説明

局所温度調節装置及び局所温度調節装置を用いた育成方法

【課題】株基部を冷却することで、低エネルギーで植物の育成を調節することができる局所温度調節装置。
【解決手段】スポットクーラ80で冷却された空気をベッド30、板40に備えられた間隙42、遮蔽布60を介して株基部の温度で育成を調節することができる植物の株基部に導く。こうすることにより、発育調節に必要な株基部を冷却することができるため、温室内全体を冷却するよりも遙かに省エネルギーで発育調節を行うことができる。更に、白色布64にプラスチックチューブ70によって水分を供給することで、白色布64から水分が蒸発するときの気化熱を利用し、一度冷却した空気を再度スポットクーラ80に供給してスポットクーラ80に再利用することで、より省エネルギーにする局所温度調節装置を実現することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、局所温度調節装置及び局所温度調節装置を用いた育成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、植物の成長を調製するために温室内で様々な植物が育成されている。例えば、コチョウランは温度管理によって開花制御ができることから、温度管理された温室内で育成することで、周年出荷を可能としている。一方、コチョウランを一例とするある種の植物は株基部の温度のみを調整することで開花制御が可能であることが知られている。つまり、温室内全体の温度管理を行う必要はなく、むしろ、省エネルギーの観点から温室全体の温度管理を行うことは望ましくない。
【0003】
このため、温室の一部の温度のみを調整することで、植物の育成を調節する方法が知られている。例えば、特許文献1には、植物栽培ベッドの周囲を通気遮断性カーテンで覆い、上部に風圧ダンパを設け、植物栽培ベッドの近傍に冷風吹き出し部を設けることで、冷風を植物栽培ベッドの近傍に導き、高温の空気を上部の風圧ダンパにより排出する冷房装置が記載されている。また、特許文献2には、栽培作物の上方にエアーダクトを設け、このエアーダクトから下方の栽培作物に向けて温度制御された空気を吹きかけることで、栽培作物地上部周辺の温度を調整する温室設備が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−107813
【特許文献2】特開2006−325516
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1又は特許文献2に記載された冷房装置では、温度調節が必要な栽培植物部分以外の部分についても広範囲に冷却しており、必要十分な範囲の温度管理をしているとは言えない。このため、昨今の省エネルギー化の流れから、更に省エネルギーに資する冷却装置の開発が熱望されている。
【0006】
本発明は、このような課題に鑑みなされたものであり、必要十分な範囲のみの温度を管理することで、効率的な温度管理を行い、省エネルギーに資する局所温度調節装置を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上述の目的の少なくとも一つを達成するために以下の手段を採った。
【0008】
本発明の局所温度調節装置は、株基部の温度で発育を調整可能な栽培作物を育成する栽培作物育成手段と、空気を加熱又は冷却する温度調節手段と、前記栽培作物育成手段の上面の少なくとも一部を覆い、前記温度調節手段によって調節された空気の少なくとも一部を前記株基部近傍に誘導する被覆手段と、を備えたものである。
【0009】
この局所温度調節装置では、温度の調節された空気を発育の調節に必要な栽培作物の株基部に導くことにより、栽培作物の温度調節が必要な部分の温度を調節する。こうすることにより、栽培植物の発育調節に本来必要のない温室全体の温度調節を行う場合と比較して、省エネルギーに資する効果が得られる。
【0010】
本発明の局所温度調節装置は、前記被覆手段に液体を供給する液体供給手段、を備えていてもよい。こうすれば、被覆手段を液体によって浸潤させることができるため、この液体が気化するときの気化熱により被覆手段を冷却することができる。すなわち、被覆手段下部の空気であって、株基部近傍の空気を冷却することができる。このため、より省エネルギーに資する効果が得られる。この態様を採用した本発明の局所温度調節装置において、前記被覆手段は、少なくとも一部が少なくとも2重であってもよい。こうすれば、1重の場合よりも高い遮光性及び高い保温性を得ることができるため、省エネルギーに資する効果が得られる。
