説明

小屋トラスおよび屋根構造

【課題】 予定する本数の上弦構成部材により所望形状を形成できるとともに、屋根表面を円滑な曲面に仕上げることのできる小屋トラスおよびこれを使用してなる屋根構造を提供する。
【解決手段】 小屋トラスの発明は、上弦構成部材1,2,3のそれぞれの外側表面に所定間隔で母屋係入部12,2,32を設け、該母屋係入部は、その設けられるべき位置によって深さを異ならせてなる構成とする。屋根構造の発明は、建物の棟方向に複数の上記小屋トラスTを整列させ、それぞれの小屋トラスの上弦構成部材に設けられた前記母屋係入部に母屋61,62,63を係入して設け、屋根外材を母屋の外側表面を経由する曲面に張設してなる構成とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トラスによって屋根を構成するいわゆる小屋トラスおよびこれを使用した屋根構造に関し、ボーストリングトラスおよびこれを使用する屋根構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的に屋根の重量を支えるための構造としては、小屋組と呼ばれる骨組が周知であり、この小屋組には和小屋のほかに、洋小屋と呼ばれるトラス状の骨組が存在することもまた周知である。しかしながら、近年では、予め工場生産(プレファブリケート)された組立部材(コンポーネント部材)を建設現場で組み、住宅等を築造する工法が提案されている(非特許文献1参照)。この種の住宅建設工法では、トラス状に構成した小屋トラスを使用し、屋根の形状に応じてハウトラスやボーストリングトラスなどが使用されており、かまぼこ型の屋根を構成するためには、専らボーストリングトラスが使用されていた。
【非特許文献1】http://www.jwtc.org/cost_effects.html
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来技術における小屋トラス、特に、ボーストリングトラスは、上弦材を長手方向に分割して複数の上弦構成部材を設け、これら上弦構成部材の長手方向を徐々に変化するように組み立てることで、上弦材の全体によって曲面を形成させていた。
【0004】
しかしながら、上弦材の屈曲率が大きい場合、すなわち、大きく湾曲した屋根を形成するときには、少ない上弦材構成部材により構成しようとすれば多角形に近い形状となるため、多くの分割点によって分割させた多数の上弦構成部材により構成させることが必要となるものであった。そこで、多数の上弦構成部材により小屋トラスを構成する場合には、それぞれの上弦構成部材を支持するために、当該上弦構成部材を束材に接合することが必要となるものであった。そこで、このような多数の束材を使用することは、小屋トラス全体の強度に合ったものである場合は格別、そうでなければ各部材の接合作業などが増大し、また、小屋トラスに必要な部材の数も増加し、小屋トラス全体の価格を上昇させる原因となっていた。
【0005】
また、直線状の上弦構成部材を使用するため、多数の部材に分割し、これを連結させて曲線的に構成させるとしても、これら各上弦構成部材では、やはり円滑な曲面を形成することはできないことから、屋根外材の張設によって屋根表面を円滑な曲面に仕上げることは難しかった。さらに、上弦構成部材の形状のみでボーストリングトラスを構成する場合、その設計段階では、曲面の屈曲率が異なれば上弦材の分割数が異なり、または、それぞれの上弦構成部材を連続させる際の角度が変更することとなるから、上弦構成部材を支持する束材の長さおよび角度が変更されるため、その束材に作用する荷重の計算および全体の強度計算が複雑となり、屋根形状を自由に設計することが難しかった。
【0006】
本発明は、上記諸点にかんがみてなされたものであって、その目的とするところは、予定する本数の上弦構成部材により所望形状を形成できるとともに、屋根表面を円滑な曲面に仕上げることのできる小屋トラスおよびこれを使用してなる屋根構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで、小屋トラスにかかる本発明は、上弦材を適宜長さに分割してなる上弦構成部材を束材によって下弦材に接合してなる小屋トラスにおいて、上記上弦構成部材のそれぞれの外側表面に所定間隔で母屋係入部を設け、該母屋係入部は、その設けられるべき位置によって深さを異ならせてなることを特徴とする小屋トラスを要旨とする。
