説明

小型部品の保持治具及び小型部品の取扱方法

【課題】異サイズの小型部品であっても所望の保持姿勢で長期間にわたって保持することができると共に、小型部品の保持孔への挿脱及び保持姿勢の微調整又は修正が容易で小型部品の取扱性にも優れた小型部品の保持治具、並びに、異サイズの小型部品であっても保持孔を実質的に損傷させることなく速やかに保持孔に挿脱することができ、小型部品を所望の保持姿勢で保持することのできる小型部品の取扱方法を提供すること。
【解決手段】軸線に沿って延在する2組の内壁と、各内壁から前記軸線に対して水平方向に向かって単一の先細形状となるように前記軸線に沿って突出する2組の突出部とを有して成る保持孔が形成された、200〜1000%の切断時伸びを有する弾性部材を備えて成る保持治具、並びに、小型部品を突出部の後方部に接触させ前方部に非接触とさせて、小型部品を保持孔に挿入する工程を有する小型部品の取扱方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、小型部品の保持治具及び小型部品の取扱方法に関し、さらに詳しくは、異サイズの小型部品であっても所望の保持姿勢で長期間にわたって保持することができると共に、小型部品の保持孔への挿脱及び保持姿勢の微調整又は修正が容易で小型部品の取扱性にも優れた小型部品の保持治具、並びに、異サイズの小型部品であっても保持孔を実質的に損傷させることなく速やかに保持孔に挿脱することができ、小型部品を所望の保持姿勢で保持することのできる小型部品の取扱方法に関する。
【背景技術】
【0002】
コンピュータ、電話機、ゲーム機、自動車電装機器等の電子機器に用いられる集積回路等には、例えば、積層セラミックチップコンデンサ(単に、チップコンデンサと称することがある。)等の小型部品が搭載されている。このような小型部品を製造する際等には、通常、小型部品を製造可能な小型部品用部材等を保持する保持治具が用いられる。
【0003】
このような保持治具として、例えば、特許文献1には、「全体として平板状をなしており、各チップ状電子部品の特定の側面を露出させた状態でこれら複数個のチップ状電子部品を1個ずつ受け入れる複数個の保持穴が平面的に分布するように設けられ、各前記保持穴は、その少なくとも内周面が弾性材料をもって形成されることによって、各チップ状電子部品を弾性的に挟持する構造とされていて、各前記保持穴内に保持された各前記チップ状電子部品の前記特定の側面上であって当該側面を少なくとも横切る所定の幅の領域に、電極を形成するための導電性ペーストを付与する際に用いる、チップ状電子部品用ホルダであって、各前記保持穴に隣接する領域であって前記電極を形成するために付与されるべき導電性ペーストの横切る方向の延長部分に、前記所定の幅より広い幅を有する凹部が設けられていることを特徴とする、チップ状電子部品用ホルダ。」が記載されている。
【0004】
このチップ状電子部品用ホルダにおける前記保持穴は、「各保持穴23は、たとえば図3に示すように、ここに挿入されるチップ状電子部品1の断面寸法よりわずかに小さい平面寸法を有してい」る(特許文献1の0038欄及び図3等参照。)。
【0005】
このように、保持穴23が挿入されるチップ状電子部品の断面寸法よりわずかに小さい平面寸法を有するように形成されると、チップ状電子部品によって保持穴23の平面寸法を調整する必要があり、チップ状電子部品用ホルダの汎用性に劣ることがある。また、保持穴が挿入されるチップ状電子部品の断面寸法よりわずかに小さい平面寸法を有していると、この保持穴へのチップ状電子部品の挿入及び保持穴からのチップ状電子部品の取り外しに際して、保持穴の角部及びその近傍等とチップ状電子部品との接触部に応力が集中しやすくなる。そうすると、前記角部及びその近傍等がすれて、この部分の弾性材料に亀裂及び/又は欠落が生じることがある。特に、この保持孔に繰り返し多数回にわたってチップ状電子部品を挿入及び取り外しをすると、前記部分の亀裂及び/又は欠落が激しくなる。そして、この部分の弾性材料に亀裂及び/又は欠落が生じると、チップ状電子部品を均一に保持することができなくなることがあるうえ、欠落した弾性材料がチップ状電子部品に付着するという問題が生じることがある。
【0006】
このような保持穴における角部のすれを低減することができる手段として、例えば、特許文献2には、「治具本体1の板面に、チップ状電子部品の円柱形の素体4の端部を一部残して、該素体4を縦に嵌め込む貫通孔2が形成されたチップ状電子部品端部電極形成加工用治具において、前記貫通孔2が正多角形断面を有することを特徴とするチップ状電子部品端部電極形成加工用治具。」が記載され、このチップ状電子部品端部電極形成加工用治具における貫通孔2の「三角形の角部3は、そこに応力が集中しないよう、丸みを帯びて」いる(第6頁第1行〜第3行及び第3図(a)及び(b))。このように、丸みを帯びていれば、角部での割れなどを防止することができるといえる。
【0007】
しかし、このチップ状電子部品端部電極形成加工用治具においては、正多角形断面を有する貫通孔2で円柱形の素体4を保持することになるので、素体4を所望のように保持するためには、貫通孔2の中心軸から各壁面に下した垂線の長さを保持する電子部品の素体4の半径よりも短くする必要があり、素体4の挿入しやすさをある程度犠牲にする必要がある。また、このチップ状電子部品端部電極形成加工用治具においては、角部での割れ等を防止することができたとしても、チップ状電子部品によって貫通孔2の平面寸法を調整する必要があり、チップ状電子部品端部電極形成加工用治具の汎用性に劣ることがある。
【0008】
特許文献1及び2に記載されたチップ状電子部品用ホルダ及びチップ状電子部品端部電極形成加工用治具以外の保持治具として、例えば、特許文献3の第17図に記載された「パーツ支持プレート」、特許文献4の第14図に記載された「保持治具」及び特許文献5の図7に記載された「ベルト状の部品保持具」等が挙げられる。
【0009】
ところが、特許文献3〜5に記載されたパーツ支持プレート等であっても、小型部品の挿脱を繰り返すと、特許文献3の「ボス140」及び特許文献4の「突起34」において、小型部品を保持したときに接触する接触面が挿脱時の摩擦で削れて保持孔の寸法が次第に大きくなり、小型部品を所望のように保持できなくなると共に、削りカス等の異物が発生することがある。
【0010】
また、前記接触面は、保持孔に小型部品を挿脱する際に、そのほぼ全面が小型部品に接触するから、挿脱時の摩擦抵抗が大きく小型部品の挿脱が容易ではないうえ、小型部品を一旦保持すると、接触面による保持力が大きくなり小型部品の保持姿勢を容易に微調整又は修正することが困難となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特許第3164087号明細書
【特許文献2】実開平01−146520号公報
【特許文献3】特開昭58−90718号公報
【特許文献4】特公平6−80602号公報
【特許文献5】特開2006−324365号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
この発明は、異サイズの小型部品であっても所望の保持姿勢で長期間にわたって保持することができると共に、小型部品の保持孔への挿脱及び保持姿勢の微調整又は修正が容易で小型部品の取扱性にも優れた小型部品の保持治具を提供することを、目的とする。
【0013】
また、この発明は、異サイズの小型部品であっても保持孔を実質的に損傷させることなく速やかに保持孔に挿脱することができ、小型部品を所望の保持姿勢で保持することのできる小型部品の取扱方法を提供することを、目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記課題を解決するための手段として、
請求項1は、小型部品を保持する保持孔が形成された弾性部材を備えて成る小型部品の保持治具であって、前記弾性部材は、200〜1000%の切断時伸び(JIS K6249:引張速度500mm/min)を有しており、前記保持孔は、その軸線方向に沿って延在し、相対向する少なくとも2組の内壁と、前記内壁それぞれから前記軸線に対して水平方向に向かって単一の先細形状となるように前記軸線に沿って突出する、互いに相対向する少なくとも2組の突出部とを有して成ることを特徴とする小型部品の保持治具であり、
