説明

尿道内で用いる装置及びその方法

【課題】 基端部と先端部とを有する長尺部材を有する尿道内装置を提供する。
【解決手段】 長尺部材は、下部尿路内に、尿道前立腺部を少なくとも部分的に横切るように配置可能である。少なくとも基端部にて装置を固定するように膀胱頸部の一部と接触係合するように適合された基端アンカーが、前記長尺部材の基端部により、少なくとも間接的に支持されている。基端アンカーは、前記長尺部材の基端部から半径方向に延在する膀胱係合要素を含み、尿が、少なくとも基端部の周囲に、尿で膀胱頸部を実質的に洗うように自由に排出されることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医療装置一般に関する。より詳細には、尿道内装置に関する。さらに詳細には、アンカー構造物を有する尿道内装置であって、このアンカー構造物を通して、及び/またはアンカー構造物の周囲での尿の排出を可能にする尿道内装置に関する。
【背景技術】
【0002】
尿路障害は、特に、障害が、尿の停滞、排尿不全、または排尿困難のいずれかである場合に重大である。尿流障害は、尿の停滞、失禁、及び排尿困難を含む。尿の停滞は、脊髄損傷、チフス、腹膜炎、前立腺肥大、尿道狭窄、尿道炎、膀胱炎、膀胱腫瘍、または尿道結石を含む多くの原因のいずかにより生じることがあるが、原因はこれらに限定されない。これらの疾患及び他の症状を有する患者は、定期的な排尿、または膀胱からの排液を補助するための何らかの介入手段を必要とすることが多い。このような排液に不備があると、膀胱関連の上皮及び排尿筋が損傷されることがあり、また、尿路感染症を生じると一般に考えられている細菌の侵入の可能性が増し、これが、生命を脅かす腎不全を引き起こすこともある。
【0003】
現在、尿道前立腺部が尿流出力にもたらす作用を診断することを目的として、診療所及び診療所/家庭ベースで患者のモニタリングを行うことが、介入の概念を超えて広まりつつある。鑑別診断は、排尿の機能に寄与するように相互作用する3つの主要な解剖学的器官を認識することにより理解される。第1は、膀胱、第2は尿道、そして、第3は括約筋である。前立腺が尿道を、膀胱の出口と外括約筋の間の非常に短い部分にて取り囲んでいる。患者が排尿中に、別々の、または同時に生じる複数の困難として症状を明らかに感じる場合、大抵は治療が必要である。
【0004】
例えば、患者を悩ませる症候は、(i)不完全な排尿(すなわち、患者は、尿を少量、例えば、100ミリリットル(ml)未満しか排泄できず、または、排尿後の膀胱内残留尿量が増えていく(例えば、排尿ごとに100mlより多くなる);(ii)頻繁な排尿を余儀なくされる(すなわち、頻繁に尿意を感じる);(iii)排尿の間欠性(例えば、患者の尿流れが、排尿中にしばしば停止、開始を繰り返す);(iv)尿流が非常に弱く一貫していない;(v)ストレス失禁(例えば、膀胱内の過剰な尿または弱化した括約筋によるリフティングまたは引張における漏れ)である。ストレス失禁を除いては、これらの症状の各々により、さらに夜間頻尿症(すなわち、夜中何度も排尿を必要とすることによる睡眠不足)が生じることがある。
【0005】
米国で診療所を訪れる年間200万人までの人々が、何らかの形の下部尿路症(LUTS)に悩む患者である。先に述べたように、2つの主要な器官及び前立腺が排尿行為に含まれる。下部尿路症は、肥大した前立腺が尿道を圧迫することにより生じると大抵の場合に考えられるが、この症状は、膀胱機能の不規則性、または括約筋不全により生じることもしばしばある。したがって、膀胱下(尿道)閉塞(BOO)はLUTSの主要なサブグループである。55歳〜75歳の年齢の男性は、50〜75%が或る程度の膀胱下閉塞を有すると推測されるが、膀胱下閉塞が原因で下部尿路症状が出るとは限らない。
【0006】
膀胱下閉塞は、主に前立腺肥大(例えば、良性前立腺肥大(BHP))により生じ、これが、前立腺に囲まれた尿道(すなわち、尿道前立腺部)を半径方向に圧迫して尿流を妨害し(すなわち限定し)、これにより膀胱からの排尿が不完全になる(すなわち、臨床用語で言うところの「排尿後残留物」(PVR)が膀胱内に残る)。これまで、LUTSを有する男性には、長期間の薬物療法、もしくは侵襲性の不可逆的医療処置、例えば、経尿
道的前立腺切除術(TURP)、または非外科的処置、例えば、前立腺の熱療法以外に診断上の選択肢がほとんどなかった。
【0007】
泌尿器学の分野では、前立腺疾患の治療を受けている男性のうちかなり多くの人々が最適の結果を得ていないことがよく知られている。ブルスケウィッツによれば、良性前立腺肥大症(BPH)を、前立腺肥大、出口閉塞及び下部尿路症(LUTS)に関して論じることができる(ヨプセン(Jepsen) J.V.及びブルスケウィッツ R.C.による「前立腺肥大症のための総合的患者審査」(1998年、Urology51(A4):13〜18))。前立腺に起因するLUTSを生じると考えられている通常の要因(例えば、前立腺肥大、及び前立腺筋張力の増大)に加えて、下部尿路の他の状況も男性の排尿に影響を及ぼしており、それらについて考える必要がある。ブルスケウィッツは、BPHの総体的な症状の大部分は膀胱の機能不全により説明され得ると述べている。
【0008】
LUTSを有する男性に多く見られる膀胱の状態は、独立に排尿筋不安定及び排尿筋低収縮性を含み、または、これらが出口閉塞と結びついている(カプラン(Kaplan)
S.A.及びテ(Te) A.E.による「尿流速計及び尿力学」(1995年 Urologic Clinics of North America 22(2):309〜320))。カプランは、前立腺肥大症を有する787人の男性のうち、504人(64%)が明白な前立腺尿道閉塞症であり、そのうち318人が排尿筋不安定を伴うことを発見した。このグループにおいて、181人が単独の診断において排尿筋不安定であった。障害性排尿筋収縮性は134人(17%)に見られ、これらのうち49人が単独の診断において障害性排尿筋収縮性であった。ブルスケウィッツらは、最終的治療を受けている人を含む、LUTSを有するかなりの数の男性に閉塞がないことも示している(アブラム(Abram) P.による「下部尿路症を有する男性の審査のための圧流研究の擁護」(1994年、Urology44(2):153〜55))。前立腺の最終的処置後の患者の満足率は100%〜75%以下で変化する。満足が得られない場合は、認識されない膀胱機能不全が関連していることがある。ブルスケウィッツは、膀胱の機能不全は(LUTSの審査及び治療において)より多くの注目を受けるべきであり、治療の量を増やすためにより良い処置が開発されるべきであると結論付けた。現在、膀胱下閉塞を判断するための尿力学的方法は、概して、尿流テスト、圧流テスト、及び、患者の概略的な病歴/診断を含む。
