説明

小型貫流ボイラ

【課題】燃焼ガスに偏流が生じることを抑制し、熱回収効率の向上を図る。
【解決手段】水管2,3が環状2列に配列され、各列の水管がシールドフィン4,6によって連結されることで外炉壁5、内炉壁7が同心多重円筒に形成され、前記内炉壁の内部に燃焼室8が形成されると共に前記外炉壁と前記内炉壁との間に円筒状の燃焼ガス流路9が形成される小型貫流ボイラ1に於いて、前記内炉壁のシールドフィンの下端部が欠切されて燃焼ガス流入口18が形成され、前記外炉壁のシールドフィンの上端部が欠切されて燃焼ガス排気口19が形成され、前記燃焼ガス流路の内部に旋回流形成手段21が設けられ、前記燃焼ガス流入口から流入した燃焼ガスが前記旋回流形成手段によって旋回されつつ上昇し、前記燃焼ガス排気口から排気される様構成された。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、小型貫流ボイラに関するものである。
【背景技術】
【0002】
小型貫流ボイラの1つとして、水管を環状に配列したものがある。水管と水管の間にはシールドフィンが設けられ、隣接する水管はシールドフィンによって連結され、水管とシールドフィンによって円筒状の炉壁が形成され、炉壁内部が燃焼室となっている。
【0003】
斯かる小型貫流ボイラでは、熱回収率を向上させる為に水管が内外に環状2列に配列され、水管とシールドフィンによって同心2重の内炉壁と外炉壁が形成されると共に内炉壁と外炉壁との間には円筒状の燃焼ガス流路が形成される。燃焼室で燃焼した燃焼ガスは燃焼ガス流路を通り、更に燃焼ガス流路に連通された排気筒を通って排出される様になっている。
【0004】
該排気筒は前記燃焼ガス流路の1箇所に連通される構造であるので、燃焼ガスに偏流を生じ易く、又偏流は熱回収効率向上を妨げる要因となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−56803号公報
【特許文献2】特開2008−267685号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は斯かる実情に鑑み、燃焼ガスに偏流が生じることを抑制し、熱回収効率の向上を図るものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、水管が環状2列に配列され、各列の水管がシールドフィンによって連結されることで外炉壁、内炉壁が同心多重円筒に形成され、前記内炉壁の内部に燃焼室が形成されると共に前記外炉壁と前記内炉壁との間に円筒状の燃焼ガス流路が形成される小型貫流ボイラに於いて、前記内炉壁のシールドフィンの下端部が欠切されて燃焼ガス流入口が形成され、前記外炉壁のシールドフィンの上端部が欠切されて燃焼ガス排気口が形成され、前記燃焼ガス流路の内部に旋回流形成手段が設けられ、前記燃焼ガス流入口から流入した燃焼ガスが前記旋回流形成手段によって旋回されつつ上昇し、前記燃焼ガス排気口から排気される様構成された小型貫流ボイラに係るものである。
【0008】
又本発明は、前記旋回流形成手段は、螺旋状に形成されたガス案内板である小型貫流ボイラに係るものである。
【0009】
又本発明は、前記外炉壁、前記内炉壁の少なくとも一方に伝熱促進フィンを設け、前記ガス案内板に沿って所定幅前記伝熱促進フィンが設けられない伝熱促進フィン欠落帯を形成した小型貫流ボイラに係るものである。
【0010】
又本発明は、前記伝熱促進フィンを燃焼ガスの流れ方向に沿う様に傾斜させた小型貫流ボイラに係るものである。
【0011】
