説明

尿失禁治療用磁気刺激装置

【課題】発熱に対し、簡単な構成で適切な冷却を行う共に、振動により発生する騒音を低減させる。
【解決手段】コア41に第1の空隙61、62を挟んでコイル42が巻回された磁気刺激機構部40と、前記コア41及び前記コイル42の上端部外周に第2の空隙46aができるように前記磁気刺激機構部40を収納する空冷箱30と、該空冷箱30との間に上面部空隙26、側面部空間24を形成するように前記空冷箱30を収納する座面取付箱20と、空気取入口25、前記上面部空隙26、前記第1、第2の空隙61、62、46aを通って空気排出口34から空気を排出するファン35とを備え、前記第1、第2の空隙61、62、46aの流通断面積の合計が、前記空気取入口25の流通断面積の合計よりも小さいように構成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、外部から患者の患部に磁界を印加して尿失禁を治療する磁気刺激装置に関するものであり、特に、磁気発生部の発熱を効率良く冷却すると共に、装置外部への騒音漏れを低減することができる尿失禁治療用磁気刺激装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、尿失禁治療法として、刺激用電極を生体に装着し、電気的パルスを与える電気刺激療法が周知であり、また、パルス状の磁界を繰り返し患者に与えて体内の所定部位に渦電流を発生させ、治療を行う磁気刺激療法も周知である。
【0003】
前者の電気刺激療法においては、電極を直接患者の皮膚に装着する必要があるため、患者にとって不快感、羞恥心を伴う。一方、後者の磁気刺激療法は、着衣のまま、非侵襲で行えるため、患者にとっては治療を受けやすいが、磁界を発生させるために、磁気刺激コイルに大電流を流す必要があり、コイル及びコアが発熱する。また、ローレンツ力によりコイルは力を受けるが、コイルに流す電流がパルス電流であるために、コイルが振動し、騒音が発生する。
【0004】
上記磁気刺激療法におけるコイル及びコアの発熱の問題を解決するために、本出願人は、ブロワを用いて強制冷却を行うようにした尿失禁治療用コイルの空冷装置を提案した(特許文献1参照)。この装置は、ボックス上板が電気絶縁性及び非磁性であるボックス内に、前後に前記ボックス上板に向かう側脚部を有し、かつコイルが巻回されたコアを収納し、前記ボックス底板に第1の通気口を形成すると共に、この通気口にブロワを取付け、前記ボックス側板に第2の通気口を形成し、前記コイル及び前記コアを経由して前記第1の及び前記第2の通気口間に空気流路を形成したものである。これによれば、コイル及びコアをボックス内でブロワにより発生される外気流に曝すことにより、コイル及びコアに対して効率よく強制空冷が行われる。
【0005】
また、上記の騒音の問題を解決するために、本出願人は、磁気刺激コイルの周辺あるいはコイルの外表面に設けられ、この磁気刺激コイルから発生する音を遮断あるいは防止する手段を備えた尿失禁治療用具を提案した(特許文献2、特に、段落0014、図1参照)。具体的には、刺激コイルを、遮音材を内部に収容した防音箱に収容して、刺激コイルから発生する音が外部に及ぶのを抑えている。なお、特許文献2には、刺激コイル内を冷却水やその他の冷媒が循環するようにして、刺激コイルが高温になることを防止する構成も示されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
パルス電流を流すコア付きコイルの場合、コイルの温度上昇以上に、コイルが巻回されているコアの温度が上昇する。それは、コアを流れる渦電流により発熱するため、及びコアが発熱するコイルに囲まれているので、熱が逃げにくいためである。
【0007】
特許文献1に記載の装置は、同文献の図3に示されるように、ボックス側部の通気口から流入した空気は、コアの端面を冷却すると共に、コイルとコアとの間の空間を通ってコイル及びコアを冷却するが、通気口から流入した空気の大部分は、流通抵抗が小さいコイルとボックス側板との間を通って下側に逃げてしまい、発熱の大きいコアの冷却が不足するという問題点を有する。
【0008】
防音、防振に関しては、コイルが発生する騒音が、ボックス側部及び底部の通気口を通って直に外部に発散されるため、また、コア端面とボックス上板との間のスペーサを介してコイルの振動がボックス上板、着座部に伝わるため、考慮されているとは言い難い。
【0009】