【0008】
上記の構成によれば、上弦構成部材の外側表面に母屋を設けることができ、この母屋が係入されるべき状態に応じて、小屋トラスの外側形状が形成されることとなる。そして、母屋係入部の深さを変化させることにより、小屋トラスを構成する上弦材の外側表面とは異なる外形を形成することができるものである。また、母屋としては、長尺な断面四辺形の角材が使用されることから、小屋トラスを建物の棟方向に整列させた状態で当該母屋を架け渡すことにより、屋根の表面全体の形状を母屋によって成形することができる。
【0009】
また、小屋トラスにかかる本発明は、上弦材を適宜長さに分割してなる上弦構成部材を束材によって下弦材に接合してなる小屋トラスにおいて、上記上弦構成部材は、軒の出を有する二つの上弦両側構成部材と、この上弦両側構成部材の中間に配置される単一の上弦中間構成部材とで構成され、上記上弦両側構成部材および上弦中間構成部材の外側表面に所定間隔で母屋係入部を設け、該母屋係入部は、それぞれの上弦構成部材における長手方向のほぼ中央に位置するものを最も浅く構成し、両端に向けて徐々に深く構成してなることを特徴とする小屋トラスをも要旨としている。
【0010】
上記の構成によれば、アーチ型の屋根を形成する場合、上弦両側構成部材および上弦中間構成部材により外形を略台形状にしてなる小屋トラスを構成したうえで、さらに、母屋係入部に母屋を係入させることにより、小屋トラスの表面に多角形の仮想線を形成することができ、この仮想線に沿って屋根外材を張設することにより、アーチ状に近似する屋根を形成し、また、屋根外材を適度に湾曲することによりアーチ状の屋根を形成することが可能となる。そして、母屋係入部の深さを調整することにより、アーチ状の曲率を変化させることも可能であり、母屋係入部の数が多数であれば、弧状または曲線に限りなく近い仮想線を形成することができる。
【0011】
さらに、小屋トラスにかかる本発明は、上弦材を適宜長さに分割してなる上弦構成部材を束材によって下弦材に接合してなる小屋トラスにおいて、上記上弦構成部材は、軒の出を有する二つの上弦両側構成部材と、この上弦両側構成部材の中間に配置される複数の上弦中間構成部材とで構成され、上記上弦両側構成部材および上弦中間構成部材の外側表面に所定間隔で母屋係入部を設け、該母屋係入部は、それぞれの上弦材における長手方向両端付近に位置するものについては深く構成し、他に位置するものについては浅く構成してなることを特徴とする小屋トラスをも要旨とするものである。
【0012】
上記のような構成とすれば、アーチ状の屋根を構成する場合のように、屋根の表面が曲面であるのに対して上弦材が多角形状である場合、上弦構成部材の両端付近における屋根との間隙と、ほぼ中央における間隙とに差異が生じるが、母屋係入部の深さを変化させることにより、同じ大きさの母屋を係入させることにより、上記間隙の差異を限りなく解消することができる。従って、屋根外材を張設する際においても、母屋により当該屋根外材を均等に支持することができる。
【0013】
上記構成において、上弦材として、束材が接合される位置で分割された二つの上弦両側構成部材および複数の上弦中間構成部材で構成することができる。このような構成であれば、第一に、複数の上弦構成部材により、その外側表面を多角形とすることができ、曲面に近い形状とすることができる。第二に、これらの上弦材の母屋係入部に母屋を形成させることによって、上記多角形をさらに角の多い多角形とすることができる。また、数多くの上弦構成部材によりアーチ状の屋根を構成する場合には、上弦構成部材の外側表面と所望曲線との間において、当該上弦構成部材の中央付近で生じる間隙と、周辺付近で生じる間隙との差異が僅少となり、母屋係入部の深さの調整範囲を狭くすることができる。
【0014】