請求項2は、前記突出部は、前記内壁に垂直に交差し前記軸線を含む仮想平面に対して実質的に鏡像関係にある突出側壁を有して成ることを特徴とする請求項1に記載の小型部品の保持治具であり、
請求項3は、前記突出側壁は、曲面又は平面であることを特徴とする請求項2に記載の小型部品の保持治具であり、
請求項4は、前記突出部は、前記内壁及び前記軸線方向に沿って延在する接触平面を先端部に有して成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の小型部品の保持治具であり、
請求項5は、前記突出部は、その先端に向かって徐々に軸線長さが短くなるように、開口端面を有して成ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の小型部品の保持治具であり、
請求項6は、前記突出部は、前記内壁からの最大突出長さLpと前記先細形状の最大幅Lwとが式:Lw≧Lpを満足することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の小型部品の保持治具であり、
請求項7は、前記突出部は、前記弾性部材の厚さtと、前記突出部における前記小型部品に接触する部分の軸線長さLaとが式:t≧Laを満足することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の小型部品の保持治具であり、
請求項8は、前記保持孔は、前記内壁の両端部それぞれに非接触部を有して成ることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の小型部品の保持治具であり、
請求項9は、前記突出部は、前記小型部品を前記保持孔に挿入する過程において、前記小型部品の挿入方向における前記突出部の後方部が前記小型部品に接触し、前記突出部の前方部が前記小型部品に非接触となるように、弾性変形することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の小型部品の保持治具である。
【0015】
前記課題を解決するための別の手段として、
請求項10は、請求項1〜9のいずれか1項に記載の保持治具に小型部品を保持させて取扱う方法であって、前記小型部品を前記保持孔に向けて前進させて、前記小型部品の側面それぞれを、前記小型部品の前進方向における前記突出部それぞれの後方部に接触させ、前記突出部それぞれの前方部に非接触とさせた状態で、前記小型部品を前記保持孔に挿入する工程と、を有することを特徴とする小型部品の取扱方法であり、
請求項11は、保持した前記小型部品に所定の処理を施す工程を有することを特徴とする請求項10に記載の小型部品の取扱方法である。
【発明の効果】
【0016】
この発明に係る小型部品の保持治具は、少なくとも2組の前記内壁と少なくとも2組の前記突出部とを有する保持孔が形成された弾性部材を備えて成るから、小型部品の保持孔への挿脱時及び保持時に、小型部品のサイズに応じて前記突出部が弾性変形し、前記内壁よりも接触面積の小さな前記突出部で小型部品を狭圧保持することができる。その結果、この発明に係る小型部品の保持治具は異サイズの小型部品であっても挿脱及び保持することができる。
【0017】
また、この発明に係る小型部品の保持治具は、少なくとも2組の前記内壁と少なくとも2組の前記突出部とを有する保持孔が形成された弾性部材を備えて成るから、小型部品の保持孔への挿脱時に、小型部品の側面が前記突出部に接触し小型部品の側辺部等が前記突出部及び前記内壁に非接触となると共に、前記突出部の一部が小型部品の側面に接触するように突出部が適度に弾性変形して小型部品との摩擦抵抗を大幅に低減させることができる。その結果、保持孔における角部近傍の損傷等を防止することができると共に、小型部品の挿脱を繰り返しても保持孔特に突出部は実質的に同一の寸法を長期間にわたって維持することができる。さらには、保持姿勢の微調整又は修正が容易であるうえ、小型部品の保持及びその後の各処理に大きな影響を与えるような削りカス等の異物が実質的に発生することもない。したがって、この発明に係る小型部品の保持治具は小型部品を所望の保持姿勢で長期間にわたって保持することができる。
【0018】
さらに、この発明に係る小型部品の保持治具は、少なくとも2組の前記内壁と少なくとも2組の前記突出部とを有する保持孔が200〜1000%の切断時伸び(JIS K6249:引張速度500mm/min)を有する弾性部材に形成されているから、小型部品の挿脱時等に前記突出部が適度に弾性変形してその一部が小型部品の側面に接触する。その結果、小型部品の保持孔への挿脱時等における摩擦抵抗を大幅に低減させることができるから、小型部品の保持孔への挿脱が容易になると共に、小型部品が保持孔に一旦保持されてもその後にその保持姿勢を所望の保持姿勢となるように容易に微調整及び修正することができる。したがって、この発明に係る小型部品の保持治具は異物等が実質的に発生することもなく小型部品の取扱性にも優れる。
【0019】
したがって、この発明によれば、異サイズの小型部品であっても所望の保持姿勢で長期間にわたって保持することができると共に、小型部品の保持孔への挿脱及び保持姿勢の微調整又は修正が容易で小型部品の取扱性にも優れた小型部品の保持治具を提供することができる。
【0020】
この発明に係る小型部品の取扱方法は、この発明に係る小型部品の保持治具を用いて実施され、かつ、小型部品を保持孔に向けて前進させて、小型部品の側面それぞれを小型部品の前進方向における突出部それぞれの後方部に接触させ、突出部それぞれの前方部に非接触とさせた状態で、小型部品を保持孔に挿入する工程を有するから、前記したように、異サイズの小型部品であっても保持孔を実質的に損傷させることなく速やかに保持孔に挿脱することができるうえ、小型部品を所望の保持姿勢で保持することができる。
【0021】
したがって、この発明によれば、異サイズの小型部品であっても保持孔を実質的に損傷させることなく速やかに保持孔に挿脱することができ、小型部品を所望の保持姿勢で保持することのできる小型部品の取扱方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】図1は、この発明に係る小型部品の保持治具の一実施例である保持治具を示す概略上面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線で切断した保持治具における断面の一部を示す概略断面図である。
【図3】図3は、この発明に係る小型部品の保持治具の一実施例である保持治具における保持孔を示す概略上面図である。
【図4】図4は、この発明に係る小型部品の保持治具の一実施例である保持治具における保持孔を示す概略斜視図である。
【図5】図5は、この発明に係る小型部品の保持治具の一実施例である保持治具を構成する補強部材の一実施例を示す概略上面図である。
【図6】図6は、この発明に係る小型部品の保持治具に形成される保持孔の変形例を示す概略斜視図である。
【図7】図7は、この発明に係る小型部品の取扱方法の一例を説明する概略図であり、図7(a)は小型部品を配置した状態を説明する概略図であり、図7(b)は小型部品を保持孔に対して押圧したときの初期状態を説明する概略図であり、図7(c)は小型部品を保持孔に対して押圧したときの中期状態を説明する概略図であり、図7(d)は小型部品の前進を停止させた状態を説明する概略図であり、図7(e)は小型部品を保持孔に保持させた状態を説明する概略図である。
【図8】図8は、この発明に係る小型部品の保持治具の一実施例である保持治具に小型部品を保持させた状態を示す概略上面図である。
【図9】図9は、この発明に係る小型部品の保持治具に好適に保持される小型部品を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
この発明において、「実質的に平行」とは、相対向する面又は線が幾何学的に正確に平行であることを意味するものではなく、この発明の目的を達成できる範囲において「平行」であることを意味する。また、この発明において、「実質的に鏡像関係」、「実質的に面対称」及び「実質的に回転対称」とは、対象物が正確に「鏡像関係」、「面対称」及び「回転対称」であることを意味するものではなく、この発明の目的を達成できる範囲において「鏡像関係」、「面対称」及び「回転対称」であることを意味する。