【0011】
本発明の局所温度調節装置は、下部に空間を有し、前記栽培作物育成手段を保持する保持手段と、前記保持手段及び前記被覆手段の側面に配置され、前記被覆手段に対して下方の空気の少なくとも一部を該保持手段の下部に誘導する誘導手段と、を備え、前記温度調節手段は、前記保持手段の下部に誘導された空気を吸入し該空気を加熱又は冷却することで温度を調節してもよい。こうすれば、一度温度調節された空気が温度調節手段付近に誘導されることになり、温度調節手段は空気を吸入して空気を冷却するものであるため、目標温度に近い空気を吸入することで、何ら温度調節の行われていない空気を吸入する場合と比較して、より省エネルギーに資する効果が得られる。
【0012】
本発明の温室は、上述したいずれかに記載の局所温度調節装置を備えたものである。本発明の温室は、本発明の局所温度調節装置を備えているため、栽培作物の発育を調節するために必要な株基部付近の温度を調節することができるものであるから、これを備えた温室も同様の効果が得られる。
【0013】
本発明の栽培作物の育成方法は、株基部の温度で発育を調整可能な栽培作物を育成する栽培作物育成手段と、空気を加熱又は冷却する温度調節手段と、前記栽培作物育成手段の上面の少なくとも一部を覆う被覆手段と、を備えた局所温度調節装置を用いた栽培作物の育成方法であって、(a)前記温度調節手段で空気を加熱又は冷却するステップと、(b)前記温度調節手段で調節された空気の少なくとも一部を前記株基部近傍に誘導するステップと、を含むものである。
【0014】
この栽培作物の育成方法では、温度の調節された空気を発育の調節に必要な栽培作物の株基部に導くことにより、栽培作物の温度調節が必要な部分の温度を調節する。こうすることにより、栽培植物の発育調節に本来必要のない温室全体の温度調節を行う場合と比較して、省エネルギーに資する効果が得られる。なお、本発明の栽培作物の育成方法において、上述したいずれかの局所温度調節装置の機能を実現するようなステップを追加しても良い。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1は、本発明の実施形態の一例を表す斜視図である。
【図2】図2は、本発明の実施形態の一例を表す断面図である。
【図3】図3は、白色布64を水が浸潤する様子を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の1実施形態である局所温度調節装置10を用いてコチョウランを育成する際の使用状態の概略を示す斜視図であり、図2は、図1を局所温度調節装置10の断面図である。
【0017】
ここで、本実施形態の構成要素と本発明の構成要素との対応関係を明らかにする。本実施形態の局所温度調節装置10が局所温度調節装置に相当し、支持台20が保持手段に相当し、シルバービニル26が誘導手段に相当し、育成鉢50が栽培作物育成手段に相当し、コチョウラン52が栽培作物に相当し、スポットクーラ80が温度調節手段に相当し、遮蔽布60が被覆手段に相当し、プラスチックチューブ70が液体供給手段に相当する。なお、本実施形態では、コチョウラン52を育成するために局所温度調節装置10を使用する方法を説明することにより本発明の栽培作物の育成方法の一例も明らかにしている。
【0018】
本発明の局所温度調節装置10は、図1に示すように、支持台20と、支持台20の上面部22に配置されたベッド30と、ベッド30の上部に配置されたプラスチック製の板40と、この板40の上部に置かれた育成鉢50と、育成鉢50の上部に配置された遮蔽布60と、遮蔽布60に水を供給するプラスチックチューブ70と、空気を吸入して冷気を排出するスポットクーラ80と、を備えている。
【0019】
支持台20は、図2に示すように、鉄製の上面部22と、鉄製の脚部24とを備えており、この支持台20の周囲は、シルバービニル26によって覆われている。このシルバービニル26は、ベッド30から流出した冷気の流れを妨げ、この冷気がシルバービニル26の内面に沿って流れることで、支持台20の下部に冷気を導いている。また、このシルバービニル26は遮光性を有しているため、ベッド30の下部到達する光量が減少する。こうすることにより、ベッド30の下部の温度の上昇を妨げることができる。同時に、ベッド30の下部の地面は周囲の空気の温度よりも低いため、この地面によって冷却された空気及び地面からの気化熱によって冷却された空気がベッド30の下部から流出することを妨げることができる。ベッド30の下部の空気は吸入管84を経てスポットクーラ80に供給されるため、スポットクーラ80は周囲の空気と比較してより低温の空気を吸入することができ、より省エネルギーに資することができる。なお、ここで上面部22及び脚部24は鉄製であるとしたが、育成鉢50等を支える強度を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、木製や硬質プラスチック製、金属製等であっても良い。