また、上記構成において、母屋係入部の構成について、それぞれの上弦構成部材の中央付近と両端付近とで異なる深さ方向に設けられた母屋係入部とすることができる。そして、好ましくは、前記上弦構成部材に沿って形成される屋根の面に対する垂線方向を深さ方向として設けられた母屋係入部とする。上記のような構成にすれば、母屋係入部に係入された母屋の外側表面を屋根外材に対して面接触させることができ、当該屋根外材の支持に好適な構成とすることができる。そして、屋根形状を曲面状とする場合においても、母屋に支持される局所部分を母屋の外側表面のほぼ全面に当接し得ることができ、屋根の支持状態を確実なものとすることができる。
【0015】
屋根構造にかかる本発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載の小屋トラスを使用してなる屋根構造であって、建物の棟方向に複数の上記小屋トラスを整列させ、それぞれの小屋トラスの上弦構成部材に設けられた前記母屋係入部に母屋を係入して設け、屋根外材を上記母屋の外側表面を経由する曲面に張設してなることを特徴とする屋根構造を要旨とする。
【0016】
上記構成によれば、同一の形状に加工された小屋トラスを建物の棟方向に整列させ、これらの小屋トラスの母屋係入部に母屋を係入しつつ架け渡すことにより、母屋の外側表面が屋根表面の角度変化を細分化し、曲面に近い仮想曲面を形成させることができる。従って、屋根外材を僅かに屈曲させつつ上記母屋に沿って張設することにより、円滑な屋根を構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、上弦構成部材の母屋係入部に母屋を係入することにより、上弦材よりも外側に母屋が存在することとなるから、この母屋の外側表面に従って屋根外材を設けることにより、不必要に多く分割することなく曲面を形成させることが可能となる。また、本発明の小屋トラスを建物の棟方向に整列させ、同じ位置に設けられる母屋係入部に長尺な母屋を係入させ、これらの母屋の表面に屋根外材を張設することにより、曲面の屋根構造を比較的容易に構成することができる。そして、予め定めた本数の上弦構成部材によりボーストリングトラスを構築する場合、母屋係入部の深さを変更することによって所望の曲面の屋根形状を実現できることから、設計段階においては、既に強度計算等がされた最適な数の上弦構成部材を使用し、かつ、母屋を所定の高さで支持できるように母屋係入部の深さを設計することで、改めて強度計算等を要することなく屋根形状の曲面を設計することができる。
【0018】
なお、単一の上弦中間構成部材を使用し、その両側に上弦両側構成部材を配置してなるボーストリングトラスにあっては、これら上弦材の全体構造は略台形状となるが、各上弦材のほぼ中央における母屋を浅く、両端付近における母屋を深く構成すれば、これにより支持される母屋の外側表面を順次連続する仮想線は、上記略台形に外接する略円弧状の曲線にすることができる。そこで、上記仮想線に沿って屋根外材を設けることにより、円滑な曲面の屋根形状を構築することが可能となる。
【0019】
そして、上弦両側構成部材と複数の上弦中間構成部材とで構成されるボーストリングトラスにあっては、既に強度計算がなされた数の上弦構成部材を使用し、各上弦構成部材の外側に設けるべき母屋の高さを調整できる母屋係入部を構成することにより、母屋の外側表面により円滑な仮想曲線を形成させることができる。このとき、母屋を設けるべき間隔が上弦構成部材の長さのピッチと一致しないことがあるため、各上弦構成部材を連結した状態において、母屋係入部を設けるべき位置に応じて母屋係入部の深さを調整すれば、所望の仮想曲線を形成することができる。
【0020】
また、上記小屋トラスを使用する屋根構造にかかる本発明によれば、建物の棟方向に整列されたそれぞれのトラスにおいて、上記所定の深さに設けられた母屋係入部に連続する長尺な母屋を架け渡すことにより、上弦材構成部材の外側に所定の高さの母屋を配置させることができ、この母屋に沿って屋根外材を張設することにより、円滑な曲面の屋根構造を実現させることが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。小屋トラスにかかる第一の実施形態は、図1に示すように、3本の上弦構成部材1,2,3により上弦材が構成されるボーストリングトラスである。これら上弦構成部材1,2,3は、下弦材4に立設される束材5によって支持されている。本実施形態では、上弦両側構成部材1,2は、ともに軒の出11,21を有するものであり、上弦中間構成部材3は、上記上弦両側構成部材1,2の中間に配置されるものである。いずれの上弦構成部材1,2,3も、相互に当接する端部は、束材5の上端に接合され、上弦中間構成部材3の両端が二つの束材5で支持されている。また、上弦構成部材1,2,3の端部は、長手方向に対して斜状に切断されており、この斜状端面を密着させるとき、各端面が所定角度(鉛直方向)となる状態で各上弦構成部材1,2,3が連続することとなる。