【0009】
尿流テストは、排尿筋と尿道との、尿流への協働的作用に関する情報をもたらす。尿流テストの限界は、低流量及び低排尿パターンが、出口閉塞によるものか、もしくは排尿筋の低収縮によるものか、またはそれらの両方によるものかどうかを全ての場合に確実に決定できないことである。また、このテストは、患者側の原因、例えば、不安感及びテストの実行性(すなわち、収集容器への尿流の方向)により影響され得る単一の行為に過ぎない点で問題である。アブラムは、外科手術を行う患者を選ぶために尿流を用いた場合、成功率は70%に過ぎないことを示した(アブラム P.H「前立腺膀胱炎及び前立腺切除術:手術のための術前審査における尿流測定値」(1997年、J.Urol、177:70〜71))。
【0010】
圧流テストを、出口閉塞を定義づけるために用いることができ、また、圧力テストは膀胱の収縮性及び性能についての情報をもたらす。しかし、圧流テストは、患者により確認されているように、治療の成功の予測において尿流テストよりもはるかに好ましいわけではない(75%v64%)。(ヨプセン J.V.及びブルスケウィッツ R.C.による「良性前立腺肥大症のための総合的患者審査」(1998年、Urology51(A4):13〜18))。したがって、泌尿器学の分野及び医療政策研究機関(AHCPR)は、圧流テストの常用に正当性を見出していない。
【0011】
最後に、膀胱下閉塞のためにLUTSを有すると考えられる患者の標準的な精密検査は、概して病歴審査及び物理的検査から成り、これらは、前立腺容量、PSA、尿流テスト、生活の質、ならびに症状及び悩みの指数の査定を含む。これらの結果に基づいて治療が決定される。これらの鑑定を用いても、膀胱機能に関する潜在的な問題を検知することはできない。
【0012】
伝統的な尿力学的テスト方法は、例えば、尿の保持及び排出時の尿動態撮影、膀胱内圧測定、尿道圧プロファイリング、超音波による容量(すなわちPVR)の測定、及び尿流速計を用いた方法であり、これらは各々、膀胱の充満/排出状況(すなわち、動態)に向けられている。これらの方法の代わりに、尿道内装置、及びそれに伴う方法が、特に膀胱下閉塞の性質を突き止めるために開発されてきた。例えば、自然な排尿中に下部尿路の構造物が装置の一部に対して、連続的かつ漸進的に生理学的に作用することを可能にすることにより、下部尿路症の診断を促進する注目すべき流体力学的変化が観察される。
【0013】
尿流の問題に対処するために、尿道及び/または膀胱内に配置される装置が開発されている。これまでに知られている装置の問題及び不利点は、装置の重要な要素(例えば、弁アクチュエータ、尿流導管など)を取り囲む尿道環境に関連した有害な影響(すなわち、点蝕、堆積など)を含む。これらの影響は、最低でもこれらの装置の効果を減少し、最大では装置の部品を欠損させ、または装置全体の効果を喪失させ、緊急の除去を必要とし、また、場合によっては尿路の損傷の修復を必要とする。装置の漏れ、または膀胱からの不完全な排出に関する問題も広く知られている。また、装置の展開及び装着、配置、再配置及び保持(すなわち、十分な固定)に関する問題も多く報告されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
尿道内装置が、位置(すなわち、生理学的に適切に展開されかつ安定した位置)に対して安定し、かつ快適に装着されることが、尿道が接触に対して敏感であるため、特に重要である。尿道内ステントが、男性の前立腺領域の尿道内に用いられてきたが、多くのユーザが不快感及び/または痛みを感じたため、これらの装置の代わりに別の治療を用いた。女性の尿失禁のための多くの尿道内装置についても同様に評価されてきた。臨床所見に基づいて、多くの装置が快適でなく、したがって、治療法としての有用性を深刻に妨げることが示されている。膀胱内に移動する装置もあり、また、引張状況下にて排出される装置もあった。
【0015】
また、装置が必要以上に侵襲的でないことは必須条件である。例えば、装置が下部尿道の構造物と、特に固定機能の達成において最小限に係合することが有利である。例えば、クーパー腺を含む尿道前立腺部の分泌物が、性的機能中も、またはその他の機能においても臨床的に有益であり、分泌物の一部が尿路感染症の防止を補助する抗菌物質から構成されていることがよく知られている。また、膀胱頸部を尿で洗うことが感染予防を補助すると考えられている。概して、尿道内装置の外側の尿流は、尿が排出されるとき尿路内の流体が尿道から自由に流れることを可能にし、それにより、生理学的に、より正常な排出を可能にする。したがって、尿道内装置を、短期間または長期間の使用において、介入的、診断的、または他の目的のために安定して固定し、同時に装置を、生理学的に適切に、非外傷的に展開及び保持することが重要である。
【課題を解決するための手段】
【0016】
基端部及び先端部を含む長尺部材を有する尿道内装置を提供する。長尺部材は、下部尿路内に、尿道前立腺部を少なくとも部分的に横切るように配置可能である。基端アンカーが、膀胱頸部の一部と接触係合して前記装置を少なくとも基端にて固定するようにように適合されており、基端アンカーは、長尺部材の基端部により、少なくとも間接的に支持さ
れている。基端アンカーは、長尺部材の基端部から半径方向に延在する膀胱係合要素を含み、尿が、膀胱頸部を尿で実質的に洗うように、少なくとも基端部周囲にて自由に排出されることができる。
【0017】
本発明の複数の実施形態の装置は、特に、装着可能な尿力学的装置として一時的な短期間の使用に適しており、これらの装置は、下部尿路症(LUTS)または前立腺肥大症を有する男性患者の尿道前立腺部の開放を補助するように排尿開始を可能にし、それにより、症状の一時的な緩和または改善、及び、臨床医と患者とが協働して症状をモニタリング及び審査することを可能にする。これは、膀胱及び膀胱出口の、尿流、排尿パターン及び症状への作用を評価することを目的としている。
【0018】
