の傾斜とすることにより、見栄えがよくすっきりとした外観が得られる。つまり、小便器200のリムラインに対して略平行に傾斜した傾斜部320によって小便器200の左右を取り囲むことにより、使用者に安心感を与え、小便器200に近づきやすくなる。
【0017】
図3は、本実施形態の小便器ユニットの使用形態を例示する模式図である。
使用者800は、手すり300の傾斜部320や水平部330をつかむことにより、小便器200に確実且つ容易に近づくことができる。例えば、車椅子に乗った使用者が小便器200に近づく場合には、まず左右の傾斜部320の下方をつかんで車椅子を小便器200に引き寄せることができる。しかる後に、両足を小便器200の下端近傍につけて、両手で傾斜部320の中ほどから上方をつかみながら楽に立ち上がることができる。
傾斜部320は、ほぼ直線状に延びているので、使用者が左右の手で傾斜部320を交互に上方に持ち替えながら立ち上がる動作も確実且つ容易に実行できる。
【0018】
そして、図3に表したように、片手で水平部300をつかみ、体重を前方にかけて上体を手すり300の水平部330にもたれさせた状態で小便器200を使用することができる。または、使用者800は、体重を前方にかけて上体を水平部330にもたれさせ、両手を水平部330から離した状態で小便器200を使用することも可能である。この場合には、使用者は自由な両手を使って小便器200を使用できる。
【0019】
図4は、比較例の小便器ユニットを表す模式図である。
すなわち、本比較例においても、ライニングユニット100の前面110に小便器200と手すり300とが取り付けられている。ただし、本比較例の小便器200は、そのボウル開口の上端210が使用者からみてあまり後退しておらず、上面240の奥行きが大きい。つまり、上方から小便器200を眺めたときに、ボウル面230の全体を見ることは困難である。また、手すり300の水平部330は、小便器200の上面240よりは高い位置にあるが、ライニングユニット100の上面120よりは低い位置に設けられている。このように、ライニングユニット100の上面120が手すり300の水平部330よりも高い位置にあると、使用者に対して圧迫感を与える。
【0020】
図5は、本実施形態の小便器ユニットの使用形態を例示する模式図である。
また、図6は、図4に表した比較例の小便器ユニットの使用形態を例示する模式図である。
【0021】
まず、図6に表した比較例から説明する。
図3に関して前述したように、手すり300を利用する使用者800は、体重を前方にかけて上体を水平部330にもたれさせた状態で小便器200を使用する。しかし、本比較例の場合、使用者800が手すり300の水平部330に上体をもたれさせると、頭部がライニングユニット100の前面110に接近し、ぶつかることもあり得る。このように頭部がライニングユニット100の前面110に接近すると、使用者800に対して圧迫感を与えてしまう。すると、水平部330に安心して体重をかけることができず、上体を十分にもたれさせることができない。その結果として、使用者800は、不安定な状態で小便器200を使用することとなる。また、水平部330に上体をもたれせる代わりに、小便器200の左右に突出した基部310のいずれかにもたれかかった状態で小便器200を使用することもある。このような場合、小便器200に対して斜め方向から使用することになるので、尿をボウル面230に確実に落下させることができず、トイレ室の床面に尿をこぼすこともある。
【0022】
また一方、本比較例の場合、小便器200の上面240があまり後退していない。その結果として、図6に表したように、使用者800が上体を手すり300の水平部330にもたれさせた時に、小便器200のボウル面230を見ることができない。つまり、使用者800の視線810は、小便器200の上面240により遮られてしまう。小便器200の上面240が突出していると、使用者800は、使用状態の自分の手元を見ることも困難となり、使い勝手がよくない。このため、使用者800は、やはり水平部330に対して体重をかけることができず、水平部330からやや離れた不安定な状態で小便器200を使用せざるを得ないこととなる。
【0023】
また、使用状態において小便器200のボウル面230が見えないと、尿の状態も分からない。尿の色や勢い、あるいは量などを確認することは、健康管理のために重要であり、特に身体に障害をもった方や高齢者にとって、尿の色や状態を容易に確認できるようにすべきである。
【0024】
これに対して、本実施形態の場合、図5に表したように、ライニングユニット100の上面120は手すり300の水平部330よりも低い位置に設けられている。その結果として、使用者800が体重を前方にかけて手すり300の水平部330に上体をもたれさせても、使用者800の頭部はライニングユニット100から離れた位置にある。つまり、使用者800は圧迫感を感ずることなく、安心して手すり300の水平部330に体重をあずけ、安定した姿勢で楽に小便器200を使用することができる。このような姿勢で小便器200を使用する場合、使用者800は小便器200に対して十分に近づくことができるので、尿を確実にボウル面230に落下させることができ、トイレの床面に尿をこぼすことも防止できる。
【0025】
またさらに、本実施形態によれば、小便器200の上面240が後退しているので、使用者800が上体を手すり300の水平部330にもたれさせた状態においても、ボウル面230のほぼ全体を見ることができる。つまり、使用者800の視線が小便器200の上面240により遮られることがない。その結果として、使用者800は自分の手元を確実に確認でき、ズボンのチャックの開閉なども確実且つ容易に実施できる。
【0026】
さらに、使用者800は尿の色や状態まで容易に確認することができる。小便器200を使用する際に尿の色や状態を確認するためには、ボウル面230のできるだけ広い範囲を見れることが必要である。つまり、尿の色や状態を確認するためには、ボウル面230に落下し流れる尿を見る必要がある。
図7(a)は実施形態の小便器200を鉛直上方から眺めた模式図であり、図7(b)は比較例の小便器200を上方から眺めた模式図である。
本比較例の場合、図7(b)に表したように、小便器200の上面240が使用者からみて手前側に延出し、使用者の視線を遮ることが分かる。使用者800が手すり300の水平部330に上体をもたれさせた状態においては、図6に表したように使用者800の目の直下には小便器200の上面240が延在し、使用者800はボウル面230ばかりでなく、自分の手元を見ることも容易ではない。