特許文献2に記載の装置は、コイルの冷却と騒音の低減とを考慮しているが、コイルの冷却に関しては、コイル内に冷媒を循環させる構成のため、コイルの形状が複雑となり、また冷却ユニットが必要となるなど、冷却装置が大掛かりになって、実用的でない。
【0010】
防音に関しては、刺激コイルを、遮音材を内部に収容した防音箱に収容しているが、上記のコイル内に冷媒を循環させる冷却装置との組み合わせのため、これも実用的でない。また、具体的な構成も記載されていない。
【0011】
また、特許文献2に記載されているコイルの防音構造を特許文献1に記載されているコイル及びコアの空冷装置に適用することも考えられるが、特許文献1に記載されているコイル及びコアを、特許文献2に記載されている防音箱に入れただけでは、冷却効果を得ることはできない。
【0012】
本発明は、尿失禁治療用磁気刺激装置における上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、その目的は、コイル及びコアによる発熱に対し、簡単な構成で適切な冷却を行うことができると共に、磁気刺激の際における振動により発生する騒音を低減させることが可能な尿失禁治療用磁気刺激装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、コイル及びコアの発熱に対して、大掛かりとならない、ファンによる強制空冷を採用した。冷却効果をあげるためには、冷却空気の流量を多くし、流速を速くすることが必要であり、そのために、大型のファンを用いて、空気取入口、空気取出口を大きくすればよいが、コイルから発生する騒音が直に外部に漏れてしまう。また、ファンの騒音も無視できない。したがって、本発明は、コイル及びコアを二重箱で覆って、発熱する部分の空気の流速を上げて冷却効果を高め、かつ騒音が外に漏れるのを極力抑えるようにしたものである。
【0014】
本発明に係る尿失禁治療用磁気刺激装置は、コア端部が上方を向いたコアに第1の空隙を挟むようにコイルが巻回され、前記コア端部から上方に磁束を生じさせ得る磁気刺激機構部と、該磁気刺激機構部の全体を覆うように配置され、非磁性体の材料からなる、上面部、側面部、及び底面部を備え、前記上面部は、前記コア端部に対向して配置されると共に、前記第1の空隙を外部に連通させるように開口されており、更に、前記磁気刺激機構部と前記側面部との間の空間を外部に連通させるように開口されている第2の空隙を備えた、前記磁気刺激機構部を収納する第1の筐体と、前記第1の筐体の全体を覆うように配置され、非磁性体の材料からなる、患者の患部に当接させる上面部、側面部、及び底面部を備え、前記上面部と前記第1の筐体の上面部とは対向して上面部空隙を形成し、前記側面部と前記第1の筐体の側面部とは対向して側面部空間を形成し、前記上面部空隙と前記側面部空間とを連通させるように構成した、前記第1の筐体を収納する第2の筐体と、前記第1の筐体の底面部及び前記第2の筐体の底面部に形成され、前記第1の空隙及び前記磁気刺激機構部と前記第1の筐体の側面部との間の空間に連通し、前記第1の筐体内の空気を排出するための空気排出口と、前記第1の筐体の外側であって、前記第2の筐体に形成されて外部の空気を取り入れ、前記上面部空隙と連通する空気取入口と、前記空気取入口、前記上面部空隙、及び前記第1の空隙、第2の空隙を通って前記空気排出口から空気を排出するように設けられたファンと、を具備し、前記第1の狭い空隙及び前記第2の狭い空隙の流通断面積の合計が、前記空気取入口の流通断面積の合計よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする(請求項1)。
【0015】
本発明に係る尿失禁治療用磁気刺激装置では、前記第2の筐体の上面部が、剛性及び遮音性を有する材料により構成されていることを特徴とする(請求項2)。
【0016】
本発明に係る尿失禁治療用磁気刺激装置では、前記側面部空間が、前記空気取入口と前記上面部空隙との間の経路に音の進行を妨げる曲角部を有していることを特徴とする(請求項3)。
【0017】
本発明に係る尿失禁治療用磁気刺激装置は、前記ファンにより排出された空気を導くダクトを有し、このダクトは折れ曲る屈曲部を備えること特徴とする(請求項4)。
【0018】
本発明に係る尿失禁治療用磁気刺激装置では、前記磁気刺激機構部と前記第1の筐体の側面部との間の空間、及び、前記側面部空間には、通風を妨げない吸音材が充填されていることを特徴とする(請求項5)。
