説明

小型アクチュエータ

【目的】 振動体を利用することで大きな駆動力が得られ、しかもリニア型のアクチュエータとした場合には大きな変位量が得られる。
【構成】 基板1の外周部には、自由端が−x方向に延びる複数の片持ち梁2と、自由端が+x方向に延びる複数の片持ち梁3と、自由端が+y方向に延びる複数の片持ち梁4と、自由端が−y方向に延びる片持ち梁5とが形成される。各片持ち梁2、3、4、5はそれぞれ固有振動数が異なる。基板1の中央部には、厚み方向に分極され、出力周波数が可変の交流電源(不図示)に接続された圧電体6が固定される。この基板1を基台(不図示)に載置し、圧電体6に所定の交流電圧を印加し、基板1を片持ち梁2の固有振動数と等しい振動数で振動させると、片持ち梁2は共振し、基板1が−x方向に移動する。同様に、基板1を+x方向、+y方向、および−y方向にも移動させることができる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、片持ち梁の振動を利用した小型アクチュエータに関する。
【0002】
【従来の技術】マイクロマシンと呼ばれる微小な機械は、医療分野や管内作業ロボット等、狭所作業用機械として注目されている。こうした微小な機械を移動させたり作業させるための駆動機構として、従来の機械と同様な電磁モータを微小化することも行なわれている。ところが、電磁モータは小さくなると駆動力や効率が極端に低下するので、電磁力にかわり、静電力を用いた櫛歯型のリニアアクチュエータやマイクロモータが提案されている。
【0003】静電力を用いた従来の櫛歯型のリニアアクチュエータの構造を図8に示す。図8に示すように、基板に固定された2つの固定部53はそれぞれ支持部52を空中に支持しており、各支持部52により、互いに連結されてかつ櫛歯51aが形成された2つの可動部51が図示左右方向に移動可能に支持されている。そして、各可動部51の櫛歯51aには、それぞれ基板に固定された歯54が互い違いに2μmのギャップをあけて挿入されている。ここが静電駆動部となり、可動部51の櫛歯51aと固定された歯54との間に電圧を印加すると、両者の重なりが大きくなる方向の力が働く。
【0004】また、静電力を用いた従来のマイクロモータの構造を図9に示す。図9に示すように、ロータ103は基板上にピンジョイント102により回転自在に軸支されている。また、複数のステータ101が、ロータ103の回転中心を挟んで放射状に配置されており、その対向するもの同志(例えば、U−U’)が一対の電極を構成している。各ステータ103は、ロータ103の中心に近い部位が基板から数ミクロンm浮き上がり、その下をロータ103が通過できるようになっている。ここで、例えばU−U’の一対のステータ101に電圧を印加すると、静電力に引かれてロータ103は電圧を印加されたステータ101の下に吸い込まれる。その動きに合わせてV−V’、W−W’というように順番に電圧を印加するステータ101を切り替えていけば、ロータ103は連続的に回転する。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上述した静電力を用いた従来の櫛歯型のリニアアクチュエータは、その変位量は櫛歯の長さで規制されるので大きな変位を得ることができなかった。また、マイクロモータについていえば、その駆動源となる静電力はロータの表面積に依存しており、この構造を小型化にすればするほどロータの表面積は小さくなり、その結果大きな回転力が得られなくなってしまうという問題点があった。
【0006】一方、微小な機械に対しては摩擦力の影響が通常の大きさの機械に比べると常に大きいため、振動体を用いた駆動方式が有効な動力源となりうることが知られている。しかし、微小機械の動力として適した振動の利用法はあまり提案されていない。