【0024】
この発明に係る保持治具で保持する小型部品は、特に限定されないが、隣接する2つの側面が交差してなる、軸線方向に沿う側辺を少なくとも1つ、好ましくは4つ以上有する小型部品であるのが好適である。このような側辺を少なくとも1つ有する小型部品であっても、この発明の保持治具によれば、小型部品の側辺部が保持孔の内壁特に角部近傍の内壁に接触することがなく、保持孔の損傷等を防止することができる。
【0025】
また、この発明に係る保持治具で保持する小型部品は、互いに逆方向に向く少なくとも2組の側面を有する小型部品であるのが好適である。このような側面を少なくとも2つ有する小型部品はこの発明の保持治具によって所望の保持姿勢で保持されることができる。前記側面それぞれは、互いに逆方向に面し、通常、他方に対して実質的に平行になっている。
【0026】
この発明に係る保持治具で保持する小型部品は、互いに逆方向に向く少なくとも2組の側面と、隣接する2つの側面が交差してなる、軸線方向に沿う少なくとも4つの側辺とを有する小型部品であるのが特に好適である。このような小型部品としては、例えば、軸線方向に垂直な断面が2n角形(nは2以上の整数である。)である小型部品が挙げられ、より具体的には、前記断面形状が軸線方向の底面から上面まで同一である柱状体又は筒状体の小型部品、前記断面形状を有する柱状体又は筒状体の端面に鍔部を有するT型又はH型の柱状体又は筒状体等の小型部品等が挙げられる。この発明に係る保持治具で保持する特に好適な小型部品の一例として、図9に示されるように、前記断面が正方形である四角柱を成す小型部品用部材50が挙げられる。この小型部品用部材50は、互いに逆方向に向く側面53a及び53cと側面53b及び53dとを2組有し、隣接する2つの側面が交差してなる、底面及び上面の角を通り軸線方向に沿う4つの側辺51を有している。
【0027】
この発明に係る保持治具で保持する前記小型部品としては、小型部品を製造することのできる小型部品用部材、例えば、小型器具用部材、小型機械要素用部材及び小型電子部品用部材等が挙げられる。また、小型部品の製造には小型部品の搬送工程等も含まれるから、小型部品そのもの、例えば、小型器具、小型機械要素及び小型電子部品等も含まれる。したがって、この発明においては、小型部品と小型部品用部材とは明確に区別される必要はない。これらの小型部品及び小型部品用部材(以下、小型部品等と称することがある。)の中でも、この発明に係る保持治具が保持するのに好適な小型部品等として、小型電子部品及び/又は小型電子部品用部材等が挙げられる。小型電子部品及び小型電子部品用部材としては、例えば、コンデンサチップ(チップコンデンサとも称されることがある。)、インダクタチップ、抵抗体チップ等の完成品若しくは未完成品又はこれらを製造することのできる部材等が挙げられる。小型部品等の寸法は、小型部品用部材から製造される小型部品の用途等に応じて適宜の寸法に調整される。
【0028】
この発明に係る保持治具の一実施例である小型部品の保持治具(以下、単に「保持治具」と称することがある。)を、図面を参照して、説明する。この保持治具1は、小型部品等を保持して、小型部品等を製造する工程、小型部品等を搬送する工程、及び/又は、小型部品等の保存等に使用される。この保持治具1は、例えば小型部品用部材50の端面に電極を形成してコンデンサチップを製造する工程に特に好適に使用される。
【0029】
保持治具1は、図1、特に図2に示されるように、補強部材2が埋設され、保持孔5が形成された弾性部材4を備えて成る。
【0030】
補強部材2は、弾性部材4に埋設されて、弾性部材4が平坦になるように、弾性部材4を補強する。補強部材2は、図2及び図5に示されるように、板状をなし、弾性部材4の保持孔5が貫通する支持孔3が貫通形成されている。この支持孔3は、多数、例えば、約100個以上、好ましくは少なくとも約1000個以上、より好ましくは少なくとも約2000個以上が形成されている(図2及び図5において、支持孔3の一部を図示していない。)。補強部材2に多数の支持孔3が形成されると、保持治具1を用いた小型部品等の製造方法における生産性が向上する。この支持孔3は、通常、後述する保持孔5が穿孔される穿孔パターンと同一の穿孔パターンで穿孔され、例えば、補強部材2においては、保持孔5と同様に、多数の支持孔3が縦横に所定の間隔をおいて碁盤目状に穿孔されている。支持孔3の穿孔間隔は、保持治具1に挿入保持する小型部品等のサイズ等によって、任意に調整することができる。
【0031】
補強部材2の表面に開口する支持孔3の開口部形状、及び、支持孔3を補強部材2に平行な水平面で切断したときの断面形状は、特に限定されず、例えば、円形、楕円形、矩形、多角形等の形状を任意に選択することができる。前記開口部形状及び前記断面形状は同じ形状であるのがよい。この発明において、支持孔3における開口部形状及び前記断面形状は長方形、正方形、円形又は楕円形であるのがよい。図5に示されるように、補強部材2において、支持孔3の開口部形状及び断面形状は正方形とされている。
【0032】
支持孔3は、保持孔5に保持される小型部品等のサイズに応じて、保持孔5よりも大きな適宜のサイズに調整される。この発明において、支持孔3は、補強部材2の一方の表面に開口する一方の開口部から補強部材2の他方の表面に開口する他方の開口部まで同一形状で略均一なサイズになっているのがよい。
【0033】
補強部材2は、小型部品等の生産性、小型部品等のサイズ及び保持治具1の強度等を考慮して、そのサイズが調整されている。例えば、補強部材2の厚さは0.2〜1mmに調整される。
【0034】
前記補強部材2は、弾性部材4を平坦な形状に維持することのできる材料で形成されていればよく、このような材料として、金属及び樹脂等が挙げられる。具体的には、金属として、ステンレス鋼、炭素鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金及びニッケル合金等が挙げられ、樹脂として、例えば、ポリエステル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイミド、ポリフェニレンスルフィド、ポリアミド、ポリカーボネート、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン及びポリ塩化ビニル等が挙げられる。補強部材2は、加工性、操作性の観点から、ステンレス鋼、アルミニウム又はアルミニウム合金及びポリフェニレンスルフィド樹脂等で形成されるのがよく、強度と軽さとを高い水準で両立することができる点で、ステンレス鋼で形成されるのが特によい。
【0035】
図1及び図2に示されるように、弾性部材4は、多数の保持孔5が貫通形成され、前記補強部材2を内部に収容している。そして、弾性部材4は、補強部材2を埋設し、換言すると、補強部材2の両面を被覆すると共に補強部材2の支持孔3に貫入するように、一体的に形成されている。このように弾性部材4が形成されると、弾性部材4と補強部材2との密着性に優れるうえ、小型部品等の保持孔5への挿入及び抜取りが容易になる。この弾性部材4は平坦な表面を有しているのが好ましい。
【0036】
図1及び図2に示されるように、弾性部材4は、小型部品等を保持することができるようにその厚さ方向に貫通する保持孔5が形成されている。弾性部材4は、保持孔5を多数、例えば、約100個以上、好ましくは少なくとも約1000個以上、より好ましくは少なくとも約2000個以上形成されている(図1及び図2において、保持孔5の一部を図示していない。)。弾性部材4に多数の保持孔5が形成されていると、保持治具1を用いた小型部品等の製造方法における生産性が向上する。この保持孔5は、小型部品等のサイズ、生産性等を考慮して、所望の穿孔パターンに従って穿孔される。この例において、保持孔5は縦横に所定の間隔をおいて碁盤目状に穿孔されている。
【0037】
前記弾性部材4は、小型部品等の生産性、小型部品等のサイズ及び発揮される弾性力等を考慮して、そのサイズが調整されている。例えば、弾性部材4の厚さは0.5〜2mmに調整される。
【0038】
