説明

小型昇圧トランス

【課題】絡げ端子に対してコイルの端末処理が容易に行なえ、作業の能率の向上を図ることができる小型昇圧トランスを提供することにある。
【解決手段】複数の絡げ端子21を設けた台座11と、頂壁25及び頂壁と一体に構成された側壁26を有し、頂壁25に円形の嵌合孔28を有し、前記台座11に載置されるリングコア12と、リングコア12の嵌合孔28に嵌合されるドラムコア13と、磁芯部13aに巻装されたコイル23とからなり、絡げ端子21は、コイル23が絡げられる基端部21aが狭幅で、先端部21bに向かって広幅になるテーパ部21cを有し、該テーパ部21cには前記コイル23の被覆を剥離するエッジ24aを有するコイル端末処理溝24が形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、カメラ等の光学機器や小型電子機器等に使用される小型昇圧トランスに関する。
【背景技術】
【0002】
ポット型コア・リベット型コアを有するチョークコイルは、例えば、特許文献1に示すように、頂壁及び頂壁と一体に構成された側壁よりなるポット型コアと、底板と、この底板と一体にその中心部に立設される磁芯部よりなるリベット型コアと、前記磁芯部に嵌合されるコイルと、前記底板に固定される断面コ字状の端子とから構成されている。
【0003】
この特許文献1に示すチョークコイルは、ポット型コアの頂壁の内面とリベット型コアの磁芯部の上端面との間に非磁性材料よりなるスペーサを介在し、磁路のギャップを形成している。すなわち、非磁性材料よりなるスペーサの肉厚を調整することによりチョークコイルのインダクタンスを設定している。
【0004】
また、例えば、特許文献2に示すように、頂壁及び頂壁と一体に構成された側壁よりなるポット型コアと、底板と、この底板と一体にその中心部に立設されると共に、上端部に鍔部を有する磁芯部よりなるリベット型コアと、前記磁芯部に嵌合されるコイルと、前記底板に固定される端子とから構成した小型昇圧トランスが知られている。
【0005】
この特許文献2の小型昇圧トランスは、ポット型コアを左右に2分割してそれぞれの頂壁の上面と鍔部の上面とを面一に形成し、頂壁の開口の内周面と鍔部の外周面との間に第1のギャップ形成部を設け、さらにポット型コアのそれぞれの側壁の下端面とリベット型コアの底板の上面とを対面させて両者間に第2のギャップ形成部を設けてコイルのインダクタンスを設定したものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第3581350号公報
【特許文献2】特開2006−313841号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1は、チョークコイルにおいて、ポット型コアの頂壁の内面とリベット型コアの磁芯部の上端面との間に非磁性材料よりなるスペーサを介在し、磁路のギャップを形成しているが、ポット型コアの頂壁の内面とリベット型コアの磁芯部の上端面、つまり、磁路のギャップ形成部はポット型コアの側壁によって囲まれている。
【0008】
従って、チョークコイルの組立時に、ポット型コアの側壁によって囲まれている磁路のギャップ形成部に異なる肉厚のスペーサを出し入れしてチョークコイルのインダクタンスを設定することは困難で、組立工数がかかり、コストアップの原因になっている。
【0009】
特許文献2の小型昇圧トランスは、第1と第2のギャップ形成部により選択的に磁路のギャップを形成し、コイルのインダクタンスを調整できるが、ギャップが不十分であり、インダクタンス値に限度がある。
【0010】
本発明は、絡げ端子に対してコイルの端末処理が容易に行なえ、作業の能率の向上を図ることができる小型昇圧トランスを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、周側部に絡げ端子を設けた台座と、頂壁及び頂壁と一体に構成された側壁を有し、前記頂壁に円形の嵌合孔を有し、前記台座に載置されるリングコアと、磁芯部を有し、該磁芯部の両端部に鍔部を有し、一方の鍔部が載置され、他方の鍔部が前記リングコアの嵌合孔に嵌合されるドラムコアと、前記磁芯部に巻装されたコイルとからなり、
前記絡げ端子は、前記コイルが絡げられる基端部が狭幅で、先端部に向かって広幅になるテーパ部を有し、該テーパ部には前記コイルの被覆を剥離するエッジを有するコイル端末処理溝が形成されていること特徴とする小型昇圧トランスである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、小型昇圧トランスにおいて、絡げ端子に対してコイルの端末処理が容易に行なえ、作業の能率の向上を図ることができるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1の実施形態を示し、小型昇圧トランスの斜視図。
