局側装置、加入者側装置、光通信システム、及び光通信方法
【課題】OLTから供給される供給光を上り光信号に利用する光アクセスネットワークにおいて、飽和出力が高く高増幅率の増幅器を用いることなく、供給光の反射の影響を回避できるOLT、ONU、光通信システム、及び光通信方法を提供することを目的とする。
【解決手段】OLT200は、ONUと波長分割多重で光信号を送受する局側光送受信回路と、ONUへ上り光信号用の供給光を供給する光源22と、光源22の出力の断続とONUに対する送信許可を制御する制御器(不図示)と、光源22及び光受信機20を光伝送路50に接続する光合分岐器を備える。
【解決手段】OLT200は、ONUと波長分割多重で光信号を送受する局側光送受信回路と、ONUへ上り光信号用の供給光を供給する光源22と、光源22の出力の断続とONUに対する送信許可を制御する制御器(不図示)と、光源22及び光受信機20を光伝送路50に接続する光合分岐器を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光アクセスネットワークの局側装置、加入者側装置、これらを含む光通信システム、及び光通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットやイントラネットの急成長を背景に,大容量通信の需要が高まっており,高速光通信システムの普及が急ピッチで進んでいる中、経済的な高速の光アクセスネットワークを実現するためのシステムとして、PON(Passive Optical Network)が知られている。また、PONに用いる受動素子(光スプリッタ等)の代わりに、光スイッチを備える光アクセスネットワークも多くの提案がなされている(例えば、非特許文献2を参照)
高速アクセスネットワークで従来用いられている安価なSiGe−BiCMOSプロセスを利用して強度変調−直接検波で時分割多重(TDM:Time Division Multiplexing)技術を上述の光アクセスネットワークに適用することを想定すると、電子デバイスの制約に10Gbit/sが上限と考えられている。
【0003】
そこで、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)を適用すること更なる高速化/広帯域化を実現する提案もなされている。しかし、ユーザ毎に異なる波長を用いるWDMを適用すると、局側装置であるOLT(Optical Line Terminal)には加入者側装置であるONU(Optical Network Unit)の数に応じた光送受信機も必要となる。これらは既存の加入者側装置ONUや局側装置OLTの更改を要し、コスト上昇という課題が発生する。
【0004】
この課題に対しては、ONU毎に異なる波長を用いる代わりに、ONUを複数のグループにグルーピングし、グループ間でWDM、グループ内でTDMを適用するWDM/TDM−PON方式(例えば、非特許文献1を参照。)がある。これは、波長を複数のONUで共用することで、総帯域拡張に伴うコスト上昇を抑えている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「総帯域拡張型WDM/TDM−PONと動的波長帯域割当の一提案」、吉野學、原一貴、中村浩崇、木村俊二、吉本直人、雲崎清美、2009年電子情報通信学会総合大会、通信講演論文集2、p.426
【非特許文献2】「光パケットスイッチを適用したアクセスネットワークにおける効率的なディスカバリ方法の提案」、上田裕巳、坪井利憲、河西宏之、社団法人 電子情報通信学会、2009年4月CS方式研究会電子情報通信学会技術研究報告Vol.109(4):CS2009−12,pp.69−74
【非特許文献3】“Impact of Back reflection on Upstream Transmission in WDM Single−Fiber Loop back Access Networks”M Fujiwara, J Kani, H Suzuki, K Iwatsuki、JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY, VOL.24, NO.2, FEBRUARY 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、WDMを適用するためには、ONUが上り光信号に使用する波長が所定の波長の範囲に収まっている必要がある。上り光信号の波長を所定の範囲に収める手段として以下の3つが知られている。
(1)Dense WDMの代わりにCorse WDMを適用するのと同様に各波長の間隔が十分に広いWDMとして収めるべき所定の波長の範囲自体を拡大する手段
(2)OLTでONUの送信する波長を監視し、フィードバック制御を行う手段
(3)OLTから供給される波長が制御された光を上り光信号に利用する手段
【0007】
しかし、上述の(1)及び(2)の手段は、ONUが使用する波長を通知するための手順が必要となり、波長切替の応答が遅くなる課題がある。さらに、波長切替の通知から波長切替完了まで過渡状態に、当該ONUが通知される波長以外の波長の上り光信号を送信することで、他のONUの通信を妨害する危険性があるという課題もある。
【0008】
上述の(3)の手段は、OLTからONUに対して使用する光を供給するため、ONUが使用する波長を通知する必要が無く、波長切替の応答は概ね伝送路の伝播遅延程度である。このため、上述の(1)及び(2)が有する、波長切替の応答が遅い課題も、上述の過渡状態で他のONUの通信を妨害する課題もない。しかし、既設のPONと同様の光アクセス分配網(ODN:Optical Distribution Network)を使用する場合、供給する光の反射による影響が無視できない。これは、例えばONU毎に異なる波長を割り振り、パワースプリッタの代りに波長スプリッタをODNに用いる波長スプリッタ型WDM−PONにおいても提起されている(例えば、非特許文献3を参照。)。
【0009】
非特許文献3に示される波長スプリッタ型WDM−PONでは、それぞれONU自体の光反射のみしか考慮しなくてよいが、部分的にでも波長選択性のないパワースプリッタに複数のONUを接続しうるODNに用いる場合は、反射の影響が大きくなる。既設の32分岐のODNを例にとって説明する。PONでは、加入者の加入脱退に伴い、同一のODNに接続するONUの数は変動する。32分岐のODNの場合、ONUの最大接続数は32であり、最少接続数は1である。スプリッタの分岐損のみを考慮すると、下り供給光は、スプリッタから各ONUに接続するポートで−15dBとなる。運用上、ONUの接続のないスプリッタのポートは、無反射終端器で終端せず、開放していることを考慮すると、ONUが未接続で開放端のポートのフレネル反射は、空気との屈折率差から−14dBである。従って、スプリッタの最少接続数1の場合、31ポートから反射があるため、スプリッタのOLT側での下り供給光の反射は、(−15)×2+(−14)+(+15)となり、元々の下り供給光から−29dBとなる。ONUが無損失で、下り供給光を変調して送信した場合、スプリッタのOLT側の出力は、元々の下り供給光から−30dB(=(−15)×2)であるので、上り光信号に対する下り光の反射は、+1dBとなる。更に、無終端ポートが距離零であり、ONUの距離が20km、光ファイバの伝播損失0.5dB/kmとすると、往復で20dBの損失となる。例えば、下り供給光の反射によるパワーペナルティを0.1dBを確保しようとすると、パワークロストークは−16dBに抑えなければならない。パワークロストークは−16dBを実現するためには、ONUにおいて下り光を(+1dB)+(20dB)+(16dB)=37dB増幅する必要がある。ここで、光サーキュレータ等によりONU内部で10dBの損失があるとすると、47dBの増幅が必要となる。更に、OLTで受信する光信号強度が10GにおけるPIN−PDの最小受光感度−27dBm以上とすると、各ONUに配置する増幅器の飽和出力は、+8dBm(=−27+10+15+10)以上が必要となる。
【0010】
しかしながら、このような飽和出力が高く高増幅率の増幅器をONUへ実装することは経済的なネットワークを構成する観点から困難である。すなわち、上述(3)の手段は、特に複数のONUからの上り信号を波長選択性のない受動素子で集線するネットワークにおいて、OLTが供給する光の反射による影響が無視できないという課題がある。
【0011】
そこで、本発明は、前記課題を解決するため、OLTから供給される供給光を上り光信号に利用する光アクセスネットワークにおいて、飽和出力が高く高増幅率の増幅器を用いることなく、供給光の反射の影響を回避できるOLT、ONU、光通信システム、及び光通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係るOLTは、光伝送路を介してONUとの間で光信号を送受する局側光送受信回路と、前記ONUへ上り光信号用の供給光を供給する光源と、前記光源の発光が継続する時間と前記ONUが上り信号光を継続して送信しうる時間、前記光伝送路における、最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と最近傍の反射点での前記供給光の往復伝搬時間との差の時間、及び 前記光伝送路における、最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と最近傍の反射点での前記供給光の往復伝搬時間との差の時間又は該供給光が最遠方の前記ONUに到達して上り光信号として戻ってくる往復伝搬時間と該供給光が最近傍のONUに到達して上り光信号として戻ってくる往復伝搬時間との差の時間、を加算した時間間隔以上で前記供給光を前記光源に出力させる局側制御回路と、を備える。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係るONUは、光伝送路を介してOLTとの間で光信号を送受する際に、前記OLTの光源が供給する供給光を利用して上り光信号を前記OLTへ送信する加入者側光送受信回路と、前記供給光を受けたとき前記加入者側光送受信回路に対して、前記伝送路の反射点で反射された前記供給光が前記OLTの局側光送受信回路に到達する以外の時間に、前記上り光信号が前記局側光送受信回路に到達するように、前記上り光信号を送信させる加入者側制御回路と、を備える。
