説明

小便器ユニット

【課題】小便器と手すりとを有し快適に使用できる小便器ユニットを提供する。
【解決手段】壁面に取り付けられる小便器と、前記小便器の左右において前記壁面に取り付けられ、前記壁面と略平行な水平方向に延在する部分を有する水平部を有する手すりと、を備え、使用者が上体を前記水平部にもたれさせた状態において、前記使用者の鉛直下方に向かう視線が前記小便器の上面により遮られないことを特徴とする小便器ユニットが提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小便器ユニットに関し、具体的には、小便器と手すりとを備えた小便器ユニットに関する。
【背景技術】
【0002】
小便器に手すりを組み合わせることにより、身体に障害をもたれた方や高齢者などでも楽に小便器を使用することができる。小便器に組み合わせる通常の手すりは、小便器の両側から上下一対のサイドバーがそれぞれ突出し、これら左右のサイドバーの上を横バーがつないだ形態を有する。手すりを利用する使用者は、その上体を横バーにもたれかかるようにして、小便器を使用する。
【特許文献1】特開平08−164093号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、小便器と手すりとを組み合わせた小便器ユニットにおいて、手すりを利用して小便器を快適に使うためには、改善の余地がある。
本発明は、かかる課題の認識に基づいてなされたものであり、小便器と手すりとを備え快適に使用できる小便器ユニットを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明の一態様によれば、壁面に取り付けられる小便器と、前記小便器の左右において前記壁面に取り付けられ、前記壁面と略平行な水平方向に延在する部分を有する水平部を有する手すりと、を備え、使用者が上体を前記水平部にもたれさせた状態において、前記使用者の鉛直下方に向かう視線が前記小便器の上面により遮られないことを特徴とする小便器ユニットが提供される。
【発明の効果】
【0005】
本発明によれば、小便器と手すりとを備え快適に使用できる小便器ユニットが提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明をする。なお、各図面中、同様の構成要素には同一の符号を付す。
【0007】
図1は、本発明の実施の形態に係る小便器ユニットが設置されたトイレ室を例示する模式図である。
また、図2は、本実施形態の小便器ユニットを例示する3面図である。
【0008】
図1に例示したトイレ室の壁面900には、ライニングユニット100が設置され、このライニングユニット100の前面(壁面)110に小便器200と手すり300が取り付けられている。ライニングユニット100は、その内部に小便器200に洗浄水を供給する給水管や、小便器200からの排水を排出する排水管140(図5参照)、また、電磁弁や人体検知センサなどの接続のための電気配線や、臭気を吸引する脱臭管、さらにマイクロ波センサ150(図5参照)などを適宜収容している。ライニングユニット100の前面110は、これらの要素を収容するためにトイレ室の壁面900よりも突出している。つまり、トイレ室の壁面900は、ライニングユニット100の上面120の奥行き(矢印Aの方向の長さ)だけ後退している。なお、本実施形態においては、ライニングユニット100を設けずに、小便器200と手すり300をトイレ室の壁面900に取り付けてもよい。
【0009】
本実施形態の小便器200は、斜め上方に向けて開口したボウル面230を有する。すなわち、小便器200のボウル開口の下端220は使用者からみて手前側(矢印Aの方向)にあり、一方、ボウル開口の上端210は使用者からみて後方(矢印Aとは反対の方向)に後退している。その結果、小便器200の上面240の奥行き(矢印Aの方向の長さ)は、小便器200の奥行き(ライニングユニット100の前面110から小便器200のボウル開口の下端220までの長さ)に比べて顕著に小さい。その結果、後に詳述するように、小便器200を上方から眺めた時に、そのボウル面230のほぼ全体を見ることができる。
【0010】
このように、小便器200のボウル面230を斜め上方に向けて開口すると、使用者に開放感を与え、見栄えがよくすっきりとしたデザインになる。さらに、使用者に与える圧迫感を大幅に減らすことができる。つまり、使用者は従来よりも小便器200に近づきやすくなる。その結果として、尿をボウル面230に確実に落下させることができ、小便器200の手前の床面に尿を落とすことが抑制される。つまり、すっきりとしたデザインで見栄えのよいトイレ室が、さらに清潔に使用されることによって、使用者に快適な使用感を与えるという重畳的な効果が得られる。
