説明

尿中バイオマーカ測定方法及び測定システム

【課題】尿中に含まれるバイオマーカの量的変化を経時的に連続して測定する。
【解決手段】試薬を供給する試薬供給源と、尿道から連続的に尿を採取するための尿道カテーテル61と、試薬供給源10の試薬中の第1のモノクローナル抗体11及び第2のモノクローナル抗体13と、尿道カテーテル61を介して採取した尿中のバイオマーカ19との抗原抗体反応を行うための反応回路20と、試薬供給源10の試薬を反応回路20へ導く試薬流路であるチューブ18と、反応回路20における反応後の混合液を取り込み、磁力により磁気ビーズ12を吸着し、磁気ビーズ12−第1のモノクローナル抗体11と結合したバイオマーカ19を捕集する磁気捕集部30と、捕集されたバイオマーカ19に結合した第2のモノクローナル抗体−蛍光色素14の蛍光色素14を、その励起波長の光により励起し、発生する蛍光量を測定する蛍光量測定部40を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、主にヒトの尿中に含まれるバイオマーカの量的変化を経時的に連続して測定することが可能な尿中バイオマーカ測定方法及び測定システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
尿中には、各種疾病情報を有するバイオマーカが多数種類含まれるものである。例えば、心肺蘇生後の患者や人工心肺後の患者については、急性腎不全(AKI(Acute Kidney Injury))のバイオマーカが尿中に排出されることから、この急性腎不全の発症を予測するためには上記バイオマーカの測定が欠かせないものである。
【0003】
従来、急性腎不全のバイオマーカを測定する場合は、採取した尿を検体として、ELISA法等を用いたバッチ処理によるバイオマーカの定量測定・分析が行われている。しかしながら、バッチ処理によるバイオマーカの定量測定・分析によっては、測定と測定の間にバイオマーカ量が変化しても連続的に測定しているわけではないため、これを捕らえることはできない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
一方、例えば上記のAKIにおいては、その発生やその兆候を早期に検出することが肝要であり、このためバイオマーカによる測定はできる限り短いタイムスパンにより行われることが望まれる。また、ELISA法等を用いたバッチ処理においては、測定に数十分から数時間を要する場合があり、リアルタイム性に欠けるという問題もある。
【0005】
更に、バイオマーカとして現行のクレアチニン等を用いた検査では、腎臓ストレス負荷後、短くとも1日、長ければ数日経たないと測定値に変化が現れないため、AKIの早期検出は困難であった。
【0006】
先行する技術としては、蛍光標識抗体CD14モノクローナル抗体と蛍光標識抗体CD62Lモノクローナル抗体を用いて腎炎が疑われるヒトから採取した尿沈渣を処理し、フローサイトメトリー法でCD14陽性CD62L陰性の単球を検出して、腎疾患の活動性判定を行うものが知られている。この先行技術においても、尿を採取してバッチ処理を行うものである(特許文献1、特に0039欄参照)。
【0007】
尿中のバイオマーカについての測定ではないが、抗体標識磁気ビーズと蛍光標識抗体の双方を用いて微生物の検出を行うものも知られているが、検査自体も数時間を要し、微生物の量的変化を経時的に連続して測定することは極めて困難といえる(特許文献2、特に0014や0051欄参照)。
【0008】
本発明は上記のような事情に鑑みてなされたもので、その目的は、主にヒトの尿中に含まれるバイオマーカの量的変化を経時的に連続して測定することが可能な尿中バイオマーカ測定方法及び測定システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の請求項1に係る尿中バイオマーカ測定方法は、尿道から連続的にカテーテルを介して採取した尿に対し流路中において、尿中に含まれるバイオマーカに特異的に結合する第1のモノクローナル抗体、この第1のモノクローナル抗体と結合する磁気ビーズ、前記バイオマーカに対し前記第1のモノクローナル抗体とは別のエピトープにおいて特異的に結合する第2のモノクローナル抗体、この第2のモノクローナル抗体と結合する蛍光色素を、安定的に溶解させた溶液により構成される試薬を供給し、前記試薬供給源の試薬中の第1のモノクローナル抗体及び第2のモノクローナル抗体と前記バイオマーカとの抗原抗体反応を行い、前記反応後の混合液を取り込み、磁力により磁気ビーズを吸着することにより磁気ビーズが結合した第1のモノクローナル抗体と結合した前記バイオマーカを捕集し、残液を排出し、前記磁気捕集された前記バイオマーカに結合した第2のモノクローナル抗体と結合した蛍光色素を、その励起波長の光により励起し、発生する蛍光量を測定することを特徴とする。
【0010】
本発明の請求項2に係る尿中バイオマーカ測定システムは、尿中に含まれるバイオマーカに特異的に結合する第1のモノクローナル抗体、この第1のモノクローナル抗体と結合する磁気ビーズ、前記バイオマーカに対し前記第1のモノクローナル抗体とは別のエピトープにおいて特異的に結合する第2のモノクローナル抗体、この第2のモノクローナル抗体と結合する蛍光色素を、安定的に溶解維持させた溶液により構成される試薬を供給する試薬供給源と、尿道から連続的に尿を採取するためのカテーテルと、前記試薬供給源の試薬中の第1のモノクローナル抗体及び第2のモノクローナル抗体と、前記カテーテルを介して採取した尿中の前記バイオマーカとを混合部にて混合させ、抗原抗体反応を行うための反応回路と、前記試薬供給源の試薬を前記反応回路へ導く試薬流路と、前記反応回路における反応後の混合液を取り込み、磁力源からの磁力により磁気ビーズを吸着することにより磁気ビーズが結合した第1のモノクローナル抗体と結合した前記バイオマーカを捕集し、残液を排出する磁気捕集部と、前記磁気捕集部に捕集された前記バイオマーカに結合した第2のモノクローナル抗体と結合した蛍光色素を、その励起波長の光により励起し、発生する蛍光量を測定する蛍光量測定部とを具備することを特徴とする。
【0011】
