説明

小分子を用いるリン酸管理

本発明は、リン酸輸送を抑制するのに、および正常な血清中リン酸レベルの維持に関わる異常に関連した疾患を治療または予防するのに使用することのできる方法、およびリン酸基を有する小分子に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
2009年1月26日に出願の米国特許仮出願第61/147348号の米国特許法第119条(e)項による利益を請求する。
本開示は、一般に、リン酸輸送を抑制するのに使用できる方法および小分子に関する。とりわけ、本開示は、正常な血清中リン酸レベルの維持についての異常に関連する疾患を治療または予防するのに使用できる方法および小分子を対象とする。より詳細には、本開示は、高リン血症を治療または予防するのに使用できる方法および小分子を対象とする。
【背景技術】
【0002】
リンおよび無機リン酸(Pi)は、細胞シグナル伝達、核酸合成、エネルギー代謝、膜機能、および骨ミネラル化を含む数多くの不可欠な生物学的過程に関与する。したがって、血清中Piレベルまたは相殺Piバランスの有意な変化は、かなりの生理学的意義を有し得る。血清中Pi濃度の急速な低下は、筋疾患、心機能不全、好中球機能異常、血小板機能不全、および赤血球膜脆弱を含むいくつかの病理の中で明らかにされることがある。慢性の血清中Pi欠乏は、骨軟化症およびくる病に繋がることのある骨ミネラル化についての障害を引き起こすことがある。対照的に、高められた血清中Pi濃度は、慢性腎不全患者における二次性副甲状腺機能亢進症の病因となる。高リン血症および結果としてのカルシウム−リン酸積(Ca×P)の増加は、軟部組織および血管壁の石灰化をもたらし、より高い死亡リスクに関連する。
【0003】
Piの血漿中レベルは、主として、(1)小腸内での、ビタミンDによって直接的に刺激されるPi吸収のコントロール、(2)骨再吸収の速度をコントロールする因子、および(3)副甲状腺ホルモン(PTH)、および線維芽細胞増殖因子−23(FGF−23)などのリン酸塩尿因子の影響下にある、腎臓中でのPi排泄を介して安定化される。不適切な腎機能または副甲状腺機能低下症などの、リン酸の恒常性をコントロールするシグナル経路の障害は、高リン血症を引き起こすことが多い。慢性高リン血症は、副甲状腺機能亢進症、骨疾患、ならびに関節、肺、眼および脈管系における異所性石灰化によって現れることの多い、カルシウムおよびリン代謝の深刻な異常に繋がることがある。腎機能不全を示す患者の場合、血清中リンの正常範囲内での上昇は、腎不全の進行および心血管事象のリスク増大と関連している。逆に、リン酸滞留を低減すると、腎疾患の進行を減速することができる。したがって、高リン血症である腎不全患者、およびその血清中リン酸が正常範囲内であるか、ほんのわずかに上昇している慢性腎臓病(CKD)患者の場合、リン酸の取込みおよび停留を低下させる治療的取組みが有益である。
慢性腎臓病が進行するにつれ、血清中リン酸レベルをコントロールすることがより困難になる。血液透析中の患者の60%超が、5.5mg/dLを超える血清中リン酸レベルを有すると報告された。正常な生理学的血清中リン濃度は、一般に、約2.5mg/dL〜約4.5mg/dLであると考えられる(Block GおよびPort F,Am.J.Kidhey Dis.2000年、35巻、1226〜1237頁)。さらに、血清中リンレベルが6.5mg/dLを超える血液透析患者は、血清中リンが2.4〜6.5mg/dLの患者に比べて、27%高い死亡リスクを有することが報告された。これらの知見に基づき、米国腎臓財団(National Kidney Foundation)−腎臓病予後改善対策(Kidney Disease Outcome Quality Initiative)(K/DOQI)の慢性腎臓病における骨代謝および疾患に関する診療ガイドライン(Clinical Practice Guidelines for Bone Metabolism and Disease in Chronic Kidney Disease)は、患者の生活の質および寿命を改善するために、血清中リンおよびCa×P積をコントロールするための厳しい方策を最近推奨している。
【0004】
高リン血症を管理するための最近の治療的取組みは、食事性リン摂取を制限すること、およびリン酸捕捉性マトリックスを採用することを含み、その双方とも、大部分は不十分であり、耐容性が不足していることが多い。初期には、臨床的強調は、食事性リン摂取を制限することに向けられていた。食事性リンは、3つの主要供給源、食材中の本来的なリン含有量、保存のためのリン酸塩含有添加物、およびリン酸塩を含有する栄養補助食品に由来する。食事性リンは、主としてタンパク質に由来するので、リンの意味のある制限は、タンパク質の摂取を不可避的に制限する。結果として、透析患者は、栄養不良および死亡リスクの増大を経験する。
初期に使用されたリン酸捕捉性マトリックスは、アルミニウムおよびカルシウムの化合物である。リン酸捕捉のために利用されて来たカルシウム塩としては、炭酸カルシウム、酢酸カルシウム(PhosLo(登録商標)酢酸カルシウム錠剤など)、クエン酸、アルギン酸、およびケト酸の塩が挙げられる。主たるリン酸錯体化物質としてカルシウムを使用することの利点は、副甲状腺ホルモンの分泌に対する抑制効果、低コスト、および良好な耐容性である。しかし、この部類の治療薬は、このような結合剤はCa×P指数を上昇させることがあるので、一般に高カルシウム血症をもたらし、高められたリンの出現に繋がる。アルミニウムおよびマグネシウム塩は、カルシウムに基づかないリン酸結合剤として利用できるが、これらの化合物は、いくつかの潜在的に深刻な副作用を有する。アルミニウムゲル剤を長期に使用すると、アルミニウムの蓄積、ならびに、脳障害、骨軟化症および筋疾患のような症状を伴うアルミニウム毒性に繋がることが多い。
初めは胆汁酸捕捉剤として開発されたポリマー樹脂も、Pi結合剤として研究され、あるいは使用されている。これらのポリマーをベースにしたリン酸結合剤を用いて、血管石灰化の進行低減またはさらには改善が立証された。しかし、コレステロールを拘束するそれらの能力から本質的に、これらの結合剤は、数ある有用なビタミンおよび栄養素の中でもビタミンDを錯化し、したがってそれを枯渇させる。カルシウムをベースにしないリン酸結合剤である塩化ランタンも、臨床的に研究された。リン酸レベルに対する効果は、ポリマーをベースにしたリン酸結合剤の効果に類似していると思われる。酸化鉄も、リン酸を錯化するその能力ゆえに、クリニックで使用されている。最近の治療剤のすべては、管腔を横断する血清中への輸送に関して食事性リン酸を接近し難くするための、食事性リン酸の錯体化に基づく。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記の理由のため、GI管中でのリン酸吸収を低減するための、および高リン血症を予防または減弱するための新たな方法および医薬組成物が、相変わらず求められている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様は、本明細書に開示の、リン酸基を有する小分子、またはリン酸基を有する小分子を含む任意の製剤を投与することによって、ヒト上皮細胞の膜を横断するリン酸輸送、およびそれゆえリン酸の胃腸内吸収を抑制する方法を提供する。
本開示の別の態様は、本明細書に開示の、リン酸基を有する小分子、またはリン酸基を有する小分子を含む任意の製剤を投与することによって、リン酸代謝異常またはリン酸輸送障害と関連した疾患の進行を予防する、安定化する、または逆転する方法を提供する。
本開示の別の態様は、本明細書に開示の、リン酸基を有する小分子、またはリン酸基を有する小分子を含む任意の製剤を投与することによって、血清中へのリン酸蓄積が起こり得る疾患を治療または予防する方法を提供する。
本開示の別の態様は、本明細書に開示の、リン酸基を有する小分子、またはリン酸基を有する小分子を含む任意の製剤を投与することによって、このような療法を必要とする疾患を治療するための薬学的介入の結果として発生する高リン血症を治療する、遅延する、または予防する方法を提供する。
【0007】
本開示の別の態様は、化合物001〜029および構造式I〜XXXIIによって表される、リン酸基を有する小分子に関する。これらの化合物は、ヒト上皮細胞の膜を横断するリン酸輸送を抑制することができ、それゆえリン酸の胃腸内吸収を抑制することができる。これらの化合物は、それらの根本的原因または効果が、正常な血清中リン酸レベルの維持についての異常に関連する疾患を治療または予防するのに使用することができる。
本開示の別の態様は、リン酸基を有する本明細書に記載の小分子の投与に関する。これらの小分子は、単独で、または許容される医薬製剤と組み合わせて、経口または注射によって投与することができる。
本明細書に記載の組成物および方法に関して、成分、その組成範囲、置換基、条件、およびステップなどの好ましい特徴は、本明細書中で提供される種々の実施例から選択することができる。