【0014】
また、前記ONUの前記加入者側制御回路は、前記光源の発光が継続する時間、及び前記光伝送路における、最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と最近傍の反射点での前記供給光の往復伝搬時間との差の時間又は最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と該供給光が最近傍の前記加入者側光送受信回路に到達して上り光信号として戻ってくる往復伝搬時間との差の時間、を加算した時間の後に上り光信号を送信させることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る光通信システムは、光伝送路に接続される前記OLTと、前記OLTに対向して光伝送路に接続される複数の前記ONUと、を備える。
【0016】
本発明に係る光通信方法は、光伝送路を介してOLTとONUとの間で光信号を送受する光通信システムの光通信方法であって、前記OLTが、前記加入射側装置へ上り光信号用の供給光を供給する際に、前記光源の発光が継続する時間と前記ONUが上り信号光を継続して送信しうる時間、前記光伝送路における、最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と最近傍の反射点での前記供給光の往復伝搬時間との差の時間、及び 前記光伝送路における、最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と最近傍の反射点での前記供給光の往復伝搬時間との差の時間又は該供給光が最遠方の前記ONUに到達して上り光信号として戻ってくる往復伝搬時間と該供給光が最近傍のONUに到達して上り光信号として戻ってくる往復伝搬時間との差の時間、を加算した時間間隔以上で前記ONUへ上り光信号用の供給光を供給することを特徴とする。
【0017】
前記光通信方法は、前記ONUが前記上り光信号を送信する際に、前記伝送路の反射点で反射された前記供給光が前記OLTの局側光送受信回路に到達する以外の時間に、前記上り光信号が前記局側光送受信回路に到達するように、前記上り光信号を送信することを特徴とする。
【0018】
前記光通信方法は、前記ONUが前記上り光信号を送信する際に、前記光源の発光が継続する時間、及び 前記光伝送路における、最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と最近傍の反射点での前記供給光の往復伝搬時間との差の時間又は最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と該供給光が最近傍の前記加入者側光送受信回路に到達して上り光信号として戻ってくる往復伝搬時間との差の時間、を加算した時間の後に前記上り光信号を送信することを特徴とする。
【0019】
光アクセスネットワークの開放端等の反射点で反射した供給光がOLTに到着しない時刻に、OLTに上り光信号が到着するように送信するため、飽和出力が高く高増幅率の増幅器が不要である。従って、OLTから供給される供給光を上り光信号に利用する光アクセスネットワークにおいて、飽和出力が高く高増幅率の増幅器を用いることなく、供給光の反射の影響を回避できるOLT、ONU、光通信システム、及び光通信方法を提供することできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、OLTから供給される供給光を上り光信号に利用する光アクセスネットワークにおいて、飽和出力が高く高増幅率の増幅器を用いることなく、供給光の反射の影響を回避できるOLT、ONU、光通信システム、及び光通信方法を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る光通信システムを説明するブロック図である。
【図2】本発明に係る光通信システムを説明するブロック図である。
【図3】本発明に係る光通信システムを説明するブロック図である。
【図4】本発明に係る光通信システムを説明するブロック図である。
【図5】本発明に係る光通信システムの光送信機を説明するブロック図である。(A)は、サーキュレータを用いてループを組み、光フィルタを遅延器の前段に配置した例である。(B)は、サーキュレータを用いてループを組み、光フィルタを遅延器の後段に配置した例である。(C)は、サーキュレータを用いてループを組み、光フィルタを増幅器の後段に配置した例である。(D)は、サーキュレータを用いてループを組み、光フィルタを変調器の後段に配置した例である。(A’)は、反射板を用いた反射型であり、光フィルタを反射板と変調器との間に配置した例である。(B’)は、反射板を用いた反射型であり、光フィルタを変調器と増幅器との間に配置した例である。(C’)は、反射板を用いた反射型であり、光フィルタを増幅器と遅延器との間に配置した例である。(D’)は、反射板を用いた反射型であり、光フィルタを遅延器のOLT側に配置した例である。
【図6】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図7】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図8】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図9】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図10】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図11】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図12】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図13】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図14】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図15】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図16】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図17】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図18】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図19】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図20】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図21】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図22】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図23】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図24】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図25】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0023】
(実施形態1)
図1は、実施形態1の光通信システム301を説明する概念図である。光通信システム301は、ONU100、OLT200、光伝送路50を備える光アクセスネットワークである。
【0024】
光通信システム301が備える光アクセスネットワークは、例えば、ONU100、ONU101、ONU103、ONU120、ONU121,とOLT200とを光伝送路50であるODNで接続し、時間領域及び複数の波長領域を共用して光信号を送受信するPONである。
【0025】
光伝送路50は、OLT200からのONUへの供給光と信号光を分波してONUに結合し、各ONUからの上り光信号を合波してOLT200へ結合する。
【0026】
OLT200は、ONUと波長分割多重で光信号を送受する局側光送受信回路と、ONUへ上り光信号用の供給光を供給する光源22と、光源22の出力の断続とONUに対する送信許可を制御する制御器(不図示)と、光源22及び光受信機20を光伝送路50に接続する光合分岐器を備える。光合分岐器は光サーキュレータ23であることが望ましい。
【0027】