本発明の請求項3に係る尿中バイオマーカ測定システムは、尿中に含まれる複数種のバイオマーカに対応させて、第1のモノクローナル抗体と第2のモノクローナル抗体の異なるペアを、前記複数の組だけ用い、且つ、各組において蛍光色素の励起波長を異ならせて、安定的に溶解させた溶液により構成される試薬とし、前記磁気捕集部において、磁気ビーズが結合した各モノクローナル抗体と結合した複数種のバイオマーカを捕集し、残液を排出し、前記蛍光量測定部において、前記磁気捕集部に捕集された複数種のバイオマーカに結合した各モノクローナル抗体と結合した複数種の蛍光色素を、それぞれの励起波長の光により励起し、発生する蛍光量を個別に測定することを特徴とする。
【0012】
本発明の請求項4に係る尿中バイオマーカ測定システムは、連続的にまたは所定時間間隔において間欠的に、蛍光色素を励起することを特徴とする。
【0013】
本発明の請求項5に係る尿中バイオマーカ測定システムは、磁気ビーズとして温度感受性の磁気ビーズを用い、前記磁気捕集部に、前記磁気ビーズの凝縮温度に対応させて温度コントロールする温度コントローラを具備する。
【0014】
本発明の請求項6に係る尿中バイオマーカ測定システムは、バイオマーカとして、以下の物質から所定種を選択して測定することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の尿中バイオマーカ測定システム。
N-acetyl-β-glucosaminidase(NAG)
Kidney injury molecule-1(KIM-1)
Neutrophil gelatinase associated lipocalin(NGAL)
Liver-type Fatty acid binding protein(L-FABP)
Midkine
Alanine aminopeptidase(AAP)
Alkaline phosphatase(AP)
α-glutathione-S-transferase(α-GST)
γ-glutamyl transferase(γ-GT)
β2-microglobulin
α1-microglobulin
Retinol-binding protein(RBP)
Cystatin C
Microalbumin
Clusterin
Interleukin-18(IL-18)
Cysteine-rich protein(CYR-61)
Osteopontin(OPN)
Sodium/hydrogen exchanger isoform(NHF3)
Exosomal fetuin-A
【0015】
本発明の請求項7に係る尿中バイオマーカ測定システムは、混合補助装置として振動発生装置を反応回路に付設したことを特徴とする。
【0016】
本発明の請求項8に係る尿中バイオマーカ測定システムは、混合補助装置として変動磁場発生装置を反応回路に付設したことを特徴とする。
【0017】
本発明の請求項9に係る尿中バイオマーカ測定システムは、前記バイオマーカにおける第1のエピトープにて前記第1のモノクローナル抗体を結合させ、前記バイオマーカにおける前記第1のエピトープとは十分離れた距離にある第2のエピトープにて前記第2のモノクローナル抗体を結合させることを特徴とする。
【0018】
本発明の請求項10に係る尿中バイオマーカ測定システムは、磁気ビーズとして直径が50nmから5μmの範囲のものを用いることを特徴とする。
【0019】
本発明の請求項11に係る尿中バイオマーカ測定システムは、磁気ビーズと第1のモノクローナル抗体を固定する手段として、エポキシ基、トシル基、活性化エステル、アミノ基、チオール基、ブロモアセトアミド基、カルボキシル基、プロテインA、プロテインGのいずれか一つ以上を用い、或いは、アビジン−ビオチン系またはストレプトアビジン−ビオチン系を用いることを特徴とすることを特徴とする。
【0020】
本発明の請求項12に係る尿中バイオマーカ測定システムは、蛍光色素と第2のモノクローナル抗体を固定する手段として、エポキシ基、トシル基、活性化エステル、アミノ基、チオール基、ブロモアセトアミド基、カルボキシル基、プロテインA、プロテインGのいずれか一つ以上を用い、或いは、アビジン−ビオチン系またはストレプトアビジン−ビオチン系を用いることを特徴とする。
【0021】
本発明の請求項13に係る尿中バイオマーカ測定システムは、磁気ビーズに固定した第1のモノクローナル抗体と、蛍光色素に固定した第2のモノクローナル抗体とを安定して溶解維持させる溶液として、生理食塩水、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、HEPES緩衝液(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)、及びPBS(生理的リン酸緩衝液)のうちいずれか一つ以上を用いたことを特徴とする。
【0022】
本発明の請求項14に係る尿中バイオマーカ測定システムでは、前記混合部の流路が曲折した構造であることを特徴とする。
【0023】
本発明の請求項15に係る尿中バイオマーカ測定システムでは、前記混合部の流路が、板状の障害物やくびれを有する構成、若しくは前記障害物を設けた箇所が狭くなっている構成であることを特徴とする。
【0024】
本発明の請求項16に係る尿中バイオマーカ測定システムでは、前記混合部は、同心球状に前記尿の流路と前記試薬の流路を設け、内側の前記尿又は前記試薬のいずれか一方の流路に設けられた少なくとも一つ以上の細孔から、外側のいずれか他方の流路と連通することを特徴とする。
【0025】
本発明の請求項17に係る尿中バイオマーカ測定システムでは、前記混合部の流路は、少なくとも一つ以上の細孔が形成された仕切り板を有し、仕切り板を有する流路は薄くなっていることを特徴とする。
【0026】
本発明の請求項18に係る尿中バイオマーカ測定システムでは、前記混合部は、混合部の流速方向に直交する回転軸を有する羽根車を具備することを特徴とする。
【0027】
本発明の請求項19に係る尿中バイオマーカ測定システムでは、前記混合部は、混合部の流速方向に平行な回転軸を有するスクリューを具備することを特徴とする。
【0028】
本発明の請求項20に係る尿中バイオマーカ測定システムでは、前記混合部は、混合部の流速方向に直交する回転軸を有する複数の歯車を具備することを特徴とする。
【0029】