好ましくは、装置は、尿道前立腺部を膀胱頸部から尿道括約筋の基端側まで横切るように配置され、装置の基端端のバルーン、及び先端端の柔軟なシリコーンアンカーにより所定位置に保持される。フォーリータイプのカテーテルと同様に、基端端の5ccバルーンが膀胱頸部内に配置されて尿道内装置を保持する。シリコーンアンカーが尿道内装置の先端端に縫合により取り付けられる。縫合の長さは、括約筋の長さを横切り、アンカーを括約筋の先端側に配置して膀胱内への移動を防止する長さである。尿道内装置は、一旦配置されると、膀胱収縮及び括約筋弛緩といった生理的機能中に尿道前立腺部を通る尿流を導き、排尿機能への潜在的な尿道前立腺部閉塞の影響を排除する。標準的な尿流テスト及び家庭でのモニタリング中に、尿道前立腺部の所望の区域にわたって固定オリフィスを設けることにより、尿道内装置は、今までに知られている構造及び/または方法を用いては現在得ることができない、膀胱機能に関する情報を得ることを可能にする。
【0019】
特に、閉塞が生じているならば、装置は、閉塞部にわたり固定オリフィスを設けて、膀胱及び括約筋の排尿要素を別々に解放させることができ、かつ、それに伴う症状の緩和をもたらすことが可能である。尿流テストを、所定位置に尿道内装置を用いて、または用いずに行うことにより、泌尿器科専門医は、流量障害及び排尿パターンが尿道前立腺部の閉塞によるものか、あるいは内在する膀胱の機能不全によるものであるかについての情報を得ることができる。例として、流量の減少が尿道前立腺部の閉塞のみによるものであれば、尿道内装置を所定位置に配置して排尿を測定したときに流量が増大し、かつ尿流パターンが正常に近づくことが期待されるであろう。反対に、尿流の減少が主に膀胱の機能不全に関係しているならば、または、膀胱の機能不全と尿道閉塞の結びつきによるものであれば、尿道内装置を所定位置に配置しても、流量及び尿流パターンの正常化は期待できないであろう。
【0020】
現在、症状の現れ、または症状による患者の悩みは、治療を決めるための重要な決定的ファクターであり、症状及び症状による悩みは、治療の成功を決付づけるための重要な結果である。尿道内装置を挿入した状態、及び挿入しない状態で、排尿パターン及び尿道症(例えば、排尿量、排尿頻度、緊急度、夜間頻尿、流れの強さ)を家庭でモニタリングすれば、尿道前立腺部(閉塞)の、これらのパラメータへの影響に関する情報が得られ、現時点では得られない重要な情報がもたらされるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
本発明の、一時的に用いられる尿道内装置に多くの臨床用途の可能性があることが明らかになる。これらの用途は、急性尿停滞の患者の尿流が回復するまでの一時的な処置、家庭及び診療所での患者の尿流及び症状のモニタリング、または、外科的リスクの少ない患者に、より長期間にわたり使用できること、もしくは治療までの待機に用いることを含む。本発明の尿道内装置の機能は、これらの臨床用途の各々に適応するのに必要な属性を有する。上記の臨床的ニーズの各々の実施可能性は先駆的段階にあり、現在、FDA(食品医薬品局)に認可され、または米国内で販売されている装置はない。上記の3つの臨床的
ニーズはいずれも、本発明の実施形態を全て、また入れ換えて用いて、鑑別診断に用いるさらなるデータ及び情報を得るための処置及びモニタリングと組み合せれば、十分に満たされ、また臨床的に実現可能となろう。
【0022】
図1に、ヒト男性の膀胱及び尿道(すなわち、下部尿路)を概略的に示す。膀胱30は一時的に尿32を溜め、膀胱30が収縮して膀胱頸部34が開くときに定期的に尿を排出させる。尿32は、前立腺38により完全に囲まれた尿道前立腺部36を通る。前立腺38の先端端が、精丘40と称される小突起部により認識される。これは重要な標認点である。なぜなら、精丘までの先端部に、排尿開始後すぐに弛緩する外尿道括約筋42があるからである。精丘よりも先端の部分は、尿32を外尿道口46より体外に自由に排出させる尿道44である。
【0023】
図2を参照する(図8,10及び12も参照のこと。これらの図において、類似の構造物には、それぞれ、図2の参照番号+600,+700及び+800の番号を付してある)。尿道内装置50が示されている。装置50は、概して、基端部54及び先端部56を有する長尺部材52を含み、長尺部材52は、下部尿路内に、尿道前立腺部を少なくとも部分的に横切るように配置可能である。基端側のアンカー58が、好ましくは、装置を少なくとも基端側にて固定するように膀胱頸部の一部と接触係合するように適合されており、長尺部材52の基端部54により、少なくとも間接的に支持されている。基端アンカー58は、長尺部材52の基端部54の一部から半径方向に延在する、膀胱と係合する要素60を含み、尿は、少なくとも基端部54の周辺にて実質的に膀胱頸部を尿で洗うように自由に排出されることができる。好ましくは、膀胱係合要素60は、基端アンカー58の本体64から、尿がアンカー本体64の外面周辺またはその周囲に自由に排出可能であるように半径方向に延在するが、必ずしもその配置でなくともよい。先端側のアンカー62が、少なくとも先端部にて装置を固定するように尿道球部の一部と係合するように適合されており、アンカー62は、長尺部材52の先端部56の少なくとも一部により支持されている。長尺部材52は、以下に説明するように、基端側のアンカー要素または構造物と先端側のアンカー要素または構造物との間に介在してもよく(図2及び8)、あるいは、これらの要素または構造物の間に少なくとも間接的に延在してもよい(図10及び12)。
【0024】
以上の説明から明らかであるように、長尺部材の形状または全体の構造は、尿道内装置の必要とされる機能(すなわち、診断及び/または治療中の生理状態)に応じて幅広く変えられることが理解されよう。介入的セッティングにおいて、長尺部材は、概して、内腔を収縮させずに無傷の開存を保証する程度の支持をもたらす。例えば、「尿道内装置及び方法」と題された同時係属中のPCT出願第01/24817号を参照されたい。この出願を援用して本文の記載の一部とする。あるいは、例えば診断上のセッティングにおいて、長尺部材は、尿道の一部、すなわち尿道前立腺部と係合するための選択的な半径方向反応部分を含み得る。半径方向反応部またはダイヤフラムは2つの機能を有する。これらの1つは、下部尿路の一部を通る流体の圧力及び/または流体流を定性的及び/または定量的に査定することを促進する、半径方向内側及び外側への選択的な反応であり、もう1つは、尿道構造物の性質(すなわち、尿道前立腺部の構造、及び、尿道前立腺部の構造物間の関係)を、それぞれを採型することにより記憶することである。例えば、「診断用の尿道組立体及び方法」と題された、同時係属中の米国特許出願09/943,975号を参照されたい。この出願を援用して本文の記載の一部とする。
【0025】