OLT200は局側光送受信回路の一部として光受信機20を持つ。図1では、局側光送受信回路の光送信機を省略している。光受信機20は、光伝送路50からの光を波長ごとに分波して分波光信号を出力するための光合分波器25と、光合分波器25からの分波光信号をそれぞれ受光して電気信号として出力する複数の受光器(27、28)と、を有する。光合分波器25は、例えば、波長フィルタ等を適用することができる。受光器(27、28)は、例えば、フォトダイオードを使用することができる。
【0028】
ここで、上り光信号が同時に同一波長として受信する波長で到着すると受信できなくなるので、制御器は、ONUごとの当該波長における伝達時間の差を考慮して各波長の受光器で重ならないように送信許可する。具体的には、各ONUは、2波長(λ1、λ2)に対してそれぞれ時間を違えて互いに時間的に重ならないように時分割多重で光信号を出力する。例えば、制御器が、各ONUに対して、時分割多重で当該光送信機における送出時間を違えて、波長λ1及び波長λ2の帯域を送信許可として割り当ててもよい。
【0029】
光源22は、制御回路の制御の下、波長制御された供給光を所定の周期で断続的に生成し、光伝送路50を経由して各ONUへ供給する。
【0030】
ONUの一つであるONU100について説明する。ONU100は、OLT200と波長分割多重で光信号を送受する際に、OLT200から供給される供給光を利用して上り光信号をOLT200へ送信する加入者側光送受信回路と、加入者側光送受信回路に対して、供給光の反射光が到着しない時間に、上り光信号が光受信器20に到達するように上り光信号を送信させる加入者側制御回路(不図示)と、を備える。
【0031】
ONU100は加入者側光送受信回路の一部として光送信機10を持つ。光送信機10と光受信機20とは光伝送路50で接続される。図1では、加入者側光送受信回路の光受信機を省略している。
【0032】
光送信機10は供給光で割り当てられた波長の上り光信号を出力する。また、割り当てられる波長は、ONU100に予め設定しておいてもよいが、OLT200からの下り光信号で指定してもよい。
【0033】
光送信機10は、遅延器11、増幅器12、変調器13及びサーキュレータ14を有する。遅延器11は、供給光を受けてから所定時間経過後に増幅器12へ供給光を出力する。遅延器11は例えば、光ファイバや可変遅延器等を使用することができる。波長毎に伝搬遅延の異なる遅延器であってもよい。増幅器12は、供給光を増幅して変調器13へ出力する。変調器13は、送信するデータに従って、増幅した供給光を変調して上り光信号を生成する。サーキュレータ14は、変調器13が生成した上り光信号を光伝送路50に結合する。例えば、加入者側制御回路は、供給光を受けたとき、上述の所定時間経過後に上り光信号がサーキュレータ14から出力されるように遅延器11を制御する。
【0034】
ここで、遅延器11が供給光を遅延させる所定時間について説明する。所定時間とは、光受信機20において上り光信号が同一波長の供給光の反射光の到着しない時間に到着するような時間である。反射時間には、供給光及び反射光の波長分散等を考慮することが望ましい。また、所定時間には波長分散等による伝搬時間差を考慮することが望ましい。伝搬時間差を考慮して補償するには例えば、伝送路と逆分散の遅延器を用いることができる。所定時間は、各ONUに予め設定しておくこともできる。また、ONUの増設や撤去、又は光伝送路50の改修により反射時間が変化したときに、各ONUに再設定することもできる。
【0035】
光通信システム301は、ONU100及びOLT200を備えることで以下の通信方法を行うことができる。本通信方法は、光伝送路50を介して接続されたOLT200とONU100との間で光信号を伝搬する際に、OLT200が供給した供給光を利用してONU100が上り光信号を送信する光通信システムの光通信方法であって、供給光を所定の時間以上の間隔でOLT200が供給光を供給し、供給光が光伝送路50の反射点で反射した反射光がOLT200に到達しない時間に上り光信号がOLT200の局側光送受信回路に到達するように上り光信号を当該波長の送信許可を受けたONUが送信する。
【0036】
図6〜25は、供給光、反射光及び光信号のタイミングを説明するタイムチャートである。図6〜11は、全ONUでの遅延器による遅延時間が同一で設定している場合であり、図12〜25はONUを接続していない開放端以外からの反射は無視できて、開放端の距離に応じて遅延時間を変更する場合である。図6〜11では、ONUの接続端のいずれも反射点となるとして、その反射が到着しうる時間は上り信号光を受信しないガードタイムとし、どの接続端にONUを接続してもOLTに到着する上り信号光がガードタイムに入らないようにしている。図では代表として、反射光としては最遠方と最近傍のみを、上り信号光としてはそれ以外の二つのONUからのみとして示している。図12〜18は、反射点(ここでは開放端)が最近傍と最遠方の二つのみで、それ以外の二つのONUが通信中で反射が無視できる場合である。図19〜25は、反射点(ここでは開放端)が最近傍と最遠方以外の二つのみで、最近傍と最遠方の二つのONUが通信中で反射が無視できる場合である。
【0037】
図で用いる符号は以下を意味する。
・継続時間 Ts:供給光を継続的に出力する時間
・送信可能時間Tt:送信許可があれば上り信号光を送信可能な時間。ONU内で分岐合流等を行い供給光の継続する時間を長延化しない場合、供給光を継続的に受けている時間Tsに等しい。(図では等しいとして、Ttの部分もTsとして示している)
・最小反射時間 Ls:OLTから最近傍の反射点までの往復伝搬時間
・最大反射時間 Lb:OLTから最遠方の反射端までの往復伝搬時間
・最小RTT Ls’:OLTから最近傍の通信中のONUまでの往復伝搬時間(図6〜11では、最小反射時間に等しい)
・最大RTT Lb’:OLTから最遠方のONUまでの往復伝搬時間(図6〜11では、最大反射時間に等しい)
・ガードタイムTg:最近傍の反射点〜最遠方の反射点で反射光がOLTのそれぞれの波長の受光器に入射しうる時間。遅延時間が全ONUで同一の場合、(継続時間)+(最大と最小の反射時間の差)
Tg=Ts+Lb−Ls
・受信時間Tr:当該波長の供給光の反射光が戻ってこない時間であり、上り光受信信号を受信する時間。所定の波長に対する遅延器の遅延量が全ONU同一である場合、最大の時間は継続時間+最大と最小のRTTの差である。
Tr=Tt+Lb’−Ls’=(Ts+Lb+Tt+Lb’−Ls’)−(Ts+Lb)
なお、実効的な受信時間Trは、上り送信すべきデータ量が十分にある場合でも、不適切な送信許可を行うと減少する。例えば、遅延時間が全ONUで同一の場合、(供給光の継続時間)+(最大と最小の反射時間の差)であるが、(供給光の継続時間)−(最大と最小のRTTの差)となる場合がある。これは、受信可能時間の早い時刻で遠方のONUに許可し、受信時間の遅い時刻で近傍のONUに許可をする場合に発生する。従って、なるべく受信可能時間の早い時刻に近傍のONUに、遅い時刻に遠方のONUに送信許可することが望ましい。
・遅延量 D:ONU内の所定の波長に対する遅延器の遅延量。遅延量は波長毎に異なるとしてもよいし、同一であってもよい。
D=Ts+Lb−Ls’
・出力間隔 Cs:継続時間に最遠方の反射点から最近傍の反射点までの往復伝搬時間の差を加えたものに、送信可能時間に最遠方のONUから最近傍のONUまでの往復伝搬時間の差を加えたもの以上の時間間隔。
Cs≧Ts+Lb−Ls+Tt+Lb’−Ls’ (図では等号の場合を示す)
【0038】
図6〜25に示すように、ONU100は上り光信号の送信を所定時間遅延させるため、上り光信号と反射光とは同時に光受信機20に到着しない。このため、増幅器12が供給光を増幅する増幅率は伝送路損失を補償する程度でよい。
【0039】
なお、図6〜25では全ONUの遅延器の遅延量は同一としたが、ONU毎に変えてよい。このとき上り光信号の帯域利用効率が向上する。例えば、図14であれば、ONU100とONU103の送信可能時間がOLT側で重なるため、両方のONUはその送信可能時間を全て使えない(図14ではONU103は送信可能時間の全てで上り光信号を送信していない)。この構成では、ガードタイム中でONU102とONU101の反射がOLTに到着する時間の間に反射光が到着しない時間がある。この時間に、例えばONU103の遅延時間をONU100と違えて、ONU103の信号光がOLTに到着するようにすればよい。この場合、実効的なガードタイムが減少するため、利用効率が向上する。
【0040】
更にこの場合、伝搬遅延が大きく異なるものの遅延時間を変えて、ガードタイム内で到着するようにすると、実効的な最大RTT Lb‘が小さくなるか又は最小RTT Ls’が大きくなるので、受信時間Trと出力間隔Csをその実効的なRTTの差の削減分に応じて削減できる。
【0041】
なお、供給光はONUで遅延器11、増幅器12、変調器13の順に処理されるとしたが、その順番は相互に入れ替わってもよい。また、増倍率可変で、送信するデータに応じた速度で増倍率が可変な増幅器を用いる場合は、増幅器と変調器は兼ねてもよい。更に、サーキュレータ−遅延器−増幅器−変調器−サーキュレータとループを組んでいるが反射型としてもよい。例えば変調器をかねた反射型SOA(semiconductor optical amplifier)を増幅器として用いて、供給光が遅延器を経て増幅器に入り、増幅器で増幅変調されて遅延器を経て上り光信号として出力してもよい。なお、遅延器を往復で通過する場合は、その往復の遅延量が設定する遅延量となる。例えば、往復で片道の倍の遅延量となる場合、遅延量はループの構成の場合の半分となる。また、増幅器は単一ではなく複数用いてもよい。例えば、SOA、EA(Electro−Absorption)変調器、SOAのように接続してもよい。
【0042】