本発明の請求項21に係る尿中バイオマーカ測定システムでは、前記磁気捕集部の流路の前記磁力源側に、クボミを有することを特徴とする。
【0030】
本発明の請求項22に係る尿中バイオマーカ測定システムでは、前記磁気捕集部の流路と対向する前記磁力源の面が鏡面であることを特徴とする。
【0031】
本発明の請求項23に係る尿中バイオマーカ測定システムでは、前記磁力源と対向する前記磁気捕集部の流路は円錐形であることを特徴とする。
【0032】
本発明の請求項24に係る尿中バイオマーカ測定システムでは、前記磁力源と対向する前記磁気捕集部の流路は幅狭に形成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0033】
本発明によれば、尿道から連続的にカテーテルを介して採取した尿に対し流路中において試薬供給源の試薬中の第1のモノクローナル抗体及び第2のモノクローナル抗体とのバイオマーカとの抗原抗体反応を行い、磁力により磁気ビーズを吸着することにより磁気ビーズが結合した第1のモノクローナル抗体と結合した前記バイオマーカを捕集し、残液を排出し、磁気捕集されたバイオマーカに結合した第2のモノクローナル抗体と結合した蛍光色素を、その励起波長の光により励起し、発生する蛍光量を測定することにより、従来のバッチ処理による測定法では不可能であった尿中に含まれるバイオマーカの量的変化の経時的連続測定をすることができ、腎機能の低下や腎不全などの発生を早期に検出することが可能である。また、バイオマーカ量の変化をベッドサイドにおいてほぼリアルタイムで検出可能な構成であり、できる限り早くその兆候を尿中のバイオマーカによって検出して治療開始の判断を行う必要があるAKIのような予後不良の病態の早期診断に有用である。
【0034】
また、本発明によれば、尿中に含まれる複数種のバイオマーカに対応させて、第1のモノクローナル抗体と第2のモノクローナル抗体の異なるペアを、前記複数の組だけ用い、且つ、各組において蛍光色素の励起波長及び/又は蛍光波長を異ならせて、安定的に溶解維持させた溶液により構成される試薬を用い、磁気捕集された複数種のバイオマーカに結合した各モノクローナル抗体と結合した複数種の蛍光色素を、それぞれの励起波長の光により励起し、発生する蛍光量を個別に測定するので、複数種のバイオマーカについて、その量変化をベッドサイドにおいてほぼリアルタイムで検出可能である。複数種のバイオマーカの経時的連続測定を行うことで、単一のバイオマーカの場合と比較して、さらに精度良い早期診断が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1の実施例に係る尿中バイオマーカ測定システムの構成図。
【図2】本発明の実施例に係る尿中バイオマーカ測定システムに用いられる反応回路の構成例を示す図。
【図3】本発明の実施例に係る尿中バイオマーカ測定システムに用いられる反応回路の構成例を示す図。
【図4】本発明の実施例に係る尿中バイオマーカ測定システムに用いられる反応回路の構成例を示す図。
【図5】本発明の実施例に係る尿中バイオマーカ測定システムに用いられる反応回路の構成例を示す図。
【図6】本発明の実施例に係る尿中バイオマーカ測定システムに用いられる反応回路の構成例を示す図。
【図7】本発明の実施例に係る尿中バイオマーカ測定システムに用いられる反応回路の構成例を示す図。
【図8】本発明の実施例に係る尿中バイオマーカ測定システムに用いられる反応回路の構成例を示す図。
【図9】本発明の実施例に係る尿中バイオマーカ測定システムに用いられる反応回路の補助的構成例を示す図。
【図10】本発明の実施例に係る尿中バイオマーカ測定システムに用いられる磁気捕集部の構成例を示す図。
【図11】本発明の実施例に係る尿中バイオマーカ測定システムに用いられる磁気捕集部の構成例を示す図。
【図12】本発明の実施例に係る尿中バイオマーカ測定システムに用いられる磁気捕集部の構成例を示す図。
【図13】本発明の実施例に係る尿中バイオマーカ測定システムによる測定結果の一例を示す図。
【図14】本発明の第1の実施例に係る尿中バイオマーカ測定システムの構成図。
【発明を実施するための形態】
【0036】
以下、添付図面を参照して本発明に係る尿中バイオマーカ測定方法及び測定システムの実施例を説明する。各図において、同一の構成要素には、同一の符号を付して重複する説明を省略する。
【実施例1】
【0037】
図1に、第1の実施例に係る尿中バイオマーカ測定システムの構成図を示す。このシステムは、試薬供給源10、反応回路20、磁気捕集部30及び蛍光量測定部40を主な構成要素とする。試薬供給源10には、尿中に含まれるバイオマーカ19に特異的に結合する第1のモノクローナル抗体11、この第1のモノクローナル抗体11と結合する磁気ビーズ12、上記バイオマーカ19に対し上記第1のモノクローナル抗体11とは別のエピトープにおいて特異的に結合する第2のモノクローナル抗体13、この第2のモノクローナル抗体13と結合する蛍光色素14を、安定的に溶解維持させた溶液15により構成される試薬16が入っている。
【0038】
バイオマーカ19は、検出すべき疾病等に応じて選択されるものであり、例えば、AKIの場合においては、次のマーカから選択されたものとするが、これらのみに限定されるものではない。
N-acetyl-β-glucosaminidase(NAG)
Kidney injury molecule-1(KIM-1)
Neutrophil gelatinase associated lipocalin(NGAL)
Liver-type Fatty acid binding protein(L-FABP)
Midkine
Alanine aminopeptidase(AAP)
Alkaline phosphatase(AP)
α-glutathione-S-transferase(α-GST)
γ-glutamyltransferase(γ-GT)
α1-microglobulin
β2-microglobulin
Retinol-binding protein(RBP)
Cystatin C
Microalbumin
Clusterin
Interleukin-18(IL-18)
Cysteine-rich protein(CYR-61)
Osteopontin(OPN)
Sodium/hydrogen exchanger isoform(NHF3)
