小型船舶用電気推進システム
【課題】小型船舶用電気推進システムにおいて、発電電力を効率的に使用でき、かつ、エンジン使用時にエンジンを効率の高い運転点で継続運転できるとともに、騒音を小さくできる構成を実現することである。
【解決手段】小型船舶用電気推進システム10は、エンジン12により駆動される発電機14と、発電機14により発電した電力が供給され、充電される主バッテリ16及び船内機器用バッテリ18と、発電機14により発電した電力が主バッテリ16を介して、または主バッテリ16を介さずに供給されるインバータ20と、インバータ20により駆動される推進用電動モータ28と、推進用電動モータ28により駆動されるプロペラ32とを備える。
【解決手段】小型船舶用電気推進システム10は、エンジン12により駆動される発電機14と、発電機14により発電した電力が供給され、充電される主バッテリ16及び船内機器用バッテリ18と、発電機14により発電した電力が主バッテリ16を介して、または主バッテリ16を介さずに供給されるインバータ20と、インバータ20により駆動される推進用電動モータ28と、推進用電動モータ28により駆動されるプロペラ32とを備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型船舶の推進用として使用され、電動モータにより駆動される船外推進装置を備える小型船舶用電気推進システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から小型船舶や大型船舶において、プロペラ等を推進装置として使用し、エンジン等を推進装置の駆動源として使用することが考えられている。特許文献1には、左右の第1及び第2プロペラと、各プロペラを駆動する第1及び第2推進用電動機と、各推進用電動機に電気を給電する配電盤と、配電盤に給電する電気を発電する3個の発電機と、各発電機を駆動する3個のディーゼルエンジンとを備える船舶用電機推進装置が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、フィッシングボート等に付設される小型船外機に関するもので、エンジンの回転力をクラッチ機構及び減速機構を介してスクリューの駆動軸に接続し、船外機本体に電動モータを付設するとともに、電動モータの出力軸をスクリューの駆動軸に接続し、スクリューをエンジン、電動モータあるいはエンジン及びモータにより選択的に駆動するように構成した、小型船舶用のハイブリッド推進構造の船外機が記載されている。また、エンジンの駆動時に電動モータを発電機として使用することも考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−240450号公報
【特許文献2】実開昭63−158493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された電気推進装置は小型船舶に使用することを考慮されたものではなく、二次電池等の蓄電部を使用しないので、発電電力を効率的に使用する面から改良の余地がある。また、蓄電部を使用する構成において、船内の空間の利用効率を向上させることを考慮されたものでもない。特許文献1に記載の電気推進装置をプレジャーボート等の小型船舶に適用することを考慮する場合には、船内の空間の利用効率の向上を考慮することが重要になる。
【0006】
また、特許文献2に記載された船外機の場合、エンジン及び電動モータが船外に設けられており、バッテリが船内に設けられている。ただし、エンジンの動力を減速機構を介してスクリューに出力する構造であるので、この減速機構を設ける分、エンジン駆動時のギヤ音が大きくなり、騒音が大きくなる可能性がある。また、エンジンを停止して、電動モータを回転させる場合でも、減速機構が回転する構造であるため、ギヤ音が大きくなり、騒音が大きくなる可能性がある。また、エンジンと、スクリューに連結される減速機構との間を長い駆動軸により連結する必要があり、さらに、減速機構は、回転方向を変換する構造とする必要があるので、船外機が大型化する原因となる。また、この構成の場合、電動モータ及びスクリューを上下方向の軸周りに回転可能とすることにより、舵機能を持たせて効率を向上させる構造とすることが困難である。また、エンジンを使用する場合にエンジンを性能上効率の高い運転点で運転継続させることが難しい。
【0007】
本発明の目的は、小型船舶用電気推進システムにおいて、上記の課題のうち、少なくとも発電電力を効率的に使用でき、かつ、エンジン使用時にエンジンを効率の高い運転点で継続運転できるとともに、騒音を小さくできる構成を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る小型船舶用電気推進システムは、エンジンにより駆動される発電機と、発電機により発電した電力が供給され、充電される蓄電部と、発電機により発電した電力が蓄電部を介して、または蓄電部を介さずに供給されるインバータと、インバータにより駆動される電動モータと、電動モータにより駆動される船外推進装置とを備えることを特徴とする小型船舶用電気推進システムである。船外推進装置は、例えば船体の外側に支持されたプロペラを含む。
【0009】
上記の小型船舶用電気推進システムによれば、発電機により発電した電力が充電される蓄電部を備え、蓄電部からの電力によりインバータ及び電動モータを介して船外推進装置を駆動させることができるので、発電電力を効率的に使用できる。また、エンジンは、船外推進装置を直接駆動することがないので、エンジン使用時にエンジンを効率の高い運転点で継続運転できる。さらに、エンジンの動力を船外推進装置に減速機構を介して伝達する必要がなくなり、エンジン駆動時にギヤ音を小さく、またはなくすことができ、騒音を小さくできる。
【0010】
また、本発明に係る小型船舶用電気推進システムにおいて、好ましくは、エンジンは、船体の外側に配置される船外機を構成する。
【0011】
上記構成によれば、船内にエンジンを設ける必要がなくなり、船内の空間の利用の自由度を高くできる。
【0012】
また、本発明に係る小型船舶用電気推進システムにおいて、好ましくは、船外機は、エンジンと、発電機と、インバータと、電動モータと、船外推進装置とを含む。
【0013】
また、本発明に係る小型船舶用電気推進システムにおいて、好ましくは、船外機は、エンジンと、発電機と、インバータとが収容された第1ケースと、電動モータが収容され、第1ケースに支持された第2ケースと、を備え、蓄電部は、船内に設けられており、第1ケース内の電気部品と蓄電部及び第2ケース内の電気部品とは、それぞれ電力配線で接続されている。
【0014】
また、本発明に係る小型船舶用電気推進システムにおいて、好ましくは、第1ケースと第2ケースとを連結するパイプ状部材と、パイプ状部材内に設けられ、第1ケース内のインバータと第2ケース内の電動モータとを接続する電力配線と、を備え、インバータは、船内に設けられた蓄電部から電力が供給される。
【0015】
また、本発明に係る小型船舶用電気推進システムにおいて、好ましくは、パイプ状部材は、第1ケースに対し回転可能に支持され、さらに、第1ケースの上面または第1ケースの内部に設けられ、パイプ状部材を回転駆動させる旋回用電動モータと、旋回を指示するための旋回指示具と、旋回指示具から入力された旋回指示に応じた方向に、旋回用電動モータを回転駆動させ、第2ケースを旋回させる制御部とを備える。
【0016】
上記構成によれば、電動モータが収容される第2ケースを含む回転可能な部分以外に専用の舵を設ける必要がなく、舵機構を含む構成の小型化を図れる。
【0017】
また、本発明に係る小型船舶用電気推進システムにおいて、好ましくは、蓄電部は、複数の船内ケース内にそれぞれ収容された複数の二次電池であり、複数の二次電池の少なくとも一部の二次電池は電気的に直列または並列に接続されている。
【0018】
上記構成によれば、複数の二次電池の配置の自由度向上を図れ、船内の空間を有効に使用しやすくなる。
【0019】
また、本発明に係る小型船舶用電気推進システムにおいて、好ましくは、蓄電部は、複数の船内ケース内にそれぞれ収容された複数の二次電池の少なくとも一部の二次電池であり、複数の船内ケースは、船内の幅方向中央で、前後方向に沿って配置されている。
【0020】
上記構成によれば、船内の低い部分に重量の大きい二次電池を配置しやすくでき、重量バランスをより有効に確保しやすくできる。また、複数の二次電池の一部の二次電池を船内機器用二次電池として使用できる。
【0021】
また、本発明に係る小型船舶用電気推進システムにおいて、好ましくは、蓄電部は、複数の船内ケース内にそれぞれ収容された複数の二次電池の少なくとも一部の二次電池であり、複数の船内ケースは、船内の幅方向両側で、前後方向に沿って配置されている。
【0022】
上記構成によれば、船内の幅方向中央部分の空間に二次電池を配置しないので、この中央部分に魚倉等重量の大きくなるものの配置を可能としつつ、重量バランスをより有効に確保しやすくできる。また、複数の二次電池の一部の二次電池を船内機器用二次電池として使用できる。
【0023】
また、本発明に係る小型船舶用電気推進システムにおいて、好ましくは、エンジン及び発電機は、船内に配置された複数の船内ケースの1の船内ケース内に収容されている。
【0024】
また、本発明に係る小型船舶用電気推進システムにおいて、好ましくは、インバータは、二次電池が収容された船内ケース内に設けられ、電動モータ及び船外推進装置は、船体の下面側で、インバータ及び二次電池が収容された船内ケースの下側に船体を介して対向する部分に設けられている。
【0025】
上記構成によれば、インバータと電動モータとを接続する電力線を過度に長くすることなく、船外推進装置を船体の下面側に設けることで推進力を高くできる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る小型船舶用電気推進システムによれば、発電電力を効率的に使用でき、かつ、エンジンを効率の高い運転点で使用できるとともに、騒音を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る実施の形態の小型船舶用電気推進システムの基本構成を示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の1例を示す略透視図である。
【図3】図2を上方から下方に見た略透視図である。
【図4】本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第1例を上方から下方に見た略透視図である。
【図5】本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第2例を示す略透視図である。
【図6】本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第3例を示す略透視図である。
【図7】本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第4例を示す略透視図である。
【図8】本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第5例を示す略透視図である。
【図9】本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第6例を示す略透視図である。
【図10】本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第7例を示す略透視図である。
【図11】本発明に係る太陽電池フィルム付船舶の1例を示す図である。
【図12】本発明に係る太陽電池フィルム付船舶の別例の第1例を、太陽電池フィルムを後方に展開した状態で、上方から下方に見た略図である。
【図13】図12に示す船舶において、図12の後端部を幅方向片側から他側に見て一部を断面にして示す図である。
【図14A】図12に示す船舶において、太陽電池フィルムを収容した状態を示す、図12の右端部拡大対応図である。
【図14B】図12に示す船舶において、太陽電池フィルムを収容した状態を示す、図13に対応する図である。
【図15A】本発明に係る太陽電池フィルム付船舶の別例の第2例を示す略図である。
