説明

尿素を合成するための改良された方法

アンモニア及び二酸化炭素から尿素を、高圧、高温でカルバミン酸アンモニウムを中間体として生成して合成する改良された方法について説明する。本方法は、一般にストリッパと称される垂直型の装置において行われる、未転換のカルバミン酸アンモニウムのアンモニアでの分解・ストリッピングによる少なくとも1つの分離工程を含む高圧合成セクションを含み、分離工程が、方法に供給される新鮮なCO2の総質量に対して1〜15質量%の量である130〜230℃に加熱されたCO2流れのストリッパの下部への供給も含み、この流れが、不動態化剤を、そのO2の当量(モル)が、流れのCO2モル数に対して0.05%〜0.80%となるような量で含有することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、尿素を合成するための改良された方法に関する。
【背景技術】
【0002】
とりわけ、尿素を製造するための幾つかの最先端の方法が知られている。
【0003】
尿素の合成は、アンモニアと二酸化炭素とを高圧、高温で反応させ、続いて未反応の生成物を含有する混合物から尿素を分離し、未反応の生成物を反応器に再循環させることにより行われる。
【0004】
従って、尿素を調製するための工業プロセスは全て、以下の反応:
2NH+CO ⇔ CO(NH+HO (1)
に従った直接合成に基づく。
【0005】
この合成は2つの異なる反応工程:
NH+CO ⇔ (NH)COONH (1a)
(NH)COONH ⇔ CO(NH+HO (1b)
を経る。
【0006】
第1工程(1a)において、発熱平衡反応は室温で高反応速度で起こるが、工程(1b)で必要とされる高温での好適な平衡に到達させるには高い圧力が必要となる。
【0007】
第2工程(1b)では、高温(>150℃)でのみかなりの反応速度に達する吸熱反応が起こるが、185℃での平衡状態では、反応物を化学量論比で含む混合物から始まって、CO転換(conversion)は50%をわずかに超えるにすぎない。この不十分な転換は、NH/CO比を上げることにより適切に改善することができる。
【0008】
通常、上記の2つの工程が反応器内の別々の場所で起こることはなく、反応混合物中で同時に起こる。このため、反応混合物は反応器の様々な地点において、尿素、水、アンモニア、二酸化炭素及びカルバミン酸アンモニウムを、方法に寄与する様々な熱力学的及び反応速度的要因に応じた相対的な濃度で含む。
【0009】
アンモニア及び二酸化炭素から出発する直接合成による尿素の製造方法は、当該分野に関係する特定の文献に広く記載されている。最も一般的な尿素製造方法は、例えば、文献「Encyclopaedia of Chemical Technology」Ed.Kirk−Othmer,Wiley Interscience,third Ed.(1983),vol.23の548〜575頁に概観されている。
【0010】
尿素を製造するための工業方法では、通常、NH、CO並びに未転換試薬の再循環流れ(stream)から来るカルバミン酸アンモニウム及び/又はカルバメートの水溶液を供給した反応器内で、温度150〜215℃、圧力少なくとも13.2MPa(130atm)、NH/COモル比2.5〜5(カルバミン酸アンモニウム/カーボネートの形態のアンモニア及びCOを含む、供給流れの合計に対して計算)で合成を行う。生成される水及び過剰に供給されるNHに加えて、反応器からの流出物は依然としてかなりの量のCOを、主に未転換のカルバミン酸アンモニウムの形態で有している。
【0011】
反応器における熱レベルの制御もまた、最適な転換を得るための極めて重要な側面であるが、これは温度が低すぎる又は高すぎると、様々な化学的及び熱力学的要因が相まって転換が低下するからである。
【0012】
水及び未転換の反応物からの尿素の分離は、より低い温度及び圧力で操作される幾つかのセクションにおいて行われ、カルバミン酸アンモニウムはNH及びCOに分解され、次に、反応器への再循環に使えるようにされる。カルバメートを分離し再循環させるためのセクションには投資コストがかかり、これが最終生成物のコストに大きく影響する。
【0013】
上記の一般的なスキームに従って行われる既知の方法は、例えば、米国特許第4092358号明細書、米国特許第4208347号明細書、米国特許第4801745号明細書及び米国特許第4354040号明細書に記載されている。
【0014】
とりわけ、反応器を後にした水溶液に含まれる尿素は、未変換のカルバミン酸アンモニウムの大部分及び合成で使用した過剰なアンモニアから、合成圧に実質的に等しい圧力又は合成圧より若干低い圧力で動作する適切な分解器又はストリッパ内で分離される。
【0015】
カルバミン酸アンモニウムの分解は、分解器内で、加温流体(通常、1.8〜3.0MPaの蒸気)との間接的な熱交換により外部から熱を供給し、場合によっては不活性ガス、アンモニア、二酸化炭素又は不活性ガスとアンモニア及び/若しくは二酸化炭素との混合物で分解生成物をストリッピングすることにより行われる。ストリッピングは、場合によっては、尿素溶液に溶解した過剰なアンモニアを用いて行われ(自己ストリッピング)、この結果、ストリッピング剤を別途供給することはない。
【0016】
カルバメート分解生成物は、考えられ得るストリッピング剤と共に(不活性生成物を除く)、通常、凝縮器において凝縮され、これにより液体が得られる。この液体は合成反応器に再循環させられる。
【0017】
参考として挙げることができる更に別の文書には米国特許第4314077号明細書、英国特許第1184004号明細書、英国特許第1292515号明細書、米国特許第3984469号明細書、米国特許第4137262号明細書、ドイツ特許第2116267号明細書、フランス特許第2489323号明細書があり、これらは上記の特徴を有する尿素製造方法について述べている。
【0018】
尿素合成方法において特に注意を要する工程が、カルバミン酸アンモニウムが最高温度及び最高濃度で存在する工程であり、結果的に、上記の方法において、これらの工程は、カルバミン酸アンモニウムの分解・ストリッピング工程及び凝縮と一致する。
【0019】