【0019】
本発明に係る尿失禁治療用磁気刺激装置は、更に、前記空気排出口の下流側に設けられた放熱手段と、前記コアに熱的に結合して該コアの熱を前記放熱手段に伝達する伝熱手段とが設けられていることを特徴とする(請求項6)。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、下記の効果を奏する。
(イ)第1の空隙及び第2の空隙の流通断面積の合計が空気取入口の流通断面積の合計よりも小さくなるように構成したため、第1及び第2の空隙を通過する空気の流速が早くなって、特にコイルを巻回してあるコアの温度上昇を効率よく抑えることができる。
(ロ)第2の空隙を設け、上面部空隙から磁気刺激機構部ヘ空気を流すようにしたため、磁気刺激機構部と第1の筐体の側面部との間を流れる空気が制限され、第1の空隙を流れる空気の流量が十分に確保されて、コイルを巻回してあるコアの温度上昇を効率よく抑えることができる。
(ハ)上面部空隙を設けたため、そこを通過する空気の流速が速くなって、コア端部及びコイル上端部を効率よく冷却することができると共に、磁気刺激機構部と患者との距離を小さく取ることができるため、患者に有効に磁束を及ぼすことができる。
(ニ)騒音発生源である磁気刺激機構部を、第1の筐体及び第2の筐体で覆った二重箱構造としたため、外部に漏れる騒音を低減することができる。
【0021】
請求項2の発明によれば、騒音、振動が患者側に漏れるのを極力抑制することができる
【0022】
請求項3の発明によれば、曲角部で騒音が減衰するため、空気取入口から外部に漏れる騒音を低減させることができる。
【0023】
請求項4の発明によれば、屈曲部で騒音が減衰するため、空気を外部に排出する側からの騒音を低減させることができる。
【0024】
請求項5の発明によれば、吸音材により通風が妨げられることなく、磁気刺激機構部が効率よく冷却されると共に、吸音材により騒音が吸収されて、外部に漏れる騒音を有効に抑制できる。
【0025】
請求項6の発明によれば、コアの熱を放熱手段に伝達して放熱するため、より効果的に冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明に係る尿失禁治療用磁気刺激装置の第1の実施形態を示す一部断面の正面図である。
【図2】本発明に係る尿失禁治療用磁気刺激装置の第1の実施形態を示す一部断面の側面図である。
【図3】本発明に係る尿失禁治療用磁気刺激装置の第1の実施形態を示す一部分の平面図である。
【図4】本発明に係る尿失禁治療用磁気刺激装置の第1の実施形態における第2の空隙の変形例を示す図であり、(a)は一部平面図、(b)は(a)のX−X断面図である。
【図5】本発明に係る尿失禁治療用磁気刺激装置の第1の実施形態における回路構成を示す電気回路図である。
【図6】本発明に係る尿失禁治療用磁気刺激装置の第2の実施形態を示す一部断面の側面図である。
【図7】本発明に係る尿失禁治療用磁気刺激装置の第2の実施形態を示す一部断面の正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、添付図面を参照して、本発明に係る尿失禁治療用磁気刺激装置を実施するための実施形態について説明する。各図において、同一の構成要素には同一の符号を付して重複する説明を省略する。第1の実施形態に係る尿失禁治療用磁気刺激装置は、図1、図2に示すように構成されており、図1は一部断面の正面図、図2は一部断面の側面図を示す。尿失禁治療用磁気刺激装置は椅子形状であり、患者が椅子に座った状態で治療することができるように、背もたれ部11と肘掛け部12と座部13とを備えている。
【0028】
肘掛け部12における先端側と座部13との間は、前支柱14により結合されて、前支柱14が肘掛け部12を支持している。前支柱14の床面側は椅子の前脚部15となっている。肘掛け部12における後端側と座部13との間は、後支柱16により結合されて、後支柱16が肘掛け部12を支持している。後支柱16の床面側は椅子の後脚部17となっている。
【0029】
