説明

局所に限定され、構造化され、電気的に加熱可能である透明領域を有している透明物体、その製造方法および使用

本発明は、少なくとも1つの透明な電気絶縁性の基材(1)と、少なくとも1つの導電性材料(2.1)を含んでおり、または少なくとも1つの導電性材料(2.1)で作られており、透明な電気絶縁性の基材(1)の大部分を覆っている構造化された透明コーティング(2)と、導電性材料(2.1)の存在しない電気絶縁領域(2.2)を含む構造と、少なくとも1つの局所に限定され、構造化され、電気的に加熱可能である透明領域(2.3)と、少なくとも1つの導電性の透明領域(2.4)と、コーティング(2)に電圧を印加するための少なくとも1つの電気接点(3)と、を備えている図1による透明物体に関する。コーティング(2)が構造化されており、少なくとも1つの電気接点(3)は、電圧が印加されたときに電流が少なくとも領域(2.3)を通って流れるように接続されている。さらに、この透明物体の製造方法および使用も提示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、透明な電気絶縁性の基材を備えている透明物体であって、そのような基材が、少なくとも1つの局所に限定され、構造化され、電気的に加熱可能である透明領域を有する大面積の構造化された導電性の透明コーティングを備えている新規な透明物体に関する。
【0002】
さらに、本発明は、透明な基材を備えている透明物体であって、そのような基材が、少なくとも1つの局所に限定され、構造化され、電気的に加熱可能である透明領域を有する大面積の構造化された導電性の透明コーティングを備えている透明物体の新規な製造方法に関する。
【0003】
さらに、本発明は、とりわけ、透明な電気絶縁性の基材を備えている透明物体であって、そのような基材が、少なくとも1つの局所に限定され、構造化され、電気的に加熱可能である透明領域を有する大面積の構造化された導電性の透明コーティングを備えている新規な透明物体の新規な使用に関し、さらには新規な方法を使用して製造され、透明な基材を備えており、そのような基材が、少なくとも1つの局所に限定され、構造化され、電気的に加熱可能である透明領域を有する大面積の構造化された導電性の透明コーティングを備えている透明物体の新規な使用に関する。
【背景技術】
【0004】
導電性の透明な層を備えている自動車用の積層安全窓ガラス(特に、フロントガラス)、ならびにそれらの製造方法が、例えば以下の特許出願および特許刊行物、すなわち米国特許第4,010,304号明細書、米国特許第4,385,226号明細書、米国特許第4,565,719号明細書、米国特許第4,655,811号明細書、米国特許第4,725,710号明細書、米国特許第4,985,312号明細書、米国特許第5,111,329号明細書、米国特許第5,324,374号明細書、欧州特許出願公開第0638528号明細書、欧州特許出願公開第0718250号明細書、独国特許第69731268号明細書、国際公開第00/72635号、および米国特許第7,223,940号明細書から知られている。導電性の透明な層を、積層安全窓ガラスの全面の加熱に使用することができ、または赤外線を反射もしくは吸収する層として使用することができる。
【0005】
一般に、自動車用の積層安全窓ガラスの全面の加熱には、42Vの電圧が必要とされる。しかしながら、大多数の型式の自動車の車載の電圧は、わずかに12から14Vにすぎず、加熱可能であることを保証するために、追加の電気および電子部品の設置など、追加の手段をとる必要がある。しかしながら、これは、自動車の製造において望ましくない追加の支出を引き起こし、結果としてコストをより高くする。また、多くの場合に、追加の部品のために利用することができるさらなる空間が、車体に存在しないことでもある。
【0006】
最新の自動車のフロントガラスは、多くの場合に、カメラまたはセンサがフロントガラスを「見通す」いわゆるカメラまたはセンサ視野を有している。これらの視野を、カメラおよびセンサがそれらの機能を全うできるよう、常に水または氷からの曇りが存在しないように保たなければならない。視野を曇りが存在しないように保つために、細長い導体を、電気加熱のために取り入れることができる。これらの細長い導体は、確かに車載の12から14Vの電圧で動作することができるが、望ましくない影を生じさせる可能性がある。
【0007】
国際公開第00/72635号から、全面を電気的に加熱することができるフロントガラスであって、導電性のコーティングが存在しない窓を有しているフロントガラスが知られている。この窓は、フロントガラスを通してのデータの送信に使用される。しかしながら、この窓は、加熱可能でなく、したがって曇りがない状態に保つことが困難または不可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第4,010,304号明細書
【特許文献2】米国特許第4,385,226号明細書
【特許文献3】米国特許第4,565,719号明細書
【特許文献4】米国特許第4,655,811号明細書
【特許文献5】米国特許第4,725,710号明細書
【特許文献6】米国特許第4,985,312号明細書
【特許文献7】米国特許第5,111,329号明細書
【特許文献8】米国特許第5,324,374号明細書
【特許文献9】欧州特許出願公開第0638528号明細書
【特許文献10】欧州特許出願公開第0718250号明細書
【特許文献11】独国特許第69731268号明細書
【特許文献12】国際公開第00/72635号
【特許文献13】米国特許第7,223,940号明細書
【特許文献14】欧州特許第0847965号明細書
【特許文献15】米国特許出願公開第2007/029186号明細書
【特許文献16】欧州特許出願公開第0827212号明細書
【特許文献17】欧州特許出願公開第1104030号明細書
【特許文献18】国際公開第2005/042246号
【特許文献19】国際公開第2006/034346号
【特許文献20】国際公開第2007/149082号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、従来技術の欠点を取り除き、導電性材料で作られた透明コーティングで覆われており、少なくとも1つの局所に限定された電気的に加熱可能である透明領域(特に、カメラまたはセンサ視野)が存在している新規な透明物体、特に新規な積層安全窓ガラス、とりわけ新規なフロントガラスを利用可能にすることにある。この透明領域は、比較的低い電圧、特に12から14Vの電圧で加熱可能でなければならず、望ましくない影を引き起こしてはならない。さらに、追加の電気および電子部品の設置など、追加の手段が必要であってはならない。また、電気的に加熱可能である透明領域は、冬期の動作または低温下での動作において、水分および氷からの曇りを速やかに除去できなければならず、曇りのない状態を確実に保つことができなければならない。