【図15B】図15Aの後端部を上方から下方に見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1から図3は、本発明に係る実施の形態を示す図である。図1に示すように、本実施の形態の小型船舶用電気推進システム10は、例えばプレジャーボート、釣り船等の小型船舶に搭載して使用するもので、ディーゼルエンジン等のエンジン12と、エンジン12により駆動される発電機14と、蓄電部であり、二次電池である主バッテリ16及び船内機器用バッテリ(以下、「機器用バッテリ」とする。)18と、インバータ20とを備える。そして、エンジン12により発電機14を駆動可能としている。また、発電機14により発電した電力を、主バッテリ16に供給し、主バッテリ16を充電させるか、または発電機14により発電した電力をインバータ20に供給可能としている。インバータ20は、図示しない推進モータ用インバータと、旋回モータ用インバータとを含む。「インバータに電力を供給する」とは、推進モータ用インバータと、旋回モータ用インバータとに電力を供給することを意味する。また、発電機14により発電した電力を、機器用バッテリ18に供給し、機器用バッテリ18を充電させるようにしている。
【0029】
エンジン12の運転状態は、エンジンコントローラ22により制御される。機器用バッテリ18は、エンジンコントローラ22及び船内機器24に電力を供給する。主バッテリ16及び機器用バッテリ18は、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等、種々の形式のものを使用可能である。また、主バッテリ16及び機器用バッテリ18の代わりに、キャパシタを用いることもできる。
【0030】
インバータ20には、発電機14により発電した電力が主バッテリ16を介して、または直接に供給される。このために、インバータ20を構成する推進モータ用インバータ及び旋回モータ用インバータに主バッテリ16と発電機14とをそれぞれ接続しており、主バッテリ16とインバータ20との間、及び、発電機14とインバータ20との間にそれぞれ設けた図示しないスイッチの切り換えにより、インバータ20へ発電機14から電力を供給するか、または主バッテリ16から電力を供給するかを切り換え可能としている。推進モータ用インバータ及び旋回モータ用インバータは、主バッテリ16及び発電機14にそれぞれ並列に接続している。発電機14と主バッテリ16との間にも図示しないスイッチを設けている。各スイッチのオンオフは後述する制御部であるメインコントローラ26により制御される。発電機14は、例えば、ブラシ付DCモータと同じ構成を有するものとする。ただし、発電機14は、これに限定するものではなく、例えばACモータの構成を有するものとし、発電機14から発電した電力をインバータまたは整流器で交流から直流へ変換後、主バッテリ16に充電することもできる。この場合、発電機14とインバータ20との間に別のインバータまたは整流器を設けることもできる。
【0031】
また、小型船舶用電気推進システム10は、推進用電動モータ28と、旋回用電動モータ30と、船外推進装置であるプロペラ32と、メインコントローラ26と、エンジンコントローラ22とを備える。推進モータ用インバータにより推進用電動モータ28を駆動可能としている。また、旋回モータ用インバータにより旋回用電動モータ30を駆動可能としている。また、旋回用電動モータ30の回転軸にプロペラ32を結合して、旋回用電動モータ30の駆動によりプロペラ32を回転駆動可能としている。
【0032】
旋回用電動モータ30の回転軸の回転により、直接または歯車機構を介して推進用電動モータ28、または推進用電動モータ28を収容した後述する第2ケース34(図2)に結合した旋回用回転軸をいずれかの方向に回転可能としている。これにより、推進用電動モータ28の向きを変えることができ、別の専用の舵を設けることなく、舵の機能を持たせることができる。
【0033】
メインコントローラ26及びエンジンコントローラ22は、制御部であり、CPUとメモリと有するマイクロコンピュータを含む。図1で「REG」とあるのは、燃料噴射調整装置であるレギュレータである。メインコントローラ26は、船内機器24や、現在位置を検出するためのナビゲーションシステム36から検出信号、制御信号等の信号が入力される。さらにメインコントローラ26は、アクセルレバー等の加速指示具である加速操作具38から加速指示が入力され、ハンドル等の旋回を指示するための旋回指示具である旋回操作具40から旋回指示が入力される。メインコントローラ26には、イグニッションスイッチ等の図示しない起動スイッチから起動指示が入力される。なお、図1では、2つの船内機器24があるような図示をしているが、図1に示す「船内機器」は同一の要素である。また、船内機器24は1つに限らず、複数設けることもできる。
【0034】
メインコントローラ26は、各機器、操作具からの信号に基づいて、エンジンコントローラ22と、インバータ20とにそれぞれ対応する制御信号を出力する。例えば、起動スイッチからの起動指示の入力に基づいてエンジンコントローラ22がエンジン12の作動を開始させ、起動停止指示の入力に基づいてエンジンコントローラ22がエンジン12の作動を停止させる。
【0035】
また、加速操作具38からメインコントローラ26への加速または減速の指示の入力に基づいて推進モータ用インバータが制御され、推進用電動モータ28が加速または減速される。また、旋回操作具40から入力された旋回指示に基づいて旋回モータ用インバータが制御され、旋回用電動モータ30が旋回指示に対応する方向に対応する回転量だけ回転する。すなわち、メインコントローラ26は、旋回操作具40から入力された旋回指示に応じた方向に、旋回用電動モータ30を回転駆動させる。
【0036】
また、主バッテリ16に太陽電池(ソーラーパネル)42を接続して、太陽電池42で発電した電力も主バッテリ16に充電可能としている。また、主バッテリ16に、図示しないAC/DCコンバータ等のコンバータとプラグ44とを介して外部機器を接続可能としている。
【0037】
次に、図2以降で、このような小型船舶用電気推進システム10を搭載する小型船舶の具体的な構成例について説明する。図2、図3は、小型船舶の1例を示している。小型船舶は、船体46の上部に、運転席(図示せず)と、ウィンドシールド部48とを設けている。図1に示す加速操作具38と旋回操作具40と起動スイッチとは、運転席の周辺部に設けている。
【0038】
また、図2に示す船体46の内部の底面上の幅方向(図2の表裏方向、図3の上下方向)中央部に2個の主バッテリ用船内ケース50と1個の機器バッテリ用船内ケース52とを、前後方向(図2、図3の左右方向)に沿って並んで配置している。各主バッテリ用船内ケース50内に、主バッテリ16を収容している。また、機器バッテリ用船内ケース52内に、機器用バッテリ18を収容している。2個の主バッテリ用船内ケース50は、船体46の後部に並んで配置している。機器バッテリ用船内ケース52は、船体46の前後方向中央部で、主バッテリ用船内ケース50の前側に配置している。複数の船内ケース50,52の前側(図2の左側)と後側(図2の右側)と、各船内ケース50,52の間部分とに断面矩形状で中空筒状のガイド部材54を設けている。ガイド部材54は、例えば船体46の底面上に固定する。各船内ケース50,52は、断面略矩形の箱状で、前後方向に隣り合う2個ずつのガイド部材54の間に上方から各船内ケースを50,52を、がたつきなく(またはほぼがたつきなく)嵌装可能とすることで、各船内ケース50,52の位置決めを図ることができる。各船内ケース50,52は、船体46に対し着脱可能である。また、各船内ケース50,52は、いずれも同一の形状を有し、互いの位置関係を変更可能としている。このため、前後に隣り合う2個ずつのガイド部材54の間隔は互いに同じとしている。なお、ガイド部材を、前後方向に離れた複数の受け入れ部を有する1の枠状とし、各受け入れ部に船内ケース50,52を、上方からがたつきなく(またはほぼがたつきなく)嵌装可能とすることもできる。
【0039】
また、船体46の後側に船外機56を設けている。船外機56と船体46後部とは、支持部材58により連結する。支持部材58は、例えば、幅方向(図2の表裏方向)に伸びる軸を折れ曲がりの起点として互いに折れ曲がり可能な、船外機56側の結合部材と船体46側の結合部材とにより構成し、通常時に図2のように船外機56の上部が後方に伸びるように両結合部材を固定し、船外機56の修理点検時等に支持部材を折り曲げ、船外機56の上方への持ち上げを可能な構成とすることもできる。
【0040】
船外機56は、上方に設けた第1ケース60と、下方に設けた第2ケース34と、第1ケース60及び第2ケース34を連結する上下方向に伸びる旋回用回転軸である、パイプ状部材62とを備える。パイプ状部材62は、第1ケース60の内側にその上部を挿入するように、第1ケース60に回転可能に支持している。第1ケース60は内側にエンジン12と、エンジン12の下側に配置され、エンジン12により駆動される発電機14と、エンジン12の前側で第1ケース60の上部にケースが固定された旋回用電動モータ30と、図3に示すように、エンジン12の前側で幅方向に関して旋回用電動モータ30とずれた位置に配置されたインバータ20とを収容している。
【0041】
旋回用電動モータ30は、例えば3相モータであり、インバータ20から3相交流電流が送られることにより、インバータ20によりいずれかの方向へ所定量回転するように駆動される。電気部品であるインバータ20は、各主バッテリ用船内ケース50内の各主バッテリ16に対し電力配線66により並列に接続されている。すなわち、インバータ20は、船体46内に設けられた主バッテリ16から電力が供給される。旋回用電動モータ30の回転軸は、直接または図示しない歯車機構を介してパイプ状部材62に、動力の伝達可能に作動的に連結している。なお、旋回用電動モータ30を構成する回転軸は、歯車機構を介さずに、別の部材を介してパイプ状部材62に作動的に連結してもよい。このような構成により、パイプ状部材62は、旋回用電動モータ30により回転駆動可能となる。また、発電機14は、各バッテリ16,18に対し並列に接続されており、発電機14により発電した電力が各バッテリ16,18に充電される。発電機14の発電電力は、主バッテリ16のみに供給することもできる。また、発電機14とインバータ20とを電気的に接続しており、発電機14で発電した電力をインバータ20に供給可能としている。
【0042】
パイプ状部材62の下端部は、第2ケース34の上端部に固定している。したがって、旋回用電動モータ30によりパイプ状部材62が回転すると、第2ケース34も回転する。このため、第2ケース34は、第1ケース60に支持される。第2ケース34内に電気部品である推進用電動モータ28のケースが収容固定されており、第2ケース34から外側に突出した部分にプロペラ32を設けている。プロペラ32は、推進用電動モータ28の回転軸に連結している。推進用電動モータ28が回転するとプロペラ32も回転する。また、推進用電動モータ28と、インバータ20とを、パイプ状部材62内に設けた電力配線68により接続している。推進用電動モータ28は、例えば3相モータであり、インバータ20から3相交流電流が送られることにより、インバータ20によりいずれかの方向へ回転駆動される。
【0043】
また、機器バッテリ用船内ケース52内の機器用バッテリ18に船内に設けられる船内機器24(図1)が接続されている。また、船内にメインコントローラ26(図1)を設け、第1ケース60内にエンジンコントローラ22(図1)を設けている。エンジンコントローラ22は、船内に設けることもできる。上記のように、メインコントローラ26は、旋回操作具40(図1)から入力された旋回指示に応じた方向に、旋回用電動モータ30を回転駆動させるので、第2ケース34を旋回させ、プロペラ32の向きを変えることができる。これにより、小型船舶をプロペラ32の向きに応じた方向に旋回させることができる。
【0044】
このように、エンジン12は、船外機56を構成し、船外機56は、エンジン12と、発電機14と、インバータ20と、推進用電動モータ28と、プロペラ32とを含む。また、主バッテリ16は、互いに電気的に並列に接続されている。
【0045】