座部13の下側には、第2の筐体である座面取付箱20が設けられており、座面取付箱20は上面部である蓋21、側面部である側板20a、及び底面部であるベース板31から成っている。なお、ベース板31は、後述する空冷箱30と共通の底面部を構成している。蓋21は患者が座る座板であり、例えば、ガラス繊維強化樹脂やカーボン材或いは木材などの、患者の体重を十分に支えることができる程度の剛性を有し、非導電性、非磁性で、断熱性及び遮音性に優れた材料で構成されている。また、側板20a及びベース板31は、木質ボード等の、非磁性かつ非導電性で、断熱性及び遮音性に優れた材料で構成されている。この座面取付箱20内には、第1の筐体である空冷箱30が収納されている。また、蓋21の上側には、クッション材22が載置されて固定されている。
【0030】
空冷箱30は、上面部である空冷箱カバー45、側面部である側板30a、及び底面部であるベース板31から成り、空冷箱カバー45及び側板30aは、木質ボード等の、非磁性かつ非導電性で、遮音効果の高い材料で構成されている。空冷箱30には、磁気刺激機構部40が収納されており、図2に示すように、E型コア41の中央脚41cにコイル42が巻回され、後述するようにしてコイル42へ通電することにより、コア中央脚端部41bとコア側脚端部41aとの間に磁界を発生させるようになっている。空冷箱30内には、コア側脚端部41a、コア中央脚端部41b、及びコイル42の上端部が、空冷箱カバー45に設けられている上部開口部46において露出した状態で、上記磁気刺激機構部40が収納されている。
【0031】
コイル42は、コイルカバー42aにより包装されてボビン47に保持された状態で、ボビン47とコア中央脚41cとの間に空隙部62を、コイルカバー42aとコア側脚41dとの間に空隙部61を備えるように、E型コア41の中央脚41cを囲繞して配置されている(図2)。前記空隙部61、62は、第1の空隙に相当する。ボビン47は、防振ゴム48が介装されたネジ49によって支持台43に固定されている(図1)。なお、空隙部61及び62の幅は、必ずしも同一でなくても良い。
【0032】
空冷箱カバー45の上部開口部46は、空冷箱カバー45を空冷箱30に設置した時に、上部開口部46の周縁とコア側脚端部41a及びコイル42の上端部の外側周縁との間に、空隙部46aができるように形成されている。この空隙部46aは、第2の空隙に相当し、磁気刺激機構部40と空冷箱30の内壁との間の空間部へ流れる空気を制限するものである。図3には、蓋21を取り外した状態の平面図が示されており、前記空隙部61、62(第1の空隙)及び空隙部46a(第2の空隙)が示されている。
【0033】
第2の空隙は、図4に示すように構成することもできる。図4には、第2の空隙の変形例が示されている。同図の(a)は蓋21を取り外した状態の一部平面図、(b)は(a)のX−X断面図を示す。第2の空隙は、コア側脚端部41aの外側周縁においては前述の例と同様であるが、コイル42の上端部においては、前述の例と異なる。すなわち、空冷箱カバー45がコイル42の上端部を覆っており、上部開口部46の周縁は、ボビン47の真上に位置するように設定されている。したがって、空隙部は、図4の(b)に示すように、空冷箱カバー45とコイルカバー42aもしくはボビン47の上端部との間になる。また、これに限定することなく、要は、磁気刺激機構部40と空冷箱30の内壁との間の空間部を冷却すると同時に、前記空間部へ流れる空気を制限する構成であれば良い。
【0034】
この構成により、空冷箱カバー45の上部と空気排出口34(後述)との間は、空隙部61、62、及び46aのみを介して連通することになる。空隙部61、62、及び46aの流通断面積の合計は、後述する空気取入口25の流通断面積の合計よりも小さくなるように設定されている。
【0035】
E型コア41は、支持台43上にボルト44により固定されている。支持台43は、座面取付箱20及び空冷箱30の共通の底面部を構成するベース板31に、防振ゴム32が介装されたネジ33によって固定されている。
【0036】
ベース板31のほぼ中央部であって、E型コア41及び支持台43の垂直下方には、空気排出口34が形成されており、この空気排出口34の下側にはファン35が設けられている。また、空冷箱30の外側面36と座面取付箱20の内側面23との間には、側面部空間24が形成されており、この側面部空間24の底面ベース板31には、空気取入口25が穿設されている。
【0037】
空冷箱カバー45に対向して、蓋21が近接配置されており、蓋21と空冷箱カバー45との間に上面部空隙26が形成されている。上面部空隙26は、患者が座部13に座った状態で、蓋21が空冷箱カバー45に接触しない範囲で、十分に狭く構成されている。
【0038】