Exosomal fetuin-A
【0039】
上記のようにバイオマーカ19をAKIに対応させたものとすると、第1のモノクローナル抗体11は、これに特異的に結合するモノクローナル抗体である。第1のモノクローナル抗体11と磁気ビーズ12との結合には、固定する手段として、エポキシ基、トシル基、活性化エステル、アミノ基、チオール基、ブロモアセトアミド基、カルボキシル基、プロテインA、プロテインGのいずれかを用い、或いは、アビジン−ビオチン系またはストレプトアビジン−ビオチン系を用いる。磁気ビーズ12として直径が50nmから5μmの範囲ものを用いる。
【0040】
また、上記のようにバイオマーカ19をAKIに対応させたものとすると、第2のモノクローナル抗体13は、これに特異的に結合するモノクローナル抗体である。バイオマーカ19における第1のエピトープにて上記第1のモノクローナル抗体11を結合させ、上記バイオマーカ19における上記第1のエピトープとは十分離れた距離にある第2のエピトープにて上記第2のモノクローナル抗体13を結合させる。
【0041】
上記において、十分離れた距離とは、上記磁気ビーズ12に固定した上記第1のモノクローナル抗体11の上記バイオマーカ19における上記第1のエピトープに対する結合と、上記蛍光色素14に固定した上記第2のモノクローナル抗体13の上記バイオマーカ19における上記第2のエピトープに対する結合が、互いに干渉しないという効果が得られる距離を意味し、上記干渉が上記バイオマーカ19の測定において実用上無視出来る程度であれば十分である。第2のモノクローナル抗体13と蛍光色素14との結合には、固定する手段として、エポキシ基、トシル基、活性化エステル、アミノ基、チオール基、ブロモアセトアミド基、カルボキシル基、プロテインA、プロテインGのいずれかを用い、或いは、アビジン−ビオチン系またはストレプトアビジン−ビオチン系を用いることが出来るが、これらのみに限定されるものではない。
【0042】
ここで蛍光要素14は、例えば以下の物質から所定種を選択されるものであり、これらのみに限定されるものではない。蛍光色素14は、蛍光ビーズの形態で使用しても良い。
AMCA
Alexa Fluor 350
Marina Blue
Cascade Blue
Cascade Yellow
Pacific Blue
Alexa Fluor 405
Alexa Fluor 488
Qdot(R) 605
FITC
PE/RD1
ECD/PE-TexasRed
PC5/SPRD/PE-Cy5
PC5.5/PE-Cy5.5
PE Alexa Fluor 750
PC7/PE-Cy7
TRITC
Cy3
Texas Red
Alexa Fluor 647
Alexa Fluor 700
Cy5
Cy5.5
APC
APC7/APC-Cy7
APC Alexa Fluor 750
【0043】
磁気ビーズ12に固定した第1のモノクローナル抗体11と、蛍光色素14に固定した第2のモノクローナル抗体13とを安定して溶解維持させる溶液としては、生理食塩水、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、HEPES緩衝液(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)、及びPBS(生理的リン酸緩衝液)のうちいずれか一つを用いる。前記溶液にはモノクローナル抗体の非特異的吸着を防ぐため、卵白アルブミン(OVA)、牛血清由来のアルブミン(BSA)、牛胎仔血清(FBS)などを添加しても良い。
【0044】
試薬供給源10と反応回路20との間は、試薬流路であるチューブ18により接続され、試薬供給源10からチューブ18を介して反応回路20へ試薬16が制御された供給速度で供給される。また、哺乳類としてのヒトである患者60の尿道から尿道カテーテル61を介して尿が反応回路20へ供給される。この尿には、疾患に応じてバイオマーカ19が含まれている。
【0045】
反応回路20は、尿道カテーテル61を介して採取した尿中のバイオマーカ19と、試薬16中の第1のモノクローナル抗体11及び第2のモノクローナル抗体13の抗原抗体反応を行うため機構である。反応回路20には、試薬16と尿とが効率的に混和し、抗原抗体反応が適切に生じるような図2から図8のいずれかの構成、更にはこれに図9(a)または図9(b)の構成を加えた構成が採用されている。
【0046】
図2は、チューブ21をジグザグに曲折させて構成した反応回路20であり、特に曲折部21aにおいて試薬16と尿とが壁に衝突し、効率的に混和するように機能する。図3(a)は、互いに交叉するように板を並べて流れを妨げるようにした障害物22がチューブ21内に設けられた反応回路20であり、障害物22の板に試薬16と尿とが衝突し、効率的に混和するように機能する。図3(b)は、上下に開口を有する球殻23を複数結合して形成した反応回路20であり、球殻23の接続部23aにおいて流れが細くされており、特に接続部23aにおいて流速が変化するなどの作用によって試薬16と尿とが効率的に混和するように機能する。
【0047】
図4は、入口部及び出口部を備える大径の外管24内に小径の内管25の大部分が挿入された構成の反応回路20であり、外管24内の内管25における周壁には細孔25aが形成されており、試薬16または尿がこの細孔25aから外管24内に徐々に放出されることにより試薬16と尿とが効率的に混和するように機能する。
【0048】
図5(a)の反応回路20は、中央部が細く両端部が太く形成されたチューブ21の一端側に二つの入口が形成され、このチューブ21の他端側に一つの入口が形成されており、上記二つの入口からチューブ21内に二流路を形成するように細径部21bまで延在すると共に細径部21bにおいて細孔26aが形成された仕切板26が設けられた構成を有する。細径部21bにおいて細孔26aを介して試薬16と尿とが効率的に混和するように機能する。
【0049】