図2及び2Aを参照すると、図示されている尿道内装置(すなわち、ステント)は、尿道球部の一部と係合するように適合された先端アンカー62、及び、膀胱頸部の一部と接触係合するように適合された基端アンカー58を含む。これらのアンカーは、支持要素または支持構造物52により連結されている。先に記載したように、長尺部材、または尿道
内装置の中央部に関してぴったりと合う機能を、この例においては、構造的支持体66を含む支持要素が有する。支持体66は、好ましくは、シリコン被包された、約0.0305cm(0.012インチ)のステレンス丸鋼を巻いて形成されたコイルである。可逆的伸張性の膀胱係合要素60の膨張を容易にする流体導管68が、先端を指向して、装置の長手方向軸に沿って充填マニホルド70から先端アンカー62へ延びている。長尺部材52の少なくとも先端部56と一体的な排液口74から栓72を外すことにより、流体システムを空にすることができる。この方法及び構造は、先に記載した同時係属中の出願、PCT01/24817号に記載されている方法及び構造に準じる。
【0026】
好ましくは、引張部材76が、支持体66に隣接して延在している。引張部材76は、流体導管68に平行に延在するように示されているが、このような配置に限定されることはない。引張部材76は、流体導管68に直接接触して延在しても、あるいは、流体導管68の周囲に巻き付けられてもよい。理解されるように、引張部材76は、流体導管68が十分に硬く、または十分に補強されているならば、余剰物(すなわち、余分)となるであろう。この装置の好ましい構造において、引張部材は比較的軽い力により長手方向軸に沿って圧縮可能であるが、引張部材は、軸方向において比較的剛性の高い材料、例えばステレンス鋼ワイヤから構成されてもよい。
【0027】
基端アンカー58は一般に、本体64、及び、本体64から半径方向に延在する膀胱係合要素60を有する。公知の膀胱排液補助体と比較すると、尿を、しばしば膀胱頸部と称される膀胱の最下部から排出させることができ、尿は、本体の外面周辺/周囲を、実質的に膀胱頸部を洗うように自由に排出可能(すなわち、側流状態)である。
【0028】
後に説明されるように、基端アンカー及び先端アンカーにより可能になる尿の側流路は、複数の理由で有利である。第1に、尿は、膀胱頸部と、より自由に接触し、かつ膀胱頸部を洗うことができる。第2に、排尿後に膀胱内に残留する尿の量が減少する。第3に、内部通路が尿流を通路の境界に限定しない。尿は、尿道と協働して流れ得る。これは重要なことである。膀胱の機能は、加齢に従い、前立腺障害により、または独立に衰えることがある。膀胱排尿周期の作用性は限定されている。筋肉は、排尿のために使用され得るエネルギーを使い果たすまで収縮するだけである。エネルギーを使い果たすと筋肉は疲労し、膀胱内に残留する尿の量に関係なく収縮をやめる。この残尿は排尿後残留(PVR)と称され、これが意味することは少なくともさらに2つある。PVRが高ければ、再びトイレに行くまでの時間が早まる。これが睡眠中であれば、睡眠が不完全になり、これによる悪影響が生じるであろう。また、PVRが高いと、少なくとも尿路感染症に罹り易くなることが多くの場合に見られる。
【0029】
基端アンカー58の膀胱係合要素60は、アンカー本体64の面の周囲に間隔をあけて配置されることが有利である。好ましくは、膀胱係合要素60は対向するように対で配置される(図2A)が、この配置に限定されることはない。膀胱係合要素60が弾性であり、好ましくは、可逆的に膨張可能である(例えば、膀胱係合要素60は、図2/2Aに示されているように、対向して対で配置されたバルーンであり得る)ことがさらに有利である。好ましくは、膀胱係合要素60は、接触により歪んでなく、または他の理由で負荷をかけられていないときには魚雷の形状であり、要素が適切に充填されると、この形状は流体抵抗を最小するように働く。容易に理解されることがあるが、下部尿路内に装置を適切に安定して配置するために、低抵抗は重要な考慮事項である。
【0030】
弾性の膀胱係合要素60の、アンカー本体64(または、長尺部材52の基端部54)に対する境界は、このような尿道内装置、またはこのようなタイプの装置を可逆的に展開するための方法及び構造物(すなわち、挿入/充填ツール)と共に、本文中に先に参照した、「尿道内装置及び方法」と題された本発明の出願人による同時係属中のPCT出願第
01/24817号にその概要が開示されている。意図される尿道内装置の性質(すなわち、構造的性質)に適応させるためのこの出願に対する修正または適合は、当業者の技術範囲内で行われるであろう。
【0031】
基端アンカー58は、さらに、少なくとも1対の尿流路78を含み、これらの流路の各々が、隣り合う膀胱係合要素60により画成され、または境界が画定されている(特に2Aを参照のこと)。尿流路78は、高い流量率をもたらし、尿道を比較的完全に尿で洗うこと(すなわち、側流としても知られる、装置の周辺または周囲の流れの概念)を可能にする。尿流は、ヒトの排尿開始時に身体の自然な機能により外括約筋が拡張することで開始する。図8〜9に関して後に詳細に記載するように、図2の装置に見られるような先端アンカー62は、要素、及びこれらの要素の相互関係を有し、これは、基端アンカー58の要素及びそれらの相互関係とほぼ対応している。
【0032】
続いて図2Aを参照する。図2Aは、使用位置での尿道内装置を基端端部80から軸方向に見た様子を示し、基端アンカー58は尿道装置50を、尿道内へ移動しないように固定する(この図には示さず)。長尺部材52に、薬剤、防腐薬などの流体の導入を可能にし、または、挿入/膨張ツールを膀胱に装填することを可能にする通路または管腔82を設け得ることが有利である。随意に設けられるこの通路は装置の挿入後に開閉され得るが、図2の装置が、挿入装置の除去後に閉じられる通路を有し、この閉鎖が、静止状態の尿が痂皮を形成し得る領域を限定することが好ましい。
【0033】
ここで、図3〜7及び3A〜7Aを参照すると、別の基端アンカーの構造が示されており(すなわち、装置の構造または要素を、場合に応じてより広く示す)、これらの構造は、最低でも側流を可能にし、それにより洗う効果をもたらし、また、装置の圧力プロファイルを最小にする。幾つかの基端アンカーの構造に、尿を受けかつ尿の通過を可能にするように適合された構造物(例えば管状部)を含む長尺部材52がさらに設けられ、あるいは、少なくとも設けられることが考えられる。管状部は、尿道前立腺部内に存在するように配置することができる。装置のこの構造は、膀胱の出口が特に限定されている患者に最も有利であろう。
【0034】