又本発明は、前記外炉壁及び前記内炉壁にそれぞれ伝熱促進フィンを傾斜させて設け、該伝熱促進フィンは燃焼ガスに旋回流を与える様にし、該伝熱促進フィンにより前記旋回流形成手段が構成される小型貫流ボイラに係るものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、水管が環状2列に配列され、各列の水管がシールドフィンによって連結されることで外炉壁、内炉壁が同心多重円筒に形成され、前記内炉壁の内部に燃焼室が形成されると共に前記外炉壁と前記内炉壁との間に円筒状の燃焼ガス流路が形成される小型貫流ボイラに於いて、前記内炉壁のシールドフィンの下端部が欠切されて燃焼ガス流入口が形成され、前記外炉壁のシールドフィンの上端部が欠切されて燃焼ガス排気口が形成され、前記燃焼ガス流路の内部に旋回流形成手段が設けられ、前記燃焼ガス流入口から流入した燃焼ガスが前記旋回流形成手段によって旋回されつつ上昇し、前記燃焼ガス排気口から排気される様構成されたので、偏流の発生が抑止され、燃焼ガスと炉壁全域で熱交換が行われ、熱回収効率が向上する。
【0013】
又本発明によれば、前記外炉壁、前記内炉壁の少なくとも一方に伝熱促進フィンを設け、前記ガス案内板に沿って所定幅前記伝熱促進フィンが設けられない伝熱促進フィン欠落帯を形成したので、伝熱促進フィンにより、伝熱面積が増大し、熱回収量が増加し、熱回収効率が向上する。
【0014】
又本発明によれば、前記伝熱促進フィンを燃焼ガスの流れ方向に沿う様に傾斜させたので、伝熱促進フィンを設けたことによる圧力損失を低減できる。
【0015】
又本発明によれば、前記外炉壁及び前記内炉壁にそれぞれ伝熱促進フィンを傾斜させて設け、該伝熱促進フィンは燃焼ガスに旋回流を与える様にし、該伝熱促進フィンにより前記旋回流形成手段が構成されるので、伝熱促進フィンにより、伝熱面積が増大し、熱回収量が増加し、熱回収効率が向上すると共に別途旋回流形成手段を設ける必要がなくなり、構造が簡単になるという優れた効果を発揮する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の第1の実施例を示す断面図である。
【図2】図1のA方向矢視の半断面図である。
【図3】第1の実施例に用いられるガス案内板の部分平面図である。
【図4】本発明の第2の実施例を示す断面図である。
【図5】図4のB方向矢視の半断面図である。
【図6】本発明の第3の実施例を示す断面図である。
【図7】本発明の第4の実施例を示す断面図である。
【図8】図7のC方向矢視の半断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照しつつ本発明の実施例を説明する。
【0018】
図1〜図3により、第1の実施例を説明する。
【0019】
図1中、1はボイラ本体を示している。上下に延びる水管2,3が環状2列に配列され、外側に位置する外水管2は外シールドフィン4によって相互に連結され、外炉壁5を形成し、内側に位置する内水管3は内シールドフィン6によって相互に連結され、内炉壁7を形成し、前記外炉壁5と前記内炉壁7によって同心多重円筒の炉壁が構成される。
【0020】
前記内炉壁7によって画成される空間は燃焼室8を形成し、前記外炉壁5と前記内炉壁7との間には円筒状の燃焼ガス流路9が形成される。
【0021】
前記水管2,3の下端には環状の下部管寄せ11が接続され、前記水管2,3の上端には環状の上部管寄せ12が接続されている。
【0022】
前記下部管寄せ11の中心部は炉底部13によって閉塞され、前記上部管寄せ12の中心部には炉天井部14が設けられている。又、該炉天井部14にはバーナ15(細部は図示を省略している)が設けられ、該バーナ15は前記燃焼室8の下方に向けて火炎16を形成する様に燃料を燃焼する。
【0023】
前記下部管寄せ11には給水管(図示せず)を介して給水源(図示せず)が接続され、前記下部管寄せ11に水が供給される様になっている。又前記上部管寄せ12には蒸気管17を介して気水分離器(図示せず)が接続され、該気水分離器と前記下部管寄せ11とは降水管(図示せず)によって接続されている。
【0024】
前記内シールドフィン6の下端部は欠切されており、各内水管3の下端部には、前記燃焼室8と前記燃焼ガス流路9とを連通する燃焼ガス流入口18が形成される。又、前記外シールドフィン4の一部の上端部は欠切され、欠切部は燃焼ガス排気口19が形成され、該燃焼ガス排気口19には排気筒(図示せず)が接続されている。