これらの工程で解決すべき問題の1つは、装置の内部で作り出される極度に厳しい環境(高濃度の塩水の存在並びに分解領域において表面にかかる機械的応力及びガス相の放出によって引き起こされる現象の両方を原因とする)に負うところ装置の腐食に関係している。
【0020】
これらの欠点を克服するために、従来技術は、例えば、ストリッパの製造において特殊な材料、具体的にはTi、Zr、特殊ステンレススチール(尿素プラント用グレード)又はこれらの組み合わせを使用することを提案している。更に、最先端技術によると、材料(特にステンレススチール)の腐食への耐性を長持ちさせるために、ある量の空気又はその他の不動態化剤を供給することにより、プロセス流体との接触に曝される表面での安定した酸化物層の形成を促すことが有利である。
【0021】
とりわけ、本発明は、アンモニアによるストリッピングを用いた尿素合成のための特殊な分野のプラント(すなわち、カルバメートの分解が起こるストリッパ内で、合成溶液中に存在するアンモニア及び/又はストリッピングを目的として供給したアンモニアによってストリッピング作用を促進させるプラント)に取り入れることができる。
【0022】
現在、このタイプのプラントでは、ある量の空気をストリッパの底部に追加することによりステンレススチール製ストリッパの不動態化を行っている。この空気追加は、追加だけを目的として用意された圧縮器による適切な空気注入により行われる。不動態化を必要とする高圧尿素合成ループのその他の部位において、この不動態化は、CO圧縮器の入口で混合され且つ圧縮器それ自体によって尿素反応器に送られる空気でも得られる。反応器の不動態化反応に関与しなかった空気は反応混合物と共に反応器から流出し、ストリッパの上部に送られ、次にカルバメート凝縮器、続いてカルバメート分離器を通過し、最後に合成ループそれ自体の圧力を制御するためのバルブによってループから排出される。
【0023】
この通過中に、空気は、そのままでは腐食過程に曝されてしまう、空気があたる装置の表面を不動態化する。
【0024】
上記の内容、すなわち不動態化用の空気が反応器からストリッパ上部に送られる事実からすると、ストリッパの底部は、CO圧縮器の入口で混合され且つ圧縮器それ自体によって反応器に送られる空気による不動態化作用から除外されることになる。
【0025】
このため、従来法では、底部への空気注入だけを目的とした圧縮器によって適切に空気を注入する必要性を述べている。
【0026】
しかしながら、この解決法では特殊な装置、すなわち底部への空気注入だけを目的とした圧縮器を更に必要とするため、コストがかかることに加え、定期的なメンテナンスの介入も必要とする。
【0027】
上述したように、これらのプラントで考慮すべき更に別の側面は、発生する熱(より広義には、カルバミン酸アンモニウム、水、アンモニア及び尿素を含有する液体混合物が生成される、アンモニア及び二酸化炭素の供給及び反応工程における反応器の熱レベル)が、反応器に供給されるCO及び/若しくはアンモニア流れの熱レベル並びに/又は同じ供給流れのストリッパ、凝縮器及び反応器間での配分並びに/又は凝縮器において取り除かれる熱の量に基づいた操作により制御される事実に関係している。
【0028】
この熱レベル制御は、反応器において最適な転換を得るための更に別の極めて重要な側面であり、これは温度が低すぎても高すぎても、様々な化学的及び熱力学的要因が相まって転換が低下するからである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0029】
そこで、本発明の出願人は、最先端技術に付随する上記の欠点を克服し且つ更に尿素の合成プロセスを最適化する方法を発見した。
【課題を解決するための手段】
【0030】
従って、本発明の目的は、カルバミン酸アンモニウムを中間体として生成することを伴う、高圧及び高温で、アンモニア及び二酸化炭素から尿素を合成する改良された方法であって、一般にストリッパと称される垂直型(vertical)の装置において行われる、未転換のカルバミン酸アンモニウムのアンモニアでの分解・ストリッピングによる少なくとも1つの分離工程を含む高圧合成セクションを含み、この工程が、本方法に供給される新鮮なCOの総質量に対して1〜15質量%、好ましくは3〜12質量%の量の130〜230℃、好ましくは150〜210℃に加熱されたCO流れを前記ストリッパの下部へ供給することを含み、CO流れが、不動態化剤を、そのOのモル当量が前記流れのCOのモルに対して0.05%〜0.80%、好ましくは0.10〜0.40%となるような量で含有することを特徴とする方法に関する。
【0031】
本記載において、CO流れに言及しての用語「加熱(heating)、加熱された(heated)」は、CO流れが温度上昇に供されたこと及び圧縮器の最終送出口でのCO流れの温度より高い温度を有することを意味する。
【0032】
より好ましくは、ストリッパに供給される加熱されたCO流れは、160〜200℃の温度を想定している。
【0033】
本発明に従えば、ストリッパに供給されない新鮮なCOは、好ましくは反応器に送られるが、反応器と本方法のその他の工程、例えば、凝縮器と中圧及び低圧での1つ以上の分離工程との間で部分的にすることもできる。
【0034】
好ましくは、ストリッパに供給される加熱されたCO流れの量は、反応器に供給される新鮮なCOの総質量に対して4〜15質量%、より好ましくは4〜12質量%である。
【0035】
反応器に供給される圧縮されたCO流れは、100〜200℃、好ましくは130〜185℃の温度を有する。
【0036】
全ての圧縮されたCOを加熱に供することもできるが、ストリッパに供給するCO流れだけを加熱に供することもできる。
【0037】
好ましくは、ストリッパに供給されるCO流れは、CO圧縮器の1つ以上の中間工程において加熱される。
【0038】
反応器に供給される圧縮されたCO流れは、圧縮されたCO流れと、反応器に送出中のCO圧縮器の1つ以上の中間工程における1つ以上の加熱されたCO流れとの適切な割合の混合物、より好ましくは、圧縮されたCO流れと、少なくとも最高熱レベルを有する圧縮器の中間工程における加熱されたCO流れとの適切な割合の混合物から構成することもできる。
【0039】