【0020】
ベッド30は、図1に示すように、発泡スチロール(ポリスチレンフォーム)製であり、長手方向に貫通する複数の冷気通風溝32と、隣接する冷気通風溝32のうちの1つとを連接する連通穴34と、を有している。この冷気通風溝32の一端はスポットクーラ80と1つおきに連接管82を介して連接しており(以下、スポットクーラ80と連接されている側を「冷却側」と呼ぶ)、冷却側と対向する側(以下、「連接側」と呼ぶ)に連通穴34を有している。連通穴34は、連接側であって、隣接する冷気通風溝32の間を略L字状に削りだしたもので、冷気通風溝32から導かれた冷気は、連接管32を通って隣接する冷気通風溝32に導かれる。また、冷気通風溝32は、スポットクーラ80と連接されている溝と連接されていない溝との交互に配置されている。このため、連接管82を介して冷気通風溝32に供給された冷気は、冷気通風溝32を通って連接側に導かれ、連通穴34を経て、冷気通風溝32を通り再び冷却側に導かれる。こうすることにより、冷却側と連接側との温度差を小さくすることができる。また、ベッド30は発泡スチロールであり、発泡スチロールは断熱性を有するため、冷気通風溝32を冷気が通過する際の温度変化を未然に防ぐことができ、より省エネルギーに資することができる。なお、冷気通風溝32の貫通方向は長手方向に限定されるものではなく、短手方向であっても良い。
【0021】
プラスチック製の板40は、図2に示すように、上面と下面とを貫通する複数の間隙42を備えている。このため、冷気通風溝32内の冷気がこの間隙42を経て、板40の上面に配置された育成鉢50に移動することができる。なお、ここで板40はプラスチック製であるものとしたが、育成鉢50等を保持できる強度を有するものであれば特に限定されるものではなく、例えば、金属製であっても良いし、樹脂製や木製であっても良い。
【0022】
育成鉢50は、図2に示すように、略円筒状の公知の鉢である。この育成鉢50は、板40の上面に格子状に配置され、コチョウラン52の株がそれぞれの育成鉢50に一つずつ植えられている。このため、コチョウラン52の育成者は所望のときに育成鉢50を取り出すことで、コチョウラン52の株を傷つけることなく、容易にコチョウラン52の株を取り出すことができる。また、育成鉢50は、板40の上面に格子状に配置されているため、板40と遮蔽布60との間の空気の量が少ない。つまり、スポットク−ラ80で冷却する空気の量を少なくできるため、より省エネルギーに資することができる。なお、ここで育成鉢50の形状は略円筒状であるものとしたが、この形に限定されるものではなく、略四角柱状や略5角柱状といった角柱状のものなど、公知の鉢のいずれかであってもよいし、一つの育成鉢50に、複数の株が植えられていてもよい。また、育成鉢50の配置場所も、格子状に限定されるものではなく、配置場所の形状や育成鉢50の数、目的に応じて適宜配置方法を選択することができる。
【0023】
遮蔽布60は、図1に示すように、黒色布62と白色布64の2種類の不織布からなる。黒色布62は、略矩形の帯状であり、短辺の長さがコチョウラン52の株と株との間隔と略同一の長さで、長辺の長さが上面部22の長辺の長さと略同一の長さである不織布である。この黒色布62は、上面部22の長辺に略平行に配置されている。こうすることにより、黒色布62の下部に透過する光量を減少させることができる。また、白色布64は、略矩形であり、コチョウラン52の株と株との間隔と略同一の長さであり、長辺の長さが上面部22の短辺の長さと略同一の長さである不織布である。この白色布64は、図3に示すように、上面部22と黒色布62との間の位置であって、上面部22の短辺と略平行に2重に配置される。こうすることにより、板40の間隙42より流入してきた冷気の移動を妨げることができる。すなわち、板40と遮蔽布60との間に冷気が滞留することになる。また、遮蔽布60は、黒色布62と白色布64とが重なっているため、不織布が1枚である場合と比較して高い遮光性及び高い保温性を得ることができる。このとき、図1に示すように、黒色布62と白色布64とが略直角になるように配置され、この交差位置と育成鉢50で育成されているコチョウラン52の株基部の位置とが略同一の位置になるように配置されている。こうすることにより、冷気の移動が遮蔽布60によって妨げられ、遮蔽布60と上面部22との間に冷気が導かれることになる。つまり、コチョウラン52の株基部及び根圏部付近に選択的に冷気を導くことができる。なお、ここで黒色布62又は白色布64を配置するとは、所定の位置に導くことを意味し、黒色布62又は白色布64が固定されているか否かを問わない。黒色布62又は白色布64を固定すれば、外的要因により黒色布62又は白色布64が移動することを未然に防ぐことができる。一方、固定しなければ複数のコチョウラン52を取り出す際に、容易に取り出すことができる。
