説明

小屋裏界壁構造

【目的】 簡単な構造で、かつ、製作や取り付けが容易となるとともに、充分な耐火性能を有する小屋裏界壁構造を提供する。
【構成】 ユニット式建物1は、上階建物ユニット4にパネル取付具5を介して取付けた屋根パネル6等を備え、上階建物ユニット4と屋根パネル6とで小屋裏7を形成し、小屋裏7は、界壁パネル8で仕切る。さらに、外壁10の上端面10Aを屋根パネル6の裏面まで延ばして、一般的な外壁9を使用した際に生ずる外壁9の上端面9Aと屋根パネル6の裏面との隙間を、前記延ばした部分で塞いだ小屋裏界壁構造とする。外壁10の上端部を延ばせば屋根パネル6と外壁10の隙間がなくなるので、簡単な構造で小屋裏を耐火構造とできる。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は小屋裏界壁構造に係り、特に建物ユニットと屋根パネルとにより形成された空間を小屋裏とするとともに、この小屋裏を界壁で仕切り、小屋裏を耐火構造とする際に利用できる。
【0002】
【背景技術】共同住宅とされた住宅等のユニット式建物では、法律上、各住居を耐火構造とすることが義務づけられている。従って、各住居を仕切る界壁も耐火構造とされている。ここで、ユニット式建物において小屋裏が形成されている場合、各小屋裏を仕切る界壁もまた、耐火構造とされなければならない。しかし、小屋裏を仕切る界壁が耐火構造とされていても、火災時に、その界壁の軒側から火が回り込む虞がある。そのため、軒裏についても耐火構造が要求される。このような建物ユニットの小屋裏界壁構造の一例としては、特開平2−272123号公報が挙げられる。この公報に示された技術によれば、小屋裏を仕切る界壁パネルの軒側の延長線上に、軒先用界壁パネルを取り付け、両界壁パネルによって小屋裏が仕切られた小屋裏界壁構造とされている。
【0003】
【発明が解決しようとする課題】しかし、前述の小屋裏界壁構造においては、小屋裏用の界壁の外、軒裏用の界壁も必要である。そのため、構造が複雑となるとともに、製作や取り付けに多くの手間がかかるという問題があった。また、小屋裏用の界壁と軒裏用の界壁との連続性の確保が難しく、従って、耐火性能が充分ではないという問題もあった。
【0004】ここに、本発明の目的は、簡単な構造で、かつ、製作や取り付けが容易となるとともに、充分な耐火性能を有する小屋裏界壁構造を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】そこで本発明は、外壁を備えた建物ユニットとこの建物ユニットの上に取り付けられた屋根パネルとの空間が小屋裏に形成されるとともに、この小屋裏が界壁パネルによって仕切られた小屋裏界壁構造において、前記外壁の上端面と屋根パネル裏面との隙間を前記界壁パネルを挟んで両妻側間における所定範囲にわたって耐火材で塞いだ小屋裏界壁構造としたものである。
【0006】
【作用】このような本発明では、小屋裏を界壁パネルによって仕切るとともに、外壁の上端面と屋根パネル裏面との隙間を、界壁パネルを挟んで両妻側間における所定範囲にわたって耐火材で塞いで小屋裏界壁構造とする。外壁の上端面と屋根パネル裏面との隙間を耐火材で塞ぐだけでよいので、軒裏用界壁パネルが不要となるとともに、構造も簡単となり、かつ、製作や取り付けが容易となり、これらにより前記目的が達成される。
【0007】
【実施例】以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。図1には、界壁により仕切られた小屋裏を有するユニット式建物の全体が示されている。同図において、住宅等のユニット式建物1は、基礎2の上に据付けられた複数の下階建物ユニット3と、この下階建物ユニット3の上に組立てられた上階建物ユニット4と、この上階建物ユニット4にパネル取付具5を介して取付けられた屋根パネル6等により構成されている。そして、上階建物ユニット4と屋根パネル6とで形成される空間が小屋裏7とされており、この小屋裏7は、界壁パネル8によって仕切られている。