また、波長の割り当ては、光伝送路50又はONUに割り当てられた波長の供給光又は上り信号光の少なくとも一方を選択的に透過する光フィルタ等を設置することで行ってもよい。図1は、光フィルタ15をONUに設置した場合の光通信システム301である。図2〜4は、光フィルタを光伝送路50に設置した場合の光通信システム301である。図2は、波長選択性のない光スプリッタ55で集線したONUからの上り信号を更に波長スプリッタ57で集線する場合である。図3は、波長スプリッタ57で集線したONUからの上り信号を更に波長選択性のない光スプリッタ55で集線する場合である。図2や図3のように光伝送路等に波長を選択する機構を設ける場合は、ONUに光フィルタ15を設置しない運用も可能である。また、図4のように、光スプリッタ55のONU側の光伝送路50に光フィルタ15を配置してもよい。
【0043】
図5は、ONUに光フィルタ15を設置する場合の具体例である。図5(A)〜(D)がサーキュレータ14を用いてループを組む例であり、図5(A’)〜(D’)が反射板16を用いた反射型の例である。図5(A)に示すように供給光側に光フィルタ等を設置してもよいし、図5(D)のように上り信号側に光フィルタ等を設置してもよい。図5(A)から(D’)に示すように、光フィルタ15は何れの箇所に配置してもよい。なお、(C)(C’)(D)(D’)のように光フィルタ15を上り信号光の増幅器の出力側(OLT側)に設置することで、増幅器12の自然放出光(Amplified Spontaneous Emission)雑音を軽減できる効果がある。また、光フィルタ15を用いず、増幅器12、変調器13又は遅延器11に波長選択性を持たせてもよい。選択する波長はONU毎に固定であってもよいし、可変であってもよい。
【0044】
また、光伝送路50とONUに波長を選択的に透過する光フィルタ等を設置しない運用も可能である。例えば、供給光がONUに到着する時刻を波長毎に違えて、当該ONUに利用可能な時間のみを指定することで、結果的に波長を割り当てることが可能である。また、波長毎に遅延時間を違えて、当該ONUで通信に使用しない波長がOLTに到着する時刻を当該波長の供給光の反射光がOLTに戻る時刻として、OLT側で受信しなくてもよい。波長毎に遅延時間を違えるためには、例えば、波長スプリッタで分波した後にそれぞれ遅延を与えて合波する。または波長毎の伝搬遅延差が大きな分散媒質を伝搬することで遅延を与えるとしてもよい。
【0045】
以上説明したように、光通信システム301は、複数の加入者側装置と一つの局側装置間で時間領域及び複数の波長領域を共用し、受動光分岐回路を利用して信号光を送受信する光通信システムにおいて、ONU100はOLT200から受け取った供給光を、反射光がある時間は、上り光信号として出力するのを抑止し、反射光がない時間に、上り信号として出力する。このため、反射光がある場合に必要となる高増幅率の増幅器を用いることなく、反射光の影響を受けることなく通信することができる。
【0046】
(他の実施形態)
なお、以上説明した実施態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本発明に含まれるものである。
【0047】
例えば、光通信システム301は、4つのONUと1つ及び2つの波長で説明したが、光送信機の数が増減してもよいし、波長の数も2以上であってよい。また、光通信システム301は1つの光受信機20が光信号を受信しているが、光受信機は複数とすることもできる。さらに、光通信システム301は、ONUが光受信機も備え、OLTが光送信機も備えており、双方向通信のシステムであってもよい。
【0048】
なお、本光通信システムはWDM/TDM−PONへの適用が代表例であるが、WDM/TDM−PON以外にも、複数のONUからの上り信号を波長選択性のない受動素子で集線するWDM−PONや光スイッチを用いたネットワークにも適用できる。波長選択性のある素子で集線するWDM−PON等であっても、波長選択性のある素子の選択する波長の周回性等で複数のONUからの上り信号が同一のポートに到着しうる場合も同様である。更に、PON以外のパッシブツリー等にも適用できる。またOLTから供給される供給光を上り光信号に利用する光通信システムであれば、波長分割多重を適用しない光通信システムにも適用できる。この場合は、局側装置の光受信機の光合分波器と、一つの受光器以外の受光器は省略できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、PONに適用される光通信システム関連の技術分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10:光送信機
11:遅延器
12:増幅器
13:変調器
14:サーキュレータ
15:光フィルタ
16:反射板
20:光受信機
21:受信回路
22:光源
23:サーキュレータ
25:光合分波器
27、28:受光器
30:後段の装置
50、51:光伝送路
55:光スプリッタ
57:波長スプリッタ
100、101、102、103、120、121:ONU
200:OLT
301:光通信システム
【技術分野】
【0001】
本発明は、光アクセスネットワークの局側装置、加入者側装置、これらを含む光通信システム、及び光通信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インターネットやイントラネットの急成長を背景に,大容量通信の需要が高まっており,高速光通信システムの普及が急ピッチで進んでいる中、経済的な高速の光アクセスネットワークを実現するためのシステムとして、PON(Passive Optical Network)が知られている。また、PONに用いる受動素子(光スプリッタ等)の代わりに、光スイッチを備える光アクセスネットワークも多くの提案がなされている(例えば、非特許文献2を参照)
高速アクセスネットワークで従来用いられている安価なSiGe−BiCMOSプロセスを利用して強度変調−直接検波で時分割多重(TDM:Time Division Multiplexing)技術を上述の光アクセスネットワークに適用することを想定すると、電子デバイスの制約に10Gbit/sが上限と考えられている。
【0003】
そこで、波長分割多重(WDM:Wavelength Division Multiplexing)を適用すること更なる高速化/広帯域化を実現する提案もなされている。しかし、ユーザ毎に異なる波長を用いるWDMを適用すると、局側装置であるOLT(Optical Line Terminal)には加入者側装置であるONU(Optical Network Unit)の数に応じた光送受信機も必要となる。これらは既存の加入者側装置ONUや局側装置OLTの更改を要し、コスト上昇という課題が発生する。
【0004】
この課題に対しては、ONU毎に異なる波長を用いる代わりに、ONUを複数のグループにグルーピングし、グループ間でWDM、グループ内でTDMを適用するWDM/TDM−PON方式(例えば、非特許文献1を参照。)がある。これは、波長を複数のONUで共用することで、総帯域拡張に伴うコスト上昇を抑えている。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0005】
【非特許文献1】「総帯域拡張型WDM/TDM−PONと動的波長帯域割当の一提案」、吉野學、原一貴、中村浩崇、木村俊二、吉本直人、雲崎清美、2009年電子情報通信学会総合大会、通信講演論文集2、p.426
【非特許文献2】「光パケットスイッチを適用したアクセスネットワークにおける効率的なディスカバリ方法の提案」、上田裕巳、坪井利憲、河西宏之、社団法人 電子情報通信学会、2009年4月CS方式研究会電子情報通信学会技術研究報告Vol.109(4):CS2009−12,pp.69−74
【非特許文献3】“Impact of Back reflection on Upstream Transmission in WDM Single−Fiber Loop back Access Networks”M Fujiwara, J Kani, H Suzuki, K Iwatsuki、JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY, VOL.24, NO.2, FEBRUARY 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、WDMを適用するためには、ONUが上り光信号に使用する波長が所定の波長の範囲に収まっている必要がある。上り光信号の波長を所定の範囲に収める手段として以下の3つが知られている。
(1)Dense WDMの代わりにCorse WDMを適用するのと同様に各波長の間隔が十分に広いWDMとして収めるべき所定の波長の範囲自体を拡大する手段
(2)OLTでONUの送信する波長を監視し、フィードバック制御を行う手段
(3)OLTから供給される波長が制御された光を上り光信号に利用する手段
【0007】
しかし、上述の(1)及び(2)の手段は、ONUが使用する波長を通知するための手順が必要となり、波長切替の応答が遅くなる課題がある。さらに、波長切替の通知から波長切替完了まで過渡状態に、当該ONUが通知される波長以外の波長の上り光信号を送信することで、他のONUの通信を妨害する危険性があるという課題もある。
【0008】