図3/3Aは、基端アンカー158を有して構成された尿道内装置の基端部54を示す。基端アンカー158は、本体164、及び、本体164から半径方向に延在する膀胱係合要素160を有する。アンカー本体164は、この特定の構造において、長尺部材の基端部54の一部であり、本体164は、12〜16フレンチの直径を有し、内径は、5〜8フレンチである。この構造により、尿の大部分が基端アンカーの周囲を通過する。基端アンカー158の膀胱係合要素160が、図示されているように2つのフロート状(pontoon−shaped)の突出部に形成されることが容易に観察される。この形状は、膀胱係合要素160の各々(例えばバルーン)を、長尺部材の基端延長部54の対向側部(すなわち、アンカー本体164の面)に、約60度の角度に沿って接着することにより得られる。こうして、尿は、容易にアンカー本体164の各側部の尿流チャネル178の周囲を通過して膀胱出口へと流れ得る。そこから、尿は装置の軸に接して流れる。また、尿は、長尺部材の基端部54の開口部184を通して受け入れられることができ、それにより管腔182を通過して、長尺部材の先端に開口された対向端156(すなわち、図示されていない先端部)にて排出され得る。これは、先に記載した、本発明の出願人の同時係属中の主題に準じる。
【0035】
図4/4Aは、間隔をあけて配置された、好ましくはパッド付きのスプライン260を含む膀胱係合要素を示す。パッド付きスプライン260は、アンカー本体264の、すなわち、この特定の構造においては長尺部材の基端端部54の外面から半径方向に延在し、またはこの面と一体的に形成される。パッド付きスプライン260は尿路係合ヘッド26
1を含み、特には、ヘッド261を半径方向において終端とする。ヘッド261は、尿道構造物との接触領域を増大させ、それにより、尿道構造物との係合をより穏やかにする。図3/3Aの構造を用いると、尿の「通流」が有利に達成され得る。
【0036】
図5/5Aは、長尺部材の基端部54を示す。長尺部材の基端部54は、長尺部材の周囲または外面の一部の上に、長尺部材の長手方向軸に沿って、または長手方向軸と平行に延在する突状物300を有する。また、この構造において、長尺部材52の長手方向軸に沿って延在する、対向する1対のスプライン360を設けることが考えられる。これらのスプライン360は、図4/4Aの構造と同様に尿道を穏やかに支持し、かつ、隣り合う膀胱係合要素360により、長尺部材の基端部54の外面に対して境界を画定し、また、この構造においては、突状物300とスプライン360の各々とで境界を画定することを可能にする。
【0037】
図6/6Aは、基端アンカーのさらなる構造を示す。この構造において、長尺部材の基端部54の少なくとも一部は図4/4Aの基端部54と同様に構成されており、より詳細には、図6/6Aの構造は十字形の断面を有し、図4/4Aの型のスピンドル260のヘッド261はほぼ存在せず、また、長尺部材の基端部54にカール402が一体的に形成されている。長尺部材52の半径方向に延在する尿路係合要素460(すなわち、十字形の部分またはスプラインの各々の終端または端部)が、尿道を、スプライン460と尿道との接触により開いた状態で支持し、かつ、尿道と凹部478の間を尿が流れることを可能にする。凹部478は、十字形の隣り合うスプラインにより、尿の通過を可能にするように画成されている。
【0038】
最後に、図7/7Aの基端アンカーに関しては、先に記載した配置の組合せを示す。半径方向に延在するバルーン560が、ほぼ十字形の断面を有する長尺部材の基端部54またはその付近に、周方向に間隔をあけて設けられている。すなわち基端部54は、半径方向に延在する、間隔をあけて配置された複数のリブ563、より詳細には、対向して対にされた半径方向に延在するリブ563を有するプロファイルド要素であり、リブ563は、尿道と凹部578の間を尿が流れることを可能にしている。凹部578は、十字形の隣り合うリブにより、尿の通過を可能にするように画成されている。
【0039】
図8/8A及び9を参照すると、尿道内装置650が示されている。装置650の配置は、図2に示した装置と全体的な配置が類似しており(すなわち、これらの装置は共通に、基端側の固定具と、螺旋状の支持要素を含む長尺部材とを含む)、装置650には、先端側の周流アンカー機構662が組み込まれている。先端アンカー662は、必然的にではないが、好ましくは、本体665、及び、本体665から延在する尿道係合要素661を含む。より詳細には、尿道係合要素661は先端アンカー本体665の外面周囲に周方向に間隔をあけて配置されており、要素661はこの外面から半径方向に膨張可能である。先端アンカー662は、さらに、少なくとも1対の尿流路678を含み、流路678の各々は、隣り合う尿道係合要素661により画成されている。尿道内装置の固定が、基端部654、先端部656、または、これらの各々の間での固定機能の分担により十分に達成され得ることが容易に理解されよう。
【0040】
尿道内装置650は、基端端部654及び先端端部656を有する。図8は、装置650が、基端アンカー部材(例えばバルーン)664及び先端アンカー部材(例えばバルーン)662を「充填された」状態で(すなわち、装置のアンカー要素が膨張されている)有する様子を示し、図9は、装置650が、基端アンカー部材664及び先端アンカー部材662の内部に流体を有さない(すなわち、装置のアンカー要素が収縮されている)様子を示す。図8Aは、図8の先端アンカー662のセンターラインにおける断面図であり、充填導管668が先端アンカー662の内部と流体連通している様子を示す。尿が、尿
道球部内で先端アンカー本体665の付近を容易に流れ得ることが理解されよう。この特定の装置650は、連続的に並んだ4つの領域、すなわち、長尺部材の基端端部から先端方向へと続く領域I,II,III及びIVにより最良に示されるであろう。
【0041】
通路682が、長尺部材652の基端端部654のオリフィス684から第1領域Iに延在している。尿道前立腺部内に配置される第2領域IIが、開放構造物、すなわち、開放ピッチコイルから成り、コイルは、長尺部材652の基端部654の壁部内に延在し、引張部材676(領域II)を終端とし、または部材676に統合され、もしくは取り付けられる。そして、引張部材676は、アンカー662を含む先端領域IVにて終端となる。引張部材676は、また、安全のために基端部654の端部に収束し、または取り付けられている。第1領域Iと先端アンカー662の間の内部流体連通は導管668を介して達成される。導管668は引張部材676から軸方向に分離しているように示されているが、導管668と引張部材676とは、好ましくは非常に近接し、または同一の要素である。