この弾性部材4は、JIS K6249に規定の切断時伸び(引張速度500mm/min)が200〜1000%の範囲内にある。後述する保持孔5が形成される弾性部材4の前記切断時伸びが200%未満であると、小型部品の挿脱時に突出部12が変形しにくく、突出部12の大部分が小型部品に接触して摩擦抵抗が大きくなり、一方、弾性部材4の前記切断時伸びが1000%を超えると、小型部品の挿脱時に突出部12が変形しすぎてかえって摩擦抵抗が大きくなることがある。小型部品の挿脱時に突出部12が適度に変形して、例えば、図7に示されるように、小型部品用部材50の挿入方向Aにおける突出部12の後方部19が小型部品用部材50の側面53に接触し、その前方部18が小型部品用部材50の側面53に非接触となって摩擦抵抗を大幅に低減することができる点で、前記切断時伸びは200〜900%であるのが好ましく、200〜600%であるのが特に好ましい。
【0039】
前記弾性部材4は、小型部品等を挿入及び/又は抜き取る際に適度に弾性変形し、かつ、損傷しないように、所定の引張強さ及び硬度を有しているのが好ましい。例えば、JIS K6249に規定の引張強さ(引張速度500mm/min)は5〜15MPaであるのが好ましく、7〜14MPaであるのが特に好ましく、JIS K6253に規定の硬度(JIS A)は20〜80であるのが好ましく、40〜60であるのが特に好ましい。弾性部材4が前記範囲内の引張強さ及び硬度のいずれかを有していると、小型部品の挿脱時に突出部12が前記したように適度に変形して小型部品と突出部との摩擦抵抗を大幅に低減することができる。前記JIS K6249に規定の切断時伸び及び引張強さは、23℃、湿度50%の環境下で、3号ダンベル形状の試験片を作製して、切断時伸びはつかみ具間隔を標線距離で20mmに設定して、実施する。
【0040】
弾性部材4は、前記切断時伸びが200〜1000%の範囲内になる成形材料で形成されていればよく、例えば、ゴム及びエラストマー等が挙げられ、より具体的には、シリコーンゴムが挙げられる。シリコーンゴムの中でも、高重合度の線状ポリジメチルシロキサン若しくはその共重合体を架橋してゴム弾性を付与したシリコーンゴム、又は、耐酸性のシリコーンゴムが好ましい。高重合度の線状ポリジメチルシロキサンを架橋したシリコーンゴムとしては、例えば、商品名「KE−1950−50」、「KE−9510U」(共に信越化学工業株式会社製)等を入手することができる。
【0041】
弾性部材4に形成された保持孔5は、図3及び図4によく示されるように、その軸線方向に沿って延在し、相対向する少なくとも2組の内壁11a及び11c並びに内壁11b及び11d(以下、これらの内壁をまとめて「内壁11」と称することがある。)と、これらの内壁それぞれから軸線に対して水平方向に向かって単一の先細形状となるように軸線に沿って突出する、互いに相対向する少なくとも2組の突出部12a及び12c並びに突出部12b及び12d(以下、これらの突出部をまとめて「突出部12」と称することがある。)とを有している。すなわち、保持孔5は、軸線に対して水平方向に向かって前記のように突出する前記突出部12を有する内壁11を4つ有し、この4つの内壁11及び突出部12によって保持孔5の内周壁が形成されている。前記突出部12は、後述するように、小型部品における1つの側面53に接触又は圧接して小型部品を保持する接触部と称することもできる。
【0042】
前記内壁11は、図2〜図4に示されるように、その表面に前記突出部12が形成されており、前記突出部12が形成されていないと仮定したときに、図3及び図4において破線で示されるように、保持孔5の軸線方向に沿って弾性部材4を貫通するように延在すると共に、隣接する各内壁11と共同して略四角柱状の空間を構成する内周壁を形成している。したがって、この発明において、内壁と称するときは、通常、前記突出部12が形成されていないと仮定したときの仮想内壁を意味し、場合によっては突出部12が形成されていない部分を意味することがある。
【0043】
前記内壁11は、相対向する内壁11a及び11c、並びに、相対向する内壁11b及び11dそれぞれが、実質的に平行になっている。相対向する内壁11が実質的に平行になっていると、互いに逆方向に向く少なくとも2組の側面を有する前記小型部品を用いたときにこの発明の目的をよく達成することができる。
【0044】
前記突出部12について、その1つである突出部12aを例にして具体的に説明する。
【0045】
前記突出部12aは、内壁11aから保持孔5の軸線C(図2及び図3参照。)に対して水平方向に向かって、換言すると、相対向する内壁11cに対して水平方向に向かって、1つの先細形状となるように突出している。すなわち、保持治具1を上面からみたときに、図3に示されるように、突出部12aは、軸線Cに近づくほど、すなわち、内壁11aからの突出長さLpが大きくなるほど、その幅、換言すると、前記軸線C方向及び突出部12aの突出方向に垂直な方向に沿う突出部12aの長さが徐々に小さくなるような1つの先細形状となるように、突出している。
【0046】
この突出部12aは、図4等に示されるように、1つの前記先細形状が弾性部材4における一方の表面から他方の表面まで前記軸線Cに沿って延在して成る。換言すると、内壁11aの軸線C方向全体から内壁11cに向かって互いの離間距離すなわち前記幅が徐々に短くなるように立ち上がる一対の突出側壁15a及び15aを有して成る。したがって、突出部12aは内壁11aに対して1つ形成されている。突出部12aがこのように形成されていると、小型部品を軸線C方向のいずれの個所においてもほぼ均一な狭圧力で保持することができる。
【0047】
そして、この突出部12は、図2に明確に示されるように、その先端に向かって徐々に軸線長さが短く、換言すると、突出部12aの高さが低くなっている。すなわち、前記突出部12aにおける軸線C方向の両開口端面17a及び17aが弾性部材4の水平面に対して突出部12aの先端に向かって下方又は上方に傾斜している。前記突出部12aが両開口端面17a及び17aを有していると、小型部品の挿入時に、その前進方向における突出部12aの後方部19が小型部品に接触し、前方部18が小型部品に接触しないように、弾性変形しやすくなる。このときの開口端面17a及び17aの傾斜度は同一であるのが好ましく、この発明の目的をよく達成することができる範囲内において適宜の傾斜度に設定される。
【0048】
さらに、前記突出部12aは、内壁11aの端部すなわち、隣接する2つの内壁11a及び11b並びに内壁11a及び11dが交わる軸線Cに沿う側辺13a及び13bよりも内側から前記先細形状に突出している。換言すると、前記一対の突出側壁15a及び15aそれぞれは、側辺13a及び13bよりも内側から立ち上がっている。このように突出部12aが突出していると、前記突出部12aが容易に弾性変形するうえ、前記側辺13a及び13bに小型部品の側辺が接触することを防止できる。
【0049】
前記突出部12aは、図3及び図4に示されるように、内壁11aに垂直に交差し、軸線Cを含む仮想平面X(特に図3参照。)に対して実質的に鏡像関係にある突出側壁15a及び15aを有している。突出側壁15a及び15aは前記仮想平面Xに対して実質的に面対称であるということもできる。さらにいうと、前記仮想平面Xは、突出部12aにおける前記幅の中心を含む平面である。この突出側壁15a及び15aは、互いの鏡像関係によって、軸線Cに向かって徐々に突出部12aの幅が小さくなるような曲面をなしている。このように、突出部12aが鏡像関係にある突出側壁15a及び15aを有していると、突出部12aの弾性変形も前記仮想平面Xに対して実質的に鏡像関係になり、この発明の目的をよく達成することができる。
【0050】
前記突出部12は、図3及び図4に示されるように、内壁11及び軸線C方向に沿って延在する接触平面16aを先端部に有している。この接触平面16aは、突出部12aの先端面とも称することができ、前記内壁11aに実質的に平行であり、換言すると、相対向する突出部12cに形成された接触平面16cに対して実質的に平行に対面している。このように突出部12aの先端部に接触平面16aが形成されていると、小型部品の側面53に面接触して小型部品の保持状態を安定させると共に、小型部品の側面53が保持孔5の内壁11又は接触平面16aに対して傾斜した状態で小型部品が挿入又は保持されても、前記側面53と前記内壁11又は接触平面16aとが実質的に平行となるように、小型部品の保持姿勢を微調整又は修正することができる。したがって、この発明の目的をよく達成することができる限り、前記接触平面16aの表面積は限定されず、適宜の表面積に設定される。