【0010】
さらに、本発明の目的は、透明物体、特に積層安全窓ガラス、とりわけフロントガラスを製造するための新規な方法であって、従来技術の欠点をもはや有さず、むしろ簡単かつきわめて容易に再現することができる方式で、導電性材料で作られた透明なコーティングを有しており、コーティングに比較的低い電圧で電気的に加熱することができる少なくとも1つの透明領域(特に、カメラまたはセンサ視野)が存在している透明物体を大量にもたらす方法を利用可能にすることにある。新規な方法を使用して製造される透明かつ電気的に加熱することができる領域は、追加の電気および電子部品を必要とせずに完全に機能できなければならない。また、電気的に加熱可能である透明領域は、冬期の動作または低温下での動作においても、水分および氷からの曇りを速やかに除去できなければならず、曇りのない状態を確実に保つことができなければならず、もはや影を引き起こしてはならない。
【0011】
さらに、特に、本発明の目的は、新規な透明物体および新規な方法を使用して製造された透明物体について、陸上、空中、および水上の交通のための輸送手段ならびに建設、家具、および設備の部門における新規な使用を発見することにある一方で、それらの新規な用途において、該当の透明物体が、やはり局所に限定された透明領域において、水分および氷からの曇りを除去でき、曇りのない状態を確実に保つことができ、もはや影を引き起こさないことが、特に重要である。
【課題を解決するための手段】
【0012】
少なくとも1つの透明な電気絶縁性の基材(1)と、
少なくとも1つの導電性材料(2.1)を含み、または少なくとも1つの導電性材料(2.1)で作られており、
透明な基材(1)を広い面積にわたって覆っており、
導電性材料(2.1)の存在しない電気絶縁領域(2.2)から形成された構造を有しており、
少なくとも1つの局所に限定され、構造化され、電気的に加熱可能である透明領域(2.3)を有しており、
少なくとも1つの導電性の透明な領域(2.4)を有している構造化された透明コーディング(2)と、
コーティング(2)に電圧を印加するための電気接点(3)とを備えており、
電圧が印加されたときに電流が少なくとも領域(2.3)を通って流れるように、コーティング(2)が構造化され、電気接点(3)が接続されている新規な透明物体を発見した。
【0013】
以下で、少なくとも1つの基材(1)と、1つのコーティング(2)と、電気接点(3)とを備えている新規な透明物体を、「本発明による物体」と称する。
【0014】
さらに、
(I)導電性材料(2.1)が、材料(2.1)を含んでおり、または材料(2.1)で作られている透明な導電性のコーティング(2)がもたらされるように、透明な電気絶縁性の基材(1)の広い面積を覆って付着され、
(II)コーティング(2)が、導電性材料(2.1)が存在しない電気絶縁領域(2.2)がもたらされるように所定の場所において除去されることによって構造化され、
(III)構造化されたコーティング(2)が電気接点(3)に接続される透明物体の製造方法であって、
構造化(II)は、
構造化されたコーティング(2)が、少なくとも1つの局所に限定され、構造化され、電気的に加熱可能である透明領域(2.3)と、少なくとも1つの導電性の透明な領域(2.4)とを有し、
電圧の印加時に電流が少なくとも領域(2.3)を通って流れるように行われる新規な製造方法を発見した。
【0015】
以下では、透明物体の新規な製造方法を、「本発明による方法」と称する。
【0016】
さらに、とりわけ、本発明による物体および新規な方法を使用して製造された透明物体について、陸上、空中、および水上の交通のための輸送手段ならびに建設、家具、および設備の部門における新規な使用が発見され、それらは、以下で「本発明による使用」と称される。
【0017】
従来技術に関して、本発明の目的を本発明による物体、本発明による方法、および本発明による使用を使用して達成できることは、当業者にとって驚くべきことであり、予測できないことであった。
【0018】
特に、本発明による物体が、もはや従来技術の欠点を有さず、それどころか、構造化された透明コーティングの少なくとも1つの局所に限定された電気的に加熱可能である透明領域(特に、カメラまたはセンサ視野)が、比較的低い電圧(特に、12から14Vの電圧)で加熱可能であり、望ましくない影も引き起こさないことは、驚くべきことである。さらに、追加の電気および電子部品など、追加の手段が不要である。また、電気的に加熱可能である透明領域が、冬期の動作または低温下での動作において、水分および氷からの曇りを速やかに除去することができ、曇りのない状態を確実に保つことができる。さらには、本発明による方法が、やはりもはや従来技術の欠点を有さず、それどころか、構造化された透明コーティングを有しており、望ましくない影を生じさせることなく比較的低い電圧で電気的に加熱することができる少なくとも1つの透明領域(特に、カメラ視野およびセンサ視野)がコーティングに存在している透明物体を、簡単かつきわめて容易に再現することができる方式で大量にもたらすことは、驚くべきことである。新規な方法を使用して製造される透明かつ電気的に加熱することができる領域は、やはり追加の電気および電子部品を必要とせずに完全に機能する。また、電気的に加熱可能である透明領域は、冬期の動作または低温下での動作においても、水分および氷からの曇りを速やかに除去することができ、曇りのない状態を確実に保つことができる。
【0019】
さらには、とりわけ、本発明による物体および本発明による方法を使用して製造された透明物体が、本発明による使用の文脈において、陸上、空中、および水上の交通のための輸送手段ならびに建設、家具、および設備の部門における使用にきわめて適することは、驚くべきことである。やはり、本発明による物体および本発明による方法に従って製造された透明物体は、影の存在しない局所に限定された電気的に加熱可能である透明領域において、冬期の動作または低温下での動作において、水分および氷からの曇りを速やかに除去することができ、曇りのない状態を確実に保つことができる。
【0020】