さらなる態様および利点は、当業者にとって、以下の詳細な説明を図面と結び付けて概観することから明らかであろう。方法、化合物、および組成物は、種々の形態の実施形態に影響され易いが、以後の説明は、特定の実施形態を含むが、その開示は、例示であって、本発明を本明細書に記載の特定の実施形態に限定することを意図しないことを理解されたい。
本明細書中で使用される語法および術語は、説明の目的のため存在すると理解すべきであり、限定するものと見なすべきでない。本明細書中で用語「包含する」、「有する」および「含む」、ならびにその変形体の使用は、後に挙げる条項、およびその等価物、ならびに任意選択のさらなる条項およびその等価物を包含することを意味する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】Caco−2ヒト腸上皮細胞における、リン酸取込み抑制に対する化合物001〜029の効果を示す図である。
【図2】Caco−2ヒト腸上皮細胞における、リン酸取込み抑制に対する化合物002、004、012および028の量的効果を示す図である。
【図3】化合物002、004、012および028の存在下でのCaco−2ヒト腸上皮細胞の生存能を、ALAMAR BLUE染色液の還元を利用して示す図である。
【図4】化合物002、004、012および028の存在下でのCaco−2ヒト腸上皮細胞の生存能を、トリパンブルー色素排除法を利用して示す図である。
【図5】雄性Sprague Dawleyラットに対する化合物002、004、012、021、022、023および028の量的効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
いずれか特定の理論によって束縛されることを意図しないが、リン酸吸収を制限するより有効な取組み(食事性リン酸摂取を制限すること、またはリン酸捕捉性マトリックスを使用することに代わる)は、腸管内リン酸産生の原因である腸管内アルカリホスファターゼ活性を直接的に遮断することに、および血清中へのリン酸送達の原因である管腔横断輸送系(NaPi−2b)を抑制することによる。小腸内でのリン酸吸収は、リン酸の輸送をナトリウムの輸送にエネルギー依存性機構で連結する担体介在性でよい。一例が、NaPi−2bNa/リン酸共輸送体の場合である。しかし、他の機構も、輸送にとって重要である可能性がある。リン酸輸送を抑制する小分子の発見は、栄養供給源からの腸管内リン酸吸収を制限するのに治療的に利用できる。この取組みは、例えば、腎疾患患者における高リン血症を治療または予防するのに有用である可能性がある。
本発明の実施形態および特許請求を説明する上で、そうではないことを明確に述べない限り、以下の術語が、以下に示す定義により使用される。
本明細書中で使用する場合、用語「抑制する」は、全部または部分的に低減することまたは予防することを意味する。
【0010】
本明細書中で使用する場合、用語「予防する」は、予防的利益を達成することを意味する。例えば、リン酸基を有する小分子化合物は、高リン血症を発症する危険にさらされた患者に、またはたとえ高リン血症の診断がなされていなくとも高リン血症の病態生理学的症状の1種または複数を訴える患者に投与される。特に、リン酸基を有する小分子化合物は、高リン血症と診断されていない慢性腎臓病患者に投与することができる。
本明細書中で使用する場合、「薬学的に許容される製剤」は、米国食品医薬品庁、またはヒトへの投与に関して外国の対応する規制当局によって承認された、または承認され得る分子本体または組成物を指す。
本明細書中で使用する場合、「有効量」は、治療されている状態の有益な治療成績をもたらす量である。例えば、リン酸基を有する有効量の小分子は、高リン血症を有する対象の血清中リンレベルを低下すること、高リン血症を有するまたは有する危険にさらされている対象の血清中リンレベルが上昇するのを予防すること、あるいは、例えば糞便性リンの増加によって、または低下したもしくは安定した血清中リンレベルによって測定できる、食物からのリン吸収を低減することなどの1種または複数の効果を示す。
本明細書中で使用する場合、「有益な治療成績」には、対象が基礎をなす障害でなお苦しんでいる可能性があることに拘泥せず、治療されている基礎をなす障害の改善または根治が含まれる。高リン血症を有する対象において、有益な治療成績には、基礎をなす高リン血症の改善または根治が含まれる。例えば、高リン血症を有する対象は、血漿中リン酸レベルの低下、または高められた血清中リン酸レベルの原因または効果と関連する症状の開始の遅延を含む症状の重症度の低下を経験する。このような症状には、軟部組織の異所性石灰化、心血管の石灰化、心血管事象、腎劣化、カルシフィラキシス、副甲状腺機能亢進症、尿毒症性骨疾患、腎性骨疾患、骨粗鬆症、および高リン血症が包含される。
【0011】
本明細書中で使用する場合、「治療を必要とする対象」には、リン酸輸送抑制剤を用いて治療して有益な治療成績を達成できる疾患および/または状態を現に有する、またはそれらを発症する可能性のある対象が含まれる。このような対象の考えられる下位集合は、リン酸輸送抑制剤で治療して有益な治療成績を達成できる疾患または状態と診断された対象である。
本明細書中で使用する場合、「薬学的に許容される担体」には、溶媒、分散媒体、被覆剤、抗細菌および抗真菌剤、等張剤、ならびに吸収遅延剤などのいずれかおよびすべてが含まれる。このような媒体および薬剤の薬学的に活性な物質のための使用は、当技術分野で周知である。任意の通常の媒体または薬剤が治療用組成物と不適合である場合を除き、治療用組成物中でのその使用が考えられる。補足的な活性成分も、組成物中に組み込むことができる。
本明細書中で使用する場合、「賦形剤」は、本明細書に記載の化合物などの医薬を投与するための個々の投与方式および剤形に応じて、担体、溶媒、安定剤、補助剤、希釈剤などを指す。
本明細書中で使用する場合、「高リン血症」は、その血清中リンが医学的に容認される正常範囲を超える濃度で存在する対象における状態を記述するのに広く使用される。
【0012】
本明細書中で使用する場合、用語「アルキル」は、直鎖および分枝の飽和炭化水素基を指し、その非限定的例には、メチル、エチル、ならびに直鎖および分枝のプロピルおよびブチル基が含まれる。アルキル基は、例えば、1〜20個の炭素原子、1〜10個の炭素原子、および/または1〜6個の炭素原子を有することができる。
本明細書中で使用する場合、用語「ジアルキル」は、同一原子に結合されたアルキル基を指す、例えば、N−ジアルキルは、同一の窒素原子にそれぞれ結合された2つのアルキル基を指す。
本明細書中で使用する場合、用語「アリール」は、単環式または多環式芳香族基、好ましくは単環式または二環式芳香族基を指す。そうでないことを指摘しない限り、アリール基は、置換されていないか、あるいは、例えば、ハロ、アルキル、アルケニル、−OCF3、−NO2、−CN、−NC、−OH、アルコキシ、アミノ、−CO2H、−CO2−アルキル、アリール、およびヘテロアリール基から独立に選択される1つまたは複数の、とりわけ1〜4つの基で置換されていてもよい。典型的なアリール基には、限定はされないが、フェニル、ナフチル、テトラヒドロナフチル、クロロフェニル、メチルフェニル、メトキシフェニル、トリフルオロメチルフェニル、ニトロフェニル、2,4−メトキシクロロフェニルなどが含まれる。
【0013】
本明細書中で使用する場合、用語「ヘテロアリール」は、1つまたは2つの芳香族環を含み、芳香族環中に少なくとも1つの窒素、酸素、または硫黄原子を含む、単環式または二環式環系を指す。そうでないことを指摘しない限り、ヘテロアリール基は、置換されていないか、あるいは、例えば、ハロ、アルキル、アルケニル、−OCF3、−NO2、−CN、−NC、−OH、アルコキシ、アミノ、−CO2H、−CO2−アルキル、アリール、およびヘテロアリールから選択される1つまたは複数の、とりわけ1〜4つの置換基で置換されていてもよい。ヘテロアリール基の例には、限定はされないが、チエニル、フリル、ピリジル、オキサゾリル、キノリル、チオフェニル、イソキノリル、インドリル、トリアジニル、トリアゾリル、イソチアゾリル、イソキサゾリル、イミダゾリル、ベンゾチアゾリル、ピラジニル、ピリミジニル、チアゾリル、およびチアジアゾリルが含まれる。
本明細書中で使用する場合、用語「ベンジル」は、メチレンに結合された芳香族基を指す。そうでないことを指摘しない限り、ベンジル基は、置換されていないか、あるいは、例えば、ハロ、アルキル、アルケニル、−OCF3、−NO2、−CN、−NC、−OH、アルコキシ、アミノ、−CO2H、−CO2−アルキル、アリール、芳香族基、およびヘテロアリール基から選択される1つまたは複数の置換基で置換されていてもよい。ベンジル基の一例が−CH2−C65である。
本明細書中で使用する場合、用語「メチレン」は、2つの水素原子に結合されている炭素を指す。
本明細書中で使用する場合、用語「ハロゲン」は、周期表のVIIA族のハロゲン、例えば、F、Cl、BrおよびIを指す。
本明細書中で使用する場合、下表1に示す省略形は、文脈中でそうでないことが明白に示されない限り、対応する表1に示す化学名を意味する。
【0014】
【表1】