【0008】図2,3には、本発明の第1実施例に係る小屋裏界壁構造が示されている。これらの図において、本実施例の小屋裏界壁構造は、外壁10の上端面10A を屋根パネル6の裏面まで延ばして、一般的な外壁を使用した際に生ずる外壁の上端部と屋根パネル6の裏面との隙間を、前記延ばした部分で塞いだ構造とされている。
【0009】すなわち、上階建物ユニット4の骨組みを構成する複数本の柱11の上端間同士を結合する天井梁12の上には、複数個のパネル支持具5が固定されており、この支持具5に支持されて屋根パネル6が取り付けられている。この屋根パネル6は、図3に示すように、複数本の、例えば、溝型形状の芯材21等により構築された枠体に、その表面には屋根材22を、裏面には、例えば、石膏ボード等の耐火面材23をそれぞれ貼付けて形成されている。そして、パネル支持具5と図示しない束等により建物ユニット4に取付けられる。
【0010】一方、図示しない取付具により天井梁12に取り付けられた外壁10は、その上端部が天井梁12の上端面高さより上方に突出して、かつ、ユニット式建物1の両妻側間にわたって連続して設けられている。この外壁10の上端面10A は、屋根パネル6の取付け傾斜と略等しい傾斜に形成され、屋根パネル6と当接可能とされている。従って、隣合うパネル支持具5の妻側間における隙間は、連続する外壁10の上端部によって塞がれるようになっている。また、上階建物ユニット4の天井梁12の上面は、例えば、石膏ボード等の耐火面材13で覆われている。なお、建物ユニットにおいて一般的な外壁9は、その上端面9Aが図2中2点鎖線で示すように、天井梁12の上端面と略同一高さとなるように取り付けられている。
【0011】前記界壁パネル8は、図示しない芯材の両面に、例えば、石膏ボード等の耐火面材を貼付けて略逆ホームベース状に形成されており、底辺は天井梁12上面の耐火面材13に当接するとともに、左右の傾斜部は、屋根パネル6の裏面に当接し、かつ、両端部は外壁10の上端部の内側面に当接するようになっている。
【0012】従って、小屋裏7は、耐火面材13と外壁10と屋根パネル6の裏面の耐火面材23と界壁パネル8とによって囲まれた耐火空間とされている。
【0013】このような小屋裏耐火構造とするには、まず、通常の外壁が取り付けられた建物ユニット3や、外壁10およびパネル支持具5が取付けられた建物ユニット4等を建築現場で組み合わせた後、屋根パネル6を、パネル支持具5および束等を介して建物ユニット4に取付ける。次いで、界壁パネル8で小屋裏7を所定の区画に仕切り、耐火構造とされた小屋裏7を有するユニット式建物1を建てる。
【0014】このような小屋裏界壁構造によれば、外壁10の上端部が天井梁12の高さより上方に突出して、かつ、両妻側間にわたって連続して形成されているので、屋根パネル6の裏面と、一般的な建物ユニットにおける外壁の上端部との間に形成される隙間が塞がれる。従って、火災時に、隣の小屋裏7から外壁の上端部の隙間、および、軒先を通って火が侵入することがなく、軒裏用界壁パネルが不要となるとともに、簡単な構造で充分な耐火性能を有する耐火構造となった。
【0015】また、天井梁12の上面は耐火面材13で覆われ、屋根パネル6の裏面にも耐火面材23が貼付けられており、このような小屋裏7が、耐火構造とされた界壁パネル8によって仕切られているので、小屋裏7を、耐火材で囲まれた耐火空間とすることができる。
【0016】さらに、上端部を延ばして製作した外壁10を建物ユニットに取り付け、建築現場では屋根パネル6を取り付けるとともに、界壁パネル8を取り付けるだけでよいので、作業性が向上する。
【0017】また、屋根パネル6の裏面には耐火面材23が貼付けられているので、この耐火面材23と当接する外壁10の上端面10A は、芯材21の間隔毎に凹凸形状としなくてもよく、軒側には傾斜して形成されるが、妻側には連続して形成すればよいので、外壁10の製作が比較的容易である。