本発明の特定の実施形態において、反応器に送られる130〜185℃の温度を有するCO流れは、その流れの総質量の0〜40質量%の、100〜120℃の温度で反応器を後にする圧縮されたCOと、その流れの総質量の60〜100質量%の、圧縮器の1つ以上の熱交換中間工程において140〜200℃の温度にまで加熱されたCO流れとから成る。
【0040】
本発明の別の好ましい実施形態において、反応器に送られるCOの4〜12質量%にあたる、ストリッパに供給される新鮮なCO流れは、CO圧縮器の1つ以上の熱交換中間工程において160〜200℃の温度にまで加熱される。
【0041】
加熱に供されるCO流れは、反応器への送出中に、CO圧縮器の1つ以上の中間工程において外側又は管側にて加熱される。
【0042】
カルバミン酸アンモニウムのアンモニアによる分解・ストリッピング工程は、好ましくは自己ストリッピング工程である。
【0043】
一般に、不動態化剤は、好ましくは空気、酸素、酸素富化空気、過酸化水素又はこれらの混合物から選択される酸化剤であり、好ましくは空気である。
【0044】
不動態化剤に言及する際に本願で使用の用語「Oの当量(equivalent content of O)」は、酸化還元反応において同じ転換を得るために不動態化剤の代わりに使用が必要となるOのモルを示す。空気又は酸素の場合はOモルに対応し、Hモルの半分に対応し、オゾンのモルの3/2に対応する。
【0045】
本発明の方法は、好ましくは、尿素の合成段階(synthesis phase)を含み、アンモニア/二酸化炭素のモル比は2.7〜5.0、より好ましくは3.0〜4.0である。
【0046】
本発明の改良された方法の基本的な利点は、この方法により、反応器及びストリッパの処理力を同時に最適化できることである。
【0047】
転換を最適化するためには反応器温度の調節が欠かせないこと、及び反応器において最適な転換を得るためにCO流れは特異的に加熱されることを踏まえると、実際、過剰な加熱が転換の低下につながることも忘れるべきではない。従って、この熱レベル制御は、加熱されたCO流れの一部をストリッパに送ることによっても有利に行われ、この結果、反応器及びストリッパの両方の処理性が同時に最適化される。
【0048】
加熱されたCO流れの一部をストリッパに送り、同時に、量の低下を相殺するために反応器に供給される圧縮されたCO流れの温度を上昇させることにより、極めて有利な効果が同時に得られる。すなわち、反応器が最適温度で動作することにより転換が最大となり、その一方で、加熱されたCO流れ中に存在する不動態化剤(特には空気)による不動態化によって、ストリッパの底部の腐食が防止される。この解決策によって熱も回収されるためエンタルピーが更に上昇し、本発明の方法がより価値あるものとなる。加えて、反応器は、反応器に供給されるアンモニア流れを加熱しながら最適温度で動作することができる。
【0049】
本発明の方法の更なる利点は、コストがかかり定期的なメンテナンスを必要とする、不動態化用の空気をストリッパの底部に送るための圧縮器の排除にある。
【0050】
本方法は、高圧ストリッピングセクションを有している限り、既存の従来型のプラントに幾つかの単純な改良を加えることにより驚くほど簡単に実行できるという利点も有する。具体的には、ストリッピングセクションに、CO圧縮器から反応器に送出中の加熱されたCO流れを送るようにプラントを改良するだけで十分である。
【0051】
更なる利点は、どんな尿素耐性スチール材料のストリッパも使用可能なことである。本発明の方法を、添付の図面により更に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【図1】CO流れの圧縮及び予備加熱工程の実施形態を概略的に表す。
【図2】尿素合成方法の反応工程及び分解・ストリッピング(合成ループ)の実施形態を概略的に表し、これは本発明の好ましい実施形態である。
【図3】最先端技術のある実施形態による尿素合成方法の反応工程及び分解・ストリッピング(合成ループ)の実施形態を概略的に表す。
【発明を実施するための形態】
【0053】
機能上の詳細(例えば、ポンプ、バルブ及び図式化された方法の完全なる理解に不要なその他の装置)は、上記の図面に図示されていない。どんな場合でも、本発明の方法は、説明を目的として添付されたにすぎない図面に図示及び記載のものに限定されると見なされるべきではない。
【0054】
反応器を、カルバミン酸アンモニウム、ひいては尿素の製造に必要な二酸化炭素との化学量論比に対して過剰なアンモニアを用いて運転する本発明の方法において、反応器を後にする流れ及び、一般に、プロセスで生じる液体流れの大部分は、通常、アンモニアを過剰に含有している。本記載において、これらの液体流れ及び混合物(二相性のものも含む)の組成に言及するが、慣習に従って、二酸化炭素は全てカルバミン酸アンモニウムの形態で存在し、残りの過剰なアンモニアは遊離のアンモニアとして又はより単純にはアンモニアとして存在するとみなす。
【0055】
更に、本記載を単純化するために、用語「液体(liquid)」は、単一の液相又は液体・気体混合相から成る混合物流れに言及する場合に使用される。一方、用語「ガス(gaseous)」は、液相が実質的に存在しない流れ又は混合物に使用される。
【0056】
図1のスキームにおいて、連続圧縮工程C1、C2、C3及びC4と交換器SC1、SC2、SC3、SC4及びSC5を区別することができる。ライン1によって供給される圧縮工程C1は、ライン2を通して最高熱レベルを有する第1交換器SC1に接続されており、SC1においてライン9dの圧縮されたCO流れは加熱され、ライン3b(図2の15b)を通してストリッパS1に直接接続されている出口ライン3に送られる。ライン2から来るCOは冷却され、ライン4を通ってSC1を後にする。ライン4は、交換器SC2(冷却水を備える)を介して第2圧縮工程C2に接続されている。圧縮工程C2を後にしたCOはライン5を通って交換器SC3に供給され、交換器SC4(冷却水を備える)を通過した後、圧縮工程C3に接続されたライン6を通ってSC3を後にする。冷却用のCOは、交換器SC3のもう一方の側からライン9bを通して供給され、交換器SC3からライン7を通って出た後、ライン7b及び9dによって交換器SC1に送ることができ、またライン3a及び続くライン9a(図2の15aに対応)に接続されたライン7aを通して反応器に送ることができる。ライン3もライン3aに接続されており、ライン3aは、反応器と最高の熱レベルを有するCOストリッパとの間で可能な部分化(partialization)のために交換器SC1から延びている。