(方法)
考えられる最初の方法は、ヒト上皮細胞の膜を横断するリン酸輸送、したがってリン酸の胃腸内吸収を抑制する方法である。該方法は、リン酸輸送の抑制を必要とするヒト対象に、リン酸基を有する小分子を有益な治療成績を達成するのに有効な量で投与するステップを含む。好ましくは、リン酸基を有する小分子は、薬学的に許容される製剤中に存在する。
【0015】
考えられる別の方法は、ヒト上皮細胞の膜を横断するリン酸輸送、したがってリン酸の胃腸内吸収を抑制する方法である。該方法は、リン酸輸送の抑制を必要とするヒト対象に、リン酸基を有する小分子を有益な治療成績を達成するのに有効な量で含む薬学的に許容される製剤を投与するステップを含む。
【0016】
考えられる別の方法は、限定はされないが、副甲状腺機能亢進症、代謝性骨疾患、尿毒症性骨疾患、腎性骨疾患、軟部組織の石灰化、心血管の石灰化、心血管事象、カルシフィラキシス、および骨粗鬆症などの、リン酸代謝異常またはリン酸輸送障害と関連する疾患の進行を予防する、安定化する、または逆転する方法である。該方法は、リン酸代謝異常またはリン酸輸送障害と関連する疾患を有するヒト対象に、本明細書に開示の、リン酸基を有する小分子、またはリン酸基を有する小分子を含む任意の製剤を、リン酸代謝またはリン酸輸送障害と関連する疾患の進行を予防、安定化または逆転するのに有効な量で投与するステップを含む。
考えられる別の方法は、血清中へのリン酸蓄積が起こり得る疾患を治療または予防する方法である。このような疾患には、限定はされないが、高リン血症、慢性腎臓病、二次性副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症、および副甲状腺機能低下症が含まれる。該方法は、血清中リン酸の低減または血清中リン酸の維持を必要とするヒト対象に、本明細書に開示の、リン酸基を有する小分子、またはリン酸基を有する小分子を含む任意の製剤を、血清中リン酸レベルを低減または維持するのに有効な量で投与するステップを含む。
【0017】
考えられる別の方法は、そのような療法を必要とする二次性副甲状腺機能亢進症などの疾患を治療するためのビタミンDをベースにした療法などの薬学的介入の結果として発生する高リン血症を治療する、遅延する、または予防する方法である。該方法は、そのような介入を必要とする疾患を治療するための薬学的介入を受け入れているヒト対象に、本明細書に開示の、リン酸基を有する小分子、またはリン酸基を有する小分子を含む任意の製剤を、高リン血症を治療、遅延、または予防するのに有効な量で投与するステップを含む。
本明細書に開示のいずれかの方法に関して、リン酸基を有する小分子は、単独で投与することができ、あるいは別法として、リン酸基を有する1種または複数のさらなる小分子と組み合わせて投与することができる。
【0018】
(リン酸基を有する小分子化合物)
本発明のさらに別の態様は、リン酸基を有する小分子に関する。リン酸基を有する小分子の例には、限定はされないが、表2に記載の化合物001〜029が含まれる。
【0019】
【表2】



【0020】
一実施形態において、リン酸基を有する小分子は、構造式I〜VII:
【0021】
【化1】

[式中、Xは、O、S、NHまたはN−アルキルであり;R1は、1つまたは複数の位置で、ハロゲン、OH、O−アルキル、N−ジアルキルまたはNHCO−アルキルであり;R2は、H、アルキルまたは置換ベンジルである]から選択される。
別の実施形態において、リン酸基を有する小分子は、構造式VIII〜XI:
【0022】
【化2】

[式中、R3は、1つまたは複数の位置で、ハロゲン、アルキル、置換ベンジル、OH、O−アルキル、N−ジアルキル、またはNHCO−アルキルである。N−原子の位置は変更できる。例えば、N−原子は、化合物IXではリン酸置換基をもっている芳香族環の一部であるが、化合物XIではリン酸置換基をもっている芳香族環の一部ではない]から選択される。
別の実施形態において、リン酸基を有する小分子は、構造式XII〜XIII:
【0023】
【化3】

[式中、R4は、H、ハロゲン、O−アルキル、S−アルキル、N−ジアルキル、またはNHCO−アルキルであり;nは0、1または2である]から選択される。
別の実施形態において、リン酸基を有する小分子は、構造式XIV:
【0024】
【化4】

[式中、R1は、ハロゲン、OH、O−アルキル、N−ジアルキル、またはNHCO−アルキルであり;R5は、アルキル、アリール、または置換アリールであり;mは1〜6個の炭素原子である]から選択される。
別の実施形態において、リン酸基を有する小分子は、構造式XV:
【0025】
【化5】

[式中、R6は、アルキル、ベンジル、または芳香族置換ベンジルである]から選択される。
別の実施形態において、リン酸基を有する小分子は、構造式XVI:
【0026】
【化6】

[式中、R7は、H、アルキル、ベンジル、または芳香族置換ベンジルである]から選択される。
別の実施形態において、リン酸基を有する小分子は、構造式XVII〜XVIII:
【0027】
【化7】

[式中、R8は、H、アルキル、アリール、ベンジル、または芳香族置換ベンジルであり;mは1個またはそれ以上の、好ましくは1〜6個の炭素原子である]から選択される。
別の実施形態において、リン酸基を有する小分子は、構造式XIX〜XXI:
【0028】
【化8】

[式中、Yは、OまたはSであり;R1は、OH、O−アルキル、ハロゲン、N−ジアルキル、またはNHCO−アルキルであり;R9は、Hまたはアルキルであり;nは0、1または2である]から選択される。
別の実施形態において、リン酸基を有する小分子は、構造式XXII:
【0029】
【化9】

[式中、R10は、アルキル、O−アルキル、S−アルキル、アリール、NR112、またはNCOR11であり;R11は、アルキルまたはアリールであり;R12はハロゲンである]から選択される。
別の実施形態において、リン酸基を有する小分子は、構造式XXIII:
【0030】
【化10】

[式中、各Zは、独立に、O、S、N、またはCH2であり;nは0、1または2である]から選択される。
別の実施形態において、リン酸基を有する小分子は、構造式XXIV:
【0031】
【化11】

[式中、R13は、ハロゲン、OR14、NR152、PO32、SO3H、COOH、またはNH2であり;R14は、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、アリル、または置換ベンジルもしくは非置換ベンジルであり;R15は、メチル、エチル、イソプロピル、アリル、ベンジル、置換ベンジル、または非置換ベンジルであり;mは1〜6個の炭素原子である]から選択される。
別の実施形態において、リン酸基を有する小分子は、構造式XXV:
【0032】
【化12】

[式中、Aは
【0033】
【化13】

【0034】
であり;Xは、O、S、NH、またはN−アルキルであり;R16は、SO3H、COOH、またはNH2である]から選択される。
別の実施形態において、リン酸基を有する小分子は、構造式XXVI〜XXVII:
【0035】
【化14】

[式中、R17は、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、シクロヘキシル、アリール、またはヘテロアリール、好ましくはベンゼン、ピリジル、またはベンジルであり;R18は、1つまたは複数の位置で、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、ハロゲン、OH、O−アルキル、N−ジアルキル、またはNHCO−アルキルである]から選択される。
別の実施形態において、リン酸基を有する小分子は、構造式XXVIII:
【0036】
【化15】