【0042】
この尿道内装置の開放構造は、尿が排出されるときに尿が尿道壁に接触し、かつ尿道に沿って流れることを可能にする。これは、図2の構造により得られる効果と同様に、前立腺から尿道への自然な分泌を可能にしてそれらの自然な環境をもたらすという有利な効果を有する。これらの分泌は天然の感染抑制物質として有利であり、また、性的機能に関与することが知られている。引張部材676は、好ましくは、シリコンコーティングされた絹縫合材料から構成され、あるいは、より硬質の材料、例えば、コーティングされたステレンス鋼ワイヤから構成される。
【0043】
ここで、図10〜20を参照する。尿道内装置のための機械的な先端アンカー762が示されており、より詳細には、ウィングタイプの構造物が尿道内装置の長尺部材に繋がれている様子が示されている。全体を通じて強調されることであるが、種々の装置に本発明の新しいアンカー構造物が、単一で、または組み合せて有利に統合され得る。例えば、図10の装置は、今までに知られている基端固定部を機械的アンカー762と組み合わせた様子を示す。このスタイルの装置において、周方向に配置された膀胱(図11においては膨張していない様子が示されている)が、長尺部材の基端部の外面周囲に、膀胱頸部の一部と完全に係合するために支持されている。基端アンカーの付近にて、長尺部材の基端部が、1または複数の開口部を含んで尿を受け入れ、長尺部材(例えば、管状部材)の内部へ流すように適合されている。図12の装置は、図示されているような、また、図2に関して先に記載したような周流または側流をもたらす基端アンカーを有する尿道内装置を示す。
【0044】
再び図10〜14Aを参照すると、先端アンカー762(または862(図12/12A)、962(図13/13A)、1062(図14/14A)、1162(図15)、1262(図16)、1362(図17)、1462(図18)、1562(図19)、及び1662(図20))が、概して、尿道と係合する要素または部分761を有する本体765を含み、尿道係合要素または部分761は、本体765から延在し、または本体765とは独立し、または本体765と一体的である。図面を見れば容易に理解されるように、先端アンカー要素762は特にロープロファイルであり(すなわち、尿の排出をほとんど妨害しない)、展開(例えば、挿入ツールからの解放などによる)後に可逆的に伸張される。機械的アンカーは、好ましくは、アンカーの先端端部に向って先細になり、このような構造は、以下に論じるように、機械的アンカーの取出しに役立つ。
【0045】
先端アンカー762は、好ましくは、シリコーンにより被包されたばねストラット786、または、直接もしくは間接的に中央ハブ788から延在する特定の配置のストラットまたはストラット部を含むが、これらのストラットに限定されることはない。例えば展開
後に弾性的に伸張されるとき、ストラット786は尿道壁の一部と不連続に係合するように伸張する。図12Aに示された構造において、長尺部材852の一部が、周方向に間隔をあけて配置された半径方向に延在するリブ863による十字形の断面を有することが分かる。
【0046】
図13〜14Aに関して最良に示されているように、ほぼ湾曲した、または弧状の、または低湾曲性の先端アンカーが、尿道球部内での展開中または展開時に、展開された「C」字状の、または他の湾曲/アーチ状の断面を有する。展開後に、静止状態で最大寸法(すなわち、横方向の寸法)に近づくことが先端アンカーの性質である。弾性の機械的先端アンカーは、長手方向に変形可能である(すなわち、互いに近づくように動く対向側端を有することにより(図13A及び14A)、先端アンカーの長さの少なくとも一部にわたって弾性的に変形可能である)。
【0047】
図12〜14Aの図に共通して、機械的アンカー862は、長尺部材852の末端部856から末端方向に延在するように繋がれ、または連結されている。検索用のテザー(係留具)890が、装置の取出しを全体的に容易にするために先端アンカー862の端部に固定されており、検索テザー890は、さらに、ドレンテザー892及び取出しテザー893に連結されている。これらのテザーの機構及び機能は、関連する方法と共に、先に記載した同時係属の出願において十分詳細に説明されており、この出願を援用して本文の記載の一部とする。
【0048】
ここで図15〜22を参照すると、別の先端アンカーの構造が(すなわち、装置の構造または要素が、場合に応じてより広く)示されている。これらの構造は、最低でも側流を可能にし、それにより、洗う作用をもたらし、また、装置の圧力プロファイルを最小にする。以下の構造の全てが機械的ではなく、可逆的伸張のための流体の導入に依存しているものもある(すなわち、アンカー要素自体が、先に論じたアンカーウィングのようには本質的に弾性でないことがある)。先端アンカーは、本質的に機械的であり、より直接的、適切でかつ確実な展開が得られることが好ましい。
【0049】
図15/15Aは、単一のリング(すなわち、Oリング)の先端アンカー要素を示す。この機構は、挿入作業中に張力下で配置され、Oリングは、尿道に容易に導入され得る長円形または長円状の外形に変形される。Oリングが適切に配置されると、加えた張力を解除することにより要素は弛緩状態に戻る(すなわち近づく)ことができる。次いで、このアンカー要素は、尿道球部に実質的に適応し得る。装置の取外しは、単一の引張部材を掴み、それにより要素を、容易な取外しのために効率的に細長くすることにより行われる。
【0050】
図16/16Aは、弛緩した状態で部分的に非均一のコイルを含むアンカー要素を示し、特には、圧縮可能な対向側端を有する長手方向のプロファイルド要素を示す。この要素は、図15の構造に見られるように、要素内に通されたテザーの操作を介して係合され、また係合を外される。同様に、図17〜20、及び、それらの対応する断面図は、先に記載したテザー装置により容易に操作される弾性的に伸張可能な(すなわち、可逆的に圧縮可能な)別のアンカー要素を示す。
【0051】
好ましい構成材料に関して、例えば図2の装置において、尿道内装置は、概して、304ステレンス鋼ワイヤコイルのコア構造を用いて前立腺尿道ステントを形成している。コイルは、インプラントグレードのシリコーンラバー(カリフォルニア州、ベンチュラ所在のローダシリコーン(Rhoda Silicone)社のショア30A、品番V40029A&V40029B)を用いて被包されている。装置の基端アンカーは、装置の前立腺ステント部に接着される。固定バルーンを、成形された基端先端に接着することにより基端アンカーが形成される。基端先端はシリコーンラバー(Rhoda Silicon