【0051】
前記突出部12aは、この発明の目的をよく達成することができる範囲内において適宜の寸法に設定される。特に、前記突出部12aは、図3(b)に示されるように、その最大幅すなわち内壁11aに接続する部分の幅Lwと、内壁11aからの最大突出長さLpとが式:Lw≧Lpを満足しているのが好ましい。また、前記突出部12aは、図2に示されるように、前記弾性部材4の厚さtと、前記突出部12aにおける小型部品に接触する部分すなわち突出部12aの先端部、この突出部12aにおいては前記接触平面16aの軸線長さLaとが式:t≧Laを満足しているのが好ましい。なお、前記突出部12aは、前記最大突出長さLpと前記軸線長さLaとが式:La≧Lpを満足しているのが好ましい。前記突出部12aが少なくとも1つの前記式を満足していると、小型部品の挿脱時に、その前進方向における突出部12aの後方部19が小型部品に接触し、前方部18が小型部品に接触しないように、弾性変形することができる。
【0052】
さらに、突出部12aの突出長さLpは、前記式を満たしていればよいが、好ましくは、後述するように、突出長さLpは、互いに相対向する突出部12の最短距離、この例においては、前記接触平面16間の距離が保持する小型部品等のサイズ(幅)よりも短く、かつ、小型部品の保持孔5への挿脱時及び保持時に、小型部品の側辺51が内壁11aに接触しない程度に設定されるのが好ましい。具体的には、突出部12の前記最短距離は、小型部品等のサイズ(幅)に対して80〜95%の範囲内から、保持孔5の寸法及び小型部品の寸法等に応じて適宜に選択される。
【0053】
前記突出部12aは、小型部品を保持孔5に挿入する過程において、例えば図7に示されるように、小型部品用部材50の挿入方向Aにおける突出部12の後方部19が小型部品用部材50の側面53に接触し、その前方部18が小型部品用部材50の側面53に非接触となるように、弾性変形する。突出部12がこのように弾性変形すると、この発明の目的をよく達成できる。
【0054】
前記突出部12b、12c及び12dは、図1〜図4に示されているように、前記突出部12aと基本的に同様に形成されている。すなわち、互いに相対向する2組の突出部12a及び12c並びに突出部12b及び12dはそれぞれ、鏡像関係にあり、換言すると、軸線Cを含み互いに相対向する突出部12の距離が等しくなる平面に対して実質的に面対称となる。このように互いに相対向する突出部12が鏡像関係にあると、小型部品における互いに逆方向に向く側面をその両側から均一な圧力で挟圧することができる。
【0055】
このように、各内壁11に基本的に同様に形成された突出部12を有する保持孔5は、図3及び図4に示されるように、各内壁11の両端部それぞれに、すなわち、隣り合う突出部12の間に、前記突出部12が形成されていない平面部を有している。この平面部は、小型部品の保持孔5への挿脱時及び保持時に小型部品の側辺部に非接触となる非接触部と称することもできる。このように、内壁11が非接触部を有していると、前記したように、前記突出部12aが容易に弾性変形するうえ、前記側辺13a及び13bに小型部品の側辺が接触することを防止できる。
【0056】
前記保持孔5は、図3によく示されるように、実質的に回転対称になっている。具体的には、保持孔5は、実質的に2回回転対称及び実質的に4回回転対称になっている。保持孔5がこのように回転対称性を有していると、小型部品における互いに逆方向に向く側面だけでなく全側面を軸線方向に均一な圧力で挟圧することができる。その結果、保持孔5の中心軸Cとこの保持孔5に挿入された小型部品の中心軸とが一致するように、すなわち、保持孔5の中心軸Cを共有するように、小型部品を保持することができる。
【0057】
保持孔5は、図2に示されるように、弾性部材4に埋設された補強部材2の支持孔3と互いの中心軸Cを共有している。換言すると、補強部材2に穿孔されたある支持孔3を貫通するある保持孔5は、その中心軸Cがこの支持孔3の中心軸と一致する位置に形成されている。このように支持孔3と保持孔5とが互いの中心軸を共有するように補強部材2が弾性部材4に埋設されていると、突出部12それぞれが実質的に同様に弾性変形して、保持孔5に小型部品等を均一な状態で挿入することができ、挿入後の小型部品等を均一な狭圧力で保持することができる。
【0058】
保持孔5は、互いに相対向する内壁11a及び11c並びに11b及び11dの距離が、補強部材2に形成された支持孔3における互いに相対向する内壁の距離に対して、60〜80%であるのが、各突出部12が高度に同一に弾性変形することができる点で、好ましい。
【0059】
前記保持治具1は保持孔5で小型部品等を保持する。この保持治具1は、小型部品等の生産性及び小型部品等のサイズ等を考慮して、そのサイズが調整される。
【0060】
保持治具1は、例えば、以下のようにして製造される。まず、前記金属又は樹脂等で所望サイズの板状体を作成する。このようにして作製された板状体に、所定形状を有する多数の支持孔3を、研削、切削、やすり仕上げ等によって、碁盤目状に穿設して、補強部材2を作製する。このようにして作製された補強部材2は、弾性部材4との密着を高めるために、補強部材2の表面に接着剤又はプライマー等が塗布されてもよい。
【0061】
このようにして作製した補強部材2を収納可能なキャビティを有する金型を準備する。この金型の内表面は鏡面加工されていてもよい。次いで、補強部材2を前記金型に収納する。この金型に補強部材2を収納すると、弾性部材4が形成される部分に空間が形成される。次いで、この空間に弾性材料を注入して、弾性材料を成形する。弾性材料の成形方法は、特に限定されず、例えば、圧縮成形、射出成形、トランスファー成形等の成形方法を採用することができる。成形温度及び成形時間等は、使用する弾性材料が硬化する温度及び時間であればよく、弾性材料に応じて、任意に調整される。なお、弾性部材4の成形後に、弾性部材4の硬化を確実にするため、二次加熱又は熱処理等を行ってもよい。
【0062】
このようにして成形された成形体に例えば切削工具、カッター等で、埋設されている補強部材2の支持孔3を貫通するように保持孔5を穿孔する。このようにして、保持孔5が貫通形成された弾性部材4を備えて成る保持治具1を製造することができる。
【0063】
なお、成形された弾性部材4に成形バリが生じている場合には、成形バリを取り除くため、研削等の表面処理が行われてもよい。表面処理として、例えば、平面研削、フライス研削、ラッピング等が挙げられる。また、保持治具1における弾性部材4の表面を鏡面加工することもできる。
【0064】
保持治具1を製造する別の製造方法として、例えば、以下の方法が挙げられる。まず、補強部材2を収納可能なキャビティを有し、前記保持孔5を形成することのできる成形ピンを備えた金型を準備する。次いで、この金型に補強部材2を収納すると、補強部材2の各支持孔3を貫通するように成形ピンが配置されると共に弾性部材4が形成される部分に空間が形成される。その後、この間隙に弾性材料を注入して、前記製造方法と同様にして前記弾性材料を成形すると、保持孔5を有する弾性部材4が1工程で成形され、前記保持治具1を製造することができる。
【0065】
前記保持治具1は、前記したように、異サイズの小型部品であっても所望の保持姿勢で長期間にわたって保持することができると共に、小型部品の保持孔5への挿脱及び保持姿勢の微調整又は修正が容易で小型部品の取扱性にも優れるという効果を奏する。
【0066】
この発明に係る保持治具は、前記した実施例に限定されることはなく、本願発明の目的を達成することができる範囲において、種々の変更が可能である。
【0067】
すなわち、前記保持治具1は、前記内壁11と前記突出部12とを有して成る保持孔5が形成された弾性部材4を備えて成るが、この発明において、保持治具は、少なくとも2組の内壁と少なくとも2組の突出部とを有して成る保持孔が形成された弾性部材を備えていればよく、前記内壁及び突出部は、種々の変更が可能である。