【図2】同実施形態の小型昇圧トランスの正面図。
【図3】同実施形態の小型昇圧トランスの裏面図。
【図4】同実施形態の小型昇圧トランスを示し、図3のA−A線に沿う断面図。
【図5】同実施形態の小型昇圧トランスを示し、図2のB−B線に沿う断面図。
【図6】同実施形態の小型昇圧トランスを示し、台座にドラムコアを固定した状態の斜視図。
【図7】同実施形態の小型昇圧トランスを示し、台座のタップ端子及び絡げ端子の斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0015】
図1〜図7は小型昇圧トランスの第1の実施形態を示す。図1〜図7に示すように、小型昇圧トランス10は、台座11と、リングコア12と、ドラムコア13とから構成されている。台座11は合成樹脂材料によって一体に成形された矩形状であり、相反する2側辺部には上方へ突出する突出壁14が設けられ、他の2側辺部は上面と面一の平坦部15に形成されている。
【0016】
台座11の平坦部15のそれぞれには略正三角形状で、頂部16aを外方に、平面部16bを内側に向けた突起からなる第1の位置決め突部16が対称的に一体に突設されている。突出壁14の互いに対向する側面には矩形状に切欠した凹陥部17が設けられている。凹陥部17の左右角部17a及び底部17bの3箇所からなる第2の位置決め突部18が形成されている。この第1と第2の位置決め突部16,18は台座11に対してリングコア12及びドラムコア13を後述する方法によって位置決めするようになっている。
【0017】
さらに、台座11の上面にはシボ加工などによって粗面19に形成されている。また、台座11の突出壁14側の周側部にはタップ端子20と、このタップ端子20を挟んで両側に絡げ端子21が設けられている。台座11の平坦部15側の周側部には複数個の実装端子22が設けられている。
【0018】
タップ端子20は、コイル23が絡げられる基端部20aが狭幅で、先端部20bに向かって広幅になる末広がり状に形成され、絡げたコイル23がタップ端子20の先端部20bから抜け出ないように形成されている。
【0019】
絡げ端子21は、コイル23が絡げられる基端部21aが狭幅で、先端部21bが広幅になるように片側にテーパ部21cに形成され、絡げたコイル23が絡げ端子21の先端部21bから抜け出ないように形成されている。さらに、テーパ部21cには絡げたコイル23の絶縁被覆を剥離するエッジ24aを有するコイル端末処理溝24が設けられている。コイル端末処理溝24は溝幅が例えば、0.15mmと極めて狭い幅であり、コイル23とエッジ24aとの摺擦により、コイル23の絶縁被膜が剥離されて絡げ端子21と電気的に導通されるようになっている。
【0020】
リングコア12は、例えば、5.8×5.8mmの正方形の頂壁25を有しており、その一つの角部には小型昇圧トランス10の方向性を指示するためのカット面25a(例えば、カット幅1.0mm)が形成されている。また頂壁25の下面の両側部には頂壁25と一体で、しかも頂壁25より狭幅の一対の側壁26(高さが例えば2.0mm)が設けられている。頂壁25の下面には円形状の凹陥部27が設けられ、一対の側壁26の互いに対向する内側面には凹陥部27の曲率に沿って円弧凹部27aが形成されている。さらに、頂壁25の中央部には円形の嵌合孔28が設けられている。
【0021】
ドラムコア13は、円筒状の磁芯部13aの上下両端部に第1の鍔部29と第2の鍔部30が一体に設けられている。第1の鍔部29は、その外径が凹陥部27及び嵌合孔28の内径より僅かに小径で、凹陥部27及び嵌合孔28の内部に嵌合するようになっている。第2の鍔部30は第1の鍔部29より若干小径に形成されている。
【0022】
また、磁芯部13aには前記コイル23が巻装されており、このコイル23は、内層と外層に1次巻線が、中間層に2次巻線が巻装され、それぞれの端部はタップ端子20と絡げ端子21に接続されるようになっている。
【0023】
台座11に対してドラムコア13の第2の鍔部30を固定する際には、台座11の上面のシボ加工などによって形成された粗面19に接着剤を塗布し、ドラムコア13の第2の鍔部30を接着固定する。このとき、第2の鍔部30の外周面の一部は2つの第1の位置決め突部16の平面部16bに当接し、第2の鍔部30の外周面の他の一部は2つの第2の位置決め突部18の凹陥部17の左右角部17a及び底部17bの3箇所に当接する。従って、ドラムコア13は合計8箇所で位置決めされ、ドラムコア13の横方向の移動が規制される。
【0024】
台座11に対してドラムコア13を固定した後、磁芯部13aに巻装されたコイル23の途中がタップ端子20に絡げられ、コイル23の端末が絡げ端子21に絡げられるが、タップ端子20は末広がり状に形成され、絡げ端子21はテーパ部21cを有している。従って、絡げたコイル23が台座11の周壁側に寄せられ、タップ端子20及び絡げ端子21の先端側から抜け出るのを防止できる。さらに、磁芯部13aに巻装されたコイル23の途中や端末は、台座11の突出壁14の上面及び側面に添接されるため、突出壁14がガイドとなりコイル23の空中線箇所が少なくなり、断線等の虞もなく、信頼性を向上できる。