本発明による物体は、透明である。すなわち、少なくとも個々の領域において(好ましくは、全体にわたって)、電磁放射線に対して透過性であり、好ましくは300から1,300nmの波長を有する電磁放射線に対して透過性であるが、特に可視光に対して透過性である。「透過性」は、特に可視光の透過率が、>50%、好ましくは>50%、特に>80%であることを意味する。
【0021】
本発明による物体は、さまざまな三次元形状を有することができる。すなわち、平坦であっても、1つ以上の方向にわずかな湾曲または大きな湾曲あるいはわずかな曲がりまたは大きな曲がりを有してもよく、あるいは球、円柱、円錐、三角形または矩形の底部を有するピラミッド、二連ピラミッド、立方体、二十面体、などといった規則的または不規則な三次元体の形状を有してもよい。特に、平坦であり、もしくは1つ以上の空間的方向にわずかな湾曲または大きな湾曲あるいはわずかな曲がりまたは大きな曲がりを有している。
【0022】
本発明による物体のサイズは、幅広くさまざまであってもよいが、本発明による使用の文脈におけるそれぞれの目的にもとづく。したがって、本発明による物体は、数センチメートルから数メートルの寸法を有することができる。特に、平坦であり、もしくは1つ以上の空間的方向にわずかな湾曲または大きな湾曲あるいはわずかな曲がりまたは大きな曲がりを有している物体は、100cmから25m程度(好ましくは、>1m)の表面積を有することができる。表面積は、本発明によるこれらの大面積の物体の場合には、表示装置産業において使用されるような寸法Gen 5(1.1m×1.3m=1.43m)およびGen 8.5(2.2m×2.6m=5.72m)を有することができ、またはガラス産業の「尺度」であるPLF(3.21m×6.0m=19.26m)を有することができる。しかしながら、本発明による物体は、フロントガラス、サイドウインドウ、およびリアウインドウ、または建設部門において使用されるような大面積の窓ガラスが一般的に有するような表面積を有することもできる。
【0023】
本発明による物体は、孔を有することができる。それらを、取り付けのための装置を受け入れるために使用することができ、他の物体への接続に使用することができ、かつ/または導体(特に、電気導体)を通すために使用することができる。
【0024】
本発明による物体は、少なくとも1つの透明な電気絶縁性の基材を備える。好ましくは、基材は、300から1,300nmの波長の電磁放射線(特に、可視光)に関して高い透過率を有し、好ましくは>50%、より好ましくは>75%、さらにより好ましくは>85%、特に>95%の透過率を有する。
【0025】
したがって、そのような透過率を有し、本発明による物体の製造および使用の条件下で熱的および化学的に安定かつ寸法的にも安定であるすべての透明な電気絶縁性の基材が、基本的に適している。
【0026】
透明な電気絶縁性の基材は、当該基材を含む本発明による物体について上述した物体の任意の三次元形状を有することができる。好ましくは、三次元形状は、特に気相からの一様なコーティングが可能であるよう、陰領域を有していない。好ましくは、基材は平坦であり、あるいは1つ以上の方向にわずかな湾曲または大きな湾曲を有している。特に、平坦な基材が使用される。
【0027】
透明な電気絶縁性の基材は、無色でも、着色されていてもよい。
【0028】
透明な電気絶縁性の基材の製造に適した材料の例は、ガラスおよび透明なプラスチック(好ましくは、剛な透明プラスチック)、特にポリスチレン、ポリアミド、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、またはポリメチルメタクリレートである。
【0029】
好ましくは、ガラスで製作された透明な電気絶縁性の基材が使用される。基本的には、例えばRompp−Online 2008に「Glas(ガラス)」、「Hartglas(強化ガラス)」、または「Sicherheitsglas(安全ガラス)」というキーワードで記載されているようなすべての一般的かつ知られているガラスが、基材として考慮される。好適なガラスの例は、板ガラス、強化ガラス、プレストレスガラス、単層安全ガラス、装置ガラス、理化学用ガラス、クリスタルガラス、および光学ガラスであり、特に板ガラスおよび強化ガラスである。
【0030】
適切なガラスの例は、ファイル番号DE697312168T2を有する欧州特許第0847965号明細書のドイツ語訳の第8頁段落[0053]から知られている。
【0031】
透明な電気絶縁性の基材の厚さは、幅広くさまざまであってもよく、個々の事例の要件に幅広く合わせられる。好ましくは、2、3、4、5、6、8、10、12、15、19、および24mmという標準的なガラスの厚さを有するガラスが使用される。
【0032】
透明な電気絶縁性の基材のサイズは、幅広くさまざまであってもよく、当該基材を含む本発明による物体のサイズにもとづく。したがって、上述したサイズが好ましく使用される。
【0033】
透明な電気絶縁性の基材は、構造化された透明コーティングで覆われる。
【0034】
ここでも、「透明」は、構造化された透明コーティングが、電磁放射線に対して透過性であり、好ましくは300から1,300nmの波長を有する電磁放射線に対して透過性であり、特に可視光に対して透過性であることを意味する。「透過性」は、特に可視光の透過率が、>50%、好ましくは>50%、特に>80%であることを意味する。赤外線を透過させず、すなわち赤外線を反射させ、または吸収する構造化された透明コーティングが、特に好ましい。
【0035】
「構造化」は、透明コーティングが、互いに分離された少なくとも2つ(特に、少なくとも3つ)の領域へと分割されることを意味する。
【0036】
構造化された透明コーティングは、少なくとも1つの導電性材料を含み、または少なくとも1つの導電性材料で形成される。
【0037】
したがって、構造化された透明コーティングを、導電性材料からなる1つの層または2つの異なる導電性材料からなる少なくとも2つの層で構成することができる。
【0038】
さらには、構造化された透明コーティングを、導電性材料からなる少なくとも1つの層と、透明な誘電性材料からなる少なくとも1つの層とから構成することができる。例えば、構造化された透明コーティングを、透明な誘電性材料からなる第1の層と、導電性材料からなる層と、同じまたは異なる透明な誘電性材料からなる第2の層とを、上記順序で重ね合わせて構成することができる。しかしながら、構造化された透明コーティングを、少なくとも3つの透明な誘電性材料の層と、少なくとも2つの導電性材料の層とを、少なくとも1つの透明な誘電性材料の層が導電性の層の間に位置するように交互に重ね合わせて構成することも可能である。
【0039】