【0068】
例えば、この発明において、突出部の突出側壁は、曲面である必要はなく、実質的に鏡像関係になくてもよく、また、内壁の両端部から突出していてもよい。また、この発明において、前記突出部は、先端部に接触平面を有していなくてもよく、その先端に向かって徐々に軸線長さが短くなるように開口端面を有していなくてもよい。さらにこの発明において、互いに相対向する突出部は鏡像関係を有していなくてもよい。さらにまた、この発明において、保持孔は、前記非接触部を有していなくてもよく、実質的に回転対称になっていなくてもよい。
【0069】
具体的には、この発明における保持孔の別の一例として、例えば、図6(a)に示される保持孔6が挙げられる。この保持孔6は、各突出部21の先端に接触平面16が形成されていないこと以外は、前記保持孔5と基本的に同様である。
【0070】
この発明における保持孔のまた別の一例として、例えば、図6(b)に示される保持孔7が挙げられる。この保持孔7は、突出側面24が平面で構成され、一定の割合で先端に向かって幅が小さくなる先細形状を有する突出部22が形成されていること以外は、前記保持孔5と基本的に同様である。
【0071】
この発明における保持孔のさらに別の一例として、例えば、図6(c)に示される保持孔8が挙げられる。この保持孔8は、突出側面25が平面で構成され、一定の割合で先端に向かって幅が小さくなる先細形状を有し、その先端に接触平面16を有していない突出部23が形成されていること以外は、前記保持孔5と基本的に同様である。
【0072】
前記保持治具1において、前記各内壁11で形成される保持孔5の輪郭形状は、補強部材2に形成された支持孔3の開口部形状と実質的に同一になっているが、この発明において、前記保持孔の輪郭形状は、前記支持孔の開口部形状と実質的に同一ではなく、異なる形状であってもよい。また、前記保持治具1において、前記保持孔5は、四角柱状に形成されているが、軸線C方向に水平な断面が2n角形(nは2以上の整数である。)である角柱状に形成されていてもよい。
【0073】
前記保持治具1において、前記保持孔5の前記非接触部は、その内壁の一部の平面部とされているが、この発明において、保持孔の非接触部は、保持孔の外側すなわち軸線Cから遠ざかる方向に向かってくぼんだ形状をしていてもよい。具体的な凹部形状は、例えば、略円形、楕円形、多角形等の形状が挙げられる。
【0074】
保持治具1においては、支持孔3及び保持孔5は何れも碁盤目状に配列されているが、この発明において、支持孔及び保持孔の配列は碁盤目状に限定されず、支持孔及び保持孔は、例えば、正六角形が最密に配置されるハニカム配列、45度回転して縦横に配列されるスクエア配列、一点から放射状とされる放射形状の配列、放射曲線形状の配列、同心円形状の配列、一点から渦巻き状とされる渦巻き形状の配列等に従って、配列されてもよい。
【0075】
また、保持治具1は、補強部材2が弾性部材4に埋設されているが、この発明において、保持治具は、弾性部材の平坦性を確保することができるのであれば、補強部材を備えていなくてもよい。
【0076】
さらに、補強部材2は、板状をなしているが、この発明において、補強部材は、枠体として、板状を囲繞するように厚さ方向に突出するフランジ部を備えていてもよい。補強部材がフランジ部を備えていると、補強部材2の強度が増強し、また、保持治具としたときの取扱性に優れる。
【0077】
次いで、この発明に係る小型部品の取扱方法について、前記保持治具1及び小型部品用部材50を用いた一例(この発明に係る一取扱方法と称することがある。)を説明する。
【0078】
保持治具1に小型部品用部材50を保持するには、図7(a)に示されるように、保持治具1上又は上方に小型部品用部材50を配置する。すなわち、小型部品用部材50の各側面53が保持孔5の各内壁11に実質的に平行となるように、小型部品用部材50を保持孔5の上、又は、保持孔5の軸線の延長線上に配置する。この配置工程は、例えば、保持治具1の保持孔5と同数の貫通孔が保持孔5と同じ間隔かつ同じパターンで穿孔された整列板(図7(a)において図示しない。)を準備し、保持孔5の中心軸Cと貫通孔の中心軸とが一致するようにこの整列板を保持治具1の上に重ね合わせ、次いで、整列板の貫通孔それぞれに小型部品用部材50を適宜の手段例えば振動等を加えて収納することにより、実施することができる。
【0079】
この発明に係る一取扱方法においては、次いで、配置した小型部品用部材50を保持孔5に向けて前進させて保持孔5に挿入する。小型部品用部材50を保持孔5に向けて前進させるには、前記整列板状に平坦な板状部材を載置して、前記のようにして貫通孔に収納された小型部品用部材50を保持治具1側(図中の矢印A方向)に均一に押圧する。
【0080】
このようにして小型部品用部材50を押圧すると、小型部品用部材50は同方向に前進して、まず、図7(b)に示されるように、小型部品用部材50の底面部が各突出部12の開口端面17に当接して、各突出部12を同方向に押圧する。そうすると、各突出部12は、その先端部例えば接触平面16近傍部分が小型部品用部材50による押圧力で押圧方向に弾性変形する。このときの突出部12の弾性変形は、図7(b)によく示されるように、補強部材2の近傍ではわずかに弾性変形する程度であるが、突出部12の先端に向かうに従って大きく弾性変形する。このとき、小型部品用部材50の各側辺部52(図7において図示しない。)は、保持孔5の突出部12及び内壁11には接触しない。
【0081】
さらに小型部品用部材50を同方向に押圧すると、図7(c)に示されるように、小型部品用部材50の底面部近傍が4つの突出部12で形成される空間に侵入し、小型部品用部材50の各側面53が各先端平面16に接触する。このとき、弾性部材4及び各突出部12は前記のように構成されているから、図7(c)に示されるように、各突出部12はその先端に向かうほど大きく弾性変形し、かつ、小型部品用部材50の前進方向Aにおける後方側ほど大きく弾性変形し、逆に、同方向の前方側ほど小さく弾性変形する。このように、保持孔5の輪郭すなわち前記内壁11近傍を大きく変形させることなく、突出部12が弾性変形する。その結果、各接触平面16は、図7(c)に示されるように、小型部品用部材50の各側面53、換言すると、各内壁11に対してある程度傾斜した状態、すなわち、互いに相対向する接触平面16が前記前進方向Aに沿って末広がりとなるように傾斜する。そうすると、小型部品用部材50は、その各側面53が、図7(c)に示されるように、小型部品用部材50の前進方向Aにおける各突出部12の後方部19に接触する一方、各突出部12の前進方向Aにおける前方部18には非接触しない状態を維持したまま、押圧され、前進する。
【0082】
引き続き小型部品用部材50を同方向に押圧して所定の挿入量まで保持孔5に挿入しても、図7(d)に示されるように、各突出部12と各側面53との前記接触状態は前記した状態を維持している。このようにして、小型部品用部材50の側面53すべてを突出部12すべてに前記の状態で接触させつつ、小型部品用部材50を保持孔5に挿入する。
【0083】
このような状態を維持したまま小型部品用部材50を保持孔5に挿入することができると、図7(b)〜図7(d)に示されるように、突出部12の前記後方部19のみが側面53と接触して互いに摺接して、小型部品用部材50と突出部12との摩擦抵抗が大幅に低減されて、小型部品用部材50を速やかかつ小さな押圧力で容易に保持孔5に挿入することができると共に、小型部品用部材50の挿入が繰り返されても接触平面16の削れ量を大幅に低減して突出部12の初期寸法を長期間維持することができる。同時に、前記後方部19のみが側面53と接触すると、その接触による摩擦抵抗を大幅に低減することができるから、小型部品用部材50の保持孔5への挿脱及び保持姿勢の微調整又は修正が容易になる。特に、各突出部12は接触平面16を有しているから、小型部品用部材50がわずかに変位して保持孔5に挿入されても、各側面53と接触平面16とが実質的に平行になるように、保持姿勢が修正される。
【0084】