図5(b)の反応回路20は、出口部を有すると共に一方の入口部に接続された外管24と、他方の入口部に接続されると共に上記外管24内に内包された内管27とを備えた構成を有し、上記内管27には全面に多数の小孔27aが形成されており、外管24と内管27との間隙27bが極めて狭く構成されている。細孔26aを介して間隙27bに放出された試薬16と尿とが効率的に混和するように機能する。即ち、混合部を構成する反応回路は、同心球状に上記尿の流路と上記試薬の流路を設け、内側の上記尿又は上記試薬のいずれか一方の流路に設けられた少なくとも一つ以上の細孔から、外側のいずれか他方の流路と連通する構成となっている。
【0050】
図6の反応回路20は、二つの入口管と一つの出口管との間に球殻23が接続された構成の回路であり、球殻23内には羽根車28が設けられており、羽根車28の回転軸28aが液体の流れ方向と直交する方向に延びて球殻23に回転可能に取り付けられている。試薬16と尿とは、羽根車28に当たって羽根車28が回転して攪拌が生じ、試薬16と尿とが効率的に混和するように機能する。なお、回転軸28aに超音波モータを接続して、或いは回転軸28aをレーザ駆動して羽根車28を強制回転させる構成としても良い。
【0051】
図7の反応回路20は、チューブ21内の中央部に、液体が流れる方向を軸とするスクリュー29を設ける。スクリュー29の長手方向における両端部から延びる軸がチューブ21の内壁に設けられた透孔を有する軸受29aに保持され、スクリュー29が回転可能に保持されている。試薬16と尿とは、スクリュー29の上方における軸受29aの透孔からスクリュー29の側部に入り込み、スクリュー29を回転させながら、チューブ21の太径部21cとスクリュー29の側部を流れる。このとき、スクリュー29の回転によって試薬16と尿とが効率的に混和するように機能する。なお、スクリュー29における端部の軸に超音波モータを接続して、或いは当該軸をレーザ駆動してスクリュー29を強制回転させる構成としても良い。
【0052】
図8の反応回路20は、二つの入口管と一つの出口管との間に球殻23が接続された構成の回路であり、球殻23内には二つの歯車28D、28Dが設けられており、歯車28Dの回転軸28Daが液体の流れ方向と直交する方向に延びて球殻23に回転可能に取り付けられている。試薬16と尿とは、歯車28Dに当たって歯車28Dが回転して攪拌が生じ、試薬16と尿とが効率的に混和するように機能する。なお、回転軸28Daに超音波モータを接続して、或いは回転軸28Daをレーザ駆動して歯車28を強制回転させる構成としても良い。
【0053】
上記図2から図8に示した反応回路20には、混合補助装置を付設することができる。図9(a)は、混合補助装置として振動発生装置45を反応回路20に付設する構成例を示す。振動発生装置45は、例えば超音波による振動を発生させ、反応回路20を振動させることによって試薬16と尿とが更に効率的に混和するように機能する。
【0054】
図9(b)は、混合補助装置として変動磁場発生装置46を反応回路20に付設する構成例を示す。変動磁場発生装置46は、変動磁場を発生させ、反応回路20に磁気的振動を発生させることによって試薬16と尿とが更に効率的に混和するように機能する。
【0055】
上記の反応回路20における抗原抗体反応によって、バイオマーカ19における第1のエピトープにおいて磁気ビーズ12−第1のモノクローナル抗体11が結合し、また、バイオマーカ19における第2のエピトープにおいて蛍光色素14−第2のモノクローナル抗体13が結合する。上記のように反応し結合した状態の模式図が、磁気捕集部30内に示されている。
【0056】
反応回路20における反応後溶液は、反応回路20からチューブを介して磁気捕集部30へ流れる。磁気捕集部30は、電磁石や永久磁石により構成される磁力源31を備え、捕集室32における磁力源31側に近接するように窪んだ部分(クボミ)に形成された捕集面34に磁気ビーズ12−第1のモノクローナル抗体11を吸引してバイオマーカ19を捕集するものである。反応回路20から延びるチューブは捕集室32の天井傾斜面33に取り付けられ、磁気ビーズ12−第1のモノクローナル抗体11が天井傾斜面33に沿って捕集面34に導かれる構成を有している。磁石は図の左右に移動可能な移動機構を備えて移動を行ったり、電磁石の場合には通電のオンオフを行うことにより、捕集した磁気ビーズ12−第1のモノクローナル抗体11を流出させ、所定時間間隔毎の断続測定を可能とすることもできる。勿論、移動機構を用いず、また、オンを継続することで連続測定を行うことも可能である。
【0057】
磁気捕集部30の具体的構成の3種類を示す。図10は磁気捕集部30の第1の構成例であり、例えば円筒状の入口部35及び出口部36に、筒状或いは箱状の捕集室32が連結された構成を有し、捕集面34及び光入出面37は平板状とされており、光入出面37は透明に構成されている。また、捕集面34の内壁が鏡面とすることで、蛍光を効率良く蛍光量測定部40へ射出することができる。
【0058】
図11は磁気捕集部30の第2の構成例であり、例えば円筒状の入口部35及び出口部36に、円錐状または角錐状に突出した捕集面である捕集凸面34Aを有する筒状或いは箱状の捕集室32が連結された構成を有し、捕集凸面34Aに対向する光入出面37は平板状とされており、光入出面37は透明に構成されている。磁力源31の捕集室32に対向する面には、捕集凸面34Aに合わせた形状の凹部31Aが形成されている。天井傾斜面33から上記捕集凸面34Aへ向かって効率良く磁気ビーズ12−第1のモノクローナル抗体11が導かれる構成とされている。また、捕集凸面34Aの内壁が鏡面とすることで、蛍光を効率良く蛍光量測定部40へ射出することができる。
【0059】
図12は磁気捕集部30の第3の構成例であり、例えば円筒状の入口部35及び出口部36に、箱状の捕集室32が連結された構成を有し、捕集面34と光入出面37は平板状であって近接しており、光入出面37は透明に構成されている。磁気ビーズ12−第1のモノクローナル抗体11は、捕集面34と光入出面37が近接している幅狭の流路を流れることになり、効率良く磁気ビーズ12−第1のモノクローナル抗体11を捕集面34に捕集することができる。また、捕集面34の内壁が鏡面とすることで、蛍光を効率良く蛍光量測定部40へ射出することができる。
【0060】
上記において、磁気ビーズ12として温度感受性の磁気ビーズ12を用いることができる。この場合には、上記磁気捕集部30に上記磁気ビーズ12の凝縮温度に対応させて温度コントロールする温度コントローラを具備する構成とする。
【0061】