上記側面部空間24には、通気性があって通風を妨げないグラスウールやウレタンフォームなどにより構成される柔軟な吸音材27aが充填されており、この吸音材27aの一部によって、空気の流通路28が形成されている。流通路28には、音の進行を妨げる曲角部29が形成されており、これにより、騒音が空気取入口25を通って外部に漏れるのを抑制している。また、空冷箱30の内壁面には、ウレタンフォームなどにより構成される吸音材27bが貼着されており、空冷箱30の内壁と磁気刺激機構部40との間の空間部にも、グラスウールやウレタンフォームなどにより構成される柔軟な吸音材27cが充填されている。
【0039】
ファン35の下方には、ダクト51が配置されており、このダクト51は縦方向から椅子の背面方向へ折れ曲る屈曲部52を備え、ダクト口54を介して筐体状の機器設置部53に接続されている。
【0040】
機器設置部53には、コンデンサなどにより構成され、コイル42へ電流を与える電源回路などの電気機器55が固定設置される。機器設置部53における椅子の背面側には、排気口56が形成されている。この排気口56は、例えば複数条のスリットにより構成される通風口を有する背面カバー57により塞がれている。ダクト51及び機器設置部53の内壁にもグラスウールやウレタンフォームなどにより構成される柔軟な吸音材27dが貼着されている。
【0041】
一方、電気機器55やファン35を含めた電気的構成は、図5に示されるようである。即ち、商用交流電源71から得られる交流を直流化して必要な電位を作り出す直流電源部72を備える。この直流電源部72は、スイッチ73を介してファン35へ電力供給を行うと共にコンデンサ74に対し、操作部70からの制御信号に応じて100Vから3KVの範囲の電圧を印加して充電するものである。
【0042】
コンデンサ74に充電された電荷は、保護抵抗75を介してサイリスタ76aからリード77aを介してコイル42へ供給されるように構成されている。また、スイッチオフ時における逆電圧を吸収するサイリスタ76bが、リード77a、77b間に接続されている。これらのサイリスタ76a、76bは、トランス78を介してスイッチング制御部79により所要周波数で点弧制御される。
【0043】
操作部70はオペレータの操作に応じて、上記直流電源部72の出力電圧を制御する制御信号を出力し、スイッチング制御部79が点弧制御する周波数の制御信号を出力し、更に、電源オンの際にスイッチ73を閉成してファン35を動作させる制御信号を出力する。また、操作部70にはタイマが設けられ、上記の電源オン時間を設定可能となっている。
【0044】
このような構成の尿失禁治療用磁気刺激装置は、電源オン及び操作部70の操作により、コイル42に設定周波数による電流が流される。座部13に座った患者においては、その体内に磁束が入り込み、骨盤底筋群等が渦電流で刺激され、尿失禁の治療がなされる。
【0045】
このとき、ファン35が回転して空気をダクト51方向へ排出する。この結果、空気の流れは図1、図2の矢印により示すようになる。即ち、空気取入口25から側面部空間24へ入り込み、蓋21の裏面に当たって、蓋21と空冷箱カバー45との間に形成される幅狭の上面部空隙26へと到り、速度を上げて空冷箱カバー45が備える上部開口部46において露出した状態のコア側脚端部41a、コア中央脚端部41b、及びコイル42を強力に冷却する。このコア中央脚端部41b及びコイル42は発熱が激しく、上記により効率の良い冷却がなされる。
【0046】
露出した状態のコア側脚端部41a、コア中央脚端部41b、及びコイル42を通過した空気は、狭い空隙部46a、61、及び62を通り、空冷箱30の底面に形成されている空気排出口34からファン35へ到る。
【0047】
前述したように、空隙部46a、61、及び62のみを通って空気排出口34へ空気が流れるように構成されているため、狭い空隙部46aにより磁気刺激機構部40と空冷箱30の内壁との間の空間部へ空気が流れるのが制限される。したがって、空隙部62及び61を通って多量の空気が流れて、内部に熱がこもるのを妨げ、特に発熱が激しいコア中央脚41c及びコア側脚41dを効率よく冷却する。
【0048】
また、空隙部46a、61、及び62の流通断面積の合計は、空気取入口25の流通断面積の合計よりも小さくなるように構成しているため、空隙部46a、61、62を通る空気の流速が速くなり、効率良く冷却することができる。
【0049】