適切な導電性材料の例は、銀、銅、金、アルミニウム、またはモリブデンなどの高い導電率を有する金属(特に、銀または銀のパラジウムとの合金)、ならびに例えば米国特許出願公開第2007/029186号明細書の第3頁段落[0026]および第4頁段落[0034]に記載されているような透明な導電性酸化物(透明導電酸化物、TCO)である。
【0040】
好ましくは、TCOは、酸化インジウムスズ(ITO)、フッ素をドープした酸化スズ(フッ素酸化スズ、FTO)、アルミニウムでドープされ、おそらくはホウ素および/または銀でさらにドープされるアルミニウム酸化亜鉛(アルミニウム酸化亜鉛、AZO)、アンチモンでドープされた酸化亜鉛スズまたは酸化スズ(亜アンチモン酸化スズ、ATO)である。好ましくは、TCOが、1.0から5.0×10−3Ω×mの抵抗率ρを有する。好ましくは、0.5Ω/□から15Ω/□のシート抵抗Rを有する。
【0041】
構造化された透明コーティングの厚さは、幅広くさまざまであってもよく、個々の事例の要件に幅広く合わせられる。構造化された透明コーティングの厚さが、電磁放射線、好ましくは300から1,300nmの波長の電磁放射線、特に可視光に対して、非透過性になるほどには厚くないことが、不可欠である。
【0042】
好ましくは、厚さが、20nmから100μmである。
【0043】
構造化された透明コーティングが金属で形成される場合、厚さは、好ましくは50から500nm、より好ましくは75から400nm、特に100から300nmである。
【0044】
構造化された透明コーティングがTCOで形成される場合、その厚さは、好ましくは100nmから1.5μm、より好ましくは150nmから1μm、特に200nmから500nmである。
【0045】
構造化された透明コーティングが、少なくとも1つの透明な誘電性材料の層と、少なくとも1つの金属層とで形成される場合、その厚さは、好ましくは20から100μm、より好ましくは25から90μm、特に30から80μmである。
【0046】
本発明に従って使用される構造化された透明コーティングの製造に適した透明コーティングの例、ならびにそれらの製造方法は、以下の特許出願および特許刊行物から知られている。
【0047】
米国特許第4,010,304号明細書の第1欄67行〜第5欄35行、
米国特許第4,565,719号明細書の第2欄3行〜第18欄51行、
米国特許第4,655,811号明細書の第3欄56行〜第13欄63行、
米国特許第4,985,312号明細書の第1欄64行〜第7欄25行、
米国特許第5,111,329号明細書の第3欄32行〜第12欄、
米国特許第5,324,374号明細書の第2欄38行〜第6欄37行、
欧州特許出願公開第0638528号明細書の第2頁19行〜第10頁57行、
欧州特許出願公開第0718250号明細書の第2頁42行〜第13頁44行、
独国特許第69731268号明細書の第3頁段落[0011]から第7頁段落[0051]および第8頁段落[0060]〜第13頁段落[0091]、
国際公開第00/72635号の第3頁16〜35行、および
米国特許第7,223,940号明細書の第5欄8行〜第6欄38行。
【0048】
さらには、好ましくはポリアミド、ポリウレタン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、およびポリビニルブチラールを主体とし、特にポリウレタンを主体とし、上述の導電性材料のうちの少なくとも1つでコートされた透明なプラスチックフィルムが、考慮される。
【0049】
構造化された透明コーティングが、透明な絶縁性の基材を大きな面積にわたって覆う。好ましくは、透明な絶縁性の基材の表面の少なくとも50%、より好ましくは少なくとも70%、特に好ましくは少なくとも80%、特に少なくとも90%が、構造化された透明コーティングによって覆われる。したがって、構造化された透明コーティングが、透明な絶縁性の基材を完全に覆ってもよい。
【0050】
特に、上述の平坦な基材、湾曲した基材、または曲がった基材の場合に、構造化された透明コーティングは、導電性材料が存在しない電気絶縁領域によって囲まれるように、基材を覆うことができる。好ましくは、この電気絶縁領域が、電気絶縁性の透明な基材の縁の領域に位置する。
【0051】
電気絶縁領域の幅は、幅広くさまざまであってもよく、したがって、個々の事例の要件に幅広く合わせられる。好ましくは、幅が0.5から10cm、より好ましくは0.5から7cm、特に0.5から5cmである。
【0052】
電気絶縁領域を、装飾的なコーティングによって覆うことができる。
【0053】
構造化された透明コーティングは、導電性材料が存在しない電気絶縁領域から形成される構造を有している。構造は、少なくとも1つ(特に、1つ)の局所に限定され、構造化され、電気的に加熱可能である透明領域と、少なくとも1つの導電性の透明領域とを含んでいる。
【0054】
「局所に限定」は、該当の構造化された電気的に加熱可能である透明領域が、導電性の透明領域の面積よりも小さい面積を有することを意味する。
【0055】
「構造化」は、局所に限定された電気的に加熱可能である透明領域が、電気絶縁領域から形成された構造を有することを意味する。
【0056】
「電気的に加熱可能」は、局所に限定され、構造化された透明領域が、電圧が印加され、好ましくは自動車において一般的に使用される車載の電圧(特に、12から14Vの電圧)が印加されたときに、この領域が加熱されるように充分に高い電気抵抗を有することを意味する。
【0057】
局所に限定され、電気的に加熱可能であり、構造化されている透明領域の構造は、個々の場合において、領域が過熱によって損傷したり、かつ/または裸の皮膚がこの領域に触れた場合に火傷の危険が存在するほどには、電気抵抗が高くないように構成される。好ましくは、構造および電気抵抗は、領域が電圧の印加時に30から70℃に加熱されるように設計される。
【0058】
局所に限定され、電気的に加熱可能である、構造化されている透明領域は、個々の事例の要件に合わせることができるよう、事例ごとに異なる構造を有することができる。
【0059】
好ましくは、構造が、曲がりくねった細長い導体の形状を有する。
【0060】
曲がりくねった細長い導体は、さまざまな寸法を有することができる。寸法は、主として、使用される個々の導電性材料、その伝導度、比電気抵抗、およびシート抵抗にもとづき、さらには局所に限定された電気的に加熱可能な構造化された透明領域をどのような温度まで加熱すべきかにもとづく。したがって、当業者であれば、当該技術分野の自身の知識を使用して、おそらくは個々の事例における多少の適応実験の助けを借りて、寸法を指定することが可能である。