【0057】
次に、圧縮工程C3は、ライン8によって、交換器SC5(冷却水を備える)を介して、圧縮工程C4に接続され、圧縮工程C4は、今度はC4をライン9bによって交換器SC3及びライン9a(図2の15aに対応)を通して反応器R1に直接接続する出口ライン9を含む。工程C4を、ライン9、9c及び9dを順番に通して交換器SC1に直接接続することもできる。
【0058】
図1で図式化された接続ラインにより、蝶型の記号で示したバルブの調節を通して、反応器及びストリッパに供給されるCOについて、本発明で選択の熱レベル及び流量を得るための様々な流動組成物が得られる。本発明の実施形態において、図1に図示のラインの一部は、必要に応じて使用されない。
【0059】
図2のスキームは、反応器R1が、オーバーフローT及びライン10を通してストリッパS1に接続されていることを示す。ストリッパS1は、ライン11を通して、尿素分離・精製セクションPに接続され、このセクションPから、ライン12を通して、カルバメートは凝縮器CC1に再循環させられ、尿素は純粋な固体又水溶液としてライン20を通して得られる。ストリッパS1からのガスの出口は、ライン13を通して凝縮器CC1に接続されている。凝縮器CC1の出口はライン14によって表され、ライン14は次に分離器に接続されている。
【0060】
二酸化炭素の圧縮・加熱ユニットCは反応器(ライン15a)及びストリッパの底部(ライン15b)に接続されている。ライン16aは、反応器へのアンモニア供給ラインであり、新鮮なアンモニア及び回収したアンモニアの供給ライン16と分離器Vの出口のカルバメートの再循環ライン17とから成る。分離器Vの頂部の出口ライン18は、不活性生成物の排出及び圧力制御を想定したものである。
【0061】
図3に図示のスキームは、実質的に図2のスキームと同じ要素を同じ意味で再現している。しかしながら、図3は、従来の尿素合成方法についての図である。図2との大きな違いは、ライン15bがなく、反応器への新鮮なCOの供給が全て圧縮ユニットCから来るライン15によって行われ、不動態化用の空気をストリッパS1の底部に供給するための圧縮器19が存在することである。
【0062】
本発明の方法は、上記の特徴を有する、図2のスキームを参照して上述した装置及び接続部を含む合成セクションを備えたプラントにおいて実行することができる。このプラントは、そのようなものとして新しく構築することもでき、また自己ストリッピング条件下での運転に適したストリッパを備えた既存の尿素合成プラントを、プラントに供給される新鮮なCOの総質量に対して1〜15質量%、好ましくは4〜12質量%の量で、CO流れをストリッパへ供給するのに適した、CO圧縮器とストリッパの下部との間の接続ラインにより改良しても簡単且つ利便性高く得られる。
【0063】
ここで図1及び図2を参照しながら、本発明の方法の考えられ得る様々な実施形態について説明する。しかしながら、記載は、発明それ自体の全ての範囲を限定するものではない。
【0064】
新鮮なCO流れが、図1に詳細を示した圧縮・加熱ユニットCに供給される。
【0065】
反応器の送出圧縮器(delivery compressor)であるこのユニットは、段階的に圧力が高くなる一連の圧縮工程(通常、4つ)から成る。これらの圧縮工程の間には、COの温度を調節するための同じ数の熱交換工程がある。異なる圧縮工程において達せられる圧力は圧縮器の構成及び動作特性に左右され、通常、当業者には既知である。圧縮工程とつながっている熱交換中間工程の具体化についての方法も既知である。
【0066】
特定の実施形態において、ライン2、4、5、6及び8を介して4つの圧縮工程C1、C2、C3及びC4を通る全ての圧縮されたCO流れは、ライン9及び9bを通して交換器SC3に送られる。交換器SC3は、更に加熱される出口側のライン7を流れるCO流れの一部をライン7bによってライン9d(ライン9dは交換器SC1への供給を行う)に送り、続いてライン3及び3bによってストリッパS1に送ることを想定しているが、大部分は、ライン7aを通してライン3aに送られ、そこからライン9aによって直接反応器R1に送られる。
【0067】
或いは、交換器SC3から来る圧縮されたCO流れの全てを、ライン7、7b及び9dを通して交換器SC1に送り、更に加熱した後、交換器SC1から、ライン3を通して一部をストリッパS1に送り、大部分をライン3a及び9aによって反応器R1に送ることも可能である。
【0068】
別の実施形態では、ライン2、4、5、6及び8を介した4つの圧縮工程C1、C2、C3及びC4の通過を通して、圧縮されたCO流れの一部をライン9及び9aによって直接反応器R1に送り、一部をライン9bによって交換器SC3に送る。交換器SC3から流出すると、更に加熱されたCO流れは、前段落に記載の経路の1つをとる。
【0069】
別の実施形態では、工程C4の出口側(ライン9)の圧縮された空気CO流れの一部は、ライン9c及び9dを通して直接交換器SC1に送られ、交換器SC1からライン3及び3bを通してストリッパに送られるが、大部分は交換器SC3に送られ、交換器SC3からライン7、7a、3a及び9aを通して反応器R1に送られる。
【0070】
図2のスキームでは、ライン16を通して圧縮、供給される新鮮なアンモニア及び回収されたアンモニアは強制流体(force fluid)としてエジェクタE1に送られ、ここで、分離器Vから来るアンモニア、カルバメート及び水を含有し、CC1で生成された凝縮物及びセクションPから来る回収物を含む回収・再循環流れと混合される(ライン17)。得られた流れは、ライン16aを通して反応器R1に送られる。
【0071】
或いは、要件に従って、アンモニアの一部をストリッパS1に供給することができる(ライン16bを通して)。
【0072】
本発明の通常の動作処理条件下において、上記の流れは、主にアンモニアを液状で含有する。
【0073】
不動態化剤(例えば、空気)を含有する新鮮なCOは、例えば、ライン15a及び15bを通して反応器R1及びストリッパS1にそれぞれ送られる。
【0074】