ファン35が回転してダクト51方向へ排出した空気は、機器設置部53へと到り、電気機器55を冷却して、背面カバー57の通風口から装置外部へ排出される。
【0050】
このように、本実施形態の尿失禁治療用磁気刺激装置によれば、最も発熱が激しい部位において、風量を確保し、かつ風速が早まる構成を採用し、効率良く適切な冷却効果をあげることができる。また、空気の排気口を椅子の背面側に設置したため、排出された熱い空気を吸い込むことがなく、効率の良い冷却ができる。更に、排出された熱い空気が患者に直接当たらず、不快感を与えることがない。
【0051】
また、ローレンツ力により生じる騒音は、空冷箱30及び座面取付箱20の二重箱構造により閉じ込められて減衰し、その低減が図られる。また、蓋21が断熱性及び遮音性に優れるものであるから、治療中の患者に有害な程度まで熱が伝わることはなく、また、空冷箱カバー45と協同して蓋体となり、音を空冷箱30及び座面取付箱20内に閉じ込めることにより遮音もなされる。更に、吸音材27aの一部によって形成される空気の流通路28には、音の進行を妨げる曲角部29が形成され、更にまた、ダクト51が折れ曲る屈曲部52を備えることから、装置の外部へ向かう騒音はこの曲角部29や屈曲部52において向きを変えられて、相当程度減衰させられる。また、各部に充填され或いは貼着されている吸音材27a〜27dによっても騒音が相当程度減衰させられる。更に、空気取入口25を椅子の下側に設置し、空気を外部に排出する通風口を椅子の背面側に設置したため、空気取入口25や前記通風口から排出される騒音が、直接患者や看護士等に影響を与えることがない。なお、空気取入口25は、患者や看護士等に直接正対せず、かつ排出された熱い空気を吸い込むことがない、たとえば椅子の背面側等に設けても良い。
【0052】
図6、図7に、第2の実施形態に係る尿失禁治療用磁気刺激装置の構成図を示す。第1の実施形態と同一な構成は同一の符号を付して説明を省略する。この尿失禁治療用磁気刺激装置においては、空冷箱30の底面部に形成された空気排出口34より下流側に、放熱手段であるヒートシンク80が設けられている。ヒートシンク80はアルミニウムや銅などの、熱伝導性が高く、かつ非磁性体の材料により構成されている。
【0053】
E型コア41の両側面には、アルミニウムや銅などの、熱伝導性が高く、かつ非磁性体の材料で構成される一対の伝熱板(伝熱手段)84が、ボルト44により支持台43と共に固定されている。一対の伝熱板84の上端は、コア中央脚端部41b及びコア側脚端部41aよりも下方に位置するようになっており、これにより、磁束が伝熱板84に対してできるだけ鎖交しないようにして、渦電流の発生を抑え、伝熱板84の温度上昇を抑制している。E型コア41の側面と伝熱板84との間には、シリコングリースなどの放熱グリースが塗布されて、熱伝達を高めている。
【0054】
ヒートシンク80の支柱部81の上端部は横方向に広がった固定板83となっており、この固定板83は、伝熱板84の下端部に接続されている。この接続もまた、放熱グリースを塗布することにより熱伝達を高めている。ヒートシンク80の支柱部81は、空気排出口34を介してダクト51方向へ延びており、支柱部81の下端側には、多数のフィン82が横方向に張り出すように設けられて、ファン35による通風で効率よく放熱されるように構成されている。
【0055】
ファン35は、ダクト51と機器設置部53との境界位置のダクト口54に設置されており、空気をダクト51側から機器設置部53へと流す。これらの構成以外は、第1の実施形態に係る尿失禁治療用磁気刺激装置と同じ構成を有している。
【0056】
以上の通りに構成された第2の実施形態に係る尿失禁治療用磁気刺激装置は、第1の実施形態と同様に作動する。作用においては、第1の実施形態の作用に加えて、伝熱板84及びヒートシンク80による作用が加わる。すなわち、冷却作用においては、コア中央脚41cの熱が伝熱板84を介してヒートシンク80へ伝わり、多数のフィン82から放熱される。そのため、放熱効果が向上する。防音作用においては、ダクト51等の空気の流通通路にヒートシンク80等が設けられるため、音が通過しにくくなる。したがって、背面カバー57の通風口から外部に漏れる騒音が低減する。
【0057】
この第2の実施形態に係る尿失禁治療用磁気刺激装置においては、前述の通りのヒートシンク80が設けられているので、熱的に結合しているE型コア41の熱を効率よく放熱して冷却することができ、また、騒音もヒートシンク80等に邪魔されて外部に漏れにくくなり、したがって、第1の実施形態よりも優れた冷却、防音効果を得ることができる。