蛍光量測定部40は、磁気捕集部30に捕集されたバイオマーカ19に結合した第2のモノクローナル抗体13−蛍光色素14の当該蛍光色素14を、その励起波長の光により励起し、発生する蛍光量を測定するものである。具体的には、光源部41、ビームスプリッタ42、光量検出部43を備える。
【0062】
光源部41は、例えば発光ダイオードなどの発光素子を含むもので、第2のモノクローナル抗体13と結合した蛍光色素14の励起波長に対応する波長の光を、磁気捕集部30の捕集面34へ向けて射出するように構成されている。光源部41は、蛍光色素14の励起波長に対応する波長の光を発することが出来れば、その発光原理は問わないものとする。
【0063】
ビームスプリッタ42は、光源部41から射出された光が、磁気捕集部30の捕集面34へ到る光路に設けられ、光源部41から射出された光を透過させる一方、蛍光色素14が励起されて出射される蛍光を反射して光量検出部43へ導く機能を備える。
【0064】
光量検出部43は、蛍光色素14が励起されて出射される蛍光の波長に感度をもつフォトダイオードなどの受光素子を備えており、ビームスプリッタ42を介して到来する蛍光色素14が励起されて出射される蛍光を受け光電変換を行って、蛍光の光量に応じた電圧を発生させる。この電圧は、測定回路において光量として図示しないモニタなどに出力される。光量検出部43は、蛍光色素14の蛍光を定量することが出来れば、その光−電圧変換原理は問わないものとする。
【0065】
磁気捕集部30にはチューブ62を介して蓄尿バッグ63が接続されており、磁気捕集部30において捕集されない溶液及び物質は、蓄尿バッグ63へ溜められる。
【0066】
以上の通りに構成された尿中バイオマーカ測定システムにおいては、患者60から尿道カテーテル61を介して尿が反応回路20へ供給され、試薬供給源10からチューブ18を介して反応回路20へ試薬16が制御された供給速度で供給される。
【0067】
反応回路20では、試薬16と尿とが効率的に混和し、抗原抗体反応が適切に生じることにより、尿中のバイオマーカ19における第1のエピトープにて上記第1のモノクローナル抗体11が結合し、上記バイオマーカ19における第2のエピトープにて上記第2のモノクローナル抗体13が結合する。
【0068】
反応回路20における反応後溶液は、反応回路20からチューブを介して磁気捕集部30へ流れる。磁気捕集部30では、捕集室32における磁力源31に近接した捕集面34に磁気ビーズ12−第1のモノクローナル抗体11が吸引されてバイオマーカ19が捕集される。磁気捕集部30に捕集されたバイオマーカ19には第2のモノクローナル抗体13−蛍光色素14が結合しており、この蛍光色素14は、蛍光量測定部40の光源部41より射出される当該蛍光色素14の励起波長の光により励起され、蛍光が発生される。この蛍光をビームスプリッタ42を介して光量検出部43が受け光電変換を行って、蛍光の蛍光量(蛍光強度)が測定される。
【0069】
図13には、連続的に測定を行った場合における蛍光の蛍光量(蛍光強度)が示されている。AKIに対応するバイオマーカ19による測定であるとすると、AKIについて陽性の場合にはS1により示されるように時間経過につれて磁気捕集部30に捕集されるバイオマーカ19と結合した第2のモノクローナル抗体13−蛍光色素14が増加するので、蛍光量(蛍光強度)が徐々に増加し、判定閾値THを超えることにより、AKIの発症リスクを確認することができる。一方、AKIについて陰性の場合にはS2により示されるように時間経過に拘りなく、蛍光量(蛍光強度)に変化が見られず、陽性との識別が一目瞭然である。図13では、判定閾値THによりAKIの発症リスクを評価したが、例えば蛍光強度の増加率など、他の判定基準も状況に応じて採用出来る。
【実施例2】
【0070】
図14には、第2の実施例に係る尿中バイオマーカ測定システムの構成例が示されている。このシステムでは、尿中に含まれる複数種のバイオマーカに対応させて、第1のモノクローナル抗体11と第2のモノクローナル抗体13の異なるペアを、上記複数の組だけ用いるものである。ここでは、バイオマーカ19とは異なるバイオマーカ19Aを検出する例を示す。バイオマーカ19Aに対応して、第3のモノクローナル抗体11Aと第4のモノクローナル抗体13Aを用い、且つ、各組において蛍光色素の励起波長及び/又は蛍光波長を異ならせる。
【0071】
第3のモノクローナル抗体11Aに磁気ビーズ12を結合させる。結合の手法は既に第1のモノクローナル抗体11について説明した通りである。第4のモノクローナル抗体13Aに対し、蛍光色素14と異なる励起波長及び/又は蛍光波長の蛍光色素14Aを結合させる。結合の手法は既に第1のモノクローナル抗体11について説明した通りである。上記のものを含む試薬16Aを試薬供給源10に用意する。
【0072】
また、蛍光量測定部40Aは、光源部41、41A、ビームスプリッタ42、光量検出部43、43Aを備える。光源部41は、第2のモノクローナル抗体13と結合した蛍光色素14の励起波長に対応する波長の光を、磁気捕集部30の捕集面34へ向けて射出するように構成され、光源部41Aは、第4のモノクローナル抗体13Aと結合した蛍光色素14Aの励起波長に対応する波長の光を、磁気捕集部30の捕集面34へ向けて射出するように構成される。
【0073】
光量検出部43は、蛍光色素14が励起されて出射される蛍光の波長に感度をもつ受光素子を備えており、光量検出部43Aは、蛍光色素14Aが励起されて出射される蛍光の波長に感度をもつ受光素子を備えている。その他の構成は第1の実施例の構成に等しい。このように構成された尿中バイオマーカ測定システムによれば、反応回路20では、試薬16と尿とが効率的に混和し、抗原抗体反応が適切に生じることにより、尿中のバイオマーカ19における第1のエピトープにて上記第1のモノクローナル抗体11が結合し、上記バイオマーカ19における第2のエピトープにて上記第2のモノクローナル抗体13が結合する。
【0074】
上記に加えて、反応回路20では、試薬16と尿とが効率的に混和し、抗原抗体反応が適切に生じることにより、尿中のバイオマーカ19Aにおける第1のエピトープにて上記第3のモノクローナル抗体11Aが結合し、上記バイオマーカ19Aにおける第2のエピトープにて上記第4のモノクローナル抗体13Aが結合する。