【0024】
プラスチックチューブ70は、図2に示すように、下面に複数の流水孔72を備え、図示しない流水装置に接続されている。このプラスチックチューブ70は、上面部22の上面であって、白色布64の更に上面に備えられており、白色布64を上面部22の上面に固定する役割も担っている。図示しない流水装置により供給された水は、プラスチックチューブ70の内部、流水孔72を経て白色布64に供給される。このとき、白色布64は二重に配置されており、白色布64と白色布64との間には、微少な空間が生じている。このため、白色布64に流水孔72から水が供給された場合、毛細管現象により白色布64の広範囲にわたって水が浸透しやすい。
【0025】
スポットクーラ80は、図1に示すように、ベッド30の横に設置されている。このため、スポットクーラ80の作動によって生じる排気熱がベッド30の下部に放出されることを未然に防ぐことができる。このスポットクーラ80は、ベッド30の下部の空気を吸入管84を介して吸入し、スポットクーラ80で冷却し、連接管82を介して冷気通風溝32に供給している。このようにベッド30の下部の周囲の空気より低温の空気を吸入することで、より省エネルギーに資することができる。
【0026】
ここで、白色布64の配置及び白色布64に水が浸潤する様子について、図3を用いて更に詳しく説明する。図3は、白色布64を例に、白色布64を水が浸潤する様子を説明するための説明図であり、水が浸潤する様子をより詳細に説明するため、実際よりも誇張して記載されている。実際は、白色布64と白色布64との間の空間は、微笑な空間である。白色布64は、図3(A)に示すように、2重に重ねられた状態で、鉢50の上面に配置され、上部よりプラスチックチューブ70により押圧されている。プラスチックチューブ70に備えられた流水孔72から水が白色布64に供給されると、白色布64に水が浸潤する。次に、図3(B)に示すように、水が白色布64に浸潤して、白色布64と白色布64との間の空間に達する。水がこの位置まで達すると、毛細管現象により、図3(B)の矢印の方向に移動することになり、白色布64の長辺方向に水が浸潤する。このとき、水の移動に伴って白色布64の上方及び下方にも水が浸潤するため、図3(C)に示すように、外部の動力を必要とすることなく、水を広範囲に供給することができ、省エネルギーに資することができる。
【0027】
以上詳述した本実施の形態の局所温度調整装置によれば、スポットクーラ80で冷却された空気が、ベッド30、板40に備えられた間隙42を経て、遮蔽布60に沿ってコチョウランの株基部及び根圏部に導かれる。こうすることにより、発育調節に必要なコチョウランの株基部付近を冷却することができるため、温室内全体を冷却するよりも省エネルギーでコチョウランの発育調節を行うことができる。
【0028】
また、局所温度調節装置10は、図示しない流水装置に接続されたプラスチックチューブ70の流水孔72により、遮蔽布60に水分が供給される。このとき、遮蔽布60からこの水分が蒸発すると気化熱により、遮蔽布60付近の熱が奪われ、更に冷却効果を高めることができる。したがって、より省エネルギーに資することができる。
【0029】
更に、遮蔽布60は2重に重ねられた不織布であるため、遮蔽布60に水分が供給された際、2重に重ねられた不織布の間を毛細管現象により水分が移動し、端部に供給された水分を不織布の広範囲に広げることができる。また、不織布を2重に重ねることにより、保温性及び遮光性を高めることができる。したがって、上述した気化熱による効果を広範囲で得られるとともに、株基部及び根圏部付近の温度上昇を妨げ、より省エネルギーに資することができる。
【0030】
更にまた、支持台20の周りをシルバービニル26で覆っており、上面部22の上部から流出した冷気の少なくとも一部が支持台20の下部に再び導かれる。この支持台20の下部の空気は、冷たい地表面及び地表からの気化熱によって更に冷却される。スポットクーラ80は、この周囲の空気と比較して低温の空気を吸入管84を介して吸入しているため、周囲の空気をスポットクーラ80が冷却する場合と比較して、省エネルギーに資することができる。