【0061】
好ましくは、曲がりくねった細長い導体が、0.5mmから10cmの幅を有する。好ましくは、長さは、10cmから6mである。
【0062】
構造化された透明コーティングは、電気接点へと接続される。構造化された透明コーティングは、全体として、電気接点へと電圧が印加されたときに電流が少なくとも局所に限定された電気的に加熱可能である構造化された透明領域を通って流れるように、構造化される。
【0063】
本発明による物体の第1の実施形態においては、局所に限定された電気的に加熱可能である構造化された透明領域が、導電性の透明領域から電気的に絶縁される。この第1の実施形態において、導電性の透明領域それ自体は、さらに構造化されなくてもよい。
【0064】
第1の実施形態においては、局所に限定された電気的に加熱可能である構造化された透明領域が、電圧の印加時に電流が上述の細長い導体を通って流れるように、電気接点へと接続されることが不可欠である。これを、電流が細長い導体を経由する回り道の経路をとらなければならないように、接点の極を電気絶縁領域によって互いに隔てることで保証することができる。
【0065】
本発明による物体の第2の実施形態においては、局所に限定された電気的に加熱可能である構造化された透明領域が、導電性の透明領域に電気的に接触し、電気接点は、好ましくは局所に限定された電気的に加熱可能である構造化された透明領域の外部に接続される。
【0066】
第2の実施形態においては、各々の存在する局所に限定された電気的に加熱可能である構造化された透明領域ごとの導電性の透明領域が、2つの部分領域で構成され、一方の部分領域が局所に限定された領域の電気入力に接触し、他方の部分領域が局所に限定された領域の電気出力に接触することが、不可欠である。これにより、電圧の印加時に電流が局所に限定された領域を通って流れることが保証される。
【0067】
電気接点は、一般的な知られている直接的な接点、または接点ブリッジおよびコイルを含んでいる誘導接点であってもよい。
【0068】
きわめて薄い構造化された透明コーティングからケーブルおよびプラグの一般的な寸法への適切な移行を実現することができる適切な直接の電気接点の例が、米国特許第7,223,940号明細書の第1欄55行から第2欄43行および第6欄48行から第9欄59行ならびに関連の図1から9から知られている。
【0069】
誘導接点の場合に、コイルを電気的に絶縁された細いワイヤで製作することができる。しかしながら、好ましくは、コイルが構造化された透明コーティングへと一体化される。このことは、コイルが透明コーティングの構造の構成要素であって、導電性材料が存在しないらせん形の電気絶縁領域によって形成されることを意味する。細長い導体が通り抜ける形態の構造化された透明コーティングが、このらせん形の電気絶縁領域の巻回の間に位置する。
【0070】
第1の実施形態の場合には、コイルが、電圧の印加時に電流が上述の細長い導体を経由する回り道の経路をとらなければならないよう、局所に限定され、構造化され、電気的に加熱可能である透明領域の範囲内に位置し、局所に限定され、構造化され、電気的に加熱可能である透明領域に一体化されている。
【0071】
第2の実施形態の場合には、コイルが、局所に限定され、構造化され、電気的に加熱可能である透明領域の上述の細長い導体の電気出力または入力に電気的に接触した導電性の透明領域の部分領域内に位置する。
【0072】
電気接点ブリッジが、コイルの上方へと構造化された透明コーティングの外部に位置し、第1の実施形態の場合には、細長い導体の電気出力領域の上方の領域へと突き出している。第2の実施形態の場合には、導電性の透明領域の他方の部分領域の上方の領域へと突き出している。
【0073】
構造化された透明コーティングの上述の構造は、導電性材料が存在しない電気絶縁領域によって形成される。電気絶縁領域の寸法は、幅広くさまざまであってもよく、したがって、個々の事例の要件に幅広く合わせることができる。好ましくは、幅が100nmから5mm、より好ましくは150nmから5mm、特に好ましくは200nmから5mm、特に250nmから5mmである。
【0074】
電気絶縁領域の深さも、幅広くさまざまであってもよく、したがって、個々の事例の要件に幅広く合わせることができる。これらの領域が、もはやいかなる導電性材料も含まないことが不可欠である。好ましくは、電気絶縁領域は、構造化された透明コーティングの表面から電気絶縁性の透明な基材の表面まで延びる深さを有する。
【0075】
電気絶縁領域の断面形状も、幅広くさまざまであってもよく、個々の事例の要件に合わせることが可能である。領域の壁の間の距離が、短絡の危険が存在しないように充分に大きいことが不可欠である。好ましくは、電気絶縁性の領域が、矩形の断面形状を有する。
【0076】
電気絶縁性の透明な基材がガラスで製作される場合、少なくとももう1つの層を、基材の表面と構造化された透明コーティングとの間に位置させることができる。好ましくは、少なくとももう1つの層が、透明なバリア層および透明な付着促進層の群から選択される。
【0077】
イオン(特に、アルカリ金属イオン)の拡散を防止するための適切な透明バリア層が、好ましくは誘電性材料、特にケイ素および/またはアルミニウムのチッ化物、酸化物、および酸チッ化物で形成される。好ましくは、バリア層は、30から300nmの厚さを有する。
【0078】
適切な透明な付着促進層も、やはり誘電性材料から形成され、特に亜鉛およびスズの混合酸化物で形成される。好ましくは、付着促進層は、3から100nmの厚さを有する。
【0079】
透明なバリア層および透明な付着促進層の両方が存在する場合には、透明なバリア層が、電気絶縁性の透明な基材の表面に直接接続される。
【0080】
本発明による物体は、きわめてさまざまな方法で製造可能である。
【0081】
例えば、導電性材料が存在しない電気絶縁領域の所望の構造に対応するマスクを、電気絶縁性の透明な基材へと付着することができる。次いで、少なくとも1つの導電性材料を気相から基材へと堆積させることができ、以下に記載の方法を使用することができる。上述の構造化された透明コーティングが、直接的に生成される。次いで、マスクが除去され、構造化された透明コーティングが、以下で説明されるように、電圧の印加時に電流が少なくとも局所に限定され、構造化され、電気的に加熱可能である透明領域を通って流れるように、電気接点へと接続される。
【0082】
しかしながら、本発明によれば、本発明による物体を本発明による方法を使用して製造することが有利である。他方で、本発明による方法を、本発明による物体以外の透明物体の製造にも使用することができる。しかし、本発明による方法は、特に本発明による物体の製造者において、その特有の利点を発展させる。