【0075】
磁気捕集部30では、捕集室32における磁力源31に近接した捕集面34に磁気ビーズ12−第1のモノクローナル抗体11が吸引されてバイオマーカ19が捕集され、捕集室32における磁力源31に近接した捕集面34に磁気ビーズ12−第3のモノクローナル抗体11Aが吸引されてバイオマーカ19Aが捕集される。
【0076】
磁気捕集部30に捕集されたバイオマーカ19には第2のモノクローナル抗体13−蛍光色素14が結合しており、この蛍光色素14は、蛍光量測定部40Aの光源部41より射出される当該蛍光色素14の励起波長の光により励起され、蛍光が発生される。更に、磁気捕集部30に捕集されたバイオマーカ19Aには第4のモノクローナル抗体13A−蛍光色素14Aが結合しており、この蛍光色素14Aは、蛍光量測定部40Aの光源部41Aより射出される当該蛍光色素14Aの励起波長の光により励起され、蛍光が発生される。
【0077】
上記の二種の蛍光をビームスプリッタ42、42Aを介して光量検出部43、43Aが受け光電変換を行って、二種の蛍光の蛍光量(蛍光強度)が測定される。つまり、尿中に含まれる二種のバイオマーカ19、19Aの測定が同時に可能であり、様々な疾病の検出などに応用することができる。蛍光色素14と蛍光色素14Aのどちらの励起波長も発生する光源と、蛍光色素14と蛍光色素14Aのそれぞれの励起波長を分割して取り出すことの出来る光学フィルタを組み合わせることで、光源部41と光源部41Aを統一することが出来る。蛍光色素14が励起されて出射される蛍光の波長と蛍光色素14Aが励起されて出射される蛍光の波長の両方に感度をもつ受光素子を用い、光源部41と光源部41Aを電気的又は機械的に交互にON/OFFさせることで、光量検出部43と光量検出部43Aを統一することが出来る。
【符号の説明】
【0078】
10 試薬供給源
11、11A 第1のモノクローナル抗体
12 磁気ビーズ
13、13A 第2のモノクローナル抗体
14、14A 蛍光色素
18 チューブ
19、19A バイオマーカ
20 反応回路
30 磁気捕集部
31 磁力源
32 捕集室
40、40A 蛍光量測定部
41、41A 光源部
42 ビームスプリッタ
43、43A 光量検出部
45 振動発生装置
46 変動磁場発生装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0079】
【特許文献1】特表2006−106598号公報
【特許文献2】特開2002−181823号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿道から連続的にカテーテルを介して採取した尿に対し流路中において、
尿中に含まれるバイオマーカに特異的に結合する第1のモノクローナル抗体、この第1のモノクローナル抗体と結合する磁気ビーズ、前記バイオマーカに対し前記第1のモノクローナル抗体とは別のエピトープにおいて特異的に結合する第2のモノクローナル抗体、この第2のモノクローナル抗体と結合する蛍光色素を、安定的に溶解させた溶液により構成される試薬を供給し、
前記試薬供給源の試薬中の第1のモノクローナル抗体及び第2のモノクローナル抗体との前記バイオマーカとの抗原抗体反応を行い、
前記反応後の混合液を取り込み、磁力により磁気ビーズを吸着することにより磁気ビーズが結合した第1のモノクローナル抗体と結合した前記バイオマーカを捕集し、残液を排出し、
前記磁気捕集された前記バイオマーカに結合した第2のモノクローナル抗体と結合した蛍光色素を、その励起波長の光により励起し、発生する蛍光量を測定する
ことを特徴とする尿中バイオマーカ測定方法。
【請求項2】
尿中に含まれるバイオマーカに特異的に結合する第1のモノクローナル抗体、この第1のモノクローナル抗体と結合する磁気ビーズ、前記バイオマーカに対し前記第1のモノクローナル抗体とは別のエピトープにおいて特異的に結合する第2のモノクローナル抗体、この第2のモノクローナル抗体と結合する蛍光色素を、安定的に溶解維持させた溶液により構成される試薬を供給する試薬供給源と、
尿道から連続的に尿を採取するためのカテーテルと、
前記試薬供給源の試薬中の第1のモノクローナル抗体及び第2のモノクローナル抗体と、前記カテーテルを介して採取した尿中の前記バイオマーカとを混合部にて混合させ、抗原抗体反応を行うための反応回路と、
前記試薬供給源の試薬を前記反応回路へ導く試薬流路と、
前記反応回路における反応後の混合液を取り込み、磁力源からの磁力により磁気ビーズを吸着することにより磁気ビーズが結合した第1のモノクローナル抗体と結合した前記バイオマーカを捕集し、残液を排出する磁気捕集部と、
前記磁気捕集部に捕集された前記バイオマーカに結合した第2のモノクローナル抗体と結合した蛍光色素を、その励起波長の光により励起し、発生する蛍光量を測定する蛍光量測定部と
を具備することを特徴とする尿中バイオマーカ測定システム。
【請求項3】
尿中に含まれる複数種のバイオマーカに対応させて、第1のモノクローナル抗体と第2のモノクローナル抗体の異なるペアを、前記複数の組だけ用い、且つ、各組において蛍光色素の励起波長を異ならせて、安定的に溶解させた溶液により構成される試薬とし、
前記磁気捕集部において、磁気ビーズが結合した各モノクローナル抗体と結合した複数種のバイオマーカを捕集し、残液を排出し、
前記蛍光量測定部において、前記磁気捕集部に捕集された複数種のバイオマーカに結合した各モノクローナル抗体と結合した複数種の蛍光色素を、それぞれの励起波長の光により励起し、発生する蛍光量を個別に測定する
ことを特徴とする請求項2に記載の尿中バイオマーカ測定システム。
【請求項4】
前記蛍光量測定部では、連続的にまたは所定時間間隔において間欠的に、蛍光色素を励起することを特徴とする請求項2または3に記載の尿中バイオマーカ測定システム。
【請求項5】
磁気ビーズとして温度感受性の磁気ビーズを用い、
前記磁気捕集部に、前記磁気ビーズの凝縮温度に対応させて温度コントロールする温度コントローラを具備することを特徴とする請求項2乃至4のいずれか1項に記載の尿中バイオマーカ測定システム。
【請求項6】
バイオマーカとして、以下の物質から所定種を選択して測定することを特徴とする請求項2乃至5のいずれか1項に記載の尿中バイオマーカ測定システム。
N-acetyl-β-glucosaminidase(NAG)