【0022】
図示のように、上弦構成部材1,2,3のみを連続される場合、上弦材の全体形状としては概略台形となっている。そこで、母屋を設けるための母屋係入部12,22,32が適宜間隔で設けられ、母屋を係入したときの外側表面により高さを変更し、上記略台形状を多角形状にしているのである。母屋係入部12,22,32は、いずれもボーストリングトラス(小屋トラス)Tを構築した場合の厚さ方向(小屋トラスTを組み立てたときの水平方向)に突っ切り加工されており、また、各母屋係入部12,22,32は全体的にほぼ等間隔で設けられている。
【0023】
これらの母屋係入部12,22,32は、図2(a)に示すように、それぞれの上弦構成部材1,2,3のほぼ中央に位置する母屋係入部12a,22a,32aが最も浅く、それぞれの周辺に向かって徐々に深くなるように構成されている。そこで、上弦両側構成部材1,2では、それらの上部が両端付近において斜状に切除されており、斜状に切除する前の高さよりも低い位置に設けられ、結果的に両端付近に設けられる母屋係入部12b,12c,22b,22cは、ほぼ中央の母屋係入部12a,22aよりも極端に深く構成されているのである。また、同様に、上弦中間構成部材3においても両端付近の上部は斜状に切断されており、両端付近の母屋係入部32b,32cが低位に設けられている。この上弦中間構成部材3においても、両端付近が最も深く構成されているのである。なお、本書において「母屋係入部が深く構成される」とは、このように低位に母屋係入部を設けた状態を含んだ意味である。
【0024】
各上弦構成部材1,2,3を上記のような構成にすれば、図2(b)に示すように、母屋61,62,63を各母屋係入部12,22,32に係入する場合、その母屋61,62,63の外側端部によって多角形を形成することとなり、これらを連続する仮想線Xは曲線に近似する線を描くこととなり、この仮想線Xに沿って屋根外材を設ければ、曲面の屋根表面を設けることが可能となる。このとき、屋根外材を適宜屈曲させることで当該仮想線Xに沿った円滑な曲面を構成し得ることとなる。なお、このような屋根外材は母屋61,62,63の外側端部(外側表面)と適宜当接できることから、屋根外材をそれぞれの母屋61,62,63に接合することができるのである。
【0025】
このように、屋根外材を母屋61,62,63に当接させながら接合するためには、母屋係入部12,22,32を設ける際の深さ寸法に注意をする必要がある。すなわち、母屋61,62,63としては、断面四辺形状の長尺な木製角材を使用することが予定されるが、この断面四辺形の一辺が母屋係入部12,22,32の底面に当接する状態で係入するとき、母屋61,62,63の外側表面の位置が確定するからである。
【0026】
そこで、本実施形態を設計する場合には、予定する屋根の形状(曲面)の設計図面と、上弦構成部材1,2,3を組み立てた状態の設計図面とを重ね合わせ、これに最適な母屋61,62,63の位置を所定の間隔で整列させ、さらに、その母屋61,62,63が係入される母屋係入部12,22,32の位置および深さを決定するのである。このとき、それぞれの上弦構成部材1,2,3の両端付近の上部が斜状に切除されている場合(図示の状態)は、当該上弦構成部材1,2,3の上部形状を考慮して母屋係入部12,22,32の位置および深さを決定することとなる。また、それぞれの上弦構成部材1,2,3の両端の上部が切除されていない場合(図2(a)における一点鎖線の状態)は、屋根外材の仮想線Xが上弦構成部材1,2,3に接触しないように、母屋係入部12,22,32の深さを決定するのである。なお、上弦構成部材1,2,3の両端付近が斜状に切除されていない場合、屋根の所望形状等の各条件に応じて両端付近の上部を切除するような設計とする必要もあり得る。これと同時に、使用する母屋61,62,63の高さ寸法についても考慮する必要がある。