[式中、R19は、ハロゲン、NR112、NHCOR11、SR11、またはヘテロアリールであり;R20は、ハロゲン、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、N(CH32、N(Et)2、N(iPr)2、NHCOCH3、NHCOCF3、またはNHCOPhであり;R11は、アルキルまたはアリールであり;nは0、1または2である]から選択される。
別の実施形態において、リン酸基を有する小分子は、構造式XXIX〜XXXI:
【0037】
【化16】

[式中、R10は、アルキル、O−アルキル、S−アルキル、アリール、NR112、またはNCOR11であり;R11は、アルキルまたはアリールである]から選択される。
別の実施形態において、リン酸基を有する小分子は、構造式XXXII:
【0038】
【化17】

[式中、R21は、アルキル、ハロゲン化アルキル、O−アルキル、置換アリール、またはヘテロアリールであり;R5は、アルキル、アリール、または置換アリールであり;nは0、1または2である]から選択される。
化合物001〜029および構造式I〜XXXIIで表される化合物を含む、リン酸基を有する小分子は、ヒト上皮細胞の膜を横断するリン酸輸送、したがってリン酸の胃腸内吸収を抑制するのに使用することができる。リン酸基を有するこれらの小分子は、また、それらの根本的原因または効果が、本明細書に記載のような正常な血清中リン酸レベルの維持についての異常に関連する疾患を治療または予防するのに使用することができる。
【0039】
(リン酸基を有する小分子の製剤および投与)
リン酸基を有する小分子は、単独または組み合わせて、限定はされないが、エレキシル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤などの食事性製剤としての、あるいはカプセル剤、錠剤または丸剤の形態での経口投与に向けて調製することができる。化合物は、単独または組み合わせて、皮下、静脈内または腹膜内のいずれかでの注射に適した製剤の状態で注射することができる。
リン酸基を有する小分子は、リン酸基を有する1種または複数の小分子、および薬学的に許容される担体、希釈剤、または賦形剤を含む医薬製剤の状態で投与することができる。
リン酸基を有する小分子は、単独または組み合わせて、そのような治療的または予防的介入を必要とする対象における消化管からのリン酸の取込みを低減することおよび/または尿中へのリン酸排泄の速度を増大させることによって、ヒト対象におけるリン酸蓄積を低減または制限するための許容される医薬製剤の状態で投与することができる。
本発明の目的の場合、投与されるリン酸基を有する小分子、またはその医薬製剤の量または投与量は、ヒト対象において妥当な時間枠にわたって例えば治療的または予防的反応をもたらすのに十分でなければならない、投与量は、リン酸基を有する個々の小分子の有効性、およびヒト対象の状態、ならびに治療予定のヒト対象の体重によって決定される。
リン酸基を有する小分子、またはその医薬製剤の投与量は、また、リン酸基を有する個々の小分子またはその医薬製剤の投与に付随する可能性のある任意の有害副作用の存在、本質、および程度によって決定される。典型的には、応対医師は、年齢、体重、一般的健康状態、食事、性別、投与予定のリン酸基を有する小分子、投与経路、および治療されている状態の重症度などの、種々の因子を考慮して、それぞれ個々の患者を治療するために、リン酸基を有する小分子の投与量を決定する。本発明を限定することを意図しない例を挙げれば、リン酸基を有する小分子またはその医薬製剤の投与量は、約0.0001〜約1g/kg治療対象の体重/日、約0.0001〜約0.001g/kg体重/日、または約0.01mg〜約1g/kg体重/日でよい。
【実施例】
【0040】
以下の実施例は、例示のために提供され、本発明の範囲を限定することを意図しない。
(例1)Caco−2ヒト腸上皮細胞におけるリン酸取込み抑制に対する化合物001〜029の効果
Caco−2細胞を、20%ウシ胎児血清を含むDMEM培地中で培養した。Caco−2細胞のサブコンフルエントな単層から培地を除去した。生じた細胞を、ナトリウム不含緩衝液(137mM塩化コリン、5.4mM KCl、2.8mM CaCl2、1.2mM MgSO4、および14mM Tris−HCl、pH7.4)またはナトリウム含有緩衝液(137mM塩化ナトリウム、5.4mM KCl 2.8mM CaCl2、1.2mM MgSO4、および14mM Tris−HCl、pH7.4)のどちらかで洗浄した。洗浄した後、細胞に、1μMの放射能標識化リン酸塩(K232PO4、1μCi/mL)を含むナトリウム含有緩衝液またはナトリウム不含緩衝液、および100μMの化合物001〜029を含む群から選択されたリン酸基を有する小分子を添加し、それらを37℃で20分間インキュベートした。取込み培地を除去すること、および細胞を137mMの塩化コリンまたは塩化ナトリウムのどちらかを含む14mM Tris−HCl(pH7.4)の氷冷溶液で洗浄することによって、リン酸取込みを終結した。放射能標識化リン酸を抽出するために、細胞の単層を、Triton X−100の1%溶液を添加して可溶化した。放射能標識化リン酸のアリコートを、シンチレーション流体に添加し、液体シンチレーション計数で放射能を測定した、ナトリウムを含むまたは含まない2種の溶液を使用するアッセイ間の差異は、リン酸のナトリウム依存性輸送を表す。図1は、C−003、014、016および018を除いて、リン酸基を有する小分子は、Caco−2ヒト上皮細胞におけるリン酸の取込みを低減するか、あるいは完全に抑制したことを示す。
【0041】
(例2)リン酸取込み抑制に対するリン酸基を有する小分子化合物の投与量の効果
C−002、C−004、C−012およびC−028を1〜100μMの濃度で使用して、例1の手順を繰り返した。結果は、リン酸基を有する小分子の濃度に対するリン酸取込み抑制のパーセントとして記録した。図2は、Caco−2細胞におけるリン酸取込みのパーセント抑制が、限界濃度に到達するまで、リン酸基を有する小分子化合物の濃度と共に増大することを示す。
【0042】
(例3)リン輸送アッセイにおけるリン酸基を有する小分化合物の毒性測定
リン輸送アッセイにおける化合物の毒性を排除するために、100μMのC−002、C−004、C−012、C−028、および細胞の存在下で、ALAMAR BLUE染色液を用いて染色を実施した。Caco−2細胞を96−ウェルのプレートに、試験当日に約16,000細胞/ウェル(例えば、1日間の増殖には8,000細胞/ウェル、2日間の増殖には4,000細胞/ウェル、3日間の増殖には2,000細胞/ウェル)を与える濃度で播種した。試験当日に、古い培地を、最終濃度が100μMのリン酸基を有する小分子/DMSOを含む、または対照ウェルでは1%のDMSOを含むウェル当たり80μLの新鮮な培地と交換した。試験は、二つ組みで実施した。ALAMAR BLUE染色液(BioSource International,Inc.社、カタログ番号DAL 1100)を製造業者の説明書に従って10%の最終濃度で各ウェルに添加した。次いで、細胞を37℃でさらに18または24時間インキュベートし、生細胞によるALAMAR BLUE染色液の還元を分光光度法により570nmおよび600nmで測定した。結果は、製造業者のマニュアル(TREK Diagnostic Systems社、PI−DIAL 1025/1100Rev1.0)中の式を使用して還元のパーセントとして計算した。図3は、18および24時間後のALAMAR BLUE染色液の還元におけるパーセント差は実質的に変化せず、リン酸基を有する小分子はCaco−2ヒト上皮細胞に対して非毒性であったことを示す。
【0043】
トリパンブルー色素排除法を利用して、細胞生存能に対するC−002、004、012および028の効果を測定した。細胞を、ALAMAR BLUE染色液試験と同様の方式で播種した(上記参照)。試験当日に、培地を除去し、細胞をPBSで洗浄し、ナトリウム不含緩衝液(137mM塩化コリン、5.4mM KCl、2.8mM CaCl2、1.2mM MgSO4、および14mM Tris−HCl、pH7.4)、またはナトリウム含有緩衝液(137mM塩化ナトリウム、5.4mM KCl 2.8mM CaCl2、1.2mM MgSO4、および14mM Tris−HCl、pH7.4)中、100μM(最終濃度)のC−002、C−004、C−012およびC−028と共にインキュベートした。試験は二つ組みで実施した。1時間インキュベートした後、細胞をトリプリン/EDTAで引き離し、エッペンドルフチューブに移送し、それらの生存能を、0.4%トリパンブルー染色液(Invitrogen社、カタログ番号15250−061)を1:4希釈で使用し、共焦点顕微鏡法を用いて計数した。図4は、リン酸基を揺する小分子が、1時間インキュベートした後に、Caco−2ヒト上皮細胞の生存能に対して有意な効果を有さなかったことを示す。
【0044】
(例4)雄性Sprague Dawleyラットに対するリン酸基を有する小分子の最大耐容投与量(MTD)の決定
雄性Sprague Dawleyラットに、C−002、C−004、C−012、C−021、C−022、C−023およびC−028を経口でkg当たり0.5、5および10mgの投与量で12日間毎日与えた。死亡数および動物の体重データを記録した。死亡は報告されず、体重増加に対する有意な効果は観察されなかった(図5参照)。これらの結果は、最大で10mg/kgまで投与された場合に、これらの化合物の毒性がないことまたは低いことを示唆する。
【0045】
(例5)血清中リン酸の低減に対する構造式1〜XXXIIで表される化合物の有効性
血清中リン酸レベルの低減に対する構造式I〜XXXIIで表される化合物の有効性を、尿毒症性ラットで試験する。腎不全および血清中リン酸レベルの上昇を誘導するために、雄性Sprague Dawleyラットに、アデニン(500mg/kg/日)を12日間経口で毎日投与する。同一の胃管栄養液で、構造式I〜XXXIIで表される化合物を0.5〜10mg/kgの範囲の投与量で毎日経口で投与する。研究中、経口胃管栄養の直後に限られた時間で(例えば、3時間)25gの高リン酸食を毎日提供する。1、6および12日目に血液を採取する。12日目に腸を採取する。血清中リン酸およびFGF−23レベルを測定し、NaPi−2b転写物を腸から定量する。血清中リン酸レベルは、研究の過程中に低下すると予想される。低下した血清中リン酸は、血清中FGF−23の上昇および腸管内NaPi−2b転写の上昇をもたらすはずである。
【0046】
(例6)化合物002の調製(スキーム1)
スキーム1.
【0047】
【化18】