【0025】
次に、ドラムコア13のリングコア12を嵌合し、リングコア12の側壁26を台座11の上面に接着固定する際に、リングコア12の円弧凹部27aが第1の位置決め突部16の頂部16aに当接してリングコア12の横方向が位置決め規制される。このとき、リングコア12の円弧凹部27aと第1の位置決め突部16の頂部16aとが圧接するため、頂部16aが押し潰された状態となり、リングコア12が確実に位置決めされる。従って、リングコア12の第1の鍔部29の外周面とドラムコア13の嵌合孔28の内周面との間にコイル23のインダクタンスを設定する磁路ギャップ31が形成され、インダクタンスのバラツキを抑制することができる。
【0026】
次に、小型昇圧トランスの組立方法について説明する。
【0027】
まず、台座11の上面に接着剤を塗布し、この台座11の上面にコイル23が巻装されたドラムコア13を載置する。具体的には、ドラムコア13の第2の鍔部30が台座11に固定される。台座11とドラムコア13とを結合した後、これを横向きにして巻線機のチャック機構に台座11をチャッキングする。そして、ドラムコア13の磁芯部13aにコイル23を巻線し、コイル23の端末をタップ端子20及び絡げ端子21に絡げ、この絡げ部を半田付けする。
【0028】
次に、リングコア12の側壁26の下面に接着剤を塗布し、リングコア12をドラムコア13に嵌合すると、リングコア12の嵌合孔28がドラムコア13の第1の鍔部29に嵌合される。従って、コイル23がリングコア12の側壁26によって覆われるとともに、リングコア12、ドラムコア13及び台座11が一体的に結合され、小型昇圧トランス10が完成する。
【0029】
このように、台座11とドラムコア13とを組み立てる際及び台座11とリングコア12とを組み立てる際に、第1の位置決め突部16と第2の位置決め突部18によってドラムコア13とリングコア12とを位置決めするため、第1の鍔部29と嵌合孔28とが同心的に嵌合し、両者の位置決めが簡単であり、組立作業性が向上する。さらに、リングコア12の第1の鍔部29の外周面とドラムコア13の嵌合孔28の内周面との間にコイル23のインダクタンスを設定する磁路ギャップ31が形成され、インダクタンスのバラツキを抑制することができる。
【0030】
なお、本発明は、前記実施形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、前記実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組合せにより種々の発明を形成できる。例えば、実施形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0031】
本発明の小型昇圧トランスは、カメラ等の光学機器や携帯電話機等の小型電子機器等に利用できる。
【符号の説明】
【0032】
11…台座、12…リングコア、13…ドラムコア、13a…磁芯部、16…第1の位置決め突部、18…第2の位置決め突部、21…絡げ端子、24a…エッジ、24…コイル端末処理溝、25…頂壁、26…側壁、28…嵌合孔、29…第1の鍔部、30…第2の鍔部、31…磁路ギャップ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
周側部に絡げ端子を設けた台座と、頂壁及び頂壁と一体に構成された側壁を有し、前記頂壁に円形の嵌合孔を有し、前記台座に載置されるリングコアと、磁芯部を有し、該磁芯部の両端部に鍔部を有し、一方の鍔部が載置され、他方の鍔部が前記リングコアの嵌合孔に嵌合されるドラムコアと、前記磁芯部に巻装されたコイルとからなり、
前記絡げ端子は、前記コイルが絡げられる基端部が狭幅で、先端部に向かって広幅になるテーパ部を有し、該テーパ部には前記コイルの被覆を剥離するエッジを有するコイル端末処理溝が形成されていること特徴とする小型昇圧トランス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−80136(P2012−80136A)
【公開日】平成24年4月19日(2012.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−11546(P2012−11546)
【出願日】平成24年1月23日(2012.1.23)
【分割の表示】特願2007−257941(P2007−257941)の分割
【原出願日】平成19年10月1日(2007.10.1)
【出願人】(592074441)東京コイルエンジニアリング株式会社 (62)
【Fターム(参考)】