【0011】
また、小便器200の上面240を後退させ、ボウル面230を上方に向けて開放することにより、清掃も容易となり、その結果としてさらに清潔な状態を維持することができる。すなわち、水垢や汚れなどの少ない清潔な小便器200を維持できる。
【0012】
次に、本実施形態の手すり300は、ライニングユニット100の前面110に対して略垂直に前方(矢印Aの方向)に突出した一対の基部310と、基部310の先端から上方かつ斜め後方にそれぞれ延びた一対の傾斜部320と、ライニングユニット100の前面に対して平行かつ略水平方向に延在しこれら傾斜部320の先端をつなぐ水平部330と、を有する。本具体例においては、水平部330は、基部310の先端よりも後退(矢印Aとは反対の方向)した位置に設けられている。つまり、傾斜部320は、水平部330に向かって後退する方向に傾斜している。
【0013】
そして、本実施形態においては、小便器200の上面240よりも手すり300の水平部330の方が高い位置に設けられている。また、ライニングユニット100の上面120は、手すり300の水平部330よりも低い位置に設けることができる。
【0014】
小便器200の上面240よりも手すり300の水平部330を高い位置に設けることにより、手すりを利用する使用者の圧迫感が大幅に低減する。また、ライニングユニット100の上面120を手すり300の水平部330よりも低い位置に設けると、使用者に開放感を与え圧迫感はさらに低減する。
またさらに、手すり300の傾斜部320を小便器200のボウル面230の開口端(リムライン)のうちの左右の側辺部250と略同一の傾斜とすることにより、見栄えがよくすっきりとした外観が得られる。つまり、小便器200のリムラインに対して略平行に傾斜した傾斜部320によって小便器200の左右を取り囲むことにより、使用者に安心感を与え、小便器200に近づきやすくなる。
【0015】
図3は、本実施形態の小便器ユニットの使用形態を例示する模式図である。
使用者800は、手すり300の傾斜部320や水平部330をつかむことにより、小便器200に確実且つ容易に近づくことができる。後に詳述するように、車椅子に乗った使用者が小便器200に近づき、車椅子の位置決めをする際に、ある程度ラフに行っても両手で傾斜部320の一番力の入る場所を選んで楽に立ち上がることができる。
傾斜部320は、ほぼ直線状に延びているので、使用者が左右の手で傾斜部320を交互に上方に向けて持ち替えながら車椅子から立ち上がる動作も、確実且つ容易に実行できる。
【0016】
そして、図3に表したように、使用者800は片手で水平部300をつかみ、体重を前方にかけて上体を手すり300の水平部330にもたれさせた状態で小便器200を使用することができる。または、使用者800は、体重を前方にかけて上体を水平部330にもたれさせ、両手を水平部330から離した状態で小便器200を使用することも可能である。この場合には、使用者は自由な両手を使って小便器200を使用できる。
【0017】
図4は、比較例の小便器ユニットを表す模式図である。
本比較例においても、ライニングユニット100の前面110に小便器200と手すり300とが取り付けられている。ただし、本比較例の小便器200は、そのボウル開口の上端210が使用者からみてあまり後退しておらず、上面240の奥行きが大きい。つまり、上方から小便器200を眺めたときに、ボウル面230の全体を見ることは困難である。
【0018】
また、本比較例の手すり300は、小便器200の両側においてライニングユニット100の前面110に上下に取り付けられた一対の基部310が前面110に対して略垂直に前方に突出し、これら左右の基部310のうちの上側のバーから略垂直上方に垂直部340が延び、これら垂直部340の先端を水平部330がつなぐ構造を有する。
【0019】
図5は、本実施形態の小便器ユニットの使用形態を例示する模式図である。
また、図6は、図4に表した比較例の小便器ユニットの使用形態を例示する模式図である。
【0020】
まず、図6に表した比較例から説明する。
図3に関して前述したように、手すり300を利用する使用者800は、体重を前方にかけて上体をやや前傾させ水平部330にもたれさせた状態で小便器200を使用する。しかし、本比較例の場合、使用者800が手すり300の水平部330に上体をもたれさせると、使用者の視線810は小便器200の上面240により遮られてしまう。すなわち、本比較例の場合、小便器200の上面240があまり後退していない。その結果として、図6に表したように、使用者800が上体を手すり300の水平部330にもたれさせた時に、小便器200のボウル面230を見ることができない。つまり、使用者800の視線810は、小便器200の上面240により遮られてしまう。