上述の(3)の手段は、OLTからONUに対して使用する光を供給するため、ONUが使用する波長を通知する必要が無く、波長切替の応答は概ね伝送路の伝播遅延程度である。このため、上述の(1)及び(2)が有する、波長切替の応答が遅い課題も、上述の過渡状態で他のONUの通信を妨害する課題もない。しかし、既設のPONと同様の光アクセス分配網(ODN:Optical Distribution Network)を使用する場合、供給する光の反射による影響が無視できない。これは、例えばONU毎に異なる波長を割り振り、パワースプリッタの代りに波長スプリッタをODNに用いる波長スプリッタ型WDM−PONにおいても提起されている(例えば、非特許文献3を参照。)。
【0009】
非特許文献3に示される波長スプリッタ型WDM−PONでは、それぞれONU自体の光反射のみしか考慮しなくてよいが、部分的にでも波長選択性のないパワースプリッタに複数のONUを接続しうるODNに用いる場合は、反射の影響が大きくなる。既設の32分岐のODNを例にとって説明する。PONでは、加入者の加入脱退に伴い、同一のODNに接続するONUの数は変動する。32分岐のODNの場合、ONUの最大接続数は32であり、最少接続数は1である。スプリッタの分岐損のみを考慮すると、下り供給光は、スプリッタから各ONUに接続するポートで−15dBとなる。運用上、ONUの接続のないスプリッタのポートは、無反射終端器で終端せず、開放していることを考慮すると、ONUが未接続で開放端のポートのフレネル反射は、空気との屈折率差から−14dBである。従って、スプリッタの最少接続数1の場合、31ポートから反射があるため、スプリッタのOLT側での下り供給光の反射は、(−15)×2+(−14)+(+15)となり、元々の下り供給光から−29dBとなる。ONUが無損失で、下り供給光を変調して送信した場合、スプリッタのOLT側の出力は、元々の下り供給光から−30dB(=(−15)×2)であるので、上り光信号に対する下り光の反射は、+1dBとなる。更に、無終端ポートが距離零であり、ONUの距離が20km、光ファイバの伝播損失0.5dB/kmとすると、往復で20dBの損失となる。例えば、下り供給光の反射によるパワーペナルティを0.1dBを確保しようとすると、パワークロストークは−16dBに抑えなければならない。パワークロストークは−16dBを実現するためには、ONUにおいて下り光を(+1dB)+(20dB)+(16dB)=37dB増幅する必要がある。ここで、光サーキュレータ等によりONU内部で10dBの損失があるとすると、47dBの増幅が必要となる。更に、OLTで受信する光信号強度が10GにおけるPIN−PDの最小受光感度−27dBm以上とすると、各ONUに配置する増幅器の飽和出力は、+8dBm(=−27+10+15+10)以上が必要となる。
【0010】
しかしながら、このような飽和出力が高く高増幅率の増幅器をONUへ実装することは経済的なネットワークを構成する観点から困難である。すなわち、上述(3)の手段は、特に複数のONUからの上り信号を波長選択性のない受動素子で集線するネットワークにおいて、OLTが供給する光の反射による影響が無視できないという課題がある。
【0011】
そこで、本発明は、前記課題を解決するため、OLTから供給される供給光を上り光信号に利用する光アクセスネットワークにおいて、飽和出力が高く高増幅率の増幅器を用いることなく、供給光の反射の影響を回避できるOLT、ONU、光通信システム、及び光通信方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明に係るOLTは、光伝送路を介してONUとの間で光信号を送受する局側光送受信回路と、前記ONUへ上り光信号用の供給光を供給する光源と、前記光源の発光が継続する時間と前記ONUが上り信号光を継続して送信しうる時間、前記光伝送路における、最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と最近傍の反射点での前記供給光の往復伝搬時間との差の時間、及び 前記光伝送路における、最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と最近傍の反射点での前記供給光の往復伝搬時間との差の時間又は該供給光が最遠方の前記ONUに到達して上り光信号として戻ってくる往復伝搬時間と該供給光が最近傍のONUに到達して上り光信号として戻ってくる往復伝搬時間との差の時間、を加算した時間間隔以上で前記供給光を前記光源に出力させる局側制御回路と、を備える。
【0013】
上記目的を達成するために、本発明に係るONUは、光伝送路を介してOLTとの間で光信号を送受する際に、前記OLTの光源が供給する供給光を利用して上り光信号を前記OLTへ送信する加入者側光送受信回路と、前記供給光を受けたとき前記加入者側光送受信回路に対して、前記伝送路の反射点で反射された前記供給光が前記OLTの局側光送受信回路に到達する以外の時間に、前記上り光信号が前記局側光送受信回路に到達するように、前記上り光信号を送信させる加入者側制御回路と、を備える。
【0014】
また、前記ONUの前記加入者側制御回路は、前記光源の発光が継続する時間、及び前記光伝送路における、最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と最近傍の反射点での前記供給光の往復伝搬時間との差の時間又は最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と該供給光が最近傍の前記加入者側光送受信回路に到達して上り光信号として戻ってくる往復伝搬時間との差の時間、を加算した時間の後に上り光信号を送信させることを特徴とする。
【0015】
本発明に係る光通信システムは、光伝送路に接続される前記OLTと、前記OLTに対向して光伝送路に接続される複数の前記ONUと、を備える。
【0016】
本発明に係る光通信方法は、光伝送路を介してOLTとONUとの間で光信号を送受する光通信システムの光通信方法であって、前記OLTが、前記加入射側装置へ上り光信号用の供給光を供給する際に、前記光源の発光が継続する時間と前記ONUが上り信号光を継続して送信しうる時間、前記光伝送路における、最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と最近傍の反射点での前記供給光の往復伝搬時間との差の時間、及び 前記光伝送路における、最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と最近傍の反射点での前記供給光の往復伝搬時間との差の時間又は該供給光が最遠方の前記ONUに到達して上り光信号として戻ってくる往復伝搬時間と該供給光が最近傍のONUに到達して上り光信号として戻ってくる往復伝搬時間との差の時間、を加算した時間間隔以上で前記ONUへ上り光信号用の供給光を供給することを特徴とする。
【0017】
前記光通信方法は、前記ONUが前記上り光信号を送信する際に、前記伝送路の反射点で反射された前記供給光が前記OLTの局側光送受信回路に到達する以外の時間に、前記上り光信号が前記局側光送受信回路に到達するように、前記上り光信号を送信することを特徴とする。
【0018】
前記光通信方法は、前記ONUが前記上り光信号を送信する際に、前記光源の発光が継続する時間、及び 前記光伝送路における、最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と最近傍の反射点での前記供給光の往復伝搬時間との差の時間又は最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と該供給光が最近傍の前記加入者側光送受信回路に到達して上り光信号として戻ってくる往復伝搬時間との差の時間、を加算した時間の後に前記上り光信号を送信することを特徴とする。
【0019】
光アクセスネットワークの開放端等の反射点で反射した供給光がOLTに到着しない時刻に、OLTに上り光信号が到着するように送信するため、飽和出力が高く高増幅率の増幅器が不要である。従って、OLTから供給される供給光を上り光信号に利用する光アクセスネットワークにおいて、飽和出力が高く高増幅率の増幅器を用いることなく、供給光の反射の影響を回避できるOLT、ONU、光通信システム、及び光通信方法を提供することできる。
【発明の効果】
【0020】
本発明は、OLTから供給される供給光を上り光信号に利用する光アクセスネットワークにおいて、飽和出力が高く高増幅率の増幅器を用いることなく、供給光の反射の影響を回避できるOLT、ONU、光通信システム、及び光通信方法を提供することできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に係る光通信システムを説明するブロック図である。
【図2】本発明に係る光通信システムを説明するブロック図である。
【図3】本発明に係る光通信システムを説明するブロック図である。
【図4】本発明に係る光通信システムを説明するブロック図である。
【図5】本発明に係る光通信システムの光送信機を説明するブロック図である。(A)は、サーキュレータを用いてループを組み、光フィルタを遅延器の前段に配置した例である。(B)は、サーキュレータを用いてループを組み、光フィルタを遅延器の後段に配置した例である。(C)は、サーキュレータを用いてループを組み、光フィルタを増幅器の後段に配置した例である。(D)は、サーキュレータを用いてループを組み、光フィルタを変調器の後段に配置した例である。(A’)は、反射板を用いた反射型であり、光フィルタを反射板と変調器との間に配置した例である。(B’)は、反射板を用いた反射型であり、光フィルタを変調器と増幅器との間に配置した例である。(C’)は、反射板を用いた反射型であり、光フィルタを増幅器と遅延器との間に配置した例である。(D’)は、反射板を用いた反射型であり、光フィルタを遅延器のOLT側に配置した例である。