【0031】
なお、本発明は上述した実施形態に何ら限定されることはなく、本発明の技術的範囲に属する限り種々の態様で実施し得ることはいうまでもない。
【0032】
例えば、上述した実施の形態では、コチョウラン52の花芽発生を促成するためにスポットクーラ70を用いて株基部及び根圏部を冷却するものとしたが、温度が適正温度よりも低い場合には、スポットヒータを用いても良いし、加熱及び冷却が可能なエアーコンディショナーを用いても良い。こうすれば、周囲の温度に影響されることなく、コチョウラン52の花芽発生に最適な温度環境を供給することができるし、コチョウラン以外の植物の育成に最適な温度環境を提供することもでき、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0033】
上述した実施の形態では、コチョウラン52を育成するものとしたが、例えば、シンビジウム、オンシジウム、ミルトニア、リカステ、オドントグロッサム、マステバリアなどのラン科の植物であっても良く、とちおとめ、紅ほっぺ、さがほのか、あまおう、章姫、とよのかなどのイチゴであっても良く、スター・バレード、バルティタ、ベンドゥラ、ムルティフロラ、ピコティー、マルモラダ、フィンブリアダ、マワシマなどのいわゆる球根ベコニアであっても良い。これらの植物の育成に適した温度の空気(外気より低温の場合には冷気、外気より高温の場合は暖気)を供給することで、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0034】
上述した実施の形態では、ベッド30は発泡スチロール製であるとしたが、素材は発泡スチロールに限定されるものではなく、プラスチック製や金属製などの育成鉢50等を支える強度を有する素材であってもよい。この場合であっても、スポットク−ラ80で冷却した空気を株基部に導くことができる。このとき、ベッド30に断熱樹脂や、グラスウールやフェノールフォームなどの断熱材を含む素材を用いることがより好ましい。こうすれば、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0035】
上述した実施の形態では、冷気通風溝32は、スポットクーラ80と連接されている溝と連接されていない溝との交互に配置されており、隣接する冷気通風溝32と冷気通風溝32とを連通穴34で連接するものとしたが、連通孔34は無くても良い。こうした場合でも、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。このとき、全ての冷気通風溝32とスポットクーラ80とを連接してもよい。こうすれば、連通孔34を形成することなく、全ての冷気通風孔32に冷気を供給することができる。また、全ての隣り合う冷気通風溝32を連通孔34で連通しても良い。こうした場合でも、上述した実施の形態と同様の効果が得られる。
【0036】
上述した実施の形態では、脚部24の周囲をシルバービニル26で覆うものとしたが、地面近傍に隙間を有する形状で覆うものであれば特に限定されるものではなく、例えば、木製や金属製、樹脂製、プラスチック製等の板材であってもよい。また、シルバーポリやポリスチレンフォーム等の断熱樹脂やシリカ等の断熱繊維を含むものであっても良い。こうすれば、支持台20の下部と他の部分との温度差によって支持台20の下部の温度が上昇することを防ぎ、より温度の低い空気をスポットクーラ80に導くことができるため、より省エネルギーに資することができる。この態様を採用した実施の形態において、地面近傍の隙間は無くても良い。こうすれば、局所温度調節装置10の内部で空気を循環することができるため、より省エネルギーに資することができる。
【0037】
上述した実施の形態では、遮蔽布60を用いるものとしたが、株基部に空気を誘導できる素材であれば特に限定されるものではなく、例えば、木製や金属製、樹脂製、プラスチック製等の板材・シート材・繊維材等であっても良い。また、ポリスチレンフォーム等の断熱樹脂やシリカ等の断熱繊維を含むものであっても良く、遮光布等の遮光性の素材を含むものであっても良い。こうすれば、遮蔽布60の上部の空気や日光等によって遮蔽布60の下部に熱が伝えられることを防ぐことができるため、より省エネルギーに資することができる。
【0038】