上記の電気推進システム10を備える小型船舶によれば、発電機14により発電した電力が充電される主バッテリ16を備え、主バッテリ16からの電力によりインバータ20及び推進用電動モータ28を介してプロペラ32を駆動させることができるので、発電電力を効率的に使用できる。また、エンジン12は、プロペラ32を直接駆動することがないので、プロペラ32の駆動状態にかかわらず、エンジン12の使用時にエンジン12を効率の高い運転点で運転継続させることができる。さらに、エンジン12の動力をプロペラ32に減速機構を介して伝達する必要がなくなり、エンジン12駆動時にギヤ音を小さく、またはなくすことができ、騒音を小さくできる。
【0046】
また、エンジン12は、船体46の外側に配置される船外機56を構成する。このため、船内にエンジン12を設ける必要がなくなり、船内の空間の利用の自由度を高くできる。
【0047】
また、パイプ状部材62は、第1ケース60に対し回転可能に支持され、さらに、第1ケース60の内部に設けられ、パイプ状部材62を回転駆動させる旋回用電動モータ30と、旋回を指示するための旋回操作具40と、旋回操作具40から入力された旋回指示に応じた方向に、推進用電動モータ28を回転駆動させ、第2ケース34を旋回させるメインコントローラ26とを備える。このため、船外機56の一部により舵機能を持たせることができ、推進用電動モータ28が収容される第2ケース34を含む回転可能な部分以外に専用の舵を設ける必要がなく、舵機構を含む構成の小型化を図れる。
【0048】
また、複数の船内ケース50内にそれぞれ収容された2個の主バッテリ16は電気的に並列に接続している。このため、各主バッテリ16の配置の自由度向上を図れ、船内の空間を有効に使用しやすくなる。
【0049】
また、3個の船内ケース50,52は、船内の幅方向中央で、前後方向に沿って配置されている。このため、船内の低い部分に重量の大きい主バッテリ16及び機器用バッテリ18を配置しやすくでき、重量バランスをより有効に確保しやすくできる。
【0050】
図4は、本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第1例を上方から下方に見た略透視図である。図4に示すように、本例の電気推進システムは、船内に設けられた4個の主バッテリ用船内ケース50を備え、各船内ケース50に主バッテリ16を収容している。船内ケース50は、2個ずつ船内の幅方向両側に配置し、それぞれで2個ずつの船内ケース50を前後方向に沿って並んで配置している。
【0051】
船内の幅方向片側(図4の上側)に配置した2個の船内ケース50内の主バッテリ16は電気的に直列に接続し、幅方向他側(図4の下側)に配置した2個の船内ケース50内の主バッテリ16も電気的に直列に接続している。また、幅方向両側の主バッテリ16同士を並列に接続し、それぞれ2個ずつ直列接続した主バッテリ16に対し並列にインバータ20を接続している。また、船内の幅方向両側にそれぞれ前後方向に配置した2個ずつの船内ケース50の前側に、機器バッテリ用船内ケース52を配置し、機器バッテリ用船内ケース52内に機器用バッテリ18を収容している。本例の構成によれば、複数の船内ケース50は、船内の幅方向両側で、前後方向に沿って並んで配置されている。このため、船内の幅方向中央部分の空間に主バッテリ16を配置しないので、この中央部分に魚倉等重量の大きくなるものの配置を可能としつつ、重量バランスをより有効に確保しやすくできる。その他の構成及び作用は、上記の図1から図3に示した構成と同様である。なお、図示は省略するが、上記の図1から図4に示した構成において、全部の主バッテリ16を電気的に直列接続した直列接続バッテリとし、直列接続バッテリからインバータ20に電力を供給することもできる。
【0052】
図5は、本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第2例を示す略透視図である。本例の電気推進システムは、船外機56を構成する第1ケース60の上面に旋回用電動モータ30を設けている。すなわち、第1ケース60の上面に旋回用電動モータ30のケースを固定している。旋回用電動モータ30を構成する回転軸は、直接または図示しない歯車機構を介してパイプ状部材62に、動力の伝達可能に作動的に連結している。旋回用電動モータ30を構成する回転軸は、歯車機構を介さずに、別の部材を介して作動的に連結してもよい。その他の構成及び作用は、上記の図1から図3に示した構成と同様である。
【0053】
図6は、本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第3例を示す略透視図である。本例の電気推進システムは、上記の図1から図3に示した構成において、船内に配置した2個の主バッテリ用船内ケース50の前側の主バッテリ用船内ケース50の代わりに、エンジン用船内ケース70を設けている。エンジン用船内ケース70は、内側にエンジン12と発電機14とを収容している。また、主バッテリ用船内ケース50内で、主バッテリ16の前側にインバータ20が設けられ、インバータ20と発電機14とを電力配線72により接続している。
【0054】
また、船外機56は、第2ケース34と、上下方向に伸びるパイプ状部材74とを含む。第2ケース34は、船体46の下面の後端寄り部分に対向するように設け、船体46の底部に、第2ケース34の上側に固定したパイプ状部材74を回転可能に支持している。パイプ状部材74の上端部は、船体46の底部から船内に突き出して、上記の図2の構成と同様に、図6では図示しない旋回用電動モータ30(図1、図2参照)の回転軸に、直接または図示しない歯車機構を介して動力の伝達可能に作動的に連結している。例えば、図6においてインバータ20と旋回用電動モータ30とは船内の幅方向(図6の表裏方向)にずれている。また、旋回用電動モータ30と、主バッテリ16または発電機14とを、インバータ20を介して電気的に接続している。この結果、旋回用電動モータ30の駆動により、パイプ状部材74に固定した第2ケース34が、上下方向の軸を中心として所望の方向に所望量回転することにより、プロペラ32の向きを変えることができ、操舵可能となる。
【0055】
第2ケース34内に収容した推進用電動モータ28と、主バッテリ用船内ケース50内に配置したインバータ20とを、パイプ状部材74内を通るように設けられた電力配線68により接続している。推進用電動モータ28の回転軸はプロペラ32に連結している。すなわち、推進用電動モータ28及びプロペラ32は、船体46の下面側で、主バッテリ用船内ケース50の下側に、船体46の底部を介して対向する部分に設けている。
【0056】
主バッテリ16は、インバータ20に接続している。また、発電機14と主バッテリ16とを図示しない電力配線により接続している。これにより、発電機14または主バッテリ16からインバータ20に電力が供給され、推進用電動モータ28が駆動し、プロペラ32が回転駆動する。本例の構成によれば、インバータ20は、主バッテリ16が収容された船内ケース50内に設けられ、推進用電動モータ28及びプロペラ32は、船体46の下面側で、インバータ20及び主バッテリ16が収容された船内ケース50の下側に船体46を介して対向する部分に設けている。このため、インバータ20と推進用電動モータ28とを接続する電力配線68を過度に長くすることなく、プロペラ32を船体46の下面側に設けることで推進力を高くできる。その他の構成及び作用は、上記の図1から図3に示した構成と同様である。
【0057】
図7は、本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第4例を示す略透視図である。本例の場合、上記の図6に示した構成において、主バッテリ用船内ケース50と、機器バッテリ用船内ケース52との位置関係を逆にして、推進用電動モータ28を収容した第2ケース34と、プロペラ32と、パイプ状部材62とを、前後方向中央部の、主バッテリ用船内ケース50の下側に設けている。また、本例の場合も、図6に示した構成と同様に、船体46の底部にパイプ状部材74を回転可能に支持し、パイプ状部材74を旋回用電動モータ30(図1、図2参照)により回転可能としている。その他の構成及び作用は、上記の図6に示した構成と同様である。
【0058】
図8は、本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第5例を示す略透視図である。本例の構成の場合、上記の図1から図3に示した構成において、電気推進システムは、エンジン12と発電機14とを設けていない。主バッテリ16及び機器用バッテリ18は、例えば、主バッテリ用船内ケース50や機器バッテリ用船内ケース52とともに船体46から取り外して、それぞれ外部から充電可能としている。また、図8に示す小型船舶の場合、推進用電動モータ28及びインバータ20を、船体46の外側後端部に支持した後側ケース76内に設けている。後側ケース76は、船体46の外側後端部に、上下方向の軸を中心として回転可能、すなわちヨーイング可能に支持している。例えば、後側ケース76の前端部に固定した図示しない上下方向に伸びるケース側回転軸は、船体46の後端部に回転支持部により回転可能に支持している。また、ケース側回転軸の回転支持部から外れた部分に、上記の図2の構成と同様に、旋回用電動モータ30(図1、図2参照)の回転軸を動力の伝達可能に作動的に連結する。この場合、旋回用電動モータ30の駆動により、後側ケース76がヨーイングすることにより、プロペラ32の向きを変えることができ、操舵可能となる。また、後側ケース76の下端部に回転可能に支持したプロペラ32の回転軸と、推進用電動モータ28の回転軸とを、かさば歯車機構により動力の伝達可能に作動的に連結している。このような構成の場合も、上記の図1から図3に示した構成と同様に、それぞれ主バッテリ16と機器用バッテリ18とを収容した船内ケース50,52が、船内の幅方向中央で、前後方向に沿って並んで配置されている。このため、船内の低い部分に重量の大きい主バッテリ16及び機器用バッテリ18を配置しやすくでき、重量バランスをより有効に確保しやすくできる。
【0059】
図9は、本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第6例を示す略透視図である。本例の構成の場合、上記の図8に示した構成において、機器バッテリ用船内ケース52の代わりに、インバータ20及び推進用電動モータ28を収容したモータケース77を設けている。モータケース77の内側に、上端部を挿入するように中央ケース78を設けており、中央ケース78内に推進用電動モータ28及びインバータ20を設けている。中央ケース78の下端部に回転可能に支持したプロペラ32の回転軸と、推進用電動モータ28の回転軸とを、かさば歯車機構により動力の伝達可能に作動的に連結している。中央ケース78の下端部は、船体46の下端部から下方に突出させている。本例の場合、図8の構成の後側ケース76の場合と異なり、中央ケース78は、船体46に対し回転しない。すなわち、中央ケース78の上下方向中間部は、船体46の底部に固定している。このため、船体46の外側に、図示しない舵機構を設け、舵機構により船体46の向きを変えることができるようにする。その他の構成及び作用は上記の図5の構成の場合と同様である。
【0060】
図10は、本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第7例を示す略透視図である。本例の構成の場合、上記の図6に示した構成において、エンジン用船内ケース70の代わりに、主バッテリ16を収容した主バッテリ用船内ケース50を設けている。また、前側の主バッテリ用船内ケース50に収容した主バッテリ16と、後側の主バッテリ用船内ケース50に収容した主バッテリ16及びインバータ20とを電気的に接続している。また、本例の場合には、上記の図6に示した構成と同様に、船体46の底部にパイプ状部材74を回転可能に支持し、パイプ状部材74を旋回用電動モータ30(図1、図2参照)により回転可能としている。その他の構成は、上記の図6に示した構成と同様である。
【0061】
また、以下に示す構成例は、次のような課題を解決するものである。すなわち、従来からバッテリを備える船舶が知られており、バッテリを船内機器やプロペラ等の船外推進装置に電力を供給するために使用することが考えられている。ただし、バッテリは、充電量が限られ、大型のバッテリを搭載することは船舶の重量が大きくなる要因となるため、好ましくない。以下の太陽電池フィルム付船舶の構成例は、このような課題を解決すべく発明したものである。
【0062】