【0025】
前記燃焼ガス流路9には図3に示される螺旋状のガス案内板21が設けられ、前記燃焼ガス流路9は該ガス案内板21によって仕切られ、前記燃焼ガス流路9の内部には前記燃焼ガス流入口18から前記燃焼ガス排気口19に至る螺旋状流路が形成される。
【0026】
以下、第1の実施例の作用を説明する。
【0027】
前記バーナ15に燃料、燃焼用空気が供給され、燃料が燃焼して火炎16が形成され、燃焼ガスは前記燃焼ガス流入口18を通って前記燃焼ガス流路9に流入する。該燃焼ガス流路9内部には前記ガス案内板21によって螺旋状流路が形成されているので、燃焼ガスは前記燃焼ガス流路9内部を旋回しながら上昇し、前記燃焼ガス排気口19より排気される。ここで、前記ガス案内板21は旋回流形成手段を構成する。
【0028】
図3は、前記ガス案内板21単体の一部の平面を示しており、前記ガス案内板21の幅は、前記外シールドフィン4、前記内シールドフィン6間の距離に略等しく、前記ガス案内板21の外側には前記外水管2の外径に略等しい半円状の切欠22が前記外水管2のピッチに合わせて形成され、又前記ガス案内板21の内側には前記内水管3の外径に略等しい半円状の切欠23が前記内水管3のピッチに合わせて形成されている。又、前記ガス案内板21は下端から上端迄連続する一体であってもよく、或は所要の位置で分割されてもよい。
【0029】
燃焼ガスが前記燃焼ガス流路9内を旋回することで、前記水管2,3に対して略直交する様に流れ、更に、前記燃焼ガス流入口18に流入した燃焼ガスが前記燃焼ガス排気口19に向って短絡して流れることがなく、偏流が抑止され、燃焼ガスは前記外炉壁5、前記内炉壁7(水管2,3)の全域に均等に接触して流れる。
【0030】
前記水管2,3内の水は燃焼ガスと熱交換し、蒸発し、蒸気は前記上部管寄せ12、前記蒸気管17を介して気水分離器(図示せず)へ流入する。該気水分離器で分離された水は降水管(図示せず)を降水して前記下部管寄せ11に流入する。
【0031】
上記した様に、本実施例では燃焼ガスの偏流が抑止されるので、熱回収効率が向上する。
【0032】
図4、図5は第2の実施例を示している。尚、図4、図5中、図1、図2中で示したものと同等のものには同符号を付し、その説明を省略する。
【0033】
第2の実施例では伝熱面積を増大させる為に、前記外水管2に上下方向所定ピッチで伝熱促進フィン25を設けたものである。尚、該伝熱促進フィン25と前記ガス案内板21との干渉を避ける為、該ガス案内板21が介在する部分について前記伝熱促進フィン25が設けられない。即ち、前記ガス案内板21に沿って、上下所定の幅で、前記伝熱促進フィン25が設けられない、伝熱促進フィン欠落帯26が形成される。
【0034】
尚、図5中、前記ガス案内板21は前記伝熱促進フィン欠落帯26を通過しており、左半分の伝熱促進フィン25は前記ガス案内板21の上側に位置し、右半分の伝熱促進フィン25は前記ガス案内板21の下側に位置していることを示している。
【0035】
第2の実施例でも、前記ガス案内板21によって螺旋状流路が形成され、前記燃焼ガス流路9を燃焼ガスが旋回しながら上昇し、燃焼ガス排気口19より排気される。前記伝熱促進フィン25が設けられることから、前記外水管2の熱吸収量が増大し、熱回収効率が向上する。又、前記外水管2の熱吸収量が増大することで、熱吸収量の高い内水管3との均等化を図ることができる。
【0036】
更に、燃焼ガスが旋回しつつ流れることで、前記伝熱促進フィン25に対して燃焼ガスの流れが略平行となり、圧損が少なくなる。又、更に圧損を低減させる為、前記伝熱促進フィン25を燃焼ガスの流れに沿う様、傾斜させてもよい。
【0037】
尚、図6は第3の実施例を示しており、第3の実施例では外水管2の代りに各内水管3に伝熱促進フィン27を上下方向所定ピッチで設けたものである。第3の実施例に於いても、前記伝熱促進フィン27を設けることで、伝熱面積が増大し、前記内水管3の熱吸収量が増大し、熱回収効率が向上する。又、第2の実施例と同様、前記ガス案内板21に沿って、上下所定の幅で、前記伝熱促進フィン27が設けられない、伝熱促進フィン欠落帯26が形成される。