図1を参照しながら上記にて詳細に説明したように、新鮮な二酸化炭素の大部分は、圧縮後、反応器に直接送られ(>85%)、一部はストリッパS1に供給される。
【0075】
反応器への供給は全体として、15a及び再循環ライン17によって供給される16aから成る。
【0076】
尿素、水、アンモニア、カルバミン酸アンモニウム及び空気を含有する、オーバーフローT及びライン10によって反応器R1から排出された液体流れは、ストリッパS1に供給される。
【0077】
ユニットPから来る、水、アンモニア及びカルバミン酸アンモニウムを含有する回収流れは、ライン12を通して凝縮器CC1に送られる。
【0078】
NH、CO及び水を含有する、ストリッパS1の頂部から排出されたガス流れ13は凝縮器CC1に再循環させられる。ガス流れ13を、反応器のものと同様の圧力又は反応器のものより若干低い圧力及び可能な最高温度、好ましくは140℃より高く、より好ましくは150〜180℃で、凝縮器CC1において凝縮することにより、主にカルバミン酸アンモニウム及びアンモニア並びにそれより少量の水及び場合によっては尿素を含有する液体流れが得られる。水及び尿素は凝縮工程中に生成され、動作条件は既に上記の化学的平衡(1b)から右方向への部分的な移行に好適である。このようにして得られた液体流れは、ライン14を通して分離器Vに供給される。少量のアンモニア、CO、HOに加えて不活性ガス及び場合によっては残留酸素を含むガス流れは、分離器Vの頂部からライン18を通して排出される。
【0079】
生成された尿素を全て含有する、ストリッパS1の底部から排出された流れ11は、続く精製及び濃縮工程に送られる(ライン11)。精製及び濃縮工程は図2において、セクションPで図式上まとめられている。既に上述したNH、カルバメート及び回収した水から成る流れ(流れ12)はこのP地点から来ており、純粋な尿素及び水はそれぞれライン20及び21を通して回収される。
【0080】
アンモニア及び二酸化炭素から尿素を合成するための本発明の改良された方法は、例えば、以下の段階:
(a)少なくとも1つの反応器にアンモニア及び二酸化炭素をそのまま又はカルバミン酸アンモニウムとして、NH/COモル比2.7〜5、好ましくは3.0〜4.0で供給して反応させることにより、カルバミン酸アンモニウム、水、アンモニウム及び尿素を含有する第1液体混合物を生成し、
(b)第1液体混合物を分解・ストリッピング工程に移し、
(c)分解・ストリッピング工程においてこの第1液体混合物を、実質的に反応器と同じ圧力で操作することにより加熱してカルバミン酸アンモニウムの一部をアンモニアと二酸化炭素とに分解し、同時にこの液体混合物をアンモニアでのストリッピングに供することによりアンモニア、二酸化炭素及び水を含有する第1ガス混合物並びに尿素、水、アンモニア及びカルバミン酸アンモニウムの未分解部分を含有する第2液体混合物を生成し、不動態化剤を含有する加熱されたCO流れもストリッパの底部に供給され、
(d)場合によってはエジェクタを通して第1ガス混合物を、実質的に反応器と同じ圧力で操作する凝縮工程に移動させ、この混合物を凝縮することによりカルバミン酸アンモニウム及びアンモニアを含有する第3液体混合物を生成し、この第3液体混合物を分離器に送り、
(e)第2液体混合物に含まれる尿素を1つ以上の続く分解及び分離工程において回収することにより実質的に純粋な尿素、水、アンモニア及びカルバミン酸アンモニウムを含有する第4液体混合物並びに、場合によっては、実質的にアンモニアを含有する第5流れが生成され、工程(e)において生成された第4液体混合物は凝縮工程に送られる、
ことを含む合成方法において使用される。
【0081】
この合成方法は通常、適切なプラント内で連続的に行われ、新鮮なアンモニア及び二酸化炭素をプラントに連続的に供給することにより、尿素に変換され且つ最後の分離及び「顆粒化(prilling)」セクションの流出側で除去される反応物に相当する量の埋め合わせをする。
【0082】
新鮮なアンモニアは反応器に直接供給することができるが、一部又は全てを、ストリッピング流体としてストリッパに送る及び/又は凝縮器に直接送ることもできる。
【0083】
圧縮され反応器に供給されたアンモニアは一般に0〜130℃、好ましくは30〜100℃の温度を有する。全体の8〜15%の量の新鮮なCOをストリッパに供給する場合、反応器において十分な熱レベルを維持するためには、より多い熱含量のアンモニア流れが好ましい。
【0084】
合成反応器は通常、温度150〜215℃、好ましくは160〜195℃、圧力8.9MPa〜20MPa、好ましくは11MPa〜18MPaで動作し、アンモニア/二酸化炭素モル比は、好ましくは2.7〜5.0、より好ましくは3.0〜4.0である。
【0085】
望ましいレベルへの反応器温度の調節は、当該分野で既知のいずれの方法によっても実行することができ、例えば、上記の供給中のアンモニア流れの加熱に加えて、反応器への加熱抵抗器の設置又はストリッパから来るガスの一部を反応器に直接送ることが挙げられる。
【0086】
反応器は、通常、最適な栓流状態を場合によっては二相系の存在下で作り出すために、当該分野で既知のものから選択された類型学の幾つかのプレートを備えている。
【0087】
反応器は、互いに適切に相互接続され且つ場合によっては異なる供給流れを有する様々な反応領域を含むこともある。
【0088】
反応器は、液体の滞留時間が数分から数十分となることにより、凝縮工程及び/又は反応器それ自体におけるアンモニアと二酸化炭素との反応により生成されるカルバミン酸アンモニウムが尿素に脱水されるような液体ホールドアップを有していなくてはならない。
【0089】
分解・ストリッピング工程は、通常、普通は高圧の間接的な蒸気によって加熱されたストリッパ内で行われる。ストリッパの温度は、通常、160〜220℃、好ましくは190〜210℃であり、圧力は反応器の圧力と同じ又はそれよりも若干低い。
【0090】
上記の条件下で、カルバミン酸アンモニウムは、迅速に分解されてアンモニアと二酸化炭素を生成する傾向があり、反応器内で既に生成された尿素は、実質的に変化しないままである。ストリッピングは、アンモニアをキャリアガスとして用いて行われる。本発明の好ましい実施形態において、分解・ストリッピング工程は、キャリアガスとして、反応器を後にする流れにおいて過剰である同じアンモニアを用いて行われる。この好ましい技術についての更なる詳細は、例えば、SNAMPROGETTIの米国特許第3876696号明細書に見出すことができ、その内容は、参考として本願に取り入れられる。この後者の技術は、「自己ストリッピング」と称される。