図11は、本発明に係る太陽電池フィルム付船舶の1例を示す図である。本例の構成の場合、船舶であり、風力走行体であるヨットは、マスト80とブーム82とに張られたメインセール84と、船体86の前端部(図11の右端部)とマスト80との間に設けられたロープ88と、ロープ88の下側に張られたジブセール90とを備える。また、メインセール84と、ジブセール90との片面または両面に、複数のプラスチックフィルム式の太陽電池92を貼着している。船体86内に図示しないバッテリを設けており、フィルム式の太陽電池92で発電された電力がバッテリに充電されるようにしている。バッテリは、船内機器に電力を供給したり、図示しないプロペラを設けて、プロペラによっても推進力を得る場合にプロペラを駆動する推進用電動モータに電力を供給するために使用する。太陽電池92は、可撓性を有し、厚さは1mm程度とする。太陽電池92は、例えば、プラスチックフィルム基板の両面に複数の薄板状の透明電極、光電変換層、及び複数の金属電極と、複数の薄板状の背面電極とを、それぞれ設けた構成とする。透明電極と光電変換層と金属電極とを、光の入射方向に沿って順に積層することで単位セルとする。透明電極と背面電極とは、基板を貫通する集電孔を通じて接続する。また、金属電極と背面電極とは、基板を貫通する集電孔とは別の接続孔を通じて接続する。これにより、複数の単位セルを電気的に直列接続する。
【0063】
このような構成によればセール84,90の機能を損なうことなく、全体の面積を十分に確保できる太陽電池92で発電させることができ、十分な電力を得ることが容易になる。また、太陽電池92が可撓性を有するので、セール84,90の収納等も容易に行える。
【0064】
図12から図14A,図14Bは、本発明に係る太陽電池フィルム付船舶の別例の第1例を示している。図12に示すように、太陽電池フィルム付船舶である小型船舶は、電気推進システム94を搭載している。小型船舶は、船体46の後端部に設けたプロペラ32により推進力を得るようにしている。また、電気推進システム94は、プロペラ32を駆動する推進用電動モータ28と、推進用電動モータ28を駆動するインバータ20と、インバータ20に接続したバッテリ96と、制御部であるコントローラ(ECU)98とを備える。コントローラ98は、推進用電動モータ28の回転角を検出し、インバータ20を制御することにより推進用電動モータ28の作動を制御する。また、電気推進システム94は、巻き取り用モータ100と、図示しない定点保持用モータとを備え、各モータ28,100をインバータ20により駆動可能としている。
【0065】
巻き取り用モータ100は、船体46の後側(図2の右側)の水上に展開可能な展開シート102を巻き取るためのものである。このために、船体46の後端部に幅方向(図12の上下方向)に伸びるケース104を固定し、ケース104の内側の幅方向一端部(図12の下端部)に巻き取り用モータ100のケースを固定している。また、巻き取り用モータ100の回転軸に連結した巻き取り軸106をケース104に回転可能に支持している。巻き取り軸106は巻き取り用モータ100により回転駆動可能としている。巻き取り用モータ100に張り検出センサ108を設け、展開シート102の張り量を検出可能としている。張り量は、例えば、巻き取り用モータ100の回転角度から検出可能とする。張り検出センサ108の検出値は、コントローラ98に入力している。
【0066】
展開シート102の長さ方向一端は巻き取り軸106に取り付けている。展開シート102の長さ方向他端部に定点保持装置110を設けている。図13に示すように、定点保持装置110は、上部に設けた浮き部112と、浮き部112の下側に柱状の連結部を介して結合したプロペラ保持部114とを備える。浮き部は、例えばブイ構造で、水上に浮力で浮くことができるようにする。プロペラ保持部114は、図示しない定点保持用モータにより駆動するプロペラ116を含む。プロペラ116は、船体46の後端部に向けており、プロペラ116が駆動することにより展開シート102が水上で引き出されるようにしている。展開シート102は、例えばビニル加工布等の布製またはプラスチックフィルム製等の軽量なシート状で、水に浮くことが可能な材料製とし、展開した場合に上面となる側に、図11の構成の場合と同様の、複数のフィルム式の太陽電池92(図11参照)を貼着している。太陽電池92の発電電力はバッテリに充電可能としている。図12に戻り、巻き取り用モータ100とケース104との間に、太陽電池92からバッテリに発電電力を送るための充電回路部118を設けている。充電回路部118は、バッテリと太陽電池92とに接続する。また、展開シート102は、例えば、厚さ1mmで、1m2の面積での重量が約1kg以下の構成を有するものとする。
【0067】
図13、図14Aに示すように、ケース104の下端部の幅方向(図13の表裏方向、図14Aの上下方向)中央部に幅方向に離れた一対のガイド部120を設けており、一対のガイド部120を、ケース104の他の部分に対し斜め後ろ下側に突出させている。展開シート102は、一対のガイド部120の上面に沿って案内されて展開及び収納をそれぞれ可能としている。一対のガイド部120の間に斜め後下側に伸びる通路122(図14A)が形成され、図14A,図14Bに示すように通路122に、定点保持装置110の連結部を進入可能としている。定点保持用モータの駆動を停止した状態で、巻き取り用モータ100(図12)の駆動により展開シート102を巻き取ると、定点保持装置110の連結部が通路122に進入しつつケース104のガイド部120の上面に沿って引き上げられ、浮き部12をケース104の後端面に突き当て可能としている。
【0068】
このような本例の場合、船舶の航行停止時や、航行中に定点保持用モータの駆動等により展開シート102を展開させ、広い面積で太陽電池92(図11参照)を発電させることができ、十分な電力を得ることが容易になる。また、太陽電池92が可撓性を有するので、発電の不要時に展開シート102の収納を容易に行え、かつ、太陽電池92を設けることで船舶が過度に大型化することがない。なお、定点保持装置110を省略して、船舶の前進に伴って展開シート102を自動で展開可能とすることもできる。また、展開シート102と、太陽電池92とを別部材により構成するのではなく、展開シートを、1つのプラスチックフィルム式の太陽電池のみにより構成することもできる。この場合、太陽電池を構成するプラスチックフィルム基板の長さ方向一端部を巻き取り軸106に取り付け、プラスチックフィルム基板の長さ方向他端部に定点保持装置110を設ける。
【0069】
図15A,図15Bは、本発明に係る太陽電池92フィルム付船舶の別例の第2例を示している。本例の場合、太陽電池フィルム付船舶である小型船舶は、船体46の運転席の後側の後端部に複数の柱部124を立設し、柱部124の上端部にビニル加工布等の布製のシート126を屋根状に張っている。そして、シート126の上面側に、図11の構成の場合と同様の、複数のフィルム式の太陽電池92を貼着している。太陽電池92の発電電力は図示しないバッテリに充電可能としている。このような構成の場合も、広い面積で太陽電池92を発電させることができ、十分な電力を得ることが容易になる。また、太陽電池92が可撓性を有するので、発電の不要時にシート126の収納を容易に行える。なお、シート126の収納を不要とする場合には、太陽電池92が可撓性を有しない構成とすることもできる。また、この場合、シート126も可撓性を有しない構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0070】
10 小型船舶用電気推進システム、12 エンジン、14 発電機、16 主バッテリ、18 船内機器用バッテリ、20 インバータ、22 エンジンコントローラ、24 船内機器、26 メインコントローラ、28 推進用電動モータ、30 旋回用電動モータ、32 プロペラ、34 第2ケース、36 ナビゲーションシステム、38 加速操作具、40 旋回操作具、42 太陽電池、44 プラグ、46 船体、48 ウィンドシールド部、50 主バッテリ用船内ケース、52 機器バッテリ用船内ケース、54 ガイド部材、56 船外機、58 支持部材、60 第1ケース、62 パイプ状部材、66,68 電力配線、70 エンジン用船内ケース、72 電力配線、74 パイプ状部材、76 後側ケース、77 モータケース、78 中央ケース、80 マスト、82 ブーム、84 メインセール、86 船体、88 ロープ、90 ジブセール、92 太陽電池、94 電気推進システム、96 バッテリ、98 コントローラ、100 巻き取り用モータ、102 展開シート、104 ケース、106 巻き取り軸、108 張り検出センサ、110 定点保持装置、112 浮き部、114 プロペラ保持部、116 プロペラ、118 充電回路部、120 ガイド部、122 通路、124 柱部、126 シート。
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型船舶の推進用として使用され、電動モータにより駆動される船外推進装置を備える小型船舶用電気推進システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から小型船舶や大型船舶において、プロペラ等を推進装置として使用し、エンジン等を推進装置の駆動源として使用することが考えられている。特許文献1には、左右の第1及び第2プロペラと、各プロペラを駆動する第1及び第2推進用電動機と、各推進用電動機に電気を給電する配電盤と、配電盤に給電する電気を発電する3個の発電機と、各発電機を駆動する3個のディーゼルエンジンとを備える船舶用電機推進装置が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、フィッシングボート等に付設される小型船外機に関するもので、エンジンの回転力をクラッチ機構及び減速機構を介してスクリューの駆動軸に接続し、船外機本体に電動モータを付設するとともに、電動モータの出力軸をスクリューの駆動軸に接続し、スクリューをエンジン、電動モータあるいはエンジン及びモータにより選択的に駆動するように構成した、小型船舶用のハイブリッド推進構造の船外機が記載されている。また、エンジンの駆動時に電動モータを発電機として使用することも考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2006−240450号公報
【特許文献2】実開昭63−158493号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載された電気推進装置は小型船舶に使用することを考慮されたものではなく、二次電池等の蓄電部を使用しないので、発電電力を効率的に使用する面から改良の余地がある。また、蓄電部を使用する構成において、船内の空間の利用効率を向上させることを考慮されたものでもない。特許文献1に記載の電気推進装置をプレジャーボート等の小型船舶に適用することを考慮する場合には、船内の空間の利用効率の向上を考慮することが重要になる。
【0006】
また、特許文献2に記載された船外機の場合、エンジン及び電動モータが船外に設けられており、バッテリが船内に設けられている。ただし、エンジンの動力を減速機構を介してスクリューに出力する構造であるので、この減速機構を設ける分、エンジン駆動時のギヤ音が大きくなり、騒音が大きくなる可能性がある。また、エンジンを停止して、電動モータを回転させる場合でも、減速機構が回転する構造であるため、ギヤ音が大きくなり、騒音が大きくなる可能性がある。また、エンジンと、スクリューに連結される減速機構との間を長い駆動軸により連結する必要があり、さらに、減速機構は、回転方向を変換する構造とする必要があるので、船外機が大型化する原因となる。また、この構成の場合、電動モータ及びスクリューを上下方向の軸周りに回転可能とすることにより、舵機能を持たせて効率を向上させる構造とすることが困難である。また、エンジンを使用する場合にエンジンを性能上効率の高い運転点で運転継続させることが難しい。
【0007】
本発明の目的は、小型船舶用電気推進システムにおいて、上記の課題のうち、少なくとも発電電力を効率的に使用でき、かつ、エンジン使用時にエンジンを効率の高い運転点で継続運転できるとともに、騒音を小さくできる構成を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る小型船舶用電気推進システムは、エンジンにより駆動される発電機と、発電機により発電した電力が供給され、充電される蓄電部と、発電機により発電した電力が蓄電部を介して、または蓄電部を介さずに供給されるインバータと、インバータにより駆動される電動モータと、電動モータにより駆動される船外推進装置とを備えることを特徴とする小型船舶用電気推進システムである。船外推進装置は、例えば船体の外側に支持されたプロペラを含む。