また、小型部品用部材50の挿入において、小型部品用部材50の各側辺部52は、保持孔5の突出部12及び内壁11には接触していないから、保持孔5における角部近傍は損傷等することなく、さらに、前記のように、小型部品用部材50と突出部12との摩擦抵抗が大幅に低減されているから、小型部品用部材50の挿入を繰り返しても保持孔5は初期寸法を長期間維持することができると共に、小型部品の保持及びその後の各処理に大きな影響を与えるような削りカス等の異物が実質的に発生することもない。
【0085】
この発明に係る一取扱方法においては、小型部品用部材50の押圧を解除して、その前進を停止させる。そうすると、小型部品用部材50は各突出部12によって軸線Cに向かう圧縮力で挟圧保持される。
【0086】
この発明に係る一取扱方法においては、所望により、保持孔5に挿入された小型部品用部材50を前記押圧方向と逆方向に後退させる。これにより、小型部品用部材50の保持姿勢を微調整又は修正することができる。具体的には、保持孔5に保持された複数の小型部品用部材50における弾性部材5の表面からの突出量を一様に調整することができる。この調整工程は、例えば、前記板状部材を用いて小型部品用部材50を後退させることで、実施することができる。
【0087】
このようにして、図7(e)及び図8に示されるように、各突出部12の押圧力で小型部品用部材50を保持孔5に保持することができる。このとき、小型部品用部材50を保持孔5に挿入するときに、保持孔5の輪郭を大きく変形させることなく各突出部12特にその先端側が前記のように容易に弾性変形する。したがって、たとえ異なる寸法の小型部品用部材50であっても保持治具1の保持孔5に挿入し、保持することができる。
【0088】
その結果、保持孔5に保持された小型部品用部材50は、図8に示されるように、その中心軸と保持孔5の中心軸Cとが一致し、かつ、各側面53と内壁11又は接触平面16とが実質的に平行な保持状態に、保持される。
【0089】
この発明に係る一取扱方法においては、このようにして所望の保持姿勢で保持した小型部品用部材50に所定の処理、例えば、電極形成処理、洗浄処理、乾燥処理等を施す工程を実施することができる。例えば、小型部品用部材50の中心軸方向の両端面に電極が形成されてコンデンサチップが製造される。このとき、小型部品用部材50は所望の保持姿勢で保持されているから、前記所定の処理を均一かつ高精度に実施することができる。例えば、保持治具1に保持された小型部品用部材50に電極形成処理を施すと、所定寸法の電極を高精度かつ均一に形成することができ、目的とする小型部品である多数のコンデンサチップを製造することができる。
【0090】
このようにして、製造された小型部品を保持治具1から取り外すときには、小型部品をその軸線方向に押圧する。そうすると、例えば図7(d)に示されるように、各突出部12が押圧方向に前記したように弾性変形し、小型部品用部材50の挿入時と基本的に同様な接触状態になる。したがって、保持孔5から小型部品を取り外すときも、保持孔5に小型部品用部材を挿入するときと同様の効果を奏する。
【0091】
この発明に係る一取扱方法によれば、前記したように、異サイズの小型部品であっても保持孔5を実質的に損傷させることなく速やかに保持孔5に挿脱することができ、小型部品を所望の保持姿勢で保持することができる。
【実施例】
【0092】
(実施例1)
正方形に切り出したステンレス鋼(SUS304)に正方形の支持孔3を縦14列及び横14列のパターンで穿孔した。このようにして図5に示される補強部材2を作製した。
【0093】
次いで、補強部材2を収納可能なキャビティを有する金型を準備し、この金型に作製した補強部材2とシリコーンゴム組成物(信越化学工業株式会社製、商品名「KE−9510U」)を収納して、180℃で、5分間加熱し、補強部材2とシリコーンゴムとを一体成形した。
【0094】
次いで、後述する保持孔5を形成することのできる刃形状をした切削工具を用いて、前記シリコーンゴム組成物で成形された成形体を、埋設されている補強部材2の支持孔3を貫通し、かつ、この支持孔3と軸線を共有するように、穿孔して、保持孔5を形成した。このようにして保持治具Aを製造した。
【0095】
この保持治具Aにおける弾性部材4の前記破断時伸びは300%であった。この弾性部材4に形成された保持孔5は、前記最大幅Lwと前記最大突出長さLpとの比(Lw/Lp)が6.9、前記厚さtと前記軸線長さLaとの比(t≧La)が0.9、前記最大突出長さLpと前記軸線長さLaとの比(La/Lp)が4.8であった。また、相対向する突出部12の前記最短距離は後述するコンデンサチップ用部材50の幅に対して92%、保持孔5の内壁距離は支持孔3の内壁距離に対して70%であった。なお、補強部材2の厚さと弾性部材4の厚さとの比は4であった。
【0096】
(実施例2)
前記切削工具に代えて後述する保持孔5を形成することのできる刃形状をした切削工具を用いたこと以外は実施例1と同様にして保持治具Bを製造した。この保持治具Bにおいて、保持孔5は、前記最大幅Lwと前記最大突出長さLpとの比(Lw/Lp)が6.2、前記厚さtと前記軸線長さLaとの比(t≧La)が0.9、前記最大突出長さLpと前記軸線長さLaとの比(La/Lp)が4.4であった。また、相対向する突出部12の前記最短距離は後述するコンデンサチップ用部材50の幅に対して89%であった。
【0097】
(実施例3)
前記切削工具に代えて後述する保持孔5を形成することのできる刃形状をした切削工具を用いたこと以外は実施例1と同様にして保持治具Cを製造した。この保持治具Cにおいて、保持孔5は、前記最大幅Lwと前記最大突出長さLpとの比(Lw/Lp)が7.2、前記厚さtと前記軸線長さLaとの比(t≧La)が0.9、前記最大突出長さLpと前記軸線長さLaとの比(La/Lp)が5.4であった。また、相対向する突出部12の前記最短距離は後述するコンデンサチップ用部材50の幅に対して93%であった。
【0098】
(実施例4)
前記シリコーンゴム組成物(信越化学工業株式会社製、商品名「KE−9510U」)に代えてシリコーンゴム組成物(信越化学工業株式会社製、商品名「KE−1950−50」)を用いたこと以外は実施例1と同様にして保持治具Dを製造した。この保持治具Dにおける弾性部材4の前記破断時伸びは550%であった。
【0099】
(比較例1)
前記切削工具に代えて後述する正方形の保持孔を形成することのできる刃形状をした切削工具を用いたこと以外は実施例1と同様にして保持治具Eを製造した。この保持治具Eおける各保持孔は、弾性部材4における開口部形状及び弾性部材4の表面に平行な水平面で切断したときの断面形状が一辺1.15mmの正方形であった。
【0100】
このようにして製造した保持治具A〜E、並びに、底面及び上面が一辺1.25mmの正方形で軸線長さが2.0mmである50個のコンデンサチップ用部材50を用いて、各保持治具を評価した。
(保持するときの挿入容易性評価)
コンデンサチップ用部材50を各保持治具に保持させるときの、コンデンサチップ用部材50の操作性を評価した。具体的には、保持孔5に対応する貫通孔が保持孔5と同じ間隔かつ同じパターンで穿孔された整列板を準備し、保持孔5の中心軸Cと整列板における貫通孔の中心軸とが一致するようにこの整列板を各保持治具の上に重ね合わせた。次いで、整列板の貫通孔それぞれにコンデンサチップ用部材50を収納し、収納されたコンデンサチップ用部材50それぞれを、コンデンサチップ用部材50における上面の表面積よりも小さな表面積を有する棒状部材を用いて、0.01MPaの圧力で、保持治具1側に押圧した。このようにしてコンデンサチップ用部材50を保持孔に挿入し、その結果、互いの軸線がほぼ一致した状態で保持孔に挿入保持されたコンデンサチップ用部材50の合計数が45個以上であれば挿入容易性に極めて優れ、40個以上であれば挿入容易性に優れ、40個未満であれば挿入容易性に劣ると評価した。その結果、保持治具A〜Dはいずれも合計数が45個以上であり挿入容易性に極めて優れていたのに対して、保持治具Eは合計数が40個未満であり挿入容易性に劣っていた。
【0101】
なお、このようにしてコンデンサチップ用部材50を保持孔に挿入する際の保持孔の様子を確認したところ、保持治具A〜Dはいずれも、コンデンサチップ用部材50の挿入過程において、図7に示されるように、コンデンサチップ用部材50の挿入方向Aにおける突出部12の後方部19がコンデンサチップ用部材50の側面53に接触し、突出部12の前方部18がコンデンサチップ用部材50の側面53に非接触となるように、弾性変形していた。