100mLの4口丸底フラスコに、2,3,4,5,6−ペンタクロロピリジン(10g、0.0397モル)および亜リン酸トリエチル(6.8g、0.0409モル)を窒素下で仕込んだ。反応混合物を還流するまで加熱して24時間維持し、次いで25〜30℃まで放冷した。反応混合物に水(50mL)を添加し、EtOAc(2×50mL)で抽出した。合わせた有機抽出物を、MgSO4上で乾燥し、真空下で濃縮して粗材料を得た。粗材料を、溶離液としてDCM(900mL)を用いるカラムクロマトグラフィー(シリカゲル100〜200)で精製した。純粋なカラム画分を合わせ、真空下で蒸発させてクリーム色の固体(3.8g、収率27%)を得た。クリーム色の固体について1H NMR分析を実施すると、スペクトルは化合物Aと矛盾しなかった。
100mLの4口丸底フラスコに、化合物A(1.5g、0.0042モル)および6M塩酸(50mL)を仕込んだ。反応混合物を還流するまで加熱して4時間維持し、25〜30℃まで放冷し、真空下で濃縮した。反応混合物に水(30mL)を添加し、溶液を真空下で濃縮した。次いで、反応混合物にアセトン(50mL)を添加し、溶液を真空下で濃縮した。反応混合物にジクロロメタン(30mL)を添加し、溶液を25〜30℃で15分間撹拌した。化合物を析出させ、濾過し、スラリーをn−ヘキサン(30mL)で洗浄して灰白色固体としてC−002(1.2g、収率95%)を得た。C−002を1H NMR、13C NMRおよび31P NMRで特徴付けた。
1H NMR (DMSO-d6): δ 5.00-7.00 ppm (bs,2H). 13C NMR (DMSO-d6): δ 146.87, 146.76, 146.17, 144.85, 131.28, 131.26. 31P NMR (DMSO-d6): δ 0.65(s).
C−002の純度は、HPLCにより98.3%と測定された。MS(m/z):C52Cl4NO3Pに対して計算値296.9;実測値(M−1)295.9。
【0048】
(例7)化合物―004の調製(スキーム2)
スキーム2.
【0049】
【化19】

250mLの4口丸底フラスコに、窒素下でアセトフェノン(25g、0.208モル)を仕込んだ。フラスコに、三塩化リン(22.4mL、0.256モル)および酢酸(60g、0.999モル)を25〜30℃で逐次的に添加し、2時間撹拌した。反応混合物を0〜5℃まで冷却し、乾燥塩酸ガスを反応混合物に0〜5℃で1.5時間吹き込んだ。反応混合物を室温まで放冷し、さらに14時間撹拌した、析出した化合物を濾取し、スラリーをエーテル(100mL)で洗浄した。化合物を、100mL丸底フラスコに入れ、190℃まで加熱してその温度で15分間維持した。次いで、化合物を60℃まで冷却し、フラスコにクロロホルム(20mL)を添加し、溶液を25〜30℃で15分間撹拌した。析出した固体を濾過し、50℃で乾燥して、灰白色固体としてC−004(3g、収率8%)を得た。C−004を1H NMR、13C NMR、31P NMR、およびFT−IRで特徴付けた。
1H NMR (CD3OD): δ 7.6 (m,2H), 7.35 (m,3H), 6.20 (s, 1H), 6.16 (s, 1H), 6.04 (s, 1H), 5.96 (s, 1H). 13C NMR (CD3OD): δ 145.16, 143.77, 139.00, 138.90, 129.29, 129.12, 129.06, 129.04, 128.70, 128.65. 31P NMR (CD3OD): δ 13.30, 13.10.
C−004の純度は、HPLCにより98.4%と測定された。MS(m/z):C893Pに対して計算値184.13;実測値(M−1)183.1。
【0050】
(例8)化合物−012の調製(スキーム3)
スキーム3.
【0051】
【化20】

【0052】
パミドロン酸(palmidronic acid)(4.7g、0.021モル)を、水(10mL)とトリエチルアミン(12mL)とエタノール(40mL)との混合物に溶解した。反応混合物に、試薬4−ニトロフェニルイソチオシアネート(3.96g、0.0219モル)を25〜30℃で添加した。反応混合物を16時間撹拌し、還流するまで加熱して1時間維持した。混合物を5〜10℃まで冷却した後、20%塩酸(20mL)を添加し、反応物を25〜30℃で14時間撹拌した。生じた固体析出物を濾過し、水、エタノール、そしてアセトンで洗浄した。析出物を、熱風オーブン中、60〜65℃で4時間乾燥して化合物B(4.5g、収率50%)を得た。化合物Bを1H NMRで特徴付けた。
100mLの4口丸底フラスコに、化合物B(2.25g、0.0054モル)、エタノール(35mL)、および水(6mL)を窒素下で仕込んだ。反応混合物にトリエチルアミン(1.2mL)を添加し、25〜30℃で10分間撹拌した。反応物にクロロアセトン(90%溶液、0.74g、0.457mL、0.0056モル)を25〜30℃で添加した。反応混合物を、還流するまで加熱して1時間維持し、次いで25〜30℃まで放冷した。反応混合物に塩酸(20%、1.2mL)を25〜30℃で添加し、1時間撹拌した。反応混合物を10〜15℃まで冷却し、さらに1時間撹拌した。析出物を濾過し、スラリーをエタノール(15mL)およびアセトン(20mL)で洗浄し、湿り化合物を50〜60℃で2時間乾燥して、淡黄色固体としてC−012(1.15g、収率47%)を得た。C−012を1H NMRで特徴付けた。
1H NMR (CD3OD): δ 8.4 (d,2H), 7.85 (d,2H), 6.8 (s, 1H), 4.65 (s, 2H), 2.6 (m, 2H), 2.45 (s, 3H).
C−012の純度は、HPLCにより97.7%と測定された。MS(m/z):C1318392+に対して計算値454.31;実測値(M+)454.2。
【0053】
(例9)化合物―021の調製(スキーム4)
スキーム4.
【0054】
【化21】