e)から成形される。固定バルーンは、インプラントグレードのシリコーンラバー(カリフォルニア州、カーペンテリアン所在のニューシル・テクノロジー(Nusil Technology)社の品番 MED−4720)を用いて押出成形され、バルーンは、シリコーン接着剤(ニューシル・テクノロジー社の品番MED1−4213)を用いて接着される。
【0052】
先端アンカーは、基端アンカーと同様に形成され、バルーンが先端アンカーのマニホルドに接着される。基端アンカーと先端アンカーとは膨張管腔を介して連結される。膨張管腔は、0.0508cm(0.020インチ)の内径及び約0.0229cm(0.009インチ)の壁厚を有する、メディカルグレードのシリコーンラバーチューブ(マサチューセッツ州所在のSF メディカル・ハドソン(Medical Hudson)社の品番SFM3−1350)である。チューブは、各アンカーにシリコーン接着剤を用いて取り付けられる。先端アンカーのマニホルドは、アンカーバルーンのドレンプラグを受けるための位置をもたらす。ドレンプラグは、304ステレンス鋼の皮下チューブを、メディカルグレードのエポキシ(マサチューセッツ州、ベッドフォード所在のTRA‐CON社の品番TRA‐BOND FDA2)を用いて、寸法1/0の絹縫合糸に接着/シールして形成されている。プラグを先端アンカーのマニホルド部から引抜くと、基端側及び先端側の両方のアンカーバルーンが収縮する。
【0053】
装置は、好ましくは、寸法1/0の絹縫合糸により形成された検索糸を用いる。この糸は、先端アンカーの先端端にも、前立腺ステント部の先端端にも取り付けられる。検索糸は、前立腺ステントの長さを横切り、ステントの基端端に取り付けられ、それにより、張力下のステントの伸張の量を限定する。絹を用いることにより、絹の多撚糸構成による柔軟性がもたらされ、かつ、許容可能な破断荷重限界が維持される。
【0054】
尿道内装置は、4cm〜9cmの範囲の種々の長さ(基端バルーンの先端端から先端バルーンの基端端までの距離として測定される長さ)で組み立てられ得る。前立腺ステントの長さの、ステント以外の長さ(外括約筋にわたる長さ)に対する比率は変化し得る。現在、長さの比率は3:2(すなわち、5cmの長さの装置に対して、前立腺ステントの長さは3cmである)。装置の外形は、10フレンチ〜32フレンチで形成され得る。
【0055】
本発明の開示は、必要な固定の機能及び方法を達成する装置の構造を示している。当業者には明らかになるであろうが、本発明に関する他の変型例も存在する。この開示が、多くの点において例示的なものに過ぎないことが理解されよう。詳細な部分の変更、特に、部品の形状、寸法、材料、及び配置に関する変更が本発明の範囲を逸脱せずに行われ得る。したがって、本発明の範囲は、特許請求の範囲の文言にて画定されている範囲である。本発明の固定構造を、知られている尿道内装置に、泌尿器疾患の診断、処置または治療のために容易に組み込むことが考えられ、それにより生じる利点が、泌尿器疾患を有する患者に広く用いられることがさらに理解されよう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】図1は、ヒトの男性の膀胱及び尿路を概略的に示す断面図。
【図2】「流通」基端アンカーシステム及び先端アンカーシステムを示す本発明の尿道内装置。
【図2A】装置2の線2A−2Aにおける断面図であり、特に、装置2の基端アンカーの断面図。
【図3】本発明の装置の基端アンカーの別の構造を示す斜視図。
【図3A】図3に示した別の構造の基端アンカーに対応する断面図。
【図4】本発明の装置の基端アンカーの別の構造を示す斜視図。
【図4A】図4に示した別の構造の基端アンカーに対応する断面図。
【図5】本発明の装置の基端アンカーの別の構造を示す斜視図。
【図5A】図5に示した別の構造の基端アンカーに対応する断面図。
【図6】本発明の装置の基端アンカーの別の構造を示す斜視図。
【図6A】図6に示した別の構造の基端アンカーに対応する断面図。
【図7】本発明の装置の基端アンカーの別の構造を示す斜視図。
【図7A】図7に示した別の構造の基端アンカーに対応する断面図。
【図8】本発明の装置の別の実施形態の、アンカー要素が伸展されている状態の長手方向の断面図。
【図8A】図8の装置の、線8A−8Aにおける断面図であり、特には、図8の装置の先端アンカーの断面図。
【図9】図8の装置の、アンカー要素が収縮された状態の断面図。
【図10】図10は、本発明の尿道内装置の別の実施形態を示し、特には、先端側の機械的アンカー、及び、伸展状態の基端アンカーを示す側面図。
【図11】図10の装置の、基端アンカー要素が収縮された状態を示す側面図。
【図12】本発明の尿道内装置の別の実施形態を示し、特に、先端側の機械的アンカーを、側流を可能にする伸展状態の基端アンカー要素と共に示す断面図。
【図12A】図12の装置の線12A−12Aにおける断面図。
【図13】機械的な先端アンカーの別の構造を示す。
【図13A】図13の構造に対応する断面図。
【図14】図14は、機械的な先端アンカーの別の構造を示す。
【図14A】図14の構造に対応する断面図。
【図15】図15は、機械的な先端アンカーの別の構造を示す。
【図15A】図15の構造に対応する断面図。
【図16】機械的な先端アンカーの別の構造を示す。
【図16A】図16の構造に対応する断面図。
【図17】機械的な先端アンカーの別の構造を示す。
【図18】機械的な先端アンカーの別の構造を示す。
【図18A】図18の構造に対応する断面図。
【図19】機械的な先端アンカーの別の構造を示す。
【図20】図20は、機械的な先端アンカーの別の構造を示す。
【図20A】図20の構造に対応する断面図。
【符号の説明】
【0057】
750…尿道内装置、752…長尺部材、754…長尺部材の基端部、756…長尺部材の先端部、758…基端アンカー、760…係合要素(758の一部)、761…尿道係合要素、762…先端アンカー、764…基端アンカーの本体、786…ばねストラット、788…中央ハブ、890…テザー、893…取り出しテザー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a.基端部及び先端部を有した長尺部材と、