【0091】
分解工程は一般に、垂直方向のチューブバンドル(tube bundle)装置において行われ、液膜落下を伴う。反応器を後にした混合物は、好ましくは、この装置の頂部に供給され、チューブバンドルの壁に沿って落下する膜を形成する。この目的に適したその他の既知の装置も、本発明の方法において使用することができる。
【0092】
凝縮工程は通常、適切な凝縮器、例えばチューブバンドル凝縮器又は表面凝縮器で行われ、凝縮器において、凝縮熱はその他の流体の加熱に使用される。凝縮熱は、好ましくは蒸気の発生に使用されるが、続く中圧又は低圧のカルバミン酸アンモニウムの分解工程のうちの1つに熱を供給するために使用することもできる。
【0093】
凝縮工程は、凝縮器及び/又は凝縮器から延びるラインにおける固形のカルバミン酸アンモニウムの生成が防止されるようなものである限り、既知の方法で用いられる通常の条件(温度、圧力及び組成)下で行うことができる。
【0094】
分解・ストリッピング工程を後にした液体流れに依然として存在するアンモニア及びカルバミン酸アンモニウムからの尿素の分離は、中圧(1.1MPa〜2.5MPa)及び/又は低圧(0.2〜0.8MPa)で操作される、一連の分解及び分離工程において行われる。この分離工程は、カルバミン酸アンモニウム及びアンモニアの水溶液を含有する再循環液体流れ並びに場合によっては本質的にアンモニアから成る流れも得られる、この分野の特定の文献に記載のいずれの方法によっても行うことができる。適切な分離及び精製セクションは、例えば、上記の文献「Encyclopaedia of Chemical Technology」の図1〜5に図式化されたものである。
【0095】
このようにしてカルバミン酸アンモニウム及びアンモニアから分離された尿素は一般に水溶液として得られ、水溶液を最後の真空脱水工程(0.001MPaまで下げる)に供することにより、一方では水が、もう一方では通常の「顆粒化」方法等に送られる実質的に純粋な尿素が得られる。
【0096】
尿素の分離及び精製工程には、合成プラントを後にする廃水の最後の脱水工程及び精製セクションも含まれる。
【0097】
分離及び精製工程の異なるサブセクション(中圧及び低圧でのカルバメートの分解、カルバメートの再凝縮、尿素の脱水、廃水の精製)から来る、カルバミン酸アンモニウムを含有する異なる液体又は二相流れは単一の再循環流れにおいて回収され、凝縮工程に送られる。
【0098】
尿素の分離及び精製の特定の実施形態において(どの場合も、本発明の範囲に含まれる)、再循環されたアンモニア及び二酸化炭素は、カーボネート、バイカーボネート、カルバミン酸アンモニウム又はこれらの混合物(その温度及び圧力による)として存在する。
【0099】
本発明の目的及び利点をよりわかりやすく説明するために、以下にて実施例を幾つか挙げるが、これらはいかなる場合にも請求項の範囲を限定するものではない。
【0100】
以下の実施例において、二酸化炭素はアンモニアを含有する液体流れにおいては実質的にカルバミン酸アンモニウムの形態であるという事実に関係なく、異なる流れの組成は、基礎となる成分である尿素、アンモニア、二酸化炭素及び水を基準として表される。空気及び不活性生成物は、単に「空気」と表されるが、これは合成サイクルにおける領域条件下での酸素消費が、取るに足らないに近いものだからである。
【実施例】
【0101】
実施例1
尿素を合成するために、本発明に従って操作して方法を実行した。適切な量の空気を含有する、圧縮・加熱ユニットCから来るCO流れは、ストリッパS1の底部に供給された。これ以上の量の空気又はその他の不動態化剤は、ストリッパの底部に別途導入されなかった。図1及び図2に図示のスキームを参照する。
【0102】
以下の成分を反応器R1に供給した。
ライン15aからの663kg/時間のCO及び5kg/時間の空気
ライン17からのカルバミン酸アンモニウム溶液としての470kg/時間のCO、650kg/時間のNH及び300kg/時間の水
ライン16からの717kg/時間の純粋なNH
【0103】
反応器は、15.9MPa及び188℃で運転され、凝縮器CC1は15.4MPa及び約155℃で運転される。
【0104】
具体的には
O=202kg/時間
CO=172kg/時間
NH=380kg/時間
から成る、カルバメートが豊富な水性流れ12は、ストリッパS1の下流の精製・濃縮セクションPから回収され、ライン12を通して、ストリッパS1から来る流れ13に合流した後に凝縮器CC1に送られた。
【0105】
O=2kg/時間、CO=2kg/時間、NH=50kg/時間、空気=5.5kg/時間から成るガス流れ18を、凝縮器CC1を後にした流れ14から分離器Vにおいて分離し、残った流れ17を反応器R1に再循環させた。
【0106】
全体として、以下の成分がライン16aを通して反応器R1に送られた。凝縮器CC1における尿素の生成は、正式にゼロであると見なされた。
O=300kg/時間
CO=470kg/時間
NH=1367kg/時間
【0107】
生成された尿素を全て含有する、反応器のオーバーフローTから排出された液体流れ10は、ストリッパS1に送られた。具体的には、液体流れは以下の組成を特徴とする。
尿素=1000kg/時間
O=600kg/時間
CO=400kg/時間
NH=800kg/時間
空気=5kg/時間
【0108】
ストリッパは、自己ストリッピング条件下で15.2MPa、底部温度205℃で動作する。
【0109】
以下の組成を特徴とするガス流れ13は、ストリッパS1の頂部から排出された。
CO=300kg/時間
NH=320kg/時間
O=100kg/時間
空気=5.5kg/時間
【0110】
以下の組成を特徴とする、不動態化剤として空気を含有するCO流れは、ライン15bによってストリッパの底部に供給された。
CO=70kg/時間
空気=0.5kg/時間
【0111】