【0021】
小便器200の上面240が突出していると、使用者800は、使用状態の自分の手元や小便器200のボウル面230を見ることも困難となり、使い勝手がよくない。このため、使用者800は、やはり水平部330に対して十分に体重をかけることができず、水平部330からやや離れた不安定な状態で小便器200を使用せざるを得ないこととなる。また、使用者800が自分の手元や小便器200のボウル面230を見るため、水平部330に上体をもたれせる代わりに、小便器200の左右に突出した基部310のいずれかにもたれかかった状態で小便器200を使用することもある。このような場合、小便器200に対して斜め方向から使用することになるので、尿をボウル面230に確実に落下させることができず、トイレ室の床面に尿をこぼすこともある。
【0022】
小便器200を使用するときにボウル面230が見えないと、尿の状態も分からない。尿の色や勢い、あるいは量などを確認することは、健康管理のために重要であり、特に身体に障害をもった方や高齢者にとって、尿の色や状態を容易に確認できるようにすべきである。
【0023】
これに対して、比較例の小便器ユニットにおいては、使用者800が水平部330に体重を十分にかけることができず、上体をやや前傾させた安定した姿勢で自分の手元やボウル面230を見ながら小便器200を使用することが困難であった。
【0024】
これに対して、本実施形態の場合、図5に表したように、小便器200の上面240が後退しているので、使用者800が上体を手すり300の水平部330にもたれさせた状態においても、自分の手元だけでなくボウル面230のほぼ全体を見ることができる。
【0025】
図7(a)は実施形態の小便器200を鉛直上方から眺めた模式図であり、図7(b)は比較例の小便器200を上方から眺めた模式図である。
本比較例の場合、図7(b)に表したように、小便器200の上面240が使用者からみて手前側に延出し、使用者の視線を遮ることが分かる。使用者800が手すり300の水平部330に上体をもたれさせた状態においては、図6に表したように使用者800の目の直下には小便器200の上面240が延在し、使用者800はボウル面230ばかりでなく、自分の手元を見ることも容易ではない。
【0026】
これに対して、図7(a)に表したように、本実施形態によれば、小便器200の上面240はライニングユニット100の前面110の方向に後退しているので、鉛直上方から眺めてもボウル面230のほぼ全体が見える。そして、図5に表したように、使用者800は手すり300の水平部330に体重をかけて上体をもたれさせた状態においても、自分の手元だけでなく、ボウル面230のほぼ全体を見ることができる。つまり、使用者800の視線が小便器200の上面240により遮られることがない。その結果として、使用者800は自分の手元を確実に確認でき、ズボンのチャックの開閉なども確実且つ容易に実施できる。
【0027】
そして本実施形態によれば、使用者800は尿の色や状態まで容易に確認することができる。小便器200を使用する際に尿の色や状態を確認するためには、ボウル面230のできるだけ広い範囲を見れることが必要である。つまり、尿の色や状態を確認するためには、ボウル面230に落下し流れる尿を見る必要がある。これに対して、本実施形態においては使用者が体重を前方にかけて手すり300の水平部330に上体をもたれさせても、ボウル面230を流れる尿の色や状態を観察できる。
【0028】
つまり、使用者800は安心して手すり300の水平部330に体重をあずけ、上体をやや前傾させた安定した姿勢で手元やボウル面230を見ながら楽に小便器200を使用することができる。このような姿勢で小便器200を使用する場合、使用者800は小便器200に対して十分に近づくことができるので、尿を確実にボウル面230に落下させることができ、トイレの床面に尿をこぼすことも防止できる。
【0029】
このように手すりを利用する使用者が自分の手元やボウル面230を見ることができるようにするために、少なくとも小便器200のボウル開口の上端210は、手すり300の水平部330よりも後退していることが望ましい。つまり、ライニングユニット100の前面110(または小便器200や手すり300が取り付けられるトイレ室の壁面)から小便器200のボウル開口の上端210までの距離は、ライニングユニット100の前面110(または小便器200や手すり300が取り付けられるトイレ室の壁面)から手すり300の水平部330までの距離よりも小さいことが望ましい。