【0007】そこで本発明は、振動体を利用することで大きな駆動力が得られ、しかもリニア型のアクチュエータとした場合には大きな変位量が得られる小型アクチュエータを提供することを目的とする。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため本発明の小型アクチュエータは、先端部が他の平板部材に当接可能な片持ち梁が形成された基板と、前記基板を前記片持ち梁の固有振動数と略等しい振動数で振動させるための励振手段とを有することを特徴とする。
【0009】また、前記基板には、それぞれ固有振動数が異なる4種類の片持ち梁が、互いに自由端の向きを逆向きとした2種類ずつを互いに直交して配置されるとともに、前記励振手段は、前記基板を前記4種類の片持ち梁のそれぞれの固有振動数で振動させるものとしたものであってもよいし、あるいは、前記基板には、それぞれ固有振動数の異なる2種類の片持ち梁が複数個ずつ、互いに自由端の向きを逆向きとして円周方向に配置されているとともに、前記励振手段は、前記基板を前記2種類の片持ち梁のそれぞれの固有振動数で振動させるものとしたものであってもよい。
【0010】さらに、前記基板は単結晶シリコンからなるものとしたり、前記励振手段を周波数可変のものとしたものであってもよい。
【0011】
【作用】上記のとおり構成された本発明の小型アクチュエータでは、基板を他の平板部材に載置して、励振手段により片持ち梁の固有振動数と略等しい振動数で振動させる。これにより片持ち梁は基板の振動と共振して固定端を中心に大きく振動し、先端部で他の平板部材をたたく。このとき他の平板部材には片持ち梁の自由端側から固定端側に向かう向きの力が作用するとともに、基板と他の平板部材との間に摩擦力が作用する。従って、他の平板部材の位置を固定していれば、基板が片持ち梁の固定端側から自由端側へ向かって移動するし、基板の向きを上下逆向きにしてその位置を固定し基板上に平板部材を載置すれば、平板部材が片持ち梁の自由端側から固定端側へ向かって移動する。
【0012】また、基板にはそれぞれ固有振動数が異なる4種類の片持ち梁が、互いに自由端の向きを逆向きとした2種類ずつを互いに直交して配置され、この基板を4種類の片持ち梁のそれぞれの固有振動数で振動させることで、この小型アクチュエータをxyステージに利用できる。さらに、基板にはそれぞれ固有振動数の異なる2種類の片持ち梁が複数個ずつ、互いに自由端の向きを逆向きとして円周方向に配置され、この基板を2種類の片持ち梁のそれぞれの固有振動数で振動させることで、この小型アクチュエータをマイクロモータに利用できる。
【0013】
【実施例】次に、本発明の実施例について図面を参照して説明する。
【0014】(第1実施例)図1は、本発明の小型アクチュエータの第1実施例の平面図である。この小型アクチュエータは図1に示すように、それぞれ固有振動数が異なる4種類の片持ち梁2、3、4、5が5つずつ形成された基板1と、基板1の中央部に固定された励振手段としての、厚み方向に分極した圧電体6とで構成される。各片持ち梁2、3、4、5のうち、自由端が−x方向に向かって延びる5つの片持ち梁2の固有振動数はそれぞれf1で、自由端が+x方向に向かって延びる5つの片持ち梁3の固有振動数はそれぞれf2となっている。また、自由端が+y方向に向かって延びる5つの片持ち梁4の固有振動数はそれぞれf3で、自由端が−y方向に向かって延びる5つの片持ち梁5の固有振動数はそれぞれf4となっている。
【0015】各片持ち梁2、3、4、5のうち固有振動数がf1の片持ち梁2の形状は、図2に示すように、その中間部の厚みtが基板1の厚みに対して薄く形成されている。その他の片持ち梁3、4、5の形状についても同様であり、各片持ち梁2、3、4、5は、中間部の厚みtを変えたり梁の長さLを変えること等により、それぞれの固有振動数を変えている。
【0016】また、基板1としては、金属あるいは合金材料や高分子材料等、薄板状に形成される材料を使用することが可能であり、各片持ち梁2、3、4、5の形成方法としても、放電加工やレーザ加工やエッチング技術を利用することができる。この中でも、上述したように多数個の微細な片持ち梁2、3、4、5を寸法精度よく形成するためには、基板1としてシリコンウエハを用い、エッチング技術により各片持ち梁2、3、4、5を形成するのが最も適している。