【図6】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図7】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図8】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図9】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図10】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図11】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図12】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図13】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図14】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図15】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図16】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図17】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図18】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図19】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図20】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図21】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図22】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図23】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図24】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【図25】本発明に係る光通信方法を説明するタイミングチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0022】
添付の図面を参照して本発明の実施形態を説明する。以下に説明する実施形態は本発明の実施例であり、本発明は、以下の実施形態に制限されるものではない。なお、本明細書及び図面において符号が同じ構成要素は、相互に同一のものを示すものとする。
【0023】
(実施形態1)
図1は、実施形態1の光通信システム301を説明する概念図である。光通信システム301は、ONU100、OLT200、光伝送路50を備える光アクセスネットワークである。
【0024】
光通信システム301が備える光アクセスネットワークは、例えば、ONU100、ONU101、ONU103、ONU120、ONU121,とOLT200とを光伝送路50であるODNで接続し、時間領域及び複数の波長領域を共用して光信号を送受信するPONである。
【0025】
光伝送路50は、OLT200からのONUへの供給光と信号光を分波してONUに結合し、各ONUからの上り光信号を合波してOLT200へ結合する。
【0026】
OLT200は、ONUと波長分割多重で光信号を送受する局側光送受信回路と、ONUへ上り光信号用の供給光を供給する光源22と、光源22の出力の断続とONUに対する送信許可を制御する制御器(不図示)と、光源22及び光受信機20を光伝送路50に接続する光合分岐器を備える。光合分岐器は光サーキュレータ23であることが望ましい。
【0027】
OLT200は局側光送受信回路の一部として光受信機20を持つ。図1では、局側光送受信回路の光送信機を省略している。光受信機20は、光伝送路50からの光を波長ごとに分波して分波光信号を出力するための光合分波器25と、光合分波器25からの分波光信号をそれぞれ受光して電気信号として出力する複数の受光器(27、28)と、を有する。光合分波器25は、例えば、波長フィルタ等を適用することができる。受光器(27、28)は、例えば、フォトダイオードを使用することができる。
【0028】
ここで、上り光信号が同時に同一波長として受信する波長で到着すると受信できなくなるので、制御器は、ONUごとの当該波長における伝達時間の差を考慮して各波長の受光器で重ならないように送信許可する。具体的には、各ONUは、2波長(λ1、λ2)に対してそれぞれ時間を違えて互いに時間的に重ならないように時分割多重で光信号を出力する。例えば、制御器が、各ONUに対して、時分割多重で当該光送信機における送出時間を違えて、波長λ1及び波長λ2の帯域を送信許可として割り当ててもよい。
【0029】
光源22は、制御回路の制御の下、波長制御された供給光を所定の周期で断続的に生成し、光伝送路50を経由して各ONUへ供給する。
【0030】
ONUの一つであるONU100について説明する。ONU100は、OLT200と波長分割多重で光信号を送受する際に、OLT200から供給される供給光を利用して上り光信号をOLT200へ送信する加入者側光送受信回路と、加入者側光送受信回路に対して、供給光の反射光が到着しない時間に、上り光信号が光受信器20に到達するように上り光信号を送信させる加入者側制御回路(不図示)と、を備える。
【0031】
ONU100は加入者側光送受信回路の一部として光送信機10を持つ。光送信機10と光受信機20とは光伝送路50で接続される。図1では、加入者側光送受信回路の光受信機を省略している。
【0032】
光送信機10は供給光で割り当てられた波長の上り光信号を出力する。また、割り当てられる波長は、ONU100に予め設定しておいてもよいが、OLT200からの下り光信号で指定してもよい。
【0033】
光送信機10は、遅延器11、増幅器12、変調器13及びサーキュレータ14を有する。遅延器11は、供給光を受けてから所定時間経過後に増幅器12へ供給光を出力する。遅延器11は例えば、光ファイバや可変遅延器等を使用することができる。波長毎に伝搬遅延の異なる遅延器であってもよい。増幅器12は、供給光を増幅して変調器13へ出力する。変調器13は、送信するデータに従って、増幅した供給光を変調して上り光信号を生成する。サーキュレータ14は、変調器13が生成した上り光信号を光伝送路50に結合する。例えば、加入者側制御回路は、供給光を受けたとき、上述の所定時間経過後に上り光信号がサーキュレータ14から出力されるように遅延器11を制御する。
【0034】
ここで、遅延器11が供給光を遅延させる所定時間について説明する。所定時間とは、光受信機20において上り光信号が同一波長の供給光の反射光の到着しない時間に到着するような時間である。反射時間には、供給光及び反射光の波長分散等を考慮することが望ましい。また、所定時間には波長分散等による伝搬時間差を考慮することが望ましい。伝搬時間差を考慮して補償するには例えば、伝送路と逆分散の遅延器を用いることができる。所定時間は、各ONUに予め設定しておくこともできる。また、ONUの増設や撤去、又は光伝送路50の改修により反射時間が変化したときに、各ONUに再設定することもできる。
【0035】
光通信システム301は、ONU100及びOLT200を備えることで以下の通信方法を行うことができる。本通信方法は、光伝送路50を介して接続されたOLT200とONU100との間で光信号を伝搬する際に、OLT200が供給した供給光を利用してONU100が上り光信号を送信する光通信システムの光通信方法であって、供給光を所定の時間以上の間隔でOLT200が供給光を供給し、供給光が光伝送路50の反射点で反射した反射光がOLT200に到達しない時間に上り光信号がOLT200の局側光送受信回路に到達するように上り光信号を当該波長の送信許可を受けたONUが送信する。
【0036】
図6〜25は、供給光、反射光及び光信号のタイミングを説明するタイムチャートである。図6〜11は、全ONUでの遅延器による遅延時間が同一で設定している場合であり、図12〜25はONUを接続していない開放端以外からの反射は無視できて、開放端の距離に応じて遅延時間を変更する場合である。図6〜11では、ONUの接続端のいずれも反射点となるとして、その反射が到着しうる時間は上り信号光を受信しないガードタイムとし、どの接続端にONUを接続してもOLTに到着する上り信号光がガードタイムに入らないようにしている。図では代表として、反射光としては最遠方と最近傍のみを、上り信号光としてはそれ以外の二つのONUからのみとして示している。図12〜18は、反射点(ここでは開放端)が最近傍と最遠方の二つのみで、それ以外の二つのONUが通信中で反射が無視できる場合である。図19〜25は、反射点(ここでは開放端)が最近傍と最遠方以外の二つのみで、最近傍と最遠方の二つのONUが通信中で反射が無視できる場合である。
【0037】
図で用いる符号は以下を意味する。
・継続時間 Ts:供給光を継続的に出力する時間
・送信可能時間Tt:送信許可があれば上り信号光を送信可能な時間。ONU内で分岐合流等を行い供給光の継続する時間を長延化しない場合、供給光を継続的に受けている時間Tsに等しい。(図では等しいとして、Ttの部分もTsとして示している)
・最小反射時間 Ls:OLTから最近傍の反射点までの往復伝搬時間