フェノール(15g、159.5ミリモル)の撹拌された無水CCl4(50mL)溶液に、新たに蒸留したトリエチルアミン(16.94g、24mL、167.48ミリモル)、続いて亜リン酸ジエチル(23.129g、167.48ミリモル)をアルゴン雰囲気下で添加した。反応混合物を室温で2時間撹拌し、出発原料の消失をTLCで追跡した。次いで、反応混合物に水を添加し、続いてDCMで希釈した。DCM層を、分離し、ブラインで乾燥し、無水Na2SO4上で乾燥し、濾過し、真空で濃縮して無色のオイルを得た。このオイルをDCM(20mL)に溶解し、シリカゲルカラム(230メッシュ、275g)に負荷し、0〜50%EtOAc/ヘキサンを用い、グラジエントで溶離した。画分をTLC/UVで分析し、純粋な画分を合わせ、真空で濃縮乾固し、無色オイルとして純粋な化合物C(30.40g、収率89%)を得た。TLCを30%EtOAc/ヘキサンで実施し、化合物Cは、UVおよびPMAを用いてRf0.40の位置で可視化された。
【0055】
DIPA(9.67g、95.53ミリモル)の撹拌された無水THF(200mL)溶液に、nBuLi(6.12g、95.53ミリモル)を−20℃で添加し、反応物を−20℃でさらに30分間撹拌した。次いで、反応混合物に、化合物C(20g、86.88ミリモル)のTHF(50mL)溶液を添加し、室温で2時間撹拌した。出発原料が消失したら(TLCで監視して)反応混合物に水、次いでEtOAcを添加した。EtOAc層を、分離し、ブラインで乾燥し、無水Na2SO4上で乾燥し、濾過し、真空中で濃縮して、無色のオイルを得た。このオイルを、DCM(20mL)に溶解し、シリカゲルカラム(230メッシュ、275g)に負荷し、0〜100%EtOAc/ヘキサンを用い、グラジエントで溶離した。カラム画分をTLC/UVで分析した。純粋な画分を合わせ、真空で濃縮乾固し、無色オイルとして純粋な化合物D(16.12g、収率75%)を得た。TLCを30%EtOAc/ヘキサンで実施し、化合物Dは、UVおよびPMAを用いてRf0.30の位置で可視化された。
【0056】
化合物D(5g、95.53ミリモル)の撹拌された無水DMF(200mL)溶液に、K2CO3(6.0g、43.44ミリモル)および1−ブロモ−1−クロロエタン(3.11g、21.72ミリモル)をアルゴン雰囲気下に室温で添加した。反応混合物を24時間撹拌し、出発原料の消失をTLCで監視した。次いで、反応混合物に水、続いてEtOAcを添加した。EtOAc層を、分離し、ブラインで乾燥し、無水Na2SO4上で乾燥し、濾過し、真空で濃縮して無色のオイルを得た。このオイルをDCM(20mL)に溶解し、シリカゲルカラム(230メッシュ、275g)に負荷し、0〜100%EtOAc/ヘキサンを用い、グラジエントで溶離した。カラム画分をTLC/UVで分析した。純粋な画分を合わせ、真空で濃縮乾固し、無色オイルとして純粋な化合物E(16.12g、収率75%)を得た。TLCを50%EtOAc/ヘキサンで実施し、化合物Eは、UVおよびPMAを用いてRf0.25の位置で可視化された。
化合物E(5g、16.19ミリモル)の撹拌された無水DCM(50mL)溶液に、TBS−Br(15.69g、97.18ミリモル)をアルゴン雰囲気下に室温で添加した。反応混合物を2時間撹拌し、出発原料の消失をTLCで監視した。次いで、反応混合物に水、次いでアセトンを添加した。有機溶媒をロータリー蒸発で除去し、非水溶性の白色析出物を得た。固体の結晶性生成物を、濾過し、水で徹底的に洗浄し、高真空下で乾燥して、灰白色結晶性固体としてC−021(3.0g、収率75%)を得た。TLCを100%EtOAcで実施し、C−021は、UVおよびPMAを用いてRf0.15の位置で可視化された。C−021を、1H NMRおよび31P NMRで特徴付けた。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): 3.9 (dd, J=6.0, 5.7 Hz, 2H), 4.28 (dd, 5.4, 5.7 Hz, 2H), 7.0 (m, 1H), 7.10 (m, 1H), 7.45 (m, 1H), 7.65 (m, 1H). 31P NMR (300, DMSO-d6): 11.669 (s). MS (m/z): C8H10ClO5Pの計算値, 252.59; 実測値(M+ - OH), 235.1.
【0057】
(例10)化合物―022の調製(スキーム5)
スキーム5.
【0058】
【化22】

【0059】
2−ブロモフェノール(25g、0.144モル)と炭酸カリウム(60g、0.433モル)とのDMF(175mL)懸濁液に、1,3−ジブロモプロパン(7.0mL、0.069モル)を窒素雰囲気下に室温で滴加した。反応混合物を室温で5時間撹拌した。反応を完結した後(TLCで監視して)、反応混合物を水(820mL)で希釈し、15分間撹拌した。析出した白色固体を、濾過し、水で洗浄し、気流乾燥して化合物F(25g、収率89%)を得た。
1H NMR (200 MHz, DMSO-d6): δ 2.21 (p, J = 6.4 Hz, 2H), 4.24 (t, J = 6.4 Hz, 4H), 6.87 (dt, J = 7.4, 1.4 Hz, 2H), 7.14 (dd, J = 8.0, 1.4 Hz, 2H), 7.32 (dt, J = 8.0, 1.4 Hz, 2H), 7.55 (dt, J = 7.8, 1.4 Hz, 2H).
【0060】
化合物F(23g、59.0ミリモル)のDMSO(160mL)溶液に、DIPEA(83mL)、dppb(4.05g、9.4ミリモル)、酢酸パラジウム(II)(2.1g、9.4ミリモル)および亜リン酸ジエチル(38.2mL、295ミリモル)を窒素雰囲気下に室温で添加した。反応混合物を100℃で一夜加熱した。次いで、反応混合物を、室温まで冷却し、2N HCl(300mL)で希釈し、酢酸エチル(2×300mL)で抽出した。有機層を、水(250mL)で洗浄し、ブライン(200mL)で乾燥し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で蒸発させた。得られる粗体を、溶離液としてMeOH/DCMを使用するカラムクロマトグラフィーで精製して化合物G(11.9g、収率40%)を得た。
1H NMR (200 MHz, CDCl3): δ 1.24 (t, J = 7.4 Hz, 12H), 2.33 (p, J = 6.0 Hz, 2H), 3.96-4.17 (m, 8H), 4.34 (t, J = 6.0 Hz, 4H), 6.94-7.04 (m, 4H), 7.48 (t, J = 8.6 Hz, 2H), 7.80 (dd, J = 15.0, 7.6 Hz, 2H); 質量: 500.9 (M++1).
【0061】
化合物G(10g、0.02モル)のDCM(40mL)溶液に、TMS−Br(15.8mL、0.12モル)を窒素雰囲気下で徐々に添加した。反応混合物を室温で4時間撹拌した。化合物Gが完全に消失した後(質量分析法で)、揮発物を減圧下で除去した、アセトン−水(50mL、1:1)を添加し、反応混合物を室温で30分間撹拌した。析出した固体を、濾過し、アセトンで洗浄し、DMF−EtOH−EtOAc(1:3:4)から再析出させて、C−022(6.0g、収率77%)を得た。痕跡量のDMFおよびEtOHを除去するため、最後の析出は、DMSO−水(1:3)を使用して行った。
1H NMR (200 MHz, DMSO-d6): δ 2.16 (p, J = 6.0 Hz, 2H), 4.24 (t, J = 6.0 Hz, 4H), 6.94 (dt, J = 7.6, 3.2 Hz, 2H), 7.05 (t, J = 8.2 Hz, 2H), 7.43 (t, J = 8.0 Hz, 2H), 7.63 (dd, J = 14.2, 7.4 Hz, 2H); 13C NMR (75 MHz, DMSO-d6): 28.3, 64.7, 112.3, 112.4, 119.6, 119.7, 120.5, 122.0, 133.1, 133.2, 133.3, 160.0; 質量: 388.9 (M++1).
C−022の純度は、HPLCにより99.5%と測定された。
【0062】
(例11)化合物―023の調製(スキーム6)
スキーム6.
【0063】
【化23】