【0083】
方法の第1のステップの実行に先立って、電気絶縁性の透明な基材を、熱によって処理し、清掃し、特に脱脂し、かつ/または磨くことができる。次いで、上述のバリア層および/または付着促進層の少なくとも1つを付着することができ、以下で説明される気相から薄い層を堆積させるための方法を使用することができる。
【0084】
方法の第1のステップにおいて、少なくとも1つの導電性材料が、導電性材料を含んでおり、または導電性材料で形成されている透明な導電性のコーティングがもたらされるよう、透明な電気絶縁性の基材または基材上に位置する層の表面の大面積を覆って付着される。
【0085】
このために、気相からの堆積、液相からの塗布、または導電性材料で覆われたプラスチックフィルムの積層など、知られている方法および装置を使用することができる。
【0086】
好ましくは、透明な導電性のコーティングが気相から堆積させられ、化学ガラス相堆積(CVD[化学蒸着])または物理ガラス相堆積(PVD[物理蒸着])などといった一般的かつ知られている方法ならびにこれに適した相応の装置を使用することができる。CVD法の例は、噴霧熱分解、化学蒸着、およびゾル−ゲル法である。PVD法の例は、電子ビーム蒸着および真空スパッタリングである。
【0087】
好ましくは、スパッタリング法が使用される。
【0088】
スパッタリングは、容易には気化させることができない材料の薄い層を製造するための一般的かつ知られている方法である。スパッタリング法では、適切な組成の固形物(いわゆる、ターゲット)の表面が、低圧プラズマからの高エネルギーのイオン(酸素イオン(O)および/またはアルゴンイオン(Ar))または中性粒子で衝突させることによって原子化され、その後に、原子化させられた材料が薄い層の形態で基材に堆積する(Rompp Online、2008年、「スパッタリング」を参照)。好ましくは、HFスパッタリングとして知られる高周波スパッタリングや、マグネトロンスパッタリング(MSVD)として知られる磁界によって補助されたスパッタリングが使用される。
【0089】
適切なスパッタリング法は、例えば、米国特許第7,223,940号明細書の第6欄25〜38行、米国特許第4,985,312号明細書の第4欄18頁〜第7欄10行、またはファイル番号DE69731268号T2を有する欧州特許第0847965号明細書のドイツ語訳の第8頁段落[0060]および第9頁段落[0070]〜第10頁段落[0072]に記載されている。
【0090】
本発明による方法の第2のステップにおいて、透明な導電性のコーティングは、導電性材料が存在しない電気絶縁領域がもたらされるように所定の場所において除去されることによって構造化される。
【0091】
導電性の材料を、機械的に除去することができ、熱によって除去することができ、かつ/または電磁放射線の照射によって除去することができる。
【0092】
きわめて精密に働き、きわめて細かい電気絶縁領域をもたらすことができる機械的な除去の1つの有利な方法は、超音波ハンマリングである。
【0093】
やはりきわめて精密に働き、きわめて細かい電気絶縁領域をもたらすことができる熱の作用による除去および/または電磁放射線の照射による除去のための1つの有利な方法は、例えば欧州特許出願公開第0827212号明細書および欧州特許出願公開第1104030号明細書に記載されているようなレーザビームでのレーザビーム照射である。
【0094】
構造化された透明コーティングを、導電性材料が存在しない電気絶縁領域によって囲むべき場合には、この領域の導電性材料が、好ましくは研磨などの機械的な方法によって削り落とされる。
【0095】
次いで、この電気絶縁領域に、電気絶縁領域から構造化された透明コーティングへの移行を光学的に隠すために、装飾的なコーティングを設けることができる。
【0096】
次いで、構造化された透明コーティングを、液体または気体(特に、液体)のエッチング剤で処理し、電気絶縁領域に依然として存在するかもしれない残余の導電性材料を除去することができる。
【0097】
液体のエッチング剤は、好ましくは、液体有機化合物、液体無機化合物、固体、液体、および気体の有機および無機化合物の有機溶媒による溶液、ならびに固体、液体、および気体の有機および無機化合物の水溶液で構成される群から選択される。有機および無機の酸および塩基の水溶液が、好ましく使用される。揮発性の有機および無機酸、特に無機酸が、好ましく使用される。
【0098】
好ましくは、構造化された透明コーティングが、エッチング後に高純度の水などの清浄剤で洗浄される。
【0099】
次いで、構造化された透明コーティングを有している電気絶縁性の透明な基材を、比較的高い温度で成形でき、特に曲げ、または湾曲させることができる。
【0100】
温度の高さは、絶縁性の透明な基材および/または構造化された透明コーティングをそれぞれ形成している材料によって決まる。それらがプラスチックを含んでおり、またはプラスチックで形成されている場合には、温度を、材料が溶けたり、かつ/または熱によって損傷したりしないように充分に低く設定しなければならない。好ましくは、これらの場合には、温度がガラス転移温度を上回りかつ200℃未満である。ガラス製の基材の場合には、温度が500から700℃、特に550から650℃の間である。
【0101】
製造後に、構造化された透明コーティングが、電気接点へと接続され、好ましくは上述の電気接点へと接続される。
【0102】
本発明による方法においては、上述の構造化が、構造化された透明コーティングが、少なくとも1つの局所に限定され、構造化され、電気的に加熱可能である透明領域と、少なくとも1つの導電性の透明な領域とを有し、電圧の印加時に電流が少なくとも局所に限定され、構造化され、電気的に加熱可能である透明領域を通って流れるように行われる。
【0103】
本発明による透明物体および本発明による方法を使用して製造された透明物体、特に本発明による方法を使用して製造された本発明による物体は、追加の機能層および追加の電気絶縁性の透明な基材を含むことができる。
【0104】
適切な機構層の例は、着色層、本発明による物体の構造的安定性を高める層、光反射層、および反射防止層である。
【0105】