・最大反射時間 Lb:OLTから最遠方の反射端までの往復伝搬時間
・最小RTT Ls’:OLTから最近傍の通信中のONUまでの往復伝搬時間(図6〜11では、最小反射時間に等しい)
・最大RTT Lb’:OLTから最遠方のONUまでの往復伝搬時間(図6〜11では、最大反射時間に等しい)
・ガードタイムTg:最近傍の反射点〜最遠方の反射点で反射光がOLTのそれぞれの波長の受光器に入射しうる時間。遅延時間が全ONUで同一の場合、(継続時間)+(最大と最小の反射時間の差)
Tg=Ts+Lb−Ls
・受信時間Tr:当該波長の供給光の反射光が戻ってこない時間であり、上り光受信信号を受信する時間。所定の波長に対する遅延器の遅延量が全ONU同一である場合、最大の時間は継続時間+最大と最小のRTTの差である。
Tr=Tt+Lb’−Ls’=(Ts+Lb+Tt+Lb’−Ls’)−(Ts+Lb)
なお、実効的な受信時間Trは、上り送信すべきデータ量が十分にある場合でも、不適切な送信許可を行うと減少する。例えば、遅延時間が全ONUで同一の場合、(供給光の継続時間)+(最大と最小の反射時間の差)であるが、(供給光の継続時間)−(最大と最小のRTTの差)となる場合がある。これは、受信可能時間の早い時刻で遠方のONUに許可し、受信時間の遅い時刻で近傍のONUに許可をする場合に発生する。従って、なるべく受信可能時間の早い時刻に近傍のONUに、遅い時刻に遠方のONUに送信許可することが望ましい。
・遅延量 D:ONU内の所定の波長に対する遅延器の遅延量。遅延量は波長毎に異なるとしてもよいし、同一であってもよい。
D=Ts+Lb−Ls’
・出力間隔 Cs:継続時間に最遠方の反射点から最近傍の反射点までの往復伝搬時間の差を加えたものに、送信可能時間に最遠方のONUから最近傍のONUまでの往復伝搬時間の差を加えたもの以上の時間間隔。
Cs≧Ts+Lb−Ls+Tt+Lb’−Ls’ (図では等号の場合を示す)
【0038】
図6〜25に示すように、ONU100は上り光信号の送信を所定時間遅延させるため、上り光信号と反射光とは同時に光受信機20に到着しない。このため、増幅器12が供給光を増幅する増幅率は伝送路損失を補償する程度でよい。
【0039】
なお、図6〜25では全ONUの遅延器の遅延量は同一としたが、ONU毎に変えてよい。このとき上り光信号の帯域利用効率が向上する。例えば、図14であれば、ONU100とONU103の送信可能時間がOLT側で重なるため、両方のONUはその送信可能時間を全て使えない(図14ではONU103は送信可能時間の全てで上り光信号を送信していない)。この構成では、ガードタイム中でONU102とONU101の反射がOLTに到着する時間の間に反射光が到着しない時間がある。この時間に、例えばONU103の遅延時間をONU100と違えて、ONU103の信号光がOLTに到着するようにすればよい。この場合、実効的なガードタイムが減少するため、利用効率が向上する。
【0040】
更にこの場合、伝搬遅延が大きく異なるものの遅延時間を変えて、ガードタイム内で到着するようにすると、実効的な最大RTT Lb‘が小さくなるか又は最小RTT Ls’が大きくなるので、受信時間Trと出力間隔Csをその実効的なRTTの差の削減分に応じて削減できる。
【0041】
なお、供給光はONUで遅延器11、増幅器12、変調器13の順に処理されるとしたが、その順番は相互に入れ替わってもよい。また、増倍率可変で、送信するデータに応じた速度で増倍率が可変な増幅器を用いる場合は、増幅器と変調器は兼ねてもよい。更に、サーキュレータ−遅延器−増幅器−変調器−サーキュレータとループを組んでいるが反射型としてもよい。例えば変調器をかねた反射型SOA(semiconductor optical amplifier)を増幅器として用いて、供給光が遅延器を経て増幅器に入り、増幅器で増幅変調されて遅延器を経て上り光信号として出力してもよい。なお、遅延器を往復で通過する場合は、その往復の遅延量が設定する遅延量となる。例えば、往復で片道の倍の遅延量となる場合、遅延量はループの構成の場合の半分となる。また、増幅器は単一ではなく複数用いてもよい。例えば、SOA、EA(Electro−Absorption)変調器、SOAのように接続してもよい。
【0042】
また、波長の割り当ては、光伝送路50又はONUに割り当てられた波長の供給光又は上り信号光の少なくとも一方を選択的に透過する光フィルタ等を設置することで行ってもよい。図1は、光フィルタ15をONUに設置した場合の光通信システム301である。図2〜4は、光フィルタを光伝送路50に設置した場合の光通信システム301である。図2は、波長選択性のない光スプリッタ55で集線したONUからの上り信号を更に波長スプリッタ57で集線する場合である。図3は、波長スプリッタ57で集線したONUからの上り信号を更に波長選択性のない光スプリッタ55で集線する場合である。図2や図3のように光伝送路等に波長を選択する機構を設ける場合は、ONUに光フィルタ15を設置しない運用も可能である。また、図4のように、光スプリッタ55のONU側の光伝送路50に光フィルタ15を配置してもよい。
【0043】
図5は、ONUに光フィルタ15を設置する場合の具体例である。図5(A)〜(D)がサーキュレータ14を用いてループを組む例であり、図5(A’)〜(D’)が反射板16を用いた反射型の例である。図5(A)に示すように供給光側に光フィルタ等を設置してもよいし、図5(D)のように上り信号側に光フィルタ等を設置してもよい。図5(A)から(D’)に示すように、光フィルタ15は何れの箇所に配置してもよい。なお、(C)(C’)(D)(D’)のように光フィルタ15を上り信号光の増幅器の出力側(OLT側)に設置することで、増幅器12の自然放出光(Amplified Spontaneous Emission)雑音を軽減できる効果がある。また、光フィルタ15を用いず、増幅器12、変調器13又は遅延器11に波長選択性を持たせてもよい。選択する波長はONU毎に固定であってもよいし、可変であってもよい。
【0044】
また、光伝送路50とONUに波長を選択的に透過する光フィルタ等を設置しない運用も可能である。例えば、供給光がONUに到着する時刻を波長毎に違えて、当該ONUに利用可能な時間のみを指定することで、結果的に波長を割り当てることが可能である。また、波長毎に遅延時間を違えて、当該ONUで通信に使用しない波長がOLTに到着する時刻を当該波長の供給光の反射光がOLTに戻る時刻として、OLT側で受信しなくてもよい。波長毎に遅延時間を違えるためには、例えば、波長スプリッタで分波した後にそれぞれ遅延を与えて合波する。または波長毎の伝搬遅延差が大きな分散媒質を伝搬することで遅延を与えるとしてもよい。
【0045】
以上説明したように、光通信システム301は、複数の加入者側装置と一つの局側装置間で時間領域及び複数の波長領域を共用し、受動光分岐回路を利用して信号光を送受信する光通信システムにおいて、ONU100はOLT200から受け取った供給光を、反射光がある時間は、上り光信号として出力するのを抑止し、反射光がない時間に、上り信号として出力する。このため、反射光がある場合に必要となる高増幅率の増幅器を用いることなく、反射光の影響を受けることなく通信することができる。
【0046】
(他の実施形態)
なお、以上説明した実施態様は、本発明の一態様を示したものであって、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の構成を備え、目的及び効果を達成できる範囲内での変形や改良が、本発明の内容に含まれるものであることはいうまでもない。また、本発明を実施する際における具体的な構造及び形状等は、本発明の目的及び効果を達成できる範囲内において、他の構造や形状等としても問題はない。本発明は前記した各実施形態に限定されるものではなく、本発明の目的を達成できる範囲での変形や改良は、本発明に含まれるものである。
【0047】
例えば、光通信システム301は、4つのONUと1つ及び2つの波長で説明したが、光送信機の数が増減してもよいし、波長の数も2以上であってよい。また、光通信システム301は1つの光受信機20が光信号を受信しているが、光受信機は複数とすることもできる。さらに、光通信システム301は、ONUが光受信機も備え、OLTが光送信機も備えており、双方向通信のシステムであってもよい。
【0048】
なお、本光通信システムはWDM/TDM−PONへの適用が代表例であるが、WDM/TDM−PON以外にも、複数のONUからの上り信号を波長選択性のない受動素子で集線するWDM−PONや光スイッチを用いたネットワークにも適用できる。波長選択性のある素子で集線するWDM−PON等であっても、波長選択性のある素子の選択する波長の周回性等で複数のONUからの上り信号が同一のポートに到着しうる場合も同様である。更に、PON以外のパッシブツリー等にも適用できる。またOLTから供給される供給光を上り光信号に利用する光通信システムであれば、波長分割多重を適用しない光通信システムにも適用できる。この場合は、局側装置の光受信機の光合分波器と、一つの受光器以外の受光器は省略できる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明は、PONに適用される光通信システム関連の技術分野に利用することができる。
【符号の説明】
【0050】
10:光送信機
11:遅延器
12:増幅器
13:変調器
14:サーキュレータ
15:光フィルタ
16:反射板
20:光受信機
21:受信回路
22:光源
23:サーキュレータ
25:光合分波器
27、28:受光器
30:後段の装置
50、51:光伝送路
55:光スプリッタ
57:波長スプリッタ