図1を参照しながら以下のスキームに従うと、このCO流れは、最後の圧縮工程を後にしたCO流れの一部を同じ圧縮器の熱交換中間工程に再送することにより、ユニットCにおいて197℃にまで加熱された。5.5kg/時間の空気と混合された733kg/時間の新鮮なCOは、4つの圧縮工程C1、C2、C3、C4間を通過中に16.2MPaで圧縮され、110℃にまで加熱された。668kg/時間のこの混合物はライン9から、ライン9bによって交換器SC3に送られ、ここで混合物は、ライン5から190℃で来るCO流れとの熱交換により、SC3をライン7によって165℃で後にする。ライン5からのCO流れはSC3をライン6によって115℃で後にする。ライン7のCO流れは全て、ライン7a、3a及び9aによって反応器R1に供給され、ライン7bは閉鎖されたままであった。
【0112】
CO/空気の70.5kg/時間の残りの混合物は、ライン9からライン9c及び9dによって交換器SC1に送られ、ここで混合物は、ライン2から200℃で来るCO流れとの熱交換により、SC1をライン3によって197℃で後にする。ライン2のCO流れはSC1をライン4によって温度185℃で後にする。前記CO/空気混合物は、ライン3からライン3bを通ってストリッパS1に送られた。
【0113】
流動する生成物から成る液体流れ11は、ストリッパS1の底部から排出された。
尿素=1000kg/時間
O=500kg/時間
CO=170kg/時間
NH=480kg/時間
この液体流れは、続く尿素の精製工程及び濃縮工程に送られた。これらの工程は、実質的に、伝統的なSNAMPROGETTI尿素製造法を特徴付ける典型的な中圧、低圧の分離セクション及び濃縮セクションから成り、その一般的なスキームは、例えば、前述の文献「Encyclopaedia of Chemical Technology」の561頁に記載されている。
【0114】
実施例2
空気を含有する、ライン15bによってストリッパの底部に供給されるCO流れが以下の組成を特徴とすることを違いとして、実質的に、実施例1の方法が繰り返された。
CO=50kg/時間
空気=0.36kg/時間
【0115】
この流れも、実施例1のものとは異なる以下のスキームに従って、圧縮器の中間工程の通過により197℃にまで加熱された。
【0116】
5.5kg/時間の空気と混合された733kg/時間の新鮮なCOは、4つの圧縮工程C1、C2、C3及びC4の通過により16.2MPaに圧縮され、110℃にまで加熱された。ライン9によってC4を後にするCO流れ(738.5kg/時間)及び空気の全体がライン9bによって交換器SC3に送られ、ライン5から190℃で来るCO流れとの熱交換の効果により、SC3をライン7によって150℃で後にする。ライン5からのCO流れは、SC3をライン6によって125℃で後にする。
【0117】
ライン7によってSC3を後にする、50.36kg/時間の前述の流れの一部は、ライン7bによって交換器SC1に送られ、ライン2から200℃で来てライン4によってSC1を195℃で後にするCO流れとの熱交換の効果により197℃にまで更に加熱され、SC1から、ライン3及び3bによってストリッパS1に送られた。ライン3bは図2のライン15bに対応する。688.14kg/時間のライン7の流れの残り部分は、ライン7、7a、3a及び9aによって150℃で反応器R1に直接送られ、ライン9aは、図2のライン15aに対応する。ライン9cは閉鎖されたままであった。
【0118】
ライン15bによってストリッパの底部に供給される流れの流量の70.50kg/時間から50.36kg/時間への変化により、図2のライン13、14及び17におけるCOの量も、それに対応して実施例1に対して約20kg/時間低下する。
【0119】
実施例3
空気を含有する、ライン15bによってストリッパの底部に供給されるCO流れが以下の組成を特徴とすることを違いとして、実質的に、実施例1の方法が繰り返された。
CO=30kg/時間
空気=0.21kg/時間
【0120】
この流れも、実施例1のものとは異なる以下のスキームに従って183℃にまで加熱された。
【0121】
5.5kg/時間の空気と混合された733kg/時間の新鮮なCOは、4つの圧縮工程C1、C2、C3及びC4の通過により16.2MPaに圧縮され、110℃にまで加熱された。ライン9によってC4を後にするCO流れ(738.5kg/時間)及び空気の全体がライン9bによって交換器SC3に送られ、ライン5から190℃で来るCO流れとの熱交換の効果により、SC3をライン7によって147℃で後にする。ライン5からのCO流れは、SC3をライン6によって127℃で後にする。
【0122】
ライン7によってSC3を後にする流れ全体は、ライン7bによって交換器SC1に送られ、ライン2から200℃で来てライン4によって150℃でSC1を後にするCO流れとの熱交換の効果により183℃にまで更に加熱された。ライン3によってSC1を後にする30.21kg/時間の流れのかなりの部分が、ライン3及び3bによってストリッパS1に送られ、703.29kg/時間の残りの部分は、依然として183℃で、ライン3a及び9aによって反応器R1に送られた。ライン9c及び7aは閉鎖されたままであった。
【0123】
ライン15bによってストリッパの底部に供給される流れの流量の70.50kg/時間から30.21kg/時間への変化により、図2のライン13、14及び17におけるCOの量も、それに対応して実施例1に対して約40kg/時間低下する。
【0124】
上記の実施例に従って1年の運転期間に従って行われた方法の試験では、不動態化剤をストリッパに別途供給しなくても、大きな腐食現象は引き起こされなかった。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルバミン酸アンモニウムを中間体として生成することを伴う、高圧及び高温で、アンモニア及び二酸化炭素から尿素を合成する改良された方法であって、一般にストリッパと称される垂直型の装置において行われる、未転換のカルバミン酸アンモニウムのアンモニアでの分解・ストリッピングによる少なくとも1つの分離工程を含む高圧合成セクションを含み、前記工程が、前記方法に供給される新鮮なCO2の総質量に対して1〜15質量%の量の130〜230℃に加熱されたCO2流れを前記ストリッパの下部へ供給することを含み、前記CO2流れが、不動態化剤を、そのO2のモル当量が前記流れのCO2モルに対して0.05%〜0.80%となるような量で含有することを特徴とする方法。