【0009】
上記の小型船舶用電気推進システムによれば、発電機により発電した電力が充電される蓄電部を備え、蓄電部からの電力によりインバータ及び電動モータを介して船外推進装置を駆動させることができるので、発電電力を効率的に使用できる。また、エンジンは、船外推進装置を直接駆動することがないので、エンジン使用時にエンジンを効率の高い運転点で継続運転できる。さらに、エンジンの動力を船外推進装置に減速機構を介して伝達する必要がなくなり、エンジン駆動時にギヤ音を小さく、またはなくすことができ、騒音を小さくできる。
【0010】
また、本発明に係る小型船舶用電気推進システムにおいて、好ましくは、エンジンは、船体の外側に配置される船外機を構成する。
【0011】
上記構成によれば、船内にエンジンを設ける必要がなくなり、船内の空間の利用の自由度を高くできる。
【0012】
また、本発明に係る小型船舶用電気推進システムにおいて、好ましくは、船外機は、エンジンと、発電機と、インバータと、電動モータと、船外推進装置とを含む。
【0013】
また、本発明に係る小型船舶用電気推進システムにおいて、好ましくは、船外機は、エンジンと、発電機と、インバータとが収容された第1ケースと、電動モータが収容され、第1ケースに支持された第2ケースと、を備え、蓄電部は、船内に設けられており、第1ケース内の電気部品と蓄電部及び第2ケース内の電気部品とは、それぞれ電力配線で接続されている。
【0014】
また、本発明に係る小型船舶用電気推進システムにおいて、好ましくは、第1ケースと第2ケースとを連結するパイプ状部材と、パイプ状部材内に設けられ、第1ケース内のインバータと第2ケース内の電動モータとを接続する電力配線と、を備え、インバータは、船内に設けられた蓄電部から電力が供給される。
【0015】
また、本発明に係る小型船舶用電気推進システムにおいて、好ましくは、パイプ状部材は、第1ケースに対し回転可能に支持され、さらに、第1ケースの上面または第1ケースの内部に設けられ、パイプ状部材を回転駆動させる旋回用電動モータと、旋回を指示するための旋回指示具と、旋回指示具から入力された旋回指示に応じた方向に、旋回用電動モータを回転駆動させ、第2ケースを旋回させる制御部とを備える。
【0016】
上記構成によれば、電動モータが収容される第2ケースを含む回転可能な部分以外に専用の舵を設ける必要がなく、舵機構を含む構成の小型化を図れる。
【0017】
また、本発明に係る小型船舶用電気推進システムにおいて、好ましくは、蓄電部は、複数の船内ケース内にそれぞれ収容された複数の二次電池であり、複数の二次電池の少なくとも一部の二次電池は電気的に直列または並列に接続されている。
【0018】
上記構成によれば、複数の二次電池の配置の自由度向上を図れ、船内の空間を有効に使用しやすくなる。
【0019】
また、本発明に係る小型船舶用電気推進システムにおいて、好ましくは、蓄電部は、複数の船内ケース内にそれぞれ収容された複数の二次電池の少なくとも一部の二次電池であり、複数の船内ケースは、船内の幅方向中央で、前後方向に沿って配置されている。
【0020】
上記構成によれば、船内の低い部分に重量の大きい二次電池を配置しやすくでき、重量バランスをより有効に確保しやすくできる。また、複数の二次電池の一部の二次電池を船内機器用二次電池として使用できる。
【0021】
また、本発明に係る小型船舶用電気推進システムにおいて、好ましくは、蓄電部は、複数の船内ケース内にそれぞれ収容された複数の二次電池の少なくとも一部の二次電池であり、複数の船内ケースは、船内の幅方向両側で、前後方向に沿って配置されている。
【0022】
上記構成によれば、船内の幅方向中央部分の空間に二次電池を配置しないので、この中央部分に魚倉等重量の大きくなるものの配置を可能としつつ、重量バランスをより有効に確保しやすくできる。また、複数の二次電池の一部の二次電池を船内機器用二次電池として使用できる。
【0023】
また、本発明に係る小型船舶用電気推進システムにおいて、好ましくは、エンジン及び発電機は、船内に配置された複数の船内ケースの1の船内ケース内に収容されている。
【0024】
また、本発明に係る小型船舶用電気推進システムにおいて、好ましくは、インバータは、二次電池が収容された船内ケース内に設けられ、電動モータ及び船外推進装置は、船体の下面側で、インバータ及び二次電池が収容された船内ケースの下側に船体を介して対向する部分に設けられている。
【0025】
上記構成によれば、インバータと電動モータとを接続する電力線を過度に長くすることなく、船外推進装置を船体の下面側に設けることで推進力を高くできる。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る小型船舶用電気推進システムによれば、発電電力を効率的に使用でき、かつ、エンジンを効率の高い運転点で使用できるとともに、騒音を小さくできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明に係る実施の形態の小型船舶用電気推進システムの基本構成を示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の1例を示す略透視図である。
【図3】図2を上方から下方に見た略透視図である。
【図4】本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第1例を上方から下方に見た略透視図である。
【図5】本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第2例を示す略透視図である。
【図6】本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第3例を示す略透視図である。
【図7】本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第4例を示す略透視図である。
【図8】本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第5例を示す略透視図である。
【図9】本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第6例を示す略透視図である。
【図10】本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第7例を示す略透視図である。
【図11】本発明に係る太陽電池フィルム付船舶の1例を示す図である。
【図12】本発明に係る太陽電池フィルム付船舶の別例の第1例を、太陽電池フィルムを後方に展開した状態で、上方から下方に見た略図である。
【図13】図12に示す船舶において、図12の後端部を幅方向片側から他側に見て一部を断面にして示す図である。
【図14A】図12に示す船舶において、太陽電池フィルムを収容した状態を示す、図12の右端部拡大対応図である。
【図14B】図12に示す船舶において、太陽電池フィルムを収容した状態を示す、図13に対応する図である。
【図15A】本発明に係る太陽電池フィルム付船舶の別例の第2例を示す略図である。
【図15B】図15Aの後端部を上方から下方に見た図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。図1から図3は、本発明に係る実施の形態を示す図である。図1に示すように、本実施の形態の小型船舶用電気推進システム10は、例えばプレジャーボート、釣り船等の小型船舶に搭載して使用するもので、ディーゼルエンジン等のエンジン12と、エンジン12により駆動される発電機14と、蓄電部であり、二次電池である主バッテリ16及び船内機器用バッテリ(以下、「機器用バッテリ」とする。)18と、インバータ20とを備える。そして、エンジン12により発電機14を駆動可能としている。また、発電機14により発電した電力を、主バッテリ16に供給し、主バッテリ16を充電させるか、または発電機14により発電した電力をインバータ20に供給可能としている。インバータ20は、図示しない推進モータ用インバータと、旋回モータ用インバータとを含む。「インバータに電力を供給する」とは、推進モータ用インバータと、旋回モータ用インバータとに電力を供給することを意味する。また、発電機14により発電した電力を、機器用バッテリ18に供給し、機器用バッテリ18を充電させるようにしている。
【0029】
エンジン12の運転状態は、エンジンコントローラ22により制御される。機器用バッテリ18は、エンジンコントローラ22及び船内機器24に電力を供給する。主バッテリ16及び機器用バッテリ18は、鉛蓄電池、ニッケル水素電池、リチウムイオン電池等、種々の形式のものを使用可能である。また、主バッテリ16及び機器用バッテリ18の代わりに、キャパシタを用いることもできる。
【0030】
インバータ20には、発電機14により発電した電力が主バッテリ16を介して、または直接に供給される。このために、インバータ20を構成する推進モータ用インバータ及び旋回モータ用インバータに主バッテリ16と発電機14とをそれぞれ接続しており、主バッテリ16とインバータ20との間、及び、発電機14とインバータ20との間にそれぞれ設けた図示しないスイッチの切り換えにより、インバータ20へ発電機14から電力を供給するか、または主バッテリ16から電力を供給するかを切り換え可能としている。推進モータ用インバータ及び旋回モータ用インバータは、主バッテリ16及び発電機14にそれぞれ並列に接続している。発電機14と主バッテリ16との間にも図示しないスイッチを設けている。各スイッチのオンオフは後述する制御部であるメインコントローラ26により制御される。発電機14は、例えば、ブラシ付DCモータと同じ構成を有するものとする。ただし、発電機14は、これに限定するものではなく、例えばACモータの構成を有するものとし、発電機14から発電した電力をインバータまたは整流器で交流から直流へ変換後、主バッテリ16に充電することもできる。この場合、発電機14とインバータ20との間に別のインバータまたは整流器を設けることもできる。
【0031】
また、小型船舶用電気推進システム10は、推進用電動モータ28と、旋回用電動モータ30と、船外推進装置であるプロペラ32と、メインコントローラ26と、エンジンコントローラ22とを備える。推進モータ用インバータにより推進用電動モータ28を駆動可能としている。また、旋回モータ用インバータにより旋回用電動モータ30を駆動可能としている。また、旋回用電動モータ30の回転軸にプロペラ32を結合して、旋回用電動モータ30の駆動によりプロペラ32を回転駆動可能としている。
【0032】
旋回用電動モータ30の回転軸の回転により、直接または歯車機構を介して推進用電動モータ28、または推進用電動モータ28を収容した後述する第2ケース34(図2)に結合した旋回用回転軸をいずれかの方向に回転可能としている。これにより、推進用電動モータ28の向きを変えることができ、別の専用の舵を設けることなく、舵の機能を持たせることができる。
【0033】
メインコントローラ26及びエンジンコントローラ22は、制御部であり、CPUとメモリと有するマイクロコンピュータを含む。図1で「REG」とあるのは、燃料噴射調整装置であるレギュレータである。メインコントローラ26は、船内機器24や、現在位置を検出するためのナビゲーションシステム36から検出信号、制御信号等の信号が入力される。さらにメインコントローラ26は、アクセルレバー等の加速指示具である加速操作具38から加速指示が入力され、ハンドル等の旋回を指示するための旋回指示具である旋回操作具40から旋回指示が入力される。メインコントローラ26には、イグニッションスイッチ等の図示しない起動スイッチから起動指示が入力される。なお、図1では、2つの船内機器24があるような図示をしているが、図1に示す「船内機器」は同一の要素である。また、船内機器24は1つに限らず、複数設けることもできる。
【0034】
メインコントローラ26は、各機器、操作具からの信号に基づいて、エンジンコントローラ22と、インバータ20とにそれぞれ対応する制御信号を出力する。例えば、起動スイッチからの起動指示の入力に基づいてエンジンコントローラ22がエンジン12の作動を開始させ、起動停止指示の入力に基づいてエンジンコントローラ22がエンジン12の作動を停止させる。