【0017】さらに、圧電体6には出力周波数が可変な交流電源(不図示)が電気的に接続されている。この交流電源により圧電体6に交流電圧を印加すること、その周波数に応じた周波数で圧電体6が振動し、それに伴って基板1が振動する構成となっている。
【0018】上述した構成に基づき、圧電体6を上方に向けた状態で基板1を平板部材としての基台(不図示)上に載置しておき、交流電源により基板1を例えば周波数f1で振動させると、基板1の振動に伴って各片持ち梁2、3、4、5もその固定端を中心に振動し(図2において矢印B方向)、それぞれの先端部で基台をたたく。この際、各片持ち梁2、3、4、5の中でも固有振動数がf1の片持ち梁2が基板1の振動と共振し、他の片持ち梁3、4、5よりも大きな振幅で振動するので、基台には固有振動数がf1の片持ち梁2による力が最も強く作用することになる。固有振動数がf1の片持ち梁2が振動してその先端部が基台をたたくことにより、固有振動数がf1の片持ち梁2は図2において右斜め下向きの力を基台に作用させる。ところが、基板1は非常に軽く、しかも基台は固定されているものなので、この片持ち梁2は基台からの反作用を受け、また基台との摩擦力により基板1自体が図2において左方に移動することになる。すなわち、図1においては基板1は−x方向に移動することになる。このとき、上述したように基板1は非常に軽く、それにより基台との摩擦力の影響も大きくなるので、基板1の駆動力は大きいものとなる。
【0019】同様に、固有振動数がf2の片持ち梁3を共振させることにより基板1は+x方向に移動する。さらに、固有振動数がf3の片持ち梁4を共振させることにより基板1は+y方向に移動し、固有振動数がf4の片持ち梁5を共振させることにより基板1は−y方向に移動する。これらの移動を適宜組み合せることで基板1をxy方向に任意に移動させることができ、この小型アクチュエータをxyステージとして使用することが可能となる。しかも、この小型アクチュエータの駆動源は一つでよいので、その構造が簡単になるし、制御も容易である。
【0020】次に、本実施例の小型アクチュエータの製造方法の一例について説明する。
【0021】基板1としては、大きさが12mm×8mm、厚さが525μmの(100)方位のシリコンウエハを用い、まず、その基板1の一方の面の、中央部の圧電体固定部位および各梁形成予定部位を、それぞれKOH水溶液により厚み200μmまでエッチングした。次に、基板1の両面にLPCVD法によりSi−N膜を0.15μmの厚みで形成し、両面のSi−N膜にそれぞれ各片持ち梁2、3、4、5のくり抜きパターンを形成する。そして、Si−N膜をマスクとして基板1の両面からKOH水溶液により各片持ち梁2、3、4、5の外形を形成する。各片持ち梁2、3、4、5の外形が形成されたら、基板1の全体を熱酸化し基板1の端面を酸化膜で保護した後、基板1の他方の面の、各片持ち梁2、3、4、5の中間部となる部位のSi−N膜を除去し、これら各部位をKOH水溶液でエッチングする。これにより、図2に示した形状で各片持ち梁2、3、4、5が形成される。
【0022】このようにして形成された各片持ち梁2、3、4、5の形状は以下のとおりとした。すなわち、図3R>3に示す幅aが200μm、先端部の凸部の長さbが100μm、厚みtが50μmである。また、各片持ち梁2、3、4、5の固有振動数は、それぞれ梁の長さLが異なるものとすることで変えており、Lの値をそれぞれ300μm、320μm、340μm、370μmとした。
【0023】各片持ち梁2、3、4、5が形成されたら、圧電体固定部位に、厚み方向に分極した圧電体6として、大きさが2mm×3mm、厚みが0.5mmのPZT圧電体をエポキシ系接着剤により接着固定した。