【請求項2】
前記ストリッパに供給される前記加熱されたCO2流れが、150〜210℃の温度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ストリッパに供給される前記加熱されたCO2流れが、160〜200℃の温度を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記ストリッパに供給される前記加熱されたCO2流れの量が、前記方法に供給される前記新鮮なCO2の総質量に対して3〜12質量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記ストリッパに供給される前記加熱されたCO2流れの量が、反応器に供給される前記新鮮なCO2の総質量に対して4〜12質量%である、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
反応器に供給される前記CO2流れが、100〜200℃、好ましくは130〜185℃の温度である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記ストリッパに供給される前記CO2流れ及び反応器に供給される前記CO2流れの両方を加熱に供する、請求項1に記載に方法。
【請求項8】
前記新鮮なCO2が、熱交換中間工程を備えた多段階型圧縮器において圧縮される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記ストリッパの底部に供給される前記CO2流れが、前記CO2圧縮器の1つ以上の中間工程において加熱される、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記反応器に供給される前記CO2流れの少なくとも一部、好ましくは全体が、前記CO2圧縮器の1つ以上の中間工程において加熱される、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記反応器に供給される前記CO2流れが、圧縮されたCO2流れと、少なくとも、最高熱レベルを有する圧縮器の中間工程において加熱されたCO2流れとの適切な割合の混合物から成る、請求項8に記載の方法。
【請求項12】
130〜185℃の温度を有する、前記反応器に供給される前記CO2流れが、前記CO2流れの総質量の0〜40質量%の、100〜120℃の温度で前記反応器を後にする圧縮されたCO2と、前記CO2流れの総質量の60〜100%の、前記圧縮器の1つ以上の熱交換中間工程において140〜200℃の温度にまで加熱されたCO2流れとから成る、請求項8に記載の方法。
【請求項13】
前記反応器に送られるCO2の4〜12質量%にあたる前記ストリッパに供給されるCO2流れが、前記CO2圧縮器の1つ以上の熱交換中間工程において160〜200℃の温度に加熱される、請求項8に記載の方法。
【請求項14】
加熱に供される前記CO2流れが、前記CO2圧縮器の1つ以上の中間工程において外側又は管側にて加熱される、請求項8に記載の方法。
【請求項15】
カルバミン酸アンモニウムのアンモニアによる前記分解・ストリッピング工程が、自己ストリッピング工程である、請求項1に記載の方法。
【請求項16】
前記不動態化剤が、そのO2のモル当量が前記流れのCO2モルに対して0.10〜0.40%となるような量で存在する、請求項1に記載の方法。
【請求項17】
前記不動態化剤が酸化剤である、請求項1に記載の方法。
【請求項18】
前記酸化剤が、空気、酸素、酸素富化空気、過酸化水素又はこれらの混合物から選択される、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
前記酸化剤が空気である、請求項17に記載の方法。
【請求項20】
尿素の合成段階を含み、アンモニア/二酸化炭素のモル比が、2.7〜5.0、好ましくは3〜4である、請求項1に記載の方法。
【請求項21】
請求項1〜20のいずれかに記載の改良された尿素合成方法を実行するためのプラントであって、反応器R1が、ライン10を通して、「自己ストリッピング」条件下での運転に適したストリッパS1に接続され、次に、前記ストリッパが、その下部において、ライン11を通して尿素の分離及び精製セクションPに接続され、その上部において、ライン13を通してカルバメートの凝縮器CC1に接続され、次に、前記凝縮器CC1が、連続するライン14、17及び16aを通して前記反応器R1に接続され、前記反応器R1がまた、新鮮な二酸化炭素を供給するためのライン15aによって圧縮器Cに接続されている合成セクションを備え、前記圧縮器Cが、前記プラントに供給される新鮮なCO2の全てに対して1〜15質量%、好ましくは4〜12質量%のCO2流れを前記ストリッパに移動させるのに適したライン15bを通して、前記ストリッパS1の下部に接続されていることを特徴とするプラント。
【請求項22】
自己ストリッピング条件下での運転に適したストリッパを備えた尿素を合成するための既存のプラントを、前記プラントに供給される新鮮なCO2の総質量に対して1〜15質量%、好ましくは4〜12質量%のCO2流れを前記ストリッパそれ自体に供給するのに適した接続ラインをCO2圧縮器と前記ストリッパの下部との間に設置することにより改良して得られる、請求項21に記載のプラント。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2010−527949(P2010−527949A)
【公表日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508743(P2010−508743)
【出願日】平成20年5月19日(2008.5.19)
【国際出願番号】PCT/EP2008/004119
【国際公開番号】WO2008/141832
【国際公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【出願人】(593182347)サイペム・ソシエタ・ペル・アチオニ (5)
【氏名又は名称原語表記】SAIPEM S.P.A.
【Fターム(参考)】