ベンズアルデヒド(3.34g、31.50ミリモル)とビス−ジエチルホスホネート(9.08g、31.50ミリモル)の撹拌された無水DCM(50mL)溶液に、50%NaOH水をアルゴン雰囲気下に室温にて2時間で添加した。出発原料が消失した後(TLCで監視して)、反応混合物に水、続いてさらなるDCMを添加した。DCM層を、分離し、希HClで洗浄し、水で洗浄し、ブラインで乾燥し、無水Na2SO4上で乾燥し、濾過し、真空で濃縮して粗生成物を得た。粗生成物をDCM(10mL)に溶解し、シリカゲルカラム(230メッシュ、200g)に負荷し、0〜75%酢酸エチル/ヘキサンを用い、グラジエントで溶離した。カラム画分をTLC/UVで分析し、純粋な画分を合わせ、真空で濃縮乾固して、無色オイルとして純粋な化合物H(6.4g、収率85%)を得た。TLCを40%EtOAc/ヘキサンで実施し、化合物Hは、UVおよびPMAを用いてRf0.45の位置で可視化された。
化合物H(3g、12.48ミリモル)の撹拌された無水DCM(50mL)溶液に、TMS−Br(11.47g、94.92ミリモル)をアルゴン雰囲気下に室温で添加した。反応混合物を2時間撹拌し、反応の進行をTLCで監視した。次いで、反応混合物に水、続いてアセトンを添加した。有機溶媒を減圧下に除去すると、非水溶性の白色析出物が生じた。析出物を、濾過し、水で徹底的に洗浄し、高真空下で乾燥して、結晶性固体としてC−023(1.83g、収率80%)を得た。TLCを100%EtOAcで実施し、C−023は、UVおよびPMAを用いてRf0.15の位置で可視化された。C−023を1H NMRおよび31P NMRで特徴付けた。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): δ 6.5 (dd, J = 18.0, 16.2 Hz, 1H), 7.2 (dd, J = 17.7, 17.4 Hz, 1H), 7.4 (m, 3H), 7.6 (m, 2H), 9.6 (bs, 2H). 31P NMR (300 MHz, DMSO-d6): 14.707 (s). MS (m/z): C8H9O3Pの計算値, 184.13; 実測値(M+), 184.1.
【0064】
(例12)化合物―28の調製(スキーム7)
スキーム7.
【0065】
【化24】

【0066】
ヘプタフルオロ酪酸(17g、79.42ミリモル)の撹拌された無水THF(200mL)溶液に、PhMgBr(17.28g、95.30ミリモル)をアルゴン雰囲気下に−20℃で添加した。反応物を−20℃で1時間撹拌し、出発原料の消失をTLCで監視した。反応混合物に飽和NH4Cl溶液を徐々に添加し、混合物を続いてEt2Oで希釈した。Et2O層を、分離し、希HClで洗浄し、水で洗浄し、ブラインで乾燥し、無水Na2SO4上で乾燥し、濾過し、真空で濃縮して、無色のオイルを得た。オイルをDCM(20mL)に溶解し、シリカゲルカラム(230メッシュ、500g)に負荷し、0〜20%酢酸エチル/ヘキサンを用い、グラジエントで溶離した。カラム画分をTLC/UVで分析した。純粋な画分を合わせ、真空で濃縮乾固し、無色のオイルとして純粋な化合物I(5.44g、収率25%)を得た。TLCを15%EtOAc/ヘキサンで実施し、化合物Iは、UVおよびPMAを用いてRf0.70の位置で可視化された。
【0067】
化合物I(5.44g、19.84ミリモル)の撹拌された無水MeOH(50mL)溶液に、NaBH4(0.9g、23.81ミリモル)をアルゴン雰囲気下に室温で添加した、反応混合物を15分間撹拌し、出発原料の消失をTLCで監視した。出発原料が消失した後、反応混合物に飽和HN4Cl溶液を添加し、続いてEtOAcで希釈した。EtOAc層を、分離し、ブラインで乾燥し、無水Na2SO4上で乾燥し、濾過し、真空で濃縮して、無色のオイルを得た。このオイルをDCM(10mL)に溶解し、シリカゲルカラム(230メッシュ、100g)に負荷し、0〜30%EtOAc/ヘキサンを用い、グラジエントで溶離した。カラム画分をTLC/UVで分析した。純粋な画分を合わせ、真空で濃縮乾固し、無色のオイルとして純粋な化合物J(4.65g、収率85%)を得た。TLCを15%EtOAc/ヘキサンで実施し、化合物Jは、UVおよびPMAを用いてRf0.45の位置で可視化された。
【0068】
化合物J(3g、10.86ミリモル)の撹拌された無水THF(50mL)溶液に、Et3N(1.64g、16.29ミリモル)およびテトラゾール(0.91g、10.03ミリモル)、続いてジクロロフェニルホスホネートをアルゴン雰囲気下に室温で添加した。反応混合物を2時間撹拌し、出発原料の消失をTLCで監視した。出発原料が消失した後、反応フラスコに水を添加し、30分間撹拌し、反応混合物をEtOAcで希釈した。EtOAc層を、分離し、水で洗浄し、ブラインで乾燥し、無水Na2SO4上で乾燥し、濾過し、真空で濃縮して、粗生成物を得た。粗生成物を、逆相カラムクロマトグラフィー(C18メッシュ、50g)および0〜100%アセトニトリル/水を用いて溶離されるグラジエントによって精製した。カラム画分を、75%酢酸エチル/ヘキサンを使用するTLCで分析し、生成物はUVおよびPMAを用いてRf0.15の位置で可視された。純粋な画分を合わせ、真空で濃縮すると、非水溶性の結晶性固体が生じた。固体を濾過し、高真空で乾燥して、純粋な結晶性白色固体としてC−028(3.7g、収率82%)を得た。C−028を1H NMRおよび31P NMRで特徴付けた。
1H NMR (300 MHz, DMSO-d6): 7.2-7.6 (m, 10H), 6.0 (m, 1H), 5.4 (bs, 1H). 31P NMR (300 MHz, DMSO-d6): 15.99 (s). MS (m/z): C16H12F7O3Pの計算値, 416.23; 実測値415.1.
【0069】
前記の説明は、単に理解を明瞭にするために提供され、本発明の範囲内の修正形態は当業者にとって明らかである可能性があるので、それらの説明から不必要な限定を推測すべきでない。
明細書を通して、組成物が成分または材料を含むと説明される場合、該組成物は、そうでないことを記載しない限り、列挙された成分または材料の任意の組合せから本質的になる、あるいは任意の組合せからなることもできることを企図する。
【0070】
本明細書中で開示される方法、およびその個々のステップの実施は、手動で、および/または電子装置の助けを借りて実施することができる。方法を、特定の実施形態に関して説明してきたが、当業者は、該方法に付随する行為を実施する他の手段を使用できることを容易に認識するであろう。例えば、種々のステップの順序は、そうでないことを記載しない限り、該方法の範囲または精神から逸脱することなしに変更できる。加えて、個々のステップの一部を、組み合わせること、割愛すること、またはさらなるステップにさらに再分割することができる。
【0071】
本明細書中で引用されるすべての特許、刊行物および参考文献は、参照により全体で本明細書に組み込まれる。本開示と組み込まれる特許、刊行物および参考文献との間に矛盾がある場合には、本開示が優先するものとする。
【図1A】

【図1B】

【図2A】

【図2B】

【図2C】

【図2D】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
リン酸輸送の抑制を必要とするヒト対象に、リン酸基を有する小分子を有益な治療成績を達成するのに有効な量で投与することを含む、ヒト上皮細胞の膜を横断するリン酸輸送を抑制する方法。
【請求項2】
リン酸代謝異常またはリン酸輸送障害と関連した疾患を有するヒト対象に、リン酸基を有する小分子をリン酸代謝またはリン酸輸送障害と関連した疾患の進行を予防、安定化、または逆転するのに有効な量で投与することを含む、リン酸代謝異常またはリン酸輸送障害と関連した疾患の進行を予防する、安定化する、または逆転する方法。
【請求項3】
疾患が、副甲状腺機能亢進症、代謝性骨疾患、尿毒症性骨疾患、腎性骨疾患、軟部組織石灰化、心血管石灰化、心血管事象、カルシフィラキシス、および骨粗鬆症からなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
血清中リン酸の低下または血清中リン酸の維持を必要とするヒト対象に、リン酸基を有する小分子を、血清中リン酸レベルを低下させるまたは維持するのに有効な量で投与することを含む、血清中へのリン酸蓄積が起こり得る疾患の治療または予防方法。
【請求項5】
疾患が、高リン血症、慢性腎臓病、二次性副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症、および副甲状腺機能低下症からなる群から選択される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
そのような介入を必要とするヒト対象の疾患を治療するための薬学的介入に起因するまたは起因するであろう高リン血症を治療する、遅延する、または予防する方法であって、前記ヒト対象に、リン酸基を有する小分子を、高リン血症を治療、遅延、または予防するのに有効な量で投与することを含む方法。
【請求項7】
薬学的介入が、ビタミンDをベースにした療法である、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
疾患が、二次性副甲状腺機能亢進症である、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
リン酸基を有する小分子を、リン酸基を有する1種または複数のさらなる別の小分子と組み合わせて投与することをさらに含む、請求項1から8までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
リン酸基を有する小分子が、薬学的に許容される製剤の状態で投与される、請求項1から9までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
薬学的に許容される製剤が、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、またはこれらのいずれかの混合物を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
製剤が、経口または注射によって投与される、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
製剤が、エレキシル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、カプセル剤、錠剤、または丸剤として経口で投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
製剤が、皮下、静脈内、または腹膜内での注射によって投与される、請求項11に記載の方法。
【請求項15】
リン酸基を有する小分子が、1日につき体重1kg当たり約0.001〜約1gの投与量で投与される、請求項1から14までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
リン酸基を有する小分子が、式
【化1】