【0024】以上のようにして作製された小型アクチュエータを、圧電体6を上方に向けて基台上に載置し、圧電体6に各片持ち梁2、3、4、5の固有振動数に対応する交流電圧を印加することで、小型アクチュエータは基台上を自由に移動した。ちなみに、各片持ち梁2、3、4、5の共振周波数は、梁の長さLが300μmのものでは59kHz、梁の長さLが320μmのものでは45kHz、梁の長さLが340μmのものでは36kHz、梁の長さLが370μmのものでは27kHzであった。また、この小型アクチュエータを上下逆向きにしてその端部を固定し、さらに基板1上に薄板を載置することにより、この薄板をxy方向に任意に移動させることもでき、薄板をxyステージとして使用することもできる。
【0025】基板1を振動させるときの基板1の周波数は、用いる励起手段や電源により使用可能な範囲に設定できることはもちろんであるが、これが可聴帯域であると騒音の発生源となるので、可聴帯域外であることが望ましい。
【0026】本実施例では、同じ固有振動数の片持ち梁をそれぞれ5つずつ形成したものの例を示したが、これに限らず、同じ固有振動数の片持ち梁の数は必要に応じて増減することができる。
【0027】(第2実施例)図4は、本発明の小型アクチュエータの第2実施例の断面図であり、図5は、図4に示した小型アクチュエータの基板を下方から見た図である。本実施例においては、基板11は図5に示すように円盤状の部材であり、基板11には、それぞれ固有振動数が異なる2種類の片持ち梁12、13が複数個ずつ、基板1の円周方向に沿って、かつ一つおきに配置されているとともに、円環状の溝11aが形成されている。各片持ち梁12、13の形状はそれぞれ第1実施例のものと同様の形状であり、それぞれ自由端の向きが互いに逆向きとなっている。また、各片持ち梁12、13の梁の長さL(図2参照)を互いに異なるものとすることで、それぞれの固有振動数を変えている。
【0028】また、図4に示すように固定台20は、その中央部に、基板11の各片持ち梁12、13が形成されている部位にはめ込まれて各片持ち梁12、13の先端部と接触する円形状の中央凸部20aが形成されているとともに、外周部には、基板11の溝11aにはめ込まれる円環状の外周凸部20bが形成されている。これにより、基板11は固定台20に回転自在に支持される構成となっている。
【0029】一方、基板11の図示上面にはパイレックスガラス板17が接合されている。パイレックスガラス板17の中央部の、基板11との対向面には、基板11の各片持ち梁12、13が形成されている部位の面積よりも大きな面積の凹部17aが形成されている。この凹部17a内において、基板11とパイレックスガラス板17との対向面には、それぞれ励振手段としての電極18、19が設けられている。各電極18、19は、外部で出力周波数が可変な交流電源(不図示)と電気的に接続されており、この交流電源により各電極18、19に交流電圧を印加すると、その周波数に応じて基板11の中央部が振動する構成となっている。各電極18、19にかえて、導電性を有する基板を用いたり、表面が導体化された基板を用いてもよい。
【0030】上述した構成に基づき、交流電源により各電極18、19に交流電圧を印加し、一方の片持ち梁12を共振させる振動を基板11に与えると、第1実施例で述べた原理と同様の原理により基板11は矢印C方向(図5参照)に回転する。また、他方の片持ち梁13を共振させる振動を基板11に与えることにより、基板11は矢印D方向に回転する。これにより、この小型アクチュエータをマイクロモータとして使用することが可能となる。
【0031】次に、本実施例の小型アクチュエータの製造方法の一例について説明する。
【0032】基板11としては、厚さが525μmの(100)方位のシリコンウエハを用い、まず、その基板11の一方の面の、中央部の片持ち梁形成予定部位を円形状におよびその外方を円環状に、それぞれKOH水溶液により厚み300μmまでエッチングして中央部の凹部および溝11aを形成した。次に、基板11の両面にLPCVD法によりSi−N膜を0.15μmの厚みで形成し、第1実施例と同様の工程により基板11の中央部の凹部に各片持ち梁12、13を形成する。