【0027】
これに対して、図7(a)に表したように、本実施形態によれば、小便器200の上面240はライニングユニット100の前面110の方向に後退しているので、鉛直上方から眺めてもボウル面230のほぼ全体が見える。そして、図5に表したように、使用者800は手すり300の水平部330に体重をかけて上体をもたれさせた状態においても、ボウル面230のほぼ全体を見ることができる。その結果として、楽な姿勢で小便器200を使用しつつ、尿の色や状態まで確実且つ容易に確認できる。
【0028】
このように手すりを利用する使用者が自分の手元やボウル面230を見ることができるようにするために、少なくとも小便器200のボウル開口の上端210は、手すり300の水平部330よりも後退していることが望ましい。つまり、ライニングユニット100の前面110から小便器200のボウル開口の上端210までの距離は、ライニングユニット100の前面110から手すり300の水平部330までの距離よりも小さいことが望ましい。
【0029】
なお、小便器200の上面を後退させた場合、従来の赤外線センサを小便器200の上部に内蔵させることが困難となる。また、ライニングユニット100の上面120の高さを下げると、小便器200の上面240との間のスペースも狭くなるので、小便器200の上面240よりも上のライニングユニット100の前面110に赤外線センサの検知窓を設けることも困難となる。
これに対して、図5に表した具体例においては、小便器200の裏側のライニングユニット100の中にマイクロ波センサ150を設けている。マイクロ波センサ150は、マイクロ波を放射し、その反射波に含まれるドップラー成分などに基づいて使用者800の接近や尿流などを検知することができる。また、マイクロ波は陶器を透過するので、図5に表したように小便器200の後ろ側に配置することができる。このようにして、小便器200の上面240を顕著に後退させボウル面を斜め上方に開放させた小便器200において、人体や尿流を検知し洗浄水を自動的に流すことが可能となる。
【0030】
以上説明したように、本実施形態によれば、手すり300を利用する使用者が圧迫感を感ずることなく、安心して手すり300の水平部330に体重をかけて安定した状態で小便器200を使用することができる。またさらに、その状態で、自分の手元やボウル面を確実に見ることができ、使い勝手がよいとともに尿の色や状態を確認することによる健康管理も確実に実行できる小便器ユニットを提供できる。
【0031】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明をした。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
前述の具体例に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、ライニングユニット、小便器、手すりなどの形状、構造、寸法、数、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施例が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施の形態に係る小便器ユニットが設置されたトイレ室を例示する模式図である。
【図2】本実施形態の小便器ユニットを例示する3面図である。
【図3】本実施形態の小便器ユニットの使用形態を例示する模式図である。
【図4】比較例の小便器ユニットを表す模式図である。
【図5】本実施形態の小便器ユニットの使用形態を例示する模式図である。
【図6】図4に表した比較例の小便器ユニットの使用形態を例示する模式図である。
【図7】(a)は実施形態の小便器200を鉛直上方から眺めた模式図であり、(b)は比較例の小便器200を上方から眺めた模式図である。
【符号の説明】
【0033】
100 ライニングユニット、110 前面、120 上面、140 排水管、150 マイクロ波センサ、200 小便器、210 上端、220 下端、230 ボウル面、240 上面、250 側辺部、300 水平部、310 基部、320 傾斜部、330 水平部、800 使用者、810 視線、900 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
前面と上面とを有するライニングユニットと、
前記ライニングユニットの前記前面に取り付けられた小便器と、
前記小便器の左右において前記ライニングユニットの前記前面に取り付けられ、前記前面と略平行な方向に延在する部分を有する水平部を有する手すりと、
を備え、
前記小便器の上面は、前記手すりの前記水平部よりも低い位置に設けられ、
前記ライニングユニットの前記上面は、前記手すりの前記水平部よりも低い位置に設けられ、
前記ライニングユニットの前記前面から前記小便器のボウル開口の上端までの距離は、前記ライニングユニットの前記前面から前記手すりの前記水平部までの距離よりも小さいことを特徴とする小便器ユニット。
【請求項2】
前記手すりは、前記小便器の前記左右において前記ライニングユニットの前記前面からそれぞれ前方に延出した一対の基部と、前記一対の基部の先端から前記水平部の両端に延びる傾斜部と、を有することを特徴とする請求項1記載の小便器ユニット。
【請求項3】
前記水平部は、前記基部の前記先端よりも後退してなることを特徴とする請求項2記載の小便器ユニット。
【請求項4】
前記傾斜部は、前記小便器の前記ボウル開口の左右の側辺部と略平行であることを特徴とする請求項2または3に記載の小便器ユニット。
【請求項5】
前記小便器の背後において前記ライニングユニットに収容されたマイクロ波センサをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の小便器ユニット。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−255564(P2008−255564A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95471(P2007−95471)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【特許番号】特許第4110577号(P4110577)
【特許公報発行日】平成20年7月2日(2008.7.2)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】