上述した実施の形態では、遮蔽布60として黒色布62と白色布64とを略直角に配置するものとしたが、育成鉢50の下部から供給される冷気の一部が上昇することを防ぐことができればこれに限定されるものではない。例えば、遮蔽布60に用いる不織布の色は黒色又は白色に限定されるものではなく、灰色、青色、赤色等の色の不織布を用いても良い。育成鉢50で育成する植物毎に異なる色の不織布で覆うことで、上述した実施の形態と同様の効果を得ながら、育成植物の種類を視覚的に把握することができる。また、黒色布62と白色布64との配置も略直角に限定されるものではなく、育成鉢50の大きさや形状に合わせて、例えば、平行に配置するなど、略直角以外の角度に配置しても良い。こうすれば、育成鉢50の大きさや形状に影響されることなく、上述した実施の形態と同様の効果を得ながら、育成鉢50を容易に配置及び取り外すことができる。また、コチョウラン50の株付近の位置に複数の貫通孔を有する1枚の布を用いても良い。こうすれば、上述した実施の形態と同様の効果を得ながら、遮蔽布60を配置する際の手間をより軽減することができる。
【0039】
上述した実施の形態では、流水孔72を有するプラスチックチューブ70を用いて白色布64に水を供給するものとしたが、白色布64に液体を供給できるものであれば、これに限定されるものではない。例えば、複数の孔を有するビニル管やゴム管、樹脂管を使っても良いし、水透過性の管を用いても良い。
【0040】
上述した実施の形態では、プラスチックチューブ70を用いて白色布64に水を供給するものとしたが、例えば、温室の天井部やベッドの中央部等に配置したスプリンクラー等の散水設備を用いて水を供給しても良い。こうすれば、白色布64が一重であっても、白色布64の全体に水を供給することができる。また、白色布64に水を供給しなくても良い。こうすれば、水が貴重な地域であっても実施することができる。
【0041】
上述した実施の形態では、プラスチックチューブ70を用いて白色布64に水を供給するものとしたが、水に限定されるものではなく、例えば、アルコール類のような揮発性の高い液体であってもよい。こうすれば、気化熱を利用しやすくなるため、より省エネルギーに資することができる。
【0042】
上述した実施の形態では、板40をベッド30の上部に配置するものとしたが、板40は無くても良い。こうすれば、より少ない部材で上述した実施の形態と同様の効果が得られるため、省エネルギーにするだけでなく、省資源にも資することができる。
【0043】
次に、本発明の局所温度調整装置について、実施例を用いて更に詳しく説明する。
【実施例1】
【0044】
温室内に四方を布で覆った154cmX1000cmの金属製のベンチを設置し、このベンチの上面に複数の溝を備えた発泡スチロール製のベッドを設置し、更にその上面に複数の空隙を備えたプラスチック製の板を設置し、更にその上面に育成鉢を格子状に並べた。次に、この育成鉢の上面に白色の不織布を2重にして配置し、両端部の上面にプラスチックチューブを配置した。このプラスチックチューブの内部には貫通孔が備えられており、下面には複数の孔を有している。この貫通孔に水を供給すると、下面に備えられた複数の孔を介して、不織布の端部に水を供給され、この水が不織布を浸透することで、不織布全体に水が供給される。次に、プラスチックチューブの更に上方に黒色の不織布を配置した。また、ベッドの上面に備えられた複数の溝の側面とベッドの横に設置したスポットクーラとを接続し、スポットクーラより溝を介して育成鉢に冷気を導風した。このときのある日の日中(9時より17時)の電力消費量を測定した。また、同日に同サイズの温室全体をクーラで冷却した場合における、1ベッド当たりの消費電力量(比較例1)と実施例1の消費電力量とを比較したところ、比較例1では40.43kwhの電力量が必要であったことに対し、実施例1では、36.7kwhであった。この結果から、局所温度調節装置を用いることで、消費電力量を約90%に抑制することができた。
【実施例2】
【0045】
ベンチ下の空気をスポットクーラに導く導入管を設置し、ベンチの周囲をシルバービニルで囲ったこと以外は、実施例1と同様にして温度と電力量とを測定した(実施例2)。このデータと実施例1と同様にして、他の日に測定した温度と電力量(実施例5)とを比較したところ、次の表2のような結果が得られた。ここで表2は、スポットクーラへの冷気の循環の有無による局所温度調節装置の鉢横部の温度、ベンチ下の温度及び消費電力の違いを示したものである。なお、ここでベンチ周囲の状態が「閉鎖」とは、ベンチの周囲をシルバービニルで囲った状態であり、「開放」とはシルバービニルで囲っていない状態である。また、鉢横部の温度とは、プラスチック製の板と不織布との間、つまり冷気を導風した位置の温度である。