【0030】
次に、車椅子に乗った使用者が小便器ユニットを使用する場合について説明する。
図8は、車椅子に乗った使用者が本実施形態の小便器ユニットに接近する様子を表した模式図である。
また、図9は、車椅子に乗った使用者が図4及び図6に関して前述した比較例の小便器ユニットに接近する様子を表した模式図である。
【0031】
まず、図9に表した比較例から説明する。
本比較例の小便器ユニットに設けられた手すり300は、ライニングユニット100の前面110(または小便器200や手すり300が取り付けられるトイレ室の壁面)から略水平方向に前方(矢印Aの方向)に延びた基部310を有する。車椅子850に乗った使用者800が小便器200に接近する場合、使用者800は基部310の先端を持って立上る上で力の入る位置を考えながら車椅子850の位置決めを行い、車椅子850を停止させ、ブレーキを掛ける。そして、両手で基部310の先端を持って立ち上がる動作を開始する。
【0032】
この時、図9(b)に表したように、車椅子850から立ち上がる際には、使用者800は水平方向に延びた基部310をつかんで力を入れる必要がある。しかし、本比較例のように基部310が使用者800のほうに向かって水平方向に延びていると、使用者800が基部310をつかんで力を入れることが難しく、適当に車椅子850の位置決めをしてしまうと、腕の力が入らず立上れないことになる。すなわち、図9(b)に表したように、基部310の上側のバーは、車椅子850に乗った使用者800の上腕830あるいは肩の高さとほぼ同一の高さにある。つまり、使用者800が基部310の上側のバーをつかんだ時、その上腕830は図9(b)に表したようにほぼ水平となる。このような状態から基部310を下方に押し出すように力を入れて立ち上がることはやや難しく、力をかけにくいという点で改善の余地がある。
【0033】
また一方、基部310から鉛直上方に立ち上がる垂直部340をつかむことにより立ち上がることも考えられる。しかし、図9(b)から分かるように、車椅子850の使用者は、小便器200下部に車椅子850のフットレスト860が当らない位置で停止する必要があり、垂直部340は使用者800からは遠い位置にある。このため、使用者800が垂直部340に手を伸ばしても届かず、何とか届いても、力を入れることは難しい。従って、比較例の手すりの場合、基部310の先端を掴んで立上った後に、基部310を伝いながら前に移動し、小便器200の前に立つことになるため、ツーアクションの動作となる。
【0034】
これに対して、図8(a)に表したように、本実施形態においては、使用者800は車椅子850の停止位置によって基部310と傾斜部320の一番力が入る場所を握ることができるため、手すり300との位置関係を気にせず、車椅子850の位置決めをして、停止させることができる。また、使用者800は、後方(矢印Aとは反対の方向)に傾斜した傾斜部320の下側から上側に向けて順次つかみ直すことにより、楽に立ち上がることができる。
【0035】
そしてさらに、本実施形態においては、小便器200の下部の突出が抑制され、車椅子850に乗った使用者800が小便器200の直近まで接近できる。
図10は、車椅子に乗った使用者が本実施形態の小便器ユニットに対して十分に接近した状態を表す模式図である。
車椅子850に乗った使用者800は、通常、車椅子850のフットレスト860に足820を乗せている。これに対して、本実施形態の小便器200は下部の突出が抑制され、フットレスト860とその上にのった使用者800の足820が小便器200に対して十分に接近できるようにされている。
【0036】
図11は、小便器200に接近した状態を表す模式平面図であり、図11(a)は本実施形態の場合、図11(b)は比較例の場合をそれぞれ表す。
図11(b)に表した比較例の場合、小便器200の下部は前方(矢印Aの方向)に湾曲して突出している。車椅子850のフットレスト860の高さにおける小便器200の輪郭線を図11(b)に破線で表した。このように破線で表した小便器200の下部の突出部が車椅子850のフットレスト860と干渉してしまい、使用者800はこれ以上小便器200に接近することができない。
【0037】
これに対して、本実施形態においては、図11(a)に破線で表したように、小便器200の下部の突出が抑制されている。その結果として、車椅子850に乗った使用者800は小便器200の直近まで接近できる。ライニングユニット100の前面110から車椅子850の後端までの距離L1についてみると、比較例における距離L2よりもかなり小さいことが分かる。このように、本実施形態によれば、小便器200の下部の突出を抑制することにより、車椅子850に乗った使用者800が小便器200の直近まで接近できる。