【0027】
また、母屋係入部12,22,32の切り込み方向(深さ方向)についても注意する必要がある。すなわち、角材の母屋61,62,63を使用する場合、その外側端部(外側表面)が屋根外材の内側表面に当接するためには、母屋61,62,63の当該表面が、屋根外材の曲面に接することが好適となるからである。そこで、母屋係入部12,22,32の切り込み方向は、所望形状の屋根外材の仮想線Xに対して垂線方向とするのである。このように、仮想線Xに対して垂線方向に切り込まれた母屋係入部12,22,32に、角材の母屋61,62,63を係入するとき、当該母屋61,62,63の外側表面は上記仮想線Xの接線方向に一致し、屋根外材の内側表面に当接することができるのである。なお、このような母屋係入部12,22,32の係入方向は、上弦構成部材1,2,3の個々について観察するとき、中央付近と両端付近とで異なっており、このような係入方向に合致するように、中央付近と両端付近との切り込み方向(深さ方向)を異ならせる構成とするのである。
【0028】
上記のような実施形態を使用する場合には、図3に示すように、建物の妻方向に分かれて立設される一対の柱71a,71b,・・・,72a,72b,・・・を予め立設し、各柱の棟方向上端には二本の桁81,82が設けられ、両方の桁81,82の両端には梁91,92が設けられる。そして、これらの桁81,82または梁91,92の上部にボーストリングトラス(屋根トラス)Ta,Tb,・・・が設置されるのである。すなわち、梁91,92が設けられる位置においては、その上にボーストリングトラス(小屋トラス)Taが載置され、梁91,92が設けられていない位置においては桁81,82に架け渡されるように、適宜間隔でボーストリングトラス(小屋トラス)Tb,Tc,・・・が設置されるものである。このとき、上記柱71b,71c,・・・,72b,72c・・・が、それぞれ対になって建物の棟方向に所定間隔で立設されており、これら一対の柱の間隔に合わせて本実施形態のボーストリングトラス(小屋トラス)Tb,Tc,・・・を桁81,82の上に設置することにより、当該ボーストリングトラス(屋根トラス)Tb,Tc,・・・の重量を柱71b,71c,・・・,72b,72c・・・により支持させるのである。それぞれのボーストリングトラス(小屋トラス)Ta,Tb,Tc,・・・は、いずれも同寸に構成され、母屋係入部12,22,32も同一の状態(位置、深さおよび切り込み方向)によって構成されたものが使用されている。このように、所定の範囲においてボーストリングトラス(小屋トラス)Ta,Tb,Tc,・・・を設置した状態が図3に示されている。この状態において、各ボーストリングトラス(小屋トラス)Ta,Tb,Tc,・・・に設けられた母屋係入部12,22,32は、それぞれ同じ高さおよび同様の位置となっていることから、母屋係入部12,22,32が棟方向に平行な状態で断続的に存在することとなるのである。
【0029】
上記に引き続き、図4に示すように、上記の母屋係入部12,22,32(図3)のそれぞれに母屋61,62,63を装着することによって、屋根構造の基本骨格が形成されるのである。図示のように、母屋61,62,63は、棟方向に連続する長尺な部材であり、上記のように棟方向に整列されたボーストリングトラス(小屋トラス)Ta,Tb,Tc,・・・の全体にわたって同時に係入される。従って、母屋61,62,63の外側端部によって、曲面を呈する屋根の概略形状が形成されることとなるのである。そして、このように形成された屋根構造の基本骨格に屋根外材が設けられることによって屋根構造が構成されるのである。このようにして構成されたものが、屋根構造にかかる発明の第一の実施形態である。
【0030】
上記のように、本実施形態によれば、屋根構造を構成するボーストリングトラス(小屋トラス)Tは、設計段階により算出された母屋係入部12,22,32を工場生産時に形成(プレファブリケート)することができ、コンポーネント部材として使用することができる。また、棟方向に整列されるそれぞれのボーストリングトラス(小屋トラス)Ta,Tb,Tc,・・・に共通の母屋61,62,63が架け渡されることから、屋根全体を均一な曲面の骨格を形成させることができるので、所望形状の屋根を構築することが容易となる。