【0046】
【表1】

【0047】
この表1から明らかなように、ベンチ下の空気をスポットクーラに吸入し、スポットクーラに一度冷却した空気の一部を循環させることで、約19%の消費電力を削減することができた。
【実施例3】
【0048】
不織布を濡らさないこと以外は、実施例1と同様にして温度と電力量とを測定したところ、次の表3のような結果が得られた。ここで表3は、気化熱利用の有無による局所温度調整装置の消費電力及び株基部付近の温度の違いを示したものである。なお、ここで株基部の温度(1cm)とは、株基部から1cmの高さの位置の温度であり、株基部温度(0cm)とは、株基部から0cmの高さの位置の温度を意味する。
【0049】
【表2】

【0050】
この表2から明らかなように、不織布を濡らして気化熱を利用することで、約25%の消費電力を削減することができた。
【実施例4】
【0051】
ベッドの短辺と略平行に配置した黒色の不織布を取り除いたこと以外は、実施例1と同様にして温度と電力量とを測定したところ、次の表4のような結果が得られた。ここで表4は、不織布が2重であることによる局所温度調節装置の消費電力及び株基部付近の温度の違いを示したものである。
【0052】
【表3】

【0053】
この表3から明らかなように、不織布を2重にすることで、約18%の消費電力を削減することができた。これは、黒色の不織布を用いることで遮光率が低下し、株基部近傍に透過する光の量が低下したこと、不織布を2重とすることで、保温効果が高くなったことが原因の一つであると考えられる。
【符号の説明】
【0054】
10 局所温度調整装置、20 支持台、22 上面部、24 脚部、26 シルバービニル、30 ベッド、32 冷気通風孔、34 連通孔、40 板、42 間隙、50 育成鉢、52 コチョウラン、60 遮蔽布、62 黒色布、64 白色布、70 プラスチックチューブ、72 流水孔、80 スポットクーラ、82 連接管、84 吸入管。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
株基部の温度で発育を調整可能な栽培作物を育成する栽培作物育成手段と、
空気を加熱又は冷却する温度調節手段と、
前記栽培作物育成手段の上面の少なくとも一部を覆い、前記温度調節手段によって調節された空気の少なくとも一部を前記株基部近傍に誘導する被覆手段と、
を備えた局所温度調節装置。
【請求項2】
請求項1に記載の局所温度調節装置であって、
前記被覆手段に液体を供給する液体供給手段、
を備えた局所温度調節装置。
【請求項3】
前記被覆手段は、少なくとも一部が少なくとも2重である、
請求項2に記載の局所温度調節装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の局所温度調節装置であって、
下部に空間を有し、前記栽培作物育成手段を保持する保持手段と、
前記保持手段及び前記被覆手段の側面に配置され、前記被覆手段に対して下方の空気の少なくとも一部を該保持手段の下部に誘導する誘導手段と、
を備え、
前記温度調節手段は、前記保持手段の下部に誘導された空気を吸入し該空気を加熱又は冷却することで温度を調節する、
局所温度調節装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の局所温度調節装置、
を備えた温室。
【請求項6】
株基部の温度で発育を調整可能な栽培作物を育成する栽培作物育成手段と、空気を加熱又は冷却する温度調節手段と、前記栽培作物育成手段の上面の少なくとも一部を覆う被覆手段と、を備えた局所温度調節装置を用いた栽培作物の育成方法であって、
(a)前記温度調節手段で空気を加熱又は冷却するステップと、
(b)前記温度調節手段で調節された空気の少なくとも一部を前記株基部近傍に誘導するステップと、
を含む栽培作物の育成方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−178674(P2010−178674A)
【公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−25080(P2009−25080)
【出願日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【出願人】(593107498)東海物産株式会社 (4)
【出願人】(000116622)愛知県 (99)
【Fターム(参考)】