【0038】
図7、図8は第4の実施例を示しており、第4の実施例では外水管2、内水管3共に伝熱促進フィン25、伝熱促進フィン27を設けた場合を示している。
【0039】
前記外水管2、内水管3に前記伝熱促進フィン25、前記伝熱促進フィン27を設けることで、前記外水管2、前記内水管3の伝熱面積が増大し、前記外水管2、前記内水管3の熱回収量が一層増大し、更に熱回収効率が向上する。
【0040】
第4の実施例では、ガス案内板21に沿って前記伝熱促進フィン25、前記伝熱促進フィン27がそれぞれ所定幅で設けられない、伝熱促進フィン欠落帯26が形成される。
【0041】
又、前記外水管2、前記内水管3にそれぞれ伝熱促進フィン25、伝熱促進フィン27を設ける場合、前記伝熱促進フィン25、前記伝熱促進フィン27を傾斜させることで、前記伝熱促進フィン25、前記伝熱促進フィン27によって燃焼ガスに旋回を与えることができ、前記ガス案内板21を省略することが可能である。この場合、前記伝熱促進フィン25、前記伝熱促進フィン27が旋回流形成手段を構成する。
【0042】
尚、図8中、前記ガス案内板21は前記伝熱促進フィン欠落帯26を通過しており、左半分の伝熱促進フィン25,27は前記ガス案内板21の上側に位置し、右半分の伝熱促進フィン25,27は前記ガス案内板21の下側に位置していることを示している。
【0043】
上記した様に、本発明では旋回流形成手段により燃焼ガス流路9を流通する燃焼ガスに旋回を与えるので、偏流がなくなり、外炉壁、内炉壁の全域で熱交換が行われ、更に流路長が増大するので、熱交換効率が向上する。
【符号の説明】
【0044】
1 ボイラ本体
2 外水管
3 内水管
4 外シールドフィン
5 外炉壁
6 内シールドフィン
7 内炉壁
8 燃焼室
9 燃焼ガス流路
11 下部管寄せ
12 上部管寄せ
15 バーナ
16 火炎
18 燃焼ガス流入口
19 燃焼ガス排気口
21 ガス案内板
25 伝熱促進フィン
26 伝熱促進フィン欠落帯
27 伝熱促進フィン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水管が環状2列に配列され、各列の水管がシールドフィンによって連結されることで外炉壁、内炉壁が同心多重円筒に形成され、前記内炉壁の内部に燃焼室が形成されると共に前記外炉壁と前記内炉壁との間に円筒状の燃焼ガス流路が形成される小型貫流ボイラに於いて、前記内炉壁のシールドフィンの下端部が欠切されて燃焼ガス流入口が形成され、前記外炉壁のシールドフィンの上端部が欠切されて燃焼ガス排気口が形成され、前記燃焼ガス流路の内部に旋回流形成手段が設けられ、前記燃焼ガス流入口から流入した燃焼ガスが前記旋回流形成手段によって旋回されつつ上昇し、前記燃焼ガス排気口から排気される様構成されたことを特徴とする小型貫流ボイラ。
【請求項2】
前記旋回流形成手段は、螺旋状に形成されたガス案内板である請求項1の小型貫流ボイラ。
【請求項3】
前記外炉壁、前記内炉壁の少なくとも一方に伝熱促進フィンを設け、前記ガス案内板に沿って所定幅前記伝熱促進フィンが設けられない伝熱促進フィン欠落帯を形成した請求項2の小型貫流ボイラ。
【請求項4】
前記伝熱促進フィンを燃焼ガスの流れ方向に沿う様に傾斜させた請求項1の小型貫流ボイラ。
【請求項5】
前記外炉壁及び前記内炉壁にそれぞれ伝熱促進フィンを傾斜させて設け、該伝熱促進フィンは燃焼ガスに旋回流を与える様にし、該伝熱促進フィンにより前記旋回流形成手段が構成される請求項1の小型貫流ボイラ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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