【0018】図4には、本発明の第2実施例に係る小屋裏界壁構造が示されている。以下、図4において前記第1実施例と同一部材には同一符号を付すとともに、その説明は省略または簡略化する。本実施例は、パネル取付具5の幅方向(軒方向)両側を、例えば、石綿セメント珪酸カルシウム板(ケイカル板)等の耐火材31で挟み込み、それによって、外壁30と屋根パネル6との隙間を塞ぐ小屋裏界壁構造としたものである。
【0019】すなわち、本実施例では、外壁9の上端面9Aが一般的な建物ユニットと同様に、天井梁12の上端面と略同一高さに位置して取り付けられている。一方、耐火材31は、前側部材31A と後側部材31B とで構成されており、前側部材31A は、天井梁12の上に固着されたパネル支持具5の上下のフランジ部を塞いで設けられ、後側部材31B は、パネル支持具5のウエブ裏側に固着されている。そして、両部材31A ,31B は、妻側間において図示しない妻側パネルと界壁パネル8間、および各界壁パネル8間にわたって連続するように形成されている。
【0020】このような小屋裏耐火構造とするには、耐火材31を固着したパネル支持具5を取付けた建物ユニット4等を建築現場で組み合わせた後、屋根パネル6を、建物ユニット4に取付ける。次いで、界壁パネル8で小屋裏7を所定の区画に仕切り、耐火構造とされた小屋裏7を有するユニット式建物1を建てる。
【0021】このような本実施例でも、前記第1実施例と同様の効果を奏する他、パネル支持具5の前後に耐火面材31を固着すればよいので、構造が簡単である。また、耐火面材31は板状部材なので、取扱いが容易であり、作業能率が向上するという効果を付加できる。
【0022】図5,6には、本発明の第3実施例に係る小屋裏界壁構造が示されている。以下、図5,6において前記各実施例と同一部材には同一符号を付すとともに、その説明は省略または簡略化する。本実施例では、外壁9の上端部と屋根パネル6との隙間を、軟質の耐火材40で塞いだ小屋裏界壁構造としたものである。
【0023】すなわち、外壁9と略同一の幅とされた軟質の耐火材40は、一側面がパネル支持具5のウエブ裏側に接触されるとともに、底面とそれに続く他の側面が、収容具41に固着されており、この収容具41が例えば釘等によって外壁9に固着されるようになっている。耐火材40の上面は屋根パネル6によって圧縮されるようになっており、このような耐火材40は、図6に示すように、ユニット式建物1の妻側において、界壁パネル8を挟んで所定区間Lにわたって設けられている。なお、この所定区間Lは、火災時に隣りの小屋裏7に火が届かない距離である。
【0024】このような本実施例では、前述の各実施例と同様の作用効果を奏する他、軟質の耐火材40を使用したので、取扱いが容易であり、また、耐火材40を所定区間Lにわたって設ければよく、妻側間において全長にわたって設けなくてもよいので、材料の無駄使いがないという効果を付加できる。
【0025】なお、本発明は前述の各実施例に限定されるものではなく、次に示すような変形例を含むものである。すなわち、前記第1実施例では、外壁10の上端面10A は天井梁12より上方に延してあるが、これに限らず、例えば、外壁10の上端面10A を一般の建物ユニットと同様に、天井梁12の高さと略同様の高さとし、それによって生じた屋根パネル6の裏面との隙間に、外壁10に連続するピース材を取付けるようにしてもよい。そして、このピース材は、工場または建築現場で外壁10に結合すればよく、建築現場で結合する際は、建物ユニット4を吊り上げる前、あるいは吊り上げて降ろした後のいずれの場合でもかまわない。
【0026】また、前記第1実施例では、上端面10A が天井梁12より上方に位置する外壁10は、妻側間に連続するものとしたが、これに限らず、外壁10の上端面10A は、火災時に火が隣の小屋裏7に侵入しないような所定間にわたって天井梁12より上方に位置しておればよい。