Kidney injury molecule-1(KIM-1)
Neutrophil gelatinase associated lipocalin(NGAL)
Liver-type Fatty acid binding protein(L-FABP)
Midkine
Alanine aminopeptidase(AAP)
Alkaline phosphatase(AP)
α-glutathione-S-transferase(α-GST)
γ-glutamyl transferase(γ-GT)
β2-microglobulin
α1-microglobulin
Retinol-binding protein(RBP)
Cystatin C
Microalbumin
Clusterin
Interleukin-18(IL-18)
Cysteine-rich protein(CYR-61)
Osteopontin(OPN)
Sodium/hydrogen exchanger isoform(NHF3)
Exosomal fetuin-A
【請求項7】
混合補助装置として振動発生装置を反応回路に付設したことを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の尿中バイオマーカ測定システム。
【請求項8】
混合補助装置として変動磁場発生装置を反応回路に付設したことを特徴とする請求項2乃至6のいずれか1項に記載の尿中バイオマーカ測定システム。
【請求項9】
前記バイオマーカにおける第1のエピトープにて前記第1のモノクローナル抗体を結合させ、前記バイオマーカにおける前記第1のエピトープとは十分離れた距離にある第2のエピトープにて前記第2のモノクローナル抗体を結合させることを特徴とする請求項2乃至8のいずれか1項に記載の尿中バイオマーカ測定システム。
【請求項10】
磁気ビーズとして直径が50nmから5μmの範囲のものを用いることを特徴とする請求項2乃至9のいずれか1項に記載の尿中バイオマーカ測定システム。
【請求項11】
磁気ビーズと第1のモノクローナル抗体を固定する手段として、エポキシ基、トシル基、活性化エステル、アミノ基、チオール基、ブロモアセトアミド基、カルボキシル基、プロテインA、プロテインGのいずれか一つ以上を用い、或いは、アビジン−ビオチン系またはストレプトアビジン−ビオチン系を用いることを特徴とする請求項2乃至10のいずれか1項に記載の尿中バイオマーカ測定システム。
【請求項12】
蛍光色素と第2のモノクローナル抗体を固定する手段として、エポキシ基、トシル基、活性化エステル、アミノ基、チオール基、ブロモアセトアミド基、カルボキシル基、プロテインA、プロテインGのいずれか一つ以上を用い、或いは、アビジン−ビオチン系またはストレプトアビジン−ビオチン系を用いることを特徴とする請求項2乃至11に記載の尿中バイオマーカ測定システム。
【請求項13】
磁気ビーズに固定した第1のモノクローナル抗体と、蛍光色素に固定した第2のモノクローナル抗体とを安定して溶解維持させる溶液として、生理食塩水、リン酸緩衝液、クエン酸緩衝液、トリス緩衝液、HEPES緩衝液(4-(2-hydroxyethyl)-1-piperazineethanesulfonic acid)、及びPBS(生理的リン酸緩衝液)のうちいずれか一つ以上を用いたことを特徴とする請求項2乃至12のいずれか1項に記載の尿中バイオマーカ測定システム。
【請求項14】
前記混合部の流路が曲折した構造であることを特徴とする請求項2乃至13のいずれか1項に記載の尿中バイオマーカ測定システム。
【請求項15】
前記混合部の流路が、板状の障害物やくびれを有する構成、若しくは前記障害物を設けた箇所が狭くなっている構成であることを特徴とする請求項2乃至13のいずれか1項に記載の尿中バイオマーカ測定システム。
【請求項16】
前記混合部は、同心球状に前記尿の流路と前記試薬の流路を設け、内側の前記尿又は前記試薬のいずれか一方の流路に設けられた少なくとも一つ以上の細孔から、外側のいずれか他方の流路と連通することを特徴とする請求項2乃至13のいずれか1項に記載の尿中バイオマーカ測定システム。
【請求項17】
前記混合部の流路は、少なくとも一つ以上の細孔が形成された仕切り板を有し、仕切り板を有する流路は薄くなっていることを特徴とする請求項2乃至13のいずれか1項に記載の尿中バイオマーカ測定システム。
【請求項18】
前記混合部は、混合部の流速方向に直交する回転軸を有する羽根車を具備することを特徴とする請求項2乃至13のいずれか1項に記載の尿中バイオマーカ測定システム。
【請求項19】
前記混合部は、混合部の流速方向に平行な回転軸を有するスクリューを具備することを特徴とする請求項2乃至13のいずれか1項に記載の尿中バイオマーカ測定システム。
【請求項20】
前記混合部は、混合部の流速方向に直交する回転軸を有する複数の歯車を具備することを特徴とする請求項2乃至13のいずれか1項に記載の尿中バイオマーカ測定システム。
【請求項21】
前記磁気捕集部の流路の前記磁力源側に、クボミを有することを特徴とする請求項2乃至20のいずれか1項に記載の尿中バイオマーカ測定システム。
【請求項22】
前記磁気捕集部の流路と対向する前記磁力源の面が鏡面であることを特徴とする請求項2乃至20のいずれか1項に記載の尿中バイオマーカ測定システム。
【請求項23】
前記磁力源と対向する前記磁気捕集部の流路は円錐形であることを特徴とする請求項2乃至20のいずれか1項に記載の尿中バイオマーカ測定システム。
【請求項24】
前記磁力源と対向する前記磁気捕集部の流路は幅狭に形成されていることを特徴とする請求項2乃至20のいずれか1項に記載の尿中バイオマーカ測定システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2010−256116(P2010−256116A)
【公開日】平成22年11月11日(2010.11.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−105077(P2009−105077)
【出願日】平成21年4月23日(2009.4.23)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】