【0038】
この後、フットレスト860を傾斜させたり降下させて、使用者800は足820を床面に降ろす。この位置まで車椅子850で接近できると、図12(b)に関して後述するように、手すりの水平部330まで手が届き、水平部330を持って立上ることで、ワンアクションで小便器200の前に立つことが可能である。その後、立ち上がると、小便器200のボウル開口の下端220は使用者800の股下にあるので、尿を床面にこぼすことなくボウル面230に確実に落下させることができる。
また、車椅子850を小便器200の直近まで寄せて距離L1を小さくすることにより、使用者800は背後のスペースに気を遣うことなく安心して小便器200を使用できる。つまり、車椅子850を小便器200にあまり近づけることができないと図11(b)に表したように距離L2が長くなる。すると、例えば車椅子850の背後を他の使用者などが通過する際の妨げとなる。車椅子850を利用する使用者800は、このように周囲に迷惑をかけると感ずると、安心して小便器200を使用することができない。
【0039】
これに対して、本実施形態によれば、車椅子850を小便器200の直近まで寄せることができるので、車椅子850の背後のスペースも広がり、使用者800は周囲に気を遣わずに安心して小便器200を使用できる。
【0040】
図12は、本実施形態の小便器ユニットにおいて使用者が車椅子から立ち上がる動作を説明するための模式図である。
図12(a)に表したように小便器200の直近まで接近した使用者800は、図12(b)に表したように、手すり300の水平部330を片手または両手でつかみ、フットレスト860から足820を降ろして、楽に立ち上がることができる。また、手すり300の水平部330がやや高いと感じる場合には、傾斜部320の上方をつかんでも楽に立ち上がることができる。本実施形態の手すり300は、後方(矢印Aとは反対の方向)に向けて傾斜した傾斜部320を有するので、使用者800は、この傾斜部320のうちで一番力が入る部分を自由に選んでつかむことができる。
【0041】
またこのようにして立ち上がる際に、使用者800は自分の腕840や肘835を傾斜部820にあてがうことができる。このようにすると、力が入りやすくなり、さらに楽に立ち上がることができる。
【0042】
またこの時、使用者800の足820は小便器200の直近にあるので、使用者800は前傾姿勢になることなく足820に体重を掛けた安定した状態で、手すり300を引き寄せることにより楽に立ち上がることができる。そして、そのまま足820を踏み換えることなく、小便器200を使用することができる。つまり、本実施形態によれば、小便器200の直近まで車椅子850を引き寄せ、その後立ち上がって、小便器200を使用するという一連の動作をスムーズ且つ楽に行うことができる。特に、小便器200の直近まで車椅子850を引き寄せた後、立ち上がる動作と小便器200を使用する動作をワンステップで連続的に行うことができる。
【0043】
ところで、小便器200の上面を後退させた場合、従来の赤外線センサを小便器200の上部に内蔵させることが困難となる。これに対して、図5に表した具体例においては、小便器200の裏側のライニングユニット100の中にマイクロ波センサ150を設けている。マイクロ波センサ150は、マイクロ波を放射し、その反射波に含まれるドップラー成分などに基づいて使用者800の接近や尿流などを検知することができる。また、マイクロ波は陶器を透過するので、図5に表したように小便器200の後ろ側に配置することができる。このようにして、小便器200の上面240を顕著に後退させボウル面を斜め上方に開放させた小便器200において、人体や尿流を検知し洗浄水を自動的に流すことが可能となる。
【0044】
以上説明したように、本実施形態によれば、手すり300を利用する使用者が圧迫感を感ずることなく、安心して手すり300の水平部330に体重をかけて安定した状態で小便器200を使用することができる。また、車椅子を利用する場合も、車椅子を小便器の直近まで接近させ、立ち上がる動作と小便器を使用する動作をワンステップでスムーズかつ楽に行うことができる。またさらに、その状態で、自分の手元やボウル面を確実に見ることができ、使い勝手がよいとともに尿の色や状態を確認することによる健康管理も確実に実行できる小便器ユニットを提供できる。
【0045】