【0033】このようにして形成された各片持ち梁12、13の形状は以下のとおりとした。すなわち、図3に示す幅aが100μm、先端部の凸部の長さbが100μm、厚みtが100μmである。また、各片持ち梁12、13の固有振動数は、それぞれ梁の長さLが異なるものとすることで変えており、Lの値をそれぞれ240μm、280μmとした。
【0034】各片持ち梁12、13が形成されたら、基板11の他方の面に、真空蒸着法により厚みが0.1μmのAl膜を成膜し、電極19を形成する。
【0035】一方、厚みが1mmのパイレックスガラス板17の中央部をフッ酸でエッチングして深さが2μmの凹部17aを形成する。その後、この凹部17aの底壁に、真空蒸着法およびフォトリソグラフィ法により厚みが0.1μmのAl膜を成膜し、電極18を形成する。
【0036】そして、電極19が形成された基板11と電極18が形成されたパイレックスガラス板17とを、各電極18、19を互いに対向させて陽極接合法により接合する。これを、予め中央凸部20aおよび外周凸部20bが形成された固定台20にはめ込むことで、本実施例の小型アクチュエータが作製される。実際的には、例えば直径が4インチの基板に複数のパターンを形成し、複数の小型アクチュエータを一枚の基板に同時に作製する方法が用いられる。そしてこの基板は、パイレックスガラスが接合されてから所定の部位でダイシングソーにより切断されて一つ一つに分離される。
【0037】以上のようにして小型アクチュエータを作製し、各電極18、19に各片持ち梁12、13の固有振動数に対応する交流電圧を印加することで、基板11は固定台20に対して任意の方向に回転した。ちなみに、各片持ち梁12、13の共振周波数は、梁の長さLが240μmのものでは120kHz、梁の長さLが280μmのものでは75kHzであった。
【0038】以上説明した各実施例では、励振手段として圧電体に交流電圧を印加するものや対向電極間に交流電圧を印加するものの例を示したが、これに限られるものではない。
【0039】例えば、図6に示すように、片持ち梁(不図示)を形成した基板21の外周部に、スペーサ23を介してパイレックスガラス板等からなる板部材24を接合し、基板21の板部材24との対向面の中央部に永久磁石22を固定するとともに、板部材24の図示上面にコイル状導体25を設けたものが挙げられる。この場合、コイル状導体25に交流電圧を印加することにより基板21の中央部が振動し、その振動により片持ち梁を共振させることで、この小型アクチュエータは片持ち梁の固定端側から自由端側に向かう向きに移動する。そして、片持ち梁を図1に示したものと同様に直交配置することでxyステージとして利用できるし、図5に示したものと同様に円周方向に向かって配置することでマイクロモータ用のロータとして利用できる。
【0040】さらに、励振手段としては図7に示すように積層型のピエゾ素子32を用いたものでもよい。この場合は、片持ち梁(不図示)が形成された基板31は、その外周部において複数の積層型のピエゾ素子32を介して板部材34に接合されており、各ピエゾ素子32に交流電圧を印加して各ピエゾ素子32を伸縮させることで基板31の中央部が振動する。これにより、図6に示したものと同様にこの小型アクチュエータをxyステージとして利用したりマイクロモータ用のロータとして利用できる。
【0041】
【発明の効果】本発明は以上説明したとおり構成されているので、以下に記載する効果を奏する。
【0042】片持ち梁が形成された基板と、この基板を片持ち梁の固有振動数と略等しい振動数で振動させる励振手段とを有という簡単な構造で、基板の振動に伴う片持ち梁の共振を利用して基板と他の平板部材とを相対的に移動させる小型アクチュエータを得ることができる。また、基板と平板部材のうち移動される物体が軽量だと他方の物体との摩擦力の影響が大きくなるので、静電力を利用した小型アクチュエータに比較して大きな駆動力が得られる。さらに、移動される物体の移動方向は片持ち梁の形成方向によって決まるので、基板を振動させるだけで移動される物体は所定の方向に移動され、制御も容易である。