【符号の説明】
【0058】
13 座部 20 座面取付箱
21 蓋 24 空室
25 空気取入口 27 吸音材
29 曲角部 30 空冷箱
31 ベース板 34 空気排出口
35 ファン 40 磁気刺激機構部
41 E型コア 41a コア側脚端部
41b コア中央脚端部 41c コア中央脚
41d コア側脚 42 コイル
45 空冷箱カバー 46 上部開口部
46a 第2の空隙部 51 ダクト
52 屈曲部 53 機器設置部
55 電気機器 56 排気口
61 第1の空隙部 62 第1の空隙部
80 ヒートシンク 81 支柱部
82 フィン
【先行技術文献】
【特許文献】
【0059】
【特許文献1】特開2001−161830号公報
【特許文献2】特開平11−333003号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コア端部が上方を向いたコアに第1の空隙を挟むようにコイルが巻回され、前記コア端部から上方に磁束を生じさせ得る磁気刺激機構部と、
該磁気刺激機構部の全体を覆うように配置され、非磁性体の材料からなる、上面部、側面部、及び底面部を備え、前記上面部は、前記コア端部に対向して配置されると共に、前記第1の空隙を外部に連通させるように開口されており、更に、前記磁気刺激機構部と前記側面部との間の空間を外部に連通させるように開口されている第2の空隙を備えた、前記磁気刺激機構部を収納する第1の筐体と、
前記第1の筐体の全体を覆うように配置され、非磁性体の材料からなる、患者の患部に当接させる上面部、側面部、及び底面部を備え、前記上面部と前記第1の筐体の上面部とは対向して上面部空隙を形成し、前記側面部と前記第1の筐体の側面部とは対向して側面部空間を形成し、前記上面部空隙と前記側面部空間とを連通させるように構成した、前記第1の筐体を収納する第2の筐体と、
前記第1の筐体の底面部及び前記第2の筐体の底面部に形成され、前記第1の空隙及び前記磁気刺激機構部と前記第1の筐体の側面部との間の空間に連通し、前記第1の筐体内の空気を排出するための空気排出口と、
前記第1の筐体の外側であって、前記第2の筐体に形成されて外部の空気を取り入れ、前記上面部空隙と連通する空気取入口と、
前記空気取入口、前記上面部空隙、及び前記第1の空隙、第2の空隙を通って前記空気排出口から空気を排出するように設けられたファンと、
を具備し、
前記第1の空隙及び前記第2の空隙の流通断面積の合計が、前記空気取入口の流通断面積の合計よりも小さくなるように構成されていることを特徴とする尿失禁治療用磁気刺激装置。
【請求項2】
前記第2の筐体の上面部は、剛性及び遮音性を有する材料により構成されていることを特徴とする請求項1に記載の尿失禁治療用磁気刺激装置。
【請求項3】
前記側面部空間は、前記空気取入口と前記上面部空隙との間の経路に音の進行を妨げる曲角部を有していることを特徴とする請求項1または2に記載の尿失禁治療用磁気刺激装置。
【請求項4】
前記ファンにより排出された空気を導くダクトを有し、このダクトは折れ曲る屈曲部を備えること特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の尿失禁治療用磁気刺激装置。
【請求項5】
前記磁気刺激機構部と前記第1の筐体の側面部との間の空間、及び、前記側面部空間には、通風を妨げない吸音材が充填されていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の尿失禁治療用磁気刺激装置。
【請求項6】
更に、前記空気排出口の下流側に設けられた放熱手段と、前記コアに熱的に結合して該コアの熱を前記放熱手段に伝達する伝熱手段とが設けられていることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の尿失禁治療用磁気刺激装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2010−162204(P2010−162204A)
【公開日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−7730(P2009−7730)
【出願日】平成21年1月16日(2009.1.16)
【出願人】(000230962)日本光電工業株式会社 (179)
【Fターム(参考)】