説明

小型水力発電装置

【課題】 低コストでメンテナンス性に優れた集水管式井戸による高出力の小型水力発電装置を提供する。
【解決手段】 地下水取水用井戸に小径井筒と発電装置を設置し、大径井筒と小径井筒の間に集水された地下水が小径井筒上部開口部から落下し、過流化生成板により過流化され回転翼に衝突し当該回転翼を回転させ、この回転翼の回転力で発電する。回転翼を回転し通過した地下水は回転翼下方の小径井筒内に設けられた揚水口から揚水管を通り地上に設置された揚水ポンプにより揚水され飲料水や工業用水等として用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、集水された水の位置エネルギーで発電する小型水力発電装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の主な発電技術は、火力発電は化石燃料を燃焼することで得られる熱エネルギーを電力に変換する技術であり、水力発電はダムに貯められた大量の水の落下エネルギーを電力に変換する技術であり、原子力発電はウラン等の核物質を核分裂反応させて得られる熱エネルギーを電力に変換する技術であるが、資源枯渇・環境汚染・環境破壊・放射能汚染等の問題を抱えている。
【0003】
技術の進歩によりクリーン電力として太陽光発電や風力発電の開発も進んでいるが光エネルギーを電気エネルギーに変換する半導体素子に必須であるレアメタル材料が有限であり、又、実用化促進には一段のエネルギー変換効率の向上が必要である、風力発電においては風車設置場所の適地が少ないことや風車回転音による人体への悪影響も考えられる。
【0004】
再生可能なクリーンエネルギーによる環境負荷が少ないメンテナンス性に優れた低コストの発電技術と発電装置が期待されている。例えば特許文献1に開示された水力発電装置が提案されている。
【特許文献1】特開2008−151151
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示された水力発電装置は農水路等が多く、水利権等で発電装置設置場所が制限される。
【0006】
又、特許文献1に開示された水力発電装置においては大量降雨時の河川管理上において水路遮断等により発電装置の安定的な運用ができない。
【0007】
地表流水利用には上流側から流れてくる枯葉やゴミおよび汚泥などの異物除去対策が必要である。
【0008】
設置装置単位の発電量が少なく必要発電量の確保には当該発電装置を数多く設置する必要がある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は地下水をエネルギー源としていることを特徴としている。
【0010】
本発明は、新設・既設を問わず地下水取水用井戸に小径井筒と発電装置を設置することで発電できることを特長としている。
【0011】
本発明は、大径井筒と小径井筒の間に集水された地下水が小径井筒上部開口部から溢落する落下エネルギーで発電することを特徴としている。
【0012】
本発明は、溢落する地下水が過流化生成板により過流落下しながら当該発電用回転翼に衝突し当該発電用回転翼が回転することにより発電することを特徴としている。
【発明の効果】
【0013】
本発明のエネルギー源である水は消滅することない再利用可能な安全なエネルギーであり、地下水は地表の気候変動には影響されることは少なく定量的に流れていることから1年を通して安定的に発電ができることを特徴としている。
【0014】
本発明は井戸に取水された地下水をエネルギーとすることから井戸の地上開口部に蓋をすることで井戸内への異物混入を防止しメンテナンス性に優れていることを特徴としている。
【0015】
本発明は発電用の井戸を新たに作るのではなく取水用井戸に発電装置を付加することにより低コストで発電ができることを特徴としている。
【0016】
本発明の発電装置は地下水取水井戸に設置する装置であることから基本的に全ての井戸に設置が可能であり設置場所の選定が容易である。
【0017】
本発明に最適な井戸は大量の地下水集水が可能な集水管方井戸である。集水管型井戸の実績平均寸法は大径井筒径4m・深さ15mである、又実績平均集水日量は20000立米である。この平均数値から発電落差を10mとすると約23kwhの発電が可能である。平均小径井筒径が1.5mであることから小規模設備で高出力の発電装置を設置することができることを特徴としている。
【0018】
本発明は揚水口を2重井筒の小径井筒内の回転翼下部に設けることにより湧水地下水量以上の取水が不可能となり、安定的な井戸取水と発電が可能となる、又、井戸周辺の水資源・植物生育・地盤環境への影響を起こさないことを特徴としている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、発電装置の図面を参照して説明する。
【0020】
〔図1〕に示すように、本発明は井戸内に水の落差Hを構成し発電する小型水力発電装置である。
【0021】
本発明を最良の形態で実施するためには、集水能力が高い集水管式浅井戸が適していると考えられる。
〔図1〕、〔図2〕の集水管10には複数の集水孔が加工され連結ネジ12、13で放射状に伸延設置することにより他井戸工法より大量の集水が可能である。
【0022】
本小型水力発電装置の主たる構成品は、取水目的に設置された井戸の大径井筒1と、井筒内に縦型回転翼3と回転翼一体なる回転軸4と過流生成板9を設置した小径井筒2と、回転軸4と、回転軸4に連結された発電機5である。
【0023】
過流生成板9は落下水に過流を与え縦型回転翼3に衝突させ効率よく回転エネルギーに変換させることができる。
【0024】
縦型回転翼3に回転エネルギーを伝え落下した水は縦型回転翼3下方の小径井筒に設けられた複数の揚水口6から揚水パイプ7を通って揚水ポンプ8で揚水される。
【0025】
本発明は揚水口を小径井筒に設け過度の地下水を揚水できない構造である。
【0026】
本発明の落差Hは小径井筒開口部高さAから縦型回転翼3の回転翼までの垂直高さである。
【0027】
本発明の運転水面は井戸内に集水される地下水量と小径井筒2内に溢落する水量とが等しくなり水面が一定になる高さであり、小径井筒開口高さAは運転水面より低い位置である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明を実施するための最良の形態における発電装置の構造図である。
【図2】本発明を実施するための最良の形態における集水管の構造図である。
【符号の説明】
【0029】
A 溢落位置
1 大径井筒
2 小径井筒
3 縦型回転翼
4 回転軸
5 発電機
6 揚水口
7 揚水パイプ
8 揚水ポンプ
9 過流化板
10 集水管
11 集水孔
12 連結雄ネジ
13 連結雌ネジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
井底を備えた大径井筒とその内側に配置された井底を備える小径井筒と、小径井筒の内側に配置された回転翼とこの回転翼の回転力を伝える回転軸と、この回転軸の回転力によって発電する発電機で構成される小型水力発電装置。
【請求項2】
井底を備えた大径井筒とその内側に配置された井底を備えた小径井筒と、小径井筒の内側に配置された回転翼とこの回転翼と一体の発電機で構成される小型水力発電装置。
【請求項3】
小径井筒内側の開口部から回転翼上部の間に1条或いは複数条の螺旋状板を配置した請求項1乃または請求項2記載の小型水力発電装置。
【請求項4】
回転翼下方に設けた揚水口と地上に配置された揚水ポンプと、当該回転翼下の地下水を揚水するために当該揚水口と揚水ポンプの間に配置された揚水パイプで構成される請求項1から3のいずれか1項に記載の小型水力発電装置。
【請求項5】
筒部に複数の孔を設けた集水管を大径井筒の内側から大径井筒外側へ放射状に伸延配置される請求項1から4のいずれか1項に記載の小型水力発電装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−251538(P2012−251538A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−133688(P2011−133688)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(505318499)
【Fターム(参考)】