b.流体を受け入れ可能な基端アンカーと、前記基端アンカーは前記長尺部材の基端部によって支持され、膀胱頸部の部分に隣接して係合するために適合することによって尿道内装置を少なくとも基端にて固定することと、
c.尿道球の部分に係合するために適切であることによって尿道内装置を少なくとも先端にて固定する先端アンカーと、前記先端アンカーは前記長尺部材の先端部から縫合糸を介して延伸していることとからなる、尿道内装置。
【請求項2】
前記先端アンカーは中央ハブを備える、請求項1に記載の尿道内装置。
【請求項3】
前記先端アンカーは前記中央ハブから延在している単一のストラットをさらに備える、請求項2に記載の尿道内装置。
【請求項4】
前記先端アンカーはストラットを備える、請求項1に記載の尿道内装置。
【請求項5】
前記先端アンカーは被包されたストラットを備える請求項1に記載の尿道内装置。
【請求項6】
前記先端アンカーはシリコーンによって被包されたばねストラットを備える請求項1に記載の尿道内装置。
【請求項7】
動作可能に結合されている検索テザーをさらに備える請求項1に記載の尿道内装置。
【請求項8】
前記縫合糸は前記検索テザーとの係合のために前記先端アンカーを貫通して延伸している、請求項7に記載の尿道内装置。
【請求項9】
前記縫合糸は前記先端アンカーを貫通して延伸し、前記検索テザーに係合されている自由端を有する、請求項7に記載の尿道内装置。
【請求項10】
前記縫合糸の1つの自由端は前記検索テザーに係合されている、請求項7に記載の尿道内装置。
【請求項11】
前記検索テザーはプラグ内で終端する、請求項7に記載の尿道内装置。
【請求項12】
前記プラグは前記流体を受け入れ可能な基端アンカーの排水ポート内に受容されている、請求項11に記載の尿道内装置。
【請求項13】
取り出しテザーの作動によって前記プラグは前記排水ポートから離脱されて、流体を充填した前記流体受け入れ可能な基端アンカーからの流体の排出を生じる、請求項12に記載の尿道内装置。

【図1】
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【図2】
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【図2A】
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【図3】
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【図3A】
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【図4】
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【図4A】
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【図5】
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【図5A】
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【図6】
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【図6A】
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【図7】
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【図7A】
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【図8】
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【図8A】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図12A】
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【図13】
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【図13A】
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【図14】
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【図14A】
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【図15】
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【図15A】
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【図16】
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【図16A】
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【図17】
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【図18】
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【図18A】
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【図19】
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【図20】
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【図20A】
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【公開番号】特開2007−244919(P2007−244919A)
【公開日】平成19年9月27日(2007.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−176617(P2007−176617)
【出願日】平成19年7月4日(2007.7.4)
【分割の表示】特願2002−558879(P2002−558879)の分割
【原出願日】平成14年1月23日(2002.1.23)
【出願人】(598017125)アビームーア メディカル インコーポレイテッド (3)
【Fターム(参考)】