【0035】
また、加速操作具38からメインコントローラ26への加速または減速の指示の入力に基づいて推進モータ用インバータが制御され、推進用電動モータ28が加速または減速される。また、旋回操作具40から入力された旋回指示に基づいて旋回モータ用インバータが制御され、旋回用電動モータ30が旋回指示に対応する方向に対応する回転量だけ回転する。すなわち、メインコントローラ26は、旋回操作具40から入力された旋回指示に応じた方向に、旋回用電動モータ30を回転駆動させる。
【0036】
また、主バッテリ16に太陽電池(ソーラーパネル)42を接続して、太陽電池42で発電した電力も主バッテリ16に充電可能としている。また、主バッテリ16に、図示しないAC/DCコンバータ等のコンバータとプラグ44とを介して外部機器を接続可能としている。
【0037】
次に、図2以降で、このような小型船舶用電気推進システム10を搭載する小型船舶の具体的な構成例について説明する。図2、図3は、小型船舶の1例を示している。小型船舶は、船体46の上部に、運転席(図示せず)と、ウィンドシールド部48とを設けている。図1に示す加速操作具38と旋回操作具40と起動スイッチとは、運転席の周辺部に設けている。
【0038】
また、図2に示す船体46の内部の底面上の幅方向(図2の表裏方向、図3の上下方向)中央部に2個の主バッテリ用船内ケース50と1個の機器バッテリ用船内ケース52とを、前後方向(図2、図3の左右方向)に沿って並んで配置している。各主バッテリ用船内ケース50内に、主バッテリ16を収容している。また、機器バッテリ用船内ケース52内に、機器用バッテリ18を収容している。2個の主バッテリ用船内ケース50は、船体46の後部に並んで配置している。機器バッテリ用船内ケース52は、船体46の前後方向中央部で、主バッテリ用船内ケース50の前側に配置している。複数の船内ケース50,52の前側(図2の左側)と後側(図2の右側)と、各船内ケース50,52の間部分とに断面矩形状で中空筒状のガイド部材54を設けている。ガイド部材54は、例えば船体46の底面上に固定する。各船内ケース50,52は、断面略矩形の箱状で、前後方向に隣り合う2個ずつのガイド部材54の間に上方から各船内ケースを50,52を、がたつきなく(またはほぼがたつきなく)嵌装可能とすることで、各船内ケース50,52の位置決めを図ることができる。各船内ケース50,52は、船体46に対し着脱可能である。また、各船内ケース50,52は、いずれも同一の形状を有し、互いの位置関係を変更可能としている。このため、前後に隣り合う2個ずつのガイド部材54の間隔は互いに同じとしている。なお、ガイド部材を、前後方向に離れた複数の受け入れ部を有する1の枠状とし、各受け入れ部に船内ケース50,52を、上方からがたつきなく(またはほぼがたつきなく)嵌装可能とすることもできる。
【0039】
また、船体46の後側に船外機56を設けている。船外機56と船体46後部とは、支持部材58により連結する。支持部材58は、例えば、幅方向(図2の表裏方向)に伸びる軸を折れ曲がりの起点として互いに折れ曲がり可能な、船外機56側の結合部材と船体46側の結合部材とにより構成し、通常時に図2のように船外機56の上部が後方に伸びるように両結合部材を固定し、船外機56の修理点検時等に支持部材を折り曲げ、船外機56の上方への持ち上げを可能な構成とすることもできる。
【0040】
船外機56は、上方に設けた第1ケース60と、下方に設けた第2ケース34と、第1ケース60及び第2ケース34を連結する上下方向に伸びる旋回用回転軸である、パイプ状部材62とを備える。パイプ状部材62は、第1ケース60の内側にその上部を挿入するように、第1ケース60に回転可能に支持している。第1ケース60は内側にエンジン12と、エンジン12の下側に配置され、エンジン12により駆動される発電機14と、エンジン12の前側で第1ケース60の上部にケースが固定された旋回用電動モータ30と、図3に示すように、エンジン12の前側で幅方向に関して旋回用電動モータ30とずれた位置に配置されたインバータ20とを収容している。
【0041】
旋回用電動モータ30は、例えば3相モータであり、インバータ20から3相交流電流が送られることにより、インバータ20によりいずれかの方向へ所定量回転するように駆動される。電気部品であるインバータ20は、各主バッテリ用船内ケース50内の各主バッテリ16に対し電力配線66により並列に接続されている。すなわち、インバータ20は、船体46内に設けられた主バッテリ16から電力が供給される。旋回用電動モータ30の回転軸は、直接または図示しない歯車機構を介してパイプ状部材62に、動力の伝達可能に作動的に連結している。なお、旋回用電動モータ30を構成する回転軸は、歯車機構を介さずに、別の部材を介してパイプ状部材62に作動的に連結してもよい。このような構成により、パイプ状部材62は、旋回用電動モータ30により回転駆動可能となる。また、発電機14は、各バッテリ16,18に対し並列に接続されており、発電機14により発電した電力が各バッテリ16,18に充電される。発電機14の発電電力は、主バッテリ16のみに供給することもできる。また、発電機14とインバータ20とを電気的に接続しており、発電機14で発電した電力をインバータ20に供給可能としている。
【0042】
パイプ状部材62の下端部は、第2ケース34の上端部に固定している。したがって、旋回用電動モータ30によりパイプ状部材62が回転すると、第2ケース34も回転する。このため、第2ケース34は、第1ケース60に支持される。第2ケース34内に電気部品である推進用電動モータ28のケースが収容固定されており、第2ケース34から外側に突出した部分にプロペラ32を設けている。プロペラ32は、推進用電動モータ28の回転軸に連結している。推進用電動モータ28が回転するとプロペラ32も回転する。また、推進用電動モータ28と、インバータ20とを、パイプ状部材62内に設けた電力配線68により接続している。推進用電動モータ28は、例えば3相モータであり、インバータ20から3相交流電流が送られることにより、インバータ20によりいずれかの方向へ回転駆動される。
【0043】
また、機器バッテリ用船内ケース52内の機器用バッテリ18に船内に設けられる船内機器24(図1)が接続されている。また、船内にメインコントローラ26(図1)を設け、第1ケース60内にエンジンコントローラ22(図1)を設けている。エンジンコントローラ22は、船内に設けることもできる。上記のように、メインコントローラ26は、旋回操作具40(図1)から入力された旋回指示に応じた方向に、旋回用電動モータ30を回転駆動させるので、第2ケース34を旋回させ、プロペラ32の向きを変えることができる。これにより、小型船舶をプロペラ32の向きに応じた方向に旋回させることができる。
【0044】
このように、エンジン12は、船外機56を構成し、船外機56は、エンジン12と、発電機14と、インバータ20と、推進用電動モータ28と、プロペラ32とを含む。また、主バッテリ16は、互いに電気的に並列に接続されている。
【0045】
上記の電気推進システム10を備える小型船舶によれば、発電機14により発電した電力が充電される主バッテリ16を備え、主バッテリ16からの電力によりインバータ20及び推進用電動モータ28を介してプロペラ32を駆動させることができるので、発電電力を効率的に使用できる。また、エンジン12は、プロペラ32を直接駆動することがないので、プロペラ32の駆動状態にかかわらず、エンジン12の使用時にエンジン12を効率の高い運転点で運転継続させることができる。さらに、エンジン12の動力をプロペラ32に減速機構を介して伝達する必要がなくなり、エンジン12駆動時にギヤ音を小さく、またはなくすことができ、騒音を小さくできる。
【0046】
また、エンジン12は、船体46の外側に配置される船外機56を構成する。このため、船内にエンジン12を設ける必要がなくなり、船内の空間の利用の自由度を高くできる。
【0047】
また、パイプ状部材62は、第1ケース60に対し回転可能に支持され、さらに、第1ケース60の内部に設けられ、パイプ状部材62を回転駆動させる旋回用電動モータ30と、旋回を指示するための旋回操作具40と、旋回操作具40から入力された旋回指示に応じた方向に、推進用電動モータ28を回転駆動させ、第2ケース34を旋回させるメインコントローラ26とを備える。このため、船外機56の一部により舵機能を持たせることができ、推進用電動モータ28が収容される第2ケース34を含む回転可能な部分以外に専用の舵を設ける必要がなく、舵機構を含む構成の小型化を図れる。
【0048】
また、複数の船内ケース50内にそれぞれ収容された2個の主バッテリ16は電気的に並列に接続している。このため、各主バッテリ16の配置の自由度向上を図れ、船内の空間を有効に使用しやすくなる。
【0049】
また、3個の船内ケース50,52は、船内の幅方向中央で、前後方向に沿って配置されている。このため、船内の低い部分に重量の大きい主バッテリ16及び機器用バッテリ18を配置しやすくでき、重量バランスをより有効に確保しやすくできる。
【0050】
図4は、本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第1例を上方から下方に見た略透視図である。図4に示すように、本例の電気推進システムは、船内に設けられた4個の主バッテリ用船内ケース50を備え、各船内ケース50に主バッテリ16を収容している。船内ケース50は、2個ずつ船内の幅方向両側に配置し、それぞれで2個ずつの船内ケース50を前後方向に沿って並んで配置している。
【0051】
船内の幅方向片側(図4の上側)に配置した2個の船内ケース50内の主バッテリ16は電気的に直列に接続し、幅方向他側(図4の下側)に配置した2個の船内ケース50内の主バッテリ16も電気的に直列に接続している。また、幅方向両側の主バッテリ16同士を並列に接続し、それぞれ2個ずつ直列接続した主バッテリ16に対し並列にインバータ20を接続している。また、船内の幅方向両側にそれぞれ前後方向に配置した2個ずつの船内ケース50の前側に、機器バッテリ用船内ケース52を配置し、機器バッテリ用船内ケース52内に機器用バッテリ18を収容している。本例の構成によれば、複数の船内ケース50は、船内の幅方向両側で、前後方向に沿って並んで配置されている。このため、船内の幅方向中央部分の空間に主バッテリ16を配置しないので、この中央部分に魚倉等重量の大きくなるものの配置を可能としつつ、重量バランスをより有効に確保しやすくできる。その他の構成及び作用は、上記の図1から図3に示した構成と同様である。なお、図示は省略するが、上記の図1から図4に示した構成において、全部の主バッテリ16を電気的に直列接続した直列接続バッテリとし、直列接続バッテリからインバータ20に電力を供給することもできる。
【0052】
図5は、本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第2例を示す略透視図である。本例の電気推進システムは、船外機56を構成する第1ケース60の上面に旋回用電動モータ30を設けている。すなわち、第1ケース60の上面に旋回用電動モータ30のケースを固定している。旋回用電動モータ30を構成する回転軸は、直接または図示しない歯車機構を介してパイプ状部材62に、動力の伝達可能に作動的に連結している。旋回用電動モータ30を構成する回転軸は、歯車機構を介さずに、別の部材を介して作動的に連結してもよい。その他の構成及び作用は、上記の図1から図3に示した構成と同様である。
【0053】
図6は、本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第3例を示す略透視図である。本例の電気推進システムは、上記の図1から図3に示した構成において、船内に配置した2個の主バッテリ用船内ケース50の前側の主バッテリ用船内ケース50の代わりに、エンジン用船内ケース70を設けている。エンジン用船内ケース70は、内側にエンジン12と発電機14とを収容している。また、主バッテリ用船内ケース50内で、主バッテリ16の前側にインバータ20が設けられ、インバータ20と発電機14とを電力配線72により接続している。
【0054】