以上、具体例を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明をした。しかし、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
前述の具体例に関して、当業者が適宜設計変更を加えたものも、本発明の特徴を備えている限り、本発明の範囲に包含される。例えば、ライニングユニット、小便器、手すりなどの形状、構造、寸法、数、材質、配置などは、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。
また、前述した各実施例が備える各要素は、可能な限りにおいて組み合わせることができ、これらを組み合わせたものも本発明の特徴を含む限り本発明の範囲に包含される。
【図面の簡単な説明】
【0046】
【図1】本発明の実施の形態に係る小便器ユニットが設置されたトイレ室を例示する模式図である。
【図2】本実施形態の小便器ユニットを例示する3面図である。
【図3】本実施形態の小便器ユニットの使用形態を例示する模式図である。
【図4】比較例の小便器ユニットを表す模式図である。
【図5】本実施形態の小便器ユニットの使用形態を例示する模式図である。
【図6】図4に表した比較例の小便器ユニットの使用形態を例示する模式図である。
【図7】(a)は実施形態の小便器200を鉛直上方から眺めた模式図であり、(b)は比較例の小便器200を上方から眺めた模式図である。
【図8】車椅子に乗った使用者が本実施形態の小便器ユニットに接近する様子を表した模式図である。
【図9】車椅子に乗った使用者が図4及び図6に関して前述した比較例の小便器ユニットに接近する様子を表した模式図である。
【図10】車椅子に乗った使用者が本実施形態の小便器ユニットに対して十分に接近した状態を表す模式図である。
【図11】小便器200に接近した状態を表す模式平面図であり、(a)は本実施形態の場合、(b)は比較例の場合をそれぞれ表す。
【図12】本実施形態の小便器ユニットにおいて使用者が車椅子から立ち上がる動作を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0047】
100 ライニングユニット、110 前面、120 上面、140 排水管、150 マイクロ波センサ、200 小便器、210 上端、220 下端、230 ボウル面、240 上面、250 側辺部、300 水平部、310 基部、320 傾斜部、330 水平部、340 垂直部、800 使用者、810 視線、820 傾斜部、820 足、830 上腕、835 肘、840 腕、850 車椅子、860 フットレスト、900 壁面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
壁面に取り付けられる小便器と、
前記小便器の左右において前記壁面に取り付けられ、前記壁面と略平行な水平方向に延在する部分を有する水平部を有する手すりと、
を備え、
使用者が上体を前記水平部にもたれさせた状態において、前記使用者の鉛直下方に向かう視線が前記小便器の上面により遮られないことを特徴とする小便器ユニット。
【請求項2】
前記小便器の上面は、前記手すりの前記水平部よりも低い位置に設けられ、
前記壁面から前記小便器のボウル開口の上端までの距離は、前記壁面から前記手すりの前記水平部までの距離よりも小さいことを特徴とする請求項1記載の小便器ユニット。
【請求項3】
前記手すりは、前記小便器の前記左右において前記壁面からそれぞれ前方に延出した一対の基部と、前記一対の基部の先端から前記水平部の両端に延びる傾斜部と、を有することを特徴とする請求項1または2に記載の小便器ユニット。
【請求項4】
前記水平部は、前記基部の前記先端よりも後退してなることを特徴とする請求項3記載の小便器ユニット。
【請求項5】
前記傾斜部は、前記小便器の前記ボウル開口の左右の側辺部と略平行であることを特徴とする請求項3または4に記載の小便器ユニット。
【請求項6】
前記小便器の背後において前記ライニングユニットに収容されたマイクロ波センサをさらに備えたことを特徴とする請求項1〜5のいずれか1つに記載の小便器ユニット。




【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2008−255565(P2008−255565A)
【公開日】平成20年10月23日(2008.10.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−95472(P2007−95472)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000010087)TOTO株式会社 (3,889)
【Fターム(参考)】