【化2】

[式中、
Aは、
【化3】

であり、
Xは、O、S、NH、またはN−アルキルであり、
Yは、OまたはSであり、
各Zは、独立に、O、S、N、またはCH2であり、
nは、0、1または2であり、
mは、1〜6であり、
1は、1つまたは複数の位置で、ハロゲン、OH、O−アルキル、N−ジアルキル、またはNHCO−アルキルであり、
2は、H、アルキル、または置換ベンジルであり、
3は、1つまたは複数の位置で、ハロゲン、アルキル、置換ベンジル、OH、O−アルキル、N−ジアルキル、またはNHCO−アルキルであり、
4は、H、ハロゲン、O−アルキル、S−アルキル、N−ジアルキル、またはNHCO−アルキルであり、
5は、アルキル、アリール、または置換アリールであり、
6は、アルキル、ベンジル、または芳香族置換ベンジルであり、
7は、H、アルキル、ベンジル、または芳香族置換ベンジルであり、
8は、H、アルキル、アリール、ベンジル、または芳香族置換ベンジルであり、
9は、Hまたはアルキルであり、
10は、アルキル、O−アルキル、S−アルキル、アリール、NR112、またはNCOR11であり、
11は、アルキルまたはアリールであり、
12はハロゲンであり、
13は、ハロゲン、OR14、NR152、PO32、SO3H、COOH、またはNH2であり、
14は、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、アリル、置換ベンジル、または非置換ベンジルであり、
15は、メチル、エチル、イソプロピル、アリル、置換ベンジル、または非置換ベンジルであり、
16は、SO3H、COOH、またはNH2であり、
17は、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、シクロヘキシル、アリール、またはヘテロアリールであり、
18は、1つまたは複数の位置で、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、ハロゲン、OH、O−アルキル、N−ジアルキル、またはNHCO−アルキルであり、
19は、ハロゲン、NR112、NHCOR11、SR11またはヘテロアリールであり、
20は、ハロゲン、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、N(CH32、N(Et)2、N(iPr)2、NHCOCH3、NHCOCF3、またはNHCOPhであり、
21は、アルキル、ハロゲン化アルキル、O−アルキル、置換アリール、またはヘテロアリールである]、およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、請求項1から15までのいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
リン酸基を有する小分子が、
【化4】

【化5】

【化6】

およびこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
リン酸基を有する小分子が、
【化7】

およびこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
ヒト上皮細胞の膜を横断するリン酸輸送を抑制するのに使用するための、リン酸基を有する小分子。
【請求項20】
ヒト上皮細胞の膜を横断するリン酸輸送を抑制するための薬剤を製造するための、リン酸基を有する小分子の使用。
【請求項21】
リン酸代謝異常またはリン酸輸送障害と関連した疾患の進行を予防する、安定化する、または逆転するのに使用するための、リン酸基を有する小分子。
【請求項22】
リン酸代謝異常またはリン酸輸送障害と関連した疾患の進行を予防する、安定化する、または逆転するための薬剤を製造するための、リン酸基を有する小分子の使用。
【請求項23】
疾患が、副甲状腺機能亢進症、代謝性骨疾患、尿毒症性骨疾患、腎性骨疾患、軟部組織石灰化、心血管石灰化、心血管事象、カルシフィラキシス、および骨粗鬆症からなる群から選択される、請求項21または22に記載の使用。
【請求項24】
血清中へのリン酸蓄積が起こり得る疾患を治療または予防するのに使用するための、リン酸基を有する小分子。
【請求項25】
血清中へのリン酸蓄積が起こり得る疾患を治療または予防するための薬剤を製造するための、リン酸基を有する小分子の使用。
【請求項26】
疾患が、高リン血症、慢性腎臓病、二次性副甲状腺機能亢進症、副甲状腺機能亢進症、および副甲状腺機能低下症からなる群から選択される、請求項24または25に記載の使用。
【請求項27】
そのような療法を必要とする疾患を治療するための薬学的介入の結果である、高リン血症を治療する、遅延する、または予防するのに使用するための、リン酸基を有する小分子。
【請求項28】
そのような療法を必要とする疾患を治療するための薬学的介入の結果である、高リン血症を治療する、遅延する、または予防するための薬剤を製造するための、リン酸基を有する小分子の使用。
【請求項29】
薬学的介入が、ビタミンDをベースにした療法である、請求項27または28に記載の使用。
【請求項30】
疾患が、二次性副甲状腺機能亢進症である、請求項27または28に記載の使用。
【請求項31】
リン酸基を有する小分子が、薬学的に許容される製剤中に含まれる、請求項17から30までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項32】
薬学的に許容される製剤が、薬学的に許容される担体、希釈剤、賦形剤、またはこれらのいずれかの混合物を含む、請求項31に記載の使用。
【請求項33】
リン酸基を有する小分子が、式
【化8】

【化9】

[式中、
Aは、
【化10】

であり、
Xは、O、S、NH、またはN−アルキルであり、
Yは、OまたはSであり、
各Zは、独立に、O、S、N、またはCH2であり、
nは、0、1または2であり、
mは、1〜6であり、
1は、1つまたは複数の位置で、ハロゲン、OH、O−アルキル、N−ジアルキル、またはNHCO−アルキルであり、
2は、H、アルキル、または置換ベンジルであり、
3は、1つまたは複数の位置で、ハロゲン、アルキル、置換ベンジル、OH、O−アルキル、N−ジアルキル、またはNHCO−アルキルであり、
4は、H、ハロゲン、O−アルキル、S−アルキル、N−ジアルキル、またはNHCO−アルキルであり、
5は、アルキル、アリール、または置換アリールであり、
6は、アルキル、ベンジル、または芳香族置換ベンジルであり、
7は、H、アルキル、ベンジル、または芳香族置換ベンジルであり、
8は、H、アルキル、アリール、ベンジル、または芳香族置換ベンジルであり、
9は、Hまたはアルキルであり、
10は、アルキル、O−アルキル、S−アルキル、アリール、NR112、またはNCOR11であり、
11は、アルキルまたはアリールであり、
12はハロゲンであり、
13は、ハロゲン、OR14、NR152、PO32、SO3H、COOH、またはNH2であり、
14は、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、アリル、置換ベンジル、または非置換ベンジルであり、
15は、メチル、エチル、イソプロピル、アリル、置換ベンジル、または非置換ベンジルであり、
16は、SO3H、COOH、またはNH2であり、
17は、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、シクロヘキシル、アリール、またはヘテロアリールであり、
18は、1つまたは複数の位置で、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、ハロゲン、OH、O−アルキル、N−ジアルキル、またはNHCO−アルキルであり、
19は、ハロゲン、NR112、NHCOR11、SR11またはヘテロアリールであり、
20は、ハロゲン、メチル、エチル、イソプロピル、tert−ブチル、N(CH32、N(Et)2、N(iPr)2、NHCOCH3、NHCOCF3、またはNHCOPhであり、
21は、アルキル、ハロゲン化アルキル、O−アルキル、置換アリール、またはヘテロアリールである]、およびそれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、請求項1から32までのいずれか1項に記載の使用。
【請求項34】
リン酸基を有する小分子が、
【化11】

【化12】

【化13】

およびこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、請求項33に記載の使用。
【請求項35】
リン酸基を有する小分子が、
【化14】

およびこれらのいずれかの組合せからなる群から選択される、請求項34に記載の使用。

【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2012−515727(P2012−515727A)
【公表日】平成24年7月12日(2012.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−546558(P2011−546558)
【出願日】平成22年1月26日(2010.1.26)
【国際出願番号】PCT/CA2010/000111
【国際公開番号】WO2010/083613
【国際公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【出願人】(508372445)シトクロマ インコーポレイテッド (8)
【Fターム(参考)】