また、船外機56は、第2ケース34と、上下方向に伸びるパイプ状部材74とを含む。第2ケース34は、船体46の下面の後端寄り部分に対向するように設け、船体46の底部に、第2ケース34の上側に固定したパイプ状部材74を回転可能に支持している。パイプ状部材74の上端部は、船体46の底部から船内に突き出して、上記の図2の構成と同様に、図6では図示しない旋回用電動モータ30(図1、図2参照)の回転軸に、直接または図示しない歯車機構を介して動力の伝達可能に作動的に連結している。例えば、図6においてインバータ20と旋回用電動モータ30とは船内の幅方向(図6の表裏方向)にずれている。また、旋回用電動モータ30と、主バッテリ16または発電機14とを、インバータ20を介して電気的に接続している。この結果、旋回用電動モータ30の駆動により、パイプ状部材74に固定した第2ケース34が、上下方向の軸を中心として所望の方向に所望量回転することにより、プロペラ32の向きを変えることができ、操舵可能となる。
【0055】
第2ケース34内に収容した推進用電動モータ28と、主バッテリ用船内ケース50内に配置したインバータ20とを、パイプ状部材74内を通るように設けられた電力配線68により接続している。推進用電動モータ28の回転軸はプロペラ32に連結している。すなわち、推進用電動モータ28及びプロペラ32は、船体46の下面側で、主バッテリ用船内ケース50の下側に、船体46の底部を介して対向する部分に設けている。
【0056】
主バッテリ16は、インバータ20に接続している。また、発電機14と主バッテリ16とを図示しない電力配線により接続している。これにより、発電機14または主バッテリ16からインバータ20に電力が供給され、推進用電動モータ28が駆動し、プロペラ32が回転駆動する。本例の構成によれば、インバータ20は、主バッテリ16が収容された船内ケース50内に設けられ、推進用電動モータ28及びプロペラ32は、船体46の下面側で、インバータ20及び主バッテリ16が収容された船内ケース50の下側に船体46を介して対向する部分に設けている。このため、インバータ20と推進用電動モータ28とを接続する電力配線68を過度に長くすることなく、プロペラ32を船体46の下面側に設けることで推進力を高くできる。その他の構成及び作用は、上記の図1から図3に示した構成と同様である。
【0057】
図7は、本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第4例を示す略透視図である。本例の場合、上記の図6に示した構成において、主バッテリ用船内ケース50と、機器バッテリ用船内ケース52との位置関係を逆にして、推進用電動モータ28を収容した第2ケース34と、プロペラ32と、パイプ状部材62とを、前後方向中央部の、主バッテリ用船内ケース50の下側に設けている。また、本例の場合も、図6に示した構成と同様に、船体46の底部にパイプ状部材74を回転可能に支持し、パイプ状部材74を旋回用電動モータ30(図1、図2参照)により回転可能としている。その他の構成及び作用は、上記の図6に示した構成と同様である。
【0058】
図8は、本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第5例を示す略透視図である。本例の構成の場合、上記の図1から図3に示した構成において、電気推進システムは、エンジン12と発電機14とを設けていない。主バッテリ16及び機器用バッテリ18は、例えば、主バッテリ用船内ケース50や機器バッテリ用船内ケース52とともに船体46から取り外して、それぞれ外部から充電可能としている。また、図8に示す小型船舶の場合、推進用電動モータ28及びインバータ20を、船体46の外側後端部に支持した後側ケース76内に設けている。後側ケース76は、船体46の外側後端部に、上下方向の軸を中心として回転可能、すなわちヨーイング可能に支持している。例えば、後側ケース76の前端部に固定した図示しない上下方向に伸びるケース側回転軸は、船体46の後端部に回転支持部により回転可能に支持している。また、ケース側回転軸の回転支持部から外れた部分に、上記の図2の構成と同様に、旋回用電動モータ30(図1、図2参照)の回転軸を動力の伝達可能に作動的に連結する。この場合、旋回用電動モータ30の駆動により、後側ケース76がヨーイングすることにより、プロペラ32の向きを変えることができ、操舵可能となる。また、後側ケース76の下端部に回転可能に支持したプロペラ32の回転軸と、推進用電動モータ28の回転軸とを、かさば歯車機構により動力の伝達可能に作動的に連結している。このような構成の場合も、上記の図1から図3に示した構成と同様に、それぞれ主バッテリ16と機器用バッテリ18とを収容した船内ケース50,52が、船内の幅方向中央で、前後方向に沿って並んで配置されている。このため、船内の低い部分に重量の大きい主バッテリ16及び機器用バッテリ18を配置しやすくでき、重量バランスをより有効に確保しやすくできる。
【0059】
図9は、本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第6例を示す略透視図である。本例の構成の場合、上記の図8に示した構成において、機器バッテリ用船内ケース52の代わりに、インバータ20及び推進用電動モータ28を収容したモータケース77を設けている。モータケース77の内側に、上端部を挿入するように中央ケース78を設けており、中央ケース78内に推進用電動モータ28及びインバータ20を設けている。中央ケース78の下端部に回転可能に支持したプロペラ32の回転軸と、推進用電動モータ28の回転軸とを、かさば歯車機構により動力の伝達可能に作動的に連結している。中央ケース78の下端部は、船体46の下端部から下方に突出させている。本例の場合、図8の構成の後側ケース76の場合と異なり、中央ケース78は、船体46に対し回転しない。すなわち、中央ケース78の上下方向中間部は、船体46の底部に固定している。このため、船体46の外側に、図示しない舵機構を設け、舵機構により船体46の向きを変えることができるようにする。その他の構成及び作用は上記の図5の構成の場合と同様である。
【0060】
図10は、本発明に係る実施の形態の電気推進システムを搭載した小型船舶の別例の第7例を示す略透視図である。本例の構成の場合、上記の図6に示した構成において、エンジン用船内ケース70の代わりに、主バッテリ16を収容した主バッテリ用船内ケース50を設けている。また、前側の主バッテリ用船内ケース50に収容した主バッテリ16と、後側の主バッテリ用船内ケース50に収容した主バッテリ16及びインバータ20とを電気的に接続している。また、本例の場合には、上記の図6に示した構成と同様に、船体46の底部にパイプ状部材74を回転可能に支持し、パイプ状部材74を旋回用電動モータ30(図1、図2参照)により回転可能としている。その他の構成は、上記の図6に示した構成と同様である。
【0061】
また、以下に示す構成例は、次のような課題を解決するものである。すなわち、従来からバッテリを備える船舶が知られており、バッテリを船内機器やプロペラ等の船外推進装置に電力を供給するために使用することが考えられている。ただし、バッテリは、充電量が限られ、大型のバッテリを搭載することは船舶の重量が大きくなる要因となるため、好ましくない。以下の太陽電池フィルム付船舶の構成例は、このような課題を解決すべく発明したものである。
【0062】
図11は、本発明に係る太陽電池フィルム付船舶の1例を示す図である。本例の構成の場合、船舶であり、風力走行体であるヨットは、マスト80とブーム82とに張られたメインセール84と、船体86の前端部(図11の右端部)とマスト80との間に設けられたロープ88と、ロープ88の下側に張られたジブセール90とを備える。また、メインセール84と、ジブセール90との片面または両面に、複数のプラスチックフィルム式の太陽電池92を貼着している。船体86内に図示しないバッテリを設けており、フィルム式の太陽電池92で発電された電力がバッテリに充電されるようにしている。バッテリは、船内機器に電力を供給したり、図示しないプロペラを設けて、プロペラによっても推進力を得る場合にプロペラを駆動する推進用電動モータに電力を供給するために使用する。太陽電池92は、可撓性を有し、厚さは1mm程度とする。太陽電池92は、例えば、プラスチックフィルム基板の両面に複数の薄板状の透明電極、光電変換層、及び複数の金属電極と、複数の薄板状の背面電極とを、それぞれ設けた構成とする。透明電極と光電変換層と金属電極とを、光の入射方向に沿って順に積層することで単位セルとする。透明電極と背面電極とは、基板を貫通する集電孔を通じて接続する。また、金属電極と背面電極とは、基板を貫通する集電孔とは別の接続孔を通じて接続する。これにより、複数の単位セルを電気的に直列接続する。
【0063】
このような構成によればセール84,90の機能を損なうことなく、全体の面積を十分に確保できる太陽電池92で発電させることができ、十分な電力を得ることが容易になる。また、太陽電池92が可撓性を有するので、セール84,90の収納等も容易に行える。
【0064】
図12から図14A,図14Bは、本発明に係る太陽電池フィルム付船舶の別例の第1例を示している。図12に示すように、太陽電池フィルム付船舶である小型船舶は、電気推進システム94を搭載している。小型船舶は、船体46の後端部に設けたプロペラ32により推進力を得るようにしている。また、電気推進システム94は、プロペラ32を駆動する推進用電動モータ28と、推進用電動モータ28を駆動するインバータ20と、インバータ20に接続したバッテリ96と、制御部であるコントローラ(ECU)98とを備える。コントローラ98は、推進用電動モータ28の回転角を検出し、インバータ20を制御することにより推進用電動モータ28の作動を制御する。また、電気推進システム94は、巻き取り用モータ100と、図示しない定点保持用モータとを備え、各モータ28,100をインバータ20により駆動可能としている。
【0065】
巻き取り用モータ100は、船体46の後側(図2の右側)の水上に展開可能な展開シート102を巻き取るためのものである。このために、船体46の後端部に幅方向(図12の上下方向)に伸びるケース104を固定し、ケース104の内側の幅方向一端部(図12の下端部)に巻き取り用モータ100のケースを固定している。また、巻き取り用モータ100の回転軸に連結した巻き取り軸106をケース104に回転可能に支持している。巻き取り軸106は巻き取り用モータ100により回転駆動可能としている。巻き取り用モータ100に張り検出センサ108を設け、展開シート102の張り量を検出可能としている。張り量は、例えば、巻き取り用モータ100の回転角度から検出可能とする。張り検出センサ108の検出値は、コントローラ98に入力している。
【0066】
展開シート102の長さ方向一端は巻き取り軸106に取り付けている。展開シート102の長さ方向他端部に定点保持装置110を設けている。図13に示すように、定点保持装置110は、上部に設けた浮き部112と、浮き部112の下側に柱状の連結部を介して結合したプロペラ保持部114とを備える。浮き部は、例えばブイ構造で、水上に浮力で浮くことができるようにする。プロペラ保持部114は、図示しない定点保持用モータにより駆動するプロペラ116を含む。プロペラ116は、船体46の後端部に向けており、プロペラ116が駆動することにより展開シート102が水上で引き出されるようにしている。展開シート102は、例えばビニル加工布等の布製またはプラスチックフィルム製等の軽量なシート状で、水に浮くことが可能な材料製とし、展開した場合に上面となる側に、図11の構成の場合と同様の、複数のフィルム式の太陽電池92(図11参照)を貼着している。太陽電池92の発電電力はバッテリに充電可能としている。図12に戻り、巻き取り用モータ100とケース104との間に、太陽電池92からバッテリに発電電力を送るための充電回路部118を設けている。充電回路部118は、バッテリと太陽電池92とに接続する。また、展開シート102は、例えば、厚さ1mmで、1m2の面積での重量が約1kg以下の構成を有するものとする。
【0067】