【0043】また、それぞれ固有振動数が異なる4種類の片持ち梁が、互いに自由端の向きを逆向きとした2種類ずつを互いに直交して配置された基板を用い、この基板を4種類の片持ち梁のそれぞれの固有振動数で振動させることで、この小型アクチュエータをxyステージに利用することができる。この場合には、移動される物体の移動量は特に制限されないので、大きな移動量のxyステージを得ることができる。
【0044】さらに、それぞれ固有振動数の異なる2種類の片持ち梁が複数個ずつ、互いに自由端の向きを逆向きとして円周方向に配置され他基板を用い、この基板を2種類の片持ち梁のそれぞれの固有振動数で振動させることで、この小型アクチュエータをマイクロモータに利用することができる。
【0045】加えて、基板を単結晶シリコンからなるものとすることで、片持ち梁の形成をフォトリソグラフィ技術を用いて行なうことができ、寸法精度のよい片持ち梁を形成することができる。これは特に、多数個の片持ち梁を形成する場合に有効である。
【0046】そして、励振手段を周波数可変のものとすることで、複数種の振動数で基板を振動させることを一つの励振手段で行なうことができ、基板にそれぞれ異なる複数種の固有振動数を有する片持ち梁を形成した場合の小型アクチュエータの制御をより容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の小型アクチュエータの第1実施例の平面図である。
【図2】図1に示した小型アクチュエータのA−A線断面図である。
【図3】図1に示した小型アクチュエータの片持ち梁の拡大斜視図である。
【図4】本発明の小型アクチュエータの第2実施例の断面図である。
【図5】図4に示した小型アクチュエータの基板を下方から見た図である。
【図6】本発明の小型アクチュエータの励振手段として電磁力を利用したものを用いた場合の、小型アクチュエータの側面図である。
【図7】本発明の小型アクチュエータの励振手段としてピエゾ素子を利用したものを用いた場合の、小型アクチュエータの側面図である。
【図8】静電力を用いた従来の櫛歯型リニアアクチュエータの平面図である。
【図9】静電力を用いた従来のマイクロモータの斜視図である。
【符号の説明】
1、11、21、31 基板
2、3、4、5、12、13 片持ち梁
6 圧電体
11a 溝
17 パイレックスガラス板
18、19 電極
20 固定台
20a 中央凸部
20b 外周凸部
22 永久磁石
23 スペーサ
24、34 板部材
25 コイル状導体
32 ピエゾ素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】 先端部が他の平板部材に当接可能な片持ち梁が形成された基板と、前記基板を前記片持ち梁の固有振動数と略等しい振動数で振動させるための励振手段とを有することを特徴とする小型アクチュエータ。
【請求項2】 前記基板には、それぞれ固有振動数が異なる4種類の片持ち梁が、互いに自由端の向きを逆向きとした2種類ずつを互いに直交して配置されるとともに、前記励振手段は、前記基板を前記4種類の片持ち梁のそれぞれの固有振動数で振動させるものとした請求項1に記載の小型アクチュエータ。
【請求項3】 前記基板には、それぞれ固有振動数の異なる2種類の片持ち梁が複数個ずつ、互いに自由端の向きを逆向きとして円周方向に配置されているとともに、前記励振手段は、前記基板を前記2種類の片持ち梁のそれぞれの固有振動数で振動させるものとした請求項1に記載の小型アクチュエータ。
【請求項4】 前記基板は単結晶シリコンからなる請求項1、2、または3に記載の小型アクチュエータ。
【請求項5】 前記励振手段を周波数可変のものとした請求項1、2、3または4に記載の小型アクチュエータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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