特に、本発明による物体の構造的安定性を高める層が使用される。これらは、例えばファイル番号DE697312168T2を有する欧州特許第0847965号明細書のドイツ語訳の第8頁段落[0054]および[0055]、または国際公開第2005/042246号、国際公開第2006/034346号、および国際公開第2007/149082号から知られているように、硬化性のエポキシ樹脂または熱可塑性の合成材料(例えば、ポリビニルブチラール(PVB)、ポリ(エチレン酢酸ビニル)(EVA)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリ塩化ビニル(PVC)、エチレンおよび/またはプロピレンとアルファ、ベータ不飽和カルボン酸とを主体とするアイオノマー樹脂、あるいはポリウレタン(PU))などの注型用樹脂で作られた付着層、複合フィルム、機械エネルギー吸収フィルム、および自己回復フィルムであってもよい。
【0106】
必要であれば、これらの層において、局所に限定され、構造化され、電気的に加熱可能である透明な領域の直上に位置する領域を、空けておくことができる。
【0107】
好ましくは、追加の電気絶縁性の透明な基材は、上述の基材であり、特にガラス製の基材である。
【0108】
好ましくは、追加の電気絶縁性の透明な基材の面積および形状は、本発明による物体に問題なく接続できるよう、本発明による物体に合わせられる。
【0109】
好ましくは、追加の層および/または基材を備えて得られる本発明による物体は、構造化された透明コーティングが、いずれの場合も本発明による物体の内部に位置するように構造化される。
【0110】
本発明による使用の文脈において、本発明による物体および本発明による方法を使用して製造された透明物体(特に、本発明による方法を使用して製造された本発明による物体)を、陸上、空中、および水上の交通のための輸送手段(好ましくは、自動車、トラック、および列車などの動力車、航空機、および船舶)、ならびに家具、設備、および建設部門において、好ましくは透明な部品として、有利に使用することができる。
【0111】
特に好ましくは、本発明による物体は、輸送手段における窓ガラス(特に動力車、殊には自動車のフロントガラス)として、建設分野における建築部品(特に、屋根用の頭上グレージング、ガラス壁、ファサード、窓ガラス、ガラス扉、手すり、欄干ガラス、天窓、または上を歩行できるガラス)として、さらには家具および設備(特に、冷凍/冷蔵庫および冷凍冷蔵陳列ケース)における部品として、単層安全窓ガラスおよび積層安全窓ガラスの形態で使用される。
【0112】
本発明による単層安全窓ガラスおよび複合安全窓ガラスは、陰が存在せず、低い電圧で電気的に加熱することができる局所に限定された透明領域を有しているため、「外側から内側へ」と電磁放射線の形態のデータを通すだけでなく、「内側から外側へ」と電磁放射線の形態のデータを通すための曇りのないカメラおよびセンサ視野としてきわめて適している。したがって、例えば、窓ガラスの背後の車内の距離測定用センサの機能が、冬期においても損なわれることがない。さらに、時計や展示品など、本発明による窓ガラス、透明な冷蔵庫の扉、または透明な陳列ケースの扉の背後に位置する物体を、たとえ冬期または低温での動作においても、曇りに妨げられることなく眺めることができる。
【0113】
以下で、本発明による物体を、図1から図3を参照して例として説明する。図1から図3は、本発明の原理を説明するための概略図である。したがって、概略図は、必ずしも比例尺ではない。結果として、図示されているサイズの関係は、必ずしも本発明の実際の実施において使用されるサイズの関係に一致していない。
【図面の簡単な説明】
【0114】
【図1】本発明の第2の実施形態の第1の選択肢を示している。
【図2】本発明の第2の実施形態の第2の選択肢を示している。
【図3】本発明の第1の実施形態の選択肢を示している。
【発明を実施するための形態】
【0115】
図1から図3において、参照番号は以下の意味を有している:
(1)透明な電気絶縁性の基材
(2)構造化された透明コーティング
(2.1)導電性材料
(2.2)電気絶縁領域
(2.3)局所に限定され、構造化され、電気的に加熱可能である透明領域
(2.3.1)曲がりくねった細長い導体
(2.4)導電性の透明領域
(2.4.1)導電性の透明な部分領域
(2.4.2)導電性の透明な部分領域
(3)電気接点
(3.1)電気接点ブリッジ
(3.2)コイル
(4)電気絶縁領域
【0116】
以下では、簡潔さの目的で、図1から図3の本発明による物体を、「本発明による物体1から3」と称する。
【0117】
本発明による物体1から3の基材(1)は、例えば自動車の製造においてフロントガラス、サイドウインドウ、およびリアウインドウに使用され、または家具、設備、もしくは建設部門において小、中、または大面積の窓ガラスに使用されるような寸法のフロートガラス板である。寸法は、数平方センチメートルから数平方メートルであってもよい。
【0118】
本発明による物体1から3のコーティング(2)は、いずれの場合も、ファイル番号DE697312168T2を有する欧州特許第0847965号明細書のドイツ語訳の第9頁段落[0063]から第11頁段落[0080]の実施例1に記載されているようなコーティングである。この層は、導電材料(2.1)としての銀で形成された2つの層を含んでいる。細長い導体(2.3.1)、領域(2.4)、ならびに部分領域(2.4.1)および(2.4.2)に対して相補的である領域(2.2)が、これらの層に刻まれている。
【0119】
本発明による物体1から3のコーティング(2)は、0.5から10cmの範囲の幅の電気絶縁領域(4)によって囲まれている。
【0120】
本発明による物体1から3の電気絶縁領域(2.2)は、コーティング(2)の厚さに相当する深さを有している。それらの幅は、100nmから5mmの範囲である。
【0121】
本発明による物体1から3の局所に限定され、構造化され、電気的に加熱可能である透明領域(2.3)は、いずれの場合も、10cmから6mの範囲の長さおよび0.5mmから10cmの範囲の幅の曲がりくねった細長い導体(2.3.1)と、この導体(2.3.1)に相補的な電気絶縁領域(2.2)とによって形成されている。
【0122】
本発明による物体3においては、領域(2.3)が、導電性の透明領域(2.4)から電気的に絶縁されている。この実施形態において、本発明による物体3は、ただ1つの領域(2.4)を含んでいる。
【0123】
本発明による物体1および2においては、それぞれの領域(2.3)の入力および出力が、領域(2.2)によって互いに分離された部分領域(2.4.1)または(2.4.2)のそれぞれに電気的に接触している。
【0124】