図13、図14Aに示すように、ケース104の下端部の幅方向(図13の表裏方向、図14Aの上下方向)中央部に幅方向に離れた一対のガイド部120を設けており、一対のガイド部120を、ケース104の他の部分に対し斜め後ろ下側に突出させている。展開シート102は、一対のガイド部120の上面に沿って案内されて展開及び収納をそれぞれ可能としている。一対のガイド部120の間に斜め後下側に伸びる通路122(図14A)が形成され、図14A,図14Bに示すように通路122に、定点保持装置110の連結部を進入可能としている。定点保持用モータの駆動を停止した状態で、巻き取り用モータ100(図12)の駆動により展開シート102を巻き取ると、定点保持装置110の連結部が通路122に進入しつつケース104のガイド部120の上面に沿って引き上げられ、浮き部12をケース104の後端面に突き当て可能としている。
【0068】
このような本例の場合、船舶の航行停止時や、航行中に定点保持用モータの駆動等により展開シート102を展開させ、広い面積で太陽電池92(図11参照)を発電させることができ、十分な電力を得ることが容易になる。また、太陽電池92が可撓性を有するので、発電の不要時に展開シート102の収納を容易に行え、かつ、太陽電池92を設けることで船舶が過度に大型化することがない。なお、定点保持装置110を省略して、船舶の前進に伴って展開シート102を自動で展開可能とすることもできる。また、展開シート102と、太陽電池92とを別部材により構成するのではなく、展開シートを、1つのプラスチックフィルム式の太陽電池のみにより構成することもできる。この場合、太陽電池を構成するプラスチックフィルム基板の長さ方向一端部を巻き取り軸106に取り付け、プラスチックフィルム基板の長さ方向他端部に定点保持装置110を設ける。
【0069】
図15A,図15Bは、本発明に係る太陽電池92フィルム付船舶の別例の第2例を示している。本例の場合、太陽電池フィルム付船舶である小型船舶は、船体46の運転席の後側の後端部に複数の柱部124を立設し、柱部124の上端部にビニル加工布等の布製のシート126を屋根状に張っている。そして、シート126の上面側に、図11の構成の場合と同様の、複数のフィルム式の太陽電池92を貼着している。太陽電池92の発電電力は図示しないバッテリに充電可能としている。このような構成の場合も、広い面積で太陽電池92を発電させることができ、十分な電力を得ることが容易になる。また、太陽電池92が可撓性を有するので、発電の不要時にシート126の収納を容易に行える。なお、シート126の収納を不要とする場合には、太陽電池92が可撓性を有しない構成とすることもできる。また、この場合、シート126も可撓性を有しない構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0070】
10 小型船舶用電気推進システム、12 エンジン、14 発電機、16 主バッテリ、18 船内機器用バッテリ、20 インバータ、22 エンジンコントローラ、24 船内機器、26 メインコントローラ、28 推進用電動モータ、30 旋回用電動モータ、32 プロペラ、34 第2ケース、36 ナビゲーションシステム、38 加速操作具、40 旋回操作具、42 太陽電池、44 プラグ、46 船体、48 ウィンドシールド部、50 主バッテリ用船内ケース、52 機器バッテリ用船内ケース、54 ガイド部材、56 船外機、58 支持部材、60 第1ケース、62 パイプ状部材、66,68 電力配線、70 エンジン用船内ケース、72 電力配線、74 パイプ状部材、76 後側ケース、77 モータケース、78 中央ケース、80 マスト、82 ブーム、84 メインセール、86 船体、88 ロープ、90 ジブセール、92 太陽電池、94 電気推進システム、96 バッテリ、98 コントローラ、100 巻き取り用モータ、102 展開シート、104 ケース、106 巻き取り軸、108 張り検出センサ、110 定点保持装置、112 浮き部、114 プロペラ保持部、116 プロペラ、118 充電回路部、120 ガイド部、122 通路、124 柱部、126 シート。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンにより駆動される発電機と、
発電機により発電した電力が供給され、充電される蓄電部と、
発電機により発電した電力が蓄電部を介して、または蓄電部を介さずに供給されるインバータと、
インバータにより駆動される電動モータと、
電動モータにより駆動される船外推進装置とを備えることを特徴とする小型船舶用電気推進システム。
【請求項2】
請求項1に記載の小型船舶用電気推進システムにおいて、
エンジンは、船体の外側に配置される船外機を構成することを特徴とする小型船舶用電気推進システム。
【請求項3】
請求項2に記載の小型船舶用電気推進システムにおいて、
船外機は、エンジンと、発電機と、インバータと、電動モータと、船外推進装置とを含むことを特徴とする小型船舶用電気推進システム。
【請求項4】
請求項2に記載の小型船舶用電気推進システムにおいて、
船外機は、
エンジンと、発電機と、インバータとが収容された第1ケースと、
電動モータが収容され、第1ケースに支持された第2ケースと、を備え、
蓄電部は、船内に設けられており、
第1ケース内の電気部品と蓄電部及び第2ケース内の電気部品とは、それぞれ電力配線で接続されていることを特徴とする小型船舶用電気推進システム。
【請求項5】
請求項4に記載の小型船舶用電気推進システムにおいて、
第1ケースと第2ケースとを連結するパイプ状部材と、
パイプ状部材内に設けられ、第1ケース内のインバータと第2ケース内の電動モータとを接続する電力配線と、を備え、
インバータは、船内に設けられた蓄電部から電力が供給されることを特徴とする小型船舶用電気推進システム。
【請求項6】
請求項5に記載の小型船舶用電気推進システムにおいて、
パイプ状部材は、第1ケースに対し回転可能に支持され、
さらに、第1ケースの上面または第1ケースの内部に設けられ、パイプ状部材を回転駆動させる旋回用電動モータと、
旋回を指示するための旋回指示具と、
旋回指示具から入力された旋回指示に応じた方向に、旋回用電動モータを回転駆動させ、第2ケースを旋回させる制御部とを備えることを特徴とする小型船舶用電気推進システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1に記載の小型船舶用電気推進システムにおいて、
蓄電部は、複数の船内ケース内にそれぞれ収容された複数の二次電池であり、複数の二次電池の少なくとも一部の二次電池は電気的に直列または並列に接続されていることを特徴とする小型船舶用電気推進システム。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1に記載の小型船舶用電気推進システムにおいて、
蓄電部は、複数の船内ケース内にそれぞれ収容された複数の二次電池の少なくとも一部の二次電池であり、複数の船内ケースは、船内の幅方向中央で、前後方向に沿って配置されていることを特徴とする小型船舶用電気推進システム。
【請求項9】
請求項1から請求項6のいずれか1に記載の小型船舶用電気推進システムにおいて、
蓄電部は、複数の船内ケース内にそれぞれ収容された複数の二次電池の少なくとも一部の二次電池であり、複数の船内ケースは、船内の幅方向両側で、前後方向に沿って配置されていることを特徴とする小型船舶用電気推進システム。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の小型船舶用電気推進システムにおいて、
エンジン及び発電機は、船内に配置された複数の船内ケースの1の船内ケース内に収容されていることを特徴とする小型船舶用電気推進システム。
【請求項11】
請求項10に記載の小型船舶用電気推進システムにおいて、
インバータは、二次電池が収容された船内ケース内に設けられ、
電動モータ及び船外推進装置は、船体の下面側で、インバータ及び二次電池が収容された船内ケースの下側に船体を介して対向する部分に設けられていることを特徴とする小型船舶用電気推進システム。
【請求項1】
エンジンにより駆動される発電機と、
発電機により発電した電力が供給され、充電される蓄電部と、
発電機により発電した電力が蓄電部を介して、または蓄電部を介さずに供給されるインバータと、
インバータにより駆動される電動モータと、
電動モータにより駆動される船外推進装置とを備えることを特徴とする小型船舶用電気推進システム。
【請求項2】
請求項1に記載の小型船舶用電気推進システムにおいて、
エンジンは、船体の外側に配置される船外機を構成することを特徴とする小型船舶用電気推進システム。
【請求項3】
請求項2に記載の小型船舶用電気推進システムにおいて、
船外機は、エンジンと、発電機と、インバータと、電動モータと、船外推進装置とを含むことを特徴とする小型船舶用電気推進システム。
【請求項4】
請求項2に記載の小型船舶用電気推進システムにおいて、
船外機は、
エンジンと、発電機と、インバータとが収容された第1ケースと、
電動モータが収容され、第1ケースに支持された第2ケースと、を備え、
蓄電部は、船内に設けられており、
第1ケース内の電気部品と蓄電部及び第2ケース内の電気部品とは、それぞれ電力配線で接続されていることを特徴とする小型船舶用電気推進システム。
【請求項5】
請求項4に記載の小型船舶用電気推進システムにおいて、
第1ケースと第2ケースとを連結するパイプ状部材と、
パイプ状部材内に設けられ、第1ケース内のインバータと第2ケース内の電動モータとを接続する電力配線と、を備え、
インバータは、船内に設けられた蓄電部から電力が供給されることを特徴とする小型船舶用電気推進システム。
【請求項6】
請求項5に記載の小型船舶用電気推進システムにおいて、
パイプ状部材は、第1ケースに対し回転可能に支持され、
さらに、第1ケースの上面または第1ケースの内部に設けられ、パイプ状部材を回転駆動させる旋回用電動モータと、
旋回を指示するための旋回指示具と、
旋回指示具から入力された旋回指示に応じた方向に、旋回用電動モータを回転駆動させ、第2ケースを旋回させる制御部とを備えることを特徴とする小型船舶用電気推進システム。
【請求項7】
請求項1から請求項6のいずれか1に記載の小型船舶用電気推進システムにおいて、
蓄電部は、複数の船内ケース内にそれぞれ収容された複数の二次電池であり、複数の二次電池の少なくとも一部の二次電池は電気的に直列または並列に接続されていることを特徴とする小型船舶用電気推進システム。
【請求項8】
請求項1から請求項6のいずれか1に記載の小型船舶用電気推進システムにおいて、
蓄電部は、複数の船内ケース内にそれぞれ収容された複数の二次電池の少なくとも一部の二次電池であり、複数の船内ケースは、船内の幅方向中央で、前後方向に沿って配置されていることを特徴とする小型船舶用電気推進システム。
【請求項9】
請求項1から請求項6のいずれか1に記載の小型船舶用電気推進システムにおいて、
蓄電部は、複数の船内ケース内にそれぞれ収容された複数の二次電池の少なくとも一部の二次電池であり、複数の船内ケースは、船内の幅方向両側で、前後方向に沿って配置されていることを特徴とする小型船舶用電気推進システム。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の小型船舶用電気推進システムにおいて、
エンジン及び発電機は、船内に配置された複数の船内ケースの1の船内ケース内に収容されていることを特徴とする小型船舶用電気推進システム。
【請求項11】
請求項10に記載の小型船舶用電気推進システムにおいて、
インバータは、二次電池が収容された船内ケース内に設けられ、
電動モータ及び船外推進装置は、船体の下面側で、インバータ及び二次電池が収容された船内ケースの下側に船体を介して対向する部分に設けられていることを特徴とする小型船舶用電気推進システム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14A】
【図14B】
【図15A】
【図15B】
【公開番号】特開2011−16388(P2011−16388A)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−160554(P2009−160554)
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
【公開日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年7月7日(2009.7.7)
【出願人】(000006781)ヤンマー株式会社 (3,810)
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