【0031】
次に、小屋トラスにかかる第二の実施形態について説明する。本実施形態は、図5に示すように、上弦材を上弦両側構成部材101,102と、複数の上弦中間構成部材103a,103b,103c,103dとで構成したボーストリングトラスである。これらの上弦構成部材101,102,103a〜103dは、第一の実施形態と同様に下弦材104から立設される束材105によって支持されるものである。
【0032】
本実施形態は、6個に分割された上弦構成部材101〜103dによって曲面が構成される構造であるため、各上弦構成部材101〜103dが相互に連結されるべき部分151,・・・155には、それぞれ束材105の上端が接合できるように構成され、この束材105は相隣接する両側の上弦構成材を同時に接合し、支持するように配置されている。なお、上弦両側構成部材101,102の先端には、軒の出111,121が形成されている。
【0033】
本実施形態においても、各上弦構成部材101〜103dの上部には母屋係入部112,122,132a〜132dが設けられている。ここで、母屋係入部112〜132dについては、基本的には、第一の実施形態と同様である。ただし、必ずしもほぼ中央および両端付近に区分できるような位置に形成されてはいないものが含まれる場合がある。
【0034】
すなわち、図6に示すように、かまぼこ型の屋根を設けるために湾曲した仮想曲線Yを想定すると、それぞれの上弦構成部材101〜103dの両端が最も所望曲線Yに接近し、各上弦構成部材101〜103dのほぼ中央部分が所望曲線Yから離れて隙間を生じることは、第一の実施形態と同様である。従って、各上弦構成部材101〜103dの中央付近および両端付近の双方に母屋係入部が設けられる場合には、ほぼ中央のものが最も浅く両端付近のものが深く構成されるのが基本的な構成である。しかしながら、多数の上弦構成部材101〜103dで構成される本実施形態では、個々の上弦材101〜103dは比較的短く構成されることとなるため、母屋係入部112〜132dを等間隔に構成する場合、各上弦構成部材101〜103dの個々において、必ずしも中央および両端付近に母屋係入部112〜132dを設けなければならないものではないからである。なお、上弦構成部材101〜103dの個々において複数の母屋係入部112〜132dが設けられる場合には、両側に近い母屋係入部が他の母屋係入部よりも当然に深く構成されることは当然である。
【0035】
本実施形態を使用する場合は、第一の実施形態と同様であり、建物の妻方向に分けて構成された一対の柱にボーストリングトラス(小屋トラス)の両端を支持させるとともに、これを棟方向に整列させ、さらに、母屋を母屋係入部に装着することによって屋根構造の基本骨格を形成し、その後に屋根外材を張設することで屋根構造が構成されるものである。このようにして構成されたものが、屋根構造にかかる発明の第二の実施形態である。
【0036】
本発明の実施形態は上記のとおりであるが、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の形態を取ることは可能である。例えば、第一の実施形態では、上弦材を三つの上弦構成部材1,2,3で構成し、第二の実施形態では六つの上弦構成部材101〜103dで構成したものを例示して示したが、これらの数に限定されるものではなく、その他の数により構成することが可能である。この場合、ボーストリングトラス(小屋トラス)の中央に位置する上弦構成部材3が、長手方向を水平とする場合は第一の実施形態が参考となり、逆に中央に連結部分153が位置する場合は第二の実施形態が参考となる。
【0037】
また、第一の実施形態では、軒の出11,12の構成として当該軒の出11,12を含む上弦構成部材1,2は、上部の面を斜状に切除した構成とし、第二の実施形態では、上弦構成部材101,102の下部の面を切除した構成としているが、所望の曲面における曲率の大小により、いずれを採用することも可能である。
【0038】