100、101、102、103、120、121:ONU
200:OLT
301:光通信システム
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光伝送路を介して加入者側装置との間で光信号を送受する局側光送受信回路と、
前記加入者側装置へ上り光信号用の供給光を供給する光源と、
前記光源の発光が継続する時間と前記加入者側装置が上り信号光を継続して送信しうる時間、
前記光伝送路における、最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と最近傍の反射点での前記供給光の往復伝搬時間との差の時間、及び
前記光伝送路における、最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と最近傍の反射点での前記供給光の往復伝搬時間との差の時間又は該供給光が最遠方の前記加入者側装置に到達して上り光信号として戻ってくる往復伝搬時間と該供給光が最近傍の加入者側装置に到達して上り光信号として戻ってくる往復伝搬時間との差の時間、
を加算した時間間隔以上で前記供給光を前記光源に出力させる局側制御回路と、
を備える局側装置。
【請求項2】
光伝送路を介して局側装置との間で光信号を送受する際に、前記局側装置の光源が供給する供給光を利用して上り光信号を前記局側装置へ送信する加入者側光送受信回路と、
前記供給光を受けたとき前記加入者側光送受信回路に対して、前記伝送路の反射点で反射された前記供給光が前記局側装置の局側光送受信回路に到達する以外の時間に、前記上り光信号が前記局側光送受信回路に到達するように、前記上り光信号を送信させる加入者側制御回路と、
を備える加入者側装置。
【請求項3】
前記加入者側制御回路は、
前記光源の発光が継続する時間、及び
前記光伝送路における、最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と最近傍の反射点での前記供給光の往復伝搬時間との差の時間又は最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と該供給光が最近傍の前記加入者側光送受信回路に到達して上り光信号として戻ってくる往復伝搬時間との差の時間、
を加算した時間の後に上り光信号を送信させることを特徴とする請求項2に記載の加入者側装置。
【請求項4】
光伝送路に接続される請求項1に記載の局側装置と、
前記局側装置に対向して光伝送路に接続される請求項2又は3に記載される加入者側装置と、
を備える光通信システム。
【請求項5】
光伝送路を介して局側装置と加入者側装置との間で光信号を送受する光通信システムの光通信方法であって、
前記局側装置が、前記加入射側装置へ上り光信号用の供給光を供給する際に、
前記光源の発光が継続する時間と前記加入者側装置が上り信号光を継続して送信しうる時間、
前記光伝送路における、最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と最近傍の反射点での前記供給光の往復伝搬時間との差の時間、及び
前記光伝送路における、最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と最近傍の反射点での前記供給光の往復伝搬時間との差の時間又は該供給光が最遠方の前記加入者側装置に到達して上り光信号として戻ってくる往復伝搬時間と該供給光が最近傍の加入者側装置に到達して上り光信号として戻ってくる往復伝搬時間との差の時間、
を加算した時間間隔以上で前記加入者側装置へ上り光信号用の供給光を供給することを特徴とする光通信方法。
【請求項6】
前記加入者側装置が前記上り光信号を送信する際に、前記伝送路の反射点で反射された前記供給光が前記局側装置の局側光送受信回路に到達する以外の時間に、前記上り光信号が前記局側光送受信回路に到達するように、前記上り光信号を送信することを特徴とする請求項5に記載の光通信方法。
【請求項7】
前記加入者側装置が前記上り光信号を送信する際に、
前記光源の発光が継続する時間、及び
前記光伝送路における、最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と最近傍の反射点での前記供給光の往復伝搬時間との差の時間又は最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と該供給光が最近傍の前記加入者側光送受信回路に到達して上り光信号として戻ってくる往復伝搬時間との差の時間、
を加算した時間の後に前記上り光信号を送信することを特徴とする請求項6に記載の光通信方法。
【請求項1】
光伝送路を介して加入者側装置との間で光信号を送受する局側光送受信回路と、
前記加入者側装置へ上り光信号用の供給光を供給する光源と、
前記光源の発光が継続する時間と前記加入者側装置が上り信号光を継続して送信しうる時間、
前記光伝送路における、最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と最近傍の反射点での前記供給光の往復伝搬時間との差の時間、及び
前記光伝送路における、最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と最近傍の反射点での前記供給光の往復伝搬時間との差の時間又は該供給光が最遠方の前記加入者側装置に到達して上り光信号として戻ってくる往復伝搬時間と該供給光が最近傍の加入者側装置に到達して上り光信号として戻ってくる往復伝搬時間との差の時間、
を加算した時間間隔以上で前記供給光を前記光源に出力させる局側制御回路と、
を備える局側装置。
【請求項2】
光伝送路を介して局側装置との間で光信号を送受する際に、前記局側装置の光源が供給する供給光を利用して上り光信号を前記局側装置へ送信する加入者側光送受信回路と、
前記供給光を受けたとき前記加入者側光送受信回路に対して、前記伝送路の反射点で反射された前記供給光が前記局側装置の局側光送受信回路に到達する以外の時間に、前記上り光信号が前記局側光送受信回路に到達するように、前記上り光信号を送信させる加入者側制御回路と、
を備える加入者側装置。
【請求項3】
前記加入者側制御回路は、
前記光源の発光が継続する時間、及び
前記光伝送路における、最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と最近傍の反射点での前記供給光の往復伝搬時間との差の時間又は最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と該供給光が最近傍の前記加入者側光送受信回路に到達して上り光信号として戻ってくる往復伝搬時間との差の時間、
を加算した時間の後に上り光信号を送信させることを特徴とする請求項2に記載の加入者側装置。
【請求項4】
光伝送路に接続される請求項1に記載の局側装置と、
前記局側装置に対向して光伝送路に接続される請求項2又は3に記載される加入者側装置と、
を備える光通信システム。
【請求項5】
光伝送路を介して局側装置と加入者側装置との間で光信号を送受する光通信システムの光通信方法であって、
前記局側装置が、前記加入射側装置へ上り光信号用の供給光を供給する際に、
前記光源の発光が継続する時間と前記加入者側装置が上り信号光を継続して送信しうる時間、
前記光伝送路における、最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と最近傍の反射点での前記供給光の往復伝搬時間との差の時間、及び
前記光伝送路における、最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と最近傍の反射点での前記供給光の往復伝搬時間との差の時間又は該供給光が最遠方の前記加入者側装置に到達して上り光信号として戻ってくる往復伝搬時間と該供給光が最近傍の加入者側装置に到達して上り光信号として戻ってくる往復伝搬時間との差の時間、
を加算した時間間隔以上で前記加入者側装置へ上り光信号用の供給光を供給することを特徴とする光通信方法。
【請求項6】
前記加入者側装置が前記上り光信号を送信する際に、前記伝送路の反射点で反射された前記供給光が前記局側装置の局側光送受信回路に到達する以外の時間に、前記上り光信号が前記局側光送受信回路に到達するように、前記上り光信号を送信することを特徴とする請求項5に記載の光通信方法。
【請求項7】
前記加入者側装置が前記上り光信号を送信する際に、
前記光源の発光が継続する時間、及び
前記光伝送路における、最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と最近傍の反射点での前記供給光の往復伝搬時間との差の時間又は最遠方の反射点での前記供給光の往復伝搬時間と該供給光が最近傍の前記加入者側光送受信回路に到達して上り光信号として戻ってくる往復伝搬時間との差の時間、
を加算した時間の後に前記上り光信号を送信することを特徴とする請求項6に記載の光通信方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【公開番号】特開2011−147024(P2011−147024A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−7316(P2010−7316)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【出願人】(000004226)日本電信電話株式会社 (13,992)
【Fターム(参考)】
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