【0027】また、前記第2実施例では、耐火面材31をパネル支持具5の前後に一枚ずつ固着してあるが、要は、外壁9の上端部と屋根パネル6の裏面との隙間を塞げればよく、例えば、パネル支持具5の前後どちらかに、充分な耐火性能を有する厚さの板状部材を一枚固着してもよい。このような実施例では、前記各実施例と同様の効果の他、耐火面材を一枚固着すれはよいので、構造が簡単であり、作業が楽であるという効果を付加できる。
【0028】さらに、前記各実施例では、外壁10,9と屋根パネル6との隙間を耐火材で塞ぐのに、パネル支持具5とは別個に、外壁10やパネル支持具5の前後の耐火材31、あるいは、軟質の耐火材40等を使用しているが、これに限らず、例えば、図7に示すような耐火材を使用してもよい。すなわち、本実施例では、パネル支持具と耐火材とを一つの部材で兼用させたものであり、耐火材である耐火パネル支持具50は、前記各実施例のパネル支持具5の断面形状と同一の断面形状とされているが、妻側間にわたって連続して形成されている。そして、この耐火パネル支持具50は、高温における強度が従来の一般構造用鋼材と比較して高く、長期許容耐力を有する建築構造用耐火鋼材(FR鋼)が使用されており、このFR鋼を耐火塗料で被覆して形成されている。このような本実施例では、前記各実施例と同様の効果の他、パネル支持具と耐火材とを一つの部材で兼用させてあるので、構造が簡単となり、取付け作業も容易であるという効果を付加できる。
【0029】また、前記各実施例では、屋根パネル6の裏面に耐火面材23が貼付けられているものとしたが、本発明は、耐火面材23が貼付けられていない屋根パネルにも利用できるものである。その場合、屋根パネルの登り梁21と屋根材22とに当接する各実施例における外壁10、耐火材31、軟質の耐火材40および耐火パネル支持具50の上面は、登り梁21と屋根材22とに当接可能に、凹凸形状に形成すればよい。
【0030】その他、本発明の実施の際の具体的な構造および形状等は、本発明の目的を達成できる範囲であれば他の構造等でもよい。
【0031】
【発明の効果】以上に説明したように、本発明の小屋裏界壁構造によれば、簡単な構造で、かつ、製作や取り付けが容易となるとともに、充分な耐火性能を有するという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の実施例に係る小屋裏界壁構造により形成された小屋裏を含むユニット式建物を示す全体正面図である。
【図2】本発明の第1実施例に係る小屋裏界壁構造の要部を示し、図1におけるA部詳細図である。
【図3】ユニット式建物の小屋裏近傍を示す斜視図である。
【図4】本発明の第2実施例に係る小屋裏界壁構造の要部を示し、図1におけるA部詳細図である。
【図5】本発明の第3実施例に係る小屋裏界壁構造の要部を示し、図1におけるA部詳細図である。
【図6】図5におけるVI矢視図である。
【図7】本発明の変形例を示す小屋裏近傍の斜視図である。
【符号の説明】
1 ユニット式建物
5 パネル支持具
6 屋根パネル
7 小屋裏
8 界壁パネル
9,10 外壁
12 天井材
13,23 耐火面材
31 耐火材
40 軟質の耐火材
50 耐火パネル支持具50

【特許請求の範囲】
【請求項1】 外壁を備えた建物ユニットとこの建物ユニットの上に取り付けられた屋根パネルとの空間が小屋裏に形成されるとともに、この小屋裏が界壁パネルによって仕切られた小屋裏界壁構造において、前記外壁の上端面と屋根パネル裏面との隙間を前記界壁パネルを挟んで両妻側間における所定範囲にわたって耐火材で塞いだことを特徴とする小屋裏界壁構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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