【0102】
(保持姿勢の調整容易性)
コンデンサチップ用部材50を保持孔の軸線と一致しないように保持させた状態で、コンデンサチップ用部材50を挿入方向と逆方向及び挿入方向に垂直な方向に押圧した。その結果、保持治具A〜Dはいずれも、コンデンサチップ用部材50が保持孔と軸線を共有する所望の保持姿勢に容易に調整することができた。一方、保持治具Eは、前記方向に押圧しても、一旦保持されたコンデンサチップ用部材50の保持姿勢をほとんど再調整することができなかった。
【0103】
(取り外すときの容易性評価)
各保持治具に50個のコンデンサチップ用部材50を保持させた状態で、前記棒状部材を用いて、0.01MPaの圧力で、コンデンサチップ用部材50それぞれを押圧した。このとき、保持孔に保持されているコンデンサチップ用部材50のうち保持孔から取り外されたコンデンサチップ用部材50の合計数が45個以上であれば取り外し容易性に極めて優れ、40個以上であれば取り外し容易性に優れ、40個未満であれば取り外し容易性に劣ると評価した。その結果、保持治具A〜Dはいずれも合計数が45個以上であり取り外し容易性に極めて優れていたのに対して、保持治具Eは合計数が40個未満であり取り外し容易性に劣っていた。
【0104】
なお、このようにしてコンデンサチップ用部材50を保持孔から取り外す際の保持孔の様子を確認したところ、保持治具A〜Dはいずれも、コンデンサチップ用部材50の取り外し過程において、図7に示されるように、コンデンサチップ用部材50の取り外し方向Aにおける突出部12の後方部19がコンデンサチップ用部材50の側面53に接触し、突出部12の前方部18がコンデンサチップ用部材50の側面53に非接触となるように、弾性変形していた。
【0105】
(保持孔の破損評価及び異物付着性評価)
前記50個のコンデンサチップ用部材50の各保持治具への保持及び取り外し操作を連続して繰り返し100回にわたって行った後、保持孔における角部の損傷状態を目視で評価した。その結果、保持治具A〜Dは、ほとんどすべての保持孔において、その角部及び突出部に亀裂も欠落も生じなく、保持孔の損傷状態は極めて良好であり、当然に、50個のコンデンサチップ用部材50には弾性部材の破片が付着することもなかった。これに対して、保持治具Eはほとんどすべての保持孔において、少なくとも1つの角部又は突出部に亀裂又は欠落が生じ、その結果、複数のコンデンサチップ用部材50に弾性部材の破片が付着し、付着した破片を取り外すのに煩雑な作業を要した。
【0106】
(保持状態評価)
前記破損評価及び異物付着性評価において、前記50個のコンデンサチップ用部材50の各保持治具への保持及び取り外し操作を連続して繰り返し100回にわたって行った後、再度、前記保持するときの操作性評価及び保持状態評価と同様にして、50個のコンデンサチップ用部材50を各保持治具に保持させた。このとき、保持孔に保持されたコンデンサチップ用部材50と保持孔との軸線の一致度合いを目視により評価した。その結果、保持治具A〜Dは保持孔に保持されたコンデンサチップ用部材50の大部分が保持孔の軸線と高い精度で一致していたのに対して、保持治具Eは保持孔に保持されたコンデンサチップ用部材50の大部分が保持孔の軸線に対して傾斜した状態で保持された。
【0107】
(異サイズの小型部品を用いたときの各評価)
前記コンデンサチップ用部材50に代えて、コンデンサチップ用部材50よりも底面の一辺が3%長いコンデンサチップ用部材、及び、コンデンサチップ用部材50よりも底面の一辺が3%短い小さなコンデンサチップ用部材を用いて、前記評価と同様にして、各保持治具を評価した。その結果、前記コンデンサチップ用部材50を用いたときの評価結果とほぼ同様の傾向が得られた。したがって、保持治具A〜Dはいずれも、コンデンサチップ用部材のサイズが異なっても、保持するときの操作性評価、保持状態評価、取り外すときの操作性評価、保持孔の破損評価、異物付着性評価及び保持状態に優れていた。
【符号の説明】
【0108】
1 保持治具
2 補強部材
3 支持孔
4 弾性部材
5 保持孔
11、11a、11b、11c、11d 内壁
12、12a、12b、12c、12d 突出部
16、16a、16c 接触平面
17、17a,17a 開口端面
18 前方部
19 後方部
50 小型部品用部材
51 側辺
52 側辺部
53 側面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小型部品を保持する保持孔が形成された弾性部材を備えて成る小型部品の保持治具であって、
前記弾性部材は、200〜1000%の切断時伸び(JIS K6249:引張速度500mm/min)を有しており、
前記保持孔は、その軸線方向に沿って延在し、相対向する少なくとも2組の内壁と、
前記内壁それぞれから前記軸線に対して水平方向に向かって単一の先細形状となるように前記軸線に沿って突出する、互いに相対向する少なくとも2組の突出部とを有して成ることを特徴とする小型部品の保持治具。
【請求項2】
前記突出部は、前記内壁に垂直に交差し前記軸線を含む仮想平面に対して実質的に鏡像関係にある突出側壁を有して成ることを特徴とする請求項1に記載の小型部品の保持治具。
【請求項3】
前記突出側壁は、曲面又は平面であることを特徴とする請求項2に記載の小型部品の保持治具。
【請求項4】
前記突出部は、前記内壁及び前記軸線方向に沿って延在する接触平面を先端部に有して成ることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の小型部品の保持治具。
【請求項5】
前記突出部は、その先端に向かって徐々に軸線長さが短くなるように、開口端面を有して成ることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の小型部品の保持治具。
【請求項6】
前記突出部は、前記内壁からの最大突出長さLpと前記先細形状の最大幅Lwとが式:Lw≧Lpを満足することを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の小型部品の保持治具。
【請求項7】
前記突出部は、前記弾性部材の厚さtと、前記突出部における前記小型部品に接触する部分の軸線長さLaとが式:t≧Laを満足することを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の小型部品の保持治具。
【請求項8】
前記保持孔は、前記内壁の両端部それぞれに非接触部を有して成ることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の小型部品の保持治具。
【請求項9】
前記突出部は、前記小型部品を前記保持孔に挿入する過程において、前記小型部品の挿入方向における前記突出部の後方部が前記小型部品に接触し、前記突出部の前方部が前記小型部品に非接触となるように、弾性変形することを特徴とする請求項1〜8のいずれか1項に記載の小型部品の保持治具。
【請求項10】
請求項1〜9のいずれか1項に記載の保持治具に小型部品を保持させて取扱う方法であって、
前記小型部品を前記保持孔に向けて前進させて、前記小型部品の側面それぞれを、前記小型部品の前進方向における前記突出部それぞれの後方部に接触させ、前記突出部それぞれの前方部に非接触とさせた状態で、前記小型部品を前記保持孔に挿入する工程と、
を有することを特徴とする小型部品の取扱方法。
【請求項11】
保持した前記小型部品に所定の処理を施す工程を有することを特徴とする請求項10に記載の小型部品の取扱方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2010−287808(P2010−287808A)
【公開日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141878(P2009−141878)
【出願日】平成21年6月15日(2009.6.15)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【出願人】(000190116)信越ポリマー株式会社 (1,394)
【Fターム(参考)】