本発明による物体1においては、一方の直接的な電気接点(3)が、部分領域(2.4.1)へと接続される一方で、他方の直接的な電気接点(3)が、部分領域(2.4.2)へと接続されている。12から14Vの電圧を印加すると、電流が細長い導体(2.3.1)を通って流れ、結果として領域(2.3)が50℃へと加熱される。
【0125】
本発明による物体2は、コイル(3.2)および接点ブリッジ(3.1)を備える誘導電気接点(3)を含んでいる。コイル(3.2)が、貫通のらせん形の領域(2.2)を使用してコーティング(2)の部分領域(2.4.1)に刻まれている。電気接点ブリッジが、コーティング(2)の上方に接触することなく位置しており、コイル(3.2)の中心から部分領域(2.4.1)へと達している。12から14Vの電圧を印加すると、電流が細長い導体(2.3.1)を通って流れ、結果として領域(2.3)が50℃へと加熱される。
【0126】
本発明による物体3においては、直接的な電気接点(3)が、12から14Vの電圧を印加したときに電流が細長い導体(2.3.1)を通って流れ、結果として領域(2.3)が50℃へと加熱されるように、領域(2.3)へと接続されている。この目的のため、2つの電気接点(3)の間に位置する領域(2.2)(図示せず)も存在する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1つの透明な電気絶縁性の基材(1)と、
少なくとも1つの導電性材料(2.1)を含み、または少なくとも1つの導電性材料(2.1)で作られており、
透明な絶縁性の基材(1)の広い面積を覆っており、
導電性材料(2.1)の存在しない電気絶縁領域(2.2)から形成された構造を有しており、
少なくとも1つの局所に限定され、構造化され、電気的に加熱可能である透明領域(2.3)を有しており、
少なくとも1つの導電性の透明な領域(2.4)を有している構造化された透明コーティング(2)と、
コーティング(2)に電圧を印加するための電気接点(3)とを備えており、
コーティング(2)が構造化されており、電気接点(3)が、電圧が印加されたときに電流が少なくとも領域(2.3)を通って流れるように接続されている、透明物体。
【請求項2】
領域(2.3)が、コーティング(2.4)から電気的に絶縁され、電気接点(3)へと接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の透明物体。
【請求項3】
領域(2.3)が、領域(2.4)に電気的に接触しており、電気接点(3)が、領域(2.3)の外部のコーティング(2)へと接続されていることを特徴とする、請求項1に記載の透明物体。
【請求項4】
領域(2.4)が、2つの部分領域(2.4.1)および(2.4.2)を含んでおり、一方の部分領域が、領域(2.3)の電気入力に接触し、他方の部分領域が、領域(2.3)の電気出力に接触していることを特徴とする、請求項1または3に記載の透明物体。
【請求項5】
領域(2.3)が、曲がりくねった細長い導体(2.3.1)の構造を有していることを特徴とする、請求項1から4のいずれか一項に記載の透明物体。
【請求項6】
細長い導体(2.3.1)が、0.5mmから10cmの幅を有することを特徴とする、請求項5に記載の透明物体。
【請求項7】
細長い導体(2.3.1)が、10cmから6mの長さを有していることを特徴とする、請求項5または6に記載の透明物体。
【請求項8】
コーティング(2)が、50nmから100μmの一様な層の厚さを有していることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の透明物体。
【請求項9】
コーティング(2)が、導電性材料(2.1)の少なくとも1つの層を含んでおり、または導電性材料(2.1)の少なくとも1つの層で作られていることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の透明物体。
【請求項10】
領域(2.2)が、100nmから5mmの幅を有していることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の透明物体。
【請求項11】
コーティング(2)が、導電性材料(2.1)が存在しない電気絶縁領域(4)によって囲まれていることを特徴とする、請求項1から10のいずれか一項に記載の透明物体。
【請求項12】
電気接点(3)が、直接的な接点または誘導による接点であることを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の透明物体。
【請求項13】
(I)少なくとも1つの導電性材料(2.1)が、材料(2.1)を含んでおり、または材料(2.1)で作られている透明な導電性のコーティング(2)がもたらされるように、透明な電気絶縁性の基材(1)の広い面積を覆って付着され、
(II)コーティング(2)は、導電性材料(2.1)が存在しない電気絶縁領域(2.2)がもたらされるように所定の場所において除去されることで構造化され、
(III)構造化されたコーティング(2)が電気接点(3)に接続される透明物体の製造方法であって、
構造化(II)は、
構造化されたコーティング(2)が、少なくとも1つの局所に限定され、構造化され、電気的に加熱可能である透明領域(2.3)と、少なくとも1つの導電性の透明な領域(2.4)とを有し、
電圧の印加時に電流が少なくとも領域(2.3)を通って流れるように行われることを特徴とする、方法。
【請求項14】
導電性材料(2.1)が、機械的に除去され、熱によって除去され、かつ/または電磁放射の照射によって除去されることを特徴とする、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項に記載の透明物体および請求項13または14に記載の方法を使用して製造された透明物体を、陸上、空中、および水上の交通のための輸送手段、ならびに家具、設備、および建設部門における使用。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−506112(P2012−506112A)
【公表日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−531464(P2011−531464)
【出願日】平成21年10月13日(2009.10.13)
【国際出願番号】PCT/EP2009/063309
【国際公開番号】WO2010/043598
【国際公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【出願人】(500374146)サン−ゴバン グラス フランス (388)
【Fターム(参考)】