さらに、母屋係入部の形状、大きさおよび数については、屋根の大きさや曲線の種類により適宜変更することができる。また、屋根形状の所望曲面が建物全体で同一である必要はなく、ボーストリングトラス(小屋トラス)が棟方向に整列される範囲でのみ曲面の屋根が構成されるから、このボーストリングトラス(小屋トラス)を所望範囲に整列させ、その他を直線的な形状の屋根とすることができることはもちろんのこと、所定の範囲におけるボーストリングトラス(小屋トラス)の曲率と、他の範囲におけるボーストリングトラス(小屋トラス)の曲率とを異ならせてなる複合的な曲面を構成させることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0039】
【図1】小屋トラスの第一の実施形態を示す斜視図である。
【図2】第一の実施形態の詳細を示す説明図である。
【図3】第一の実施形態の使用形態を示す説明図である。
【図4】屋根構造の実施形態を示す説明図である。
【図5】小屋トラスの第二の実施形態を示す斜視図である。
【図6】第二の実施形態の詳細を示す説明図である。
【符号の説明】
【0040】
1,2,101,102 上弦両側構成部材
3,103a,103b,103c,103d 上弦中間構成部材
4,104 下弦材
5,105 束材
11,12,111,112 軒の出
12,22,32,112,122,132a,132b,132c,132d 母屋係入部
61,62,63 母屋
X,Y 仮想曲線
T,Ta,Tb,Tc ボーストリングトラス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上弦材を適宜長さに分割してなる上弦構成部材を束材によって下弦材に接合してなる小屋トラスにおいて、上記上弦構成部材のそれぞれの外側表面に所定間隔で母屋係入部を設け、該母屋係入部は、その設けられるべき位置によって深さを異ならせてなることを特徴とする小屋トラス。
【請求項2】
上弦材を適宜長さに分割してなる上弦構成部材を束材によって下弦材に接合してなる小屋トラスにおいて、上記上弦構成部材は、軒の出を有する二つの上弦両側構成部材と、この上弦両側構成部材の中間に配置される単一の上弦中間構成部材とで構成され、上記上弦両側構成部材および上弦中間構成部材の外側表面に所定間隔で母屋係入部を設け、該母屋係入部は、それぞれの上弦構成部材における長手方向のほぼ中央に位置するものを最も浅く構成し、両端に向けて徐々に深く構成してなることを特徴とする小屋トラス。
【請求項3】
上弦材を適宜長さに分割してなる上弦構成部材を束材によって下弦材に接合してなる小屋トラスにおいて、上記上弦構成部材は、軒の出を有する二つの上弦両側構成部材と、この上弦両側構成部材の中間に配置される複数の上弦中間構成部材とで構成され、上記上弦両側構成部材および上弦中間構成部材の外側表面に所定間隔で母屋係入部を設け、該母屋係入部は、それぞれの上弦材における長手方向両端付近に位置するものについては深く構成し、他に位置するものについては浅く構成してなることを特徴とする小屋トラス。
【請求項4】
前記上弦材は、束材が接合される位置で分割された二つの上弦両側構成部材および複数の上弦中間構成部材で構成されてなる請求項3記載の小屋トラス。
【請求項5】
前記母屋係入部は、それぞれの上弦構成部材の中央付近と両端付近とで異なる深さ方向に設けられた母屋係入部である請求項1ないし4のいずれかに記載の小屋トラス。
【請求項6】
前記母屋係入部は、前記上弦構成部材に沿って形成される屋根の面に対する垂線方向を深さ方向として設けられた母屋係入部である請求項1ないし4のいずれかに記載の小屋トラス。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の小屋トラスを使用してなる屋根構造であって、建物の棟方向に複数の上記小屋トラスを整列させ、それぞれの小屋トラスの上弦構成部材に設けられた前記母屋係入部に母屋を係入して設け、屋根外材を上記母屋の外側表面を経由する曲面に張設してなることを特徴とする屋根構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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